JP3639275B2 - p形リン化硼素半導体層の製造方法、化合物半導体素子及び発光ダイオード - Google Patents
p形リン化硼素半導体層の製造方法、化合物半導体素子及び発光ダイオード Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、低抵抗のp形リン化硼素半導体層の製造方法、及びこの製造方法で得られたp形リン化硼素半導体層を備えてなる化合物半導体素子と発光ダイオードに関する。
【0002】
【従来の技術】
III −V族化合物半導体の一つとして、単量体のリン化硼素(化学式:BP)が知られている(非特許文献1参照)。リン化硼素層は、従来より、ハロゲン(halogen)法(非特許文献2参照)、ハイドライド(hydride)法(非特許文献3参照)、有機金属化学的気相堆積(MOCVD)法(特許文献2参照)、及び化学的ビーム蒸着法(非特許文献4参照)などの気相成長手段によりもっぱら形成されている。例えば、ハイドライド法では、ジボラン(分子式:B2 H6 )を硼素原料とし、ホスフィン(分子式:PH3 )をリン原料としてリン化硼素層が気相成長されている(非特許文献3参照)。また、MOCVD法では、トリエチル硼素(分子式:(C2 H5 )3 B)を硼素原料とし、ホスフィン(PH3 )をリン原料として気相成長されている(特許文献2参照)。
【0003】
ハイドライド法に依るリン化硼素層の形成では、気相成長領域に供給する硼素原料に対するリン原料の濃度比率、所謂、V/III 比率を低く設定すれば、p形のリン化硼素層が形成されると言われている(非特許文献5参照)。また、MOCVD法に於いては、リン化硼素は電子の有効質量(effective mass)が大きいことから、n形伝導層よりもp形伝導層がより簡易に形成され得ると言われている(特許文献1参照)。また、MOCVD法に依れば、亜鉛(元素記号:Zn)及びマグネシウム(元素記号:Mg)等の元素周期律表の第II族元素を故意に添加(doping)することで、p形のリン化硼素層が形成されると言われている(特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平2−288388号公報
【特許文献2】
米国特許第6、069、021号明細書
【非特許文献1】
ピー・ポッパァ(P.POPPER)外、”Boron Phosphide, a III−V Compound of Zinc-Blende Structure”、ネイチャー(Nature),4569号、1957年5月25日,(英国)、p.1075
【非特許文献2】
ティー・エル・チュー(T.L.CHU)外、”Crystals and Epita xial Layers of Boron Phosphide", ジャーナル オブ アプライドフィジクス(Journal of Applied Physics)、第42巻、第1号、1971年1月、(米国)、p.420−424
【非特許文献3】
ケー・ショーノ(K.SHOHNO)外、”EPITAXIAL GROWTH OF BP COMPOUNDS ON Si SUBSTRATES USING THE B2H6-PH3-H2 SYSTEM”、ジャーナル オブ クリスタル グロース(Journal ofCrystal Growth)、第24/25巻、1974年、 (オランダ)、p.193−196
【非特許文献4】
ワイ・クマシロ外、”Preparation and Electrical Properties of B oron and Boron Phosphide Films Obtained by Gas Source Molecula r Beam Deposition”、ジャーナル オブ ソリッド ステート ケミストリィ(Journal of Solid State Chemistry)、第133巻、1997年、(米国)、p.269−272
【非特許文献5】
庄野 克房著、「半導体技術(上)」、9刷、1992年6月25日、(財)東京大学出版局、p.76−77
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、例えば、ハイドライド法でp形リン化硼素層を形成する従来技術では、V/III 比率を低比率に設定する必要があるため、半導体の性質を呈しない高抵抗のBn P(7≦n≦10)の如くの硼素多量体が形成されてしまう問題がある(非特許文献5参照)。
一方、MOCVD等の気相成長法では、一般に1000℃を超える高温でp形リン化硼素層が形成されている。このため、リン化硼素層を構成する硼素及びリンの高温での揮散が顕著となり、良好な表面状態のp形リン硼素層を得るに至っていない。また、硼素よりリンの揮散が激しく生ずると、p形の伝導性が失われ、表面状態の悪化した高抵抗のリン化硼素層が形成されてしまうといった欠点もある。
【0006】
本発明は、上記の従来技術の欠点を克服すべくなされたもので、高温での気相成長に於ける硼素等の揮散に起因する表面状態の悪化を回避し、高抵抗或いは伝導形のn形への反転を防止し、しかも低抵抗のp形リン化硼素層(p形リン化硼素半導体層)を安定して形成し得る方法を提供するとともに、形成した低抵抗のp形リン化硼素層(p形リン化硼素半導体層)を利用した化合物半導体素子と発光ダイオードとを提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明のp形リン化硼素半導体層の製造方法(1)では、結晶基板上或いは結晶層上に、p形の伝導を呈するリン化硼素(BP)半導体層を、硼素(B)を含む化合物とリン(P)を含む化合物を原料として気相成長法で形成するp形リン化硼素半導体層の製造方法に於いて、結晶基板上或いは結晶層上に、750℃以上で1200℃以下の第1の温度にて、硼素原料に対するリン原料の気相成長領域に供給する濃度の比率を第1の比率として、硼素をリンに対し富裕に含む非晶質層を気相成長法で形成し、その後、形成した非晶質層上に、750℃以上で第1の温度以下の第2の温度にて、第1の比率より大きな第2の比率で、p形のリン化硼素半導体層を形成する、ことを特徴としている。
また、本発明のp形リン化硼素半導体層の製造方法(2)では、上記した非晶質層上にp形のリン化硼素半導体層を形成する際に、珪素(Si)を添加しつつ気相成長を行う、ことを特徴としている。
また、本発明のp形リン化硼素半導体層の製造方法(3)では、上記(2)の製造方法において、得られるp形のリン化硼素半導体層中の珪素原子の濃度が、1×1019cm−3以上で1×1020cm−3以下の範囲となるように、非晶質層上にp形のリン化硼素半導体層を気相成長形成させる、ことを特徴としている。
また、本発明のp形リン化硼素半導体層の製造方法(4)では、上記の製造方法において、上記第1の比率を、5以上で50以下とする、ことを特徴としている。
また、本発明のp形リン化硼素半導体層の製造方法(5)では、上記の製造方法において、上記第2の比率を、1×103 以上で1×104 以下とする、ことを特徴としている。
また、本発明のp形リン化硼素半導体層の製造方法(6)では、上記の製造方法において、上記非晶質層の厚さを2nm以上で50nm以下とする、ことを特徴としている。
【0008】
本発明の化合物半導体素子(7)では、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の製造方法に依り形成された、p形リン化硼素半導体層を備えた、ことを特徴としている。
また、本発明の化合物半導体素子(8)では、上記p形リン化硼素半導体層の室温での抵抗率が、5×10−2オーム・センチメートル[Ω・cm]以下である、ことを特徴としている。
また、本発明の化合物半導体素子(9)では、上記p形リン化硼素半導体層の室温での抵抗率が、1×10−2オーム・センチメートル[Ω・cm]以下である、ことを特徴としている。
また、本発明の化合物半導体素子(10)では、上記化合物半導体素子(7)〜(9)のいずれかにおいて、上記p形リン化硼素半導体層とのpn接合構造を備えた、ことを特徴としている。
【0009】
本発明の発光ダイオード(11)では、ダイオードのp層側に、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の製造方法に依り形成されたp形リン化硼素半導体層が設けられ、該p形リン化硼素半導体層に、p形オーミック電極が接続されていることを特徴としている。
本発明の発光ダイオード(12)では、発光ダイオード(11)において、ダブルヘテロ接合構造を有してなることを特徴としている。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明では、p形リン化硼素層(p形リン化硼素半導体層)を、結晶基板上或いは結晶層上に形成する。すなわち、後述する単結晶等からなる結晶基板の上や、一般の基板上に形成した結晶層としての金属膜、または半導体層(半導体結晶層)等の上に堆積する。
結晶基板、または結晶層として具体的には、砒化ガリウム(化学式:GaAs)、リン化ガリウム(化学式:GaP)、窒化ガリウム(化学式:GaN)等のIII −V族化合物半導単結晶、サファイア(α−Al2O3単結晶)等の酸化物単結晶、珪素(Si)単結晶(シリコン)及び立方晶または六方晶の炭化珪素(化学式:SiC)等のIV族半導体単結晶等が挙げられる。また、これら材料からなる結晶層、例えば、窒化アルミニウム・ガリウム・インジウム(Alx Gay Inz N:0≦X,Y,Z≦1、X+Y+Z=1)結晶層を挙げることもできる。
【0011】
本発明のp形リン化硼素半導体層の製造方法の特徴は、p形リン化硼素半導体層を、上記の結晶基板上或いは結晶層上に従来技術の如く直接堆積せず、非晶質層を介在させて気相成長させることにある。形成する非晶質層としては、高温での気相成長に起因する表面状態の悪化を避け、且つ高抵抗化を回避するため、硼素とリンとを含む層で構成する。特に、硼素をリンに対し化学量論的に富裕に含む非晶質層とする。これにより、後述するように表面状態に優れ、かつ低抵抗となるp形リン化硼素半導体層を形成するのが可能になる。
【0012】
このような、硼素をリンに対し化学量論的に富裕に含む非晶質層は、温度を750℃以上で1200℃以下、好ましくは850℃以上で1150℃以下とし、且つ、硼素原料(第III 族原料)に対するリン原料(第V族原料)の気相成長領域に供給する濃度の比率(V/III 比率)、すなわち結晶層を気相成長させる領域(気相成長領域)に供給する硼素原子の濃度に対するリン原子濃度の比率を5以上で50以下に設定し、気相成長法で形成することにより、効率的に得られる。なお、ここでの気相成長温度を第1の温度とし、ここで設定し供給した原料の濃度の比率を第1の比率とする。
上記の範囲より高いV/III 比率では、多結晶層が形成され易くなり好ましくない。
また、唯一の硼素原子を含む硼素原料、及び唯一のリン原子を含むリン原料を使用する場合、V/III 比率は、単位時間あたりに気相成長領域に供給される双方の原料の流量の比率で与えられる。
【0013】
形成する非晶質層の厚さについては、2nm以上で50nm以下であるのが好ましい。2nm未満の極薄膜では、非晶質層を設けようとする結晶基板或いは結晶層の表面を充分均等に被覆するに至らず、連続なp形リン化硼素半導体層を得るのに不都合を来すおそれがあるからである。一方、層厚が50nmを超えると、多結晶層になり易くなってしまい、非晶質層が得られ難くなるからである。
【0014】
このような非晶質層の層厚については、例えば、断面TEM(透過電子顕微鏡)技法で非晶質層の断面を観察することに依り、実測することができる。また、透過電子顕微鏡等を利用した電子線回折手段或いはX線回折手段に依れば、多結晶或いは非晶質を判別することができる。また、硼素とリンとを含む非晶質層における、硼素とリンとの化学量論的な組成については、例えば、一般的な2次イオン質量分析法(英略称:SIMS)やオージェ(Auger)電子分光法(英略称:AES)等に依る元素分析に依る定量結果から知ることができる。
【0015】
この非晶質層に接合させて形成するp形リン化硼素半導体層は、上記の第1の温度以下でかつ750℃以上の温度である第2の温度で気相成長させる。具体的には、{111}−珪素(Si)単結晶基板の表面に、1050℃で非晶質層を気相成長させた後、この非晶質層上に850℃でp形リン化硼素半導体層を気相成長させるといった方法を好適な例として挙げることができる。
非晶質層を第1の温度で形成した後、この非晶質層上にp形リン化硼素半導体層を気相成長させるに際し、第1の温度を超える温度でp形リン化硼素半導体層を気相成長させると、この高温でのp形リン化硼素半導体層の気相成長時に非晶質層からの硼素及びリンの不均衡な揮散が起こり、非晶質層が硼素富裕で無くなる場合があるため好ましく無い。
また、このp形リン化硼素半導体層の形成に際しては、V/III 比率、すなわち硼素原料に対するリン原料の気相成長領域に供給する濃度の比率を第1の比率より大きくして成長させる。第1の比率と同じ比率でp形リン化硼素半導体層を形成しようとすると、単結晶のp形リン化硼素半導体層を得るに至らないからである。第2の比率として好適な範囲は、1×103 以上であり、1×104 以下である。
【0016】
上記の如く、好ましい第1の温度及び第1のV/III 比率で気相成長させて得られた非晶質層上には、アンドープ状態でも室温での抵抗率(=比抵抗)が5×10−2Ω・cm以下である低抵抗のp形リン化硼素半導体層を得ることができる。
更に、本発明では、p形リン化硼素半導体層の気相成長時に、硼素及びリン原料に併せて珪素(Si)を不純物として添加することに依り、安定してp形のリン化硼素層を気相成長させるようにしている。このように珪素を添加することに依り、室温での抵抗率にして1×10−2Ω・cm以下の低い抵抗率のp形リン化硼素半導体層を気相成長させることができる。
【0017】
珪素のドーピング源としては、シラン(分子式:SiH4 )やジシラン(分子式:Si2 H6 )を使用できる。ドーピングする珪素の濃度については、p形リン化硼素半導体層内の珪素原子の濃度が1×1019cm−3以上で1×1020cm−3以下の範囲となるようにするのが最も好ましい。p形リン化硼素半導体層の内部の珪素原子の濃度は一般的な2次イオン質量分析法(SIMS)、オージェ電子分光法(AES)等に依り定量することができる。珪素(Si)と併せて、元素周期律表の第II族に属するベリリウム(元素記号:Be)を添加しても、p形リン化硼素半導体層を得ることができる。しかし、珪素と同時にドーピングする第II族元素として、マグネシウム(元素記号:Mg)等の硼素と化合して揮発性の硼素化合物をもたらす元素については、使用するのは好ましくない。
【0018】
本発明に依って形成されるp形リン化硼素半導体層は低抵抗であり、且つ表面状態に優れるため、種々の化合物半導体素子を構成するためのp形導電層として有効に利用することができる。
また、このp形リン化硼素半導体層は、積層欠陥或いは双晶を含むものの、ミスフィット転位は殆ど存在しないため、例えば、耐圧特性に優れるpn接合構造の構成層として利用することができる。そして、このpn接合構造を利用すれば、整流性に優れる化合物半導体発光ダイオード(LED)や電流狭窄型のレーザダイオード(LD)を構成することができる。
また、本発明に係わるp形リン化硼素半導体層は、ミスフィット転位の密度が低いため、漏洩電流の少ないpn接合型太陽電池を構成するのに有効なものとなる。
【0019】
(作用)
リンに対し、硼素を化学量論的に富裕として含むように非晶質層を形成するので、これを介在させてより高温で気相成長させ、p形リン化硼素半導体層を形成することにより、この非晶質層が、得られるp形リン化硼素半導体層の表面状態の悪化を抑止し、且つ高抵抗となるのを回避して、低抵抗のp形リン化硼素半導体層となるように作用する。
【0020】
また、硼素とリンとを含む非晶質層上に、p形リン化硼素半導体層を気相成長させるに際し、硼素とリンの原料と共に珪素を添加するので、この珪素によって得られるp形リン化硼素半導体層が抵抗率の安定した低抵抗のものとなる。
【0021】
【実施例】
(第1実施例)
MOCVD法に依り、サファイア基板上にp形リン化硼素半導体層を気相成長させる場合を例にして、本発明の内容を具体的に説明する。図1に、本実施例に記載の積層構造体10の断面模式図を示す。
【0022】
積層構造体10を構成する基板101には、{0.0.0.1.}−結晶面を表面とするサファイア単結晶を用いた。この基板101の(0.0.0.1.)表面上に、トリエチル硼素((C2 H5 )3 B)/ホスフィン(PH3 )原料系を用いた常圧MOCVD法に依り、1025℃で非晶質層102を成長させた。硼素とリンとを含む非晶質層102は、V/III 比率(=PH3 /(C2 H5 )3 B)を16として成長させた。非晶質層102の層厚は20nmとした。一般的なSIMSに依る元素分析では、リンイオン(15P+)の強度に対する硼素イオン(5B+)の強度比は約1.01と見積もられた。即ち、リンの原子濃度に対して硼素原子の濃度は1%上回っているものと判断された。
【0023】
次に、非晶質層102上に、(C2 H5 )3 B/PH3 /H2 原料系を用いた常圧MOCVD法により、アンドープのリン化硼素結晶層(p形リン化硼素半導体層)103を850℃で堆積した。その層厚は350nmとした。得られたp形リン化硼素半導体層103は、一般的なホール(Hall)効果測定に依れば、キャリア濃度が2×1019cm−3であり、抵抗率が2×10−2Ω・cmであるp形層であった。また、p形リン化硼素半導体層103は連続膜であり、その表面は平坦であった。
【0024】
非晶質層102及びp形リン化硼素半導体層103の内部の結晶学的構造を断面TEM技法に依り調査した。制限視野電子線回折法から、(0.0.0.1.)−サファイア基板101の表面上に設けた硼素を富裕とする非晶質層からは、ハロー(halo)な回折パターンのみが得られた。
p形リン化硼素半導体層103は、単結晶層であった。また、高分解能明視野コントラスト像は、サファイア基板101上の非晶質層102及びp形リン化硼素半導体層103の内部には、積層欠陥(stacking fault)或いは双晶(twinning)が存在するものの、ミスフィット転位の存在は殆ど認められなかった。
【0025】
(第2実施例)
珪素をドーピングしつつ気相成長させた低抵抗のp形リン化硼素半導体層を利用して、化合物半導体LEDを構成する場合を例に、本発明の内容を具体的に説明する。図2に、本実施例に記載のLED11の断面模式図を示す。なお、図1に記載した要素と同一の構成要素については、同一の符号を付して図2に示す。
【0026】
まず、(0.0.0.1.)−サファイア基板101上に、(CH3 )3 Ga/NH3 /H2 原料系を用いた常圧MOCVD法により、1050℃でn形の窒化ガリウム層からなる下部クラッド層104を堆積した。キャリア濃度は3×1018cm−3とし、層厚は2.8×10−4cmとした。
次に、n形下部クラッド層104上に、(CH3 )3 Ga/トリメチルインジウム(分子式:(CH3 )3 In)/NH3 /H2 原料系を用いた常圧MOCVD法に依り、Ga0.90In0.10Nからなる発光層105を850℃で気相成長させた。その層厚は80nmとし、キャリア濃度は約3×1018cm−3とした。
次いで、発光層105上に、上記の(CH3 )3 Ga/NH3 /H2 原料系を用いた常圧MOCVD法でp形GaNからなる上部クラッド層106を1025℃で気相成長させた。p形上部クラッド層106の層厚は100nmとした。p形上部クラッド層106をなすGaN層のキャリア濃度は約4×1017cm−3とした。
【0027】
p形上部クラッド層106の気相成長を終了した後、サファイア基板101の温度を低下させて本発明における第1の温度を1025℃に設定した。
次に、(C2 H5 )3 B/PH3 /H2 原料系を用いた常圧MOCVD法に依り、硼素とリンとを含むを非晶質層102を堆積した。本発明における第1の比率としてのV/III 比率(=PH3 /(C2 H5 )3 B)は8に設定した。アンドープの非晶質層の層厚は10nmとした。
【0028】
非晶質層102の気相成長を終了した後、気相成長領域への硼素原料((C2H5 )3 B)の供給を停止し、一方でPH3 の流通(供給)を継続しつつ、サファイア基板101の温度を低下させて本発明における第2の温度を850℃に設定した。
次に、(C2 H5 )3 B/PH3 /H2 原料系を用いた常圧MOCVD法に依り、珪素(Si)をドーピングしたp形リン化硼素結晶層103を気相成長させた。珪素のドーピング源にはジシラン(Si2 H6 :10体積百万分率(Vol.ppm))−水素(H2 )混合ガスを使用した。
【0029】
珪素は、p形リン化硼素結晶層103の内部の珪素原子濃度が約1×1019原子/cm3 となるように添加した。成長時のV/III 比率、すなわち本発明における第2の比率は1250とした。得られたp形リン化硼素結晶層103のキャリア濃度は1×1019cm−3であり、層厚は100nmであった。また、室温での抵抗率は5×10−3Ω・cmであった。p形リン化硼素半導体層103は、非晶質層102を下地層として成長させたため、亀裂(crack)の無い、表面の平坦な連続層となった。
p形リン化硼素結晶層103の気相成長を、硼素原料の気相成長領域への供給を停止して終えた。ただし、その後にも、サファイア基板101の温度が約600℃に低下する迄、PH3 を継続して流通させた。その後、PH3 の流通をも停止して室温近傍の温度に自然に降温した。
【0030】
冷却後、特にp形上部クラッド層106、非晶質層102、及び珪素ドープp形リン化硼素結晶層103の結晶学的構造を断面TEM技法に依り調査した。制限視野電子線回折技法から、p形上部クラッド層106は(0.0.0.1.)−GaN層から、またp形リン化硼素結晶層103は{111}−結晶層から構成されているのが判明した。また、高分解能明視野コントラスト像から、上部クラッド層106の内部には、主にサファイア基板101と下部クラッド層104との接合界面近傍から伝搬した約1×1010cm−2と多量のミスフィット転位が存在しているのが認められた。しかし、これらの転位の殆どは、非晶質層102との接合界面で阻止されており、非晶質層102及びリン化硼素層103の内部への侵入を阻止されていた。このため、非晶質層102及び珪素ドープp形リン化硼素半導体層103には転位は殆ど認められなかった。一方で、珪素ドープp形リン化硼素半導体層103の内部には、{111}−結晶方位に沿った積層欠陥或いは双晶が存在した。これらの積層欠陥または双晶が転位を吸収する作用を発揮して、上部クラッド層106の{0001}−GaN層からの転位の伝搬が抑止されたと判断された。
【0031】
n形オーミック電極107を形成する予定の領域に在るp形リン化硼素結晶層103、非晶質層102、上部クラッド層106、及びn形発光層105を選択パターニング技術及びプラズマエッチング技術を利用して除去した。これにより、n形下部クラッド層104の表面を露出させた。
次に、露出させたn形GaN層の表面に、金・ゲルマニウム合金(Au93重量%・Ge7重量%)からなるn形オーミック電極107を配置した。一方、残置させたp形リン化硼素結晶層103の略中央の表面に、金・ベリリウム合金(Au99重量%・Be1重量%)からなるp形オーミック電極108を設けた。そして、これによりpn接合型DH構造(ダブルヘテロ構造)のLEDl1を構成した。
【0032】
n形及びp形オーミック電極107、108間に順方向へ20ミリアンペア(mA)の動作電流を通流して、一辺が約3.5×10−2cmの正方形に裁断したLEDチップ11の発光特性を確認した。以下に得られた発光特性を纏める。
(1)発光色:青紫
(2)発光中心波長:約435(nm)
(3)輝度(チップ状態):約8(mcd)
(4)順方向電圧:約3.7(V)(但し、順方向電流を20mAとした場合)
(5)逆方向電圧:11V(但し、逆方向電流を10μAとした場合)
【0033】
p形オーミック電極108を、抵抗率が低く且つ低転位密度のp形リン化硼素半導体層103に接触させて設けたため、入力抵抗が低く、且つ下方のp形上部クラッド層106及び発光層105への短絡的な動作電流の流通が回避され、動作電流をp形上部クラッド層105を介して、発光層105の広範囲に拡散できた。このため、LED11の近視野発光像は、発光層105の略全面から発光がもたらされているのを示した。
【0034】
【発明の効果】
本発明に依れば、第1の温度で第1の比率をもって気相成長させた硼素とリンとを含む非晶質層を介して、第1の温度以下の第2の温度に於いて、第1の比率以上の第2の比率でp形リン化硼素半導体層を気相成長させるようにしたので、表面状態に優れ、連続性のある抵抗率の小さなp形リン化硼素半導体層を形成するといった優れた効果を奏する。
【0035】
また、本発明に依れば、非晶質層上にp形リン化硼素半導体層を気相成長させるに際し、硼素及びリン源に併せて珪素をドーピングすることとしたので、室温での抵抗率を1×10−2Ω・cm以下とする低抵抗のp形リン化硼素半導体層を、安定して形成することができるといった優れた効果を奏する。
【0036】
また、本発明の化合物半導体素子に依れば、上記の製造方法で得られた低抵抗のp形リン化硼素半導体層を利用していることにより、例えば耐圧特性に優れるpn接合構造の構成層として利用することができるなど、産業上極めて有効なものとなる。
また、本発明の発光ダイオードに依れば、上記の製造方法で得られた低抵抗のp形リン化硼素半導体層を利用し、これにp形オーミック電極を接続しているので、入力抵抗が低い良好なものとなり、したがって産業上極めて有効なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る積層構造体の断面模式図である。
【図2】 本発明に係るLEDの断面模式図である。
【符号の説明】
10 積層構造体、11 LED、101 結晶基板、102 非晶質層
103 p形リン化硼素半導体層、104 下部クラッド層、105 発光層
106 上部クラッド層、107 n形オーミック電極、
108 p形オーミック電極
Claims (12)
- 結晶基板上或いは結晶層上に、p形の伝導を呈するリン化硼素半導体層を、硼素を含む化合物とリンを含む化合物を原料として気相成長法で形成するp形リン化硼素半導体層の製造方法に於いて、
結晶基板上或いは結晶層上に、750℃以上で1200℃以下の第1の温度にて、硼素原料に対するリン原料の気相成長領域に供給する濃度の比率を第1の比率として、硼素をリンに対し富裕に含む非晶質層を気相成長法で形成し、
その後、非晶質層上に、750℃以上で第1の温度以下の第2の温度にて、第1の比率より大きな第2の比率で、p形のリン化硼素半導体層を形成する、ことを特徴とするp形リン化硼素半導体層の製造方法。 - 非晶質層上にp形のリン化硼素半導体層を形成する際に、珪素を添加しつつ気相成長を行う、ことを特徴とする請求項1記載のp形リン化硼素半導体層の製造方法。
- 得られるp形のリン化硼素半導体層中の珪素原子の濃度が、1×1019cm−3以上で1×1020cm−3以下の範囲となるように、非晶質層上にp形のリン化硼素半導体層を気相成長形成させる、ことを特徴とする請求項2記載のp形リン化硼素半導体層の製造方法。
- 上記第1の比率を、5以上で50以下とする、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のp形リン化硼素半導体層の製造方法。
- 上記第2の比率を、1×103 以上で1×104 以下とする、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のp形リン化硼素半導体層の製造方法。
- 上記非晶質層の厚さを2nm以上で50nm以下とする、ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のp形リン化硼素半導体層の製造方法。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法に依り形成された、p形リン化硼素半導体層を備えた、ことを特徴とする化合物半導体素子。
- 上記p形リン化硼素半導体層の室温での抵抗率が、5×10−2オーム・センチメートル以下である、ことを特徴とする請求項7記載の化合物半導体素子。
- 上記p形リン化硼素半導体層の室温での抵抗率が、1×10−2オーム・センチメートル以下である、ことを特徴とする請求項7記載の化合物半導体素子。
- 上記p形リン化硼素半導体層とのpn接合構造を備えた、ことを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の化合物半導体素子。
- ダイオードのp層側に、請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法に依り形成されたp形リン化硼素半導体層が設けられ、該p形リン化硼素半導体層に、p形オーミック電極が接続されていることを特徴とする発光ダイオード。
- ダブルヘテロ接合構造を有してなることを特徴とする請求項11記載の発光ダイオード。
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