JP3633866B2 - ばね用鋼線、ばね及びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、主に家庭電化製品や自動車部品に用いられる耐疲労性に優れた圧縮、引張コイルばね、ならびに線ばねなどに使用される焼戻しマルテンサイト組織を有するばね用鋼線およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車エンジンの排気系に用いられるばね部品素材として、Si−Cr鋼を主体とする高強度オイルテンパー線が用いられてきた。近年、地球環境問題の高まりに対応した、エンジンの低燃費化、高効率化への要望に応えるため、動弁系機構や縣架ばねユニットの省重量化、省スペース化が行われている。その結果として、ばねの小型化、即ちばね用鋼線の高強度化が進む傾向にある。オイルテンパー線は耐疲労性も高く、ばね用鋼線として優秀なものであるが、更に耐疲労性や耐腐食疲労性を高める必要がある。
【0003】
そこで、耐疲労性を向上させる方法として、例えば特開平5−320826号や特開平5−331597号公報のように、V,Nb,Wなどの炭化物生成元素を添加させることで、焼入れ加熱時の炭化物析出による結晶粒粗大化抑制が行われている。しかしながら、これらの炭化物は旧オーステナイト結晶粒の結晶粒界に析出し、焼戻し時にマルテンサイト結晶粒内に析出する炭化物量を減少させ、結晶の強度を低下させるため、当初期待するほどの効果は得られない。また、結晶粒界に存在することで、耐腐食疲労性に悪影響を及ぼす。
【0004】
同様に特公平9−6981号公報において、添加V量と焼入れ条件を特定することで、結晶粒度(JIS)を10以上(結晶粒径は平均で12μm)とすることで、耐疲労性を向上させるとあるが、結晶粒径を小さくするだけで、飛躍的な強度と靭性の向上は期待できない。なお、「結晶粒径(n)」は1mm内にb個の結晶粒(本発明の場合には旧オーステナイト粒)が存在するという下式の規定により、「結晶粒径(d=単位μm)」とは下記の関係が成り立つ。
【0005】
【数1】
Figure 0003633866
【0006】
さらに、特開平9−71843号公報では、金属組織中の残留オーステナイト相の体積率を低減し、焼入れ時の未固溶炭化物の組織内密度を均一に低減させることで、靭性低下抑制効果を実現しているが、材料そのものの母相を強化するものではなく、耐疲労性向上効果は少ない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の技術は、いずれも結晶粒微細化や組織に散在する残留オーステナイト相や未固溶炭化物の低減を行うことで目的とする耐疲労性向上を図ったものであり、母相マルテンサイトの結晶粒の強化を積極的に図ったものではない。
【0008】
従って、本発明の主目的は、母相マルテンサイトの結晶粒強化を行うことによって高い耐疲労性、耐腐食疲労性を得ることができるばね用鋼線とその製造方法ならびにばねを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、マルテンサイト結晶内の炭化物形状を所定の針状に特定することで上記の目的を達成する。
【0010】
すなわち、本発明ばね用鋼線は、化学成分として、質量%でC:0.4〜1.0、Si:0.1〜2.5、Mn:0.2〜1.2、Cr:0.5〜1.2を含有し、残部がFe及び不可避不純物からなる成分を持ち、主に焼入れ焼戻しを行って得られる焼戻しマルテンサイト組織を有し、マルテンサイト結晶内の炭化物形状が平均アスペクト比で3.0以上であることを特徴とする。
【0011】
ここで、マルテンサイト結晶内の炭化物の長径が0.1μm以上であることが好ましい。
【0012】
さらに化学成分として、質量%でMo:0.05〜0.50、V:0.05〜0.50、W:0.05〜0.15、Nb:0.05〜0.15、Ti:0.01〜0.20のうち1種以上を含有することが好適である。その他の化学成分として、質量%で、Ni:0.02〜1.00、Co:0.02〜1.00、Cu:0.02〜1.00を含有することも望ましい。
【0013】
また、鋼線横断面の焼入れ後におけるオーステナイト結晶粒(旧オーステナイト結晶粒)の平均結晶粒径が1.0〜18.0μmとすることが好ましい。さらに好ましい平均結晶粒径の範囲は1.0〜7.0μmである。この結晶粒径は、焼入れ後の粒径であるが、焼戻し後もほぼ同じ粒径のまま残る。
【0014】
鋼線の引張強さは、1300MPa以上2800MPa以下であることが好適である。
【0015】
さらに、本発明のばねは、上記の鋼線を用いて作製されたことを特徴とする。
【0016】
一方、本発明ばね用鋼線の製造方法は、焼入れ時および焼戻し時の加熱を昇温速度50〜2000℃/s(℃/秒)で行い、保持時間を0.5〜30s(秒)で行うことを特徴とする。
【0017】
マルテンサイト中に焼戻し時析出する結晶粒内炭化物は、非常に硬いため、結晶粒を強化するのに有効である。しかし、これが球状あるいは粒状であるとき、圧縮応力あるいは引張応力またはせん断応力が繰り返しかかると、その弾性限やヤング率の違いから炭化物/母相の境界にクラックを生じ、破壊の原因となる。また、疲労によって生じたすべり帯が容易に結晶粒内に発生し、結果としてすべり帯の集中が起きやすく、疲労破壊の起点となり易い。
【0018】
そこで本発明では、結晶粒内の炭化物を前述のように、マルテンサイトラス内に針状に析出させることで、炭化物は強化繊維の役割を果たし、その結晶粒を非常に強固で靭性を持ったものとし、耐疲労性の向上を図った。
【0019】
以下に本発明における構成元素の選定および成分範囲を限定する理由並びに製造条件の特定理由を述べる。
【0020】
(C:0.4〜1.0質量%)
Cは鋼の機械的特性を決定する重要な元素であるが、0.4%未満では十分な強度が得られず、逆に1.0%を越えると靭性が低下し、更に鋼線の疵感受性が高くなり信頼性が低下するため、C含有量を0.4〜1.0%とした。
【0021】
(Si:0.1〜2.5質量%)
Siは溶解精錬時の脱酸剤として使用される。またフェライト中に固溶し、強化する効果も合わせ持つ。但し、過度の添加は靭性の欠如を招き、熱間加工性の低下や熱処理による脱炭の助長、そして、ばね加工時の折損の原因となり易いため、脱酸効果を持たせるために0.1%以上、靭性欠如を防止するために2.5%以下とした。
【0022】
(Mn:0.2〜1.2質量%)
MnもSi同様、溶解精錬時の脱酸剤として使用され、鋼の焼入性を向上させ、鋼中のSを固定してその害を阻止する。但しMnは線材の中心偏析を生じ易くする元素でもあり、熱間圧延後のパテンティング処理時に中心偏析箇所にマルテンサイトを生じ、著しく線引き加工時の断線率を増加させる。そこで脱酸作用を持つ下限として0.2%以上、靭性劣化を招かない範囲として上限を1.2%とした。
【0023】
(Cr:0.5〜1.2質量%)
CrはMn同様に鋼の焼入性を向上させ、かつ熱間圧延後のパテンティング処理により靭性を付与し、焼入れ後、焼戻し時の軟化抵抗を高め、高強度化に有効な元素である。0.5%未満ではその効果が少なく、逆に、1.2%を越えると炭化物の固溶を抑制し、強度の低下を招くとともに、焼入性の過度の増加となって靭性の低下をもたらすためである。
【0024】
(Mo:0.05〜0.50質量%)
Moは焼戻し時に炭化物を形成し、軟化抵抗を増大させる元素であるが、0.05%未満ではその効果が少なく、0.50%を越えると伸線加工性を低下させるため、含有量をMo:0.05〜0.50%とした。
【0025】
(W,Nb:0.05〜0.15質量%、V:0.05〜0.50質量%)
W,Nb,Vも焼戻し時に鋼中に炭化物を形成し、軟化抵抗を増大させる効果がある。但し、いずれも0.05%未満ではその効果を発揮し得ない。逆に、Vでは0.50%、W,Nbでは0.15%を越えるといずれも焼入れ加熱時に炭化物を多く形成し、靭性の低下を招くため、含有量をそれぞれV:0.05〜0.50%、W:0.05〜0.15%、Nb:0.05〜0.15%と定めた。
【0026】
(Ti:0.01〜0.20質量%)
Tiも焼戻し時に鋼中に炭化物を形成し、軟化抵抗を増大させる効果がある。但しTiは高融点非金属介在物であるTiOを生成する。故に精錬時の条件設定などが重要である。軟化抵抗向上効果が期待できる量として0.01%以上、炭化物、介在物の過度の増加による靭性劣化を考慮して0.20%以下とした。
【0027】(Ni,Co,Cu:0.02〜1.00質量%)
Ni,Co,Cuはオーステナイト生成元素であり、Ni,Co,Cu添加によってMs点を大きく低下させ、残留オーステナイトを生じ易くする材料である。残留オーステナイトの増加は、鋼線の硬度を低下させる作用を持つが、逆にSiによる固溶強化やMo,W,Nb,V,Tiといった炭化物析出元素で強化された鋼線に靭性を持たせる効果を持つ。またNiは塩水腐食環境において、Cl元素の侵入を阻止する役割も持つ。靭性向上効果を持つ最低限度として0.02%、硬度低下を招かない上限として1.00%とした。
【0028】
(アスペクト比:3以上、炭化物の長径:0.1μm以上)
アスペクト比が3以上である細長い針状の炭化物を形成することで、炭化物は強化繊維の役割を果たし、非常に強固で靭性を持った材料とできるからである。また、炭化物の長径が0.1μm以上のものであれば、強化繊維の役割を効果的に果たしやすいからである。
【0029】
(旧オーステナイト結晶粒径:1.0〜18.0μm)
上記の粒内炭化物を有する鋼線は、旧オーステナイト結晶粒径が1.0〜18.0μmであるとき、さらに耐疲労性に優れる。これは結晶粒の強化を行い、金属組織を微細化することで高強度と高靭性を両立させた材料がはじめて得られることに起因する。結晶粒径は18.0μm以下としたとき微細化効果が現れるが、更に7.0μm以下とするとき、その微細化による強化の効果は著しい。但し、結晶粒径1.0μm未満の時、熱処理による未固溶炭化物の除去が非常に困難となるため、下限を1.0μm以下とした。18.0μmを越える場合は、疲労限が低く、かつ靭性も低下しやすいという問題がある。
【0030】
(引張強さ:1300MPa以上2800MPa以下)
引張り強さは、1300MPa以上2800MPa以下であるとき、ばね用鋼線として特に優れた性能を発揮する。この値は、ばねとしてコイリングするときに最低限必要な引張り強さとして1300MPa以上、コイリング時に折損しない靭性を持たせるために2800MPa以下とした。
【0031】
(製造条件)
前述した針状粒内炭化物を持つ本発明鋼線を得るには、極めて短時間の焼入れ・焼戻し加熱が有効で、中でも短時間の焼戻し加熱が有効である。長時間の加熱は粒内炭化物の球状化、粗大化を引き起こす。また、この製造条件は、所定の旧オーステナイト結晶粒径を実現するためにも必要である。そこで、鋼線のサイズにもよるが、焼入れおよび焼戻し時の昇温速度を50〜2000℃/sとし、保持時間を0.5〜30sとしたとき、粒内炭化物を効果的に針状化、微細化することができる。焼入れの好ましい加熱温度は800〜1150℃程度、焼戻しの好ましい加熱温度は250〜550℃程度である。さらに、焼入れ時の昇温速度を50〜2000℃/sとすることで、酸化スケールを低減することができ、それに伴って高い疲労強度を得ることができる。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
(試験例1) 表1に示す実施例であるサンプルA,B,C,D,E,F,L,M,N,O,P,Q,Rと、比較例であるサンプルG,H,I,J,Kについて鋼を真空溶解炉にて溶製し、熱間鍛造、熱間圧延により直径6.5mmの線材を作製した。 この線材を熱処理、皮剥、冷間伸線により直径4.0mmに加工した。さらにこれらに焼入れ加熱温度を1000℃として焼入れ、450℃で焼戻し処理を施してオイルテンパー線を得た。 表1に得られた試料の化学成分、粒内炭化物平均アスペクト比、旧γ粒結晶粒径および室温での引張り強さを示す。
【0033】
アスペクト比は、前記の試料から電解研磨で薄膜を作り、更にエッチングを行ってTEM(Transmission Electron Microscope)で観察し、TEM写真からマルテンサイト結晶粒内に析出した粒内炭化物のアスペクト比を実際に測定した。アスペクト比は粒内炭化物の長径/短径で求める。参考までに、本発明実施例であるサンプルAのTEM観察写真を図1に、比較例であるサンプルGのTEM観察写真を図2に示す。
【0034】
図1、2中の黒く見える個所が炭化物を示している。図1、2からわかるように、サンプルAのマルテンサイト結晶粒内炭化物の長径は平均で0.1μm以上あった。これに対して、サンプルGのマルテンサイト結晶粒内炭化物は平均で0.1μm未満であり、形状もほぼ球状であった。なお、他の実施例であるサンプルB〜Fも同様にマルテンサイト結晶粒内炭化物の長径は平均で0.1μm以上であり、他の比較例H〜Kのマルテンサイト結晶粒内炭化物も平均で0.1μm未満であり、形状もほぼ球状であった。
【0035】
実施例と比較例では、マルテンサイト結晶粒内に析出した粒内炭化物の平均アスペクト比が異なる。実施例では平均5.0〜7.0としたのに対し、比較例では1.0〜4.0としている。アスペクト比を変える方法としては、焼き入れおよび焼戻し加熱の昇温速度と保持時間とを制御することが挙げられる。保持時間とは、焼入れ又は焼戻しの加熱を開始してから冷却を開始するまでの時間である。
【0036】
実施例は、焼戻し加熱を、加熱温度450℃、昇温速度1000℃/s、保持時間を1.0sとした。これに対し、比較例では、焼戻し加熱を、加熱温度450℃、昇温速度30℃/s、保持時間を40sで行った。
【0037】
また、結晶粒微細化の影響を調べるため、鋼線横断面における旧オーステナイト平均結晶粒径が3μm程度のもの(サンプルE)、5μm程度のもの(サンプルD,F,J)、10μm程度のもの(サンプルA,B,C,G,H,I,L〜R)並びに20μm程度のもの(サンプルK)の4種類を得た。各種類ごとの焼入れ時の加熱温度、昇温速度および保持時間は次のとおりである。
Figure 0003633866
【0038】
得られた線材について酸化スケールの量を調べてみた。その結果、いずれの実施例も酸化スケール量が10g/m以下と少なくなっていることがわかった。また、いずれのサンプルも室温での引張り強さは2000MPa程度であり、ほぼ同一の強度の材料を得た。そこで、ばね加工後のひずみ取りテンパーを想定して、400℃×30分のテンパーを行った。
【0039】
いずれの試料も、光学顕微鏡観察やSEM(Scanning Electron Microscope)で観察の結果、線表面の脱炭、酸化皮膜、金属組織内の未固溶炭化物は存在しないことを確認して評価に移った。
【0040】
【表1】
Figure 0003633866
【0041】
次に、以上のサンプルを中村式回転曲げ疲労試験機にかけた結果を表2に示す。試験はひずみ一定で試料に応力をかけ、繰り返し回数1×10回で折損のなかった振幅応力をとった(n数=8)。
【0042】
【表2】
Figure 0003633866
【0043】
いずれの実施例も比較例に比べて疲れ強さが向上することがわかった。特に、C、Si、Mn、Cr、V以外の化学成分の含有に伴う疲れ強さについて考察して見ると、サンプルC,F,IおよびM〜Rの比較から明らかなように、Mo,V,W,Nb,Tiといった炭化物生成元素添加により析出強化が行われ、Ni,Co,Cuといったオーステナイト生成元素添加により靭性向上が図られていることがわかる。
【0044】
(試験例2)
次に、サンプルA,C,G,Iを用いて腐食疲労試験を行った。図3は腐食疲労試験の概略説明図である。この図に示すように、まず塩水噴霧を行い、続いて回転曲げ疲労試験を行って、さらに恒温恒湿槽放置を行う。これら一連の試験を1日当たり1サイクル行い、折損するまで繰り返した。いずれも試験前にばね加工後のひずみ取りテンパーを想定して、400℃×30分のテンパー処理を行っている。
【0045】
【表3】
Figure 0003633866
【0046】
表3からわかるように、粒内析出炭化物形状を制御することで、耐腐食疲労性も大きく向上することが確認できた。さらにNiのような耐腐食疲労性向上に寄与するといわれる元素を添加するとき、粒内析出炭化物形状を制御することで、相乗効果を持つことが確認できる。これは金属組織内の炭化物が球状化粗大化させないことで、粒界への余分な炭化物析出を制御した結果、高い耐腐食性を示したものと考えられる。
【0047】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のばね用鋼線およびばねは、母相マルテンサイトの結晶粒強化を粒内析出炭化物の形状制御を行うことによって高い耐疲労性、耐腐食疲労性を得ることが可能である。更にMo,V,W,Nb,Tiといった炭化物生成元素添加による析出強化を行い、Ni,Co,Cuといったオーステナイト生成元素添加による靭性向上や耐食性向上を行うことで、従来鋼線では得られない高い靭性と耐食性を得ることができる。本発明の鋼線を用いることで、弁ばね、縣架ばねなどに要求される高疲労強度ばね、もしくは耐腐食疲労ばねを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例であるサンプルAのTEM写真である。
【図2】比較例であるサンプルGのTEM写真である。
【図3】腐食試験方法の概略説明図である。

Claims (13)

  1. 化学成分として、質量%でC:0.4〜1.0、Si:0.1〜2.5、Mn:0.2〜1.2、Cr:0.5〜1.2を含有し、残部がFe及び不可避不純物からなる成分を持ち、
    主に焼入れ焼戻しを行って得られる焼戻しマルテンサイト組織を有し、
    この焼戻しを昇温速度 50 2000 /s 、保持時間を 0.5 1.0s での加熱とし、
    前記マルテンサイト結晶内の炭化物形状が平均アスペクト比で3.0以上であることを特徴とするばね用鋼線。
  2. 前記焼入れを昇温速度 50 2000 /s 、保持時間を 0.5 30s での加熱としたことを特徴とする請求項1に記載のばね用鋼線。
  3. 化学成分として、質量%でC:0.4〜1.0、Si:0.1〜2.5、Mn:0.2〜1.2、Cr:0.5〜1.2、Co 0.02 1.00を含有し、残部がFe及び不可避不純物からなる成分を持ち、
    主に焼入れ焼戻しを行って得られる焼戻しマルテンサイト組織を有し、
    このマルテンサイト結晶内の炭化物形状が平均アスペクト比で3.0以上であることを特徴とするばね用鋼線。
  4. マルテンサイト結晶内の炭化物の長径が0.1μm以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のばね用鋼線。
  5. さらに化学成分として、質量%でMo:0.05〜0.50、V:0.05〜0.50、W:0.05〜0.15、Nb:0.05〜0.15およびTi:0.01〜0.20よりなる群から選択される1種以上を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のばね用鋼線。
  6. さらに化学成分として、質量%でNi 0.02 1.00 及び Cu 0.02 1.00 の少なくとも一方を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のばね用鋼線。
  7. 鋼線横断面の焼入れ後におけるオーステナイト結晶粒(旧オーステナイト結晶粒)の平均結晶粒径が1.0〜18.0μmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のばね用鋼線。
  8. 鋼線横断面の焼入れ後におけるオーステナイト結晶粒(旧オーステナイト結晶粒)の平均結晶粒径が1.0〜7.0μmであることを特徴とする請求項7に記載のばね用鋼線。
  9. 引張強さが1300MPa以上2800MPa以下であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のばね用鋼線。
  10. 化学成分として、質量%で C 0.4 1.0 Si 0.1 2.5 Mn 0.2 1.2 Cr 0.5 1.2 を含有し、残部が Fe 及び不可避不純物からなる成分の線材に焼入れ、焼戻しを行うばね用鋼線の製造方法であって、
    前記焼戻し時の加熱を昇温速度 50 2000 /s 、保持時間を 0.5 1.0s で行うことを特徴とするばね用鋼線の製造方法。
  11. 前記焼入れ時の加熱を昇温速度 50 2000 /s 、保持時間を 0.5 30s で行うことを特徴とする請求項 10 に記載のばね用鋼線の製造方法。
  12. さらに化学成分として、 Co 0.02 1.00 質量%を含有することを特徴とする請求項 10 または 11 に記載のばね用鋼線の製造方法。
  13. 請求項1から9のいずれかに該当する鋼線を用いて作製したことを特徴とするばね。
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