JP2002180201A - 疲労強度および延性に優れた硬引き線用鋼材および硬引き伸線材 - Google Patents
疲労強度および延性に優れた硬引き線用鋼材および硬引き伸線材Info
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Abstract
用鋼線、PC鋼線、亜鉛めっき鋼線、吊り橋用ケーブル
用鋼線の素材として有用な硬引き線用鋼材およびその伸
線材を提供する。 【解決手段】 Niを0.10〜1.5%を含有すると
共に、圧延後またはパテンティング処理後、伸線加工さ
れてそのまま使用されるものである。
Description
鋼線、亜鉛めっき鋼線、吊り橋用ケーブル用鋼線の素材
として有用な硬引き線用鋼材およびその伸線材に関する
ものであり、殊に疲労強度および延性のいずれにも優れ
た硬引き線用鋼材およびその伸線材に関するものであ
る。
れているが、こうした鋼線材にはより一層の高強度化が
指向されているのが実状である。例えば、ばね用として
用いられる鋼線材を高強度化しようとする場合には、疲
労強度向上策として、伸線加工後にオイルテンパー処理
を行なって疲労強度の向上を図っているのが一般的であ
る。また、PC鋼線や撚り線等の高強度化を図る為に、
圧延材の初析セメンタイト量を抑制することによって高
強度で且つ良好な加工性も確保する方法や(例えば、特
開平6−271937号)、パテンティング処理条件を
規定して微細パーライト組織とすることで高強度化を達
成するという方法(例えば、特許第182067号)等
が採用されている。しかしながら、これらの方法では、
多大なコストがかかると共に、作業も煩雑になるという
問題がある。
部の弁ばねには、フェライト・パーライト組織またはパ
ーライト組織の炭素鋼を伸線加工して強度を高めた線材
(「硬引き線」と呼ばれている)を、常温でばね巻き加
工したものが使用されている。この様な硬引き線は、熱
処理を必要としないので低コストになるという利点があ
る。
織またはパーライト組織を伸線した線材では、疲労特性
が低いという欠点があり、こうした線材を素材として用
いても、近年要望の高まっている様な高応力は実現でき
ない。また、こうした線材においては、高強度であると
共により高い延性も要求されるが、高強度になるにつれ
て延性も低下し易く、両特性を兼ね備えることは困難で
あった。
の下になされたものであって、その目的は、疲労強度お
よび延性のいずれにも優れ、ばね用鋼線、PC鋼線、亜
鉛めっき鋼線、吊り橋用ケーブル用鋼線の素材として有
用な硬引き線用鋼材およびその伸線材を提供することに
ある。
本発明の硬引き線用鋼材とは、Niを0.10〜1.5
%を含有すると共に、圧延後またはパテンティング処理
後、伸線加工されてそのまま使用されるものである点に
要旨を有するものである。尚、この鋼材において、「そ
のまま使用される」とは、伸線加工された後にはオース
テナイト化される様な熱処理が施されることなく使用さ
れることを意味する。
き伸線材とは、上記の様な鋼材を伸線した伸線材であっ
て、線径が1.5mm以上、引張強さが1700MPa
以上、および平均パーライトラメラ間隔が200nm以
下のものである点に要旨を有するものである。
ることのできる硬引き線用鋼材の実現を目指して様々な
角度から検討した。その結果、所定量のNiを含有させ
た鋼材では、上記目的が見事に達成されることを見出し
た。
iは伸線加工に伴う加工硬化を抑制することを見出し
た。これにより目標とする強度を達成するための伸線加
工歪を大きくすることができ、伸線後にラメラフェライ
トの幅を小さくできることが判明したのである。そし
て、ラメラフェライトの幅を小さくすることによって、
せん断疲労亀裂の発生単位が小さくなり、疲労寿命が改
善できるのである。また、フェライトの幅が小さくなる
ことによって、フェライト中への転位の集積が起こりに
くくなるので、疲労強度が向上すると共に、延性も改善
されることも分かったのである。
定量のNiを含有させることによって、上記の効果を達
成するものであるが、こうした効果を発揮させる為に
は、Niは0.10%以上含有させる必要がある。しか
しながら、Ni含有量が過剰になると、圧延においてベ
イナイト組織やマルテンサイト組織が生成し、伸線加工
性が著しく悪化すると共に、靭性や延性が却って下する
ので1.5%以下とする必要がある。
きるものであり、その用途に応じて鋼材としての基本成
分であるC,Si,Mn,CrおよびV等を調整する必
要があるが、例えばPC鋼の場合におけるこれらの化学
成分の好ましい範囲およびその理由は下記の通りであ
る。
り、その為には少なくとも0.5%以上含有させる必要
がある。C含有量は、より好ましくは0.55%以上と
するのが良いが、1.1%以上に過剰に含有なると、靭
性および延性が極端に悪くなる。
フェライト中に固溶して、焼戻し軟化抵抗を上げ、疲労
強度を向上させるために有効な元素な元素である。こう
した効果を発揮させる為には、Siは0.2%以上含有
させる必要があるが、その含有量が2.2%を超えて過
剰になると、靭性や延性が悪くなるばかりか、表面の脱
酸や疵等が増加して疲労強度が劣化する。尚、Si含有
量のより好ましい下限は0.5%程度であり、より好ま
しい上限は2.0%程度である。
性を高めて強度向上にも寄与する元素である。こうした
効果を発揮させる為には、Mnは少なくとも0.5%含
有させる必要があるが、過剰に含有させると熱間圧延時
やパテンティング処理時にベイナイト等の過冷組織が生
成し易くなり、伸線性が著しく劣化するので、1.5%
以下とすべきである。尚、Mn含有量のより好ましい下
限は0.7%であり、より好ましい上限は1.0%であ
る。
または熱処理後の強度を上昇させ、線材の強度を上昇さ
せるのに有用な元素である。こうした効果を発揮させる
ためには、Cr含有量は0.05%以上とするのが良
い。しかしながら、Cr含有量が過剰になると、パテン
ティング時間が長くなり過ぎ、また靭性や延性が劣化す
るので、1.5%以下とするのが良い。
化物を析出させるのに有用な元素である。こうした効果
を発揮させる為には、Vは0.05%以上含有させる必
要があり、好ましくは0.10%以上含有させるのが良
い。しかしながら、0.50%を超えて過剰に含有させ
ても、マルテンサイトやベイナイト組織が生成し、加工
性が悪くなる。
ける基本的な化学成分組成は上記の通りであり、残部は
実質的にFeからなるものであるが、発明の鋼材には、
必要によって0.05〜0.50%程度のMoを含有さ
せて焼入れ性を向上することも有効である。また本発明
の鋼材には、上記の各種成分以外にその特性を阻害しな
い程度の微量成分を含み得るものであり、こうした鋼線
材も本発明の範囲に含まれものである。上記微量成分と
しては不純物、特にP,S,As,Sb,Sn等の不可
避不純物が挙げられる。
て、目標とする疲労強度が達成されるのであるが、この
疲労強度は伸線加工度を上げて引張強度を上げることに
よって増大する。こうした観点から、本発明の硬引き伸
線材においては、その引張強度が1700MPa以上で
あることが必要である。但し、線径が小さくなると、非
金属介在物を起点とした破壊が多くなり、疲労強度が却
って低くなるので、伸線材の線径は1.5mm以上とす
る必要がある。
上させるためには、パーライトラメラ間隔を小さくし、
フェライトの幅を小さくすることが有効である。そし
て、本発明者らが検討したところによれば、伸線材のパ
ーライトラメラ間隔を200nm以下にすることによっ
て、特に優れた疲労強度と延性が得られることが判明し
たのである。
m以下にする為には、圧延条件やパテンティング処理条
件等も適切に制御するのが良いが、これらの好ましい製
造条件は下記の通りである。例えば、圧延に際しては、
900〜950℃で圧延を終了し、高温でコーズパーラ
イトが生成せず、また過冷組織(マルテンサイトやベイ
ナイト)が生成することのないように、巻取り開始まで
を10〜20℃/sで冷却し、巻取り温度を750〜8
50℃程度とし、その後パーライトノーズ付近で変態を
終了させる様に、450℃までの冷却速度を0.5〜3
℃/s程度で冷却する方法が挙げられる。
以下にする為のパテンティング処理条件としては、90
0℃以上に加熱し、コーズパーライトを生成させない様
に、10〜15℃/s程度の冷却速度で600℃付近ま
で冷却し、その温度で変態を完了させた後、平均減面率
を20%以上、合計減面率が80%以上となる伸線加工
を行なう様にすれば良い。
説明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のもの
ではなく、前・後記の趣旨に徴して設計変更することは
いずれも本発明の技術的範囲に含まれるものである。
F)を溶製し、熱間圧延して直径:9.0mmの鋼線材
を作製した。引き続き、910℃でオーステナイト化さ
せた後、640℃で変態完了させるパテンティング処
理、および伸線処理を行なって伸線材とした。このと
き、伸線加工は、伸線後の引張強度が1800〜200
0MPaとなる様に最終線径を調節した。
い、引張強度および伸びを測定した。また、下記の各方
法によって、パーライトラメラ間隔および疲労限を測定
した。
埋込み、研磨後、5%のピクリン酸アルコール液に15
〜30秒浸漬して腐食させた後、走査型顕微鏡(SE
M)によって、線材の4/D(D:線材の直径)位置を
観察した。その位置で5000〜10000倍で写真撮
影し、任意のラメラー10個に対して垂直に横切る線を
夫々引き、その長さからラメラ間隔を測定し、その10
点の平均値を平均パーライトラメラ間隔とした。
を用い、サンプル長さ650mmの試験片について、3
50℃×20分のブルーイング処理を行ない、次にイン
ペラー式ショットピーニングマシーンによって、2段の
ショットピーニングを行ない、表層に圧縮残留応力を付
与した。その後、220℃×20分の歪取り焼鈍を行な
い、試験に供した。そして、中村式回転曲げ疲労試験を
行ない、JIS Z2274の試験方法に準じて、10
7回で中止となる試験応力を疲労限界とした。
に、下記表2に示すが、これらの結果から、次の様に考
察できる。まず、No.1〜5のものは、いずれも本発
明で規定する要件を満足する実施例のものであるが、優
れた疲労強度と延性が発揮されていることが分かる。
発明で規定する要件のいずれかを欠く比較例であり、い
ずれかの特性が劣化していることが分かる。即ち、N
o.6のものでは、Niを含有していないものであるの
で、伸線加工度が小さくなり、パーライトラメラ間隔が
広くなり、疲労強度が低下している。また、加工歪が大
きいので、伸びも低下している。一方、No.7のもの
では、Ni含有量が多過ぎるので、圧延時に過冷マルテ
ンサイトやベイナイトが生成し、伸線中に断線してい
た。
労強度および延性のいずれにも優れ、ばね用鋼線、PC
鋼線、亜鉛めっき鋼線、吊り橋用ケーブル用鋼線の素材
として有用な硬引き線用鋼材およびその伸線材が実現で
きた。
Claims (2)
- 【請求項1】 Niを0.10〜1.5%(質量%の意
味、以下同じ)を含有すると共に、圧延後またはパテン
ティング処理後、伸線加工されてそのまま使用されるも
のであることを特徴とする疲労強度および延性に優れた
硬引き線用鋼材。 - 【請求項2】 請求項1に記載の鋼材を伸線した伸線材
であって、線径が1.5mm以上、引張強さが1700
MPa以上、および平均パーライトラメラ間隔が200
nm以下のものであることを特徴とする疲労強度および
延性に優れた硬引き伸線材。
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