JP3641849B2 - 冷凍機 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
この発明は、センサで検出した熱出力が目標値になるように、圧縮機の能力や膨張弁の開度を制御する冷凍機および冷凍方法に関し、より詳しくは、非共沸混合冷媒の二相域での非等温性に起因して、センサで検知した熱出力と実際の熱出力との誤差が生じたときに、この誤差を検出して、この誤差の分だけ上記熱出力目標値を修正することができる冷凍機に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の冷凍機の一例としては、図8に示すように、室内ユニット81と室外ユニット82と熱出力制御部83とを備え、単一の冷媒を使用する空気調和機がある。この空気調和機の室内ユニット81は、室内熱交換器85を備えている。この室内熱交換器85は、熱交換部86と分流器87とヘッダ88とを有している。上記分流器87と熱交換部86とをつなぐ冷媒管90には第1の温度センサ91が取り付けられている。また、上記ヘッダ88に接続されている冷媒管92には第2の温度センサ93が取り付けられている。
【0003】
一方、上記室外ユニット82は、上記ヘッダ88に接続された四路切替弁94と、この四路切替弁94に接続されたアキュムレータ95と圧縮機96と室外熱交換器97とを備えている。そして、この室外熱交換器97の分流器98には受液器100が接続されており、この受液器100には電動膨張弁101が接続され、この電動膨張弁101は、上記室内熱交換器85の分流器87に接続されている。また、上記圧縮機96の吐出側の管路には吐出圧力センサ103が取付られており、上記圧縮機96の吸入側の管路には吸入圧力センサ106が取り付けられている。上記吐出圧力センサ103は、圧縮機96が吐出する冷媒の圧力を検出する。また、上記吸入圧力センサ106は、圧縮機96が吸入する冷媒の圧力を検出する。
【0004】
次に、この空気調和機において、上記熱出力制御部83が行う熱出力制御内容を、(1) 圧縮機容量制御(冷房時)と、(2) 圧縮機容量制御(暖房時)と、(3) 電動膨張弁制御(冷房時)と、(4) 電動膨張弁制御(暖房時)との4つの場合に分けて順に説明する。
【0005】
まず、(1)圧縮機容量制御(冷房時)では、上記制御部83は、上記吸入圧力センサ106が検出した圧縮機96の吸入圧力Psを表す信号を得て、この吸入圧力Psから蒸発温度Teを算出する。この蒸発温度Teの算出は、一次回帰式(Te=(係数A)×(Ps)+(係数B))によって算出する。冷媒として単一冷媒(例えば、HCFC22)を用いているから、この回帰式の係数Aと係数Bは、図7(C)に示した圧力Psの各レンジに対応する値を用いる。また、冷媒として単一冷媒を用いているから、P‐H線図である図2(A)に示すように、上記蒸発温度Teは、室内熱交換器の蒸発温度Tevapに等しい。そこで、上記制御部83は、上記算出した蒸発温度Teが、予め設定された目標温度Teo1になるように、圧縮機出力を制御する。これにより、室内熱交換器85の蒸発温度Tevapを目標温度Teo1にして、冷房能力の所定の目標値にすることができる。
【0006】
次に、(2)圧縮機容量制御(暖房時)では、上記制御部83は、上記吐出圧力センサ103が検出した圧縮機96の吐出圧力Pdを表す信号を得て、この吐出圧力Pdから凝縮温度Tcを算出する。この蒸発温度Tcの算出は、一次回帰式(Tc=(係数A)×(Pd)+(係数B))によって算出する。冷媒として単一冷媒を用いているから、この回帰式の係数Aと係数Bは、図7(C)に示した圧力Pdの各レンジに対応する値を用いる。また、冷媒として単一冷媒を用いているから、図2(B)に示すように、上記凝縮温度Tcは、室内熱交換器85の凝縮温度Tcondに等しい。そこで、上記制御部83は、上記算出した凝縮温度Tcが、予め設定された目標温度Tco1になるように、圧縮機出力を制御する。これにより、室内熱交換器85の凝縮温度Tcondを目標温度Tco1にして、暖房能力を所定の目標値にすることができる。
【0007】
次に、(3)電動膨張弁制御(冷房時)では、上記制御部83は、図4(A)に示すように、第2の温度センサ93が検出した室内熱交換器85出口(ヘッダ88側)の温度TH3と、第1の温度センサ91が検出した室内熱交換器85入口(分流器87側)の温度TH2との差(TH3−TH2)を算出する。単一冷媒では、TH2=Te(蒸発温度)である。したがって、上記制御部83は、この差(TH3−TH2)を過熱度として検出し、この過熱度(TH3−TH2)が予め設定された所定値になるように、電動膨張弁101の開度を調節する。これにより、室内熱交換器85の過熱度を目標過熱度Doh1にして、冷房能力を所定の目標値にすることができる。
【0008】
次に、(4)電動膨張弁制御(暖房時)では、上記制御部83は、図4(B)に示すように、吐出圧力センサ103から吐出圧力Pdを表す信号を得て、この吐出圧力Pdでの冷媒の露点温度を凝縮温度Tc(吐出圧力相当飽和温度)として算出する。この凝縮温度Tcの算出は、(2)での説明と同じく、図7(C)に示した係数値を用いた一次回帰式で算出する。また、上記制御部83は、上記第1の温度センサ91から室内熱交換器85の出口温度TH2(分流器87側温度)を表す信号を得る。そして、上記制御部83は、上記凝縮温度Tcと上記出口温度TH2との差(Tc−TH2)を算出し、この差(Tc−TH2)を過冷却度とする。そして、上記制御部83は、この過冷却度(Tc−TH2)が予め設定された所定値になるように、電動膨張弁101の開度を調節する。これにより、室内熱交換器85の過冷却度を目標過冷却度Doc1にして、暖房能力を所定の目標値にすることができる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、最近、フロンガスのオゾン層の破壊が重大な環境問題になっている。そのため、オゾン層を破壊しない代替冷媒の使用が望まれている。この代替冷媒の1つとして、非共沸混合冷媒(たとえば、HFC系)がある。
【0010】
ところが、上記従来の冷凍機では、単一の冷媒に替えて非共沸混合冷媒を使用した場合に、非共沸混合冷媒の二相域での非等温性に起因して、以下に示すような熱出力の過不足が発生する問題がある。
【0011】
この問題を、上記(1),(2),(3),(4)の場合に分けて、図3(A),(B),図5(A),(B)を参照して、より詳しく説明する。
【0012】
まず、(1)圧縮機容量制御(冷房時)について説明する。図3(A)に示すように、非共沸混合冷媒では、室内熱交換器での冷媒の温度が、乾き度が大きくなるにつれて高くなる。したがって、吸入圧力Psから算出した沸点温度Teが室内熱交換器における蒸発温度Tevapよりも高くなる(Te>Tevap)。したがって、従来例のように、この算出した沸点温度Teで蒸発温度Tevapを代表させると、蒸発温度Tevapを実際の値よりも高く見積もることとなる。従って、冷房能力を実際の値よりも小さく見積もることになる。したがって、冷房能力過剰が起こる問題がある。
【0013】
次に、(2)圧縮機容量制御(暖房時)について説明する。図3(B)に示すように、非共沸混合冷媒では、室内熱交換器での冷媒の温度が、乾き度が小さくなるにつれて低くなる。従って、吐出圧力Pdから算出した露点温度Tcが、室内熱交換器における凝縮温度Tcondよりも高くなる(Tc>Tcond)。したがって、従来例のように、この算出した露点温度Tcで凝縮温度Tcondを代表させると、凝縮温度Tcondを実際の値よりも高く見積もることになる。従って、暖房能力を実際の値よりも大きく見積もることになる。したがって、暖房能力不足が起こる問題がある。
【0014】
次に、(3)電動膨張弁制御(冷房時)について説明する。図5(A)に示すように、非共沸混合冷媒では、室内熱交換器での冷媒の温度は、乾き度が大きくなるにつれて高くなる。従って、第1の温度センサが検出した室内熱交換器入口(分流器側)の温度TH2が、沸点温度Teよりも低くなる(TH2<Te)。従って、従来例のように、室内熱交換器入口の温度TH2で沸点温度Teを代表させると、沸点温度Teを実際の値よりも小さく見積もることになる。したがって、制御部は、実際の過熱度(TH3−Te)よりも大きな過熱度(TH3−TH2)を検出することになる。従って、制御部83は、実際の過熱度を、目標過熱度Doh1よりも小さくするから、冷房能力が不足する問題がある。
【0015】
次に、(4)電動膨張弁制御(暖房時)について説明する。図5(B)に示すように、非共沸混合冷媒では、室内熱交換器での冷媒の温度は、乾き度が小さくなるにつれて低くなる。したがって、吐出圧力Pdから算出した露点温度Tc(乾き度≒1)が、沸点温度T2(乾き度≒0)よりも高くなる(Tc>T2)。従って、従来例のように、露点温度Tcで沸点温度T2を代表させると、沸点温度T2を実際の値よりも大きく見積もることになる。従って、制御部83は、実際の過冷却度(T2−TH20)よりも大きな過冷却度(Tc−TH20)を検出することになる。したがって、制御部83は、実際の過冷却度を、目標過冷却度Doc1よりも小さくするから、暖房能力不足が発生する問題がある。
【0016】
そこで、この発明の目的は、単一の冷媒に替えて非共沸混合冷媒を使用した場合でも、センサで検知した熱出力と実際の熱出力との誤差を検出して、熱出力が目標値からずれることを防止できる冷凍機を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、圧縮機16と、凝縮器17と、膨張手段21と、蒸発器5と、上記圧縮機16の吸入圧力を検出する吸入圧力センサ26と、この吸入圧力センサ26が検出した吸入圧力から単一冷媒使用時の蒸発温度を算出して、この算出した蒸発温度が予め設定された目標温度になるように、上記圧縮機16の能力を制御する圧縮機制御部3とを備えた単一冷媒使用可能な冷凍機において、
上記圧縮機制御部3は、
非共沸混合冷媒の物性によって決まっている露点温度と圧力との関係を用いて、上記吸入圧力センサ26が検出した吸入圧力における上記非共沸混合冷媒の沸点温度Teを算出し、
上記蒸発器5入口での測定された蒸発器入口温度T1と、上記沸点温度Teとから上記非共沸混合冷媒の蒸発器中点温度Tevapを算出し、
上記蒸発器中点温度Tevapと上記沸点温度Teとの差(蒸発器中点温度Tevap−沸点温度Te)=ΔTeを算出し、
この差ΔTeを、単一の冷媒を使用したときの目標温度Teo1に加算して、この加算した値(Teo1+ΔTe)を、上記非共沸混合冷媒を使用したときの目標温度Teo2としたことを特徴としている。
【0018】
また、請求項2の発明は、圧縮機16と、凝縮器5と、膨張手段21と、蒸発器17と、上記圧縮機16の吐出圧力を検出する吐出圧力センサ23と、この吐出圧力センサ23が検出した吐出圧力から単一冷媒使用時の凝縮温度を算出して、この算出した凝縮温度が予め設定された目標温度になるように、上記圧縮機16の能力を制御する圧縮機制御部3とを備えた単一冷媒使用可能な冷凍機において、
上記圧縮機制御部3は、
非共沸混合冷媒の物性によって決まっている露点温度および沸点温度と圧力との関係を用いて、上記吐出圧力センサ23が検出した吐出圧力における露点温度Tcと、上記吐出圧力における沸点温度T2とから凝縮器中点温度Tcondを算出し、
この凝縮器中点温度Tcondと露点温度Tcとの差(凝縮器中点温度Tcond−露点温度Tc)=ΔTcを算出し、
この差ΔTcを、単一の冷媒を使用したときの目標温度Tco1に加算して、この加算した値(Tco1+ΔTc)を、上記非共沸混合冷媒を使用したときの目標温度Tco2としたことを特徴としている。
【0019】
【作用】
請求項1の発明の冷凍機の圧縮機制御部3は、吸入圧力センサ26が検出した圧縮機16の吸入圧力から沸点温度を算出して、この算出した沸点温度が予め設定された目標温度になるように、圧縮機の能力を制御する。
【0020】
ここで、上記圧縮機制御部3は、非共沸混合冷媒の物性によって決まっている露点温度と圧力との関係を用いて、吸入圧力センサ26が検出した吸入圧力における沸点温度Teを算出する。次に、圧縮機制御部3は、蒸発器5入口での測定された蒸発器入口温度T1と、沸点温度Teとから蒸発器中点温度Tevapを算出する。次に、圧縮機制御部3は、上記蒸発器中点温度Tevapと上記沸点温度Teとの差(蒸発器中点温度Tevap−沸点温度Te)=ΔTeを算出する。次に、圧縮機制御部3は、この差ΔTeを、冷媒として単一の冷媒を使用したときの目標温度Teo1に加算する。次に、圧縮機制御部3は、この加算した値(Teo1+ΔTe)を、冷媒として非共沸混合冷媒を使用したときの目標温度Teo2とする。
【0021】
図2(A)と図3(A)を比較参照すれば分かるように、非共沸混合冷媒では、蒸発器中点温度Tevapを代表させている沸点温度Teが、中点温度Tevapよりも上記ΔTeだけ高くなるから、この発明の冷凍機のように、目標温度Teo2を目標温度Teo1に比べて差ΔTeだけ高くすることによって、冷却能力の過多を防止することができる。つまり、非共沸混合冷媒を使用した場合に単一冷媒用目標温度Teo2を使用することによって、単一冷媒を使用した場合に単一冷媒用目標温度Teo1を使用したときと同じ冷房能力を得ることができる。
【0022】
また、請求項2の発明の冷凍機の圧縮機制御部3は、吐出圧力センサ23が検出した圧縮機16の吐出圧力から露点温度を算出して、この算出した露点温度が予め設定された目標温度になるように、圧縮機16の能力を制御する。
【0023】
ここで、上記圧縮機制御部3は、非共沸混合冷媒の物性によって決まっている露点温度および沸点温度と圧力との関係を用いて、吐出圧力センサ23が検出した吐出圧力における露点温度Tcと、吐出圧力における沸点温度T2とから凝縮器中点温度Tcondを算出する。次に、制御部3は、上記蒸発器中点温度Tcondと露点温度Tcとの差(凝縮器中点温度Tcond−露点温度Tc)=ΔTcを算出する。次に、制御部3は、この差ΔTcを、冷媒として単一の冷媒を使用したときの目標温度Tco1に加算して、この加算した値(Tco1+ΔTc)を、冷媒として非共沸混合冷媒を使用したときの目標温度Tco2とする。
【0024】
図2(B)と図3(B)とを比較参照すれば分かるように、非共沸混合冷媒では、凝縮器中点温度Tcondを代表させている露点温度Tcが、中点温度TcondよりもΔTcだけ高くなるから、目標温度Tco2を目標温度Tco1に比べて差ΔTcだけ高くすることによって、暖房能力の不足を防止することができる。つまり、非共沸混合冷媒を使用した場合に、上記非共沸用目標温度Tco2を使用することによって、単一冷媒を使用した場合に単一冷媒用目標温度Tco1を使用したときと同じ暖房能力を得ることができる。
【0025】
また、一参考例の冷凍機の膨張弁制御部3は、(出口温度TH3−入口温度TH2)を冷房時の過熱度として算出し、この過熱度が目標過熱度になるように、膨張弁21の開度を調節する。
【0026】
ここで、上記膨張弁制御部3は、非共沸混合冷媒の物性によって決まっている露点温度,沸点温度と圧力との関係を用いて、吸入圧力センサ26が検出した吸入圧力における沸点温度Teを算出する。次に、膨張弁制御部3は、蒸発器5入口で想定される乾き度に対応する蒸発器5入口温度T1と上記蒸発温度Teとの差である(Te−T1)=ΔDhを算出する。次に、膨張弁制御部3は、このΔDhを、冷媒として単一の冷媒を使用したときの目標過熱度Doh1に加算して、この加算した値(Doh1+ΔDh)を、冷媒として非共沸混合冷媒を使用したときの目標過熱度とする。
【0027】
図4(A)と図5(A)とを比較参照すれば分かるように、単一冷媒を使用しているときには、蒸発温度Teが蒸発器(室内熱交換器5)の入口温度TH2に等しいが、非共沸混合冷媒を使用している場合には、蒸発温度Teが入口温度T1(=TH2)に比べてΔDhだけ高い。したがって、非共沸混合冷媒を使用したときに、蒸発温度Teを入口温度TH2で代表させると、実際の過熱度(TH3−Te)に比べて検出過熱度(TH3−TH2)がΔDhだけ大きくなる。従って、過熱度を大きく見積もった分ΔDhだけ、単一冷媒での目標過熱度Doh1よりも大きな目標過熱度Doh2を設定する。このように、上記制御部3は、非共沸混合冷媒を使用した場合に非共沸用目標過熱度Doh2を使用することによって、単一冷媒を使用した場合に単一冷媒用目標過熱度Doh1を使用したときと同じ冷房能力を得ることができる。したがって、冷房能力が不足することを防止して適正な冷房能力を発揮することができる。
【0028】
また、一参考例の冷凍機の膨張弁制御部3は、上記吐出圧力での冷媒の露点温度を露点温度Tcとして算出し、露点温度Tcと出口温度TH20との差(露点温度Tc−出口温度TH20)を暖房時の過冷却度として算出し、この過冷却度が目標過冷却度になるように、膨張弁の開度を調節する。
【0029】
ここで、この膨張弁制御部3は、非共沸混合冷媒の物性によって決まっている沸点温度と圧力との関係を用いて、吐出圧力センサ23が検出した吐出圧力における沸点温度T2を得て、露点温度Tcと上記沸点温度T2との差(Tc−T2)=ΔDcを算出する。次に、膨張弁制御部3は、この差ΔDcを、冷媒として単一の冷媒を使用したときの目標過冷却度Doc1に加算する。次に、膨張弁制御部3は、この加算した値(Doc1+ΔDc)を、冷媒として非共沸混合冷媒を使用したときの目標過冷却度とする。
【0030】
図4(B)と図5(B)とを比較参照すれば分かるように、単一冷媒を使用しているときには、吐出圧力Pdから算出した露点温度Tcが凝縮器(室内熱交換器5)の沸点温度T2に等しいが、非共沸混合冷媒を使用しているときには、吐出圧力Pdから算出した露点温度Tcが沸点温度T2よりもΔDcだけ高くなる。従って、非共沸混合冷媒を使用したときに、沸点温度T2を露点温度Tcで代表させると、実際の過冷却度(T2−TH20)に比べて検出過冷却度(Tc−TH20)がΔDcだけ大きくなる。したがって、過冷却度を大きく見積もった分ΔDcだけ、単一冷媒での目標過冷却度Doc1よりも大きな目標過冷却度Doc2を設定する。このように、制御部3は、非共沸混合冷媒を使用したときに非共沸用目標過冷却度Doc2を使用することによって、単一冷媒を使用したときに単一冷媒用目標過冷却度Doc1を使用したときと同じ暖房能力を得ることができる。したがって、暖房能力不足を防止して適正な暖房能力を発揮することができる。
【0031】
また、一参考例の冷凍方法は、上記冷凍機において、単一の冷媒を非共沸混合冷媒に置き換えて使用する。
【0032】
従って、この冷凍方法によれば、単一冷媒に替えて非共沸混合冷媒を使用したときに、単一冷媒を使用したときの熱出力制御部3の制御定数としてのTeo1,Tco1,Doh1,Doc1に替えて、Teo1+ΔTe,Tco1+ΔTc,Doh1+ΔDh,Doc1+ΔDcを採用することだけで、温度センサの取り替えや追加を行うことなく、単一冷媒使用時と同じ冷暖房運転を行うことができる。
【0033】
つまり、この熱交換方法によれば、単一冷媒に替えて非共沸混合冷媒を使用したときに、熱出力制御部3の制御定数を変更する以外は何ら変更を加えることなく、単一冷媒使用時と同じ冷暖房運転を行うことができる。
【0034】
【実施例】
以下、この発明を図示の実施例により詳細に説明する。
【0035】
図1に、この発明の冷凍機の実施例としての空気調和機を示す。この空気調和機は、室内ユニット1と室外ユニット2と熱出力制御部3とを備えている。室内ユニット1は、室内熱交換器5を備えている。この室内熱交換器5は、熱交換部6と分流器7とヘッダ8とを有している。そして、分流器7と熱交換部6とをつなぐ冷媒管10には第1の温度センサ11が取り付けられている。また、上記ヘッダ8に接続されている冷媒管12には第2の温度センサ13が取り付けられている。
【0036】
一方、上記室外ユニット2は、上記ヘッダ8に接続された四路切替弁14と、この四路切替弁14に接続されたアキュムレータ15と圧縮機16と室外熱交換器17とを備えている。そして、この室外熱交換器17の分流器18には受液器20が接続されており、この受液器20には電動膨張弁21が接続されている。この電動膨張弁21は、室内熱交換器5の分流器7に接続されている。そして、上記圧縮機16と四路切替弁14とをつなぐ管22には吐出圧力センサ23が取付られており、上記圧縮機16とアキュムレータ15とをつなぐ管25には吸入圧力センサ26が取り付けられている。上記吐出圧力センサ23は、圧縮機16が吐出する冷媒の圧力Pdを検出する。また、上記吸入圧力センサ26は、圧縮機16が吸入する冷媒の圧力Psを検出する。
【0037】
そして、上記熱出力制御部3は、上記第1の温度センサ11と上記第2の温度センサ13と上記吐出圧力センサ23と吸入圧力センサ26とに電気的に接続されている。この熱出力制御部3は、上記第1の温度センサ11から室内熱交換器5の分流器7側の冷媒温度TH2を表す信号を受け、第2の温度センサ13から室内熱交換器5のヘッダ8側の冷媒温度TH3を表す信号を受ける。さらに、上記熱出力制御部3は、上記吐出圧力センサ23から吐出圧力Pcを表す信号を受け、上記吸入圧力センサ26から吸入圧力Psを表す信号を受ける。そして、上記熱出力制御部3は、上記吐出圧力センサ23と吸入圧力センサ26からの信号を受けて、圧縮機16の能力を制御する圧縮機制御モードと、上記第1の温度センサ11と第2の温度センサ13からの信号を受けて電動膨張弁21の開度を制御する膨張弁制御モードとを有している。なお、圧縮機16の能力の制御は、例えば、圧縮機16の駆動周波数を増減させることによって行えばよい。
【0038】
この空気調和機に、単一の冷媒(HCFC22)が充填されている場合の熱出力制御部3の制御動作は、従来の技術で説明した動作と同じであるので、説明を省略する。
【0039】
次に、この空気調和機に、HFC系非共沸混合冷媒としてのHFC32/125/134a(23/25/52wt%)が充填されている場合の熱出力制御部3の動作を、(1)圧縮機制御モード(冷房時)と(2)圧縮機制御モード(暖房時)と(3)膨張弁制御モード(冷房時)と(4)膨張弁制御モード(暖房時)とに分けて順に説明する。
【0040】
まず、(1)圧縮機制御モード(冷房時)では、四路切替弁14は図1に実線で示されているように連通している。そして、上記熱出力制御部3は、上記吸入圧力センサ26からの吸入圧力Psを表す信号を受けて、この吸入圧力Psを表す信号から上記吸入圧力Psにおける沸点温度を算出する。この沸点温度は、図3(A)に示した沸点温度Teである。また、吸入圧力Psから沸点温度を算出するには、上記非共沸冷媒の物性によって決まっている沸点温度と圧力との関係を用いている。より詳細には、図7(B)に示すように、9個の圧力範囲を設定し、各圧力範囲ごとに、一次回帰式〔(露点温度)=(係数A)×(圧力)+(係数B)〕をたてて、図7(D)に示すように各圧力範囲ごとに(係数A)と(係数B)を別個に設定している。
【0041】
次に、制御部3は、蒸発器としての室内熱交換器5の入口の冷媒管10で想定される乾き度に対応する蒸発器入口温度T1と、上記沸点温度Teとから蒸発器中点温度Tevapを比例配分により算出する。次に、制御部3は、沸点温度Teから蒸発器中点温度Tevapを減算して、図6に示す補正分ΔTe=(Te−Tevap) を算出する。そしてさらに、この補正分ΔTeは、ヘッダ8側温度TH3で代表した吸入温度出現範囲で加重平均を取った値とする。
【0042】
次に、制御部3は、この算出した補正分ΔTeを、冷媒として単一の冷媒を使用したときの目標温度Teo1に加算して、この加算した値(Teo1+ΔTe)を、上記冷媒として非共沸混合冷媒を使用したときの目標温度Teo2とする。
【0043】
そして、この制御部3は、上記吸入圧力センサ26が検出した吸入圧力Psから上述したようにして算出した沸点温度Teが上記目標温度Teo2になるように圧縮機16の能力を制御する。
【0044】
非共沸混合冷媒では、蒸発器中点温度Tevapを代表させている沸点温度Teが、中点温度TevapよりもΔTeだけ高くなるから、目標温度Teo2を目標温度Teo1に比べてΔTeだけ高くすることによって、冷却能力の過多を防止することができる。言い換えれば、非共沸混合冷媒を使用した場合に目標温度として非共沸用目標温度Teo2を使用することによって、単一冷媒を使用した場合に単一冷媒用目標温度Teo1を使用したときと同じ冷房能力を得ることができる。
【0045】
より詳しくは、図2(A)と図6とを対比すれば分かるように、単一冷媒を使用したときには沸点温度Teが蒸発器中点温度Tevapと等しいのに対して、非共沸混合冷媒を使用したときには沸点温度Teは蒸発器中点温度TevapよりもΔTeだけ高い。したがって、非共沸混合冷媒を使用したときに、単一冷媒を使用したときと同じ目標温度Teo1を採用したならば、単一冷媒を使用したときに比べて蒸発器中点温度がΔTeだけ低い温度になるように制御部3が圧縮機16の能力を制御することになってしまう。このことは、冷房能力の過多を招くから、非共沸混合冷媒を使用したときには、上記補正された目標温度Teo2=Teo1+ΔTeを採用して、冷房能力の過多を防いで適正な冷房能力を発揮できるようにしている。
【0046】
次に、(2)圧縮機制御モード(暖房時)では、四路切替弁14は図1に破線で示されているように連通している。そして、上記熱出力制御部3は、吐出圧力Pdの出現範囲であらかじめ算出しておいた補正値ΔTcを加重平均した値を格納している。
この補正値ΔTcを算出するには、まず、吐出圧力センサ23からの吐出圧力Pdを表す信号から上記吐出圧力Pdにおける露点温度つまり図3(B)に示した露点温度Tcと、上記吐出圧力Pdにおける沸点温度つまり図3(B)に示した沸点温度T2とを算出する。この露点温度Tcと沸点温度T2は、上記非共沸混合冷媒の物性によって決まっている露点温度,沸点温度と圧力との関係を用いて算出している。より詳細には、図7(B)に示すように、圧力と露点温度との関係を9つの一次回帰式で表して、圧力から露点温度を算出している。また、圧力と沸点温度との関係も9つの一次回帰式で表して、圧力から沸点温度を算出している。上記圧力と露点温度との関係を表す9つの一次回帰式の係数は図7(D)に示す通りである。
【0047】
次に、上記露点温度Tcと沸点温度T2とから凝縮器(室内熱交換器5)中点温度Tcondを比例配分により算出する。次に、露点温度Tcから凝縮器中点温度Tcondを減算して、図6に示す補正分ΔTc=(Tc−Tcond)を算出する。そして更に、この補正分ΔTcは、吐出圧力出現範囲で加重平均を取った値とする。
【0048】
そして、上記制御部3は、このあらかじめ算出されているΔTcを、上記冷媒として単一の冷媒を使用したときの目標温度Tco1に加算した値(Tco1+ΔTc)を、上記冷媒として非共沸混合冷媒を使用したときの目標温度Tco2とする。そして、この制御部3は、上記吐出圧力Pdから算出した露点温度Tcが上記目標温度Tco2になるように圧縮機16の能力を制御する。
【0049】
非共沸混合冷媒では、凝縮器中点温度Tcondを代表させている露点温度Tcが、中点温度TcondよりもΔTcだけ高くなるから、目標温度Tco2を目標温度Tco1に比べてΔTcだけ高くすることによって、暖房能力の不足を防止することができる。言い換えれば、非共沸混合冷媒を使用した場合に目標温度として非共沸用の目標温度Tco2を使用することによって、単一冷媒を使用した場合に単一冷媒用の目標温度Tco1を使用したときと同じ暖房能力を得ることができる。
【0050】
より詳しくは、図2(B)と図3(B)とを対比すれば分かるように、単一冷媒を使用したときには露点温度Tcが凝縮器中点温度Tcondと等しいのに対して、非共沸混合冷媒を使用したときには露点温度Tcは凝縮器中点温度TcondよりもΔTcだけ高い。したがって、非共沸混合冷媒を使用したときに、単一冷媒を使用したときと同じ目標温度Tco1を採用したならば、単一冷媒を使用したときに比べて凝縮器(室内熱交換器)中点温度がΔTcだけ低い温度になるように制御部3が圧縮機16の能力を制御することになってしまう。このことは、暖房能力の不足を招くから、非共沸混合冷媒を使用したときには、上記補正された目標温度Tco2=Tco1+ΔTcを採用して、暖房能力の不足を防いで適正な暖房能力を発揮できるようにしているのである。
【0051】
次に、(3)膨張弁制御モード(冷房時)では、四路切替弁14は図1に実線で示されているように連通している。そして、上記第1の温度センサ11が室内熱交換器5の入口の冷媒管10の温度TH2を検出して、この入口温度TH2を表す信号を熱出力制御部3に伝える。また、第2の温度センサ13は室内熱交換器5の出口の冷媒管12の温度TH3を検出して、この出口温度TH3を表す信号を熱出力制御部3に伝える。そして、熱出力制御部3は、出口温度TH3から入口温度TH2を減算して、冷房時の過熱度(TH3−TH2)を算出する。そして、上記制御部3は、この過熱度(TH3−TH2)が目標過熱度Doh2になるように、電動膨張弁21の開度を調節する。
【0052】
ここで、上記制御部3は、この非共沸混合冷媒を使用した場合の非共沸用目標過熱度Doh2を次に説明するように設定して、単一冷媒を使用した場合に単一冷媒用目標過熱度Doh1を使用したときと同じ冷房能力を得ることができるようにしている。
【0053】
まず、上記制御部3は、吸入圧力センサ26が検出した吸入圧力Psを表す信号を受けて、この吸入圧力Psにおける沸点温度Teを算出する。この吸入圧力Psから沸点温度Teを求めるには、上記(1),(2)で説明したのと同じく非共沸混合冷媒の物性によって決まっている沸点温度と圧力との関係を用いている(図7参照)。
【0054】
次に、上記制御部3は、蒸発器としての室内熱交換器5の入口の冷媒管10で蒸発器入口温度T1を測定し、上記沸点温度Teから上記入口温度T1(=TH2)を減算して、図5(A)に示す補正分ΔDh=Te−T1を算出する。そしてさらに、制御部3は、この補正分ΔDhを、吸入圧力Ps出現範囲で加重平均をとった値にする。
【0055】
そして、この制御部3は、この補正分ΔDhを、単一冷媒を使用したときの目標過熱度Doh1に加算した値(Doh1+ΔDh)を、非共沸混合冷媒を使用したときの目標過熱度Doh2にする。
【0056】
図4(A)と図5(A)とを比較参照すれば分かるように、単一冷媒を使用しているときには、沸点温度Teが蒸発器(室内熱交換器5)の入口温度TH2に等しいが、非共沸混合冷媒を使用している場合には、沸点温度Teが入口温度T1(=TH2)に比べてΔDhだけ高い。従って、非共沸混合冷媒を使用したときに、沸点温度Teを入口温度TH2で代表させると、実際の過熱度(TH3−Te)に比べて検出過熱度(TH3−TH2)がΔDhだけ大きくなる。従って、過熱度を大きく見積もった分ΔDhだけ、単一冷媒での目標過熱度Doh1よりも大きな目標過熱度Doh2を設定する。これによって、上記制御部3は、非共沸混合冷媒を使用した場合に単一冷媒を使用した場合と同じ冷房能力を得ることができ、単一冷媒を使用したときに比べて冷房能力が不足することを防止して適正な冷房能力を発揮することができる。
【0057】
次に、(4)膨張弁制御モード(暖房時)では、四路切替弁14は図1に斜線で示されているように連通している。そして、上記第2の温度センサ13は、凝縮器としての室内熱交換器5の出口温度TH20を検出してこの出口温度TH20を表す信号を上記制御部3に伝える。そして、この制御部3は、上記吐出圧力センサ23から吐出圧力Pdを表す信号を得て、上述した一次回帰式(図7参照)によって、この吐出圧力Pdでの非共沸混合冷媒の露点温度を求める。この露点温度は、すなわち、図5(B)に示した露点温度Tcである。そして、この制御部3は、この露点温度Tcから出口温度TH20を減算して、この減算値(Tc−TH20)を暖房時の過冷却度として算出する。そして、制御部3は、この過冷却度(Tc−TH20)が目標過冷却度Doc2になるように、電動膨張弁21の開度を調節する。
【0058】
この制御部3は、上記非共沸混合冷媒を使用した場合の非共沸用目標過冷却度Doc2を次に説明するように設定して、単一冷媒を使用した場合に単一冷媒用目標過冷却度Doc1を使用したときと同じ暖房能力を得ることができるようにしている。
【0059】
制御部3には、吐出圧力Pd出現範囲で加重平均した補正値ΔDcが格納されている。この補正値ΔDcはあらかじめ次に示すようにして算出されている値である。まず、吐出圧力センサ23からの吐出圧力Pdを表す信号に基づいて、上述した図7に示した一次回帰式を用いて、この吐出圧力Pdでの非共沸混合冷媒の沸点温度T2を求める。次に、上記露点温度Tcから上記沸点温度T2を減算して、補正値ΔDc=(Tc−T2)を算出する。そしてさらに、制御部3は、この補正値ΔDcを、吐出圧力Pd出現範囲で加重平均をとって得た値にする。
【0060】
そして、制御部3は、この補正値ΔDcを、上記冷媒として単一の冷媒を使用したときの目標過冷却度Doc1に加算して、この加算した値(Doc1+ΔDc)を、上記冷媒として非共沸混合冷媒を使用したときの目標過冷却度Doc2とする。
【0061】
図4(B)と図5(B)とを比較参照すれば分かるように、単一冷媒を使用しているときには、吐出圧力Pdから算出した露点温度Tcが凝縮器(室内熱交換器5)の沸点温度T2に等しいが、非共沸混合冷媒を使用しているときには、吐出圧力Pdから算出した露点温度Tcが沸点温度T2よりもΔDcだけ高くなる。したがって、非共沸混合冷媒を使用したときに、沸点温度T2を露点温度Tcで代表させると、実際の過冷却度(T2−TH20)に比べて検出過冷却度(Tc−TH20)がΔDcだけ大きくなる。従って、過冷却度を大きく見積もった分ΔDcだけ、単一冷媒での目標過冷却度Doc1よりも大きな目標過冷却度Doc2を設定する。このことによって、制御部3は、非共沸混合冷媒を使用したときに単一冷媒を使用したときと同じ暖房能力を得ることができ、単一冷媒を使用したときに比べて暖房能力が不足することを防止して適正な暖房能力を発揮することができる。
【0062】
したがって、この実施例によれば、単一冷媒に替えて非共沸混合冷媒を使用したときに、単一冷媒を使用したときの熱出力制御部3の制御定数としてのTeo1,Tco1,Doh1,Doc1に替えて、Teo1+ΔTe,Tco1+ΔTc,Doh1+ΔDh,Doc1+ΔDcを採用だけで、温度センサの取り替えや追加を行うことなく、単一冷媒使用時と同じ能力の冷暖房運転を行うことができる。
【0063】
つまり、この実施例によれば、単一冷媒に替えて非共沸混合冷媒を使用したときに、熱出力制御部3の制御定数を変更する以外は何ら変更を加えることなく、単一冷媒使用時と同じ冷暖房能力を発揮することができる。
【0064】
尚、図5(B)に示すように、上記実施例の膨張弁制御モードの暖房時には、検出する過冷却度を(露点温度Tc−出口温度TH20)とし、その補正値ΔDcを(露点温度Tc−沸点温度T2)としたが、露点温度Tcに替えて凝縮器中間部温度Ttを採用してもよい。この中間部温度Ttを採用した場合には、二相域の温度を温度センサで検出してもよいが、凝縮器としての室内熱交換器5の中間部の乾き度を0.5と仮定して、冷媒物性から乾き度0.5で圧力Pdのときの冷媒温度を中間部温度Ttとすれば上記二相域の温度を検出する温度センサは不要になる。
【0065】
また、上記実施例では、膨張弁制御モードにおいて、単一冷媒での目標過熱度Doh1および目標過冷却度Doc1を補正したが、検出した過熱度(TH3−TH2)および過冷却度(Tc−TH2)を補正してもよい。つまり、検出した過熱度(TH3−TH2)および過冷却度(Tc−TH2)から、補正分ΔDhおよびΔDcを減算して、検出値の補正を行ってもよい。この検出値を補正した場合も、上記目標値を補正した場合と全く同じ冷暖房運転を行うことになることは言うまでもない。尚、上記検出された過熱度が実際の過熱度からずれている値と、上記検出された過冷却度が実際の過冷却度からずれている値とは、同程度であり、圧力が変化してもあまり変化しないから、上記補正分ΔDhとΔDcとを同一の1つの値で代表させることもできる。このとき、室内熱交換器の分流機側の温度TH2は、過熱度と過冷却度の両方の検出に用いられ、かつ、他の制御には用いられない。したがって、室内熱交換器の分流器側の温度センサ(第2の温度センサ13)の検出値(TH2)に補正値(ΔDh)を加えるようにすれば、制御変更内容を最小限に抑えることができる。
【0066】
また、上記実施例は、空気調和機の例であったが、冷凍機であってもよい。
【0067】
【発明の効果】
以上より明らかなように、請求項1の発明の冷凍機は、圧縮機制御部が、吸入圧力センサが検出した圧縮機の吸入圧力から蒸発温度を算出して、この算出した蒸発温度が予め設定された目標温度になるように、圧縮機の能力を制御する。
【0068】
ここで、圧縮機制御部は、非共沸混合冷媒の物性によって決まっている露点温度と圧力との関係を用いて、吸入圧力センサが検出した吸入圧力における沸点温度Teを算出する。次に、圧縮機制御部は、蒸発器入口での測定された蒸発器入口温度T1と、蒸発温度Teとから蒸発器中点温度Tevapを算出する。次に、圧縮機制御部は、(蒸発器中点温度Tevap−沸点温度Te)=ΔTeを算出する。次に、圧縮機制御部は、このΔTを、冷媒として単一の冷媒を使用したときの目標温度Teo1に加算する。次に、圧縮機制御部は、この加算した値(Teo1+ΔTe)を、冷媒として非共沸混合冷媒を使用したときの目標温度Teo2とする。
【0069】
図2(A)と図3(A)を比較参照すれば分かるように、非共沸混合冷媒では、蒸発器中点温度Tevapを代表させている沸点温度Teが、中点温度TevapよりもΔTeだけ高くなるから、この発明の冷凍機のように、非共沸用の目標温度Teo2を単一冷媒用の目標温度Teo1に比べてΔTeだけ高くすることによって、冷却能力の過多を防止することができる。つまり、非共沸混合冷媒を使用した場合に非共沸用目標温度Teo2を使用することによって、単一冷媒を使用した場合に単一冷媒用目標温度Teo1を使用したときと同じ冷房能力を得ることができる。
【0070】
また、請求項2の発明の冷凍機の圧縮機制御部は、吐出圧力センサが検出した圧縮機の吐出圧力から露点温度を算出して、この算出した露点温度が予め設定された目標温度になるように、圧縮機の能力を制御する。
【0071】
ここで、上記圧縮機制御部は、非共沸混合冷媒の物性によって決まっている露点温度および沸点温度と圧力との関係を用いて、吐出圧力センサが検出した吐出圧力における露点温度Tcと、吐出圧力における沸点温度T2とから凝縮器中点温度Tcondを算出する。次に、凝縮器中点温度Tcondと露点温度Tcとの差(凝縮器中点温度Tcond−露点温度Tc)=ΔTcを算出する。次に、この差ΔTcを、冷媒として単一の冷媒を使用したときの単一冷媒用目標温度Tco1に加算して、この加算した値(Tco1+ΔTc)を、冷媒として非共沸混合冷媒を使用したときの非共沸用目標温度Tco2とする。
【0072】
図2(B)と図3(B)とを比較参照すれば分かるように、非共沸混合冷媒では、凝縮器中点温度Tcondを代表させている露点温度Tcが、中点温度TcondよりもΔTcだけ高くなるから、目標温度Tco2を目標温度Tco1に比べてΔTcだけ高くすることによって、暖房能力の不足を防止することができる。つまり、非共沸混合冷媒を使用した場合に非共沸用目標温度Tco2を使用することによって、単一冷媒を使用した場合に単一冷媒用目標温度Tco1を使用したときと同じ暖房能力を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の冷凍機の実施例としての空気調和機の構成を示すブロック図である。
【図2】 図2(A)は圧縮機容量制御での単一冷媒を使用した場合の冷房時のP‐H線図であり、図2(B)は圧縮機容量制御での単一冷媒を使用した場合の暖房時のP‐H線図である。
【図3】 図3(A)は圧縮機容量制御での非共沸混合冷媒を使用した場合の冷媒時のP‐H線図であり、図3(B)は圧縮機容量制御での非共沸混合冷媒を使用した場合の暖房時のP‐H線図である。
【図4】 図4(A)は電動膨張弁制御での単一冷媒を使用した場合の冷房時のP‐H線図であり、図4(B)は電動膨張弁制御での単一冷媒を使用した場合の暖房時のP‐H線図である。
【図5】 図5(A)は電動膨張弁制御での非共沸混合冷媒を使用した場合の冷媒時のP‐H線図であり、図5(B)は電動膨張弁制御での非共沸混合冷媒を使用した場合の暖房時のP‐H線図である。
【図6】 圧縮機容量制御での目標値の補正を説明するP‐H線図である。
【図7】 冷媒の圧力と露点温度との関係式(一次回帰式)の係数設定を説明する図である。
【図8】 従来の空気調和機の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
1…室内ユニット、2…室外ユニット、3…熱出力制御部、
5…室内熱交換器、6…熱交換部、7…分流器、8…ヘッダ、
10…冷媒管、11…第1の温度センサ、13…第2の温度センサ、
14…四路切替弁、15…アキュムレータ、16…圧縮機、
17…室外熱交換器、18…分流器、20…受液器、21…電動膨張弁、
23…吐出圧力センサ、26…吸入圧力センサ、Ps…吸入圧力、
Pd…吐出圧力、Te…沸点温度、Tc…露点温度、
ΔTe,ΔTc…補正分、Teo1,Tco1,Teo2,Tco2…目標温度、
Tevap…蒸発器中点温度、Tcond…凝縮器中点温度、
T1…蒸発器入口温度、T2…沸点温度、Doh1,Doh2…目標過熱度、
Doc1,Doc2…目標過冷却度、ΔDh,ΔDc…補正分。
Claims (2)
- 圧縮機(16)と、凝縮器(17)と、膨張手段(21)と、蒸発器(5)と、上記圧縮機(16)の吸入圧力を検出する吸入圧力センサ(26)と、この吸入圧力センサ(26)が検出した吸入圧力から単一冷媒使用時の蒸発温度を算出して、この算出した蒸発温度が予め設定された目標温度になるように、上記圧縮機(16)の能力を制御する圧縮機制御部(3)とを備えた単一冷媒使用可能な冷凍機において、
上記圧縮機制御部(3)は、
非共沸混合冷媒の物性によって決まっている露点温度と圧力との関係を用いて、上記吸入圧力センサ(26)が検出した吸入圧力における上記非共沸混合冷媒の沸点温度Teを算出し、
上記蒸発器(5)入口での測定された蒸発器入口温度T1と、上記沸点温度Teとから上記非共沸混合冷媒の蒸発器中点温度Tevapを算出し、
上記蒸発器中点温度Tevapと上記沸点温度Teとの差(蒸発器中点温度Tevap−沸点温度Te)=ΔTeを算出し、
この差ΔTeを、単一の冷媒を使用したときの目標温度Teo1に加算して、この加算した値(Teo1+ΔTe)を、上記非共沸混合冷媒を使用したときの目標温度Teo2としたことを特徴とする冷凍機。 - 圧縮機(16)と、凝縮器(5)と、膨張手段(21)と、蒸発器(17)と、上記圧縮機(16)の吐出圧力を検出する吐出圧力センサ(23)と、この吐出圧力センサ(23)が検出した吐出圧力から単一冷媒使用時の凝縮温度を算出して、この算出した凝縮温度が予め設定された目標温度になるように、上記圧縮機(16)の能力を制御する圧縮機制御部(3)とを備えた単一冷媒使用可能な冷凍機において、
上記圧縮機制御部(3)は、
非共沸混合冷媒の物性によって決まっている露点温度および沸点温度と圧力との関係を用いて、上記吐出圧力センサ(23)が検出した吐出圧力における露点温度Tcと、上記吐出圧力における沸点温度T2とから凝縮器中点温度Tcondを算出し、
この凝縮器中点温度Tcondと露点温度Tcとの差(凝縮器中点温度Tcond−露点温度Tc)=ΔTcを算出し、
この差ΔTcを、単一の冷媒を使用したときの目標温度Tco1に加算して、この加算した値(Tco1+ΔTc)を、上記非共沸混合冷媒を使用したときの目標温度Tco2としたことを特徴とする冷凍機。
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