JP3658827B2 - 樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリプロピレン系樹脂着色用の樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、熱可塑性樹脂着色用組成物には、顔料と分散剤とを混合した粉末状のドライカラー、常温で液状の分散剤中に顔料を分散させたリキッドカラーまたはペーストカラー、常温で固体の樹脂中に顔料を分散させたペレット状、フレーク状あるいはビーズ状のマスターバッチなどがある。これらの着色用組成物は、用途によって、その特徴を生かして使い分けられているが、これらのうち、取扱いの容易さ、使用時の作業環境保全の面からマスターバッチが好んで用いられている。そして、マスターバッチとして要求される性能も、顔料濃度が高いこと、着色される熱可塑性樹脂の耐熱性や強度などの諸物性に与える影響が小さいことなどと共に、成形の精密化、高速化にともない以前にもまして顔料の高分散性や高分配性が求められるようになった。
【0003】
マスターバッチの顔料分散性を付与する分散剤としては、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、エチレンビスアマイド、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、およびこれらの誘導体、例えば酸変性体や水酸基変性体からなるワックス等が1種または2種以上が一般的に用いられている。しかし、例えば、熱可塑性樹脂を10数ミクロン径で高速紡糸したり、フィルム化する場合など高度な顔料分散が求められる場合には、上述の分散剤では満足されないことがある。すなわち、顔料分散不良による紡糸時の糸切れ、溶融紡糸機のフィルターの目詰まり、フィルムでの成形不良などである。これらの問題を解決するために、マスターバッチの加工方法の改良や強力混練機により顔料分散性を向上させる努力が行われてきた。しかし、上述の分散剤は、上記の問題を解決するために十分な顔料分散能を発揮するものではなかった。
【0004】
また、着色のコストダウンを目的にして顔料含有率を上げた、いわゆる高濃度マスターバッチの出現による、被着色樹脂へのマスターバッチの添加量の減少化で、この色ムラやフローマークの発生はより起こり易くなってきた。
この問題は、各種熱可塑性樹脂で認められるが、家電や自動車部品で使用量が増えてきたポリプロピレン系の樹脂で顕著であり、早急な解決が求められてきた。この問題を解決するため、マスターバッチの主要3成分(顔料、分散剤及びベースレジン)のうち、分散剤の含有量を増やしたり、あるいはベースレジンとして被着色樹脂の粘度より小さいものを使用するなどマスターバッチの溶融粘度をより低くすることで色ムラを解消することが行われてきた。また、熱可塑性樹脂全般についてこの問題を解消するため、極性官能基含有熱可塑性樹脂を水系分散体や水溶液として用いる方法も提案されている。
【0005】
その中でも、特に被着色樹脂がポリプロピレン系樹脂である場合、着色用の樹脂組成物(マスターバッチ)にポリプロピレン系樹脂の水性分散体や水溶液を用いることでさらに改善できることが判かっている。しかしながら、ポリプロピレン系樹脂を水性分散体や水溶液とするためには、酸価が比較的高く粘度の小さいポリプロピレン系樹脂でなければならないという制約がある。また、その水性分散体に相溶性の小さい複数種類の樹脂を用いた場合には、得られる樹脂組成物で着色した成形物には大幅な機械物性の低下が認められる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の欠点を改良し、ポリプロピレン系樹脂の引張強度や曲げ弾性率、曲げ強度、衝撃強度、熱変形温度等の機械物性の各強度値に対し5%以上の物性阻害を与えず、顔料分散性に優れ色ムラのない均一な着色が可能、かつ生産性に優れたポリプロピレン系樹脂着色用の樹脂組成物(マスターバッチ)の提供を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、ポリプロピレン系IPN樹脂水性分散体および/またはポリプロピレン系IPN樹脂水溶液(a)と顔料(b)を混練、脱水してなることを特徴とする樹脂組成物を提供する。
また、本発明は、ポリプロピレン系IPN樹脂水性分散体および/またはポリプロピレン系IPN樹脂水溶液(a)と顔料(b)に、さらにポリプロピレン系樹脂(c)を加え、混練、脱水してなることを特徴とする樹脂組成物を提供する。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明において、ポリプロピレン系IPN樹脂は、ポリプロピレン系樹脂を30重量%以上含むIPN樹脂である。なお、IPN樹脂とは、2種類またはそれ以上の異なる樹脂の分子鎖が互いに絡み合った、相互進入分子構造(IPN)を持つ樹脂のことを示す。IPN樹脂は、単なる混合樹脂とは異なり、混合した樹脂それぞれの特長はそのままにして、樹脂の相分離を起こさない。
ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレン単独重合体やプロピレン単位を有する共重合体、それにさらに極性官能基を付加した誘導体、プロピレン単位を有さない樹脂にプロピレン単位を有する化合物をグラフトした樹脂が挙げられ、いずれの場合もプロピレン単位の含有率が50重量%以上であることが望ましい。
【0009】
ポリプロピレン系IPN樹脂水性分散体および/またはポリプロピレン系IPN樹脂水溶液(a)は、極性官能基含有ポリプロピレン系IPN樹脂(a1)を1種類あるいは2種類以上、水性媒体中に分散および/または溶解せしめてなるものであり、極性官能基含有ポリプロピレン系IPN樹脂(a1)は、プロピレン単位を15重量%、さらには30重量%以上含有することが望ましい。
極性官能基含有ポリプロピレン系IPN樹脂(a1)中のプロピレン単位が15重量%未満だと、被着色プロピレン系樹脂と相溶する部位が少なすぎるため、色むらやフローマーク、機械物性等が改善されない。
【0010】
極性官能基含有ポリプロピレン系IPN樹脂(a1)中の極性官能基としては、特に制限はなく、例えば、カルボキシル基、グリシジル基、水酸基、アミノ基、アミド基、エチレンイミン基、イソシアネート基、アルキレンオキサイド結合基等の水性化可能な極性官能基が挙げられる。
極性官能基含有ポリプロピレン系IPN樹脂(a1)を調製するための極性官能基含有ポリプロピレン系樹脂は、プロピレン単独重合体(以下、単独重合体と略す)やプロピレン共重合体(以下、共重合体と略す)に不飽和二重結合と前記の極性官能基とを有する化合物をグラフトした誘導体、あるいは不飽和二重結合と前記の極性官能基とを有する化合物をプロピレンと共重合せしめてなる共重合体(以下、極性官能基含有共重合体と略す)である。
【0011】
共重合体および極性官能基含有共重合体としては、結晶性や非結晶性樹脂、ランダムやブロック共重合体あるいはそれらのグラフト化体、またはそれらの熱分解によって得られる低重合体やワックスなどが挙げられる。
共重合体は、プロピレンと、エチレン、2−ブテン、1−ヘキセン、1−ヘキサデセン、1−エイコセン、クロロトリフルオロエチレン、2−クロロ−1−プロピレン、3−クロロ−1−プロピレン、シクロオクテン、1,3−シクロヘキサジエン、シクロペンテン−1,3−ジエン、3,4−ジメチル−1,3−ブタジエン、テトラフルオロエチレン、1,3−ブタジエン等のモノマーを共重合せしめたものである。
【0012】
単独重合体や共重合体にグラフトせしめる不飽和二重結合と極性官能基とを有する化合物としては、不飽和二重結合を有するカルボン酸あるいはその無水物、不飽和二重結合とグリシジル基を有する化合物、不飽和二重結合と水酸基を有する化合物、不飽和二重結合とアミノ基あるいはアミド基を有する化合物、2−(1−アジリジニル)エチルメタクリレート、メタクリル酸イソシアネートエチル等のエチレンイミン基あるいはイソシアネート基含有モノマー等が挙げられる。
【0013】
不飽和二重結合を有するカルボン酸あるいはその無水物としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、テトラヒドロフタル酸、クロトン酸、シトラコン酸、ハイミック酸、アリルコハク酸、メサコン酸、グルタコン酸、テトラヒドロフタール酸、メチルヘキサヒドロフタール酸、アコニット酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水ハイミック酸無水アリルコハク酸、無水グルタコン酸、無水テトラヒドロフタール酸、無水メチルヘキサヒドロフタール酸、無水アコニット酸等が挙げられるが、特にアクリル酸や無水マレイン酸が工業的に有利であり、後述する水性化も施しやすい。
【0014】
不飽和二重結合とグリシジル基を有する化合物としては、例えば、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、マレイン酸ジグリシジル、マレイン酸メチルグリシジル、マレイン酸イソプロピルグリシジル、マレイン酸−t−ブチルグリシジル、フマル酸ジグリシジル、フマル酸イソプロピルグリシジル、イタコン酸ジグリシジル、イタコン酸メチルグリシジル、イタコン酸イソプロピルグリシジル、2−メチレングルタン酸メチルグリシジル、ブテンジカルボン酸モノグリシジル、3,4ーエポキシブテン、3,4−エポキシ−3−メチル−1−ブテン、ビニルシクロヘキセンモノオキシド、p−グリシジルスチレン等のグリシジル基含有モノマーが挙げられる。
【0015】
不飽和二重結合と水酸基を有する化合物としては、例えば、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、ポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート、モノ−(2−ヒドロキシエチル−α−クロロアクリレート)アシッドホスフェート等の水酸基含有モノマーが挙げられる。
【0016】
不飽和二重結合とアミノ基あるいはアミド基を有する化合物としては、例えば、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−メチルアミノエチルアクリレート、N−トリブチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、アリルアミン、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、ジアリルアミン、トリアリルアミン、4−ビニルピリジン、2−メチル−6−ビニルピリジン、4−ブテニルピリジン、ビニルピロリドン等のアミノ基あるいはアミド基含有モノマーが挙げられる。
【0017】
単独重合体や共重合体に前記の不飽和二重結合と極性官能基とを有する化合物をグラフト重合せしめることによって極性官能基含有ポリプロピレン系樹脂を得ることができる。例えば、溶融させたポリプロピレンワックスに無水マレイン酸を加えながら、同時にジアルキルパーオキサイド等の触媒を加えることで、容易に無水マレイン酸グラフトポリプロピレン系樹脂を得ることができる。
極性官能基含有ポリプロピレン系樹脂は、プロピレンと、前述した不飽和二重結合と極性官能基とを有する化合物と、さらに必要に応じてその他のモノマーとを共重合せしめることによっても得られる。
【0018】
その他のモノマーとしては、共重合体のモノマー成分として先に例示したものの他に、アクリル酸やメタクリル酸等の酸エステル、酸アミド、酸イミド、酸クロリド、酸金属塩、酸無水物や、その他のビニル基やアリル基を有する化合物が挙げられる。なお、上記のモノマー中の水素は、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素により置換されていてもよい。
【0019】
酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸n−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸2,3−エポキシプロピル、(メタ)アクリル酸1,2,2,2−テトラクロロエチル、(メタ)アクリル酸2−メルカプトベンゾチアゾリル、(メタ)アクリル酸p−ブロモフェニル、(メタ)アクリル酸フェロセニルメチル、チオアクリル酸メチル、、ケイヒ酸ビニル、ケイヒ酸tert−ブチル、α−シアノアクリル酸メチル、α−シアノケイヒ酸メチル、ソルビン酸2,3−エポキシプロピル、マレイン酸モノメチル、アトロバ酸2−クロロエチル、ムコン酸ジエチル、酢酸アリル、フタル酸ジアリル、安息香酸ビニル、メサコン酸ジシクロヘキシル、エチレンスルフォン酸ブチル、イタコン酸ジエチル、1,3−ブタジエン−1−カルボン酸2,3−エポキシプロピル、クロトン酸メチル等が挙げられる。
【0020】
酸アミドとしては、(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−アリルアセトアミド等が挙げられる。
酸イミドとしては、マレイミド、N−アセトキシマレイミド、N−ビニルスクシニミド等が挙げられる。
酸クロリドとしては、(メタ)アクリル酸クロリド、イタコン酸クロリド等が挙げられる。
酸金属塩としては、(メタ)アクリル酸ナトリウム、メタクリル酸亜鉛、トリビニルブチルスズ、エチレンスルフォン酸ナトリウム等が挙げられる。
酸無水物としては、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水マレイン酸等が挙げられる。
【0021】
その他のビニル基やアリル基を有する化合物としては、スチレン、塩化ビニル、フッ化ビニル、ヨウ化ビニル、イソプレン、エチルビニルエーテル、エチルビニルケトン、エチルビニルスルフィド、エチルビニルスルフォキシド、塩化ビニリデン、クロロ酢酸ビニル、トリエトキシビニルシラン、リン酸ジエチルビニル、ビニルフェノール、1−ビニルアントラセン、シス−スチルベン、炭酸ビニレン、アリルフェニルエーテル等が挙げられる。
【0022】
1つまたは2つ以上の水素がフッ素、塩素、臭素、ヨウ素で置換されたモノマーとしては、クロロトリフルオロエチレン、2−クロロ−1−プロピレン、3−クロロ−1−プロピレン、ヘキサクロロ−1,3−ブタジエン、ヘキサフルオロ−1,3−ブタジエン、クロロスチレン、臭化ビニル、、クロロプレン、テトラフルオロホウ酸ジメチル−p−フェニルスルフォニウム、2,3,4,6−ペンタフルオロスチレン等が挙げられる。
また、その他のモノマーとして、1,3−ブタジエン−1−カルボン酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、クロトンニトリル、クロトンアルデヒド、マレオニトリル、アクロレイン等が挙げられる。
【0023】
IPN樹脂の調製方法としては特に制限はなく、複種類の樹脂が相分離を起こさない構造を持ち、かつそれぞれの樹脂の特性がIPN化後も維持されるならばいかなる方法でも良い。例えば、1種またはそれ以上の樹脂の存在下において他の樹脂を重合する方法や、2種類またはそれ以上の溶融混合してある樹脂分子間に後から架橋を施す方法などが考えられる。
【0024】
極性官能基含有ポリプロピレン系IPN樹脂(a1)としては、MFRが5〜400の範囲、さらには20〜300の範囲にあるものが好ましい。なお、本発明において、MFRとは JIS K 7210 に準拠して測定されたMFRである。極性官能基含有ポリプロピレン系IPN樹脂のMFRが5未満の時は、分子量が大きいため水性化が極めて困難となり、またMFRが400を超える場合には、マスターバッチ自体の機械的強度や耐熱性が低くなり、マスターバッチの製造が困難になるとともに、着色されるポリプロピレン系樹脂の耐熱性や、強度などの諸物性に悪影響を与え易くなる。
【0025】
また、極性官能基含有ポリプロピレン系IPN樹脂(a1)中の極性官能基含有ポリプロピレン系樹脂の酸価は、20〜600、さらには50〜450の範囲であることが好ましい。酸価が20未満では、水性化が困難となり、また良好な顔料分散性、発色性が得られ難く、更に着色成形品に色ムラやフローマークが生じ易い。また酸価が600を越えると吸湿しやすく成形品表面のシルバーストークや発泡の原因となるばかりでなく、被着色樹脂の耐候性、耐熱性等に悪影響を及ぼす。
【0026】
また、極性官能基としてカルボキシル基ないしその無水物をポリプロピレン系IPN樹脂に導入した場合には、カルボキシル基あるいはその無水物にさらに、水酸基やアミノ基を有する化合物を反応せしめて、エステル化、アミド化、イミド化せしめたものを、極性官能基含有ポリプロピレン系IPN樹脂(a1)として用いてもよい。
【0027】
ポリプロピレン系IPN樹脂水性分散体および/またはポリプロピレン系IPN樹脂水溶液(a)は、上記極性官能基含有ポリプロピレン系IPN樹脂(a1)を溶融し、そこへ水を加えるか、中和剤と水とを加えるか、あるいは溶剤を加えた後に中和剤と水とを加えることによって水性化、その後ストリッピングにより脱溶剤し、水溶液あるいは水性分散体としたものである。
極性官能基含有ポリプロピレン系IPN樹脂(a1)の水性化は、水を樹脂分子中に介在させるための手段であり、必ずしも水性化のために中和をする必要はない。すなわち、水性化しにくい樹脂は中和することが好ましいが、水性化し易い樹脂は温水で環流、強撹拌するだけでよい。なお、中和剤を用いることにより着色成型物の機械物性や顔料の分散等に悪い影響を及ぼすことはない。
【0028】
中和剤としては、酢酸、酪酸、(メタ)アクリル酸、マレイン酸等の有機酸、塩酸、硫酸、硝酸、燐酸、硼酸等の無機酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等の水酸化物、アンモニア、モノエタノールアミン、イソプロピルアミン、N−メチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、トリエチルアミン、トリエタノ−ルアミン等の有機アミンなどが挙げられるが必ずしもこれらに限定されるものではない。
酸価やMFRの高い樹脂は、中和後容易に水で希釈して水性化できる。また酸価やMFRの低い樹脂は、溶剤と少量の水、中和剤を加え溶液とした後、ストリッピングにより水と置換することで容易に水性化できる。この場合、通常ラボスケールで用いる撹拌機では不十分であり、強トルクの混練機を用いると良い。
【0029】
ポリプロピレン系IPN樹脂水性分散体および/またはポリプロピレン系IPN樹脂水溶液(a)は、混練に支障がない限り特に形態に制限はなく、極めて低粘度のものでも、極めて高粘度で流動性をほとんど示さない(ゲル状の)ものでもよい。ポリプロピレン系IPN樹脂水性分散体および/またはポリプロピレン系IPN樹脂水溶液(a)の樹脂固形分は、10〜80重量%、さらには20〜60重量%であることが好ましい。樹脂固形分が10重量%未満であると、マスターバッチに加工する時において脱水が困難となり、また被着色樹脂中の顔料分散が不良となり色むらやフローマークの原因となる。樹脂固形分が80重量%より多くなると水によるが顔料分散効果がなくなる。
【0030】
顔料(b)としては、従来から熱可塑性樹脂の着色に使用されている有機顔料および無機顔料が使用できる。このような顔料としては、アゾ系、アントラキノン系、フタロシアニン系、キナクリドン系、イソインドリノン系、ジオキサン系、ベリレン系、キノフタロン系、ベリノン系などの有機顔料およびそれらの湿潤プレスケーキ、硫化カドミウム、セレン化カドミウム、群青、二酸化チタン、酸化鉄、酸化クロム酸塩、カーボンブラックなどの無機顔料がある。
【0031】
ポリプロピレン系樹脂(c)としては、被着色プロピレン系樹脂と相溶性のあるものが好適に用いられる。具体的には、極性官能基含有ポリプロピレン系IPN樹脂(a1)のところで説明した単独重合体、共重合体、および該単独重合体や該共重合体に極性官能基を付加せしめたもの、極性官能基含有共重合体等が挙げられ、これらの1種もしくは2種以上が用いられる。ポリプロピレン系樹脂(c)と極性官能基含有ポリプロピレン系IPN樹脂(a1)との相違点は、ポリプロピレン系樹脂(c)は、極性官能基を必須とはしていないこと、すなわちプロピレン単独重合体(ポリプロピレン)や、プロピレンとエチレンとの共重合体等の極性官能基を有さないものをも使用できるという点である。
ポリプロピレン系樹脂(c)は、プロピレン単位を50重量%以上含有することが望ましい。50重量%未満だと、(a)や被着色ポリプロピレンとの相溶が悪くなるため、ポリプロピレン系樹脂(c)が相分離を起こし、著しい機械物性の低下が見られる。
【0032】
本発明の樹脂組成物は、ポリプロピレン系IPN樹脂水性分散体および/またはポリプロピレン系IPN樹脂水溶液(a)と顔料(b)と、必要に応じてポリプロピレン系樹脂(c)を混練、脱水することにより得られるが、(a)10〜95重量%と(b)90〜5重量%を用いることが好ましく、(c)を用いる場合、その使用量は50重量%未満であることが好ましい。
(a)が10重量%よりも少ないと、ポリプロピレン系IPN樹脂が顔料(b)を十分に被覆できず、被着色ポリプロピレン中での顔料(b)の分散が不十分となり、一方、95重量%より多いと、含水率が多くなるために混練や脱水の過程で弊害がでることがある。また、顔料(b)が5重量%よりも少ないと、高濃度マスターバッチを得ることは難しく、一方、90重量%より多いと、ポリプロピレン系IPN樹脂やポリプロピレン系樹脂(c)が相対的に少なくなるため顔料(b)の分散が不十分となり機械物性等にも悪影響がでる。
【0033】
本発明の樹脂組成物は、ポリプロピレン系IPN樹脂水性分散体および/またはポリプロピレン系IPN樹脂水溶液(a)が顔料(b)に対する親和性に富み、顔料(b)の表面を極性官能基含有ポリプロピレン系IPN樹脂(a1)が被覆するので、被着色体に混合・混練する際に、被着色体に対する顔料の分散性及び着色力が優れるようになったものである。
【0034】
水性化していない極性官能基含有ポリプロピレン系IPN樹脂(a1)と顔料(b)とを混合した従来の樹脂組成物を用いた場合よりも、本発明の樹脂組成物を用いた場合の方が、被着色体に対する顔料の分散性及び着色力に優れるのは、極性官能基含有ポリプロピレン系IPN樹脂(a1)を水性媒体に溶解あるいは分散せしめることによって(a1)が水性媒体中で動きやすい状態で存在し、さらに水の存在下での混練によるストリッピング効果で、混練の剪断以上に分散された顔料(b)との間に極性的な結合が形成され易くなったためと考えられる。
【0035】
また、極性官能基含有ポリプロピレン系IPN樹脂(a1)と同じ配合量でIPN化していないポリプロピレン系樹脂を使用した場合、(a1)を用いた場合よりも、前述の理由のために顔料分散の低下は少ないが、機械物性が大幅に低下することがしばしばある。これは樹脂をIPN化することで、相溶性の少ない樹脂の相分離を抑制しているためと考えられる。
さらに、ポリプロピレン系樹脂(c)を用いると、極性的な結合が形成されやすくなった(a1)と(b)との回りを(c)が保護コロイド的に包む構造を取るために、顔料の分散性、着色力がさらに向上するものと考えられる。
【0036】
本発明の樹脂組成物には、ポリプロピレン系樹脂(c)の他に、ポリメチルペンテン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリル−EPDM−スチレン(AES)樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリウレタン等の熱可塑性樹脂を併用しても良い。これら熱可塑性樹脂は、混練に支障がない限り特に形態に制限はなく、液状、粉体あるいはペレット状であっても良い。
【0037】
本発明の樹脂組成物を得るためには、(a)と(b)、あるいは(a)と(b)と(c)をニーダーで予備混練し、さらに3本ロールミルで顔料を分散し、単軸押出成形機でペレット化される。ここでニーダーによる予備混練の過程は省くこともできる。また、これらの3行程あるいは2工程を2軸押出成形機を用いて1行程で行う方法も可能である。
3本ロールミルや単軸押出成型機、2軸押出成形機で混練する際に温度を100℃以上に設定することによって、混練と同時に脱水が行われる。
【0038】
本発明の樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、少量の酸化防止剤、紫外線吸収剤等の安定剤や界面活性剤などの各種の添加剤を添加することもできる。また、さらに必要に応じて、充填剤、可塑剤、増粘剤、防腐剤、消泡剤、レベリング剤等の添加剤も併用することができる。
【0039】
本発明の樹脂組成物は、ほとんどすべてのポリプロピレン系樹脂の着色に供することができ、物性の向上を目的に無機フィラーやガラス繊維、有機繊維などの強化材を含むものであっても良い。例えば、従来のマスターバッチを用いた着色では実現不可能であった強度などの機械物性や耐熱性などへの影響なしに色ムラのない均一な着色が、無機充填剤や繊維強化材最大50重量%程度含むポリプロピレン系樹脂組成物100重量部に対して本発明の樹脂組成物を4重量部程度少量添加することで実現可能である。
【0040】
また、本発明の樹脂組成物は、IPN化する樹脂の組み合わせを変えることにより、ポリプロピレン系樹脂以外のポリオレフィン系樹脂にはもちろんのこと、ポリメチルペンテン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリル−EPDM−スチレン(AES)樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリウレタン等の熱可塑性樹脂にも配合することができる。
また、本発明の樹脂組成物は、滑材、印刷インキ、感熱インキ、水性インキ、トナー、塗料、接着剤、粘着剤などの用途にも使用することができる。
【0041】
【実施例】
以下、本発明を具体的に実施例に基づいて説明する。例中の%とは重量%を、部とは重量部を表す。
〔製造例1〕
フラスコ内を窒素置換した後、ポリプロピレン単独重合体「ハイポールJ800」(三井石油化学工業(株)製)218gとαオレフィン「ダイアレン124」(三菱化成(株)製)330gを加え、2時間180℃で撹拌した。その後、それぞれジ−t−ブチルパーオキサイド1.14gと無水マレイン酸16.4gを10分毎に12回添加した。添加終了後、さらにジ−t−ブチルパーオキサイドを1g加え、系の温度を180℃に保ち、さらに6時間反応させた。その後、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテル(平均分子量750)273gを添加し、3時間撹拌した。反応終了後、減圧により未反応物を除去し、内容物を熱時に取り出して冷却、固化させ、酸価120mgKOH/gのポリプロピレン系IPN樹脂を得た。
【0042】
〔製造例2〕
製造例1で得られた樹脂30.0g、水70.0g、水酸化カリウム3.70gをフラスコに仕込み、95℃で2時間撹拌し、pH8.1、固形分34.5%の白色のポリプロピレン系IPN樹脂水性分散体を得た。
【0043】
〔製造例3〕
フラスコ内を窒素置換した後、αオレフィン「ダイアレン124」(三菱化成(株)製)330gを加え、2時間150℃で撹拌した。その後、それぞれジ−t−ブチルパーオキサイド1.14gと無水マレイン酸16.4gを10分毎に12回添加した。添加終了後、さらにジ−t−ブチルパーオキサイドを1g加え、系の温度を160℃に保ち、さらに6時間反応させた。その後、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテル(平均分子量750)273gを添加し、3時間撹拌した。反応終了後、減圧により未反応物を除去し、内容物を熱時に取り出して冷却、固化させ、酸価400mgKOH/gの薄黄色のα−オレフィン無水マレイン酸共重合体を得た。
【0044】
〔製造例4〕
フラスコ内を窒素置換した後、プロピレン・エチレン共重合体ワックス「APAO UT2585」100gとプロピレン・ブテン共重合体ワックス「APAO UT2780」(宇部レキセン(株)製)100gとαオレフィン「バイバー103」(ペトロライト(株)製)833gを加え、150℃で全ての樹脂を完全に溶解した。その後、それぞれジ−t−ブチルパーオキサイド0.41gと無水マレイン酸2.70gを10分毎に12回添加した。その後、さらにジ−t−ブチルパーオキサイドを0.71g加え、系の温度を180℃に保ち、さらに4時間反応させた。反応終了後、減圧により未反応物を除去し、内容物を熱時に取り出して冷却、固化させ、酸価30.2mgKOH/gのポリプロピレン系IPN樹脂を得た。
【0045】
〔製造例5〕
製造例4で得られた樹脂20.0g、水80.0g、イソプロピルアミン6.35gをフラスコに仕込み、95℃で5時間強く混練し、pH9.5、固形分55.5%の薄黄色のポリプロピレン系IPN樹脂水性分散体を得た。
【0046】
〔製造例6〕
フラスコ内を窒素置換した後、アクリル酸変性ポリプロピレン「PB−1001」(宇部レキセン(株)製)500gとマレイン酸変性ポリプロピレン「アドマーQE810」(三井石油化学工業(株))500gを混合し、180℃で溶解したかところに、ポリプロピレングリコール(平均分子量約1000)(アルドリッチ社製)29.4gを1時間かけて加え、減圧において生成する水を除去しながら8時間反応させた。その後、内容物を熱時に取り出して冷却、固化させ、酸価40.5mgKOH/gのポリプロピレン系IPN樹脂を得た。得られた樹脂70.0gに2.60gに水酸化ナトリウムを加え120℃で溶解し混練した。そこへ200gの水を徐々に加えてゆき、その後系を95℃に保ちながら混練を5時間続け、冷却後固形分41.1%のゲル状のポリプロピレン系IPN樹脂水性分散体を得た。
【0047】
〔実施例1〕
下記2成分を3本ロールミルで混練し、スクリュー直径65mmの押出成形機でペレット化し、マスターバッチを得た。この際ストランド切れや脈流を生じることなしに順調にマスターバッチを得ることができた。
製造例2で得られたポリプロピレン系IPN樹脂水性分散体 100部
フタロシアニンブルー「リオノーブルー7110V」 35部
(東洋インキ製造(株)製)
ポリプロピレン「ハイポールJ400」(三井石油化学工業(株)製)100部に、得られたマスターバッチ3部を混合して、縦型テスト紡糸機「スピニングテスター」(富士フィルター(株)製)にて、ホッパー下230℃、混練部、ダイス部230℃にて紡糸後3倍延伸を行い、ポリプロピレン繊維を得た。何れも紡糸性、目詰まり性、延伸性共問題なく良好な分散性を示した。
【0048】
〔比較例1〕
製造例2で得られたポリプロピレン系IPN樹脂水性分散体100部の代わりに、製造例1で得られたポリプロピレン系IPN樹脂35部を用いた以外は、実施例1と同様の組成と方法でマスターバッチを得た。この際、多少の脈流を生じたが、ストランド切れを起こすことなくマスターバッチを得ることができた。続いて、実施例1と同様に紡糸を行ったが、目詰まりによる糸切れが発生した。
【0049】
〔比較例2〕
製造例2で得られたポリプロピレン系IPN樹脂水性分散体100部の代わりに、ポリプロピレン「三井ノーブレンJ−HG」(三井東圧化学(株)製)35部を用いた以外は、実施例1と同様の組成と方法でマスターバッチを得た。この際、多少の脈流を生じたが、ストランド切れを起こすことなくマスターバッチを得ることができた。続いて、実施例1と同様に紡糸を行ったが、目詰まりによる糸切れが発生した。
【0050】
〔比較例3〕
下記4成分を3本ロールミルで混練し、スクリュー直径65mmの押出成形機でペレット化し、マスターバッチを得た。この際、脈流を生じてしばしばストランド切れを生じたため、連続的にはマスターバッチを得ることはできなかった。続いて、実施例1と同様に紡糸を行ったが、目詰まりによる糸切れが発生した。
製造例3で得られたα−オレフィン無水マレイン酸共重合体 100部
ポリプロピレン単独重合体「ハイポールJ800」 25部
(三井石油化学工業(株)製)
フタロシアニンブルー「リオノーブルー7110V」 125部
(東洋インキ製造(株)製)
水 175部
【0051】
〔比較例4〕
下記3成分を3本ロールミルで混練し、スクリュー直径65mmの押出成形機でペレット化し、マスターバッチを得た。この際、ストランド切れや脈流を生じることなしに順調にマスターバッチを得ることができた。続いて、実施例1と同様に紡糸を行ったが、目詰まりによる糸切れが発生した。
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 11部
ポリプロピレンワックス「ビスコール330P」 100部
(三洋化成工業(株)製)
フタロシアニンブルー「リオノーブルー7110V」 111部
(東洋インキ製造(株)製)
【0052】
〔実施例2〕
下記4成分をヘンシェルミキサーでプレミックスし、スクリュー径50mm、L/D値38の二軸同方向回転スクリュー押出機を用い、回転数350rpm、設定温度160℃の条件で練肉・押出した後、ペレタイザーでカットして、マスターバッチを得た。
製造例5で得られたポリプロピレン系IPN樹脂水性分散体 100部
弁柄「トダカラー180ED」(戸田工業(株)製) 28部
キナクリドンレッド「ファストゲンスーパーマゼンタRE03」 83部
(大日本インキ化学工業(株)製)
ポリプロピレン「三井ノーブレンJ−HG」 111部
(三井東圧化学(株)製)
【0053】
〔比較例5〕
製造例5で得られたポリプロピレン系IPN樹脂水性分散体100部の代わりに製造例4で得られたポリプロピレン系IPN36部を用いた以外は、実施例2と同様の組成と方法でマスターバッチを得た。この際、脈流を生じてしばしばストランド切れを生じたため連続的にはマスターバッチを得ることはできなかった。続いて、実施例1と同様に紡糸を行ったが、目詰まりによる糸切れが発生した。
【0054】
〔比較例6〕
製造例5で得られたポリプロピレン系IPN樹脂水性分散体100部の代わりにエチレン・メタクリル酸共重合体アイオノマー水分散体「ケミパールS300」(三井石油化学工業(株)、固形分35.0%)103部を用いた以外は、実施例2と同様の組成と方法でマスターバッチを得た。この際、著しい脈流のためストランド切れを生じ、連続的にはマスターバッチを得ることはできなかった。続いて、実施例2と同様に紡糸を行ったが、目詰まりによる糸切れが発生した。
【0055】
〔実施例3〕
下記3成分をヘンシェルミキサーでプレミックスし、スクリュー径50mm、L/D値38の二軸同方向回転スクリュー押出機を用い、回転数350rpm、設定温度160℃の条件で練肉・押出した後、ペレタイザーでカットして、マスターバッチを得た。
製造例2で得られたポリプロピレン系IPN樹脂水性分散体 48部
製造例6で得られたポリプロピレン系IPN樹脂水性分散体 100部
酸化チタン「タイペイクCR80」(石原産業(株)製) 8部
縮合アゾイエロー「クロモフタルイエローGR」 16部
(チバガイギー(株)製)
【0056】
〔比較例7〕
製造例2で得られたポリプロピレン系IPN樹脂水性分散体48部および製造例6で得られたポリプロピレン系IPN樹脂水性分散体100部を熱分解ポリエチレンワックス「サンワックス131P」(三洋化成工業(株)製)58部に代えた以外は、実施例3と同様の組成と方法でマスターバッチを得た。この際、押し出し成形機内で材料がスクリュー難い込まないために、ストランドが押し出されないことがしばしば起こり、また著しい脈流のためストランド切れを生じ、連続的にはマスターバッチを得ることはできなかった。続いて、実施例3と同様に紡糸を行ったが、目詰まりによる糸切れが発生した。
【0057】
実施例および比較例で得られたマスターバッチ3部を、タルク20%を含有するポリプロピレン組成物100部と混合して、射出成形機にて背圧0kg/cm2でプレートに成形し、機械的物性の保持率、表面の色ムラ、顔料の分散度、マスターバッチの生産性を評価した。結果を表1に示す。
【表1】
【0058】
*1 無着色樹脂の機械的物性(100%)に対する、マスターバッチで着色された樹脂の機械的物性の保持率。
○: 96%以上
△: 90〜96%
×: 90%未満
*2 成型品表面の色ムラを目視で評価した。
○:色むらなし
△:色むら少々あり
×:色むら顕著
【0059】
*3 着色樹脂100部とマスターバッチ3部を配合した混練物をプレス温度170℃の条件下でプレス加工し、0.1mm厚のフィルムを得た。得られたフィルム中の粗大顔料の粒子数を、Luzex450画像処理機(東洋インキ(株)製)で測定した。
5: 500個/cm2 以下
4: 500〜1000個/cm2
3: 1000〜7000個/cm2
2: 7000〜27000個/cm2
1: 27000個/cm2 以上
*4 スクリュー直径65mmの押出成形機によりマスターバッチの生産性を判断した。
○: 良好
×: 不良
【0060】
【発明の効果】
本発明の樹脂組成物は、顔料含有率が非常に高いにもかかわらず、ポリプロピレン系樹脂に対する顔料分散性に優れており、高度な顔料分散が要求される繊維製品の着色において、その着色力および加工性に大きな効果を発揮する。また、本発明の樹脂組成物は、従来、マスターバッチによる均一な着色が困難であり、機械的物性や耐熱性などの物性が特に重視される無機フィラーや繊維強化材を高い割合で含有するポリプロピレン系樹脂組成物の着色に対しても極めて有効であり、色ムラのない着色を可能とする。
Claims (4)
- ポリプロピレン系IPN樹脂水性分散体および/またはポリプロピレン系IPN樹脂水溶液(a)と顔料(b)を混練、脱水して得られる樹脂組成物であって、
(a)がプロピレン単独重合体と、
αオレフィンと、
無水マレイン酸とを反応して得られる
ポリプロピレン系IPN樹脂水性分散体および/またはポリプロピレン系IPN樹脂水溶液であることを特徴とする樹脂組成物。 - ポリプロピレン系IPN樹脂水性分散体および/またはポリプロピレン系IPN樹脂水溶液(a)と顔料(b)を混練、脱水して得られる樹脂組成物であって、
(a)がプロピレン・エチレン共重合体ワックスと、
プロピレン・ブテン共重合体ワックスと、
αオレフィンと、
無水マレイン酸とを反応して得られる
ポリプロピレン系IPN樹脂水性分散体および/またはポリプロピレン系IPN樹脂水溶液であることを特徴とする樹脂組成物。 - ポリプロピレン系IPN樹脂水性分散体および/またはポリプロピレン系IPN樹脂水溶液(a)と顔料(b)を混練、脱水して得られる樹脂組成物であって、
(a)がアクリル変性ポリプロピレンと、
マレイン酸変性ポリプロピレンと、
ポリプロピレングリコールとを反応して得られる
ポリプロピレン系IPN樹脂水性分散体および/またはポリプロピレン系IPN樹脂水溶液であることを特徴とする樹脂組成物。 - ポリプロピレン系IPN樹脂水性分散体および/またはポリプロピレン系IPN樹脂水溶液(a)と顔料(b)に、さらにポリプロピレン系樹脂(c)を加え、混練、脱水して得られることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の樹脂組成物。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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EP3067372A4 (en) * | 2013-11-05 | 2017-06-21 | Mitsui Chemicals, Inc. | Modified propylene-(alpha-olefin) copolymer, method for producing same, coating material comprising same, resin composition for molding use, and hot-melt composition |
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1996
- 1996-01-22 JP JP00796696A patent/JP3658827B2/ja not_active Expired - Fee Related
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EP3067372A4 (en) * | 2013-11-05 | 2017-06-21 | Mitsui Chemicals, Inc. | Modified propylene-(alpha-olefin) copolymer, method for producing same, coating material comprising same, resin composition for molding use, and hot-melt composition |
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