JP3628941B2 - 液晶素子及び電子機器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリマーフィルム等の可撓性を有する基板を用いた液晶素子に関し、さらに、この液晶素子を搭載した電子機器に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、ポリマーフィルム等の可撓性を有する基板を用いた液晶素子(以下PFPという)は軽量で、薄く、割れないことからガラス基板を用いた液晶素子より優れた物としてページャー、携帯電話等の携帯情報端末用の表示素子として注目され需要が拡大しつつある。図7にPFPの断面図の一例を示す。1、2は厚さ100μm程度の可撓性を有する基板であり、一般にPET,PC,PES等をベースとしガスバリア層、表面処理層等が積層された構造となっている。その対向面にはインジウム錫酸化物(ITO)等の透明電極3が形成されている。透明電極3上には可溶性ポリイミド等からなる配向膜4が形成され、その表面は液晶を整列させるための配向処理が施されている。これら上下基板1、2は間隙保持部材5を介してエポキシ系接着剤等からなるシール剤6で重合接着され、ネマチック液晶7を封入して液晶セル8が構成されている。液晶セルは11、12の粘着層を介して接着されている偏光素子9,10で挟持された構造となっている。液晶素子には9,10のいずれかの外側に反射体あるいは半透過反射体が粘着層を介して接着された反射・半透過型とすることもできる。また、液晶素子には9と11の間、あるいは10と12の間の少なくとも一方に光学補償体が粘着層を介して接着されたFTN型としても良い。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、PFPにおいては材料等の制約からガラスセルと同等の表示品位を確保するには至っていない。
【0004】
本願発明では表示品位を低下させている要因である表示むらと液晶素子の変形の問題について様々な角度から解析を行い、以下に示すような事実を見いだした。
【0005】
すなわち、表示品位を低下させる要因である表示むらは液晶セル厚むらに起因するものであり、液晶セルに貼付される光学素子および反射体等の平坦性の低さが原因として挙げられる。すなわちPFPの場合にはガラス基板を用いた液晶セルとは異なり可撓性を有しているが故に、貼付された物質の凹凸で液晶セルが不均一に加圧され、基板の歪みとなって液晶セルに蓄積され表示むらになる。この問題は前記構成品類等を液晶セルに貼り付ける時点で最も問題となり、接着による不均一な応力が液晶セルに加えられ基板の歪みとなって液晶セルに蓄積される。
【0006】
また、可撓性を有する基板の剛性は光学素子等の剛性より低いため、接着時に凹凸を持つもので加圧された場合に著しく歪みをうけ、高剛性体に強固に固定されることで歪みの開放ができないといったことも問題である。
【0007】
また、接着に用いられている粘着層についても同様の問題が考えられ高平滑性を有する偏光素子等を使用しても粘着層の平坦性が低ければ液晶セルとの接触面に凹凸が生じ、接着する時点で液晶セルを不均一に加圧し高剛性の偏光素子等に固定することで歪みが蓄積され液晶素子の表示むらとなる。
【0008】
一方変形は、液晶セルに貼付された光学素子類等と液晶セルの変形率の差から起こるものであり、とくに外的環境要因(温度、湿度等)等が変化した場合に著しく問題となる。
【0009】
すなわち、外的環境要因が変化した場合に液晶セルと液晶セルに貼付した物質の間で伸縮率に差があるため歪みの原因となり液晶素子の変形を引き起こす。
【0010】
また、可撓性を有する基板の剛性は偏光素子等の構成品類の剛性より低いため、偏光素子等が変形した場合には強い応力により液晶セルが変形させられてしまう。 これらの現象は反射体等の伸縮率の著しく異なった物質を使用する場合に顕著となる。このほか、粘着層は外的環境要因(温度、湿度等)の変化により著しい伸縮が起こるため液晶セルと接着された物質の間に歪みを生じさせ液晶素子の変形を引き起こすと考えられる。この液晶素子における変形は表示品位の著しい劣化を招くとともに、変形量が大きい場合には液晶素子の破壊を引き起こす原因となる。したがって液晶表示素子の表示品位の向上のために外的環境要因(温度、湿度等)等の変化によらず常に変形を生じさせないことが重要である。
【0011】
そこで、本発明は表示の均一性を確保しつつ信頼性に優れた液晶素子を提供することを目的とする。
【0012】
また、本発明は前記液晶素子を搭載することにより、信頼性を向上させた電子機器を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の液晶素子は、可撓性を有する一対の基板間に透明電極が設けられるとともに、前記一対の基板間に液晶層を挟持させた液晶セルが構成され、該液晶セルの外側には少なくとも一対の光学素子が配置されてなる液晶素子において、
前記光学素子の表面上には、接着剤を点状に印刷し焼成された所定の高さを有する複数の点状の間隙保持部材が形成され、当該複数の点状の間隙保持部材が形成された表面を前記液晶セルに対向させて前記光学素子を前記液晶セルに配置することで、前記液晶セルと前記光学素子は前記複数の点状の間隙保持部材の前記所定の高さの間隙で保持されていることを特徴とする。
【0020】
その結果、従来の液晶素子においては光学素子の厚みむら等による歪み応力によりセル厚の不均一が生じ色ムラ不良が発生したが、本実施例の液晶セルにおいては著しい色ムラによる不良の発生は認められなかった。また、高温放置の耐候試験を行ったところ、従来の液晶素子においては変形が起こり素子の劣化が認められたが、本実施例の液晶素子では変形がなく劣化も認められなかった。
【0021】
[実施例2]
図2は液晶素子の構成を示す断面図であり、実施例1と同様の方法により液晶セル8並びにシール剤13が形成されている。そして間隙保持部材14として粒径6μmの積水ファインケミカル社製ミクロパールの散布を行った後9,10の偏光素子を所定の間隙を保持するように固定した。本実施例では間隙保持部材として積水ファインケミカル社製ミクロパールを使用したがこれに限定されるものではなく、無機化合物や有機化合物あるいはその混合物等による粒状物質全般に適用可能であり、特に接着層を有し液晶セルあるいは光学素子上に固定できるものが好ましい。また、その粒径も本実施例で用いた6μmに限定されるものではなく、1μmから1mmの任意の値で実施が可能であるが、特に1μmから10μmの間隙を保持できるものが好ましい。また、間隙保持部材の配置方法も散布法に限定されるものではなく、印刷法、転写法といった方法を選択する事ができ、その配置場所も液晶セル上のみならず光学素子上へ配置することができる。
【0022】
その結果、従来の液晶素子においては光学素子の厚みむら等による歪み応力によりセル厚の不均一が生じ色ムラ不良が発生したが、本実施例の液晶セルにおいては著しい色ムラ不良の発生はほとんど認められなかった。また、高温放置の耐候試験を行ったところ、従来の液晶素子においては変形が起こり素子の劣化が認められたが、本実施例の液晶素子では変形がなく劣化も認められなかった。
【0023】
[実施例3]
図3は液晶素子の構成を示す断面図であり、実施例1と同様の方法により液晶セル8が並びにシール剤13が形成されている。そして9,10の偏光素子上にエポキシ系接着剤を5mm間隔の点状に印刷し焼成を行って、高さ6μmの間隙保持部材15が形成されている。この液晶セルと9,10の偏光素子を所定の間隙を保持するように固定し液晶素子とした。本実施例では間隙保持部材としてエポキシ系接着剤等を使用したがエポキシ系接着剤等に限定されるものではなく、例えばフェノール系、ビニル系、合成ゴム系といった接着剤の他、アクリル系、ポリエステル系、ポリチオール系、エポキシ系の光硬化性接着剤等の使用も可能であり、さらにはSiOxといった物質に代表される無機系物質の使用も可能である。また柱状間隙保持部材の形成方法は印刷に限定されるわけではなくディスペンサーや転写法、スプレー法、スパッタ法といった手段が選択でき、その高さも本実施例で用いた6μmに限定されるものではなく、1μmから1mmの任意の値で実施が可能であるが、特に1μmから10μmの間隙を保持することが好ましい。本実施例では光学素子側に間隙保持部材の形成を行ったが、その配置場所も光学素子上のみならず液晶セル上へ配置することができる。
【0024】
その結果、従来の液晶素子においては光学素子の厚みむら等による歪み応力によりセル厚の不均一が生じ色ムラ不良が発生したが、本実施例の液晶セルにおいては著しい色ムラ不良の発生はほとんど認められなかった。また、高温放置の耐候試験を行ったところ、従来の液晶素子においては変形が起こり素子の劣化が認められたが、本実施例の液晶素子では変形がなく劣化も認められなかった。
【0025】
[実施例4]
図4は液晶素子の構成を示す断面図であり、実施例1と同様の方法により液晶セル8並びにシール剤13が形成されている。そのシール剤13の内側に充填剤16としてシリコンオイルを気泡が残らないように注意しながら偏光素子9,10で封入を行い、液晶セルと偏光素子の間隙を6μmとした。本実施例で流動性液体あるいはゲル状物質の例としてシリコンオイルを使用したが、シリコンオイルに限定されるものではなく、例えば蒸留水やパラフィンオイルといった無機、有機全般の難燃性液体に適用が可能なものである。また、グリセリンやワセリンのような常温でゲル状を呈する物質の使用も可能であり、封入時の取り扱いが液体より容易である。また本実施例では液晶セルと光学素子の間隙が6μmとなるように充填材の封入を行ったが、間隙は6μmに限定されるものではなく、1μmから1mmの任意の値で実施が可能であり、特に1μmから10μmの間隙を保持することが好ましい。
【0026】
その結果、従来の液晶素子においては光学素子の厚みむら等による歪み応力によりセル厚の不均一が生じ色ムラ不良が発生したが、本実施例の液晶セルにおいては著しい色ムラ不良の発生はほとんど認められなかった。また、高温放置の耐候試験を行ったところ、従来の液晶素子においては変形が起こり素子の劣化が認められたが、本実施例の液晶素子では変形がなく劣化も認められなかった。
【0027】
[実施例5]
図5は液晶素子の構成を示す断面図であり、実施例1と同様の方法により液晶セル8およびシール剤13が形成されている。この液晶セルの下方にガラス板17を配置して偏光素子9,10を粘着層を介して接着し液晶セルとは6μmの間隙を保持するようにして液晶素子を構成した。本実施例ではガラス板を使用したがガラスに限定されるものではなく、液晶セルより剛性の高い基板一般の使用が可能であり、液晶素子駆動回路基板や導光板あるいは液晶装置の筐体等にも適用できるものである。また、液晶装置の筐体を使用する場合等において所定の間隙が保持される場合においてはシール剤13の省略が可能となる。また、本実施例では液晶セルと光学素子の間隙が6μmとなるように設計を行ったが、間隙は6μmに限定されるものではなく、1μmから1mmの任意の値で実施が可能であり、特に1μmから10μmの間隙を保持することが好ましい。
【0028】
その結果、従来の液晶素子においては光学素子の厚みむら等による歪み応力によりセル厚の不均一が生じ色ムラ不良が発生したが、本実施例の液晶セルにおいては著しい色ムラ不良の発生はほとんど認められなかった。また、高温放置の耐候試験を行ったところ、従来の液晶素子においては変形が起こり素子の劣化が認められたが、本実施例の液晶素子では変形がなく劣化も認められなかった。
【0029】
[実施例6]
図6は液晶素子の構成を示す断面図であり、実施例1と同様の方法により液晶セル8およびシール剤13が形成されている。この液晶セルの上方にガラス板17を配置して偏光素子9,10を粘着層を介して接着し液晶セルとは6μmの間隙を保持するようにして液晶素子を構成した。本実施例ではガラス板を使用したがガラスに限定されるものではなく、ガラス等に代表される無機物質やアクリル等に代表される有機物質の透明基板一般の使用が可能であり、液晶素子保護板あるいは液晶装置の筐体等にも適用できるものである。また必要に応じて視認性を損なわない程度に透明基板を着色する事で、容易に外観色を変える事が可能となる。また、液晶装置の筐体を使用する場合等において所定の間隙が保持される場合においてはシール剤13の省略が可能となる。また、本実施例では液晶セルと光学素子の間隙が6μmとなるように設計を行ったが、間隙は6μmに限定されるものではなく、1μmから1mmの任意の値で実施が可能であり、特に1μmから1Oμmの間隙を保持することが好ましい。
【0030】
その結果、従来の液晶素子においては光学素子の厚みむら等による歪み応力によりセル厚の不均一が生じ色ムラ不良が発生したが、本実施例の液晶セルにおいては著しい色ムラ不良の発生はほとんど認められなかった。また、高温放置の耐候試験を行ったところ、従来の液晶素子においては変形が起こり素子の劣化が認められたが、本実施例の液晶素子では変形がなく劣化も認められなかった。
【0031】
[実施例7]
前記液晶素子をページャーの表示用デバイスとして搭載したところ、ガラス基板で形成された液晶素子よりも薄型・軽量で、かつ、耐衝撃性にも優れたページャーが得られた。すなわち、仮に誤って落下させるようなことがあってもガラスセルのように割れることはない。そのため、従来、問題となっていた破損による表示不良が皆無になる。また、高温環境下での使用でもPFP特有の問題である液晶素子の変形についても従来品と比較してマージンが拡大され、信頼性、表示品位共に優れたページャーが提供できる。
【0032】
本実施例ではページャーを例にとって説明したが、本実施例に限らず、携帯情報端末(PDA)、パーソナルコンピュータ等の表示用デバイスとして電子機器に搭載することにより、優れた電子機器を提供できる。
【0033】
【発明の効果】
本発明の液晶素子は、偏光素子、光学補償体、反射体、半透過反射体等の液晶素子構成品等の凹凸を液晶セルに伝えることのない構造としたことにより表示品位を著しく向上させつつ、外的環境要因(温度、湿度等)等が変化した場合にも液晶素子構成品等により生じた歪み応力を液晶セルに伝えることがないため液晶素子の変形が起こらず高画質、高品質、高耐久とした液晶素子を提供できる。また接着層を使用しないため接着層の変形、変質がなくなり高耐久化できるといった効果も有する。さらに、液晶素子を保護するための保護体を用いた本発明の液晶素子は、液晶素子へのごみ等の付着や表示面等における傷の発生を押さえることができるためより高画質、高品質、高耐久の液晶素子を提供できる。
【0034】
本発明の電子機器は、前記液晶素子を搭載したことで、信頼性および表示特性に優れ、しかも薄型・軽量化が可能であるという優れた特性を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の液晶素子の断面を示す図。
【図2】実施例2の液晶素子の断面を示す図。
【図3】実施例3の液晶素子の断面を示す図。
【図4】実施例4の液晶素子の断面を示す図。
【図5】実施例5の液晶素子の断面を示す図。
【図6】実施例6の液晶素子の断面を示す図。
【図7】従来の液晶素子の断面を示す図。
【符号の説明】
1.基板
2.基板
3.透明電極
4.配向膜
5.間隙保持部材
6.シール材
7.液晶
8.液晶セル
9.偏光素子
10.偏光素子
11.粘着層
12.粘着層
13.シール剤
14.粒状間隙保持部材
15.柱状間隙保持部材
16.充填剤
17.ガラス
Claims (1)
- 可撓性を有する一対の基板間に透明電極が設けられるとともに、前記一対の基板間に液晶層を挟持させた液晶セルが構成され、該液晶セルの外側には少なくとも一対の光学素子が配置されてなる液晶素子において、
前記光学素子の表面上には、接着剤を点状に印刷し焼成された所定の高さを有する複数の点状の間隙保持部材が形成され、当該複数の点状の間隙保持部材が形成された表面を前記液晶セルに対向させて前記光学素子を前記液晶セルに配置することで、前記液晶セルと前記光学素子は前記複数の点状の間隙保持部材の前記所定の高さの間隙で保持されていることを特徴とする液晶素子。
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