JP3654848B2 - シリンダ錠 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、板部材からなるタンブラを用いたシリンダ錠に係り、特に、製造コストは高いがピッキングによる不正解錠が困難であるピンタンブラと同様の作用を有した板タンブラを用いて、これにより、安価な構成でピッキング用具による不正解錠を防止可能としたシリンダ錠に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車の各種錠や建造物のドアの施錠などには広くシリンダ錠が用いられている。この種のシリンダ錠の従来の構成の一例を図4乃至図8に示す。図4は板部材で形成されたタンブラ(以下板タンブラと称する。)を用いたシリンダ錠を示す分解斜視図、図5は図4のA−A線断面図、図6は図4、5の鍵孔に鍵板を挿入しないときのシリンダ錠の軸方向断面図、図7は図4、5の鍵孔に鍵板を挿入したときのシリンダ錠の軸方向断面図である。また図8はピンで形成されたタンブラ(以下ピンタンブラと称する。)を用いたシリンダ錠を示す縦断面図である。
【0003】
図4、5において、ほぼ円柱状のロータ1の中心には軸方向に貫通して矩形断面の鍵孔2が形成されている。ロータ1の外周には軸方向に対して直角の方向に、4個のスリット状のタンブラ挿入孔3が所定の間隔で貫通して形成されている。これらのタンブラ挿入孔3にはそれぞれ板タンブラ4が挿脱可能に挿入されている。
【0004】
板タンブラ4の中心には鍵板5が貫通する矩形状の窓部4aが形成されており、窓部4aの高さhは各板タンブラ毎に異なっている。また板タンブラ4の一方の側辺には段差部4bが、他方の側辺には2個の凸部4cがそれぞれ一体に形成されている。そして4枚の板タンブラ4をそれぞれタンブラ挿入孔3に挿入したとき、段差部4bとロータ1のタンブラ挿入孔3の内面に形成された係止部1aとの間に装着されたタンブラスプリング6により、板タンブラ4がロータ1の外周から突出する方向に付勢されている。図5に示す如く板タンブラ4の移動範囲はロータ1のタンブラ挿入孔3の内面に形成された案内溝1bに凸部4cが案内されることにより規制される。
【0005】
図4に示す如く鍵板5の一辺にはこの鍵板5を鍵孔2内の所定の位置に挿入したときに各板タンブラ4に整合する位置に切欠部5aが形成されており、切欠部5aの深さは各板タンブラ4の窓部4aの高さhにそれぞれ対応している。そしてロータ1の鍵孔2に鍵板5を挿入しない状態では、図6に示すように板タンブラ4はロータ1の外周から突出し、ロータ1を収容する錠ケース7の内周に形成された係止部7aに嵌合して回転が係止される。
【0006】
ロータ1の鍵孔2に鍵板5を挿入した状態では、図7に示すように板タンブラ4の窓部4aが鍵板5の切欠部5aに嵌合し、板タンブラ4はタンブラスプリング6の付勢力に抗して押し下げられ、板タンブラ4は錠ケース7の係止部7aから離脱する。この結果ロータ1は錠ケース7に対して回転可能となる。
【0007】
ピンタンブラを用いたシリンダ錠は図8に示すように、円柱状のロータ11が錠ケース12内に回転可能に収納されており、中心の鍵孔13には鍵板14が挿脱可能に挿入されている。ロータ11には軸方向に直角に4個の丸孔状のタンブラ挿入孔15が、所定の間隔で一直線上に形成されており、それぞれの挿入孔15に長さの異なるピンタンブラ16が軸方向に移動可能に挿入されている。
【0008】
錠ケース12にはぞれぞれロータ11のタンブラ挿入孔15に整合する位置に、ドライバピン挿入孔17が軸方向に直角に貫通して形成されており、各挿入孔17には円柱状のドライバ18が挿入されている。ドライバ18は錠ケース12を被覆するカバー19との間に装着されたスプリング20によりピンタンブラ16に押圧されている。符号21は錠ケース12の軸方向の位置を規制するストッパピンである。
【0009】
上記のように構成されたシリンダ錠において、鍵板14がロータ11の鍵孔13に挿入されていない状態では、ドライバ18がスプリング20に押されてロータ11のタンブラ挿入孔15内に挿入されている。この状態ではロータ11は回動不可能である。鍵板14を図8に示すように鍵孔13に挿入すると、ピンタンブラ16は鍵板14の切欠部14aに嵌合して押し上げられる。この結果ドライバ18とタンブラ挿入孔15との係合が解除され、ロータ11は回動可能となる。このときピンタンブラ16の長さと鍵板14の切欠部14aの深さとの関係を適正に保つことにより、4本のドライバ18の下端はロータ11の外周面にそろえることができる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように構成された従来の板タンブラ4を用いたシリンダ錠においては、板タンブラ4の窓部4aの下辺がロータ1の軸方向の一直線上に配置されているため、ピッキング用具による不正解錠がしやすかった。また鍵板5の一面のみに切欠部5aが形成されているため、板タンブラ4の配置が制約され、通常板タンブラは4個しか使用されていなかった。このことも不正解錠を容易に行うことのできる原因となっていた。また、図8に示す従来のピンタンブラ16を用いたシリンダ錠においては、ピンタンブラ16の先端をほぼ半球状に形成することにより、ピッキング用具による不正解錠に時間を要するという利点はあった。しかし、ピンタンブラ16が一直線上に配置されているため、ピンタンブラ16の数が制約され不正解錠防止の欠点となっていた。さらにピンタンブラ16は製造コストが大きくなる欠点もあった。
【0011】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたもので、ピッキング用具などによる不正解錠を防止することのできる安価なシリンダ錠を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、錠ケースと、該錠のケース内に回転可能に挿装されたロータと、該ロータの軸方向に対して直角の方向に形成された複数個のタンブラ挿入孔にそれぞれ挿脱可能に挿装された板状のタンブラとよりなり、前記ロータの軸方向に形成された鍵孔に鍵板を挿入しない状態では、前記タンブラが前記錠ケース内面側に突出して前記ロータを前記錠ケースに対して回転不能に拘束し、前記ロータの前記鍵孔に前記鍵板を挿入したときに、前記タンブラが前記錠ケース内面から退避して前記ロータの拘束を解除するようにしたシリンダ錠において、前記鍵板の少くとも一面の長さ方向及び幅方向の異なる位置に、径及び深さの少くとも一方が異なる複数個の凹部を形成し、前記タンブラのほぼ中心に形成され前記鍵板が挿通される窓部の一辺に、前記鍵板に形成された凹部の1つにそれぞれ係合可能な、先端部をほぼ半球状に形成した突出部を設け、突出部が前記凹部に係合した時に前記各タンブラが前記錠ケース内面から退避するようにしたことを特徴とする。
【0013】
上記の構成によると、鍵板の任意の面の異なる位置に形成された複数個の凹部の1つに、板タンブラの窓部に設けられた突出部の位置をそれぞれ整合させ、突出部が凹部に係合したときに各板タンブラが錠ケース内面から退避するようにしたので、板タンブラの配置の自由度が増しタンブラの枚数を増やすことができる。また、突出部は、先端部をほぼ半球状に形成しており、これにより不正解錠に時間を要するピンタンブラと同様の作用を有するようにしたために、安価な構成でピッキング用具による不正解錠を防止することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態の構成例を図面を参照して説明する。図1乃至図3に示す各構成例において、図4乃至図8に示す従来例の部分に対応する部分には同一符号を付してあり、その説明は適宜省略する。
【0015】
図1は本発明の第1の構成例を示す分解斜視図であり、板タンブラ4の枚数が4枚の場合を示す。ロータ1の構成は図4に示す従来例とほぼ同様であり、板タンブラ4の窓部4aの一辺に形成された突出部4dの位置がそれぞれ異なっている。また鍵板5に形成された凹部5aの位置も長さ方向及び幅方向の位置が異なっている。そして鍵板5を鍵孔2に挿入したとき、各板タンブラ4に形成され先端がほぼ半球状となった突出部4dが、それぞれ対応する位置の凹部5aに係合するようになっている。作用は従来例と同様である。ここで、本構成例における前記突出部4dは、図1からも明らかなように、先端部をほぼ半球状にしており、これにより、その正面形状をピンタンブラの正面形状とほぼ同様の形状としている。そのため、これにより本構成例による突出部4dは、ピッキングによる不正解錠に時間を要するピンタンブラと同様の作用を有することとなる一方、ピンタンブラと異なり製造コストを抑えることができ、その結果、本構成例によるシリンダ錠では安価な構成でピッキング用具による不正解錠を防止することが可能となる。
【0016】
図2は本発明の第2の構成例を示す分解斜視図、図3は図2のA−A線断面図である。本構成例では板タンブラ4の枚数を上方に4枚、下方に4枚の合計8枚とし、各4枚の板タンブラ4をロータ1の外周の上下面に形成されたそれぞれ4個のタンブラ挿入孔3に挿入する場合である。この場合も板タンブラ4の窓部4aの一辺に形成された突出部4dの位置がそれぞれ異なっている。また鍵板5の両面の各板タンブラ4の突出部4dに対向する位置にそれぞれ凹部5aが形成されており、鍵板5を鍵孔2に挿入したとき、各板タンブラ4dの突出部4bがそれぞれ対向する位置の凹部5aに係合するようになっている。
【0017】
本構成例における作用も従来例と同様であるが、板タンブラ4の枚数が8枚と多いため、ピッキング用具などによる不正解錠はより困難となる。また、本構成例における突出部4dも、図3から明らかなように、先端部をほぼ半球状にしており、これにより、その正面形状をピンタンブラの正面形状とほぼ同様の形状としている。そのため、図1に示したシリンダー錠における突出部4dと同様に、ピッキングによる不正解錠に時間を要するピンタンブラと同様の作用を有することとなる一方、ピンタンブラと異なり製造コストを抑えることができ、安価な構成でピッキング用具による不正解錠を防止することが可能なシリンダー錠とすることができる。なお板タンブラ4の枚数は8枚に限定されるものではなく、設計上可能であれば他の枚数であってよい。
【0018】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のシリンダ錠によれば、鍵板の少なくとも一面の異なる位置に径及び深さの異なる凹部を複数個形成し、ロータに挿装されるタンブラの位置及び形状を前記凹部に係合可能に形成したので、タンブラの数を増すことができ、ピッキング用具などによる不正解錠を防止することができる。また、凹部に係合させる突出部は、先端部をほぼ半球状に形成しており、これにより不正解錠に時間を要するピンタンブラと同様の作用を有するようにしたために、ピンタンブラと比べて安価となり、しかもピンタンブラと同様の不正解錠防止が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のシリンダ錠の実施の形態の第1の構成例を示す分解斜視図。
【図2】 本発明の第2の構成例を示す分解斜視図。
【図3】 図2のA−A線断面図。
【図4】 従来の板タンブラを用いたシリンダ錠の構成例を示す分解斜視図。
【図5】 図4のA−A線断面図。
【図6】 図5のシリンダ錠に鍵板を挿入していないときの状態を示す軸方向断面図。
【図7】 図5のシリンダ錠に鍵板を挿入したときの状態を示す軸方向断面図。
【図8】 従来のピンタンブラを用いたシリンダ錠の構成例を示す軸方向断面図。
【符号の説明】
1 ロータ
2 鍵孔
3 タンブラ挿入孔
4 板タンブラ
4a 窓部
4d 突出部
5 鍵板
5a 凹部
7 錠ケース
Claims (1)
- 錠ケースと、
該錠ケース内に回転可能に挿装されたロータと、
該ロータの軸方向に対して直角の方向に形成された複数個のタンブラ挿入孔にそれぞれ挿脱可能に挿装された板状のタンブラとよりなり、
前記ロータの軸方向に形成された鍵孔に鍵板を挿入しない状態では、前記タンブラが前記錠ケース内面側に突出して前記ロータを前記錠ケースに対して回転不能に拘束し、前記ロータの前記鍵孔に前記鍵板を挿入したときに、前記タンブラが前記錠ケース内面から退避して前記ロータの拘束を解除するようにしたシリンダ錠において、
前記鍵板の少くとも一面の長さ方向及び幅方向の異なる位置に、径及び深さの少くとも一方が異なる複数個の凹部を形成し、前記タンブラのほぼ中心に形成され前記鍵板が挿通される窓部の一辺に、前記鍵板に形成された凹部の1つにそれぞれ係合可能な、先端部をほぼ半球状に形成した突出部を設け、突出部が前記凹部に係合した時に前記各タンブラが前記錠ケース内面から退避するようにしたことを特徴とするシリンダ錠。
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