JP3646101B2 - 積層方法 - Google Patents
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Description
【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プリント回路基板の製造において、凹凸を有する基板にフィルム状樹脂層を積層する方法に関するものであり、更に詳しくはかかる積層方法を工業的な連続稼働条件下で実施してもフィルム状樹脂層の追従性が良く、積層後の膜厚均一性と鏡面性に優れ、ビルドアップ工法に有用な積層体を得る積層方法に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
近年、電子機器の小型化、高性能化に伴いプリント回路基板の高密度化、多層化が進行している。
かかるプリント回路基板の多層化においては、熱硬化型樹脂組成物又は感光性樹脂組成物を絶縁層として使用し、予め形成した内層回路の上に該熱硬化型樹脂組成物又は感光性樹脂組成物を塗布し、あるいは該熱硬化型樹脂組成物又は感光性樹脂組成物からなるフィルム状樹脂層を積層する。かかるフィルム状樹脂層の片面には、通常銅箔や支持体フィルム（セパレーターフィルム）が積層されており、銅箔の場合はそれをハーフエッチング又は全面エッチングし、支持体フィルムの場合はそれを剥離して、次いでレーザー又は紫外線による穴あけ後に、銅メッキを施した後、再度フォトレジストフィルムを用いて光によるパターニングを行い回路を形成する方法、いわゆるビルドアップ工法が有効に用いられている。
【０００３】
かかる工法においては凹凸を有する基板とフィルム状樹脂層を効率良く積層する技術が重要であり、本出願人も先に特開２０００−１４１３８８号公報で、凹凸を有する基板にフィルム状樹脂を積層するに当たり、真空積層装置を用いて積層した後、ラミネーターロール又は平面プレスにより加熱加圧処理する積層方法を開示した。
しかし、上記公報で記載された積層方法で凹凸を有する基板とフィルム状樹脂を貼り合わせて積層体を製造する場合、積層体のフィルム状樹脂表面は平滑にはなるものの、基板上でフィルム状樹脂中の樹脂組成物の厚みが不均一になる事態があり、基板を高周波数にさらされる状態で使用する場合の絶縁性に悪影響を及す恐れがあった。
かかる事情に鑑み、本出願人は特願２００１−２５３９３号において、真空積層装置で積層体を積層した後、平面プレス装置で加熱加圧処理して積層する方法において、平面プレス装置に、ショアーＡ硬度が６０度以上、厚みが０．２〜１０ｍｍ、表面粗さが２０μｍ以下の緩衝材を設置した上下プレスブロックを使用する積層方法を特許出願した。
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特願２００１−２５３９３号において用いられる緩衝材は、通常表面を研磨したフッ素系ゴムであるが、かかる緩衝材は積層体が加熱加圧処理される時に同じように加熱加圧条件下にさらされるので、長期間繰り返して積層方法を実施すると緩衝材が劣化し、その表面に割れ等のトラブルが起こり凹凸の発生が認められる結果、フィルム状樹脂表面の平滑性や基板上でのフィルム状樹脂中の樹脂組成物の厚みの均一性、鏡面性付与等、上記特願２００１−２５３９３号が目的とする効果を発揮し得なくなることが判明し、更なる改善が必要となった。
【０００５】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明者らは、かかる事情に鑑み鋭意研究をした結果、可撓性シート３を付設した上部プレート１及び可撓性シート４を付設した下部プレート２が設置された真空チャンバーを有する真空積層装置６を使用して、該チャンバー内の上下プレート間で、凹凸を有する基板５ａとフィルム状樹脂層５ｂからなる積層体５を圧締した後、該積層体５を上下にプレスブロック７及び８を有する平面プレス装置９により加熱加圧処理して積層する方法において、上下プレスブロック７及び８として、その少なくとも一方の表面に緩衝材１０及びフレキシブル金属板１１を該金属板が上記積層体５側に配置されるように順次設置した上下プレスブロック７及び８を使用して積層方法を採用する場合、積層方法を長期間繰り返して実施してもフィルム状樹脂層の追従性や、基板の上に積層される樹脂組成物層の基板凸部での膜厚均一性に優れ、更に積層体のフィルム樹脂層側の表面が鏡面（鏡面性）となる積層体５が得られることを見いだし本発明を完成した。
【０００６】
【発明の実施の形態】
本発明の積層方法では、特定の真空積層装置６を用いて、該積層体５の圧締を行った後、上下プレスブロック７及び８の少なくとも一方の表面に緩衝材１０及びフレキシブル金属板１１を該金属板が上記積層体５側に配置されるように順次設置した上下プレスブロック７及び８を使用する平面プレス装置９で加熱加圧処理する。
【０００７】
本発明で使用する真空積層装置６及び平面プレス装置９の基本的な構成は図１の通りである。図１では、真空積層装置６と平面プレス装置９を併設した連続積層装置となっているが、本発明はこれに限定されるものではなく、それぞれの装置を独立して使用してもよい。
【０００８】
真空積層装置６の真空チャンバーには、可撓性シート３を付設した上部プレート１と可撓性シート４を付設した下部プレート２が配置されている。
可撓性シート４は、下部プレート２上に直接存在し、可撓性シート３は、その四辺端が押さえシール金具１８により上部プレート１と可撓性シート３の間に形成される空隙部１３（以下単に空隙部１３と称することがある）が形成出来るように上部プレート１に付着されている。また、上部プレート１には、該プレート１内を通過する開口部１５（以下単に開口部１５と称することがある）が配置され、かかる開口部１５により、空隙部１３の圧力が調整される。開口部１５から気体又は液体を空隙部１３に導入すると可撓性シート３が風船のように膨らむ構造となっている。下部プレート２には、該プレート２内を通過する開口部１６（以下単に開口部１６と称することがある）が配置され、かかる開口部１６により、上部プレート１と下部プレート２の密封契合時に、可撓性シート３、４の間に形成される空間部１４（以下単に空間部１４と称することがある）の圧力が調整される。また、真空引きを効率良く行うためにシール１７が下部プレート２の端の上に配置されている。下部プレート２は、ジョイント１９にて油圧シリンダー又はエアーシリンダー２０と接続され、上下に移動する。
尚、上部プレート１、下部プレート２の内部には、空間部１４の加熱のための加熱装置が適宜配置されている。
【０００９】
また、平面プレス装置９には、上プレスブロック７と下プレスブロック８が配置され、上プレスブロック７は支柱３１に固定されている。
また、支柱３１はガイド３２が設けられ、下プレスブロック８が上下に移動できるようになっている。
下プレスブロック８は、ジョイント３４を介して、油圧シリンダー又はエアーシリンダー２３に接続されて、油圧シリンダー又はエアーシリンダー２３を作動させることにより下プレスブロック８が上昇して加熱プレスされる。
尚、油圧シリンダー又はエアーシリンダー２３はそのポンプ３３と接続されている。
上プレスブロック７及び下プレスブロック８は、プレス板１２、温度コントロールが可能なヒーターを有する加熱層２１、ベース層２２から構成される。
【００１０】
本発明では、積層体５の搬送やフィルム状樹脂層５ｂからのしみだしを取り除くために搬送用フィルム２４を併用するのが好ましく、かかる搬送用フィルム２４の張力及び搬送速度を制御調節するために、巻出し装置２５が真空チャンバーの入口付近に、巻取り装置２８及びニップロール２９が出口付近に配置されている。
搬送用フィルム２４の通過ラインの各所には、搬送用フィルム２４の張力誘導と空中保持のために、ガイドロール２６が適宜配置されている。
【００１１】
次に本発明の積層方法を図１を参考にして詳細に説明する。
本発明の積層に先立ち、凹凸を有する基板５ａ（以下単に基板５ａと称することがある）とフィルム状樹脂層５ｂはオートシートカットラミネータ等により予め仮どめして積層体５としておくことが好ましい。
【００１２】
まず真空積層装置６による圧締操作を説明する。
上記の積層体５を搬送用フィルム２４にて真空積層装置６の圧締位置に搬送する。その後下部プレート２を持ち上げて、上部プレート１と密封契合させる。かかる下部プレート２の移動（昇降）は、油圧シリンダー又はエアーシリンダー２０でコントロールされる。
【００１３】
密封契合した後、空隙部１３、空間部１４を減圧状態とする。
具体的には、上部プレート１の開口部１５と下部プレート２の開口部１６より吸引し、空隙部１３、空間部１４の圧力を、２００Ｐａ以下、好ましくは１００Ｐａ以下の減圧状態にする。
かかる圧力が２００Ｐａを超えると、凹凸を有する基板５ａとフィルム状樹脂層５ｂの間にマイクロボイドが残存し、積層後のフィルム状樹脂層５ｂの表面の平滑性が悪くなる傾向があり好ましくない。
空間部１４を減圧状態にする時、空間部１４の温度は３０℃〜１８５℃が好ましく、更には７０〜１３５℃である。
【００１４】
次に圧締操作に入る。まず空隙部１３の減圧状態を大気中に戻し、空間部１４と空隙部１３の圧力差により、可撓性シート３を下方向に膨らませて凹凸を有する基板５ａとフィルム状樹脂層５ｂを貼り合わせる。
かかる圧力差により可撓性シート３は下方向に膨らみ、これにより基板５ａとフィルム状樹脂層５ｂは軽く接触するのである。
【００１５】
引続いて空隙部１３の圧力を高める。具体的には、空隙部１３の圧力を１．０×１０5〜２０×１０5Ｐａと高くして、上側の可撓性シート３は下側に大きく膨らみ、基板５ａとフィルム状樹脂層５ｂが強く圧締されるのである。
【００１６】
圧締の後に、開口部１５、１６を解放して、空間部１４と空隙部１３を大気圧に戻して、下部プレート２を上部プレート１から離して下方に移動させ、積層体５は真空積層装置６から排出される。
以上、下部プレート２が上下に移動して、可撓性シート３が膨張する真空積層装置６を用いた方法について説明したが、上部プレート１が上下に移動したり、可撓性シート４が膨張する方法が採用されてもよい。
【００１７】
真空積層装置６で使用される可撓性シート３及び４は、特には限定されないが、耐熱性で、強度があり、膨張可能なものが好ましく、例えばシリコンゴム、フッ素ゴム等が挙げられ、内部にフィラーや繊維、箔、板を入れたものも使用可能である。尚、該シートの膜厚は、通常１〜１０ｍｍのものが用いられる。
【００１８】
次に平面プレス装置９による加熱加圧処理を説明する。
真空積層装置６で積層された積層体５を、上下プレスブロック７、８の間に載置して、上下プレスブロック７及び８間で加熱加圧処理するのであるが、本発明においては、少なくとも一方の表面に緩衝材１０及びフレキシブル金属板１１を該金属板が上記積層体５側に配置されるように順次設置した上下プレスブロック７及び８を使用することを最大の特徴とするものである。
【００１９】
かかるプレスブロック７及び８は、工業的にはいくつかの構成部品に分かれている方が好適であり、通常は図２のようにプレス板１２、加熱層２１、ベース層２２で構成されることが好ましい。
【００２０】
かかるプレス板１２のプレス面の平面度は１０μｍ以下とすることが好ましく、更には３〜５μｍであり、ロックウエル硬度は４０度以上とすることが好ましく、更には５０度以上、特には５５〜６５度である。平面度が１０μｍを越えると膜厚均一性が低下する傾向があり、ロックウエル硬度が４０度未満であるとプレス面に傷が付きやすく鏡面性が劣り好ましくない。
なお、本発明において平面度とはＪＩＳ Ｂ０６０２に準処して、ロックウエル硬度とはＪＩＳ Ｚ２２４５に準処してそれぞれ測定されるものである。
【００２１】
かかるプレス面を構成するものとしては、鉄やステンレスや硬い耐熱性あるいは硬質のプラスチック、セラミックが挙げられ、好ましくは鉄やステンレス材等の金属が用いられる。更に該金属の表面にハードクロムメッキ加工等の表面硬化加工処理を施しても良いし、テトラフロオロエチレン樹脂を焼き付けた汚れ防止加工処理を施しても良い。
かかるプレス面として具体的にはナック鋼や、ステンレス等が使用される。
プレス板１２は上記のようなプレス面を持ち、プレス面に傷がついた時に容易に交換可能という目的として設けられたものであり、通常５〜３５ｍｍの厚みである。
加熱層２１は、熱伝熱と保温性の面で優れたものが好ましく、通常、加熱装置を内蔵したアルミニウム、鉄、ステンレスで構成された３５〜８０ｍｍの厚みのものが良い。
【００２２】
加熱層２１に内蔵する加熱装置は、プレスブロック内部の温度コントロールが可能なヒーターが好ましい。かかるヒーターに関しては電熱ヒーターであっても、配管に温水、熱水、蒸気、サーモエス等の工業的な熱媒を入れたものでもよいが、工業的にはコントロールのしやすさから電熱ヒーターが好ましく、かかるヒーターとしてはシース（鞘）状ヒーターや面シート状ヒーターが使用できる。
【００２３】
ベース層２２は、各基材層が、加圧時に歪まないようにするため補強構造材（通常は鉄系金属）で構成され、５０〜１５０ｍｍであることが工業的に好ましい。
【００２４】
かかる加熱層２１とベース層２２の間には必要に応じて、シート状断熱材を配置することも可能である。シート状断熱材は、プレスブロック中の熱伝導を下げる役割をし、通常セラミック発泡シートや石膏ボードが使用され、シート状断熱材の厚みは０．３〜２５ｍｍ程度である。
また、かかる上下のプレスブロック７及び８の全体寸法は、縦横が３５０〜９５０ｍｍ程度、厚みが１５０〜３５０ｍｍ程度が経済的である。
【００２５】
本発明ではかかるプレスブロック７及び８の表面に緩衝材１０及びフレキシブル金属板１１を配置したものを用いるものであり、該フレキシブル金属板１１の材質としては、ステンレス、鉄、アルミニウム、アルミニウム合金が挙げられ、耐錆性の点で好ましくはステンレスである。
【００２６】
かかるフレキシブル金属板１１の厚みは０．１〜１０ｍｍであることが好ましく、更には１〜３ｍｍである。
フレキシブル金属板１１の厚さが０．１ｍｍ未満ではその機械強度が低下することがあり、１０ｍｍを越えると金属板のブレキシブル性が低下することがあり積層後のフィルム状樹脂層５ｂの膜厚均一性を得る効果が十分に発揮されないことがあり好ましくない。
また、フレキシブル金属板１１の表面をバフ研磨等により鏡面研磨すると積層体５の表面を高度に鏡面にできるので製品の外観が優れ好ましい。
【００２７】
上記の緩衝材１０は、表面のショアーＡ硬度を６０度以上とすることが好ましく、更には６５〜７５度である。６０度未満では、積層後のフィルム状樹脂層の膜厚均一性を得る効果が発揮されないことがある。
なお、本発明において、ショアーＡ硬度とはＪＩＳ Ｚ２２４６に準処して測定されるものである。
また、緩衝材１０の厚みは０．２〜２０ｍｍであることが好ましく、更には０．２〜１０ｍｍ、特には０．２〜４ｍｍである。０．２ｍｍ未満では弾性強度が低いことがあり、２０ｍｍを越えると緩衝材１０の端部の変形が大きくなることがあり好ましくない。
【００２８】
かかる緩衝材１０としては、紙、ゴム、プラスチック等のいずれかの材質を表面研磨したものであれば良いが、その中でもゴムが好ましく、特にフッ素系ゴムが好ましい。かかるフッ素系ゴムとしては、フッ化ビニリデン系ゴム、含フッ素シリコーンゴム、テトラフルオロエチレン系ゴム、含フッ素ビニルエーテル系ゴム、含フッ素フォスフォニトリル系ゴム、含フッ素アクリレート系ゴム、含フッ素ニトロソメタン系ゴム、含フッ素ポリエステルゴム、含フッ素トリアジンゴム等が挙げられ、市販品としては例えば、金陽社製「キンヨーボード」シリーズ、クレハエラストマー社製「フッソゴムシートＦＢ」シリーズ、ダイキン工業社製「ダイエル」シリーズ、デュポン社製「ビトン」シリーズ、ダウコーニング社製「シラステック」シリーズ、モンテディソン社製「テクノフロン」シリーズ、３Ｍ社製「フルオレル」シリーズ、「ケル−Ｆ」シリーズ等が挙げられる。
【００２９】
かかる緩衝材１０は、耐熱性樹脂、ガラス繊維シートや金属箔シート等を内部に含むものであっても良い。
【００３０】
上記の上下プレスブロック７及び８への緩衝材１０及びフレキシブル金属板１１の設置方法について説明する。
緩衝材１０とフレキシブル金属板１１は上下プレスブロック７及び８の少なくとも一方に設置されればよく、好ましくは両方に設置される。その場合に上下プレスブロック７及び８には、緩衝材１０を挟んでフレキシブル金属板１１を配置し、ねじ等でフレキシブル金属板１１や緩衝材１０を固定すればよい。
【００３１】
次に平面プレス装置９での加熱加圧処理法について述べる。
加熱温度は、３０〜２００℃であることが好ましく、特に好ましくは１００〜１５０℃である。
加圧条件は、１．０×１０5〜５．０×１０6Ｐａであることが好ましく、特に好ましくは２．０×１０6〜３．１×１０6Ｐａである。
加熱加圧時間は、特には限定しないが、２０〜２００秒程度行うのが好ましく、工業的に生産効率を上げるためには３０〜６０秒行うのが更に好ましい。
【００３２】
加圧装置については、特には限定されず、加圧時にサーボモーターとスクリューネジにて下プレスブロック８を押し上げても良いが、工業的には、油圧シリンダー又はエアーシリンダー２３を使用することが好ましい。
【００３３】
図１では、複数本の油圧シリンーダー又はエアーシリンダー２３で下プレスブロック８を押し上げて加圧しているが、１本の油圧シリンーダー又はエアーシリンダー２３とジョイント３４を接続させて下プレスブロック８を押し上げて加圧しても良く、また、複数本の時にはその中の何本かはジョイント３４がないものでも良い。
【００３４】
また、複数本の時は油圧シリンダー又はエアーシリンダー２３を油圧シリンダーかエアーシリンダーのどちらかに統一する必要はなく、混在させても良い。
図１では、ポンプ３３は一つであるが、使用する油圧シリンダー又はエアーシリンダー２３の本数により適宜複数個のポンプを使用することも可能であり、また、ポンプ３３とシリンダー２３の途中の配管３５には絞り弁、電磁弁、分岐管等を適宜設置しても良い。
【００３５】
尚、油圧シリンダー又はエアーシリンダー２３の動作速度については、特に限定しないが、下プレスブロック８を押し当てる直前では、積層体５を痛めないためにもできうる限りの低速が好ましく、かかるシリンダー２３中には、ショックアブソーバー、ショック防止バネ、ショックレスバルブなどを付設してもよい。
【００３６】
尚、図１とは上下逆の平面プレス装置、即ち、上プレスブロック７が上下に摺動して、下プレスブロック８が固定したものを用いてもよいが、発生する異物塵埃の点から、図１の構成が好ましい。
【００３７】
真空積層装置６で圧締処理した後、積層体５を平面プレス装置９で処理するタイミングについては特には限定しないが、真空積層装置６の圧締処理の後１２時間以内に平面プレス装置９で加熱加圧処理すればよく、特に１５分以内であると真空積層装置６から排出された積層体５が冷えきらずに加熱加圧処理ができ、膜厚均一性が良好となるので好ましい。
【００３８】
かかる操作を工業的に効率良く行うために、平面プレス装置９でも、上下プレスブロック７及び８の間に、搬送用フィルム２４を配置して積層体５を搬送するのが好ましい。
【００３９】
かかる搬送用フィルム２４としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ナイロンフィルム、ポリイミドフィルム、ポリスチレンフィルム、フッ素化オレフィンフィルムが挙げられるが、膜厚みの精度の良い点でポリエチレンテレフタレートフィルムが好適である。
【００４０】
かかる搬送用フィルム２４の膜厚は１０〜１００μｍ、特には２０〜５５μｍであることが好ましい。
尚、搬送用フィルム２４の幅は、積層体５の幅よりも広く、空間部１４の幅よりも狭い必要がある。通常、搬送用フィルム２４の幅は、積層体５の幅より１０〜４０ｍｍ広くすることが好ましい。
【００４１】
搬送用フィルム２４の表面に関しても、特には限定しないが、表面粗度Ｒｚが０．３５〜１．０μｍであることが好ましく、かかる表面粗度Ｒｚが０．３５μｍ未満の時は、真空積層装置６では、上下の搬送用フィルム２３同志が密着してしまい積層時の空気の逃げが悪くマイクロボイドが増加したり、上下の搬送用フィルム２３と上下の可撓性シート３、４とが密着して搬送しにくくなったり、平面プレス装置９では、搬送用フィルム２４と、上プレスブロック７、下プレスブロック８、緩衝材１０のそれぞれの間でエアー溜まりが発生して押しムラが生じる傾向にあり好ましくない。１．０μｍを超える時は、上下の搬送用フィルム２３同志での静電気の発生率が高くなりフィルム同志が反発したり、また、かかる搬送用フィルム２４で連続搬送するときには、上下搬送用フィルム２４同志が、平面プレス装置９に入る時に張力変動で剥がれやすくなりエアー溜まりやシワが発生する問題点があり好ましくない。
【００４２】
かかる表面粗度Ｒｚを得る処理については、特には限定しないが、工業的にはマット処理（マット処理をしたフィルムを以下マットフィルムと略称する）がある。かかるマット処理とは、表面を各種の手法で粗化させたもので、エメリー表面あらし加工や、フィルム表面に微細なフィラーを付着させたり練り込んだりした加工がある。
【００４３】
また、表面には適宜、離型処理加工、静電気防止処理加工、コロナ処理加工などが施されても良く、離型処理加工はしみだした樹脂分の除去に役立ち、静電気防止処理はゴミの付着トラブルやフィルムの反発トラブルの防止に役立ち有用である。
【００４４】
図１では、真空積層装置６、平面プレス装置９で処理する際にいずれも搬送用フィルム２４を用いる場合を示したが、真空積層装置６で処理する際だけに、該フィルムを用いたり、平面プレス装置９で処理する際だけに該フィルムを用いてもよく、また、真空積層装置６と平面プレス装置９にそれぞれ別々に搬送用フィルム２４が設置されていてもよい。
尚、真空積層装置６と平面プレス装置９にそれぞれ別々に搬送用フィルム２４が設置されている時にも、上記マットフィルムが非常に有効である。
【００４５】
かかる搬送用フィルム２４は、通常、ニップロール２９、巻出し装置２５、巻取り装置２８でコントロールされ、かかる巻だし装置２５は通常張力コントロール可能なパウダーブレーキ又はクラッチ付モーターが使用され、ニップロール２９は位置と速度をコントロールできるサーボモーター等が使用され、巻取り装置２８は張力コントロール可能なトルクモーター等が使用される。
【００４６】
かかる搬送用フィルム２４の走行時には、工業的には０．５〜１５ｋｇｆ／ｍ（フィルム幅）で引張しながら走行させる。また、その搬送速度は、前後のコンベア２５の速度と一致させる必要があり通常１〜２５ｍ／分である。
【００４７】
本発明で使用される積層体５の構成は、凹凸を有する基板５ａ／フィルム状樹脂層５ｂ、フィルム状樹脂層５ｂ／凹凸を有する基板５ａ／フィルム状樹脂層５ｂ等任意である。
かかる凹凸を有する基板５ａとしては、特には限定しないが、銅、半田等のパターン等を施したプリント基板が好ましく、ピルドアップ工法等で用いられる多積層基板でも良い。かかる基板の厚みとしては特には限定しないが、０．１〜１０ｍｍ程度のものが良い。縦横の大きさも特には限定しないが、１５０〜８００ｍｍ程度ものが良い。
【００４８】
また、フィルム状樹脂層５ｂは、樹脂組成物と、支持体フィルム（セパレーターフィルム）あるいは銅箔から構成されることが好ましい。
かかる樹脂組成物は、絶縁性、粘着性や接着性、ホットメルト性を持つものや、ガラス転移温度以上で軟化する樹脂組成物が好ましい。
【００４９】
かかる樹脂組成物としては、主にエポキシ樹脂又は、該樹脂からなる熱硬化性樹脂組成物、エチレン性不飽和化合物及び光重合開始剤からなる感光性樹脂組成物等が挙げられる。
また、支持体フィルム（セパレーターフィルム）としては、ポリエチレンテレフタレートフィルムやポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物フィルム等が挙げられる。
【００５０】
銅箔としては特に制限しないがエッチングで溶解可能なものが好ましい。
かかる支持体フィルム（セパレーターフィルム）あるいは銅箔の表面の状態については特には限定しないが、なるべく鏡面状態のものが好ましく、厚みも３〜６０μｍ程度のものが好ましい。
【００５１】
上記該樹脂組成物層の厚みは５〜１５０μｍ程度が好ましい。かかる樹脂組成物の厚みと凹凸を有する基板５ａの凹凸の寸法との関係であるが、銅、半田等のプリントパターンやスルホールの場合に、凹凸を充填したり、スルーホールを埋めるのに足りるだけの樹脂組成物量即ち樹脂組成物の厚みが必要であり、プリントパターンの場合は、通常、基板５ａの凹凸の厚み（銅パターンの場合は銅高）／樹脂組成物厚みの比は０．８以下とするのが好ましい。
【００５２】
かかるフィルム状樹脂層５ｂのビルドアップ工法用途の市販品（保護フィルムが貼付した構成のものものある）としては、日立化成社製「ＢＦ」、「ＢＬ」、「ＡＳ」、「ＭＣＦ」の各シリーズ、シプレー社製「ＭＵＬＴＩＰＯＳＩＴ−９５００」シリーズ、日本ペイント社製「プロピコート」シリーズ、チバスペシャリティ社製「Ｐｌｏｂｅｌｅｃ」シリーズ、デュポン社製「Ｖａｌｕｘ」シリーズ、太陽インク社製「ＰＶＩ」、「ＨＢＩ」の各シリーズ、旭電化社製「ＢＵＲ」シリーズ、味の素社製「ＡＢＦ」シリーズ、東京応化社製「ＳＢ−Ｒ」シリーズ、三井金属社製「ＭＲ」シリーズ、松下電工社製「Ｒ」シリーズ、住友ベークライト社製「ＡＰＬ」シリーズ、ニッカン社製「ＣＡＤ」シリーズ、旭化成社製「ＰＣＣ」シリーズ、三菱ガス化学社製「ＣＢＲ」、「ＣＣＬ」、「ＧＭＰ」の各シリーズ等が挙げられる。
【００５３】
その他の用途の樹脂層５ｂとしては、フォトレジストフィルム用樹脂層、ソルダーレジストマスクフィルム用樹脂層、コンフォーマスクフィルム用樹脂層が挙げられる。
【００５４】
フィルム状樹脂層５ｂの樹脂組成物の表面あるいは裏面の処理方法については限定されないが、好ましくは、基板と積層する方の面がマット処理してあることが、積層時の空気の逃げがよくマイクロボイドが少なく良好である。
該マット処理に関しては特には限定しないが、表面粗さＲｚが３〜４０μ程度のものが好ましい。
【００５５】
最後に必要に応じて本発明の積層方法を行う前後に行われる前処理、後処理やかかる処理を行うための装置について述べる。
【００５６】
本積層方法を行う前に微粘着ロールや、超音波クリーナーなどのクリーナー装置を配置して、それらにより基板表面や搬送用フィルム２４の表面をクリーニングしてもよい。
また、真空積層装置６の前や平面プレス装置９の後には、コンベア２７が適宜配置されることもあり、かかるコンベア２７により、積層体５が、真空積層装置６から搬入排出されるのであるが、かかるコンベア２７に代えて回転ロール群やエンドレスベルトを用いても良く、また、これらの素材は汚れにくく発塵しないものが良い。
コンベア２７のサイズは、長さ０．３〜３ｍ、好ましくは、０．５〜１．５ｍであればよく、また、その搬送速度は通常１〜２５ｍ／分である。
【００５７】
平面プレス装置９から積層体５が排出される時、後工程での押し跡（打痕跡）を防止するために、排出直後に室温程度に冷却固化されることが好ましく、かかる冷却方法については特には限定されず、自然放熱により冷却しても良いが、平面プレス装置９の直後に冷却装置を設けてもよい。
かかる冷却装置は工業的には、冷凍機や空気の断熱膨張を利用した冷気を利用した冷風ファンや冷風エアーナイフ、冷水を通管した冷却ロール等が用いられる。
【００５８】
搬送用フィルム２４を使用する時は、搬送用フィルム２４に挟持されたまま冷却されるのが更に好ましく、平面プレス装置９より搬送された積層体５を、上記冷却し、冷却後に後ろ側のコンベア２７に排出するのが好ましい。
【００５９】
後ろ側のコンベア２７の入り口には、平面プレス装置９での加熱加圧処理後、積層体５と搬送用フィルム２４を剥がすための剥離ロール等の剥離装置部、例えば跳ね上がり防止装置３０を設置すると好適である。
平面プレス装置９の後に、圧締された積層体５を貯蔵するためのストッカーや、積層体５の表面平滑性の向上のために更に加圧装置等を適宜配置してもよい。
尚、静電気対策のために搬送用フィルム２４のフィルムラインや各所に除電バーなどを設置してもよい。
【００６０】
平面プレス装置９での加熱加圧処理後、積層体５は必要に応じて、冷却プレス加工、室温でのエージング処理、１６０〜２１０℃で２０〜２００分の熱硬化や紫外線による硬化、露光、ホットプレス加工、打ち抜き加工、ピーラーによる支持体フィルムの剥離加工、レーザー加工、無電解メッキ加工等を施してもよい。
【００６１】
尚、本発明は、プリント基板以外の他用途、例えば、ＬＣＤ基板の上に、粘着剤付偏光板や粘着剤付位相差板を貼り合わす時、ＰＤＰ基板の上にドライフィルムを貼り合わす時、タブテープに各種基材を貼り合わす時、各種電子基板にダイシングテープ等やホットメルト樹脂の付着したフィルム、例えばＩＣカード等を貼り合わす時にも大変有効な装置や方法である。
【００６２】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
実施例１
図１に示す如き真空積層装置６及び平面プレス装置９を用いた。
上部プレート１と下部プレート２を内蔵されたヒーターにより予め１２０℃に調整しておいた。
まず、ポリエチレンテレフタレートフィルムにエポキシ樹脂からなる熱硬化性樹脂組成物（ガラス転移温度８０℃）を塗布したフィルム状樹脂層５ｂを、凹凸を有する基板５ａの両面に配置し、フィルム状樹脂層５ｂ（厚み２５μｍ）の樹脂面（Ｒｚが３．５μｍ）が該基板５ａの凹凸面（厚み１８μｍ）に接するようにオートシートカットラミネーターにより仮止めして積層体５を用意した。
【００６３】
次に、ポリエチレンテレフタレートフィルムからなる搬送用フィルム２４（厚み３８μｍ、表面粗さＲｚが０．５μｍ）で上記の積層体５を圧締位置に搬送した後、下部プレート２を上げ、上部プレート１と密封契合した後、減圧操作に入った。
【００６４】
開口部１５、開口部１６から空気を真空ポンプで吸引して、空隙部１３及び空間部１４を６０Ｐａまで減圧状態にして５０秒間減圧を継続した後、開口部１５を大気開放として、空隙部１３を大気圧とし、シリコンゴムからなる可撓性シート３及び可撓性シート４で積層体５を軽く圧締した。その１０秒後に、更に開口部１５より圧縮空気を入れて、空隙部１２を６×１０5Ｐａとして、可撓性シート３を大きく膨らませて、積層体５を１２０℃で３００秒間強く圧締した。
【００６５】
次に空隙部１３及び空間部１４を大気圧に戻して、下部プレート２を下方に移動させて、圧締された積層体５を排出した。
【００６６】
引き続いて、６０秒後に、平面プレス装置９に積層体５を搬送用フィルム２４により搬送した。
【００６７】
次に上下プレスブロック７及び８を有する平面プレス装置９により積層体５の加熱加圧処理を行った。
加熱層２１は厚み６０ｍｍのステンレスで、内部にシースヒータを９本有し、ベース層２２としては厚み８０ｍｍの鉄製のものを用いた。
【００６８】
また、上下のそれぞれのプレス板１２（厚み２０ｍｍ）のプレス面の平面度は３μｍでロックウエル硬度が６０度のステンレスを用い、その積層体５側に緩衝材１０とフレキシブル金属板１１を順次設置した。緩衝材１０としてはフッ化ビニリデン系ゴム（フッ化ビニリデン、六フッ化プロピレン、四フッ化エチレンの共重合体）の厚み２．５ｍｍ、ショアーＡ硬度７０度のものを用い、フレキシブル金属板１１としては表面を鏡面研磨加工した厚さ２ｍｍのステンレス板を用いた。
尚、上下いずれのフレキシブル金属板１１もブレス板１０との間に緩衝材１０を挟んでねじで固定した。
【００６９】
次に、加熱層を１４０℃に調整し、そして下プレスブロック８を、ジョイント３４が配置された４本の油圧シリンダー２３を用いて上部に移動し、積層体５を２．５×１０6Ｐａの圧力で６０秒間加熱加圧処理した。その後、下プレスブロック８を下方に移動し、積層体５を搬送フィルム２４で搬送して平面プレス装置９から排出した。
【００７０】
上記の積層操作を（イ）１０００回、（ロ）１００００回実施後の積層体５について追従性、膜厚均一性、鏡面性の評価を以下の要領で行った。
【００７１】
（追従性）
積層体５の表面を観察し、凹凸を有する基板５ａの凹凸に沿ってフィルム状樹脂層５ｂが積層されているかどうか２５０倍顕微鏡で確認した。
○・・・凹凸に沿ってフィルム状樹脂層５ｂが充填しておりマイクロボイドもなく追従性している。
×・・・凹凸に沿ってフィルム状樹脂層５ｂが充填していない、又は、マイクロボイドがある。
【００７２】
（膜厚均一性）
積層体５をクロスセクション法で、垂直切断面を電子顕微鏡にて観察して以下の基板の凸面上に積層される樹脂層の厚みを測定して、それぞれの厚みの差を以下のように評価した。
○・・・０．５μｍ未満
△・・・０．５〜１．０μｍ
×・・・１．０μｍを越える
【００７３】
（鏡面性）
積層体５のフィルム状樹脂層５ｂ面を斜め４５度の角度で基板に当たった蛍光灯の反射光を目視で観察して以下のように評価した。
○・・・鏡面状態である
△・・・鏡面に近い状態である
×・・・鏡面にはならず
【００７４】
比較例１
実施例１において、緩衝材１０の積層体５側上にステンレス板を用いない以外は同様に処理して同様に評価した。
【００７５】
実施例１、比較例１の評価結果を表１に示した。
【００７６】
【発明の効果】
本発明は可撓性シート３を付設した上部プレート１及び可撓性シート４を付設した下部プレート２が設置された真空チャンバーを有する真空積層装置６を使用して、該チャンバー内の上下プレート間で、凹凸を有する基板５ａとフィルム状樹脂層５ｂからなる積層体５を圧締した後、該積層体５を上下にプレスブロック７及び８を有する平面プレス装置９により加熱加圧処理して積層する方法において、上下プレスブロック７及び８として、その少なくとも一方の表面に緩衝材１０及びフレキシブル金属板１１を該金属板が上記積層体５側に配置されるように順次設置した上下プレスブロック７及び８を使用するので、積層体５の積層を長期間繰り返して実施してもフィルム状樹脂層５ｂの追従性がよく、かつ積層後の樹脂層の膜厚均一性及び表面の鏡面性にも優れる効果が得られ、ビルドアップ工法に有用な積層体５を得るのに有用な積層方法である。
【図面の簡単な説明】
【図１】 本発明の積層方法に用いられる積層装置の一例である。
【図２】 上記積層装置の平面プレス装置９の拡大図である。
【符号の説明】
１・・・上部プレート
２・・・下部プレート
３・・・上部プレートに付設した可撓性シート
４・・・下部プレートに付設した可撓性シート
５・・・積層体
５ａ・・・凹凸を有する基板
５ｂ・・・フィルム状樹脂層
６・・・真空積層装置
７・・・上プレスブロック
８・・・下プレスブロック
９・・・平面プレス装置
１０・・・緩衝材
１１・・・フレキシブル金属板
１２・・・プレス板
１３・・・上部プレートと可撓性シート間の空隙部
１４・・・可撓性シート３、４の間に形成される空間部
１５・・・上部プレートを通過する開口部
１６・・・下部プレートを通過する開口部
１７・・・シール
１８・・・止め金具
１９・・・真空積層装置用ジョイント
２０・・・油圧シリンダー又はエアーシリンダー
２１・・・加熱層
２２・・・ベース層
２３・・・油圧シリンダー又はエアーシリンダー
２４・・・搬送用フィルム
２５・・・巻き出し装置
２６・・・ガイドロール
２７・・・コンベア
２８・・・巻き取り装置
２９・・・ニップロール
３０・・・跳ね上がり防止装置
３１・・・支柱
３２・・・ガイド
３３・・・ポンプ
３４・・・ジョイント
３５・・・配管
【発明の属する技術分野】
本発明は、プリント回路基板の製造において、凹凸を有する基板にフィルム状樹脂層を積層する方法に関するものであり、更に詳しくはかかる積層方法を工業的な連続稼働条件下で実施してもフィルム状樹脂層の追従性が良く、積層後の膜厚均一性と鏡面性に優れ、ビルドアップ工法に有用な積層体を得る積層方法に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
近年、電子機器の小型化、高性能化に伴いプリント回路基板の高密度化、多層化が進行している。
かかるプリント回路基板の多層化においては、熱硬化型樹脂組成物又は感光性樹脂組成物を絶縁層として使用し、予め形成した内層回路の上に該熱硬化型樹脂組成物又は感光性樹脂組成物を塗布し、あるいは該熱硬化型樹脂組成物又は感光性樹脂組成物からなるフィルム状樹脂層を積層する。かかるフィルム状樹脂層の片面には、通常銅箔や支持体フィルム（セパレーターフィルム）が積層されており、銅箔の場合はそれをハーフエッチング又は全面エッチングし、支持体フィルムの場合はそれを剥離して、次いでレーザー又は紫外線による穴あけ後に、銅メッキを施した後、再度フォトレジストフィルムを用いて光によるパターニングを行い回路を形成する方法、いわゆるビルドアップ工法が有効に用いられている。
【０００３】
かかる工法においては凹凸を有する基板とフィルム状樹脂層を効率良く積層する技術が重要であり、本出願人も先に特開２０００−１４１３８８号公報で、凹凸を有する基板にフィルム状樹脂を積層するに当たり、真空積層装置を用いて積層した後、ラミネーターロール又は平面プレスにより加熱加圧処理する積層方法を開示した。
しかし、上記公報で記載された積層方法で凹凸を有する基板とフィルム状樹脂を貼り合わせて積層体を製造する場合、積層体のフィルム状樹脂表面は平滑にはなるものの、基板上でフィルム状樹脂中の樹脂組成物の厚みが不均一になる事態があり、基板を高周波数にさらされる状態で使用する場合の絶縁性に悪影響を及す恐れがあった。
かかる事情に鑑み、本出願人は特願２００１−２５３９３号において、真空積層装置で積層体を積層した後、平面プレス装置で加熱加圧処理して積層する方法において、平面プレス装置に、ショアーＡ硬度が６０度以上、厚みが０．２〜１０ｍｍ、表面粗さが２０μｍ以下の緩衝材を設置した上下プレスブロックを使用する積層方法を特許出願した。
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特願２００１−２５３９３号において用いられる緩衝材は、通常表面を研磨したフッ素系ゴムであるが、かかる緩衝材は積層体が加熱加圧処理される時に同じように加熱加圧条件下にさらされるので、長期間繰り返して積層方法を実施すると緩衝材が劣化し、その表面に割れ等のトラブルが起こり凹凸の発生が認められる結果、フィルム状樹脂表面の平滑性や基板上でのフィルム状樹脂中の樹脂組成物の厚みの均一性、鏡面性付与等、上記特願２００１−２５３９３号が目的とする効果を発揮し得なくなることが判明し、更なる改善が必要となった。
【０００５】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明者らは、かかる事情に鑑み鋭意研究をした結果、可撓性シート３を付設した上部プレート１及び可撓性シート４を付設した下部プレート２が設置された真空チャンバーを有する真空積層装置６を使用して、該チャンバー内の上下プレート間で、凹凸を有する基板５ａとフィルム状樹脂層５ｂからなる積層体５を圧締した後、該積層体５を上下にプレスブロック７及び８を有する平面プレス装置９により加熱加圧処理して積層する方法において、上下プレスブロック７及び８として、その少なくとも一方の表面に緩衝材１０及びフレキシブル金属板１１を該金属板が上記積層体５側に配置されるように順次設置した上下プレスブロック７及び８を使用して積層方法を採用する場合、積層方法を長期間繰り返して実施してもフィルム状樹脂層の追従性や、基板の上に積層される樹脂組成物層の基板凸部での膜厚均一性に優れ、更に積層体のフィルム樹脂層側の表面が鏡面（鏡面性）となる積層体５が得られることを見いだし本発明を完成した。
【０００６】
【発明の実施の形態】
本発明の積層方法では、特定の真空積層装置６を用いて、該積層体５の圧締を行った後、上下プレスブロック７及び８の少なくとも一方の表面に緩衝材１０及びフレキシブル金属板１１を該金属板が上記積層体５側に配置されるように順次設置した上下プレスブロック７及び８を使用する平面プレス装置９で加熱加圧処理する。
【０００７】
本発明で使用する真空積層装置６及び平面プレス装置９の基本的な構成は図１の通りである。図１では、真空積層装置６と平面プレス装置９を併設した連続積層装置となっているが、本発明はこれに限定されるものではなく、それぞれの装置を独立して使用してもよい。
【０００８】
真空積層装置６の真空チャンバーには、可撓性シート３を付設した上部プレート１と可撓性シート４を付設した下部プレート２が配置されている。
可撓性シート４は、下部プレート２上に直接存在し、可撓性シート３は、その四辺端が押さえシール金具１８により上部プレート１と可撓性シート３の間に形成される空隙部１３（以下単に空隙部１３と称することがある）が形成出来るように上部プレート１に付着されている。また、上部プレート１には、該プレート１内を通過する開口部１５（以下単に開口部１５と称することがある）が配置され、かかる開口部１５により、空隙部１３の圧力が調整される。開口部１５から気体又は液体を空隙部１３に導入すると可撓性シート３が風船のように膨らむ構造となっている。下部プレート２には、該プレート２内を通過する開口部１６（以下単に開口部１６と称することがある）が配置され、かかる開口部１６により、上部プレート１と下部プレート２の密封契合時に、可撓性シート３、４の間に形成される空間部１４（以下単に空間部１４と称することがある）の圧力が調整される。また、真空引きを効率良く行うためにシール１７が下部プレート２の端の上に配置されている。下部プレート２は、ジョイント１９にて油圧シリンダー又はエアーシリンダー２０と接続され、上下に移動する。
尚、上部プレート１、下部プレート２の内部には、空間部１４の加熱のための加熱装置が適宜配置されている。
【０００９】
また、平面プレス装置９には、上プレスブロック７と下プレスブロック８が配置され、上プレスブロック７は支柱３１に固定されている。
また、支柱３１はガイド３２が設けられ、下プレスブロック８が上下に移動できるようになっている。
下プレスブロック８は、ジョイント３４を介して、油圧シリンダー又はエアーシリンダー２３に接続されて、油圧シリンダー又はエアーシリンダー２３を作動させることにより下プレスブロック８が上昇して加熱プレスされる。
尚、油圧シリンダー又はエアーシリンダー２３はそのポンプ３３と接続されている。
上プレスブロック７及び下プレスブロック８は、プレス板１２、温度コントロールが可能なヒーターを有する加熱層２１、ベース層２２から構成される。
【００１０】
本発明では、積層体５の搬送やフィルム状樹脂層５ｂからのしみだしを取り除くために搬送用フィルム２４を併用するのが好ましく、かかる搬送用フィルム２４の張力及び搬送速度を制御調節するために、巻出し装置２５が真空チャンバーの入口付近に、巻取り装置２８及びニップロール２９が出口付近に配置されている。
搬送用フィルム２４の通過ラインの各所には、搬送用フィルム２４の張力誘導と空中保持のために、ガイドロール２６が適宜配置されている。
【００１１】
次に本発明の積層方法を図１を参考にして詳細に説明する。
本発明の積層に先立ち、凹凸を有する基板５ａ（以下単に基板５ａと称することがある）とフィルム状樹脂層５ｂはオートシートカットラミネータ等により予め仮どめして積層体５としておくことが好ましい。
【００１２】
まず真空積層装置６による圧締操作を説明する。
上記の積層体５を搬送用フィルム２４にて真空積層装置６の圧締位置に搬送する。その後下部プレート２を持ち上げて、上部プレート１と密封契合させる。かかる下部プレート２の移動（昇降）は、油圧シリンダー又はエアーシリンダー２０でコントロールされる。
【００１３】
密封契合した後、空隙部１３、空間部１４を減圧状態とする。
具体的には、上部プレート１の開口部１５と下部プレート２の開口部１６より吸引し、空隙部１３、空間部１４の圧力を、２００Ｐａ以下、好ましくは１００Ｐａ以下の減圧状態にする。
かかる圧力が２００Ｐａを超えると、凹凸を有する基板５ａとフィルム状樹脂層５ｂの間にマイクロボイドが残存し、積層後のフィルム状樹脂層５ｂの表面の平滑性が悪くなる傾向があり好ましくない。
空間部１４を減圧状態にする時、空間部１４の温度は３０℃〜１８５℃が好ましく、更には７０〜１３５℃である。
【００１４】
次に圧締操作に入る。まず空隙部１３の減圧状態を大気中に戻し、空間部１４と空隙部１３の圧力差により、可撓性シート３を下方向に膨らませて凹凸を有する基板５ａとフィルム状樹脂層５ｂを貼り合わせる。
かかる圧力差により可撓性シート３は下方向に膨らみ、これにより基板５ａとフィルム状樹脂層５ｂは軽く接触するのである。
【００１５】
引続いて空隙部１３の圧力を高める。具体的には、空隙部１３の圧力を１．０×１０5〜２０×１０5Ｐａと高くして、上側の可撓性シート３は下側に大きく膨らみ、基板５ａとフィルム状樹脂層５ｂが強く圧締されるのである。
【００１６】
圧締の後に、開口部１５、１６を解放して、空間部１４と空隙部１３を大気圧に戻して、下部プレート２を上部プレート１から離して下方に移動させ、積層体５は真空積層装置６から排出される。
以上、下部プレート２が上下に移動して、可撓性シート３が膨張する真空積層装置６を用いた方法について説明したが、上部プレート１が上下に移動したり、可撓性シート４が膨張する方法が採用されてもよい。
【００１７】
真空積層装置６で使用される可撓性シート３及び４は、特には限定されないが、耐熱性で、強度があり、膨張可能なものが好ましく、例えばシリコンゴム、フッ素ゴム等が挙げられ、内部にフィラーや繊維、箔、板を入れたものも使用可能である。尚、該シートの膜厚は、通常１〜１０ｍｍのものが用いられる。
【００１８】
次に平面プレス装置９による加熱加圧処理を説明する。
真空積層装置６で積層された積層体５を、上下プレスブロック７、８の間に載置して、上下プレスブロック７及び８間で加熱加圧処理するのであるが、本発明においては、少なくとも一方の表面に緩衝材１０及びフレキシブル金属板１１を該金属板が上記積層体５側に配置されるように順次設置した上下プレスブロック７及び８を使用することを最大の特徴とするものである。
【００１９】
かかるプレスブロック７及び８は、工業的にはいくつかの構成部品に分かれている方が好適であり、通常は図２のようにプレス板１２、加熱層２１、ベース層２２で構成されることが好ましい。
【００２０】
かかるプレス板１２のプレス面の平面度は１０μｍ以下とすることが好ましく、更には３〜５μｍであり、ロックウエル硬度は４０度以上とすることが好ましく、更には５０度以上、特には５５〜６５度である。平面度が１０μｍを越えると膜厚均一性が低下する傾向があり、ロックウエル硬度が４０度未満であるとプレス面に傷が付きやすく鏡面性が劣り好ましくない。
なお、本発明において平面度とはＪＩＳ Ｂ０６０２に準処して、ロックウエル硬度とはＪＩＳ Ｚ２２４５に準処してそれぞれ測定されるものである。
【００２１】
かかるプレス面を構成するものとしては、鉄やステンレスや硬い耐熱性あるいは硬質のプラスチック、セラミックが挙げられ、好ましくは鉄やステンレス材等の金属が用いられる。更に該金属の表面にハードクロムメッキ加工等の表面硬化加工処理を施しても良いし、テトラフロオロエチレン樹脂を焼き付けた汚れ防止加工処理を施しても良い。
かかるプレス面として具体的にはナック鋼や、ステンレス等が使用される。
プレス板１２は上記のようなプレス面を持ち、プレス面に傷がついた時に容易に交換可能という目的として設けられたものであり、通常５〜３５ｍｍの厚みである。
加熱層２１は、熱伝熱と保温性の面で優れたものが好ましく、通常、加熱装置を内蔵したアルミニウム、鉄、ステンレスで構成された３５〜８０ｍｍの厚みのものが良い。
【００２２】
加熱層２１に内蔵する加熱装置は、プレスブロック内部の温度コントロールが可能なヒーターが好ましい。かかるヒーターに関しては電熱ヒーターであっても、配管に温水、熱水、蒸気、サーモエス等の工業的な熱媒を入れたものでもよいが、工業的にはコントロールのしやすさから電熱ヒーターが好ましく、かかるヒーターとしてはシース（鞘）状ヒーターや面シート状ヒーターが使用できる。
【００２３】
ベース層２２は、各基材層が、加圧時に歪まないようにするため補強構造材（通常は鉄系金属）で構成され、５０〜１５０ｍｍであることが工業的に好ましい。
【００２４】
かかる加熱層２１とベース層２２の間には必要に応じて、シート状断熱材を配置することも可能である。シート状断熱材は、プレスブロック中の熱伝導を下げる役割をし、通常セラミック発泡シートや石膏ボードが使用され、シート状断熱材の厚みは０．３〜２５ｍｍ程度である。
また、かかる上下のプレスブロック７及び８の全体寸法は、縦横が３５０〜９５０ｍｍ程度、厚みが１５０〜３５０ｍｍ程度が経済的である。
【００２５】
本発明ではかかるプレスブロック７及び８の表面に緩衝材１０及びフレキシブル金属板１１を配置したものを用いるものであり、該フレキシブル金属板１１の材質としては、ステンレス、鉄、アルミニウム、アルミニウム合金が挙げられ、耐錆性の点で好ましくはステンレスである。
【００２６】
かかるフレキシブル金属板１１の厚みは０．１〜１０ｍｍであることが好ましく、更には１〜３ｍｍである。
フレキシブル金属板１１の厚さが０．１ｍｍ未満ではその機械強度が低下することがあり、１０ｍｍを越えると金属板のブレキシブル性が低下することがあり積層後のフィルム状樹脂層５ｂの膜厚均一性を得る効果が十分に発揮されないことがあり好ましくない。
また、フレキシブル金属板１１の表面をバフ研磨等により鏡面研磨すると積層体５の表面を高度に鏡面にできるので製品の外観が優れ好ましい。
【００２７】
上記の緩衝材１０は、表面のショアーＡ硬度を６０度以上とすることが好ましく、更には６５〜７５度である。６０度未満では、積層後のフィルム状樹脂層の膜厚均一性を得る効果が発揮されないことがある。
なお、本発明において、ショアーＡ硬度とはＪＩＳ Ｚ２２４６に準処して測定されるものである。
また、緩衝材１０の厚みは０．２〜２０ｍｍであることが好ましく、更には０．２〜１０ｍｍ、特には０．２〜４ｍｍである。０．２ｍｍ未満では弾性強度が低いことがあり、２０ｍｍを越えると緩衝材１０の端部の変形が大きくなることがあり好ましくない。
【００２８】
かかる緩衝材１０としては、紙、ゴム、プラスチック等のいずれかの材質を表面研磨したものであれば良いが、その中でもゴムが好ましく、特にフッ素系ゴムが好ましい。かかるフッ素系ゴムとしては、フッ化ビニリデン系ゴム、含フッ素シリコーンゴム、テトラフルオロエチレン系ゴム、含フッ素ビニルエーテル系ゴム、含フッ素フォスフォニトリル系ゴム、含フッ素アクリレート系ゴム、含フッ素ニトロソメタン系ゴム、含フッ素ポリエステルゴム、含フッ素トリアジンゴム等が挙げられ、市販品としては例えば、金陽社製「キンヨーボード」シリーズ、クレハエラストマー社製「フッソゴムシートＦＢ」シリーズ、ダイキン工業社製「ダイエル」シリーズ、デュポン社製「ビトン」シリーズ、ダウコーニング社製「シラステック」シリーズ、モンテディソン社製「テクノフロン」シリーズ、３Ｍ社製「フルオレル」シリーズ、「ケル−Ｆ」シリーズ等が挙げられる。
【００２９】
かかる緩衝材１０は、耐熱性樹脂、ガラス繊維シートや金属箔シート等を内部に含むものであっても良い。
【００３０】
上記の上下プレスブロック７及び８への緩衝材１０及びフレキシブル金属板１１の設置方法について説明する。
緩衝材１０とフレキシブル金属板１１は上下プレスブロック７及び８の少なくとも一方に設置されればよく、好ましくは両方に設置される。その場合に上下プレスブロック７及び８には、緩衝材１０を挟んでフレキシブル金属板１１を配置し、ねじ等でフレキシブル金属板１１や緩衝材１０を固定すればよい。
【００３１】
次に平面プレス装置９での加熱加圧処理法について述べる。
加熱温度は、３０〜２００℃であることが好ましく、特に好ましくは１００〜１５０℃である。
加圧条件は、１．０×１０5〜５．０×１０6Ｐａであることが好ましく、特に好ましくは２．０×１０6〜３．１×１０6Ｐａである。
加熱加圧時間は、特には限定しないが、２０〜２００秒程度行うのが好ましく、工業的に生産効率を上げるためには３０〜６０秒行うのが更に好ましい。
【００３２】
加圧装置については、特には限定されず、加圧時にサーボモーターとスクリューネジにて下プレスブロック８を押し上げても良いが、工業的には、油圧シリンダー又はエアーシリンダー２３を使用することが好ましい。
【００３３】
図１では、複数本の油圧シリンーダー又はエアーシリンダー２３で下プレスブロック８を押し上げて加圧しているが、１本の油圧シリンーダー又はエアーシリンダー２３とジョイント３４を接続させて下プレスブロック８を押し上げて加圧しても良く、また、複数本の時にはその中の何本かはジョイント３４がないものでも良い。
【００３４】
また、複数本の時は油圧シリンダー又はエアーシリンダー２３を油圧シリンダーかエアーシリンダーのどちらかに統一する必要はなく、混在させても良い。
図１では、ポンプ３３は一つであるが、使用する油圧シリンダー又はエアーシリンダー２３の本数により適宜複数個のポンプを使用することも可能であり、また、ポンプ３３とシリンダー２３の途中の配管３５には絞り弁、電磁弁、分岐管等を適宜設置しても良い。
【００３５】
尚、油圧シリンダー又はエアーシリンダー２３の動作速度については、特に限定しないが、下プレスブロック８を押し当てる直前では、積層体５を痛めないためにもできうる限りの低速が好ましく、かかるシリンダー２３中には、ショックアブソーバー、ショック防止バネ、ショックレスバルブなどを付設してもよい。
【００３６】
尚、図１とは上下逆の平面プレス装置、即ち、上プレスブロック７が上下に摺動して、下プレスブロック８が固定したものを用いてもよいが、発生する異物塵埃の点から、図１の構成が好ましい。
【００３７】
真空積層装置６で圧締処理した後、積層体５を平面プレス装置９で処理するタイミングについては特には限定しないが、真空積層装置６の圧締処理の後１２時間以内に平面プレス装置９で加熱加圧処理すればよく、特に１５分以内であると真空積層装置６から排出された積層体５が冷えきらずに加熱加圧処理ができ、膜厚均一性が良好となるので好ましい。
【００３８】
かかる操作を工業的に効率良く行うために、平面プレス装置９でも、上下プレスブロック７及び８の間に、搬送用フィルム２４を配置して積層体５を搬送するのが好ましい。
【００３９】
かかる搬送用フィルム２４としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ナイロンフィルム、ポリイミドフィルム、ポリスチレンフィルム、フッ素化オレフィンフィルムが挙げられるが、膜厚みの精度の良い点でポリエチレンテレフタレートフィルムが好適である。
【００４０】
かかる搬送用フィルム２４の膜厚は１０〜１００μｍ、特には２０〜５５μｍであることが好ましい。
尚、搬送用フィルム２４の幅は、積層体５の幅よりも広く、空間部１４の幅よりも狭い必要がある。通常、搬送用フィルム２４の幅は、積層体５の幅より１０〜４０ｍｍ広くすることが好ましい。
【００４１】
搬送用フィルム２４の表面に関しても、特には限定しないが、表面粗度Ｒｚが０．３５〜１．０μｍであることが好ましく、かかる表面粗度Ｒｚが０．３５μｍ未満の時は、真空積層装置６では、上下の搬送用フィルム２３同志が密着してしまい積層時の空気の逃げが悪くマイクロボイドが増加したり、上下の搬送用フィルム２３と上下の可撓性シート３、４とが密着して搬送しにくくなったり、平面プレス装置９では、搬送用フィルム２４と、上プレスブロック７、下プレスブロック８、緩衝材１０のそれぞれの間でエアー溜まりが発生して押しムラが生じる傾向にあり好ましくない。１．０μｍを超える時は、上下の搬送用フィルム２３同志での静電気の発生率が高くなりフィルム同志が反発したり、また、かかる搬送用フィルム２４で連続搬送するときには、上下搬送用フィルム２４同志が、平面プレス装置９に入る時に張力変動で剥がれやすくなりエアー溜まりやシワが発生する問題点があり好ましくない。
【００４２】
かかる表面粗度Ｒｚを得る処理については、特には限定しないが、工業的にはマット処理（マット処理をしたフィルムを以下マットフィルムと略称する）がある。かかるマット処理とは、表面を各種の手法で粗化させたもので、エメリー表面あらし加工や、フィルム表面に微細なフィラーを付着させたり練り込んだりした加工がある。
【００４３】
また、表面には適宜、離型処理加工、静電気防止処理加工、コロナ処理加工などが施されても良く、離型処理加工はしみだした樹脂分の除去に役立ち、静電気防止処理はゴミの付着トラブルやフィルムの反発トラブルの防止に役立ち有用である。
【００４４】
図１では、真空積層装置６、平面プレス装置９で処理する際にいずれも搬送用フィルム２４を用いる場合を示したが、真空積層装置６で処理する際だけに、該フィルムを用いたり、平面プレス装置９で処理する際だけに該フィルムを用いてもよく、また、真空積層装置６と平面プレス装置９にそれぞれ別々に搬送用フィルム２４が設置されていてもよい。
尚、真空積層装置６と平面プレス装置９にそれぞれ別々に搬送用フィルム２４が設置されている時にも、上記マットフィルムが非常に有効である。
【００４５】
かかる搬送用フィルム２４は、通常、ニップロール２９、巻出し装置２５、巻取り装置２８でコントロールされ、かかる巻だし装置２５は通常張力コントロール可能なパウダーブレーキ又はクラッチ付モーターが使用され、ニップロール２９は位置と速度をコントロールできるサーボモーター等が使用され、巻取り装置２８は張力コントロール可能なトルクモーター等が使用される。
【００４６】
かかる搬送用フィルム２４の走行時には、工業的には０．５〜１５ｋｇｆ／ｍ（フィルム幅）で引張しながら走行させる。また、その搬送速度は、前後のコンベア２５の速度と一致させる必要があり通常１〜２５ｍ／分である。
【００４７】
本発明で使用される積層体５の構成は、凹凸を有する基板５ａ／フィルム状樹脂層５ｂ、フィルム状樹脂層５ｂ／凹凸を有する基板５ａ／フィルム状樹脂層５ｂ等任意である。
かかる凹凸を有する基板５ａとしては、特には限定しないが、銅、半田等のパターン等を施したプリント基板が好ましく、ピルドアップ工法等で用いられる多積層基板でも良い。かかる基板の厚みとしては特には限定しないが、０．１〜１０ｍｍ程度のものが良い。縦横の大きさも特には限定しないが、１５０〜８００ｍｍ程度ものが良い。
【００４８】
また、フィルム状樹脂層５ｂは、樹脂組成物と、支持体フィルム（セパレーターフィルム）あるいは銅箔から構成されることが好ましい。
かかる樹脂組成物は、絶縁性、粘着性や接着性、ホットメルト性を持つものや、ガラス転移温度以上で軟化する樹脂組成物が好ましい。
【００４９】
かかる樹脂組成物としては、主にエポキシ樹脂又は、該樹脂からなる熱硬化性樹脂組成物、エチレン性不飽和化合物及び光重合開始剤からなる感光性樹脂組成物等が挙げられる。
また、支持体フィルム（セパレーターフィルム）としては、ポリエチレンテレフタレートフィルムやポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物フィルム等が挙げられる。
【００５０】
銅箔としては特に制限しないがエッチングで溶解可能なものが好ましい。
かかる支持体フィルム（セパレーターフィルム）あるいは銅箔の表面の状態については特には限定しないが、なるべく鏡面状態のものが好ましく、厚みも３〜６０μｍ程度のものが好ましい。
【００５１】
上記該樹脂組成物層の厚みは５〜１５０μｍ程度が好ましい。かかる樹脂組成物の厚みと凹凸を有する基板５ａの凹凸の寸法との関係であるが、銅、半田等のプリントパターンやスルホールの場合に、凹凸を充填したり、スルーホールを埋めるのに足りるだけの樹脂組成物量即ち樹脂組成物の厚みが必要であり、プリントパターンの場合は、通常、基板５ａの凹凸の厚み（銅パターンの場合は銅高）／樹脂組成物厚みの比は０．８以下とするのが好ましい。
【００５２】
かかるフィルム状樹脂層５ｂのビルドアップ工法用途の市販品（保護フィルムが貼付した構成のものものある）としては、日立化成社製「ＢＦ」、「ＢＬ」、「ＡＳ」、「ＭＣＦ」の各シリーズ、シプレー社製「ＭＵＬＴＩＰＯＳＩＴ−９５００」シリーズ、日本ペイント社製「プロピコート」シリーズ、チバスペシャリティ社製「Ｐｌｏｂｅｌｅｃ」シリーズ、デュポン社製「Ｖａｌｕｘ」シリーズ、太陽インク社製「ＰＶＩ」、「ＨＢＩ」の各シリーズ、旭電化社製「ＢＵＲ」シリーズ、味の素社製「ＡＢＦ」シリーズ、東京応化社製「ＳＢ−Ｒ」シリーズ、三井金属社製「ＭＲ」シリーズ、松下電工社製「Ｒ」シリーズ、住友ベークライト社製「ＡＰＬ」シリーズ、ニッカン社製「ＣＡＤ」シリーズ、旭化成社製「ＰＣＣ」シリーズ、三菱ガス化学社製「ＣＢＲ」、「ＣＣＬ」、「ＧＭＰ」の各シリーズ等が挙げられる。
【００５３】
その他の用途の樹脂層５ｂとしては、フォトレジストフィルム用樹脂層、ソルダーレジストマスクフィルム用樹脂層、コンフォーマスクフィルム用樹脂層が挙げられる。
【００５４】
フィルム状樹脂層５ｂの樹脂組成物の表面あるいは裏面の処理方法については限定されないが、好ましくは、基板と積層する方の面がマット処理してあることが、積層時の空気の逃げがよくマイクロボイドが少なく良好である。
該マット処理に関しては特には限定しないが、表面粗さＲｚが３〜４０μ程度のものが好ましい。
【００５５】
最後に必要に応じて本発明の積層方法を行う前後に行われる前処理、後処理やかかる処理を行うための装置について述べる。
【００５６】
本積層方法を行う前に微粘着ロールや、超音波クリーナーなどのクリーナー装置を配置して、それらにより基板表面や搬送用フィルム２４の表面をクリーニングしてもよい。
また、真空積層装置６の前や平面プレス装置９の後には、コンベア２７が適宜配置されることもあり、かかるコンベア２７により、積層体５が、真空積層装置６から搬入排出されるのであるが、かかるコンベア２７に代えて回転ロール群やエンドレスベルトを用いても良く、また、これらの素材は汚れにくく発塵しないものが良い。
コンベア２７のサイズは、長さ０．３〜３ｍ、好ましくは、０．５〜１．５ｍであればよく、また、その搬送速度は通常１〜２５ｍ／分である。
【００５７】
平面プレス装置９から積層体５が排出される時、後工程での押し跡（打痕跡）を防止するために、排出直後に室温程度に冷却固化されることが好ましく、かかる冷却方法については特には限定されず、自然放熱により冷却しても良いが、平面プレス装置９の直後に冷却装置を設けてもよい。
かかる冷却装置は工業的には、冷凍機や空気の断熱膨張を利用した冷気を利用した冷風ファンや冷風エアーナイフ、冷水を通管した冷却ロール等が用いられる。
【００５８】
搬送用フィルム２４を使用する時は、搬送用フィルム２４に挟持されたまま冷却されるのが更に好ましく、平面プレス装置９より搬送された積層体５を、上記冷却し、冷却後に後ろ側のコンベア２７に排出するのが好ましい。
【００５９】
後ろ側のコンベア２７の入り口には、平面プレス装置９での加熱加圧処理後、積層体５と搬送用フィルム２４を剥がすための剥離ロール等の剥離装置部、例えば跳ね上がり防止装置３０を設置すると好適である。
平面プレス装置９の後に、圧締された積層体５を貯蔵するためのストッカーや、積層体５の表面平滑性の向上のために更に加圧装置等を適宜配置してもよい。
尚、静電気対策のために搬送用フィルム２４のフィルムラインや各所に除電バーなどを設置してもよい。
【００６０】
平面プレス装置９での加熱加圧処理後、積層体５は必要に応じて、冷却プレス加工、室温でのエージング処理、１６０〜２１０℃で２０〜２００分の熱硬化や紫外線による硬化、露光、ホットプレス加工、打ち抜き加工、ピーラーによる支持体フィルムの剥離加工、レーザー加工、無電解メッキ加工等を施してもよい。
【００６１】
尚、本発明は、プリント基板以外の他用途、例えば、ＬＣＤ基板の上に、粘着剤付偏光板や粘着剤付位相差板を貼り合わす時、ＰＤＰ基板の上にドライフィルムを貼り合わす時、タブテープに各種基材を貼り合わす時、各種電子基板にダイシングテープ等やホットメルト樹脂の付着したフィルム、例えばＩＣカード等を貼り合わす時にも大変有効な装置や方法である。
【００６２】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
実施例１
図１に示す如き真空積層装置６及び平面プレス装置９を用いた。
上部プレート１と下部プレート２を内蔵されたヒーターにより予め１２０℃に調整しておいた。
まず、ポリエチレンテレフタレートフィルムにエポキシ樹脂からなる熱硬化性樹脂組成物（ガラス転移温度８０℃）を塗布したフィルム状樹脂層５ｂを、凹凸を有する基板５ａの両面に配置し、フィルム状樹脂層５ｂ（厚み２５μｍ）の樹脂面（Ｒｚが３．５μｍ）が該基板５ａの凹凸面（厚み１８μｍ）に接するようにオートシートカットラミネーターにより仮止めして積層体５を用意した。
【００６３】
次に、ポリエチレンテレフタレートフィルムからなる搬送用フィルム２４（厚み３８μｍ、表面粗さＲｚが０．５μｍ）で上記の積層体５を圧締位置に搬送した後、下部プレート２を上げ、上部プレート１と密封契合した後、減圧操作に入った。
【００６４】
開口部１５、開口部１６から空気を真空ポンプで吸引して、空隙部１３及び空間部１４を６０Ｐａまで減圧状態にして５０秒間減圧を継続した後、開口部１５を大気開放として、空隙部１３を大気圧とし、シリコンゴムからなる可撓性シート３及び可撓性シート４で積層体５を軽く圧締した。その１０秒後に、更に開口部１５より圧縮空気を入れて、空隙部１２を６×１０5Ｐａとして、可撓性シート３を大きく膨らませて、積層体５を１２０℃で３００秒間強く圧締した。
【００６５】
次に空隙部１３及び空間部１４を大気圧に戻して、下部プレート２を下方に移動させて、圧締された積層体５を排出した。
【００６６】
引き続いて、６０秒後に、平面プレス装置９に積層体５を搬送用フィルム２４により搬送した。
【００６７】
次に上下プレスブロック７及び８を有する平面プレス装置９により積層体５の加熱加圧処理を行った。
加熱層２１は厚み６０ｍｍのステンレスで、内部にシースヒータを９本有し、ベース層２２としては厚み８０ｍｍの鉄製のものを用いた。
【００６８】
また、上下のそれぞれのプレス板１２（厚み２０ｍｍ）のプレス面の平面度は３μｍでロックウエル硬度が６０度のステンレスを用い、その積層体５側に緩衝材１０とフレキシブル金属板１１を順次設置した。緩衝材１０としてはフッ化ビニリデン系ゴム（フッ化ビニリデン、六フッ化プロピレン、四フッ化エチレンの共重合体）の厚み２．５ｍｍ、ショアーＡ硬度７０度のものを用い、フレキシブル金属板１１としては表面を鏡面研磨加工した厚さ２ｍｍのステンレス板を用いた。
尚、上下いずれのフレキシブル金属板１１もブレス板１０との間に緩衝材１０を挟んでねじで固定した。
【００６９】
次に、加熱層を１４０℃に調整し、そして下プレスブロック８を、ジョイント３４が配置された４本の油圧シリンダー２３を用いて上部に移動し、積層体５を２．５×１０6Ｐａの圧力で６０秒間加熱加圧処理した。その後、下プレスブロック８を下方に移動し、積層体５を搬送フィルム２４で搬送して平面プレス装置９から排出した。
【００７０】
上記の積層操作を（イ）１０００回、（ロ）１００００回実施後の積層体５について追従性、膜厚均一性、鏡面性の評価を以下の要領で行った。
【００７１】
（追従性）
積層体５の表面を観察し、凹凸を有する基板５ａの凹凸に沿ってフィルム状樹脂層５ｂが積層されているかどうか２５０倍顕微鏡で確認した。
○・・・凹凸に沿ってフィルム状樹脂層５ｂが充填しておりマイクロボイドもなく追従性している。
×・・・凹凸に沿ってフィルム状樹脂層５ｂが充填していない、又は、マイクロボイドがある。
【００７２】
（膜厚均一性）
積層体５をクロスセクション法で、垂直切断面を電子顕微鏡にて観察して以下の基板の凸面上に積層される樹脂層の厚みを測定して、それぞれの厚みの差を以下のように評価した。
○・・・０．５μｍ未満
△・・・０．５〜１．０μｍ
×・・・１．０μｍを越える
【００７３】
（鏡面性）
積層体５のフィルム状樹脂層５ｂ面を斜め４５度の角度で基板に当たった蛍光灯の反射光を目視で観察して以下のように評価した。
○・・・鏡面状態である
△・・・鏡面に近い状態である
×・・・鏡面にはならず
【００７４】
比較例１
実施例１において、緩衝材１０の積層体５側上にステンレス板を用いない以外は同様に処理して同様に評価した。
【００７５】
実施例１、比較例１の評価結果を表１に示した。
【発明の効果】
本発明は可撓性シート３を付設した上部プレート１及び可撓性シート４を付設した下部プレート２が設置された真空チャンバーを有する真空積層装置６を使用して、該チャンバー内の上下プレート間で、凹凸を有する基板５ａとフィルム状樹脂層５ｂからなる積層体５を圧締した後、該積層体５を上下にプレスブロック７及び８を有する平面プレス装置９により加熱加圧処理して積層する方法において、上下プレスブロック７及び８として、その少なくとも一方の表面に緩衝材１０及びフレキシブル金属板１１を該金属板が上記積層体５側に配置されるように順次設置した上下プレスブロック７及び８を使用するので、積層体５の積層を長期間繰り返して実施してもフィルム状樹脂層５ｂの追従性がよく、かつ積層後の樹脂層の膜厚均一性及び表面の鏡面性にも優れる効果が得られ、ビルドアップ工法に有用な積層体５を得るのに有用な積層方法である。
【図面の簡単な説明】
【図１】 本発明の積層方法に用いられる積層装置の一例である。
【図２】 上記積層装置の平面プレス装置９の拡大図である。
【符号の説明】
１・・・上部プレート
２・・・下部プレート
３・・・上部プレートに付設した可撓性シート
４・・・下部プレートに付設した可撓性シート
５・・・積層体
５ａ・・・凹凸を有する基板
５ｂ・・・フィルム状樹脂層
６・・・真空積層装置
７・・・上プレスブロック
８・・・下プレスブロック
９・・・平面プレス装置
１０・・・緩衝材
１１・・・フレキシブル金属板
１２・・・プレス板
１３・・・上部プレートと可撓性シート間の空隙部
１４・・・可撓性シート３、４の間に形成される空間部
１５・・・上部プレートを通過する開口部
１６・・・下部プレートを通過する開口部
１７・・・シール
１８・・・止め金具
１９・・・真空積層装置用ジョイント
２０・・・油圧シリンダー又はエアーシリンダー
２１・・・加熱層
２２・・・ベース層
２３・・・油圧シリンダー又はエアーシリンダー
２４・・・搬送用フィルム
２５・・・巻き出し装置
２６・・・ガイドロール
２７・・・コンベア
２８・・・巻き取り装置
２９・・・ニップロール
３０・・・跳ね上がり防止装置
３１・・・支柱
３２・・・ガイド
３３・・・ポンプ
３４・・・ジョイント
３５・・・配管
Claims (9)
- 可撓性シート３を付設した上部プレート１及び可撓性シート４を付設した下部プレート２が設置された真空チャンバーを有する真空積層装置６を使用して、該チャンバー内の上下プレート間で、凹凸を有する基板５ａとフィルム状樹脂層５ｂからなる積層体５を圧締した後、該積層体５を上下プレスブロック７及び８を有する平面プレス装置９により加熱加圧処理して積層する方法において、上下プレスブロック７及び８として、その少なくとも一方の表面に緩衝材１０及びフレキシブル金属板１１を該金属板が上記積層体５側に配置されるように順次設置した上下プレスブロック７及び８を使用することを特徴とする積層方法。
- プレス板１２のプレス面の平面度が１０μｍ以下で、ロックウエル硬度が４０度以上であることを特徴とする請求項１記載の積層方法。
- プレスブロック内部の温度コントロールに当たって、電熱ヒーターを用いることを特徴とする請求項１あるいは２記載の積層方法。
- 電熱ヒーターがシース（鞘）状ヒーター又は面シート状ヒーターであることを特徴とする請求項３記載の積層方法。
- フレキシブル金属板１１が表面を鏡面研磨したステンレス板であることを特徴とする請求項１〜４いずれか記載の積層方法。
- フレキシブル金属板１１の厚みが０．１〜１０ｍｍであることを特徴とする請求項１〜５いずれか記載の積層方法。
- 緩衝材１０のショアーＡ硬度が６０度以上であることを特徴とする請求項１〜６いずれか記載の積層方法。
- 真空積層装置６の可撓性シート３と４の間及び平面プレス装置９の上プレスブロック７と下プレスブロック８の間に、積層体５を搬送用フィルム２４で挟んで移送することを特徴とする請求項１〜７いずれか記載の積層方法。
- 搬送用フィルム２４の表面粗さＲｚが０．３５〜１．０μｍで、厚みが１０〜１００μｍであることを特徴とする請求項８記載の積層方法。
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