JP3648169B2 - 清掃用ブラシ - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、清掃用ブラシの改良に関し、特に、窓ガラス、鏡のような平坦面を綺麗に清掃することができるのは勿論、ビルや一般家屋の外壁、内壁、窓ガラス、床、天井やじゅうたんのような小さなまたは多少大きな凹凸を有する粗面でも清掃洩れを生じることなく容易かつ確実にしかも大変綺麗に清掃することができる清掃用ブラシに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、ビルや一般家屋の外壁や内壁さらには窓ガラスを清掃するのに、各種のたわしやモップ、さらには各種の清掃用柄付きブラシなどの清掃用具が用いられている。そして、これらの清掃用具を用いてこれらの外壁、内壁または窓ガラスのような被清掃面を清掃する場合には、これらの清掃用具のブラシ部などに液状などの洗剤を含ませてから、このブラシ部などにより被清掃面を清掃するようにしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の清掃用具では、窓枠付きの窓ガラスや風呂場または洗面所の隅角部などのように、被清掃面が隅角部を有しているために被清掃面の周囲に障害物がある場合には、清掃洩れを生じることなく被清掃面を容易かつ確実に清掃するのは大変困難であった。
【0004】
また、従来の清掃用具を液状などの洗剤と一緒に用いても、小さな凹凸または多少大きな凹凸を有する汚れの激しい粗面を短時間に大変綺麗にすることはできなかった。
【0005】
さらに、従来の清掃用具では、そのブラシ部に液状洗剤を含ませて清掃作業を行う際に、液状洗剤がところ構わずにブラシ部から周囲にこぼれ落ちる不都合があった。
【0006】
本発明は、上述の点に鑑み、被清掃面の粗度や汚れの程度の如何にかゝわらず、清掃洩れを生じることなく、被清掃面を容易かつ確実に大変綺麗にし得るようにしたものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、台部と、この台部の一方の面に設けられた把手部と、この台部の他方の面に設けられたパイル層とを備え、上記パイル層の自由端側の端面の形状が、
▲1▼ほゞ直線状であってこのパイル層の全長にわたって延びている長辺縁を有していること、
▲2▼この長辺縁の両端部の附近に鋭角部をそれぞれ有していること、
▲3▼上記長辺縁の両端部をそれぞれ通りこの長辺縁に対してそれぞれ直角を成して延びている第1の仮想直線と、上記長辺縁の両端部をそれぞれ通りこれら第1の仮想直線に対してそれぞれ4〜40°傾斜して延びている第2の仮想直線とに挾まれた鋭角領域が、上記台部、上記把手部および上記パイル層のいずれ
も存在しない自由空間であること、
の点で特徴付けられ、上記台部が平板状であり、上記台部の上記他方の面に上記パイル層を有するブラシ部が設けられている清掃用ブラシに係るものである。
【0008】
そして、本発明の1つの観点による清掃用ブラシにおいては、上記パイル層は、多数の単繊維を1cm2 当り1,000〜50,000本の植毛密度でその厚みが0.8〜7.8mmになるように1本ずつ直立した状態で植毛することにより構成されている。この場合、上記単繊維は、太さが5〜50デニールで弾性率(試験法(ASTM):D638−52T)が13,000〜38,000kg/cm2 であってよい。
【0009】
さらに、本発明の別の1つの観点による清掃用ブラシにおいては、上記パイル層の自由端側の端面の形状が、
▲4▼上記長辺縁の長さが12〜35cmであること、
▲5▼上記パイル層の最大幅が4〜12cmであること、
▲6▼上記台部の下面の形状とほゞ同形または多少大きいこと、
▲7▼上記鋭角部の鋭角の大きさが50〜86°であること、
の点でさらに特徴付けられている。
なお、本発明の上記2つの観点のいずれによる清掃用ブラシにおいても、上記台部は、硬質材料から成りかつ厚みが1〜10mmであり、上記ブラシ部は、上記台部の上記他方の面に設けられた裏当て層と、この裏当て層に設けられた上記パイル層とを備え、上記把手部は、上記台部の上記一方の面の長さ方向にほゞ平行に延びる握り部を備えていてよい。また、上記裏当て層は、ショア硬さが40〜80で厚みが0.5〜5mmであってよい。そして、このように構成すれば、清掃用ブラシの強度および耐久性をいずれも向上させることができる。
【0010】
また、本発明の上記2つの観点のいずれによる清掃用ブラシにおいても、上記台部が硬質材料から成り、上記台部の上記他方の面にブラシ部が設けられ、上記ブラシ部は、上記パイル層の上記長辺縁に対応する長辺縁を有しかつ上記台部の上記他方の面に設けられた裏当て層と、この裏当て層に設けられた上記パイル層とを備え、上記裏当て層の外周縁のうちの少くとも上記長辺縁に下端から上端に向って内側へと勾配が付けられていてよい。そして、このように構成すれば、非常に狭い溝や非常に小さい間隙にパイル層の外周縁の下端部分をきわめて容易かつきわめて確実に入り込ませることができるから、被清掃面の隅角部だけでなく、きわめて狭い溝または間隙も清掃洩れを生じることなく容易かつ確実に大変綺麗にすることができる。
【0011】
【実施例】
以下、本発明の実施例による清掃用ブラシを図面を参照しながら説明する。
図1〜図6、図8および図9に示す本発明の一実施例による清掃用ブラシは、特に図1〜図4に明示されているように、平板状の台部1と、この台部1の上面に突設された把手部2と、上記台部1の下面に取り付けられたブラシ部3とから成っている。
【0012】
台部1は、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂などの硬質合成樹脂から成っていてよく、この実施例においては、縦長でほゞ台形の平板状体である。また、この平板状体の厚みは、図示の実施例の場合には約3mmであるが、実用上の観点から見て、一般的には1〜10mmであるのが好ましく、1.5〜5mmであるのがさらに好ましい。
【0013】
把手部2は、図1〜図4に明示されているように、台部1の平坦な上面の幅方向(図1の左右方向)におけるほゞ中心線上で長さ方向(図1の上下方向)において上下ほゞ対称的にこの台部1と一体成形されたほゞ円筒形状の一対のボス部11a、11bと、これら一対のボス部11a、11bを介して台部1に取り付けられたほゞ偏平な逆U字状の把手本体12とから成っている。なお、このほゞ偏平逆U字状の把手本体12は、台部1の上面の長さ方向にほゞ平行に延びる縦断面がほゞ円形の握り部12aと、この握り部12aの両端にそれらの上端が連結されるようにこの握り部12aと一体成形されて下方にほゞ垂直に延びているほゞ円筒形状の一対の支持部12b、12cとから成り、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂などの硬質合成樹脂から構成することができる。そして、これら一対の支持部12b、12cの中心孔14の下端には、上記一対のボス部11a、11bが嵌合されて必要に応じて両者の間が接着されているから、一対の支持部12b、12cの下端が一対のボス部11a、11bを介して台部1に固定されている。
【0014】
握り部12aには、長さ方向および上下方向にそれぞれ等間隔に3行3列で多数のスロット13が形成されている。なお、これらのスロット13は清掃用ブラシの軽量化や後述のようなアタッチメントの取り付けのためのものであるから、スロット13の数および配列様式は図2および図3に示すものに限定されることなく任意に選定することができる。また、握り部12aの直径および長さは、図示の実施例の場合には約28mmおよび約85mmであるが、手で握り易い範囲で任意に変更することができ、実用上の観点から見て、前者は15〜40mmで後者は50〜150mmであってよい。さらに、握り部12aと台部1との間隔は、図示の実施例の場合には約22mmであるが、実用上の観点から見て、15〜40mmであってよい。また、握り部12aは、図示の実施例の場合には台部1の上面の幅方向におけるほゞ中心線上でこの上面とほゞ平行に延びているが、必ずしもその必要はなく、例えば、台部1の上面の幅方向におけるほゞ中心線上でこの台部1の上面に対して或る程度傾斜していてもよく、また、図示の場合には一対の支持部12b、12cにより両持ちされているが、片持ち構造であってもよい。また、ボス部11a、11bは、図示の実施例の場合のようにほゞ円筒形状である必要は必ずしもなく、握り部12aを台部1に確実に取り付けることができれば他の任意の形状であってよい。さらに、把手本体12を台部1に取り付けるためのボス部11a、11bは必ずしも必要ではなく、把手本体12を台部1と一体に成形してもよい。
【0015】
ブラシ部3は、図5(A)および(B)に明示されているように、適当な接着剤によりその上面を台部1の平坦な下面に接着された裏当て層としてのクッション層5と、グラスファイバーなどの適当なネット材料から成りこのクッション層5の下方附近に埋設されている補強用ネット8と、適当な接着剤から成りクッション層5のほゞ平坦な下面に形成されている止着層6と、この止着層6にそれらの下端が埋設されることにより1本ずつ直立した状態で植毛されて固着されこの埋設部分以外は自由端となって下方にほゞ垂直に延びている多数の繊維体7とから成っている。そして、これら多数の繊維体7の止着層6に埋設されていない自由端側の部分によって、止着層6上に全体にわたってほゞ等厚のパイル層15が形成されている。また、補強用ネット8は、図示の実施例の場合には約4mm×約5mmの大きさのほゞ長方形の開口を基盤目状に有していて、クッション層5を補強すると共にこのクッション層5の伸縮および折げを抑制する作用も有している。そして、多数の繊維体7をクッション層5の下面に植毛するには、止着層6を構成するための接着剤をクッション層5の下面に塗布してこの接着剤が硬化するまでの間に、多数の繊維体7を静電相互作用により上記接着剤に吸着させ、次いで、この接着剤を硬化させて止着層6を形成すればよい。
【0016】
クッション層5は、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリウレタン樹脂、エチレン−プロピレン共重合体樹脂、合成ゴムなどの適当な弾性と防水性とを有するコンパウンド(すなわち、成形材料)から成っていてよいが、実用上の観点から見て、PVCコンパウンドであるのが特に好ましい。なお、PVCコンパウンドの図示の実施例におけるショア硬さは約50であるが、クッション層5を構成する成形材料のショア硬さは、実用上の観点から見て、一般的には40〜80であるのが好ましく、45〜60であるのがさらに好ましい。また、クッション層5の厚みは、図示の実施例の場合には約1.9mmであるが、実用上の観点から見て、一般的には0.5〜5mmであるのが好ましく、1.0〜3.0mmであるのがさらに好ましい。
【0017】
なお、クッション層5の上面には、平坦面をエンボス加工することなどにより基盤目状に多数の凹部5aが形成されていてよい。そして、この凹部5aの形状は、図示の実施例の場合にはほゞ正四角錐台形状であるが、ほゞ円錐台形状、長方形の四角錐台形状などの任意の形状であってよい。また、図示の実施例の場合には、この正四角錐台形状の頂面(凹部5aの底面)は約1.5mm×約1.5mmの大きさであり、その底面(凹部5aの入口)は約4mm×約4mmの大きさであり、凹部5aの深さは約0.1mmであり、凹部5aのピッチはクッション層5の長さ方向および幅方向のいずれにおいても約6mmである。そして、実用上の観点から見て、任意形状の凹部5aの底面の面積は一般的には1mm2 〜25mm2 であるのが好ましく、2mm2 〜20mm2 であるのがさらに好ましく、また、この凹部5aの入口の面積は一般的には8mm2 〜200mm2 であるのが好ましく、4mm2 〜100mm2 であるのがさらに好ましく、また、この凹部5aの深さは一般的には0.2mm〜2.0mmであるのが好ましく、0.4mm〜1.2mmであるのがさらに好ましく、さらに、この凹部5aのピッチはクッション層5の長さ方向および幅方向のいずれにおいても一般的には1mm〜20mmであるのが好ましく、2.5〜12mmであるのがさらに好ましい。
【0018】
また、クッション層5の上面に上述のように基盤目状に多数の凹部5aが形成されているから、この結果として、クッション層5の上面には格子縞形状の凸部5bが形成されている。そして、この格子縞形状の凸部5bが適当な接着剤により台部1の下面に接着されることによって、クッション層5の上面が台部1の下面に固着されている。
【0019】
繊維体7は、6,6−ナイロン、6−ナイロン、6,10−ナイロンなどのナイロン、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂などの適当な弾性と適当な剛性とを有する合成樹脂などの単繊維から成っていてよいが、実用上の観点から見て、6,6−ナイロン、6−ナイロン、6,10−ナイロンなどのナイロンの単繊維であるのが好ましく、6,6−ナイロンの単繊維であるのが特に好ましい。なお、6,6−ナイロンの弾性率(試験法(ASTM):D638−52T)は約28,100kg/cm2 であるが、繊維体7が適当な弾性と適当な剛性とを併せ持つようにするには、繊維体7の上記弾性率は、実用上の観点から見て、一般的には13,000〜38,000kg/cm2 であるのが好ましく、18,000〜30,000kg/cm2 であるのがさらに好ましい。また、繊維体7の太さは、図示の実施例に用いられている6,6−ナイロンの単繊維の場合には約15デニールまたは約20デニールであってよいが、実用上の観点から見て、一般的には5〜50デニールであるのが好ましく、10〜30デニールであるのがさらに好ましい。また、繊維体7の長さは、図示の実施例の場合には約2.2mmであるが、実用上の観点から見て、一般的には1.0〜8.0mmであるのが好ましく、1.5〜4.0mmであるのがさらに好ましい。
【0020】
また、止着層6への多数の繊維体7の植毛密度(換言すれば、パイル層15の植毛密度)は、図示の実施例の場合には1cm2 当り約6,800本または約8,000本であってよいが、実用上の観点から見て、一般的には1cm2 当り1,000〜50,000本であるのが好ましく、1cm2 当り4,000〜14,000本であるのがさらに好ましい。さらに、繊維体7のうちの止着層6に埋設されている部分(すなわち、パイル層15以外の部分)の長さは、図示の実施例の場合には約0.1mmであるが、実用上の観点から見て、一般的には0.02〜1.0mmであるのが好ましく、0.05〜0.5mmであるのがさらに好ましい。したがって、繊維体7のうちの止着層6に埋設されていない自由端側の部分の長さ(すなわち、パイル層15の厚み)は、図示の実施例の場合には約2.1mmであるが、実用上の観点から見て、一般的には0.8〜7.8mmであるのが好ましく、1.3〜3.8mmであるのがさらに好ましい。また、繊維体7のうちのパイル層15以外の部分の長さとパイル層15の厚さとの比は、図示の実施例の場合には約1:21であるが、実用上の観点から見て、一般的には1:5〜1:80であるのが好ましく、1:10〜1:50であるのがさらに好ましい。
【0021】
本実施例においては、図1〜図4に明示されているように、パイル層15は裏当て層としてのクッション層5のほゞ平坦な下面のほゞ全領域に植毛され、また、このクッション層5および台部1のそれぞれは、その外周縁全体にわたって下端から上端に向って内側へと角度θ0 の勾配が付けられてほゞ直線状に滑らかに連なっている。そして、この勾配角度θ0 は、クッション層5および台部1のいずれにおいても、図示の実施例の場合には約45°であるが、実用上の観点から見て、一般的には25〜75°であるのが好ましく、30〜60°であるのがさらに好ましい。なお、クッション層5および台部1がそれぞれ上記勾配角度θ0 を有する効果については、後述の使用方法の説明から明らかであろう。
【0022】
したがって、パイル層15の下面の形状(すなわち、多数の繊維体7全体の自由端側の端面の形状)は、台部1の下面の形状とほゞ同様に縦長でほゞ台形であるが、その外周囲において台部1の下面の形状よりも一回り(換言すれば、多少)大きくなっている。なお、パイル層15の下面の形状は、図9(B)に関連して後述する場合と同様に、最初から、クッション層5の上面および下面ならびに台部1の下面の形状とそれぞれほゞ同形にすることができ、また、最初から、台部1の外周縁の勾配をなくすことにより台部1の上面の形状も台部1の下面(換言すれば、パイル層15の下面の形状)とほゞ同形にすることができる。
【0023】
また、本実施例においては、パイル層15の下面は、図6に明示されているようにほゞ台形であるから、このパイル層15の全長にわたって延びる台形の下底としての長辺縁16を備え、さらに、この長辺縁16の両端部16a、16bの附近に鋭角部17a、17bを備えている。また、パイル層15の下面は、長辺縁16に対向してほゞ平行に延びている台形の上底としての短辺縁18を備え、さらに、この短辺縁18の両端部18a、18bの附近に鈍角部19a、19bを備えている。また、パイル層15の下面は、当然のことながら、端部16aと18aとの間および端部16bと18bとの間をそれぞれ延びている台形の脚としての一対の側辺縁20、21を備えている。
【0024】
なお、図6に示すパイル層15の下面において、上記長辺縁16の長さは、図示の実施例の場合には約19cmであるが、実用上の観点から見て、一般的には12〜35cmであるのが好ましく、15〜28cmであるのがさらに好ましい。また、上記短辺縁18の長さは、図示の実施例の場合には約16cmであるが、実用上の観点から見て、一般的には9〜30cmであるのが好ましく、12〜24cmであるのがさらに好ましい。また、上記長辺縁16と上記短辺縁18との間隔(すなわち、台形の高さとしてのパイル層15の最大幅)は、図示の実施例の場合には約7cmであるが、実用上の観点から見て、一般的には4〜12cmであるのが好ましく、5〜10cmであるのがさらに好ましい。また、長辺縁16の長さに相当するパイル層15の図6の上下方向における長さと、台形の高さに相当するパイル層15の最大幅との比は、図示の実施例の場合には約2.7であるが、実用上の観点から見て、一般的には1.5〜5.0であるのが好ましく、2.0〜4.0であるのがさらに好ましい。
【0025】
さらに、図6に示すパイル層15の下面において、鋭角部17a、17bにおける鋭角θ1 、θ2 は、図示(図6)の実施例の場合には約78°であるが、実用上の観点から見て、一般的には50〜86°であるのが好ましく、65〜82°であるのがさらに好ましく、さらに、鋭角θ1 とθ2 とが必ずしも同一である必要はない。また、パイル層15の下面において、長辺縁16の両端部16a、16bをそれぞれ通りこの長辺縁16に対して直角を成して延びている第1の仮想直線L0 と、長辺縁16の両端部16a、16bをそれぞれ通りこれら第1の仮想直線L0 に対して約12°内側(すなわち、パイル層15側)に傾斜して延びている第2の仮想直線L1 との間に鋭角θ3 、θ4 が形成され、これらの鋭角θ3 、θ4 を成す鋭角領域には、パイル層15その他のブラシ部3、台部1および把手部2がいずれも存在しない自由空間25a、25bがそれぞれ形成されている。なお、パイル層15の下面において、第1の仮想直線L0 と第2の仮想直線L1 との間に形成される鋭角θ3 およびθ4 は、図示の実施例の場合には約12°であるが、実用上の観点から見て、一般的には4〜40°であるのが好ましく、8〜25°であるのがさらに好ましく、さらに、鋭角θ3 とθ4 とが必ずしも同一である必要はない。また、これらの鋭角θ3 、θ4 を成す鋭角領域に形成される自由空間25a、25bの効果については、後述の使用方法の説明から明らかであろう。
【0026】
本発明において、パイル層15の下面の形状は、図1および図6に示すようにほゞ台形である必要は必ずしもなく、また、多角形である必要もないが、
▲1▼長辺縁16がほゞ直線状であってパイル層15の全長にわたって延びていること、
▲2▼この長辺縁16の両端部16a、16bの附近に鋭角部17a、17bをそれぞれ有していること、
▲3▼第1の仮想直線L0 と第2の仮想直線L1 とに挾まれた鋭角領域は自由空間25a、25bを構成していること、
がいずれも重要である。なお、この重要性については、後述の使用方法の説明から明らかであろう。
【0027】
したがって、これらの▲1▼〜▲3▼に記載した3条件を満足していれば、パイル層15の下面は、台形以外の任意の形状であってよく、例えば、図7に示す変形例の場合のように、側辺縁20、21をヘ字状および逆へ字状の折れ線にすることもできるし、場合によっては、これらの側辺縁20、21をこれらの折れ線とほゞ同様の円弧状にしたり、また、短辺縁18を長辺縁16とは非平行になるように傾斜させたり曲線にしたりすることもできる。なお、図7において、図6と共通の部分には同一の符号を付してあるが、鋭角θ1 、θ2 は図6の場合に較べて約70°と小さくなっている。しかし、長辺縁16の長さ、パイル層15の最大幅、長辺縁16の長さとパイル層15の最大幅との比および角θ1 〜θ4 の大きさについての図6のパイル層15の下面形状における好ましい範囲は、図7のパイル層15の下面形状についても当てはまる。また、側辺縁20、21が上述のように円弧状の場合には、鋭角θ1 、θ2 の大きさについての上述のような好ましい範囲は、両端部16a、16bの近傍での鋭角θ1 、θ2 について当てはまる。
【0028】
次に、本発明の一実施例による清掃用ブラシの使用方法について述べると、本実施例による清掃用ブラシを用いてビルや一般家屋の外壁、内壁、窓ガラス、床、天井、じゅうたんなどの被清掃面を清掃する場合には、まず、清掃用ブラシのパイル層15に市販品その他の液状洗剤を含ませる。この場合、パイル層15の植毛密度が高いから、液状洗剤は、密に植毛された多数の繊維体7の間隙での毛管現象によりパイル層15に確実に保持され、このために、パイル層15から不測にこぼれ落ちる恐れがない。なお、上記液状洗剤としては、中性洗剤やバイオ系の洗剤を用いることができるが、粉末の洗剤もまた使用可能である。
【0029】
次いで、把手部2の把手本体12を手で握った状態でパイル層15の下面を被清掃面に当接させてから、この手を往復動させることにより清掃用ブラシ全体を1回〜複数回往復動させれば、パイル層15を構成している多数の繊維体7の下端が被清掃面上を繰り返して摺動するから、被清掃面を容易かつ確実にしかも大変綺麗に清掃することができる。特に、繊維体7とその裏当て層であるクッション層5とがいずれも適当な弾性を有し、また、繊維体7はその太さが小さくかつ適度な曲げ剛性を有しているから、被清掃面における狭い溝や小さい凹部にも確実に侵入し、このために、被清掃面全体を確実に清掃することができて清掃洩れを生じる恐れがない。
【0030】
なお、被清掃面の周囲に障害物がない場合には、上述の清掃作業の際に、図1に示す清掃用ブラシを上下および左右のいずれの方向に摺動させて清掃するのもきわめて容易である。しかし、窓枠に嵌め込まれた窓ガラスや風呂場または洗面所の隅角部などのように、被清掃面が隅角部を有していて被清掃面の周囲に障害物がある場合には、図8(A)および(B)に明示されているようにして上述の清掃作業を行う必要がある。
【0031】
すなわち、本実施例による清掃用ブラシのパイル層15と窓ガラスおよび窓枠との位置関係を示す図8(A)および(B)において、26は窓ガラス27が嵌め込まれた窓枠であって、この窓枠26は被清掃面である窓ガラス27よりも外方(紙面の手前側)に突出している。この場合、窓ガラス27の右上隅部27aを本実施例による清掃用ブラシを用いて清掃するには、パイル層15の一方の鋭角部17aを上記右上隅部27aに差し込むことによりパイル層15を図8(A)の右上隅部27aにおける一点鎖線の状態とし、さらに、必要に応じて、パイル層15の長辺縁16を図8(A)の右上隅部27aにおいて実線に示すように窓枠26の右側部26aの内側縁にほゞ一致させてから、清掃用ブラシを矢印に示すように左方へ摺動させ、また、必要があれば左右方向へ往復摺動させることにより、清掃作業を行えばよい。なお、パイル層15の下面においては、図6に明示されているように、鋭角部17aの先端部の角θ1 が鋭角であり、また、側辺縁20に隣接して既述の自由空間25aが存在している。したがって、窓ガラス27の右上隅部27aへの鋭角部17aの差し込み動作をきわめて容易に行うことができ、また、この鋭角部17aの先端を右上隅部27aの隅端にきわめて容易に位置合せすることができ、さらに、必要に応じて、長辺縁16を窓枠26の右側部26aの内側縁にきわめて容易かつ確実にほゞ一致させることができる。
【0032】
次いで、必要に応じて、図8(B)の右上隅部27aにおいて実線で明示されているように、清掃用ブラシを下方に摺動させることにより窓ガラス27の右上隅部27aを清掃することができるが、この場合には、上述の場合とほゞ同様にして、図8(B)の右上隅部27aにおいて一点鎖線で明示されているように、まず、パイル層15の他方の鋭角部17bを上記右上隅部27aに差し込むようにすればよい。さらに、窓ガラス27の左上隅部27b、左下隅部27cおよび右下隅部27dも、図8(A)および(B)において一点鎖線で明示されているように、上述の右上隅部27aの場合と同様に、パイル層15の一対の鋭角部17a、17bのうちのいずれか都合の良い方を隅部27b、27cまたは27dに差し込んでから、上述の清掃作業を行えばよい。
【0033】
なお、本実施例による清掃用ブラシにおいては、クッション層5および台部1のそれぞれは、その外周縁全体にわたって角度θ0 の勾配が付けられてほゞ直線状に滑らかに連なっている。したがって、窓枠26の内側縁に沿ってゴム製などのパッキングが配されている場合でも、このパッキングの両側縁と窓枠26および窓ガラス27との間に存在する非常に狭い溝にパイル層15の外周縁の先端部分をきわめて容易かつきわめて確実に入り込ませることができる。また、ビルの間仕切りの下端と床面との間に存在する非常に小さい間隙や、応接セットの長椅子のシート部分の縫い目におけるマチ部分の両側縁のような非常に狭い溝にも、パイル層15の外周縁(例えば、一対の側辺縁20、21のいずれか一方)の先端部分(すなわち、下端部分)をこれらの間隙や溝にきわめて容易かつきわめて確実に入り込ませることができる。さらに、上述のように角度θ0 の勾配が存在するから、非常に狭い溝や非常に小さい間隙にパイル層15の外周縁の先端部分を入り込ませても、これらの溝や間隙の周囲の部分が清掃用ブラシの台部1やクッション層5により傷付けられる恐れもない。
【0034】
上述のとおりであるから、本実施例による清掃用ブラシによれば、被清掃面の隅角部やきわめて狭い溝または間隙を清掃洩れを生じることなく容易かつ確実にしかも大変綺麗に清掃することができる。
【0035】
また、本実施例による清掃用ブラシは、図1に明示されているように、上下対称に構成されている。したがって、一対の側辺縁20、21のうちのいずれか一方を上記間隙や上記溝に入り込ませた状態において長辺縁16側から短辺縁18側にこの入り込ませた側辺縁20または21に沿って一方の側へ移動させ、次いで、この清掃用ブラシの上下を逆にして上述の場合と同様の状態にしてから他方の側へ移動させれば、上記間隙または上記溝をその左右両側からそれぞれ清掃することができる。また、被清掃面の状態によっては、右利きの人と左利きの人とで清掃用ブラシを上下逆にすることにより、清掃作業を常に最適の状態で行うことができる。
【0036】
なお、ビルの外壁を清掃する場合などのように、本実施例による清掃用ブラシを高所に届かせる必要がある場合には、その一端に掴み具を備えた棒状体をアタッチメントとして用いればよい。この場合、清掃用ブラシの把手部2の把手本体12の握り部12aに形成されているスロット13と係合する爪を上記掴み具に設けておけば、上記棒状体の一端に本実施例による清掃用ブラシを確実に取り付けることができるから、使用中に棒状体から清掃用ブラシが外れたりする不都合を防止することができる。
【0037】
さらに、本実施例による清掃用ブラシにおいては、ブラシ部3、特にそのパイル層15がその外周縁において摩耗した場合に、この摩耗部分15aを図9(A)および(B)に明示されているようにして簡単に補修することができる。
【0038】
すなわち、本実施例による清掃用ブラシにおいては、パイル層15のうちでも使用頻度の高い外周縁が摩耗し易く、また、図8(A)および(B)を参照してその使用方法を説明したことからも明らかなように、その鋭角部17a、17bの先端が特に摩耗し易く、この先端には図9(A)に明示されているような摩耗部分15aが生じ易い。したがって、台部1とクッション層5との境界面の外周囲を構成するほゞ台形状の線28(図1参照)に沿ってクッション層5およびパイル層15のほゞ台形状の外周縁を図9(B)に明示されているように切り落とせば、摩耗部分15aを確実に除去することができる。この場合、ほゞ台形状の線28のうちの短辺縁18に沿った直線部分28aについては、摩耗部分15aを除去するのに無関係であれば、特に切り落とす必要はない。
【0039】
このような摩耗部分15aの補修を行えば、この摩耗部分15aを除去してパイル層15および場合によってはクッション層5の形状を整えることができるから、パイル層15の下面の形状は、既述のように、クッション層5の上面および下面ならびに台部1の下面の形状とそれぞれほゞ同形となる。
【0040】
なお、本発明による清掃用ブラシは、ビルや一般家屋の外壁、内壁、窓ガラス、床、天井やじゅうたんだけでなく、清掃を必要とするほとんど総ての面を容易かつ確実に清掃することができる。
【0041】
また、上述の実施例においては、ブラシ部3にクッション層5を設け、このクッション層5に多数の繊維体7を植毛するようにしたが、台部1をクッション層5の場合と同様に適当な弾性と防水性とを有するコンパウンドなどから構成した場合には、止着層6を構成するための接着剤を用いて台部1の下面に直接に多数の繊維体7を植毛してもよい。
【0042】
また、上述の実施例においては、繊維体7が下方にほゞ垂直に延びるようにしたが、用途に応じて、例えば、繊維体7を短辺縁18側から長辺縁16側に向って多少傾斜させた状態で止着層6にその上端を埋設させるようにしてもよく、この場合には、パイル層15の下面の摩擦係数は、長辺縁16側から短辺縁18側に向う方向においてはその逆の方向に較べて大きくなるから、本発明による清掃用ブラシの清掃効果を向上させることができる。
【0043】
また、上述の実施例においては、角度θ0 の勾配をクッション層5および台部1のそれぞれの外周縁全体にわたって設けたが、短辺縁18に対応するクッション層5および台部1のそれぞれの短辺縁には必ずしも設ける必要がなく、場合によっては、長辺縁16に対応するクッション層5および台部1のそれぞれの長辺縁のみに設けられてもよく、さらには、台部1の外周縁には全く設けないでクッション層5の外周縁全体または短辺縁を除く外周縁全体もしくは長辺縁のみに設けてもよい。
【0044】
さらに、上述の実施例においては、クッション層5および台部1にそれぞれ付けられる角度θ0 の勾配は、ほゞ直線状に滑らかに連なるようにしたが、下向きまたは上向きの曲線(例えば、下向きまたは上向きの円弧)であってもよく、場合によっては階段状の勾配であってもよい。なお、角度θ0 の勾配が上述のように曲線などの場合には、勾配角度θ0 についての既述のような好ましい範囲は、クッション層5の外周縁の下端付近での勾配角度θ0 について当てはまる。
【0045】
【発明の効果】
本発明は、上述のような構成であるから、窓枠付きの窓ガラスや風呂場または洗面所の隅角部のように、被清掃面が隅角部を有しているために被清掃面の周囲に障害物がある場合でも、清掃洩れを生じることなく被清掃面を容易かつ確実にしかも綺麗に清掃することができる。
【0046】
また、請求項1の発明によれば、パイル層に液状洗剤を含ませた場合にこの液状洗剤が周囲にこぼれ落ちる恐れもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例による清掃用ブラシの平面図である。
【図2】図1に示す清掃用ブラシの側面図である。
【図3】図2のA−A線における断面図である。
【図4】図2のB−B線における断面図である。
【図5】(A)は図1に示す清掃用ブラシのブラシ部の一部分の縦断面図であり、(B)は(A)の一部分の拡大縦断面図である。
【図6】図1に示す清掃用ブラシのパイル層の下面形状を示す清掃用ブラシの概略底面図である。
【図7】清掃用ブラシのパイル層の下面形状の変形例を示す清掃用ブラシの概略底面図である。
【図8】(A)は図1に示す清掃用ブラシを用いて窓枠付き窓ガラスを清掃する場合の第1の状態を示す窓枠付き窓ガラスの概略正面図であり、(B)は同上の第2の状態を示す(A)と同様の図である。
【図9】(A)は図1に示す清掃用ブラシの使用による磨耗部分の縦断面図であり、(B)は(A)に示す磨耗部分の補修要領を示す縦断面図である。
【符号の説明】
1 台部
2 把手部
3 ブラシ部
5 クッション層
6 止着層
7 繊維体
8 補強用ネット
15 パイル層
16 長辺縁
17a、17b 鋭角部
25a、25b 自由空間
θ1 、θ2 鋭角
L0 第1の仮想直線
L1 第2の仮想直線
Claims (2)
- 台部と、この台部の一方の面に設けられた把手部と、この台部の他方の面に設けられたパイル層とを備え、
上記パイル層の自由端側の端面の形状が、
▲1▼ほゞ直線状であってこのパイル層の全長にわたって延びている長辺縁を有していること、
▲2▼この長辺縁の両端部の附近に鋭角部をそれぞれ有していること、
▲3▼上記長辺縁の両端部をそれぞれ通りこの長辺縁に対してそれぞれ直角を成して延びている第1の仮想直線と、上記長辺縁の両端部をそれぞれ通りこれら第1の仮想直線に対してそれぞれ4〜40°傾斜して延びている第2の仮想直線とに挾まれた鋭角領域が、上記台部、上記把手部および上記パイル層のいずれも存在しない自由空間であること、
の点で特徴付けられ、
上記台部が平板状であり、
上記台部の上記他方の面に上記パイル層を有するブラシ部が設けられ、
上記パイル層は、多数の単繊維を1cm2 当り1,000〜50,000本の植毛密度でその厚みが0.8〜7.8mmになるように1本ずつ直立した状態で植毛することにより構成されている清掃用ブラシ。 - 台部と、この台部の一方の面に設けられた把手部と、この台部の他方の面に設けられたパイル層とを備え、
上記パイル層の自由端側の端面の形状が、
▲1▼ほゞ直線状であってこのパイル層の全長にわたって延びている長辺縁を有していること、
▲2▼この長辺縁の両端部の附近に鋭角部をそれぞれ有していること、
▲3▼上記長辺縁の両端部をそれぞれ通りこの長辺縁に対してそれぞれ直角を成して延びている第1の仮想直線と、上記長辺縁の両端部をそれぞれ通りこれら第1の仮想直線に対してそれぞれ4〜40°傾斜して延びている第2の仮想直線とに挾まれた鋭角領域が、上記台部、上記把手部および上記パイル層のいずれも存在しない自由空間であること、
の点で特徴付けられ、
上記台部が平板状であり、
上記台部の上記他方の面に上記パイル層を有するブラシ部が設けられ、
上記パイル層の自由端側の端面の形状が、
▲4▼上記長辺縁の長さが12〜35cmであること、
▲5▼上記パイル層の最大幅が4〜12cmであること、
▲6▼上記台部の下面の形状とほゞ同形または多少大きいこと、
▲7▼上記鋭角部の鋭角の大きさが50〜86°であること、
の点でさらに特徴付けられている清掃用ブラシ。
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