JP3649698B2 - 化学気相成長装置および化学気相成長法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、化学気相成長装置および化学気相成長法に関し、より詳しくは、材料ガスの流量を正確に測定することにより適正量の材料ガスを成膜チェンバに送ることのできる化学気相成長装置および化学気相成長法に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体基板表面に原料となるガスを流して化学反応を起こし、所定の組成を有する膜を形成する化学気相成長法(CVD法)において、液体状態で貯蔵された原料を気化させることにより原料ガスを安定供給する、液体材料気化供給装置を備えた化学気相成長装置が広く用いられている。図14および図15に従来の液体材料気化供給装置の例を示す。
【0003】
図14の液体材料気化供給装置14は、液体材料をN2またはHe若しくはAr等の不活性ガスをキャリアとしてその気流中で加熱気化させる気化器を備える。
【0004】
図14において、タンク1402内の液体材料1403は、圧力源としての圧送用ガス1401により、配管1404および配管1406を介して気化器1407に圧送される。圧送用のガスとしては、例えばHeガスが使用される。配管1404と配管1406の間には、液体材料1403の流量を制御する液体流量制御器(LMFC:Liquid Mass Flow Controller、以下LMFCという)1405が配設されている。
【0005】
気化器1407の内部には液体材料1403を十分に気化可能な温度に加熱する部位(図示せず)が存在し、液体材料1403は該加熱部位に導入されて気化する。また、該加熱部位には配管1414および配管1416を介してキャリアガス1413も導入される。配管1414と配管1416の間には気体流量制御器(GMFC:Gas Mass Flow Controller、以下GMFCという)1415が配設されていて、キャリアガス1413の流量を制御する。
【0006】
気化した液体材料1403は材料ガスとなって、キャリアガス1413とともに配管1408および配管1410を介して成膜チェンバ1411に送られる。配管1408と配管1410の間には気体流量メータ(GMFM:Gas Mass Flow Meter、以下GMFMという)1409が配設されていて、材料ガスとキャリアガスとの混合ガスの流量を測定する。GMFM1409からの信号1417は、制御機構1418に入力される。
【0007】
配管1408、GMFM1409および配管1410は材料ガスが再び液化することのないよう、温度保持機構(図示せず)によって高温に保持されている。この温度は材料ガスにより異なるが、例えば60℃〜200℃である。成膜を行わないときは、配管1412を通じて材料ガスおよびキャリアガスを排気する。
【0008】
気化器1407から送り出される材料ガスの流量は、LMFC1405を製造レシピの値に設定して液体材料1403の流量により制御する場合もあるが、制御機構1418がGMFM1409からの出力1417に基いて気化器1407に信号1420を入力し、直接に気化器1407内の配管1408へ接続するバルブ(図示せず)の開閉を制御することによって成膜チェンバ1411に送るガスの流量を制御する場合もある。
【0009】
図15の液体材料気化供給装置15は、液体材料をバブリングにより気化させるバブリング用のタンク(以下、バブラという)を備える。
【0010】
液体材料1506はバブラ1505内に貯蔵されており、ヒータ1512により加熱されて蒸気圧が高められ、配管1502および配管1504を介して導入されたキャリアガス1501によりバブリングされて気化する。キャリアガス1501としてはN2またはHe若しくはAr等の不活性ガスが使用され、バブラ1505内に導入されるキャリアガス1501の流量は、配管1502と配管1504の間に配設されたGMFC1503によって制御される。
【0011】
気化した材料ガスは、キャリアガス1501とともに配管1507および配管1509を介して成膜チェンバ1510に送られる。配管1507と配管1509の間にはGMFM1508が配設されていて、材料ガスおよびキャリアガス1501の流量を測定することにより、適正量のガスが成膜チェンバ1510に送られるように制御する。
【0012】
配管1507、GMFM1508および配管1509は材料ガスが再び液化することのないよう、温度保持機構(図示せず)によって高温に保持されている。この温度は材料ガスにより異なるが、例えば60℃〜200℃である。成膜を行わないときは、配管1511を通じて材料ガスおよびキャリアガスを排気する。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
上記いずれの液体材料気化供給装置においても、半導体基板表面に所定の組成を有する信頼性の高い膜を安定して形成するためには、気化器から成膜チェンバに送られる材料ガスの流量を精密に制御することにより成膜条件に応じた適正量の材料ガスを成膜チェンバ内の半導体基板に供給する必要がある。しかしながら、従来のGMFMによる材料ガスの流量測定では、以下のような問題があった。
【0014】
第1に、使用する材料ガスの流量に対してキャリアガスの流量が数倍〜数千倍と多いことから、測定対象である材料ガスのスペクトル強度がキャリアガスのスペクトル強度に対して非常に弱くなる上にノイズとの分離も難しくなるため、材料ガスの流量を精度よく測定することができなかった。図12に従来のGMFMによる測定例を示す。図より、キャリアガスのスペクトル強度に比べて材料ガスのスペクトル強度が非常に小さいことがわかる。
【0015】
第2に、液体材料気化供給装置においてはGMFMが高温下に曝されるために、用いる電気部品の材料として高耐熱性を有する材料であることが必要とされ、汎用材料を使用することができなかった。また、センサ部での温度は保温温度よりも更に高温になるために、センサキャピラリ部で材料ガスが分解することにより流量測定ができなくなる場合があった。さらに、かかる材料ガスの熱分解により不純物が発生する場合もあった。
【0016】
第3に、従来の液体材料気化供給装置では、LMFCで液相材料の流量を制御することによって、成膜チェンバに送る材料ガスの流量を制御していた。しかしながら、例えばLMFCで制御された流量の液体材料が全て気化器で気化したとしても、その後で冷却されて再度液化した場合には、実際に成膜チェンバに送られる材料ガスの流量はLMFCでの設定値よりも少なくなる。
【0017】
図13は、BPSG(Boro−Phospho Silicate Glass)膜をシリコンウェハ上に形成した場合において、膜厚方向でのホウ素およびリンの濃度分布を示したものである。図13(1)は理想的な濃度分布を示したものであり、一方、図13(2)は従来の液体材料気化供給装置を用いて成膜した場合の濃度分布を示したものである。図において横軸はBPSG膜の膜厚を表しており、膜厚ゼロがシリコンウェハの表面に相当する。一方、縦軸はBPSG膜中でのホウ素およびリンの濃度を表していて、これらの濃度は図13(1)に示すように、BPSG膜の膜厚に依存せずにそれぞれ一定の値をとることが望ましい。しかし、図13(2)からわかるように、従来の液体材料気化供給装置を用いて成膜した場合には、ホウ素およびリンの濃度はともにある膜厚から減少している。これは、ホウ素含有有機ガスおよびリン含有有機ガスが気化器で気化した後に、例えば気化器内のいずれかの場所において冷却されることによって液化したために、成膜チェンバに導入されるこれらガスの流量が減少したことによるものである。
【0018】
したがって、上記のような場合、LMFCによる制御のみでは成膜チェンバに送る材料ガスの流量を十分に制御することはできないことから、従来より、気化器を通過した後の材料ガスの流量をGMFMで測定し、測定結果をフィードバックすることによりLMFCを制御する方法がとられている。しかしながら、前述のように、GMFMにおける材料ガスの信号はキャリアガスの信号に比べて非常に弱いためにLMFCで設定した材料ガスの流量とGMFMで測定した材料ガスの流量との差を補足することは困難であり、結果として設定値とは異なる流量の材料ガスが成膜チェンバへ送られることになるという問題があった。
【0019】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものである。即ち、本発明は、材料ガスの流量を正確に測定することにより適正量の材料ガスを成膜チェンバに送ることのできる液体材料気化供給装置を有する化学気相成長装置および化学気相成長法を提供することを目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】
本願請求項1に係る発明は、液体材料を気化して材料ガスを発生させる気化器と、前記気化器に導入する前記液体材料を所望の流量に制御する液体流量制御器と、キャリアガス源から前記気化器に導入するキャリアガスの流量を検出するとともに制御するガス流量制御器と、前記気化器からの前記材料ガスおよび前記キャリアガスを導入して、収納された基板上に成膜する成膜チェンバと、前記気化器と前記成膜チェンバを接続する配管に設けられ、前記材料ガスの赤外線透過率を測定する赤外線センサと、前記赤外線センサで測定した赤外線透過率と前記ガス流量制御器によって検出したキャリアガスの流量とから前記材料ガスの流量を算出して設定値と比較し、この比較結果に基づいて前記気化器から前記成膜チェンバに導入する前記材料ガスの流量を、前記気化器のバルブの開閉を制御することによって、または、前記材料ガスの流量が前記設定値に対して所定の許容範囲を超えた場合に警報信号を発生させることによって制御する制御機構とを備えたことを特徴とする。
【0021】
本願請求項2に係る発明は、請求項1に記載の化学気相成長装置において、前記液体材料は2種類以上あり、前記気化器および前記キャリアガス源は前記液体材料に対応して2以上配置され、前記気化器で発生する前記2種類以上の材料ガスの合流位置と前記成膜チェンバの間に1の前記赤外線センサが配置されることを特徴とする。
【0022】
本願請求項3に係る発明は、請求項1または2に記載の化学気相成長装置において、前記赤外線センサは、発光部からの赤外線を前記材料ガスを充満させたセル内を通過させて受光部で受けることにより、前記材料ガスについての赤外線透過率Tを測定する手段と、透過率Tと設定値T1とを比較して、T>T1である場合には、透過率Tから、前記セル内に前記材料ガスがない状態での透過率であるバックグラウンドの透過率を差し引く補正をする手段と、T<T1である場合には、警報信号を発して測定を中止する手段とを含むことを特徴とする。
【0023】
本願請求項4に係る発明は、請求項3に記載の化学気相成長装置において、前記赤外線センサがさらに前記発光部からの赤外線を反射させて前記受光部に入射させる反射部を有することにより、前記発光部から前記受光部までの光路長を変えることができることを特徴とする。
【0024】
本願請求項5に係る発明は、請求項4に記載の化学気相成長装置において、前記反射部が金属蒸着した鏡であることを特徴とする。
【0025】
本願請求項6に係る発明は、請求項4に記載の化学気相成長装置において、前記反射部がハーフミラーであることを特徴とする。
【0026】
本願請求項7に係る発明は、請求項3に記載の化学気相成長装置において、前記材料ガスの進行方向に対する前記セルの断面積が、前記気化器から前記セルに前記材料ガスを導入する配管部の断面積および前記セルから前記成膜チェンバへ前記材料ガスを排出する配管部の断面積より大きいことを特徴とする。
【0027】
本願請求項8に係る発明は、液体流量制御器を介して導入された所定の流量の液体材料を気化して材料ガスを発生させる気化器に、キャリアガス源からガス流量制御器を介してキャリアガスを導入し、そして前記材料ガスおよび前記キャリアガスを前記気化器から成膜チェンバに供給して基板上に成膜する化学気相成長法において、前記気化器と前記成膜チェンバとを接続する配管に設けた赤外線センサで前記材料ガスの赤外線透過率測定を行い、該透過率と前記ガス流量制御器によって検出される前記キャリアガスの流量とから前記材料ガスの流量を算出するとともに該流量と設定値とを比較し、この比較結果に基いて前記気化器から前記成膜チェンバに供給する前記材料ガスの流量を、前記気化器のバルブの開閉を制御することによって、または、前記材料ガスの流量が前記設定値に対して所定の許容範囲を超えた場合に警報信号を発生させることによって制御する化学気相成長法であることを特徴とする。
【0028】
本願請求項9に係る発明は、請求項8に記載の化学気相成長法において、前記赤外線透過率測定は、発光部からの赤外線を前記材料ガスを充満させたセル内を通過させて受光部で受けることにより、前記材料ガスについての赤外線透過率Tを測定する処理と、透過率Tと設定値T1とを比較する処理と、前記比較した結果がT>T1である場合には、透過率Tから、前記セル内に前記材料ガスがない状態での透過率であるバックグラウンドの透過率を差し引く補正をする処理と、前記比較した結果がT<T1である場合には、警報信号を発して測定を中止する処理とを含むことを特徴とする。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
【0030】
実施の形態1
図1は、本発明の実施の形態1に係る液体材料気化供給装置の一例を示したものである。図1において、液体材料気化供給装置1は、液体材料を貯蔵するタンク101、液体材料を気化する気化器105、キャリアガスを供給する供給系106および成膜チェンバ113を有する。タンク101内の液体材料は配管102および配管104を介して気化器105に導入される。配管102と配管104の間にはLMFC103が配設され、気化器105に導入される液体材料が所望の量となるように液体材料の流量を制御する。一方、供給系106からキャリアガスが配管107および配管109を介して気化器105に導入される。配管107と配管109の間にはGMFC108が配設されていて、気化器105に導入されるキャリアガスの流量が制御される。キャリアガスとしては、例えば、He、Ar等の不活性ガスやN2ガスを用いることができる。
【0031】
気化器105で気化した材料ガスとキャリアガスとの混合ガスは、配管110および配管112を介して成膜チェンバ113に送られる。配管110と配管112の間には赤外線センサ(以下、IRセンサという)111が配設されていて、材料ガスの流量を検出するのに用いる。ここで、赤外線はHe,Ar等の不活性ガスに対しては原理的に感度がないことから、キャリアガスとして不活性ガスを用いた場合、材料ガスに対してキャリアガスの量がいかに多くとも材料ガスの流量検出の妨げとなることはない。図2に、IRセンサによる測定例を示す。図より、IRセンサは材料ガスのみ検出し、キャリアガスについては検出しないことがわかる。
【0032】
一方、赤外線はN2に対しては感度を有する。したがって、キャリアガスとしてN2を使用する場合には、材料ガス検出の妨げとなるおそれがある。しかし、かかる場合であっても材料ガスの波数を適当に選択すれば、上記不活性ガスの場合と同様に、N2からの信号による妨げを受けることなく材料ガスを検出することができる。
【0033】
IRセンサ111からの出力115は制御機構116に送られ、制御機構116内の演算機能によって測定結果はリアルタイムでフーリエ変換されて材料ガスごとに特有のスペクトル強度が算出される。一方、予め材料ガスの流量とスペクトル強度との関係を実験により求めておく。ここで、図3は、キャリアガス流量を変えた場合の材料ガスの流量とスペクトル強度との関係の一例を示したものである。図より、材料ガスの流量が同じであってもキャリアガスの流量によってスペクトル強度が変化することがわかる。これは、キャリアガスの量を変えることによって混合ガス中に占める材料ガスの濃度が変化することによるものである。したがって、スペクトル強度から材料ガスの流量を求めるためには、予め、キャリアガスの流量に応じた材料ガス流量値とスペクトル強度との関係を把握することが必要である。
【0034】
上記関係を求めることにより、上記制御機構116によって算出されたスペクトル強度と、GMFC108からの出力値117によって把握されるキャリアガスの流量とから、実際に気化器105から発生する材料ガスの流量を求めることができる。そして、この値を制御機構116から気化器105に信号118によってフィードバックし、成膜条件に適した流量となるように、気化器105のバルブ(図示せず)の開閉を制御する。
【0035】
制御機構116は、前記フィードバックする構成ではなく、制御機構116で求まる材料ガスの流量を監視し、材料ガスの流量が設定値に対して所定の許容範囲を超えた場合には警報信号を発するような構成としてもよい。
【0036】
図4は、本実施の形態に係るIRセンサの平面図を示す。IRセンサ3は、セル302、発光部304、受光部305を有する。材料ガスとキャリアガスの混合ガスは、気化器(図示せず)より配管110を通じて矢印Aの方向に進行し、セル302に導入される。赤外線303は、発光部304から出てセル302の長手方向の一端に取り付けられた透過窓306を透過し、セル302内を長手方向に沿って進行した後、セル302の長手方向の他端に取り付けられた透過窓306′を透過して受光部305に到達する。
【0037】
透過窓の材料としては、例えば、石英を用いることができる。腐食性ガスを含有または発生する材料ガスを用いる場合には、透過窓を構成する材料の腐食を防止するため、腐食性成分に対して耐性を有する材料を透過窓構成材料として選択する。または、透過窓の表面若しくはセル内に面する側(図4の306aおよび306′a)を該材料でコーティングしてもよい。例えば、材料ガスがフッ酸を含有または発生する場合には、透過窓の表面またはセル内に面する側にシリコンコーティングする。さらに、石英を透過窓構成材料として用いた場合約5μmより長波長の成分については透過率が低くなることから、かかる長波長の成分を透過させることが必要である場合には、例えば、CaF2,BaF2およびZnSe等の蛍石構造の単結晶を用いる。
【0038】
透過率測定の際には、材料ガスによる吸収の他に、透過窓を構成する材料自身による吸収や前記腐食防止の目的で表面コーティングした材料等による吸収(バックグラウンド)があることを考慮し、測定結果からかかるバックグラウンドの吸収を差し引く補正をする必要がある。バックグラウンドによる吸収は、セル内に材料ガスがない状態で、赤外線透過率を測定することにより求められる。一方、腐食による透過窓構成材料のエッチング等によってバックグラウンドが変動する場合があることから、かかる変動の有無を把握し、変動がある場合には変動値を把握した上で上記補正を行う必要がある。
【0039】
透過率が変動した場合の処理方法を図5を用いて説明する。発光部として、赤外線強度が既知である光源または標準黒体炉を用いて所定の測定間隔でガスを通過させない状態での透過率を測定し、バックグラウンドの透過率Tを求めておく。一方、所定の基準となる透過率T1を設定し、T>T1である場合には測定を行うこととしてガスを通過させた状態での透過率を求め、測定結果からバックグラウンドの吸収を差し引く補正をすることにより、材料ガスによる吸収を算出する。一方、T<T1である場合には警報信号を発して測定を中止し、バックグラウンドが大きく変動している原因を究明した後、透過窓を交換するなどの対策を行う。以上のルーチンを所定のタイミングで繰り返し、測定結果を制御機構に送る。
【0040】
材料ガスの濃度が低い場合、分光測定においては一般に光路長を長くする方法がとられる。しかしながら、セルの長さを長くすることにより光路長を長くしようとする場合には、気化器から成膜チェンバまでの距離が長くなることになるため、温度が低下することによる材料ガスの液化が起こるおそれがある。
【0041】
本発明によれば、図6の例に示すように、反射板を設け、赤外光を反射させることにより実効的な光路長を長くする方法をとる。図6では、発光部604から出た赤外線603は透過窓606および606′を透過した後、反射板607′で反射し、再び透過窓606′および606を透過する。そして、また反射板607で反射する。これを複数回繰り返した後に受光部605に達して、所望の光路長での測定とする。反射板としては、例えば、アルミニウム蒸着した鏡を用いることができる。反射表面をグレーティング構造としてもよい。
【0042】
また、本発明によれば、図7の例に示すように、透過窓に適当な半透明材料を用いてハーフミラーとすることにより、透過窓間で反射させて実効的な光路長を長くしてもよい。図7では、光源704から出た赤外線703は透過窓706を透過してIRセル702内に入った後、透過窓706′で反射して進行方向を変え、再び透過窓706で反射する。これを複数回繰り返した後に受光部705に達して、所望の光路長での測定とする。
【0043】
さらに、本発明によれば、濃度の低い材料ガスの測定をする場合、図8の例に示すように、矢印Bで示す材料ガスの進行方向について、セル802の断面積を、配管810および配管812の断面積より大きくしてもよい。図8において、配管810は気化器(図示せず)からセル802に材料ガスを導入する配管であり、配管812はセル802から成膜チェンバ(図示せず)へ材料ガスを排出する配管である。かかる構造にすることによって、混合ガスのセル内での滞留時間を長くして見かけの材料ガスの濃度を大きくすることができるので、スペクトル強度を大きくすることができるとともに、測定時間の短縮を図ることができる。さらに、S/N比を大きくして測定分解能の向上を図ることができる。
【0044】
このように、IRセンサを用いて気化器に導入する材料ガスの流量を成膜条件に応じた適正な値とすることにより、所定の組成を有する信頼性の高い膜を安定して形成することができる。
【0045】
図1において、成膜に使用されないガスは配管114を通じて排出される。また、配管110、112およびIRセンサ111は材料ガスが再び液化することのないよう、温度保持機構(図示せず)によって高温に保持されている。この温度は材料ガスにより異なるが、例えば60℃〜200℃である。
【0046】
本実施の形態は、2種類以上の材料ガスを用いて成膜する場合にも適用できる。図9に、BPSG膜を成膜する場合の液体材料気化供給装置9の例を示す。図では、タンク901にはエチルシリケート(TEOS:tetra ethylortho silicate、以下TEOSという)が、タンク920にはホウ素含有有機液体ソースが、そしてタンク937にはリン含有有機液体ソースがそれぞれ貯蔵されている。これらの液体材料に対応して気化器905、924および941並びにキャリアガス源906,925および942が配置されている。各液体材料がそれぞれ材料ガスとなるまでの動作は、前記図1で説明したのと同様である。
【0047】
図9において、気化器905、924および941で発生した各材料ガスの流量は、IRセンサ(911、930、947)からの出力(916、933、949)とGMFC(908、927、944)に基いて、制御機構(917、934、950)によって求められ、適正量のTEOSガス、ホウ素含有有機ガスおよびリン含有有機ガスが成膜チェンバ914に送られてBPSG膜の形成に使用される。
【0048】
実施の形態2
図10に、本実施の形態2に係る液体材料気化供給装置10の例を示す。図10ではBPSG膜を形成する場合の例を示しており、各液体材料が気化器で材料ガスとなるまでの動作は、前記図1および図9で説明したのと同様である。
【0049】
本実施の形態では、各材料ガスごとにIRセンサおよび制御機構を設けるのではなく、装置全体でただ1つのみのIRセンサおよび制御機構を有することを特徴とする。
【0050】
気化器1005は、配管1009、配管1010および配管1012を介して成膜チェンバ1014に接続している。また、配管1010と配管1012の間にはIRセンサ1011が配設されている。一方、気化器1041に接続した配管1016は配管1010に接続しており、気化器1024に接続した配管1017は配管1016に接続している。したがって、気化器1024で発生したホウ素含有有機ガスは、配管1017を通った後、配管1016において気化器1041で発生したリン含有有機ガスと混合する。一方、気化器1005で発生したTEOSガスは配管1009を通過した後、配管1010でホウ素含有有機ガスおよびリン含有有機ガスと混合する。そして、これらはキャリアガスとともに成膜チェンバ1014に送られるが、その流量はIRセンサ1011を用いて検出される。成膜に用いられないガスは配管1015から排出される。また、尚、材料ガスが再び液化することのないよう、各気化器から成膜チェンバまでの配管およびIRセンサが温度保持機構(図示せず)によって高温に保持されているのは、実施の形態1と同様である。この温度は材料ガスにより異なるが、例えば60℃〜200℃である。
【0051】
IRセンサ1011で測定されたキャリアガスを除く上記混合ガスについての測定結果は、出力1016として制御機構1017に送られ、制御機構1017内の演算機能によってフーリエ変換された後、分離されて、TEOSガス、ホウ素含有有機ガスおよびリン含有有機ガスのそれぞれについてスペクトル強度が算出される。
【0052】
尚、測定時間の短縮化を図るためには、IRセンサ1011内の赤外線参照光の強度を強くすればよい。また、制御機構1017での演算機能の単一化(例えば、各材料ガスに特徴的な波数に絞った演算処理)によっても測定時間の短縮化を図ることができるとともに、該方法によればコストダウンも達成できる。
【0053】
スペクトル強度から各材料ガスの流量を求める方法は、実施の形態1と同様である。即ち、上記制御機構1017によって算出されたスペクトル強度と、GMFC1008、GMFC1027およびGMFC1044からの各出力値(1018,1035,1051)によって把握されるキャリアガスの流量とから、予め求めておいたキャリアガスの流量に応じた各材料ガスの流量値とスペクトル強度との関係に基いて、TEOSガス、ホウ素含有有機ガスおよびリン含有有機ガスのそれぞれの流量を求めることができる。
【0054】
求めた各材料ガスの流量値は制御機構1017から各気化器(1005,1024,1041)に信号1019、信号1036および信号1052によってフィードバックされ、成膜条件に適した流量となるように、各気化器(1005,1024,1041)のバルブ(図示せず)の開閉が制御される。
【0055】
制御機構1017は、前記フィードバックする構成ではなく、制御機構1017で求まる材料ガスの流量を監視し、材料ガスの流量が設定値に対して所定の許容範囲を超えた場合には警報信号を発するような構成としてもよい。
【0056】
本実施の形態では、BPSG膜を成膜する場合の液体材料気化供給装置の例を示したが、本発明は本実施の形態に限定されるものではない。即ち、BPSG膜以外の他の膜、例えばシリコン酸化膜、タリウム酸化膜または低誘電率層間絶縁膜(low−k Film)等の成膜にも適用することができる。また、材料ガスの種類も3種類以外の2種類または4種類以上であってもよい。
【0068】
本発明は、本発明の主旨を逸脱しない範囲で実施の形態の変更が可能である。上記実施の形態1および2では熱CVD法についてのみ言及したが、例えばプラズマCVDや減圧CVD等のように、液体材料を気化して供給することを必要とするプロセスであれば本発明の適用が可能である。その場合、使用する液体材料に適した温度に気化器および配管等の温度を設定し、材料ガスを検出可能な波数の赤外線を用いて材料ガスの流量を検出する。
【0069】
【発明の効果】
本発明によれば、不活性ガスや窒素ガス等のキャリアガスに混合した材料ガスの流量をキャリアガスの量にかかわらず正確に測定することができる。
【0070】
本発明によれば、気化器で気化されて成膜チェンバに送られる材料ガスの実際の流量を正確に測定して測定結果を気化器に入力することにより材料ガスの流量を制御して、成膜チェンバに所望の流量の材料ガスを導入することができる。
【0071】
本発明によれば、材料ガスの流量を正確に測定することができるので設定値からの測定値のずれにより、例えば材料ガスが冷却されることによる液化現象等を把握することができる。したがって、材料ガスの流量を所望の値となるように調節することによって、成膜チェンバに導入される材料ガスの流量を一定にして組成の安定した膜を基板上に形成することができる。
【0072】
本発明によれば、材料ガスの流量を正確に測定することができるので、設定値からの測定値の変動を監視することにより、規格から外れた膜が形成されているか否かの判断を容易にすることができる。そして、外れている場合には直ちに所望の値となるように流量を調節することによって、規格外の製品の生成を最小限にとどめることができるので、製品歩留まりの向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1に係る化学気相成長装置において、液体材料気化供給装置を示す構成図である。
【図2】IRセンサによる測定例を説明する図である。
【図3】キャリアガスの流量を変えた場合の材料ガスの流量とスペクトル強度との関係の一例を示す図である。
【図4】本発明に係るIRセンサの平面図である。
【図5】透過率補正を説明する図である。
【図6】本発明に係るIRセンサの平面図である。
【図7】本発明に係るIRセンサの平面図である。
【図8】本発明に係るIRセンサの平面図である。
【図9】本発明の実施の形態1に係る化学気相成長装置において、液体材料気化供給装置を示す構成図である。
【図10】本発明の実施の形態2に係る化学気相成長装置において、液体材料気化供給装置を示す構成図である。
【図11】 従来のGMFMによる測定例を説明する図である。
【図12】 従来の化学気相成長装置によるBPSG膜のホウ素およびリンの濃度分布を説明する図である。
【図13】 従来の化学気相成長装置において、液体材料気化供給装置を示す構成図である。
【図14】 従来の化学気相成長装置において、液体材料気化供給装置を示す構成図である。
【符号の説明】
1,9,10,11,14,15 液体材料気化供給装置 103,1405 LMFC、 108,908,927,9441008,1027,1044,1415,1503 GMFC、 105,905,924,941,1005,1024,1041,1407 気化器、 1505 バブラ、 111,911,930,947,1011 IRセンサ、 116,917,934,950,1017 制御機構、 113,914,1014 成膜チェンバ。
Claims (9)
- 液体材料を気化して材料ガスを発生させる気化器と、
前記気化器に導入する前記液体材料を所望の流量に制御する液体流量制御器と、
キャリアガス源から前記気化器に導入するキャリアガスの流量を検出するとともに制御するガス流量制御器と、
前記気化器からの前記材料ガスおよび前記キャリアガスを導入して、収納された基板上に成膜する成膜チェンバと、
前記気化器と前記成膜チェンバを接続する配管に設けられ、前記材料ガスの赤外線透過率を測定する赤外線センサと、
前記赤外線センサで測定した赤外線透過率と前記ガス流量制御器によって検出したキャリアガスの流量とから前記材料ガスの流量を算出して設定値と比較し、この比較結果に基づいて前記気化器から前記成膜チェンバに導入する前記材料ガスの流量を、前記気化器のバルブの開閉を制御することによって、または、前記材料ガスの流量が前記設定値に対して所定の許容範囲を超えた場合に警報信号を発生させることによって制御する制御機構とを備えたことを特徴とする化学気相成長装置。 - 前記液体材料は2種類以上あり、前記気化器および前記キャリアガス源は前記液体材料に対応して2以上配置され、前記気化器で発生する前記2種類以上の材料ガスの合流位置と前記成膜チェンバの間に1の前記赤外線センサが配置される請求項1に記載の化学気相成長装置。
- 前記赤外線センサは、
発光部からの赤外線を前記材料ガスを充満させたセル内を通過させて受光部で受けることにより、前記材料ガスについての赤外線透過率Tを測定する手段と、
透過率Tと設定値T1とを比較して、T>T1である場合には、透過率Tから、前記セル内に前記材料ガスがない状態での透過率であるバックグラウンドの透過率を差し引く補正をする手段と、
T<T1である場合には、警報信号を発して測定を中止する手段とを含む請求項1または2に記載の化学気相成長装置。 - 前記赤外線センサがさらに前記発光部からの赤外線を反射させて前記受光部に入射させる反射部を有することにより、前記発光部から前記受光部までの光路長を変えることができる請求項3に記載の化学気相成長装置。
- 前記反射部が金属蒸着した鏡である請求項4に記載の化学気相成長装置。
- 前記反射部がハーフミラーである請求項4に記載の化学気相成長装置。
- 前記材料ガスの進行方向に対する前記セルの断面積が、前記気化器から前記セルに前記材料ガスを導入する配管部の断面積および前記セルから前記成膜チェンバへ前記材料ガスを排出する配管部の断面積より大きい請求項3に記載の化学気相成長装置。
- 液体流量制御器を介して導入された所定の流量の液体材料を気化して材料ガスを発生させる気化器に、キャリアガス源からガス流量制御器を介してキャリアガスを導入し、そして前記材料ガスおよび前記キャリアガスを前記気化器から成膜チェンバに供給して基板上に成膜する化学気相成長法において、
前記気化器と前記成膜チェンバとを接続する配管に設けた赤外線センサで前記材料ガスの赤外線透過率測定を行い、該透過率と前記ガス流量制御器によって検出される前記キャリアガスの流量とから前記材料ガスの流量を算出するとともに該流量と設定値とを比較し、この比較結果に基いて前記気化器から前記成膜チェンバに供給する前記材料ガスの流量を、前記気化器のバルブの開閉を制御することによって、または、前記材料ガスの流量が前記設定値に対して所定の許容範囲を超えた場合に警報信号を発生させることによって制御することを特徴とする化学気相成長法。 - 前記赤外線透過率測定は、発光部からの赤外線を前記材料ガスを充満させたセル内を通過させて受光部で受けることにより、前記材料ガスについての赤外線透過率Tを測定する処理と、
透過率Tと設定値T1とを比較する処理と、
前記比較した結果がT>T1である場合には、透過率Tから、前記セル内に前記材料ガスがない状態での透過率であるバックグラウンドの透過率を差し引く補正をする処理と、
前記比較した結果がT<T1である場合には、警報信号を発して測定を中止する処理とを含む請求項8に記載の化学気相成長法。
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