JP3656381B2 - 回転電気機械の円筒形回転子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、タービン発電機などの回転電気機械の円筒形回転子に係わり、界磁巻線に対する冷却性能を向上するべく改良されたその構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
円筒形回転子を持つ回転電気機械は各種の用途に用いられているが、大容量のものとしてはタービン発電機が著名である。以下に、タービン発電機に代表させて、従来例の回転電気機械の円筒形回転子の説明を行うことにするが、まずは、一般例の円筒形回転子を持つ回転電気機械の冷却に関する構造を主体として、その構成の概要について図面を用いて説明する。図7は、一般例の回転電気機械の主要部を模式化して示すその縦断面図であり、図8は、図7に示した回転電気機械の図7におけるP矢視図であり、図9は、図8におけるA−C断面図であり、図10は、図8におけるB−C断面図である。また図11は、図7におけるQ部の一部破断した詳細図である。
【0003】
図7〜図11において、9は、円筒形回転子8と、固定子7と、ケーシング6と、周知の軸流ファンであるファン69,69と、冷却装置93とを備えた円筒形回転子を持つ一般例の2極の回転電気機械である。円筒形回転子8の外周面と固定子7の内周面と間にはギャップ91が介在している。円筒形回転子8は、回転軸部81と、回転軸部81と一体に構成されると共に,回転軸部81と同心の円形の外径を持つ回転子鉄心部82と、2極機に対応した1対の界磁巻線5,5と、保持体83,83とを備えており、ケーシング6および図示しない軸受部を介して固定子7に回転自在に支持されている。
【0004】
それぞれの界磁巻線5は、平角状の導電材である平角銅線を巻回し、回転子鉄心部82の外周の円周方向に沿わせて形成されている図示しない複数のコイルスロットに、それぞれのコイルが異なるコイルスロットに装填されるようにして複数のコイルで構成されている。界磁巻線5の各コイルのコイルスロットに収納されている部位には、回転軸部81の軸長方向に分布して多数の通気孔88が形成されている。そうして、上述の構造を持つ1対の界磁巻線5,5は、回転軸部81の中心軸線X−X(図7中に1点鎖線で示す)に関して互いに線対称の関係となる基本構成とされている。
【0005】
界磁巻線5のコイルスロット内に収納されないことで回転子鉄心部82の両端部から突き出される状態に配置される部位である端部89,89は、保持体83によってその少なくとも外周部が保持をされ、円筒形回転子8が回転することで発生される強大な遠心力によって変形をしないよう保護されている。保持体83は、金属材を用い高い剛性を持たせて形成されており、この事例の場合には、界磁巻線5のそれぞれの端部89をその外周部で保持する円筒状部831と、ファン69側の端部で円筒状部831に結合される円環状部832とを備えている。
【0006】
それぞれのファン69は、円筒形回転子8,固定子7を冷却する冷媒ガス99を回転電気機械9内に循環させるために設けられており、この事例の場合には、図示の如く界磁巻線5の両端部89の回転軸部81の軸長方向に関する外側の位置のそれぞれに、回転軸部81に嵌め込まれて配設されている。固定子7は、周知の如く、多数の薄板製の鉄心板を積層してなり,回転軸部81と同心の円形の内径を持つ固定子鉄心71と、固定子鉄心71に形成されている図示しない複数のコイルスロットに装填された固定子巻線72とを備えている。そうして、固定子鉄心71の鉄心板の積層方向の要所には、冷媒ガス99を通流させるための通気ダクト73の複数個が形成されている。
【0007】
ケーシング6は、冷媒ガス99の通流路を備えているので、次にこれについて説明をする。まず、この事例の場合には、ケーシング6は、固定子鉄心71の外周面に外接させて合計4枚の仕切板61,62が固定子鉄心71の鉄心板の積層方向に間隔を置いて図示の如くに設けられている。外側の仕切板61と内側の仕切板62とを接続するようにして複数の円筒状の連絡ダクト63が配置されている。仕切板61と仕切板62とによって区切られたそれぞれの空間は排気ダクト64,64であり、両側を仕切板62で区切られた空間は中央給気ダクト65である。また、ケーシング6の両端部には、それぞれのファン69に対応させて吸気ダクト66,66が備えられている。
【0008】
冷却装置93は、円筒形回転子8,固定子7を冷却することで高温となった冷媒ガス99から熱を除去する周知の冷却器94と、冷却器94と排気ダクト64,64とを接続する排気風胴95と、冷却器94と吸気ダクト66,66とを接続する吸気風胴96,96とを備えている。
一般例の回転電気機械9は上述の如くに構成されているので、それぞれのファン69で加圧されたそれぞれの冷媒ガス99の流れは、まず、保持体83が配置されている付近で大きく3つに分岐される。すなわち、それぞれの保持体83の外周部を経て両端部からギャップ91に直接流入する冷媒ガス流99Aと、固定子巻線72の両端部のそれぞれを冷却した後に連絡ダクト63を経て中央給気ダクト65に流入する冷媒ガス流99Bと、保持体83および端部89の内周面と,回転軸部81の外周面との間の空間のそれぞれから円筒形回転子8に流入する冷媒ガス流99Cとである。
【0009】
冷媒ガス流99Cは、界磁巻線5の端部89を冷却しつつ回転子鉄心部82の端部に到り、冷媒ガス流99Cの内の多くの部分はこの端部からコイルスロット部の底部に流入し、界磁巻線5と回転子鉄心部82を冷却した後、通気孔88からギャップ91に順次流入する。冷媒ガス流99Bは、中央給気ダクト65に連通されている通気ダクト73中を通流し、固定子鉄心71および固定子巻線72を冷却しつつ回転子鉄心部82の積層方向の中央部からギャップ91に流入する。このようにして、ギャップ91で合流されたそれぞれの冷媒ガス99は、排気ダクト64,64に連通している通気ダクト73中を通流し、固定子鉄心71および固定子巻線72を冷却しつつ排気ダクト64,64に到る。
【0010】
排気ダクト64,64に到達した冷媒ガス99は、円筒形回転子8,固定子7を冷却したので比較的に高温になっているが、この高温の冷媒ガス99は、排気風胴95を経て冷却器94に流入して除熱をされる。冷却器94で除熱をされて再び低温に戻った冷媒ガス99は、吸気風胴96,96を経てファン69に流入されるのである。
【0011】
次に、従来例の回転電気機械の円筒形回転子を図12〜図18を用いて説明する。なお、図12〜図18を用いて行う説明においては、図7〜図11に示した一般例の回転電気機械と同一部分には同じ符号を付し、その説明を省略する。また以後の説明に用いる図中には、図7〜図11で付した符号については、極力代表的な符号のみを記すようにしている。
【0012】
ここで、図12は、図7におけるR部に対応した部位における従来例の円筒形回転子の主要部を示すその斜視図であり、図13は、図11におけるS部に対応した部位における従来例の円筒形回転子を示すその部分断面図である。図14は、図13におけるT部の断面図であり、図15は、界磁巻線と回転子鉄心の端部を平面状に展開して示す図13におけるK矢視図である。また図16は、図12におけるV−Vから見たコイルスロットとその周辺部の断面図であり、図17は、図12におけるW−W断面図であり、図18は、図17におけるJ矢視図である。なお、図12は保持体および保持体下絶縁体を取り除いた状態として図示し、図15は保持体,保持体下絶縁体および楔を取り除いた状態として図示し、また、図13は、素線間絶縁体を省略して図示している。
【0013】
図12〜図18において、8Aは、回転軸部81と、回転子鉄心部82Aと、1対の界磁巻線5A,5Aと、複数の間隔片57と、保持体下絶縁体58,58と、複数の楔59と、保持体83,83等とを備えた2極の円筒形回転子である。界磁巻線5Aは、それぞれの磁極毎に平角銅線が用いられた素線51が複数回巻回された複数(この事例の場合には6個)のコイル52で構成されており、それぞれのコイル52は、周知の鞍形コイルとして形成されている。鞍形コイルであるそれぞれのコイル52の直線状部の中央部分は、回転子鉄心部82に形成された異なるコイルスロット84に装填をされ、また、コイル52の円弧状部は、界磁巻線5Aの端部89の主要部分を構成している。
【0014】
端部89におけるコイル52の相互間には間隔片57が配設されて、円筒形回転子8Aの加減速時に発生する加速度などに対応して端部89に働く強大な応力に対処している。この間隔片57は、電気絶縁材を用いてコイル52の高さ方向寸法Hとほぼ同等の高さ方向寸法に形成されている。この間隔片57によって、端部89におけるコイル52を構成する素線51の側面には、冷媒ガス99が通流される端部通流路56が確保されることになる。また、端部89の内周面と回転軸部81の外周面とに挟まれた空間は、冷媒ガス流99Cが流入される流入室55X,55Xである。
【0015】
保持体下絶縁体58は、電気絶縁材を用いて円筒状に形成され、端部89におけるコイル52の外周側と、保持体83の円筒状部831の内周側との間に配置されている。この事例の場合には、保持体83が回転子鉄心部82の端部に焼嵌めによって装着されているので、保持体下絶縁体58は、ガラス繊維強化エポキシ樹脂材を主体としながらも、焼嵌め時の高温に耐える配慮が施されるなどした構成とされている。保持体下絶縁体58は、したがって熱の不良導体として取扱う必要がある。楔59は、熱伝導性の良好な金属製であり、コイルスロット84に装填をされた部分の界磁巻線5Aが、円筒形回転子8Aが回転することで発生される強大な遠心力によってコイルスロット84から飛び出さないようにするなどのために、それぞれのコイルスロット84の最外周部の付近に装着されている(図16を参照)。
【0016】
楔59には回転軸部81の軸長方向に沿って多数の円形の貫通孔59aが形成されており、それぞれの貫通孔59aは、素線51に形成されている後記する貫通孔51aなどを介して溝部通流路84aに連通されている。この溝部通流路84aは、各コイルスロット84の底部に回転軸部81の軸長方向に沿って形成されており、溝部通流路84aの両端部はそれぞれ流入室55Xに連通されている。なお、一般例の回転電気機械9に関する前述説明で述べた通気孔88は、従来例の円筒形回転子8Aにおいては、貫通孔59aとこれに対応してコイル52などに形成されている後記する諸貫通孔によって構成されていることになる。
【0017】
回転子鉄心部82Aは、一般例の前記回転子鉄心部82に対して、1対の界磁巻線5A,5Aが持つコイル52の個数に対応した個数と位置とに従う複数のコイルスロット84と、同一のハーフ磁極に属すると共に互いに隣接するコイルスロット84の相互間の部位である複数の歯部85と、複数の排気溝86とが図示の如くに形成されている。各コイルスロット84の底部には断付部84bが形成されており、この断付部84bの下部に前記した溝部通流路84aが一体に形成されている。また、最外,最内側のコイル52が装填されるコイルスロット84の反歯部85側を形成する回転子鉄心部82Aの部位,および各歯部85のそれぞれの軸長方向の両端部には、排気路85aが形成されている。
【0018】
ここで、図16〜図18を主として用いて、界磁巻線5Aのコイルスロット84内の電気絶縁構成および冷媒ガス99の通流路について更に説明する。それぞれのコイルスロット84内には、まず、回転子鉄心部82Aとコイル52との間の電気絶縁用として、電気絶縁材をL字状に形成した溝部絶縁体581の1対が図示のように装填されている。この溝部絶縁体581は、L字状をなすその底辺部分を断付部84b上に、その先端部の相互間に間隔幅W581 を持つ間隙部581aが形成されるようにして装填される。そうしてコイル52は、その下面と両側面とを溝部絶縁体581によって電気絶縁されるようにして、コイルスロット84に装填されている。
【0019】
このコイル52の上側には、平板状の電気絶縁材(例えば、エポキシ樹脂含浸ガラス繊維板材)製のF種絶縁の楔下絶縁体54を介して、前記楔59が装着されることになる。コイル52を構成する素線51の相互間には、素線51の相互間(この部位に加わる電圧は数〔V〕のオーダーであることが一般である)を電気絶縁するためのシート状の電気絶縁材(例えば、エポキシ樹脂の塗布や含浸の処理が施されたガラス繊維シート材)製のF種絶縁の素線間絶縁体53が介挿されている。そうして、素線間絶縁体53,楔下絶縁体54および溝部絶縁体581はいずれも、回転子鉄心部82Aの両端部からやや突き出される長さ寸法に設定されている。
【0020】
また、それぞれのコイル52を構成する素線51のコイルスロット84内に収納されている部分には、図示の如くに、回転軸部81の軸長方向に沿って冷媒ガス99(後記する冷媒ガス流99Z)を通流させるための複数の貫通孔51aが形成されている。それぞれの貫通孔51aは、冷媒ガス99のための広い通流面積を確保するために、この事例の場合には、回転軸部81の軸長方向に沿って長い小判形の形状にされている。また、素線間絶縁体53および楔下絶縁体54のそれぞれにも、貫通孔51aに対向する部位に、貫通孔51aとほぼ同一形状の貫通孔53aおよび54aが形成されている。そうして、楔59に形成された貫通孔59aは、図18に示すように、前記諸貫通孔51a,53aおよび54aに対向する部位に形成されている。
【0021】
さらに、図12〜図15を主として用いて、界磁巻線5Aの端部89における電気絶縁構成および冷媒ガス99の通流路について説明する。端部89部分のコイル52を構成する素線51の相互間には、この相互間を電気絶縁するためのシート状の電気絶縁材製の端部用の素線間絶縁体53Aが介挿されている。素線間絶縁体53Aは、コイルスロット84内用に用いられている素線間絶縁体53と同一のシート状の電気絶縁材が用いられている。
【0022】
この素線間絶縁体53Aは、端部89部分のコイル52の平面形状に合わせた形状に形成され、その回転子鉄心部82A側の端部は、コイルスロット内用の素線間絶縁体53と重ね合わされるように形状・寸法が設定されている。また、端部89には前述したように間隔片57が配置されることで、コイル52の相互間には冷媒ガス99の端部通流路56が形成されている。この端部通流路56は、界磁巻線5Aの端部89の内周側に開口をされていることで流入室55Xに連通するように形成されている。
【0023】
従来例の円筒形回転子8Aは上述の如くに構成されているので、冷媒ガス流99Cの通流経路は次記のように形成される。すなわち、それぞれの流入室55Xに流入した冷媒ガス流99Cは、流入室55Xを通過する過程で後記する方法によって界磁巻線5Aの端部89を冷却したうえで、その多くの部分(区分をする必要がある場合には、以降、冷媒ガス流99Zと称する)は溝部通流路84aに流入する。
【0024】
すなわち、冷媒ガス流99Zは、流入室55X→溝部通流路84a→通気孔88(間隙部581aと、貫通孔51a,53aおよび54aと、貫通孔59a)を順次経過した後にギャップ(例えば、前述ギャップ91)に流入し、この間、界磁巻線5Aの直線状部のコイルスロット84に装填されている部位と、回転子鉄心部82Aとを冷却する。また、冷媒ガス流99Z分を除く冷媒ガス流99Cは、排気溝86内あるいは排気路85a内を通流した後にギャップに流入し、この間、回転子鉄心部82Aの両端部を冷却している。
【0025】
そうして、流入室55Xに流入した冷媒ガス流99Cは、まず、界磁巻線5Aの端部89が形成されている部位を通流することになる。その際、冷媒ガス流99Cの一部(区分をする必要がある場合には、以降、冷媒ガス流99Yと称する)は、流入室55Xに連通している端部通流路56内に流入する。端部89のコイル52の側面は、冷媒ガス流99Yによって冷却をされるが、この冷媒ガス流99Yは、コイル52を冷却する過程でその温度が上昇し、これに伴って冷媒ガス99Yに密度差が生じて、円筒形回転子8Aの回転によって冷媒ガス99Yに作用する遠心力の大きさに、冷媒ガス99の温度差に対応する差異が発生する。
【0026】
その結果、外周側が保持体83の円筒状部831で塞がれた端部通流路56では、図14に示すように、流入した相対的に低温の冷媒ガス流99Yは、相対的に大きな遠心力が働くことで、外周に向かって径方向に流れる。また、コイル52の側面に接する冷媒ガス99は、コイル52から熱を除去することで温度が上昇して働く遠心力が相対的に小さくなるので、端部通流路56に流入した低温の冷媒ガス99に押されて、内周に向かって径方向に流れる。
【0027】
すなわち、端部通流路56に流入した冷媒ガス流99Yには、まず外周に向かって径方向に流れて端部89の外周部で反転し、続いてコイル52の側面に沿い内周に向かって径方向に流れる対流が形成されることになる。そうして冷媒ガス流99Yは、前記通流過程においてコイル52から熱を除去した上で、端部通流路56から流れ出ることになる。端部通流路56内を上記のように通流させる冷媒ガス流99Yの通流方式は、サーモサイフォン方式と呼ばれている。界磁巻線5Aの端部89をサーモサイフォン方式によってジグザグ状に通流する冷媒ガス流99Yは、コイル52の側面に沿って通流されることになるので、端部89は効果的に冷却されることになる。
【0028】
【発明が解決しようとする課題】
前述した従来技術による回転電気機械の円筒形回転子8Aにおいては、端部89を含む界磁巻線5Aを効果的に冷却することができているがまだ後記するような理由で界磁巻線に部分的に高温となる個所が残存しており、その解決が望まれている。
【0029】
ところで、電気機械の耐熱寿命は、周知の如くに巻線の電気絶縁のために採用されている電気絶縁材の耐熱寿命特性によって決められるものであるので、界磁巻線の最高温度部の温度値に支配されることになる。最高温度部の温度値が相対的に高いと言うことは、界磁巻線の温度が使用されている電気絶縁材の許容温度を越えないように界磁巻線の電流密度を設定しなければならないと言うことであり、結果として円筒形回転子の、したがって回転電気機械の体格の大形化を招いたり、または、回転電気機械の定格出力の低減を余儀なくされるのである。そうして、界磁巻線に部分的に高温となる個所が存在している主な理由は次記するとおりである。
【0030】
▲1▼従来技術の円筒形回転子が備える界磁巻線5Aを構成するコイル52は、上述したとおりに、平角銅線である素線51とエポキシ樹脂処理ガラス繊維シート材製などの素線間絶縁体53が交互に積層されて作製されている。素線51は約390〔W/mK〕の高い熱伝導率λc を持つのに対して、素線間絶縁体53に用いられるエポキシ樹脂処理ガラス繊維シート材の熱伝導率λr は0.2〜0.3〔W/mK〕程度と、熱の不良導体である。例えば、素線51の厚さ寸法tc を5〔mm〕,熱伝導率λc を390〔W/mK〕とし、素線間絶縁体53の厚さ寸法tr を0.4〔mm〕,熱伝導率λr を0.3〔W/mK〕とした場合の、前記積層方向の総合された熱伝導率λT を式2を用いて求めると、λT ≒4〔W/mK〕であり、λc の約1/100と極めて悪い熱伝導特性となっていることが分かる。
【0031】
【数2】
このために、従来技術の円筒形回転子が備える界磁巻線のコイルスロット84に収納される部位の素線51には貫通孔51aを形成し、溝部通流路84aを介して通気孔(諸貫通孔51a,53a,54aおよび59aで構成される)中を通流する冷媒ガス流99Zによって界磁巻線5Aを強制通風方式によって冷却することが行われているのである。
【0032】
発明者らが調査をしたところでは、各コイル52を構成する素線51の温度は、コイル52における冷媒ガス流99Zの流入部である最下部の素線51で最も低温であり、以降、冷媒ガス流99Zに関して下流になる部位の素線51では、その温度が高くなっている(後記する図2に点線で示したグラフを参照)。すなわち、冷媒ガス流99Zによる強制通風冷却を行っても、従来技術の界磁巻線では、その平均温度が低いのにもかかわらず、その最高温度部の温度値は、採用されている電気絶縁材の許容温度に到達してしまうことになるのである。
【0033】
▲2▼また、図2に点線で示した前記グラフを視察すると、各コイル52を構成する素線51の温度分布は、最上部の素線51の付近では、最上部に近くなるほどその温度は低下している。これは、コイル52は、通気孔(貫通孔51a等で構成された通気孔88)内を通流する冷媒ガス流99Zで冷却されることに加えて、ギャップ(例えば、前述ギャップ91)内を通流する冷媒ガス流99(ただし、タービン発電機では、ギャップ内を通流する冷媒ガス流99の平均温度は、溝部通流路84a内を通流する冷媒ガス流99Zの平均温度よりも高いことが一般である)によっても冷却され得ることを示している。
【0034】
しかしながら、コイル52からギャップを通流する冷媒ガス流99に伝達される熱は、コイル52内を素線51の積層方向にギャップに向かって熱伝導により貫流した上で、楔下絶縁体54を貫流する熱であるので、楔下絶縁体54の熱伝導率値の如何が、素線51の最高温度部の温度の低減に影響を与え得ることになる。ところで、楔下絶縁体54は、その厚さ寸法は約10〔mm〕であり、その熱伝導率値は0.2〜0.3〔W/mK〕程度であるので、式2を用いて求めた総合された熱伝導率値は、約0.45〔W/mK〕となり、上述した素線51と素線間絶縁体53とによる総合された熱伝導率値λT よりもさらに小さい値である。すなわち、楔下絶縁体54を介するコイル52の冷却には、厳しい制約が存在していることが分かる。
【0035】
▲3▼さらに、従来技術の円筒形回転子が備える界磁巻線の端部89の部位では、界磁巻線の各コイル52は、端部通流路56内を通流する冷媒ガス流99Yによって冷却されると共に、コイル52中を素線51の積層方向にその内周面(冷媒ガス流99Cに直接に接している)に向かう熱伝導によっても冷却をされている。発明者らが調査をしたところでは、このために、各コイル52を構成する素線51の温度は、冷媒ガス流99Cに接するコイル52の最内周部の素線51で最も低温であり、最外周部の素線51で最も高温となっている(後記する図6に点線で示したグラフを参照)。すなわち、従来技術の界磁巻線では、その端部においても、平均温度が低いにもかかわらず、最高温度部の温度値は採用されている電気絶縁材の許容温度に到達してしまうことになるのである。
【0036】
このような界磁巻線の端部の最高温度部の温度値を低減しようとする円筒形回転子の構成が、同じ出願人より出願された回転電機の回転子巻線頭部(ここで言う界磁巻線の端部のこと)冷却構造として、特開平7−75272号公報により公知となっている。この構成は、界磁巻線の端部の最高温度部の温度値を低減することに関して有効であるが、しかしながら、界磁巻線の端部のコイルの相互間に配置されるスペーサの構造が複雑化するため、円筒形回転子の製造原価が上昇してしまうとの新たな問題点が発生している。
【0037】
この発明は、前述の従来技術の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、界磁巻線の冷却性能が向上をされた回転電気機械の円筒形回転子を提供することにある。
【0038】
【課題を解決するための手段】
この発明では前述の目的は、1)回転軸部と、回転軸部とほぼ同心の円形状として外周が形成されると共に外周の円周方向に沿わせて形成された複数のコイルスロットを有する回転子鉄心部と、平角状の導電材を素線として用いて巻回されてそれぞれのコイルスロットに装填された複数のコイルからなる一対または複数対の界磁巻線とを備え、前記素線の相互間には素線相互間の電気絶縁を保持するためのシート状の素線間絶縁体が介挿されてなる回転電気機械の円筒形回転子において、素線間絶縁体に粒状で電気絶縁性の無機質充填材を混入することで熱伝導性を向上させた高い熱伝導特性を持つ電気絶縁材を用いることで素線と素線間絶縁体とを総合した下記式1に基づく総合熱伝導率値λT を増大させた構成とすること、または、
【0039】
【数3】
2)回転軸部と、回転軸部とほぼ同心の円形状として外周が形成されると共に外周の円周方向に沿わせて形成された複数のコイルスロットを有する回転子鉄心部と、平角状の導電材を素線として用いて巻回されてそれぞれのコイルスロットに装填された複数のコイルからなる一対または複数対の界磁巻線とを備え、前記素線の相互間には素線相互間の電気絶縁を保持するためのシート状の素線間絶縁体が介挿されてなり、それぞれのコイルスロットの最外周部の付近には円筒形回転子が回転することで前記コイルに生じる遠心力に対処するための楔が装填されてなり、それぞれのコイルスロット内に収納された前記コイルの最外周に位置する素線と前記楔との間にはコイルと楔との間の電気絶縁を保持するための平板状の楔下絶縁体が配設されてなる回転電気機械の円筒形回転子において、楔下絶縁体に粒状で電気絶縁性の無機質充填材を混入することで熱伝導性を向上させた高い熱伝導特性を持つ電気絶縁材を用いることで素線と楔下絶縁体とを総合した前記式1に基づく総合熱伝導率値λT を増大させた構成とすること、さらにまたは、
3)回転軸部と、回転軸部とほぼ同心の円形状として外周が形成されると共に外周の円周方向に沿わせて形成された複数のコイルスロットを有する回転子鉄心部と、平角状の導電材を素線として用いて巻回されてそれぞれのコイルスロットに装填された複数のコイルからなる一対または複数対の界磁巻線とを備え、コイルスロット内に収納されていない部分である界磁巻線のそれぞれの端部は、その外周部を円筒状をして高い剛性を持つ保持体で覆われることで円筒形回転子の回転に伴って働く遠心力に対して保持されてなり、前記素線の相互間には素線相互間の電気絶縁を保持するためのシート状の素線間絶縁体が介挿されてなる回転電気機械の円筒形回転子において、素線間絶縁体は、前記端部のコイルに用いられる端部用の素線間絶縁体と、コイルスロットに装填されるコイルに用いられるコイルスロット内用の素線間絶縁体とに分割されて形成されてなり、端部用の素線間絶縁体に粒状で電気絶縁性の無機質充填材を混入することで熱伝導性を向上させた高い熱伝導特性を持つ電気絶縁材を用いることで素線と素線間絶縁体とを総合した前記式1に基づく総合熱伝導率値λT を増大させた構成とすること、により達成される。
【0040】
【発明の実施の形態】
以下この発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。なお、この項の以下の説明においては、図12〜図18に示した従来例の回転電気機械の円筒形回転子と同一部分には同じ符号を付し、その説明を省略する。また、以後の説明に用いる図中には、図12〜図18で付した符号については、極力代表的な符号のみを記すようにしている。
【0041】
図1は、図16と同等部位におけるこの発明の実施の形態の一例による回転電気機械の円筒形回転子のコイルスロットとその周辺部の断面図であり、図2は、この発明になる円筒形回転子のコイルのコイルスロットに装填された部位の温度分布を、従来例の場合と比較して示すグラフである。なお、図2には、コイルスロット内の素線の位置関係を明瞭にするために、図1に示したコイルの半裁図を参考までに併記した。
【0042】
図1において、1は、図12〜図18に示した従来例による円筒形回転子8Aに対して、素線間絶縁体53を持つ界磁巻線5Aに替えて、素線間絶縁体21を持つ界磁巻線2を用いるようにした円筒形回転子である。素線間絶縁体21に採用されるシート状の電気絶縁材としては、基材に従来例と同様のガラスクロス材を用い、この基材を処理するエポキシ樹脂材には、この発明による特長として、粒状で電気絶縁性の無機質充填材を混入することで熱伝導性の向上が図られている。この粒状の無機質充填材としては、例えば、粒径が0.1〜数十〔μm〕程度の、アルミナ(Al2 O3 ),窒化アルミニウム(AlN),窒化ほう素(BN),酸化チタン(TiO2 ),炭化けい素(SiC),マグネシア(MgO),窒化けい素(Si3 N4 ),ベリリア(BeO)などである。
【0043】
回転電気機械に用いられるこの種の電気絶縁材は、ABB(スウエーデン国)から出願された特開昭63−110929号公報などによりすでに公知となっているが、これ等の公知例では、比較的に高い電圧下で使用される主絶縁層(対地絶縁層)を主たる使用対象としており、熱伝導性と共に、耐電圧性能や部分放電に対する耐性などに配慮が払われたものとなっている。
【0044】
発明者らは、従来技術によるコイル52のコイルスロット84に装填された部位における温度分布の調査を行い、図2に点線で示したようなグラフを得た。発明者は、このグラフを視察することなどにより、コイルは、コイル中を素線51の積層方向に熱伝達する熱伝導を合わせ用いることによって有効に冷却できるとのヒントを得た。そこで、回転電気機械の円筒形回転子およびこの円筒形回転子の温度に比較的に強い関連を持つギャップ(例えば、ギャップ91)とを総合した電算モデルを、周知の電算モデルと同様に多数のセグメントによるメッシュ構造を持つものとして作成した。そうしてこの電算モデルを用いて、コイルのコイルスロットに装填された部位の温度分布の電算解析を実施し、表1に例示するような解析結果を得た。
【0045】
表1は、素線間絶縁体の熱伝導率値のみを変えて、コイルの最高温度部の温度上昇値,平均温度値を電算解析によって求めた結果を例示している。表1に示した解析結果は、素線間絶縁体の熱伝導率値を向上させることによって、コイルは、通気孔(貫通孔51a等で構成された通気孔88)内を通流する冷媒ガス流99Zで冷却されることに加えて、溝部通流路84a内を通流する冷媒ガス流99Zによっても有効に冷却されることを示している。コイルから溝部通流路84a内を通流する冷媒ガス流99Zに伝達される熱は、コイル内を素線51の積層方向に熱伝導によって貫流する熱であるので、素線間絶縁体の熱伝導率値の向上が有効になるのである。
【0046】
【表1】
そうして、F種絶縁材等では、良く知られているように、最高温度値を10〔℃〕低下させるとその耐熱寿命は倍増される関係を持っている。そこで、表1に示した電算解析結果を利用し、かつ、F種絶縁材の許容最高温度上昇値を設計上の安全などを加味して110〔℃〕に設定して、素線間絶縁体21に必要な熱伝導率値λr を求める。素線間絶縁体21に持たせるのに好ましいλr 値は、最高温度値を少なくとも5〔℃〕低下することができるものとすると、このλr 値は表1から従来例のλr 値の約2.7倍であるとして求まる。
【0047】
発明者らは、素線間絶縁体21に用いるシート状のF種絶縁材として、基材に従来例と同様のガラスクロス材を用い、この基材を処理するエポキシ樹脂材に,粒状のアルミナと粒状の窒化アルミニウムとをほぼ等量混合した充填材の60〔容積%〕とエポキシ樹脂材の40〔容積%〕との混合物を用いて、厚さ寸法tr が0.4〔mm〕のシート状のF種絶縁材を採用した。このシート状のF種絶縁材の熱伝導率λr は、約1.5〔W/mK〕であり、従来例の素線間絶縁体53(熱伝導率λr は0.3〔W/mK〕)に対して5倍も大きい値が得られている。このシート状のF種絶縁材を素線間絶縁体21に適用した場合には、この発明になる界磁巻線2のコイルスロット84に装填された部位の最高温度部の温度上昇値は約100〔℃〕であり、その場合のコイルスロット84に装填された部位の界磁巻線2の素線51の積層方向の温度分布は、図2に実線で示したとおりである。
【0048】
なお、素線間絶縁体21に用いることができるシート状のF種絶縁材としては、充填材に窒化ほう素(BN),酸化チタン(TiO2 ),炭化けい素(SiC),マグネシア(MgO),窒化けい素(Si3 N4 ),ベリリア(BeO)などの適宜の電気絶縁性の無機質粒体の採用が可能である。また、基材としては、熱伝導性を向上させたガラス繊維を用いたもの、さらには、合成樹脂製フィルムを用いることも可能である。さらに、高い熱伝導性を持つシート状の電気絶縁材を素線間絶縁体への適用が、F種絶縁の円筒形回転子に限定されるものではないことは、言うまでも無いことである。
【0049】
次に、シート状のF種絶縁材の厚さ寸法tr や熱伝導率λr の値が変化された場合について述べる。まず、前記式2の分母と分子とを「λc ・λr ・tc 」で割ることにより、下記式4が得られる。同一の円筒形回転子の場合においてはλc とtc は実質的に不変であり、かつ、tc >tr であることを前提として式4を視察すると、素線間絶縁体21の厚さ寸法tr の変更に対しては、例えば、λr を同率で増大することによって、λT をほぼ不変にできることが分かる。すなわち、素線間絶縁体21に関しては、tr 値とλr 値とを「tr /λr 」として一括して取り扱うことで、tr 値やλr 値の変化の影響を容易に見定めることができる。なお、tr 値,λr 値が変化した場合のより正確なλT 値は、式4を用いて算出できる。
【0050】
【数4】
次に、図3,図4を用いて、この発明の実施の形態の異なる例による回転電気機械の円筒形回転子を説明する。ここで、図3は、図16と同等部位におけるこの発明の実施の形態の異なる例による回転電気機械の円筒形回転子のコイルスロットとその周辺部の断面図であり、図4は、この発明になる円筒形回転子のコイルのコイルスロットに装填された部位の温度分布を、従来例の場合と比較して示すグラフである。なお、図4には、コイルスロット内の素線の位置関係を明瞭にするために、図3に示したコイルの半裁図を参考までに併記した。
【0051】
図3において、1Aは、図12〜図18に示した従来例による円筒形回転子8Aに対して、楔下絶縁体54を持つ界磁巻線5Aに替えて、楔下絶縁体31を持つ界磁巻線3を用いるようにした円筒形回転子である。なお、界磁巻線3では、素線間絶縁体としては、従来例による界磁巻線5Aに用いられている素線間絶縁体53が使用されている。楔下絶縁体31に採用される平板状の電気絶縁材としては、基材に従来例と同様の構成のガラスクロス材を用い、この基材を処理するエポキシ樹脂材には、この発明になる前述の素線間絶縁体21に用いられた粒状で電気絶縁性の無機質充填材を混入して熱伝導性の向上が図られたエポキシ樹脂材が採用されている。
【0052】
すなわち、楔下絶縁体31の厚さ寸法tr は約10〔mm〕であり、その熱伝導率値λr は、約1.5〔W/mK〕である。そうして、この楔下絶縁体31を用いた界磁巻線3のコイルスロット84に装填された部位の素線51の積層方向の温度分布は、図4に実線で示したとおりである。図4に実線で示したこの発明による界磁巻線の温度分布特性を、図4に点線で示した従来例による界磁巻線の温度分布特性と対比すると、最高温度の発生する部位が最下部の素線51側に移動すると共に、最高温度部の温度上昇値の低下が得られている。
【0053】
そうして、最高温度部と最上部の素線51の温度とを結ぶ温度分布特性の勾配が緩やかになっている。このことは、素線間絶縁体53が同一であることから、この発明になる高熱伝導性の楔下絶縁体31を採用したことの効果であることが明らかである。なお、楔下絶縁体31に関する充填材や基材の種類、F種絶縁材以外への展開の可能性、tr 値やλr 値の変化に対しての式4の適用の可能性などは、前述の素線間絶縁体21の場合と同様であるので、重複を避けてその説明を省略する。
【0054】
続いて、図5,図6を用いて、この発明の実施の形態のさらに異なる例による回転電気機械の円筒形回転子を説明する。ここで、図5は、図14と同等部位におけるこの発明の実施の形態のさらに異なる例による回転電気機械の円筒形回転子の断面図であり、図6は、この発明になる円筒形回転子のコイルの端部における温度分布を、従来例の場合と比較して示すグラフである。なお、図6には、端部における素線の位置関係を明瞭にするために、図5に示したコイルの半裁図を参考までに併記した。
【0055】
図5において、1Bは、図12〜図18に示した従来例による円筒形回転子8Aに対して、端部用の素線間絶縁体53Aを持つ界磁巻線5Aに替えて、端部用の素線間絶縁体41を持つ界磁巻線4を用いるようにした円筒形回転子である。素線間絶縁体41に採用されるシート状の電気絶縁材には、この発明になる前述の素線間絶縁体21に用いられている熱伝導性の向上が図られたシート状の電気絶縁材が用いられている。そうして、素線間絶縁体41の形状・寸法は、従来例による素線間絶縁体53Aと同一である。
【0056】
そうして、この素線間絶縁体41を用いた界磁巻線4の端部89の素線51の積層方向の温度分布は、図6に実線で示したとおりである。図6に実線で示したこの発明による界磁巻線の温度分布特性を、図6に点線で示した従来例による界磁巻線の温度分布特性と対比すると、界磁巻線4の最高温度部の温度上昇値を低減することができていることが分かる。このことは、界磁巻線4の端部89の構成が端部用の素線間絶縁体41以外は従来例の場合と同一であることから、この発明になる高熱伝導性の素線間絶縁体41を採用したことの効果であることが明らかである。なお、素線間絶縁体41に関する充填材や基材の種類、F種絶縁材以外への展開の可能性、tr 値やλr 値の変化に対しての式4の適用の可能性などは、前述の素線間絶縁体21の場合と同様であるので、重複を避けてその説明を省略する。
【0057】
前述したこの発明になる3つの例の円筒形回転子の界磁巻線では、素線間絶縁体や楔下絶縁体に高い熱伝導性を持つ絶縁材を用いる構成とすることにより、いずれの場合も、その最高温度部の温度上昇値の低減を図ることができている。そうして、素線51に通流される電流値を同一とする円筒形回転子の運転条件下において、界磁巻線の最高温度部の温度が少なくとも5〔℃〕程度低減されることにより、回転電気機械の体格をそのまま維持して、その耐熱寿命を大幅に延長することができる。またこのことは、回転電気機械の体格と耐熱寿命とをそのまま維持して、その定格出力の増大が図れることになる。
【0058】
前述の説明では、素線間絶縁体21と、楔下絶縁体31と、素線間絶縁体41とは、界磁巻線にそれぞれ個別に適用されるとしてきたが、これに限定されるものではなく、素線間絶縁体21,楔下絶縁体31および素線間絶縁体41は、適宜に組み合わせて併用してもよいものである。これによって、回転電気機械の耐熱寿命のさらなる延長や、定格出力のさらなる増大を図れることになる。
【0059】
【発明の効果】
この発明になる回転電気機械の円筒形回転子においては、前記課題を解決するための手段の項で述べた構成とすることにより、次記する効果を奏する。
▲1▼前記課題を解決するための手段の項の第(1)項による構成とすることにより、コイルスロットに装填されたコイル中を素線の積層方向に溝部通流路に向けて伝達する熱伝導量が増大されることで、回転電気機械の耐熱寿命の延長,定格出力の増大を図ることが可能になる。また、
▲2▼前記課題を解決するための手段の項の第(2)項による構成とすることにより、コイルスロットに装填されたコイル中を素線の積層方向にギャップに向けて伝達する熱伝導量が増大されることで、回転電気機械の耐熱寿命の延長,定格出力の増大を図ることが可能になる。さらにまた、
▲3▼前記課題を解決するための手段の項の第(3)項による構成とすることにより、界磁巻線の端部のコイル中を素線の積層方向にその内周面に向けて伝達する熱伝導量が増大されることで、回転電気機械の耐熱寿命の延長,定格出力の増大を図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図16と同等部位におけるこの発明の実施の形態の一例による回転電気機械の円筒形回転子のコイルスロットとその周辺部の断面図
【図2】この発明になる円筒形回転子のコイルのコイルスロットに装填された部位の温度分布を、従来例の場合と比較して示すグラフ
【図3】図16と同等部位におけるこの発明の実施の形態の異なる例による回転電気機械の円筒形回転子のコイルスロットとその周辺部の断面図
【図4】この発明になる円筒形回転子のコイルのコイルスロットに装填された部位の温度分布を、従来例の場合と比較して示すグラフ
【図5】図14と同等部位におけるこの発明の実施の形態のさらに異なる例による回転電気機械の円筒形回転子の断面図
【図6】この発明になる円筒形回転子のコイルの端部における温度分布を、従来例の場合と比較して示すグラフ
【図7】一般例の回転電気機械の主要部を模式化して示すその縦断面図
【図8】図7に示した回転電気機械の図7におけるP矢視図
【図9】図8におけるA−C断面図
【図10】図8におけるB−C断面図
【図11】図7におけるQ部の一部破断した詳細図
【図12】図7におけるR部に対応した部位における従来例の円筒形回転子の主要部を示すその斜視図
【図13】図11におけるS部に対応した部位における従来例の円筒形回転子を示すその部分断面図
【図14】図13におけるT部の断面図
【図15】界磁巻線と回転子鉄心の端部を平面状に展開して示す図13におけるK矢視図
【図16】図12におけるV−Vから見たコイルスロットとその周辺部の断面図
【図17】図12におけるW−W断面図
【図18】図17におけるJ矢視図
【符号の説明】
1 円筒形回転子
2 界磁巻線
21 素線間絶縁体
84 コイルスロット
Claims (3)
- 回転軸部と、回転軸部とほぼ同心の円形状として外周が形成されると共に外周の円周方向に沿わせて形成された複数のコイルスロットを有する回転子鉄心部と、平角状の導電材を素線として用いて巻回されてそれぞれのコイルスロットに装填された複数のコイルからなる一対または複数対の界磁巻線とを備え、前記素線の相互間には素線相互間の電気絶縁を保持するためのシート状の素線間絶縁体が介挿されてなる回転電気機械の円筒形回転子において、素線間絶縁体に粒状で電気絶縁性の無機質充填材を混入することで熱伝導性を向上させた高い熱伝導特性を持つ電気絶縁材を用いることで素線と素線間絶縁体とを総合した下記式1に基づく総合熱伝導率値λT を増大させたことを特徴とする回転電気機械の円筒形回転子。
- 回転軸部と、回転軸部とほぼ同心の円形状として外周が形成されると共に外周の円周方向に沿わせて形成された複数のコイルスロットを有する回転子鉄心部と、平角状の導電材を素線として用いて巻回されてそれぞれのコイルスロットに装填された複数のコイルからなる一対または複数対の界磁巻線とを備え、前記素線の相互間には素線相互間の電気絶縁を保持するためのシート状の素線間絶縁体が介挿されてなり、それぞれのコイルスロットの最外周部の付近には円筒形回転子が回転することで前記コイルに生じる遠心力に対処するための楔が装填されてなり、それぞれのコイルスロット内に収納された前記コイルの最外周に位置する素線と前記楔との間にはコイルと楔との間の電気絶縁を保持するための平板状の楔下絶縁体が配設されてなる回転電気機械の円筒形回転子において、楔下絶縁体に粒状で電気絶縁性の無機質充填材を混入することで熱伝導性を向上させた高い熱伝導特性を持つ電気絶縁材を用いることで素線と楔下絶縁体とを総合した前記式1に基づく総合熱伝導率値λT を増大させたことを特徴とする回転電気機械の円筒形回転子。
- 回転軸部と、回転軸部とほぼ同心の円形状として外周が形成されると共に外周の円周方向に沿わせて形成された複数のコイルスロットを有する回転子鉄心部と、平角状の導電材を素線として用いて巻回されてそれぞれのコイルスロットに装填された複数のコイルからなる一対または複数対の界磁巻線とを備え、コイルスロット内に収納されていない部分である界磁巻線のそれぞれの端部は、その外周部を円筒状をして高い剛性を持つ保持体で覆われることで円筒形回転子の回転に伴って働く遠心力に対して保持されてなり、前記素線の相互間には素線相互間の電気絶縁を保持するためのシート状の素線間絶縁体が介挿されてなる回転電気機械の円筒形回転子において、素線間絶縁体は、前記端部のコイルに用いられる端部用の素線間絶縁体と、コイルスロットに装填されるコイルに用いられるコイルスロット内用の素線間絶縁体とに分割されて形成されてなり、端部用の素線間絶縁体に粒状で電気絶縁性の無機質充填材を混入することで熱伝導性を向上させた高い熱伝導特性を持つ電気絶縁材を用いることで素線と素線間絶縁体とを総合した前記式1に基づく総合熱伝導率値λT を増大させたことを特徴とする回転電気機械の円筒形回転子。
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