JP3651705B2 - 採尿用シート及び尿中の成分の検出法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は学童検診などのマス・スクリーニングなどの検査に用いられる尿を採取するための採尿用シート及び尿中の成分の検出法に関する。
【0002】
【従来の技術】
検診などで行われる生化学検査においては、診断の効率を上げるため、空腹時に採血や採尿したり、食事、薬物の投与、運動などの負荷後に採血や採尿するなど、特定の条件下での体液の採取が要求される。従って、定期検診やドック検診においては、妊娠診断薬や尿糖検査試験紙など、おおざっぱな定性試験でよいOTC試薬の場合とは異なり、検体の採取条件の遵守と、検査の操作上のミスや判定誤差を回避するため、被験者を施設に拘束して体液を採取し、専任の担当者によって測定が行われている。学童検診などのマス・スクリーニングにおいては、被験者全員を施設に拘束することは、時間と費用の点から困難であるため、予め指定した条件と方法で検体を採取させ、これを専門の検査機関に収集し、専任の担当者によって測定が行われている。この際、検体の採取方法が困難であったり、検体の運搬が嵩高で非衛生的であったり、輸送及び保存中に検体が腐敗し、測定成分の濃度が低下するなどの問題が有り、合理的な検体の採取・運搬・保存が可能な検査体及び検出法が求められていた。特に検体が尿試料の場合、現在使用されている当該検査体の多くは、尿試料をカップに採取して用いるものが多く、使用後の大量のカップの廃棄などで問題があった。一方、現在市販されている尿試験紙は、検体と接触した時点で反応が起こり、結果が出てしまうため、学童試験などのマス・スクリーニングに使用する場合、提出時に被験者に心理的な負担を与えることやその運搬・保存時における色調の経時変化などの不具合がある。
【0003】
現在、糖尿病のマス・スクリーニングは、随時尿や早朝第一尿による尿糖試験が行われているが、糖尿病の境界型、軽度の糖尿病や発症初期の糖尿病患者では陰性となる場合が有り、問題となっている。最も効率の良いスクリーニングには、食事負荷後である夕食後2時間尿を用いるのが望ましいが、採尿や検体の取り扱いの煩雑さのため、尿蛋白検査用の早朝第一尿が供用されており、未だに夕食後2時間尿によるスクリーニングは、実施されていない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明が解決しようとする課題は学童検診などのマス・スクリーニングなどにおいて、使い勝手がよく実用的で衛生的な尿検査体及び尿中の成分の検出法を提供することにある。また、これを専門機関へ運搬・輸送及び保存する際に検体が腐敗し、測定成分の濃度が低下することのないよう安定して測定成分濃度を保持できる郵送も可能な尿検査体及び尿中の成分の検出法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、これらの問題点を鋭意検討した結果、特に尿採取用のカップを使用する必要がなく、衛生的で、学童検診などのマス・スクリーニングで特に有用性の高い、上記の問題を解決した極めて簡便で合理的な採尿用シート及び尿中の成分の検出法を完成した。
【0006】
即ち、本発明は
(1)尿中の成分の検出を採尿部位と異なる検出部位で行うための、安息香酸、その塩、それらの誘導体及びほう酸からなる群より選ばれる少なくとも一種を保持させた吸水性シート、
(2)安息香酸、その塩、それらの誘導体及びほう酸からなる群より選ばれる少なくとも一種を保持させた吸水性シートと撥水性シートを少なくとも一部重ね合わせて接合させたものであって、尿中の成分の検出を吸水性シートの採尿部位と異なる部位で行うための採尿用シート、
(3)幅が0.5〜5cmで長さが2〜10cmの安息香酸、その塩、それらの誘導体及びほう酸からなる群より選ばれる少なくとも一種を保持させた吸水性シートと幅が0.5〜5cmで長さが2〜15cmの撥水性シートを1〜6cmの長さで重ね合わせて接合させ、撥水性シートと重なっていない吸水性シートの部分の長さが1〜6cmである上記(2)記載の採尿用シート、
(4)吸水性シートが濾紙である上記(1)記載の吸水性シート、
(5)吸水性シートが濾紙である上記(2)又は(3)記載の採尿用シート、
(6)撥水性シートと重なっていない吸水性シートの部分で採尿し、撥水性シートと重なっている吸水性シート部位に検出試薬を滴下し尿中の成分を検出することに使用する上記(2)、(3)、(4)又は(5)記載の採尿用シート、
(7)測定する尿中の成分がブドウ糖である上記(2)、(3)、(4)、(5)又は(6)記載の採尿用シート、
(8)安息香酸、その塩、それらの誘導体及びほう酸からなる群より選ばれる少なくとも一種の量が吸水性シートに対して0.5〜4重量%である上記(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)又は(7)記載のシート、
(9)採尿部位で採尿した上記(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)、(7)又は(8)記載のシートの検出部位に検出試薬を滴下し又は試験紙を接触させて尿中の成分を検出することを特徴とする尿中の成分の検出法、
(10)測定する尿中の成分がブドウ糖である上記(9)記載の検出法、に関する。
【0007】
本発明の採尿用シートは、安息香酸、その塩、それらの誘導体及びほう酸からなる群より選ばれる少なくとも一種を保持させた吸水性シートを用いているため、運搬、郵送又は保存する際に尿が腐敗し測定成分の濃度が低下するという問題はなく、尿の採取方法が容易であり、又、特に尿採取用のカップを使用する必要はなく、更に撥水性シートを用いることにより採尿時に手が尿で濡れることもなく衛生的である。これにより、さらに応用範囲を広げ、郵送による検診も可能になるものと考えられる。又、採取した尿が吸水性シートの採尿部外に拡散、展開するため、その拡散、展開した部位で尿中の成分を検出することが可能であり、それにより尿中の成分を正確に測定することができる。即ち、本発明によれば、安息香酸、その塩、それらの誘導体及びほう酸からなる群より選ばれる少なくとも一種を保持させた吸水性シートを用いて、採尿部位とは異なる検出部位(採取した尿が拡散、展開した部位)で尿中の成分の検出を行なうことにより、尿の腐敗による尿中の成分の変化が防止されるだけでなく、検出にあたり、尿に含まれるアスコルビン酸等の還元物質による影響を単に吸水性シートを用いた場合に比し顕著に減少させることができ、尿中の成分をより正確に測定することができる。又、吸水性シートと撥水性シートを特定の長さで重ね合わせることにより、尿中の成分の検出を吸水性シートと撥水性シートを重ね合わせた部分の吸水性シート上で行うことが可能となり、尿中の成分の検出における発色の具合、程度の判定をより容易に正確に行うことが可能となる。更に、撥水性シート部分に被験者を識別するための氏名又は番号等を記入する欄や注意事項、指示事項を記載した欄を設けることが可能であり、又、使用方法が極めて簡便であるため、特に学童検診等のマス・スクリーニングにおいて利用可能である。
また、尿中の成分を測定する試薬としては、酵素をベースとする試薬組成物を含有する乾式相試験片に限らず、液状試薬組成物の使用も可能となり、安価で、使いやすく、安定な試薬の調製が可能となる。
本発明を用いれば、夕食後2時間尿を用いる尿糖のマス・スクリーニングが容易に行えるようになり、糖尿病患者の見逃しを大幅に減少でき、スクリーニング効率の向上に貢献できる。
【0008】
【発明の実施の態様】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明において、尿としてはヒトの尿などが挙げられる。また尿中の成分としてはブドウ糖などの糖、蛋白質、潜血、ビリルビン、ウロビリノーゲン、ケトン体、亜硝酸塩など臨床上重要な成分が挙げられ、特にブドウ糖が重要である。
【0009】
吸水性シートとしては、尿を含浸あるいは採取できる吸水性のシートであれば特に制限はなく、例えば濾紙、フェルト、布、木綿、麻、パルプ、絹、ナイロンメンブレンなどの合成プラスチックなどがある。好ましくは濾紙である。濾紙としては、例えば、定性濾紙、定量濾紙、硬質濾紙、クロマトグラフィー用濾紙、イオン交換濾紙、ガラス繊維濾紙及び複合繊維濾紙などがあり、いずれでもよいが、特に好ましくは定性濾紙又はイオン交換濾紙である。吸水性シートの幅は通常0.5〜5cmであり、好ましくは0.5〜4cmであり、特に好ましくは0.5〜3cmである。又、長さは好ましくは2cm〜10cm、より好ましくは2〜9cm、特に好ましくは3〜8cmである。又、厚さは0.1〜3mmのものが好ましく、特に0.5〜2mmのものが好ましい。
【0010】
幅については検出時において発色試薬の滴下できる量や濾紙の厚さとも関連し、又、発色スポットの拡散などに多少制限を受けるが上記の幅であれば問題ない。厚さについては検出時において拡散の小さい収束性の良好な発色スポットが判定に都合が良いため、通常の尿試験紙で使用されるよりも、多少厚めのものがより好ましい。また、長さについては採尿部が短すぎると検出部まで十分に尿が浸透(拡散、展開)しない可能性があること、吸水性シートと撥水性シートを張り合わせる長さが短いと検出時に発色スポットが見にくくなること、さらに、採尿用シートの全長としてもあまり長すぎても短すぎても採尿が困難となることを考慮に入れなければならない。
【0011】
安息香酸、その塩、それらの誘導体及びほう酸からなる群より選ばれる少なくとも一種を吸水性シートに保持させる方法は特に限定されず、例えば水等の適当な溶剤に溶解し吸水性シートに含浸させるのみでも良いし、あるいは吸水性シートに公知の方法により化学的に結合させてもよい。吸水性シートに保持させる安息香酸、その塩、それらの誘導体又はほう酸の量は吸水性シートに対して0.01〜10重量%が好ましく、より好ましく0.1〜6重量%、特に好ましくは0.5〜4重量%である。
安息香酸誘導体としては、水酸基、アミノ基、低級アルキル基(例えば、炭素数1〜3のアルキル基)、ジメチルアミノ基等の置換基を有する安息香酸及びその塩、例えばパラヒドロキシ安息香酸、パラアミノ安息香酸及びこれらの塩等が挙げられる。安息香酸及び安息香酸誘導体の塩としては、アルカリ金属塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩)等が挙げられる。
本発明において、安息香酸、その塩、それらの誘導体及びほう酸は単独で使用しても二種以上を併用しても良いが、安息香酸、その塩及びそれらの誘導体からなる群から選ばれる一種以上、又はこれとほう酸の併用が特に好ましく、尿採取後も尿を長期に安定に保存でき、かつ、尿中の成分を正確に測定できるという点において特に優れた本発明の吸水性シート及び採尿用シートが得られる。
【0012】
撥水性シートとしては水をはじくものであれば特に制限はなく、特に好ましくは、鉛筆、ボールペン又は油性ペンなどで筆記が可能な撥水性紙である。撥水性シートの幅は通常0.5〜5cmであり、好ましくは幅が0.5cm〜4cmであり、特に好ましくは0.5〜3cmである。又、長さは好ましくは2cm〜15cm、より好ましくは3〜12cm、特に好ましくは4〜10cmである。厚さは0.1〜3mmのものが好ましく、特に0.5〜2mmのものが好ましい。
【0013】
図1の様に吸水性シートと撥水性シートを一部重ね合わせて接合させる際の重ね合わせる部分の長さは通常0.7cm以上であるが、好ましくは1〜9cm、より好ましくは1〜6cm、特に好ましくは1〜4cmであり、撥水性シートと重なっていない吸水性シートの部分の長さは、好ましくは1〜9cm、より好ましくは1〜6cm、特に好ましくは1〜4cmである。吸水性シートと撥水性シートを重ね合わせて接合させる形態としては図1、2、3及び4の形態などが考えられるが特に好ましくは図1の形態である。吸水性シートと撥水性シートを重ね合わせて接合させる方法は、両面テープや接着剤などで張り合わせる方法や糸や紐などで縫合する接合法があり、検出する際の化学反応に影響のないものであれば特に制限はない。
【0014】
採尿用シートの幅は通常0.5cm〜5cmであり、好ましくは0.5〜4cmであり、特に好ましくは0.5〜3cmである。長さは好ましくは4cm〜20cmであり、より好ましくは5〜15cmである。尿中の成分を検出するための検出試薬等を用いて尿中の成分を検出する部位としては、吸水性シートの採尿部から0.7〜4.5cm離れた吸水性シート上の部位が好ましく、特に1〜4cm離れた吸水性シート上の部位が好ましい。通常は、採尿部から最も離れかつ拡散、展開により尿が十分に浸潤している部位が好ましい。
【0015】
尿中の成分を検出するための検出試薬を用いて尿中の成分を検出する場合、採尿部以外で検出するのが好ましく、従って、図2、図3の形態の採尿用シートの場合は、吸水性シートにライン等を設け採尿部位を指定することが好ましい。図1、図4の形態の採尿用シートの場合は、尿をかける面を選ぶことにより吸水性シートの全面が採尿部とならないようにすることが可能であるので、特に吸水性シートにライン等を設ける必要はない。吸水性シートの採尿部位の長さは好ましくは1〜8cmであり、特に1〜4cmが好ましい。
【0016】
採尿用シートの使用方法としては直接尿をかける方法、コップなどに採取した尿に浸ける方法、ピペットなどで滴下、塗布する方法などがあるが特に好ましいのは直接尿をかける方法である。尿を例えば吸水性シートなどに採取した状態で保存する場合、尿は検出時まで密閉容器中で保存することが好ましく、密閉容器の形態及び材質などに特に制限はないが尿中の成分が乾燥、濃縮されることなく、湿潤状態を保持することが可能な密閉度の高いものがより好ましい。採取した尿を保存する場合、その期間は、通常1〜6日間くらいであり、検査までに要する移送などの時間を考慮すると一般的には1〜4日間くらいであり、保存温度は好ましくは0〜30℃である。本発明によれば尿は安定に保持され、尿中の成分の存在量を分析時(検出時)まで安定に保持することができる。
【0017】
本発明の採尿用シートを用いて尿中の成分を検出する場合、検出試薬としては公知のものが使用できる。例えば酵素・発色試薬を用いて分析することができる。酵素・発色試薬は当然その分析対象成分により組成が異なるが、例えばブドウ糖が分析対象成分の場合、測定法としてはグルコースデヒドロゲナーゼによる紫外部吸光測定法、ヘキソキナーゼ/グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼに
よる紫外部吸光測定法、ジアホラーゼ等を用いたホルマザン反応を利用する方法及びグルコースオキシダーゼを用いる方法などがあり、最も良く用いられるグルコースキシダーゼ法ではグルコースの酸化によって発生する過酸化水素を検知するための酸化触媒のペルオキシダーゼや被酸化性色原体が酵素・発色試薬の組成因子となる。また、用いる色原体としては可視部に吸収のあるものであればよく、通常良く用いられるo-アニシジン、ベンチジン、o-トリジン、テトラメチルベンチジン、ロイコ系色原体及びアミノアンチピリンとフェノール又はその誘導体やアニリン誘導体を組み合わせるトリンダー系試薬などが用いられる。また、オキシダーゼ、色原体及びペルオキシダーゼなどの酵素・発色試薬はその安定性などを考慮に入れ組み合わせて用いるがこれらはこれら試薬を乾燥又は半乾燥状態で含有する吸水性試験紙の形で使用することもできるし、また、液状の酵素・発色試薬として使用することも可能である。
【0018】
1)試薬を乾燥又は半乾燥状態で含有する吸水性試験紙の形で用いる場合、尿を含有する吸水性シートに該吸水性試験紙を接触させることにより成分分析を行うことができ、また2)試薬を液状として用いる場合は、尿を含有する吸水性シートに試薬を添加することにより成分分析を行うことができる。また1)、2)の場合において吸水性シートと尿との接触により発色を生じないような組成であれば尿を含有する吸水性シート側にあらかじめ色原体及び/又はペルオキシダーゼなどを含有しておくことも十分可能である。このようにして尿中の成分の判定あるいは尿中の成分濃度の測定を行うことができる。
【0019】
【実施例】
以下に実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0020】
実施例A
図5及び6の採尿用シートを以下のとおりに作成し、実施例1及び比較例1〜2に用いた。また、濾紙は以下のように抗菌処理したものを使用した。
【0021】
採尿用シート(a),(b),(c)の作成
抗菌剤として安息香酸ナトリウム1%(W/V)及びほう酸1%(W/V)を含む水溶液を調製し、厚さ1.0mmの濾紙(アドバンテック社製東洋濾紙No.63)25cm×25cmに含浸後、室温において乾燥し次いで2cm×6cmに裁断して、採尿用シートの濾紙部とした。次に厚さ0.5mmの撥水性紙(興陽製紙製)を2cm×6cmに裁断して使用した。濾紙と撥水性紙がそれぞれ(a)4cm,(b)2cm,(c)1cm重なるように両面テープで張り合わせた(図5)。このときの安息香酸ナトリウム及びほう酸含量は、濾紙に対してそれぞれ0.9重量%であった。
【0022】
採尿用シート(f)の作成
上記と同じ抗菌処理濾紙を使用した。抗菌処理濾紙の裁断は2cm×8.5cmとし、2.5cm幅の理化学用マーキングテープ(撥水性シート)を濾紙の端に合わせ、両面に張り付けた(図6)。
【0023】
操作法
試料には、健常者の原尿+50mg/dlグルコースを使用して、採尿用シートの採尿部へかける試料量を10mlとし採尿終了後それぞれチャック付きビニール袋へ入れ、0日目、4日目の室温放置におけるグルコースの保持量を判定した。グルコース保持の判定は以下の組成の発色試薬(尿糖用検出試薬)を採尿用シートに滴下して、1分後の発色の有無(−,±,+)で行った。なお、原尿+50mg/dlグルコースとは尿9mlに対して500mg/dlグルコース1mlの割合で混合調製したことを意味している。
【0024】
発色試薬の組成
グルコースオキシダーゼ(GOD) 24U/ml
西洋わさび ペルオキシダーゼ(HRP) 2U/ml
アスコルビン酸オキシダーゼ(ASOD) 40U/ml
フェノール 10mM
4−アミノアンチピリン 1mM
塩酸ヒドロキシルアミン 0.04%
リン酸緩衝液(pH6.8) 0.1M
【0025】
実施例1
実施例Aの採尿用シート(a),(b),(c)を使用して、撥水性紙面が上になるように持ち、上記操作法に従って試料を濾紙部(採尿部)へ上からかけて(図7)、0日目と4日目に検出部(濾紙部の最上部)(図8)に発色試薬を滴下して初期(0日目)のグルコース量が安定に保持されているか否かを試験した。結果を表1に示した。
【0026】
【表1】
保存日数 採尿用シート(a) 採尿用シート(b) 採尿用シート(c)
0日目 + + +
4日目 + + +
【0027】
比較例1
上記の採尿用シート(f)を用い、マーキング・テープ部を持ち、尿試料10mlを全面にかけ、0日目と4日目に発色試薬を滴下して初期(0日目)のグルコース量が安定に保持されているか否かを試験した。結果を表2に示した。
【0028】
【表2】
保存日数 採尿用シート(f)
0日目 +
4日目 −*
*コロニーが発生していた。
【0029】
結果
比較例1ではグルコースが減少又は消失していた。これに対して実施例1では初期(0日目)のグルコース量を安定に保持していた。
【0030】
比較例2
実施例Aの採尿用シート(a),(b),(c)を使用して実施例1と同様の操作で、0日目と4日目に採尿部(図7)に発色試薬を滴下して初期(0日目)のグルコース量が安定に保持されているか否かを試験した。結果を表3に示した。
【0031】
【表3】
保存日数 採尿用シート(a) 採尿用シート(b) 採尿用シート(c)
0日目 + + +
4日目 − − −
【0032】
結果
採尿部外で検出する実施例1ではグルコースを安定に保持、検出できているのに対して、採尿部で検出する比較例2ではグルコースが消失していた。
【0033】
実施例2
安息香酸ナトリウム1%(W/V)水溶液を調製し、アドバンテック社製東洋濾紙No.63 25 × 25cmに含浸後、室温において自然乾燥し、次いで2 × 4cmに裁断して、安息香酸ナトリウム処理濾紙(安息香酸ナトリウム含量は濾紙に対して0.9重量%)を得た。次に厚さ0.5mmの撥水性紙(興陽製紙製)を2cm×6cmに裁断して使用した。濾紙と撥水性紙が2cm重なるように両面テープで張り合わせ(図5)、採尿用シートを得た。
【0034】
この採尿用シートを用い、試料として、原尿+50mg/dlグルコースの代りに▲1▼50mg/dlグルコース、70mg/dlアスコルビン酸含有水溶液、▲2▼50mg/dlグルコース、50mg/dlアスコルビン酸含有水溶液、▲3▼50mg/dlグルコース含有水溶液を用いて、実施例1と同一の方法で実験を行ない、0日目と4日目における発色試薬添加後の発色までに要する時間を測定した。結果を表4に示した。
【0035】
【表4】
【0036】
又、安息香酸ナトリウムの代りにp−ヒドロキシ安息香酸又はp−アミノ安息香酸を用い、その他は全く同様にして実験を行なったところ、いずれの場合も、安息香酸と同様の結果が得られた。
【0037】
実施例3
ほう酸の1%(W/V)水溶液を調製し、アドバンテック社製東洋濾紙No.63 25×25cmに含浸後、室温において自然乾燥し、次いで2×4cmに裁断して、ほう酸処理濾紙(ほう酸含量は濾紙に対して0.9重量%)を得た。次に厚さ0.5mmの撥水性紙(興陽製紙製)を2cm×6cmに裁断して使用した。濾紙と撥水性紙が2cm重なるように両面テープで張り合わせ(図5)、採尿用シートを得た。この採尿用シートに実施例1と同様にして原尿+50mg/dlグルコース10mlをかけ、0日目と4日目に発色試薬を滴下し、発色までに要する時間を測定した所、いずれも60秒であった。
【0038】
【発明の効果】
本発明によれば、従来使用していた尿の採取容器、例えば、尿採取用の採尿コップや尿検体の輸送用のかさばるポリ容器は特に必要ではなくなり、検体の採取が極めて簡便に行えるようになる。また、検体を採取した本発明の採尿用シートを、チャック付きビニール袋などの密封容器に封入することにより、衛生的でコンパクトにすることができ、検体の運搬・郵送が容易になった。さらに、本発明の採尿用シートによれば採尿する際、吸水性シートに予め含浸、保持されている安息香酸、その塩、それらの誘導体やほう酸の検出部位からの流出を防ぐことが可能となり、運搬・郵送などの保存時に予想される腐敗や菌の繁殖などによる検体中の測定成分の濃度低下を防ぐことができ、安定した測定結果が得られるようになった。更に本発明によるところの安息香酸、その塩、それらの誘導体及びほう酸からなる群より選ばれる少なくとも一種を保持させた採尿用シートを用いて食後1〜2時間尿での尿糖検査を行うことによりこれまでの試験方法で生じていた糖尿病患者及びその境界型の見逃しの問題を解消できるようになった。更に、本発明の採尿用シートは撥水性紙が鉛筆、ボールペン又は油性ペンなどで筆記可能であるため、被検者自身に被検者の氏名、採取日時などを容易に記入させることが可能であり、検査時においても、判定結果の処理に便利である。特に学童検診においてその有用性は高いと考えられる。なお、本発明はブドウ糖以外の尿中の成分、例えば蛋白質、潜血、ビリルビン、ウロビリノーゲン、ケトン体及び亜硝酸塩などの臨床的に重要な尿の定性などの分析のために利用できるものであることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の採尿用シートの一実施態様を示す
【図2】本発明の採尿用シートの一実施態様を示す
【図3】本発明の採尿用シートの一実施態様を示す
【図4】本発明の採尿用シートの一実施態様を示す
【図5】実施例Aで作製した採尿用シート(a)、(b)、(c)の形態を示す
【図6】実施例Aで作製した採尿用シート(f)の形態を示す
【図7】実施例1で用いた採尿用シートの採尿部を示す
【図8】実施例1で用いた採尿用シートの検出部を示す
Claims (7)
- 吸水性シートと撥水性シートを一部重ね合わせて接合させた採尿用シートにおいて、安息香酸、その塩、それらの誘導体及びほう酸からなる群より選ばれる少なくとも一種を吸水性シートに保持させ、撥水性シートと重なっていない吸水性シートの部分で採尿し、撥水性シートと重なっている吸水性シート部位に検出試薬を滴下して尿中の成分を検出することに使用する採尿用シート。
- 幅が0.5〜5cmで長さが2〜10cmの安息香酸、その塩、それらの誘導体及びほう酸からなる群より選ばれる少なくとも一種を保持させた吸水性シートと幅が0.5〜5cmで長さが2〜15cmの撥水性シートを1〜6cmの長さで重ね合わせて接合させ、撥水性シートと重なっていない吸水性シートの部分の長さが1〜6cmである請求項1記載の採尿用シート。
- 吸水性シートが濾紙である請求項1又は2記載の採尿用シート。
- 測定する尿中の成分がブドウ糖である請求項1、2又は3記載の採尿用シート。
- 安息香酸、その塩、それらの誘導体及びほう酸からなる群より選ばれる少なくとも一種の量が吸水性シートに対して0.5〜4重量%である請求項1、2、3又は4記載の採尿用シート。
- 請求項1、2、3、4又は5記載の採尿用シートの撥水性シートと重なっていない吸水性シートの部分で採尿し、撥水性シートと重なっている吸水性シート部位に検出試薬を滴下し又は試験紙を接触させて尿中の成分を検出することを特徴とする尿中の成分の検出法。
- 測定する尿中の成分がブドウ糖である請求項6記載の検出法。
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