JP3651225B2 - リチウム二次電池、その負極及びその製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、リチウム二次電池、その負極及びその製造法に関し、特に充放電容量、急速充放電特性、サイクル特性に優れたリチウム二次電池、その負極及びその製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、ポータブル機器、電気自動車、電力貯蔵用として小型、軽量で高エネルギー密度を有する二次電池に対する要望が高まっている。このような要望に対し、非水系電解液二次電池、特にリチウム二次電池はとりわけ高電圧、高エネルギー密度を有する電池として注目を集めている。
【0003】
リチウム二次電池の負極材料としては、金属リチウム、低黒鉛化炭素粒子、高黒鉛化炭素粒子が使用されている。金属リチウムは高い充放電容量を実現可能であるが、その高い反応性のため充放電サイクルの経過と共に電解液中の溶媒と反応し容量が低下する、また樹枝状の金属リチウムが生成しやすく、正・負極間に設けられるセパレータを貫通し短絡を引き起こしやすいという問題点を有している。低黒鉛化炭素質材料は、電解液との反応性が低い、樹枝状金属リチウムが生成しずらいという特徴を有するが、充放電容量が一般に低く、また真密度が低いため体積当たりの充放電容量が低いという難点を有し、高エネルギー密度の二次電池を実現することは達成されていない。一方、高黒鉛化炭素粒子は、低黒鉛化炭素粒子と比較して高い充放電容量を有し、金属リチウムと比較して電解液との反応性、樹枝状金属リチウムが生成しずらいという特徴を有することから、近年、負極用材料として盛んに検討がなされるようになってきている。
【0004】
高黒鉛化炭素粒子としては、高純度化された天然黒鉛粒子、コークスやピッチ或いは合成有機高分子材料を炭化・黒鉛化して製造される人造黒鉛粒子が使用されている。これらの高黒鉛化炭素粒子では、黒鉛結晶が高度に発達しているため、形状はアスペクト比の大きな鱗片状をしている。このため、バインダと混練して集電体に塗布して電極を作製した場合、鱗片状の黒鉛粒子が集電体の面方向に高密度に配向し、その結果、負極層内への電解液の浸透性が悪化し充放電容量が低下、高速充放電特性が低下する、黒鉛粒子へのリチウムの吸蔵・放出の繰り返しによって発生する厚さ方向の歪みにより粒子が剥離しやすいためサイクル特性が悪いなどの問題が発生する。一方、上記のような問題を回避するため、電極中の黒鉛質粒子の密度を低下すると体積当たりの充放電容量が低下するという問題が発生する。
【0005】
このような問題を解決する手法として、高黒鉛化粒子の特性の改善が試みられている。特許第2637305号では、メソフェーズピッチから抽出されたメソフェーズ小球体を黒鉛化して得られた球状で微細組織の配向が放射状或いはブルックスーテーラー型の黒鉛化粒子を用いること、及び微細組織の配向がラメラ型又はブルックスーテーラー型の炭素繊維を用いることを提案しているが、前者は充放電容量が280〜300mAh/gと比較的低く、またメソフェーズピッチからの抽出、分離という工程が必要なため高コストであり、後者は電極の高密度化が困難、また長繊維が混在するとセパレータを貫通し短絡が起こりやすいという問題がある。
【0006】
特開平7−335216号公報は、骨材及び結合材を出発原料として作製された高密度黒鉛成形体を粉砕して製造される黒鉛結晶子がランダムに配向した粒子を提案しているが、冷間静水圧成形法を用いる成形体の製造方法は生産性に乏しい。黒鉛化された成形体を粉砕して黒鉛粒子を得る方法としては、この他にWO95/28011号及び特開平9−231974号公報が挙げられる。これらの黒鉛化成形体を粉砕して得られる黒鉛粉末はいずれも嵩密度が高く高強度であり、黒鉛結晶が粒子内でランダムに配向しているため、集電体上での黒鉛結晶の配向が抑制され、また電解液が浸透できる粒子間の空隙が確保されるという点で有効な手段である。しかしながら、粒子が高かさ密度、すなわち緻密質であるということが、今度は粒子内への電解液の浸透を抑制し、急速充放電特性の向上に限界を生じさせる原因となっている。
【0007】
また、高黒鉛化炭素粒子と他の材料を混合して使用する技術も提案されている。
特開平4−237971号公報では、球状の黒鉛質炭素粒子と炭素繊維とを組み合わせることによって、充放電の繰り返しによる粒子の剥離を防止することが提案されているが、これは充放電容量の比較的低い球状粒子を用いている。
特開平6−36760号公報では、高黒鉛化炭素粒子と低黒鉛化炭素粒子の混合物を用いることによって放電末期の急速な電圧降下を防止し電池容量の終点判定を用意とすることが提案されているが、高黒鉛化粒子の集電体面方向へ配向する問題があり、また低黒鉛化炭素粒子の添加量が多い場合は放電電圧が低下する。
【0008】
特開平6−111818号公報では球状黒鉛化炭素粒子と黒鉛化炭素短繊維を組み合わせることを提案しており、電極強度を増加させ充放電サイクルに伴う電極層の破壊の抑制、短繊維による電極層内の導電性向上による急速充放電特性の改善が図れるとしているが、充放電容量の比較的低い球状黒鉛化炭素粒子を用いているにすぎない。また黒鉛化炭素短繊維の添加量が多い場合には電極密度が低下し、体積当たりの充放電容量が低下するという問題がある。
特開平6−302315号公報では球状黒鉛粒子と化学的、電気化学的に不活性な金属被覆ウィスカーを組み合わせることにより電極を高強度化し粒子の剥離を防止することが提案されているが、球状以外の黒鉛粒子についての言及はなく、また添加するウイスカーは充放電には寄与しないため添加量が多い場合には充放電容量の低下が発生する。
【0009】
特開平8−180864号公報では球状黒鉛粒子とこの球状粒子の平均粒径に対して1.3〜4.0の比の平均粒径を有する非球状黒鉛粒子及び炭素繊維粉砕物を添加することにより、電極内の電子伝導性が向上し充放電サイクル特性が改善されるとしている。この中で、非球状粒子(人造黒鉛、天然黒鉛)が球状黒鉛粒子の間に様々な方向を向いて存在するということが言及されており、上記の鱗片状黒鉛粒子の集電体面方向への配向を抑制するということに対して球状黒鉛粒子の存在が効果を有することが示されているが、球状粒子と非球状粒子の粒子径を精密に制御する必要があり、生産性という点で問題がある。
特開平8−83608号公報及び特開平8−83609号公報ではブロック状、フレーク状及び粒状の人造黒鉛又は天然黒鉛粒子に黒鉛化した炭素繊維粉末を添加することにより、高密度で黒鉛結晶が集電体面方向に配向しずらく、充放電サイクル経過に伴う集電体からの粒子の剥離が抑制されるとしている。しかし、この効果が得られるのは黒鉛化炭素繊維粉末添加量が20重量%までであり、これ以上では電極性能が低下することが言及されている。
【0010】
以上に示したこれまでの高黒鉛化炭素質粒子と他の材料の混合系では、それぞれ問題を有しており、また特に黒鉛化炭素繊維と組み合わせる場合、粒子形状が大きく異なるため均一に混合することが困難であり、このため安定した性能を示すリチウム二次電池の製造が困難であるという共通の問題がある。また、メソフェーズ小球体を黒鉛化して得られた球状黒鉛粒子を含む系については、前述のようにこの球状黒鉛粒子の充放電容量が比較的低くかつ高コストであるという問題点を有している。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
請求項1〜5記載の発明は、電極作製条件の変動による粒子の過剰な変形、黒鉛質粒子の配向を抑制し、特に高い充放電電流で充放電を行った場合のリチウムの吸蔵・放出量が多くて充放電容量が大きく、かつ充放電サイクルによる充放電容量の低下が少ないもの、すなわち、良好なサイクル特性を有し、かつ高い充放電容量及び急速充放電特性を有するリチウム二次電池用負極を提供するものである。
請求項6記載の発明は、電極作製条件の変動による粒子の過剰な変形、黒鉛質粒子の配向を抑制し、特に高い充放電電流で充放電を行った場合のリチウムの吸蔵・放出量が多くて充放電容量が大きく、かつ充放電サイクルによる充放電容量の低下が少ないもの、すなわち、良好なサイクル特性を有し、かつ高い充放電容量及び急速充放電特性を有するリチウム二次電池用負極の製造法を提供するものである。
請求項7記載の発明は、電極作製条件の変動による粒子の過剰な変形、黒鉛質粒子の配向を抑制し、特に高い充放電電流で充放電を行った場合のリチウムの吸蔵・放出量が多くて充放電容量が大きく、かつ充放電サイクルによる充放電容量の低下が少ないもの、すなわち、良好なサイクル特性を有し、かつ高い充放電容量及び急速充放電特性を有するリチウム二次電池を提供するものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、孔径が0.01〜100μmの範囲の細孔に基づく細孔容積が異なる、2種以上の黒鉛質粒子の混合物を含有してなるリチウム二次電池用負極に関する。また本発明は、前記細孔容積が異なる2種以上の黒鉛質粒子の混合物が、0.01〜100μmの範囲の細孔容積が0.4cc/g以上の黒鉛質粒子と、0.01〜100μmの範囲の細孔容積が0.08cc/g以上0.4cc/g未満の黒鉛質粒子を含むものであるリチウム二次電池用負極に関する。また本発明は、前記細孔容積が異なる2種以上の黒鉛質粒子のそれぞれが、単独で測定された放電容量が300mAh/g以上であり、かつそれらの黒鉛質粒子の放電容量の差が、最も放電容量の大きな黒鉛質粒子の放電容量の値を基準として10%以内である黒鉛質粒子であるリチウム二次電池用負極に関する。また本発明は、前記黒鉛質粒子の少なくとも1種は、扁平状の粒子が複数、配向面が非平行となるように集合又は結合した構造を有するものであるリチウム二次電池用負極に関する。
【0013】
また本発明は、前記細孔容積が異なる2種以上の黒鉛質粒子がそれぞれ、扁平状の粒子が複数、配向面が非平行となるように集合又は結合した構造を有するものであるリチウム二次電池用負極に関する。
また本発明は、黒鉛化可能な骨材又は黒鉛と黒鉛化可能なバインダを含む材料に黒鉛化触媒を添加して混合する工程、焼成・黒鉛化する工程、粉砕する工程の各工程を含む方法で黒鉛質粒子を製造し、別途、前記と同様の各工程を含む方法で前記黒鉛質粒子と、孔径が0.01〜100μmの範囲に基づく細孔の細孔容積が異なる黒鉛質粒子を製造し、製造された2種以上の黒鉛質粒子を混合し、これを負極材料とすることを特徴とするリチウム二次電池用負極の製造法に関する。
さらに本発明は、前記のいずれかに記載の負極と正極を有してなるリチウム二次電池に関する。
【0014】
【発明の実施の形態】
一般に、炭素材料を用いたリチウム二次電池は、リチウムイオンを吸蔵・放出する炭素質物からなる負極と正極と非水電解液を有するが、本発明におけるリチウム二次電池用負極は、前記炭素質物が、孔径が0.01〜100μmの範囲の細孔に基づく細孔容積が異なる2種以上の黒鉛質粒子の混合物を含むことを特徴とする。ここで黒鉛質粒子が1種類では細孔容積が大きい場合、電極の作製条件によっては粒子が過剰に変形し黒鉛結晶が集電体の面方向に配向し易く、サイクル特性、急速充放電特性が劣化し、充放電容量が低下し易い。一方細孔容積が小さい場合、粒子内への電解液の浸透が不十分であり急速充放電特性が低下する。孔径が前記範囲の細孔に基づく細孔容積は、水銀圧入法による細孔径分布測定で測定される。
【0015】
前記2種以上の黒鉛質粒子としては、孔径が0.01〜100μmの範囲の細孔容積が0.4cc/g以上の黒鉛質粒子と、孔径が0.01〜100μmの範囲の細孔容積が0.08cc/g以上0.4cc/g未満の黒鉛質粒子を含むことが好ましい。
ここで、前者の黒鉛質粒子、即ち細孔容積の大きい黒鉛質粒子の細孔容積の上限については特に制限はないが、細孔容積が過剰に多いと電極密度の低下が生じ体積当たりの充放電容量が低下するので2.0cc/g以下とすることが好ましい。また、急速充放電特性がより優れる点で0.4〜0.9cc/gの範囲であることがより好ましい。
【0016】
一方、小さな細孔容積を有する黒鉛質粒子の、孔径が0.01〜100μmの範囲の細孔容積が0.08cc/g以上、0.4cc/g未満であることが好ましいのは、電極作製時の過剰な粒子変形を抑制し、且つ良好は急速充放電特性が得られるためである。また、より良好な急速充放電特性を得るために0.15〜0.35cc/gの範囲であることがより好ましい。
【0017】
上記の2種の細孔容積の黒鉛質粒子の混合比については特に制限はなく、目的とするリチウム二次電池の設計に合わせて選択される。
その混合比は、電極作製時の過剰な粒子変形を抑制し、且つ良好な急速充放電特性が得られる点で細孔容積の大きな黒鉛質粒子/細孔容積の小さな黒鉛質粒子の重量比で98/2〜20/80とすることが好ましく、90/10〜50/50とすることがより好ましい。
また、3種以上の黒鉛質粒子を含む場合、孔径が0.01〜100μmの範囲の細孔容が0.4cc/g以上の黒鉛質粒子と、孔径が0.01〜100μmの範囲の細孔容積が0.08cc/g以上0.4cc/g未満の黒鉛質粒子に分類したときに、それぞれの割合が前記の範囲となることが好ましい。
【0018】
また本発明において、2以上の黒鉛質粒子のいずれも、(002)面の格子面間隔d002、c軸方向の結晶子サイズLc、真密度がそれぞれ0.338nm以下、50nm以上、2.21g/cm3以上とすることが負極全体での充放電容量を高めるという点で好ましい。また、それぞれの黒鉛質粒子は、単独で測定された放電容量が300mAh/g以上であり、かつそれらの黒鉛質粒子の放電容量の差が、最も放電容量の大きな黒鉛質粒子の放電容量の値を基準として10%以内である黒鉛質粒子であることが好ましい。これにより充放電容量の変化(低下)を伴わずに2以上の黒鉛質粒子を組み合わせた効果を得ることができる。ここで、単独で測定された放電容量とは、各黒鉛質粒子を用いて公知の手法で作製された負極を用い、対極を金属リチウムとして公知の手法で測定された一サイクル目の放電容量を意味する。
【0019】
本発明において、この放電容量の測定は、具体的には下記の方法で行うことができる。
黒鉛質粒子90重量%に、N−メチル−2−ピロリドンに溶解したポリ弗化ビニリデン(PVDF)を固形分で10重量%加えて混練して黒鉛ペーストを作製し、この黒鉛ペーストを厚さ10μmの圧延銅箔に塗布し、さらに乾燥し負極とする。
作製した試料電極を3端子法による定電流充放電を行い、リチウム二次電池用負極としての評価を行う。図2はこの測定に用いたリチウム二次電池の概略図である。図2に示すようにガラスセル9に、電解液10としてLiPF4をエチレンカーボネート(EC)及びジメチルカーボネート(DMC)(ECとDMCは体積比で1:1)の混合溶媒に1モル/リットルの濃度になるように溶解した溶液を入れ、試料電極(負極)11、セパレータ12及び対極(正極)13を積層して配置し、さらに参照電極14を上部から吊るしてリチウム二次電池を作製して行う。対極13及び参照電極14には金属リチウムを使用し、セパレータ12にはポリエチレン微孔膜を使用する。0.5mA/cm2の定電流で、5mV(V vsLi/Li+)まで充電し、1V(V vs Li/Li+)まで放電する試験により放電容量を測定する。
【0020】
この方法で測定された各黒鉛質粒子の放電容量が300mAh/g未満の場合、組み合わせて用いた時の充放電容量、急速充放電特性、サイクル特性の改善が小さいか低下する場合がある。
【0021】
また、負極を構成する2以上の細孔容積の異なる黒鉛質粒子の形状がほぼ等しいことが適当であり、具体的には、いずれもアスペクト比が5以下であることが好ましく、1〜3であることがより好ましい。これにより、2以上の細孔容積の異なる黒鉛質粒子を混合して負極を構成した場合、これらの黒鉛質粒子の均一な分布が容易に実現され、ばらつきの少ない良好な特性のリチウム二次電池を得ることができる。
なお、アスペクト比は、黒鉛質粒子の長軸方向の長さをA、短軸方向の長さをBとしたとき、A/Bで表される。本発明におけるアスペクト比は、顕微鏡で黒鉛質粒子を拡大し、任意に100個の黒鉛質粒子を選択し、A/Bを測定し、その平均値をとったものである。
【0022】
また、負極を構成する2以上の黒鉛質粒子の比表面積はほぼ等しくすることが適当であり、具体的にはいずれも0.5〜5.0m2/gの範囲とすることが好ましく、これによって細孔容積の異なる2以上の黒鉛質粒子を組み合わせて負極を作製しても不可逆容量の増加を伴わず、また負極を作製する際に使用する黒鉛質粒子とバインダーと溶媒の混合物の粘度の変化を最小限とすることができる。
【0023】
また、負極を構成する2以上の黒鉛質粒子の構造としては、2種以上の黒鉛質粒子の少なくとも1種、より好ましくは2種以上が扁平状の粒子を複数、配向面が非平行となるように集合又は結合させた構造であることが好ましい。
ここで、扁平状の粒子とは、長軸と短軸を有する形状の粒子のことであり、完全な球状でないものをいう。例えば鱗状、鱗片状、一部の塊状等の形状のものがこれに含まれる。
複数の扁平状の粒子において、配向面が非平行とは、それぞれの粒子の形状において有する扁平した面、換言すれば最も平らに近い面を配向面として、複数の粒子がそれぞれの配向面を一定の方向にそろうことなく集合している状態をいう。
個々の扁平状の粒子は、材質的には、黒鉛化可能な骨材または黒鉛であることが好ましい。
【0024】
この黒鉛質粒子において扁平状の粒子は集合又は結合しているが、結合とは互いの粒子がバインダー等を介して接着されている状態をいい、集合とは互いの粒子がバインダー等で接着されてはないが、その形状等に起因して、その集合体としての形状を保っている状態をいう。機械的な強度の面から、結合しているものが好ましい。
該構造の黒鉛質粒子を負極に使用すると、集電体上に黒鉛結晶が配向し難く、負極黒鉛にリチウムを吸蔵・放出し易くなるため、得られるリチウム二次電池の急速充放電特性及びサイクル特性を向上させることができる。
【0025】
本発明に用いられる黒鉛質粒子の製造方法に特に制限はないが、前述の各特性、形状、構造の黒鉛質粒子が比較的容易に得られることから、少なくとも1種、より好ましくはすべてが、黒鉛化可能な骨材又は黒鉛と黒鉛化可能なバインダを含む材料に黒鉛化触媒を添加して混合する工程、焼成・黒鉛化する工程、粉砕する工程の各工程を含む方法で製造されたものであることが好ましい。
この方法において、より具体的にいくつかの方法を挙げることができる。
第1の方法は、黒鉛化可能な骨材又は黒鉛と、黒鉛化可能なバインダとしてタール又はピッチを用い、これに黒鉛化触媒を添加して混合し、ついで焼成・黒鉛化した後、粉砕する方法である。
【0026】
黒鉛化可能な骨材としては、フルードコークス、ニードルコークス等の各種コークス類が好ましい。また、骨材として天然黒鉛や人造黒鉛などの既に黒鉛化されているものを使用することもできる。
黒鉛化可能なバインダとしては、石炭系、石油系、人造等の各種ピッチ、タールが使用される。
バインダの配合量は、特に制限されないが、黒鉛化可能な骨材又は黒鉛に対し、5〜80重量%添加することが好ましく、10〜80重量%添加することがより好ましく、15〜80重量%添加することがさらに好ましい。バインダの量が多すぎたり少なすぎると、作製する黒鉛質粒子のアスペクト比及び比表面積が大きくなるという傾向がある。
【0027】
黒鉛化可能な骨材又は黒鉛とバインダの混合方法は、特に制限はなく、ニーダー等を用いて行われるが、バインダの軟化点以上の温度で混合することが好ましい。具体的にはバインダがピッチ、タール等の際には、50〜300℃が好ましい。
黒鉛化触媒としては、鉄、ニッケル、チタン、ホウ素、珪素等、これらの酸化物、炭化物、窒化物等が使用可能である。黒鉛化触媒は、黒鉛化可能な骨材又は黒鉛と黒鉛化可能なバインダに1〜50重量%添加することが好ましい。その添加量が1重量%未満であると黒鉛質粒子の結晶の発達が悪くなり、充放電容量が低下する傾向にある。一方、50重量%を越えると、均一に混合することが困難となり、作業性の悪化及び得られる黒鉛質粒子の特製のばらつきが大きくなる傾向にある。
【0028】
黒鉛化可能な骨材又は黒鉛とバインダに黒鉛化触媒を添加して混合し、焼成・黒鉛化を行う。焼成の前に、必要に応じて前記混合物を適当な形に成形しても良い。焼成は前記混合物が酸化しがたい雰囲気で行うことが好ましく、例えば窒素雰囲気中、アルゴンガス中、真空中で焼成する方法等が挙げられる。
黒鉛化の温度は2000℃以上が好ましく、2500℃以上であることが好ましく、2800〜3200℃であることがさらに好ましい。黒鉛化温度が低いと、黒鉛の結晶の発達が悪くなると共に、黒鉛化触媒が作製した黒鉛質粒子に残存し易くなり、いずれの場合も充放電容量が低下する傾向にある。一方、黒鉛化の温度が高すぎると、黒鉛が昇華することがある。
【0029】
次に、得られた黒鉛化物を粉砕する。黒鉛化物の粉砕方法については特に制限を設けないが、ジェットミル、振動ミル、ピンミル、ハンマーミル等の既知の方法及びこれらの複数を組み合わせて用いることができる。粉砕後の平均粒子径は1〜100μmが好ましく、10〜50μmがより好ましい。平均粒子径は大きすぎる場合、作製した電極表面に凸凹ができやすくなる。
【0030】
得られた黒鉛質粒子はそのまま使用することも可能であるが、さらに非酸化性雰囲気中で400℃以上の温度で加熱処理してもよい。この処理により比表面積を低下させることができ、リチウム二次電池の安全性及び不可逆容量を改善することができる。非酸化性雰囲気としては、例えば窒素雰囲気、アルゴン雰囲気、真空等が挙げられる。
【0031】
第2の方法としては、黒鉛化可能な骨材又は黒鉛と黒鉛化可能なバインダに黒鉛化触媒を1〜50重量%添加して混合し、粉砕し、ついで、不融化処理し、その後、焼成・黒鉛化して製造する方法がある。
この方法の第1の方法との違いは、材料の混合物を粉砕し、次いで不融化処理を行う点である。
粉砕に際しては、最終的に得られる黒鉛質粒子の平均粒子径が100μm以下、好ましくは50μm以下となるように混合物の粒子径を選択することが好ましい。
粉砕方法としては特に限定しないが、ハンマーミル、ピンミル、振動ミル、ジュエットミル等の粉砕装置及びこれらを複数組み合わせて使用することが出来る。また、必要であれば粉砕して得られた粒子を分級することができる。分級の方法としては特に限定しないが、機械式分級機、風力式分級機等から適時、最適な機種が選択される。
【0032】
不融化処理方法としては、混合物粉末が焼成工程で互いに融着することを防止できる方法であれば特に限定されず、各種ピッチ類の不融化に一般的に用いられている酸化剤(空気、酸素、NO2、塩素、臭素等)と接触させ、さらに必要に応じて適当な温度に加熱する乾式法、硝酸水溶液、塩素水溶液、硫酸水溶液、過酸化水素水溶液等を用いた湿式法、並びにこれらを組み合わせた方法によって達成することができる。また、熱硬化性樹脂を混合物粉体の表面に被覆することによっても目的とする焼成工程での粒子の融着を防止することが可能である。
被覆する熱硬化性樹脂については特に限定しないが、用いるバインダの融解温度以下で硬化する樹脂であれば使用可能であり、フェノール樹脂、フルフリルアルコール樹脂、ポリイミド樹脂、セルロース樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂等が好ましい。不融化処理の後、必要であれば再度粉砕、分級処理を行っても良い。不融化処理を施した混合物粉体は、前記第1の方法に従って、焼成、黒鉛化することができる。
【0033】
第3の方法としては、黒鉛化可能な骨材又は黒鉛と、黒鉛化可能なバインダとして熱硬化性樹脂を用い、これらに黒鉛化触媒を添加して混合し、粉砕し、次いで焼成・黒鉛化して製造する方法である。
この方法は、バインダとして熱硬化性樹脂を用い、混合物を粉砕することが第1の方法との違いである。
熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、フルフリルアルコール樹脂、ポリイミド樹脂、セルロース樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、塩素化ポリ塩化ビニル樹脂などが使用できる。黒鉛化可能な骨材又は黒鉛とバインダの混合方法は、特に制限はなく、ニーダー等を用いて行われるが、その温度は熱硬化性樹脂の場合には、20〜100℃が好ましい。
【0034】
黒鉛化可能な骨材又は黒鉛、バインダとしての熱硬化性樹脂との配合比については特に制限しないが、粉砕物の焼成過程で粒子の融着が起こらない程度に熱硬化性樹脂の配合量を設定することが必要であり、一方、過剰に熱硬化性樹脂の割合を増やすと得られる黒鉛質粒子の黒鉛化度が低下し、充放電容量が低下するので好ましくない。これらの点から熱硬化性樹脂の配合量は、黒鉛化可能な骨材又は黒鉛に対し、5〜80重量%添加することが好ましい。
混合物の粉砕条件は前記第2の方法に従うことができる。また、焼成・黒鉛化の条件は前記第1の方法に従うことができる。
【0035】
本発明においては、少なくとも2種の黒鉛質粒子は、いずれも、前記第1、第2及び第3の方法から選択される少なくとも1種の方法でそれぞれ製造された粒子であることが高い充放電容量、良好な急速充放電特性、少ない不可逆容量、良好なサイクル特性を実現する上で好ましい。
【0036】
上記により得られる孔径が0.01〜100μmの範囲の細孔容積が異なる2以上の黒鉛質粒子は、黒鉛質粒子同士を結着するための有機系結着剤と均一に混合した後、加圧成形するか、または有機溶媒等を用いてペースト化して集電体上に塗布乾燥後プレスするなど、公知の方法でリチウム二次電池用負極とすることができる。
有機系結着剤としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンプロピレンポリマー、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、イオン導電性の大きな高分子化合物が使用できる。
イオン導電性高分子化合物としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンオキサイド、ポリエピクロルヒドリン、ポリフォファゼン、ポリアクリロニトリル等が使用できる。
有機系結着剤の含有量は、黒鉛質粒子と有機系結着剤との混合物に対して3〜20重量%とする事が好ましい。
集電体としては、例えばニッケル、銅等の箔、メッシュなどが使用できる。
【0037】
上記により得られるリチウム二次電池用負極は、充放電可能なリチウムを含有する活物質から構成した正極と組み合わせてリチウム二次電池を構成する。ここで使用される正極活物質としては、LixMyOz(ここでM=V、Mn,Fe、Co、Niから選ばれる少なくとも一種を主体、x=0.05〜1.2、y=1或いは2、z=1.5〜5)で表されるリチウムを含有する遷移金属酸化物が挙げられる。
またこれらに、リチウム以外のアルカリ金属、アルカリ土類金属、上記M以外の遷移金属、あるいは周期律表13〜15族元素(Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、P、B)などを含ませてもよい。
正極にはさらに活物質としてMnO2、MoO3、V2O5、TiO2、TiS2、FeS、活性炭などの無機化合物やポリアニリンなどの高分子化合物等を選ぶこともできる。この場合には、予め、負極に所定量のリチウムを吸蔵させるか、又は所定量のリチウムを圧着させて使用することもできる。
【0038】
リチウム二次電池にはさらに非水系電解液が含まれる。非水系電解液としては、リチウム塩を高誘電率の有機溶媒に溶解させた溶液が好ましい。リチウム塩については特に制限はなく、LiClO4、LiPF6、LiBF4、LiCF3SO3等を使用することが出来る。また、有機溶媒は、リチウム塩を溶解して電気化学的に安定性を与え、かつ構成する負極・正極材に対して電気化学的に安定性を有するものであればよい。例えばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、1、2ージメトキシエタン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、スルホラン、γーブチロラクトン、これらの混合物等が用いられる。また、電解質としてポリフッ化ビニリデン等の高分子固体電解質に含ませた有機電解液を使用することもできる。
【0039】
本発明のリチウム二次電池においては、液体の電解液を用いる場合は、正極と負極と非水系電解液の他に、両極の接触を防止し、かつ電解液を保持し、リチウムイオンを通過できる機能を有するセパレータと、電極材を保持して集電する機能を有する集電体とを組み合わせて用いることが好ましい。
セパレータとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン又はポリテトラフルオロエチレン等の多孔質フィルムや不織布、織布等が挙げられる。セパレータの厚さは20〜200μm程度が好ましい。
【0040】
また、集電体としては、正極・負極の活物質に対して電気化学的に安定性を有する導体を使用することが出来る。例えば、ニッケル、チタン、ステンレス、銅、アルミニウムが挙げられる。
また、本発明の水銀圧入法で測定される0.01〜100μmの範囲の細孔の細孔容積が異なる2以上の黒鉛質粒子を含有してなる負極を備えたリチウム二次電池は、円筒型、箱型、コイン型、ボタン型、ペーパー型、カード型など、様々な形状とすることが出来る。
【0041】
こうして得られるリチウム二次電池において、仮に負極に含まれる粒子が1種の黒鉛質粒子、例えば、孔径が0.01〜100μmの範囲に0.4cc/g以上の細孔容積を有する黒鉛質粒子だけでは、粒子の過剰な変形が無い状態では、優れた急速充放電特性及びサイクル特性を有するが、負極作製条件等に起因して粒子の過剰な変形は生じた場合、偏平な粒子は集電体面に平行に配向し易く、また粒子内及び粒子間の空隙も減少するため、リチウムイオンのドープ、脱ドープが起こりづらくなり、急速充放電特性及びサイクル特性が低下してしまう。そこで、上記黒鉛質粒子に孔径が0.01〜100μmの範囲に細孔容積を有し、且つ上記黒鉛質粒子よりも少ない細孔容積を有する黒鉛質粒子を添加すると、該黒鉛質粒子は比較的緻密質であるため、上記黒鉛質粒子の過剰な変形を抑制し、その結果として急速充放電特性及びサイクル特性が改善される。また、該黒鉛質粒子は、それ自身が高い充放電容量を有し、また孔径が0.01〜100μmの範囲に細孔を有しているため急速充放電特性が比較的良好であり、さらに形状、真密度などの特性についても上記黒鉛質粒子と類似しているため、均一な混合が容易に実現できるため、高い充放電容量のリチウム二次電池を安定して作製することが可能である。
【0042】
【実施例】
以下、本発明の実施例及び比較例を示して、その効果を具体的に説明する。
実施例1
(リチウム二次電池の作製)
図1に円筒型リチウムイオン二次電池の一例の一部断面正面図を示す。図1において、1は正極、2は負極、3はセパレータ、4は正極タブ、5は負極タブ、6は正極蓋、7は電池缶及び8はガスケットである。図1に示すリチウム二次電池は以下のようにして作製した。
【0043】
(正極の作製)
正極活物質としてのLiCoO 288重量部に、導電剤として平均粒子径が1μmの鱗片状天然黒鉛7重量部と、結着剤としてのポリ弗化ビニリデン5重量部を添加し、これにN−メチル−2−ピロリドンを加え混合して正極合剤のスラリーを調製した。次いで、この正極合剤を正極集電体としてのアルミニウム箔 (厚さ25μm)にドクターブレード法により両面に塗付、乾燥、次いでローラープレスによって電極を加圧成形した。これを幅40mmで長さが285mmの大きさに切り出して正極10を作製した。但し、正極10の両端の長さ10mmの部分は正極合剤が塗布されておらずアルミニウム箔が露出しており、この一方に正極タブ13を超音波接合によって圧着した。
【0044】
(黒鉛質粒子Aの作製)
平均粒子径が5μmのコークス粉末50重量部、タールピッチ20重量部、平均粒子径が48μmの炭化珪素7重量部及びコールタール10重量部を混合し、200℃で1時間混合した。得られた混合物を粉砕し、ペレット状に加圧成形し、次いで窒素雰囲気中、900℃まで加熱、次いで同じく窒素雰囲気中で3000℃まで昇温し黒鉛化を行った。得られた黒鉛化物をハンマーミルを用いて粉砕し、平均粒径が20μmの黒鉛質粒子を作製した。この黒鉛質粒子のBET法による比表面積は3.6m2/gであった。得られた黒鉛質粒子について水銀圧入法による細孔径分布測定を行った結果、0.01〜100μmの範囲に細孔を有し、この細孔体積は0.9cc/gであった。また、得られた黒鉛質粒子を100個任意に選び出し、アスペクト比を測定した結果、2.0であり、黒鉛質粒子のX線広角回折による結晶の層間距離d(002)は0.336nm及び結晶子の大きさLc(002)は100nm以上であった。さらに、得られた黒鉛質粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)写真によれば、この黒鉛質粒子は、偏平状の粒子が複数、配向面が非平行となるように集合又は結合した構造をしていた。以上のようにして作製した黒鉛質粒子を以下A試料を称する。
【0045】
(黒鉛質粒子Bの作製)
平均粒径が5μmのコークス粉末50重量部、タールピッチ30重量部、平均粒子径が48μmの炭化珪素3重量部及びコールタール10重量部を混合し、200℃で1時間混合した。得られた混合物を粉砕し、ペレット状に加圧成形し、次いで窒素雰囲気中、900℃まで加熱、次いで同じく窒素雰囲気中で3000℃まで昇温し黒鉛化を行った。得られた黒鉛化物をハンマーミルを用いて粉砕し、平均粒径が20μmの黒鉛質粒子を作製した。この黒鉛質粒子のBET法による比表面積は3.3m2/gであった。得られた黒鉛質粒子について水銀圧入法による細孔径分布測定を行った結果、0.01〜100μmの範囲に細孔を有し、この細孔体積は0.30cc/gであった。また、得られた黒鉛質粒子を100個任意に選び出し、アスペクト比を測定した結果、1.8であり、黒鉛質粒子のX線広角回折による結晶の層間距離d(002)は0.336nm及び結晶子の大きさLc(002)は100nm以上であった。さらに、得られた黒鉛質粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)写真によれば、この黒鉛質粒子は、偏平状の粒子が複数、配向面が非平行となるように集合又は結合した構造をしていた。以上のようにして作製した黒鉛質粒子を以下B試料を称する。
【0046】
(黒鉛質粒子Cの作製)
平均粒径が5μmのコークス粉末50重量部、タールピッチ20重量部、平均粒子径が48μmの炭化珪素7重量部及びコールタール10重量部を混合し、200℃で1時間混合した。得られた混合物を粉砕した。次いで混合物を空気中、250℃で30分加熱処理し、タールピッチを不融化した。不融化した該混合物を窒素雰囲気中、900℃まで加熱、次いで同じく窒素雰囲気中で3000℃まで昇温し黒鉛化を行った。得られた黒鉛質粒子の平均粒径は23μmであった。この黒鉛質粒子のBET法による比表面積は2.5m2/gであった。得られた黒鉛質粒子について水銀圧入法による細孔径分布測定を行った結果、0.01〜100μmの範囲に細孔を有し、この細孔体積は0.8cc/gであった。また、得られた黒鉛質粒子を100個任意に選び出し、アスペクト比を測定した結果、1.7であり、黒鉛質粒子の、黒鉛質粒子のX線広角回折による結晶の層間距離d(002)は0.336nm及び結晶子の大きさLc(002)は100nm以上であった。さらに、得られた黒鉛質粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)写真によれば、この黒鉛質粒子は、偏平状の粒子が複数、配向面が非平行となるように集合又は結合した構造をしていた。以上のようにして作製した黒鉛質粒子を以下C試料を称する。
【0047】
(黒鉛質粒子Dの作製)
平均粒径が5μmのコークス粉末50重量部、タールピッチ20重量部、ノボラック型フェノール樹脂(商品名 レジトップPGA−2504、群栄化学(株)製)10重量部、平均粒子径が48μmの炭化珪素7重量部及びコールタール10重量部を混合し、200℃で1時間混合した。得られた混合物を粉砕し、窒素雰囲気中、900℃まで加熱、次いで同じく窒素雰囲気中で3000℃まで昇温し黒鉛化を行った。得られた黒鉛質粒子の平均粒径は21μmの黒鉛質粒子を作製した。この黒鉛質粒子のBET法による比表面積は2.6m2/gであった。得られた黒鉛質粒子について水銀圧入法による細孔径分布測定を行った結果、0.01〜100μmの範囲に細孔を有し、この細孔体積は0.70cc/gであった。また、得られた黒鉛質粒子を100個任意に選び出し、アスペクト比を測定した結果、1.7であり、黒鉛質粒子の、黒鉛質粒子のX線広角回折による結晶の層間距離d(002)は0.336nm及び結晶子の大きさLc(002)は100nm以上であった。さらに、得られた黒鉛質粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)写真によれば、この黒鉛質粒子は、偏平状の粒子が複数、配向面が非平行となるように集合又は結合した構造をしていた。以上のようにして作製した黒鉛質粒子を以下D試料を称する。
【0048】
(黒鉛質粒子の放電容量の測定)
黒鉛質粒子90重量%に、N−メチル−2−ピロリドンに溶解したポリ弗化ビニリデン(PVDF)を固形分で10重量%加えて混練して黒鉛ペーストを作製した。この黒鉛ペーストを厚さ10μmの圧延銅箔に塗布し、さらに乾燥し負極とした。
作製した試料電極を3端子法による定電流充放電を行い、リチウム二次電池用負極としての評価を行った。
図2は実験に用いたリチウム二次電池の概略図である。図2に示すようにガラスセル9に、電解液10としてLiPF4をエチレンカーボネート(EC)及びジメチルカーボネート(DMC)(ECとDMCは体積比で1:1)の混合溶媒に1モル/リットルの濃度になるように溶解した溶液を入れ、試料電極(負極)11、セパレータ12及び対極(正極)13を積層して配置し、さらに参照電極14を上部から吊るしてリチウム二次電池を作製して行った。対極13及び参照電極14には金属リチウムを使用し、セパレータ12にはポリエチレン微孔膜を使用した。0.5mA/cm2の定電流で、5mV(V vs Li/Li+)まで充電し、1V(V vs Li/Li+)まで放電する試験を繰り返した。得られた結果を表1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
(負極の作製)
A試料90重量部とB試料10重量部とを均一に混合し、次いでこの混合黒鉛と結着剤としてのPVDFとを、重量比90:10の比率で混合し、これを溶剤(N―メチル−2−ピロリドン)に分散させてスラリーととした後、負極集電体としての銅箔(厚さ10μm)の両面にドクターブレード法により塗付し、乾燥、次いでローラープレスによって電極を加圧成形して負極とした。これを幅40mmで長さが290mmの大きさに切り出して負極を作製した。この負極を正極と同様に、両端の長さ10mmの負極合剤が塗布されていない部分の一方に負極タブを超音波接合によって圧着した。
【0051】
(電解液の調製)
エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとの等体積混合溶媒に、LiPF6を1モル/リットル溶解し、電解液を調製した。
(電池の作製)
前記正極、ポリエチレン製多孔質フィルム(厚さ25μm、幅44mm)からなるセパレータ及び前記負極をそれぞれこの順序で積層した後、前記負極が外側に位置するように渦巻き状に捲回して電極群を作製した。この電極群をステンレス製の電池缶にそれぞれ収納し、負極タブを缶底溶接し、正極蓋をかしめるための絞り部を設けた。この後、前記電解液を電池缶に注入した後、正極タブを正極蓋に溶接し、正極蓋をかしめて円筒型リチウム二次電池を組み立てた。
【0052】
実施例2
負極作製でのA試料及びB試料の配合比をそれぞれ、80重量部、20重量部とした以外は実施例1と同様にして円筒型リチウム二次電池を組み立てた。
【0053】
実施例3
負極作製でのA試料及びB試料の配合比をそれぞれ、70重量部、30重量部とした以外は実施例1と同様にして円筒型リチウム二次電池を組み立てた。
【0054】
実施例4
負極作製でのA試料及びB試料の配合比をそれぞれ、60重量部、40重量部とした以外は実施例1と同様にして円筒型リチウム二次電池を組み立てた。
【0055】
実施例5
負極作製でのA試料及びB試料の配合比をそれぞれ、50重量部、50重量部とした以外は実施例1と同様にして円筒型リチウム二次電池を組み立てた。
【0056】
比較例1
負極作製でのA試料及びB試料の配合比をそれぞれ、100重量部、0重量部とした以外は実施例1と同様にして円筒型リチウム二次電池を組み立てた。
【0057】
比較例2
負極作製でのA試料及びB試料の配合比をそれぞれ、0重量部、100重量部とした以外は実施例1と同様にして円筒型リチウム二次電池を組み立てた。
【0058】
実施例6
負極作製において、C試料とB試料の配合比をそれぞれ、90重量部、10重量部とした以外は実施例1と同様にして円筒型リチウム二次電池を組み立てた。
【0059】
実施例7
負極作製において、C試料とB試料の配合比をそれぞれ、80重量部、20重量部とした以外は実施例1と同様にして円筒型リチウム二次電池を組み立てた。
【0060】
実施例8
負極作製において、C試料とB試料の配合比をそれぞれ、70重量部、30重量部とした以外は実施例1と同様にして円筒型リチウム二次電池を組み立てた。
【0061】
実施例9
負極作製において、C試料とB試料の配合比をそれぞれ、60重量部、40重量部とした以外は実施例1と同様にして円筒型リチウム二次電池を組み立てた。
【0062】
実施例10
負極作製において、C試料とB試料の配合比をそれぞれ、50重量部、50重量部とした以外は実施例1と同様にして円筒型リチウム二次電池を組み立てた。
【0063】
比較例3
負極作製において、C試料とB試料の配合比をそれぞれ、100重量部、0重量部とした以外は実施例1と同様にして円筒型リチウム二次電池を組み立てた。
【0064】
実施例11
負極作製において、D試料とB試料の配合比をそれぞれ、90重量部、10重量部とした以外は実施例1と同様にして円筒型リチウム二次電池を組み立てた。
【0065】
実施例12
負極作製において、D試料とB試料の配合比をそれぞれ、80重量部、20重量部とした以外は実施例1と同様にして円筒型リチウム二次電池を組み立てた。
【0066】
実施例13
負極作製において、D試料とB試料の配合比をそれぞれ、70重量部、30重量部とした以外は実施例1と同様にして円筒型リチウム二次電池を組み立てた。
【0067】
実施例14
負極作製において、D試料とB試料の配合比をそれぞれ、60重量部、40重量部とした以外は実施例1と同様にして円筒型リチウム二次電池を組み立てた。
【0068】
実施例15
負極作製において、D試料とB試料の配合比をそれぞれ、50重量部、50重量部とした以外は実施例1と同様にして円筒型リチウム二次電池を組み立てた。
【0069】
比較例4
負極作製において、D試料とB試料の配合比をそれぞれ、100重量部、0重量部とした以外は実施例1と同様にして円筒型リチウム二次電池を組み立てた。
【0070】
得られた実施例1〜15及び比較例1〜4のリチウム二次電池について、充電終止電圧を4.15V、放電終止電圧を2.8Vとし、充放電電流を200mAから800mAの範囲で変化させ、急速充放電時の放電容量を測定した。その結果を比較例1の充放電電流200mAの時の放電容量を100%として表2及び表3に示す。また、充放電電流200mAとして各電池の充放電サイクル特性を測定した。その結果を比較例1のサイクル数1の時の放電容量を100%として表4及び表5に示す。
【0071】
【表2】
【0072】
【表3】
【0073】
【表4】
【0074】
【表5】
【0075】
表2及び表3より明らかなように、実施例の急速充放電特性は比較例と比較して良好であり、大きな充放電電流においても放電容量の低下が極めて少ないことが分かる。
また、表4及び表5より明らかなように、実施例のサイクル特性は、比較例と比較して良好であり、高いサイクル数を経ても大きな放電容量を維持できることが分かる。
【0076】
【発明の効果】
請求項1〜5記載のリチウム二次電池用負極は、電極作製条件の変動による粒子の過剰な変形、黒鉛質粒子の配向を抑制し、特に高い充放電電流で充放電を行った場合のリチウムの吸蔵・放出量が多くて充放電容量が大きく、かつ充放電サイクルによる充放電容量の低下が少ないもの、すなわち、良好なサイクル特性を有し、かつ高い充放電容量及び急速充放電特性を有するものである。
請求項6記載のリチウム二次電池用負極の製造法によれば、電極作製条件の変動による粒子の過剰な変形、黒鉛質粒子の配向を抑制し、特に高い充放電電流で充放電を行った場合のリチウムの吸蔵・放出量が多くて充放電容量が大きく、かつ充放電サイクルによる充放電容量の低下が少ないもの、すなわち、良好なサイクル特性を有し、かつ高い充放電容量及び急速充放電特性を有する負極が得られる。
請求項7記載のリチウム二次電池は、電極作製条件の変動による粒子の過剰な変形、黒鉛質粒子の配向を抑制し、特に高い充放電電流で充放電を行った場合のリチウムの吸蔵・放出量が多くて充放電容量が大きく、かつ充放電サイクルによる充放電容量の低下が少ないもの、すなわち、良好なサイクル特性を有し、かつ高い充放電容量及び急速充放電特性を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】円筒型リチウム二次電池の一部断面正面図である。
【図2】黒鉛質粒子の単独での放電容量の測定に用いたリチウム二次電池の概略図である。
【符号の説明】
1 正極
2 負極
3 セパレータ
4 正極タブ
5 負極タブ
6 正極蓋
7 電池缶
8 ガスケット
9 ガラスセル
10 電解液
11 試料電極(負極)
12 セパレータ
13 対極(正極)
14 参照極
Claims (7)
- 孔径が0.01〜100μmの範囲の細孔に基づく細孔容積が異なる、2種以上の黒鉛質粒子の混合物を含有してなるリチウム二次電池用負極であって、細孔容積が異なる2種以上の黒鉛質粒子の混合物が、0.01〜100μmの範囲の細孔容積が0.4cc/g以上の黒鉛質粒子と、0.01〜100μmの範囲の細孔容積が0.08cc/g以上0.4cc/g未満の黒鉛質粒子を含むものであり、細孔容積が異なる2種以上の黒鉛質粒子のそれぞれが、アスペクト比が5以下の黒鉛質粒子であるリチウム二次電池用負極。
- 細孔容積が異なる2種以上の黒鉛質粒子のそれぞれが、比表面積が0.5〜5.0m2/gの黒鉛質粒子である請求項1記載のリチウム二次電池用負極。
- 細孔容積が異なる2種以上の黒鉛質粒子のそれぞれが、単独で測定された放電容量が300mAh/g以上であり、かつそれらの黒鉛質粒子の放電容量の差が、最も放電容量の大きな黒鉛質粒子の放電容量の値を基準として10%以内である黒鉛質粒子である請求項1又は2記載のリチウム二次電池用負極。
- 黒鉛質粒子の少なくとも1種は、扁平状の粒子が複数、配向面が非平行となるように集合又は結合した構造を有するものである請求項1、2又は3記載のリチウム二次電池用負極。
- 細孔容積が異なる2種以上の黒鉛質粒子がそれぞれ、扁平状の粒子が複数、配向面が非平行となるように集合又は結合した構造を有するものである請求項1、2、3又は4記載のリチウム二次電池用負極。
- 黒鉛化可能な骨材又は黒鉛と黒鉛化可能なバインダを含む材料に黒鉛化触媒を添加して混合する工程、焼成・黒鉛化する工程、粉砕する工程の各工程を含む方法で黒鉛質粒子を製造し、別途、前記と同様の各工程を含む方法で前記黒鉛質粒子と、孔径が0.01〜100μmの範囲に基づく細孔の細孔容積が異なる黒鉛質粒子を製造し、製造された2種以上の黒鉛質粒子を混合し、これを負極材料とすることを特徴とする請求項1記載のリチウム二次電池用負極の製造法。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の負極又は請求項6記載の製造法により得られる負極と正極を有してなるリチウム二次電池。
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