JP3640507B2 - ポリビニルアルコール系樹脂組成物、それを用いた紙用コート剤および水性エマルジョン組成物 - Google Patents

ポリビニルアルコール系樹脂組成物、それを用いた紙用コート剤および水性エマルジョン組成物 Download PDF

Info

Publication number
JP3640507B2
JP3640507B2 JP19638797A JP19638797A JP3640507B2 JP 3640507 B2 JP3640507 B2 JP 3640507B2 JP 19638797 A JP19638797 A JP 19638797A JP 19638797 A JP19638797 A JP 19638797A JP 3640507 B2 JP3640507 B2 JP 3640507B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
pva
resin composition
aqueous emulsion
aqueous solution
polyvinyl alcohol
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Lifetime
Application number
JP19638797A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH1129681A (ja
Inventor
将利 河西
中島  隆
博司 野口
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Japan Vam and Poval Co Ltd
Original Assignee
Japan Vam and Poval Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Japan Vam and Poval Co Ltd filed Critical Japan Vam and Poval Co Ltd
Priority to JP19638797A priority Critical patent/JP3640507B2/ja
Publication of JPH1129681A publication Critical patent/JPH1129681A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3640507B2 publication Critical patent/JP3640507B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Lifetime legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Paper (AREA)
  • Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、作業性と耐水性に優れたポリビニルアルコール系樹脂組成物、それを用いた紙用コート剤、および水性エマルジョン組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、ポリビニルアルコール(以下、PVAと略記する)系樹脂は、造膜性に優れ、皮膜強度が高く、また接着強度に優れていることから、紙用コート剤、各種バインダー、接着剤、乳化分散剤、繊維糊剤、表面処理剤、フィルム等に広く使用されている。しかし、PVA系樹脂は水溶性であるため、その水溶液およびPVAを乳化分散剤とするエマルジョン組成物より得られる皮膜は耐水性に乏しく、これを改良する目的で種々の方法が検討されてきた。
【0003】
例えば、PVAや水性エマルジョン組成物にグリオキザール等のジアルデヒド類、金属塩類などの架橋剤を添加し、耐水化する方法等が知られているが、これらの方法で十分な耐水性を得るためには、高温での処理や、酸触媒を用いた強酸条件下での処理が必要であり、使用できる用途が限定される。また、PVA水溶液およびエマルジョンに架橋剤を添加した系は粘度安定性が悪く、添加後短時間でゲル化してしまう等の作業性の点に問題を有している。更に、PVAや水性エマルジョン組成物に尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂等を添加する耐水化方法なども知られているが、これらを添加した場合、高温多湿下でホルムアルデヒドが遊離し、安全・衛生面の問題があるとともに、粘度安定性もよくなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
これらの問題点を解決する方法として、アセトアセチル基を有するPVAにヒドラジン化合物を反応させる耐水化方法(特公平1−60192号公報)およびジアセトン基を有するPVAにヒドラジン類を反応させる耐水化方法(特開平8−151412号公報)が提案されており、これらの耐水化方法は、加熱や強酸添加などの特別な処理を必要とせず、ホルムアルデヒドなどの有害物質の発生などない。しかしながら、この系においても架橋剤を添加すると、反応が急速に進み、溶液状態での可使時間が短いという問題点は解決されていない。また、アセトアセチル基を有するPVAを用いた水性エマルジョン組成物にヒドラジン化合物を反応させる際に、水溶性有機アミンを共存させてポットライフの長いエマルジョン組成物を得る方法(特開平8−113687号公報)が提案されている。この方法は、エマルジョンから得られる皮膜の耐水性に優れ、特公平1−60192号公報、特開平8−151412号公報に比べ可使時間も長く、作業性も良いが、可使時間を更に長くしようとすると、水溶性有機アミンの添加量を増やす必要があり、系のpHが高くなるため、使用できる用途が限られると同時に、酢酸ビニル系樹脂エマルジョンの場合には、放置中にポリ酢酸ビニル樹脂が加水分解し、着色や変質が起こるという問題があった。
【0005】
また、特開平9−67466号公報には、好ましい硬化特性とポットライフを提供する組成物として、ヒドラジド化合物にケトン類を反応させたヒドラジド誘導体と合成樹脂からなる硬化性樹脂組成物が提案されており、合成樹脂の一つとしてPVA類が挙げられ、中でもアセトアセチル化PVAが好ましいものとして例示されているが、このアセトアセチル化PVAでは、耐水化効果とポットライフの延長が実用レベルに達していないのが現状である。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような従来技術の欠点を解決し、常温で乾燥しても、優れた耐水性を発揮し、その水溶液のポットライフが長く、保存安定性、作業性に優れたPVA系樹脂組成物、それを用いた紙用コート剤および水性エマルジョン組成物を提供することを目的としたもので、(A)ジアセトンアクリルアミド単位を0.1〜15モル%含有するジアセトンアクリルアミド共重合変性PVAと、(B)分子内に
【化3】
Figure 0003640507
を有するヒドラジド誘導体を配合してなるPVA系樹脂組成物、それを用いた紙用コート剤および水性エマルジョン組成物である。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のPVA系樹脂組成物は、(A)ジアセトンアクリルアミド共重合変性PVAと(B)ヒドラジド誘導体を配合してなるものである。
【0008】
本発明で使用されるジアセトンアクリルアミド共重合変性PVA(A)は、脂肪酸ビニルエステルとジアセトンアクリルアミドとを共重合して得た重合体を鹸化するなどの公知の方法により製造することができる。
上記の共重合に使用する脂肪酸ビニルエステルとして、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニルなどが挙げられ、中でも酢酸ビニルが工業的に好ましい。
【0009】
上記の脂肪酸ビニルエステルとジアセトンアクリルアミドとの共重合方法は、従来から公知の塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などの各種の方法が採用でき、中でもメタノールを溶剤として用いる溶液重合が工業的に好ましい。
脂肪酸ビニルエステルとジアセトンアクリルアミドとを共重合して得た重合体の鹸化方法は、従来から公知のアルカリ鹸化や酸鹸化を適用することができ、中でも重合体のメタノール溶液またはメタノールと水、酢酸メチル、ベンゼン等の混合溶液に水酸化アルカリを添加して加アルコール分解する方法が工業的に好ましい。
【0010】
本発明で使用されるジアセトンアクリルアミド共重合変性PVA(A)は、本発明の効果を阻害しない範囲で、脂肪酸ビニルエステルまたはジアセトンアクリルアミドと共重合可能な、例えば、クロトン酸、アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和モノカルボン酸およびそのエステル・塩・無水物・アミド・ニトリル類、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などの不飽和ジカルボン酸およびその塩、マレイン酸モノメチル、イタコン酸モノメチル等の不飽和二塩基酸モノアルキルエステル類、炭素数2〜30のα−オレフィン類、アルキルビニルエーテル類、ビニルピロリドン類とともに共重合したものであっても良い。この他、得られたジアセトンアクリルアミド共重合変性PVAを本発明の効果を阻害しない範囲でアセタール化、ウレタン化、エーテル化、グラフト化、リン酸エステル化、アセトアセチル化などの反応によって後変性したものでも良い。
【0011】
本発明で使用されるジアセトンアクリルアミド共重合変性PVA(A)のジアセトンアクリルアミド単位の含有量は0.1〜15モル%の範囲であり、好ましくは0.5〜10モル%である。ジアセトンアクリルアミド単位の含有量が0.1モル%未満であると、耐水化の目的を達成することができない。また、含有量が15モル%を超えると、耐水化効果が飽和状態になるのみでなく、水溶性が低下し作業性に問題を生じる。
【0012】
また、本発明で使用されるジアセトンアクリルアミド共重合変性PVA(A)の重合度、鹸化度は特に制限されないが、20℃における4%水溶液粘度が3mPa・s以上、鹸化度85モル%以上が好ましい。
【0013】
本発明で使用されるヒドラジド誘導体(B)は、分子内に
【化4】
Figure 0003640507
を有するものである。
このヒドラジド誘導体(B)としては、各種のものが使用され、ヒドラジド化合物にケトン化合物、アルデヒド化合物から選ばれる少なくとも1種とを、無溶媒下又は溶媒中で反応させることにより製造することができる。
【0014】
ここで使用されるヒドラジド化合物としては、カルボヒドラジド、安息香酸ヒドラジド、ギ酸ヒドラジド、酢酸ヒドラジド、プロピオン酸ヒドラジド、n−酪酸ヒドラジド、イソ酪酸ヒドラジド、n−吉草酸ヒドラジド、イソ吉草酸ヒドラジド、ピバリン酸ヒドラジドなどのモノカルボン酸ヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジドなどのジカルボン酸ジヒドラジドおよびN−アミノポリアクリルアミドなどのヒドラジド基を有する高分子化合物などが挙げられるが、これに限られるものではない。
【0015】
ここで使用されるケトン化合物としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチルイソブチルケトン、ジ−n−プロピルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン等が挙げられるが、これに限られるものではない。
また、ここで使用されるアルデヒド化合物としては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、プロピオンアルデヒド等が挙げられるが、これに限られるものではない。
【0016】
反応を溶媒中で行う場合、溶媒としては反応に不活性なものであれば特に制限されず、例えば、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、塩化メチレン、メタノール、エタノール、ジエチルエーテル等が挙げられる。
ヒドラジド化合物とケトン化合物およびアルデヒド化合物から選ばれる少なくとも1種を反応させる際、任意の割合で反応することができるが、通常、ヒドラジド化合物1モルに対してケトン化合物および/またはアルデヒド化合物を1.5〜100モル、好ましくは2〜20モル使用すればよい。また、溶媒を使用する場合、その使用量は特に制限されない。
【0017】
ヒドラジド化合物と、ケトン化合物およびアルデヒド化合物から選ばれる少なくとも1種との反応は、必要に応じて攪拌しながら、通常10〜150℃、好ましくは20〜80℃で行われ、必要に応じて還流下で0.1〜2時間程度で終了する。
このようにして得られるヒドラジド誘導体(B)を含む反応混合物は、そのまま使用することもできるが、公知の方法に従って、単離精製して用いることもできる。
【0018】
上記ヒドラジド誘導体の具体例としては、アジピン酸ジヒドラジドジアセトンゾン、カルボヒドラジドジアセトンゾン、グルタル酸ジヒドラジドジアセトンゾン、N−アミノポリアクリルアミドポリアセトンゾン、アジピン酸ジヒドラジドジメチルエチルケトンゾン、アジピン酸ジヒドラジドジジエチルケトンゾン、アジピン酸ヒドラジドジイソブチルケトンゾン等が挙げられるが、これらに制限されない。
【0019】
本発明で使用されるヒドラジド誘導体(B)の添加量は、種々の量とすることができるが、PVA系樹脂100重量部に対して、0.1〜20重量部が好ましく、より好ましくは0.5〜15重量部である。ヒドラジド誘導体の添加量が0.1重量部未満の場合には、耐水化効果が低く、また20重量部を超える場合には耐水化効果が飽和になるばかりでなく、未反応のヒドラジド誘導体が水中に溶出する恐れがある。また、ヒドラジド誘導体の配合量が多くなるに伴い、ポットライフは短くなるため、要求される耐水性能を満たす範囲で、添加量を少なくするほうが作業性で好都合である。
【0020】
本発明のPVA系樹脂組成物は通常、水に溶解して水溶液として使用した後、最終的に乾燥され、耐水化される。該水溶液は、通常、PVA系樹脂(A)の水溶液にヒドラジド誘導体(B)またはその水溶液を添加、混合して作製されるが、PVA系樹脂(A)の水溶液を塗工して乾燥する前や乾燥後にヒドラジド誘導体(B)の水溶液を噴霧、塗布、含浸する方法などが挙げられるが、これらに限られるわけではない。
【0021】
本発明のPVA系樹脂組成物は紙用コート剤として使用することができるが、この際は、通常、本発明のPVA系樹脂組成物の水溶液を作製し、これを用いて紙用コート剤とする。これはエアーナイフコーター、ロールブレードコーター、ドクターブレードコーターなどを使用する通常の方法を用いて、一般上質紙のほか、撥水紙、感熱紙、感圧紙、転写紙、防錆紙、剥離紙、着色紙、艶紙、アート紙、コート紙、板紙、段ボール紙等に塗工した後、乾燥して使用される。
水溶液の濃度、塗工量は使用目的に応じて任意にすることができるが、通常、濃度は0.5〜40%であり、塗工量は0.1〜50g/m2であるが、これに限らない。
【0022】
また、本発明のPVA系樹脂組成物を含有する水性エマルジョン組成物とは、ジアセトンアクリルアミド共重合変性PVA(A)、ヒドラジド誘導体(B)、ビニル系重合体(C)および水(D)を主成分とするものである。
この水性エマルジョン組成物を製造する方法としては、ジアセトンアクリルアミド共重合変性PVAの水溶液を分散剤に用いて、重合開始剤の存在下に1種以上のエチレン性不飽和単量体を一時または連続的に添加して、乳化重合する方法、また、エチレン性不飽和単量体を該PVA系樹脂の水溶液を用いて乳化した混合液を、連続的に重合反応系に添加する方法およびジアセトンアクリルアミド共重合変性PVA(A)および/またはそれ以外のPVA系樹脂および/または他の界面活性剤を分散剤に用いて重合した水性エマルジョンに後添加で該PVA系樹脂を添加する方法などにより得られたビニル化合物のエマルジョンにヒドラジド誘導体(B)またはその水溶液を添加するなどの方法が挙げられる。
【0023】
また、水性エマルジョン組成物におけるPVA系樹脂、ヒドラジド誘導体の使用量は、使用目的に応じて決められるが、好ましくは、水性エマルジョン組成物100重量部におけるPVA系樹脂組成物の使用量は1〜20重量部であり、ヒドラジド誘導体の使用量は0.05〜10重量部である。
【0024】
本発明の水性エマルジョン組成物の分散質のビニル系重合体の原料となるエチレン性不飽和単量体の例としては、エチレン、プロピレン、イソプレンなどのオレフィン、塩化ビニル、フッ化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどのハロゲン化オレフィン、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ピバリン酸ビニルなどのビニルエステル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルなどのアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルなどのメタクリル酸エステル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチルおよびこれらの4級化物、さらには、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミドなどのアクリルアミド系単量体、その他N−ビニルピロリドン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレンなどのジエン系単量体などが挙げられるが、これに限られるものではない。
【0025】
また、分子内にカルボニル基を有するエチレン性不飽和単量体の使用および前記単量体との併用は、水性エマルジョン組成物の耐水化効果が高くなり、好ましい。分子内にカルボニル基を有するエチレン性不飽和単量体の例としては、ジアセトンアクリルアミド、ジアセトンアクリレート、ジアセトンメタクリレート、アセト酢酸アリル、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトンが挙げられ、これらのエチレン性不飽和単量体の1種以上を用いることができる。添加量は使用目的に応じて決めることができる。
【0026】
本発明のPVA系樹脂組成物および水性エマルジョン組成物には、必要に応じて本発明以外のPVAや澱粉、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリアクリル酸誘導体、ゼラチン等の他の天然高分子、合成高分子、クレー、カオリン、タルク、シリカ、炭酸カルシウム等の無機充填剤、グリセリン、ソルビトール、ジブチルフタレート等の可塑剤、界面活性剤、消泡剤、キレート剤およびpH調整剤として塩酸、硫酸などの各種酸性物質、水酸化ナトリウム、アンモニア、アミン系化合物などの各種塩基性物質等を本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。
【0027】
本発明のPVA系樹脂組成物および水性エマルジョン組成物は、その溶液状態では該PVA系樹脂中のジアセトンアクリルアミド基に対してヒドラジド誘導体のヒドラジド基がブロックされているため、反応が抑制されており、その乾燥過程で、カルボニル基の交換反応が起こり、該PVA系樹脂の耐水化の目的を達成することができると考えられる。
【0028】
本発明のPVA系樹脂組成物は、紙用コート剤、各種バインダー、接着剤、乳化分散剤、繊維糊剤、表面処理剤、塗料、フィルム等の高度の耐水性を要求される用途に有用であり、特に熱処理をすることのできない感熱紙のコート剤などとして有用である。また、本発明の水性エマルジョン組成物は、接着剤、粘着剤、塗料、繊維加工剤、紙加工剤、セメント混和剤、土壌改良剤、化粧品などに有用であるが、これに制限されるものではない。
【0029】
【実施例】
次に、本発明の実施例によって具体的に説明する。
得られたPVA系樹脂組成物および水性エマルジョン組成物の性能は以下の試験により評価した。
【0030】
(1)PVA系樹脂組成物および紙用コート剤
1.フィルムの耐水性試験
PVA系樹脂組成物の水溶液をポリエチレンテレフタレート製のシート上に流延して20℃、65%RH中で4日間乾燥し、厚み100μのキャストフィルムを作製し、以下のように熱水不溶分率を測定した。
試料(乾燥重量W1 )を95℃の熱水に1時間浸漬して可溶成分を溶解させ、不溶残留物を105℃で乾燥し、その重量W2 を測定して下記の式(1)により算出した。
熱水不溶分率(%)=(W2 /W1 )×100 (1)
【0031】
2.塗工紙の耐水性試験
PVA系樹脂組成物の5%水溶液を50g/ m2 の上質紙に乾燥後の塗工量が1g/ m2 になるようにワイヤーバーを用いて塗工し、乾燥ドラムを使用して50℃で乾燥して塗工紙を得た。上記塗工紙を20℃の水中に一昼夜浸漬した後、指でこすって塗工物が溶出する程度を判定する耐水性の試験を行った。
○:粘つきがない
×:粘つきがあるか、塗工物が溶出している
【0032】
3.水溶液の安定性試験
PVA系樹脂組成物の水溶液を30℃で放置し、ゲル化するまでの時間を測定した。
【0033】
4.総合評価
上記の試験結果に基づいて以下の基準で評価を行った。
○:水溶液が安定で耐水性が共に非常に優れている。
×:水溶液が不安定であるか、耐水性が実用レベルに達していない。
【0034】
(2)水性エマルジョン組成物
1.耐水性試験(水滴試験)
水性エマルジョン組成物をスライドガラス上に流延して20℃、65%RH中で4日間乾燥し、厚み200μのエマルジョン皮膜を作製し、その上に純水を1滴落とし、下に敷いた新聞紙の8ポイント活字のひらがなが読めなくなるまでの時間を測定した。
【0035】
2.水性エマルジョン組成物の安定性(ポットライフ)試験
水性エマルジョン組成物を30℃で放置し、ゲル化するまでの時間を測定した。また、1週間後の水性エマルジョン組成物の着色の有無を観察した。
【0036】
3.総合評価
上記の試験結果に基づいて以下の基準で評価を行った。
○:水性エマルジョン組成物の安定性、耐水性が共に実用レベルに達している。
×:水性エマルジョン組成物の安定性、耐水性のいずれかが実用レベルに達していない。
【0037】
ジアセトンアクリルアミド共重合変性PVAの合成例
合成例1
撹拌機、温度計、および滴下ロート還流冷却器を取り付けたフラスコ中に、酢酸ビニル694重量部、ジアセトンアクリルアミド10重量部、およびメタノール178重量部を仕込み、系内の窒素置換を行った後、内温を60℃まで昇温した。この系に2,2−アゾビスイソブチリロニトリル1重量部をメタノール50重量部に溶解した溶液を添加し、重合を開始した。重合開始後、5時間かけて、ジアセトンアクリルアミド25重量部をメタノール43重量部に溶解した溶液を一定速度で滴下し、6時間後に重合禁止剤としてm−ジニトロベンゼンを添加し、重合を停止した。重合収率は78%であった。得られた反応混合物にメタノール蒸気を加えながら残存する酢酸ビニルを留出し、ジアセトンアクリルアミド共重合成分を含有する酢酸ビニル系重合体の50%メタノール水溶液を得た。この混合物500重量部にメタノール50重量部と水酸化ナトリウムの4%メタノール溶液10重量部とを加えてよく混合し、40℃で鹸化反応を行った。得られたゲル状物を粉砕し、メタノールでよく洗浄した後に乾燥して、ジアセトンアクリルアミド共重合変性PVAを得た。また、元素分析測定により、この樹脂中のジアセトンアクリルアミド単位の含有率は5.0モル%であることが判明した。この樹脂の20℃における4%水溶液粘度は26.8mPa・s、鹸化度は98.4モル%であった。なお、この粘度はB型粘度計を用いて60rpmの回転速度で測定した。
【0038】
合成例2〜5
仕込み組成を変えることにより、合成例1と同様にして表1のようなジアセトンアクリルアミド共重合変性PVAを得た。
【0039】
合成例6
酢酸ナトリウム0.3%含有するPVA(鹸化度98.3モル%、20℃における4%水溶液粘度が21.0mPa・s)をニーダーに100重量部仕込み、回転数100rpmで攪拌しながら、液状ジケテン12重量部を室温で噴霧添加した後、60℃に昇温して3時間反応させ、アセトアセチル化PVAを得た。この樹脂中のアセトアセチル基の含有率は5.0モル%であり、20℃における4%水溶液粘度は22.4mPa・s、鹸化度は98.3モル%であった。
【0040】
【表1】
Figure 0003640507
【0041】
実施例1
合成例1で得られたジアセトンアクリルアミド共重合変性PVA系樹脂100重量部を900重量部の水に溶解した水溶液にアジピン酸ジヒドラジドジアセトンゾン5重量部を添加し、よく混合し混合水溶液を作製した。
この水溶液の30℃でのゲル化時間は30時間であった。また、前述のようにして得られたキャストフィルムの熱水不溶分率を調べたところ、97.1%であり、塗工紙の耐水性試験でも粘つきはなく、耐水性は良好であった。結果を表4に示す。
【0042】
実施例2〜5
使用するジアセトンアクリルアミド共重合変性PVA(A)、ヒドラジド誘導体(B)を表2に示すように変えた以外は実施例1と同様にして水溶液を作製し、水溶液の安定性、キャストフィルム、塗工紙の耐水性試験を行った。結果を表4に示す。
【0043】
【表2】
Figure 0003640507
【0044】
実施例6
還流冷却器、滴下ロート、温度計、窒素吹込口を備えたガラス製重合容器に、イオン交換水500重量部、合成例1で得られたジアセトンアクリルアミド共重合変性PVA系樹脂(20℃における4%水溶液粘度26.8mPa・s、鹸化度98.4モル%、変性度5.0モル%)39重量部を仕込み、95℃で完全に溶解した。これを70℃まで冷却し、過硫酸アンモニウム0.5重量部を添加し、窒素雰囲気下で撹拌しながら、酢酸ビニル460重量部を2時間かけて連続的に添加した後、80℃に昇温し、さらに2時間熟成反応を行い、乳化重合を完結させ、酢酸ビニル系樹脂エマルジョンを得た。
【0045】
この水性エマルジョン100重量部にアジピン酸ジヒドラジドジアセトンゾン水溶液2重量部を加え、よく混合し、水性エマルジョン組成物を作製した。
この水性エマルジョン組成物のゲル化時間および皮膜の水滴試験を行った。結果を表5に示す。
このエマルジョン組成物の20℃でのゲル化時間は5日間であり、着色等も見られなかった。また、水滴試験では再乳化による白化は起こらず良好な耐水性を示した。
【0046】
実施例7〜10
使用するジアセトンアクリルアミド共重合変性PVA(A)、ヒドラジド誘導体(B)を表3に示すように変えた以外は実施例1と同様にして水性エマルジョン組成物を作製し、水性エマルジョン組成物の経時変化を観察し、皮膜の水滴試験を行った。結果を表5に示す。
【0047】
【表3】
Figure 0003640507
【0048】
比較例1
合成例1で得られたジアセトンアクリルアミド共重合変性PVAに変えて、鹸化度98.4モル%、20℃における4%水溶液粘度が27.6mPa.sである未変性PVAを使用した以外は実施例1と同様にして水溶液を作製した。
この水溶液を20℃でゲル化は起こらなかったが、キャストフィルムは熱水にすべて溶解し、また、塗工紙からは溶出が見られ、耐水性は非常に低かった。結果を表4に示す。
【0049】
比較例2〜7
使用するPVA系樹脂(A)、ヒドラジド誘導体(B)の種類を表2に示すように変えた以外は実施例1と同様にして水溶液を作製し、水溶液の安定性、キャストフィルムの耐水性試験を行った。結果を表4に示す。
【0050】
【表4】
Figure 0003640507
【0051】
比較例8〜12
使用するジアセトンアクリルアミド共重合変性PVA(A)、ヒドラジド誘導体(B)を表3に示すように変えた以外は実施例11と同様にして水性エマルジョン組成物を作製し、水性エマルジョン組成物の経時変化を観察し、皮膜の水滴試験および耐水接着強度を測定した。結果を表5に示す。
【0052】
【表5】
Figure 0003640507
【0053】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明のPVA系樹脂組成物は、水溶液およびエマルジョン混合液の状態で、ポットライフが長く、保存安定性、作業性が優れ、かつそれを常温で乾燥しても、十分な耐水効果を得ることができる。
本発明のPVA系樹脂組成物は紙用コート剤として有用であり、特に熱処理が行えない感熱紙のコート剤として有用である。また、耐水性を必要とするフィルム、成型物等のバインダー、顔料やエマルジョンの乳化・分散剤、紙・木工・織物等の接着剤、表面処理剤としても有用である。また、本発明のPVA系樹脂組成物を含有するエマルジョンは接着剤、粘着剤、塗料、化粧品、紙および繊維の加工剤等に有用であるが、これらの用途に限られるわけではない。

Claims (4)

  1. (A)ジアセトンアクリルアミド単位を0.1〜15モル%含有するジアセトンアクリルアミド共重合変性ポリビニルアルコールと、(B)分子内に
    Figure 0003640507
    を有するヒドラジド誘導体を配合してなることを特徴とするポリビニルアルコール系樹脂組成物。
  2. 分子内に
    Figure 0003640507
    を有するヒドラジド誘導体が、アジピン酸ジヒドラジドジアセトンゾン、アジピン酸ジヒドラジドジメチルエチルケトンゾンまたはN−アミノポリアクリルアミドポリアセトンゾンである請求項1記載のポリビニルアルコール系樹脂組成物。
  3. 請求項1または2記載のポリビニルアルコール系樹脂組成物の水溶液を主成分とすることを特徴とする紙用コート剤。
  4. 請求項1または2記載のポリビニルアルコール系樹脂組成物を含有することを特徴とする水性エマルジョン組成物。
JP19638797A 1997-07-08 1997-07-08 ポリビニルアルコール系樹脂組成物、それを用いた紙用コート剤および水性エマルジョン組成物 Expired - Lifetime JP3640507B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP19638797A JP3640507B2 (ja) 1997-07-08 1997-07-08 ポリビニルアルコール系樹脂組成物、それを用いた紙用コート剤および水性エマルジョン組成物

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP19638797A JP3640507B2 (ja) 1997-07-08 1997-07-08 ポリビニルアルコール系樹脂組成物、それを用いた紙用コート剤および水性エマルジョン組成物

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH1129681A JPH1129681A (ja) 1999-02-02
JP3640507B2 true JP3640507B2 (ja) 2005-04-20

Family

ID=16357034

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP19638797A Expired - Lifetime JP3640507B2 (ja) 1997-07-08 1997-07-08 ポリビニルアルコール系樹脂組成物、それを用いた紙用コート剤および水性エマルジョン組成物

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3640507B2 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002146140A (ja) * 2000-11-15 2002-05-22 Nippon Synthetic Chem Ind Co Ltd:The 樹脂組成物
JP2016194078A (ja) * 2016-05-30 2016-11-17 ユニチカ株式会社 コーティング組成物、塗膜及び積層体

Also Published As

Publication number Publication date
JPH1129681A (ja) 1999-02-02

Similar Documents

Publication Publication Date Title
WO2007007578A1 (ja) 水性分散液およびその製造方法、並びに組成物、接着剤およびコーティング剤
NL1021066C2 (nl) Met silaan gemodificeerde polyvinylacetalen.
JP3084506B2 (ja) ポリビニルアルコール系樹脂の耐水化方法
JP3615910B2 (ja) ポリビニルアルコール系樹脂組成物、それを主成分とする紙コート剤および水性エマルジョン組成物
JPH1087936A (ja) ポリビニルアルコール系樹脂組成物およびそれを主成分とする紙コート剤
JP3640507B2 (ja) ポリビニルアルコール系樹脂組成物、それを用いた紙用コート剤および水性エマルジョン組成物
JP3665185B2 (ja) ポリビニルアルコール系樹脂組成物、それを主成分とする紙用コート剤および水性エマルジョン組成物
JP5501345B2 (ja) 水性接着剤
JP4723069B2 (ja) 樹脂組成物および紙コート剤
JPS59179605A (ja) アルコキシル基と結合したシリル基を有する変性ポリビニルアルコ−ルの製造法
JP3758705B2 (ja) 乳化分散安定剤
JP3357710B2 (ja) エマルジョン組成物
JP3769380B2 (ja) 高速塗工性に優れたポリビニルアルコール系紙コート剤
JPH10330572A (ja) 水性エマルジョン組成物およびそれを主成分とする接着剤
JPH09324094A (ja) ポリビニルアルコール系耐水性組成物
JP2004143309A (ja) ポリビニルアルコール系樹脂組成物およびそれを用いたインクジェット記録用媒体
JP4554745B2 (ja) 乳化重合用分散剤およびその用途
JPH09324095A (ja) ポリビニルアルコール系耐水性樹脂組成物
JPH09208786A (ja) ポリビニルアルコール系樹脂組成物およびそれを用いた紙コート剤
JP3883425B2 (ja) 耐水性ポリビニルアルコール系共重合体およびそれを用いて得られる合成樹脂エマルジョン
JP2000204223A (ja) 一液架橋型樹脂組成物
JP3579137B2 (ja) 乳化分散安定剤
JPH093797A (ja) 紙加工剤
JP5001185B2 (ja) ビニルアルコール系重合体を含む紙用塗工剤と、これを塗工した紙
JPH07102007A (ja) ビニル化合物系乳化重合物の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
RD02 Notification of acceptance of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7422

Effective date: 20040405

RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424

Effective date: 20040525

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20040702

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20041028

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20041101

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20041215

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20050117

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20050118

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20080128

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110128

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110128

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140128

Year of fee payment: 9

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

EXPY Cancellation because of completion of term