JP3628184B2 - 流動床式ごみ焼却炉の制御方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は,流動床式ごみ焼却炉の制御方法に係り,詳しくはごみを焼却すると共に,その廃熱により蒸気を発生させる廃熱ボイラを備えた流動床式ごみ焼却炉の制御方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
廃熱ボイラ付きのごみ焼却炉において,蒸気発生量を目標値近傍で安定に制御するためには,蒸気発生量のみならず,炉壁やボイラ水管壁の保護のために炉内温度も安定に制御する必要がある。
そのような制御方法として,特告平2−23763号公報に開示された方法がある。この方法は,図3に示すように,予め蒸気発生量に上下値を設けておき(ステップS51),炉冷空気量を操作して炉出口温度を一定に制御すると共に(ステップS52),蒸気発生量が上下値内にある場合,あるいは,蒸気発生量が上下値を逸脱する場合によって,ごみ送り速度を操作して蒸気発生量を制御するものである(ステップS53)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで廃熱ボイラによってエネルギを回収する流動床式ごみ焼却炉では,一定のごみ焼却量を確保するために空気(一次空気)量を設定する。この場合,流動床での安定燃焼を確保するためには,たとえ炉内温度を制御するためであっても空気量をダイナミックに操作することはない。
しかし,上記従来方法は空気量をダイナミックに操作して炉内温度を制御できるストーカ炉には有効であるが,空気量をダイナミックに操作しない流動式焼却炉では効果を発揮できない。
そこで,流動式焼却炉においては,ごみ投入量のみを操作することによって,発生蒸気量と炉内温度を制御する必要がある。
本発明は,ごみ投入量のみを操作することによって,発生蒸気量と炉内温度を制御することができる流動床式ごみ焼却炉の制御方法を提供することを目的とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明は,ごみを焼却すると共に,その廃熱により蒸気を発生させる廃熱ボイラを備えた流動床式ごみ焼却炉の制御方法において,炉内温度と蒸気発生量の目標値に対してそれぞれ制御範囲を設定する工程と,炉内燃焼の安定性を評価する工程と,炉内燃焼が安定していると評価された場合は,炉内温度の制御範囲が広くなるようにこの制御範囲を修正して炉内温度の制御量の変動を許容し,かつ,蒸気発生量の制御範囲が狭くなるようにこの制御範囲を修正して蒸気発生量の制御量を目標値の近傍になるようにごみの投入量を操作する工程と,炉内燃焼が不安定であると評価された場合は,蒸気発生量の制御範囲が広くなるようにこの制御範囲を修正して蒸気発生量の制御量の変動を許容し,かつ,炉内温度の制御範囲が狭くなるようにこの制御範囲を修正して炉内温度の制御量を目標値の近傍になるようにごみの投入量を操作する工程とを具備してなることを特徴とする流動床式ごみ焼却炉の制御方法として構成されている。
このような構成により,炉内温度と蒸気発生量の目標値に対してそれぞれ制御範囲が設定され,炉内燃焼の安定性が評価されるが,その際に炉内状態の安定性を定量評価することができる。
また炉内燃焼が安定していると評価された場合は,炉内温度の制御範囲が広くなるように修正されて炉内温度の制御量の変動が許容され,かつ,蒸気発生量の制御範囲が狭くなるように修正されて蒸気発生量の制御量が目標値の近傍になるようにごみの投入量が操作されるので,安定したエネルギ回収が可能となる。
また炉内燃焼が不安定であると評価された場合は,蒸気発生量の制御範囲が広くなるように修正されて蒸気発生量の制御量の変動が許容され,かつ,炉内温度の制御範囲が狭くなるように修正されて炉内温度の制御量が目標値の近傍になるようにごみの投入量が操作されるので,炉内燃焼が速やかに安定化する。
その結果,ごみ投入量のみを操作することによって,発生蒸気量と炉内温度を制御することができ,流動床式ごみ焼却炉に好適な制御方法を得ることができる。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下,添付図面を参照して本発明の実施の形態につき説明し,本発明の理解に供する。尚,以下の実施の形態は,本発明を具体化した一例であって,本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
ここに,図1は本発明の実施の形態に係る流動床式ごみ焼却炉の制御概念を示す模式図,図2は本発明の実施の形態に係る流動床式ごみ焼却炉の制御動作を示すフロー図である。
【0006】
本実施の形態に係る流動床式焼却炉の概略構成は以下の通りである。
図1に示すように,ごみはホッパ1へ投入され,砂層2に重力落下する。砂層2には,弁4を操作することによって一次空気3が送り込まれる。これにより,砂が流動すると共に,投入されたごみは砂層2内で燃焼する。このとき炉内で発生した排ガスは,フリーボード5から排ガス出口6を通過し,廃熱ボイラ7に送りこまれる。廃熱ボイラ7では,排ガスの熱エネルギにより循環水が水蒸気になる。
【0007】
このような流動床式ごみ焼却炉は,図1および図2において,以下のように制御できる。
(工程S1)
まず制御周期毎のオンライン制御に先立ち,炉内温度と蒸気発生量制御のバンド幅(制御範囲に相当)の初期設定機能8によって各バンド幅の初期値を設定する。
(工程S2)
ついで炉内燃焼の安定性を,次式により評価する。
Dθ=∫t0 t1{α|∂θ/∂t|+β|∂2 θ/∂t2 |}dt…(1)
ここに,Dθは炉内燃焼の安定性の評価値,θは炉内温度,t0〜t1は安定性を評価する時間帯である。
すなわち,上記(1)式の{ }内の第1項で炉内温度の変化速度を評価し,第2項で炉内温度の変化速度の変化率を求め,一定時間(t0〜t1)積分することにより炉内燃焼状態の変動を定量評価できる。
ただし,α,βは各項に対する重み係数であって,炉のサイズや固体差に応じて予め設定しておく必要がある。
上記(1)式を用いて,標準的な炉内燃焼状態における安定性評価値をDθN とし,上記(1)式で求めた炉内燃焼の安定性の評価値Dθとの比率DNを次式で定義する。
DN=Dθ/DθN …(2)
【0008】
(工程S3)
比率DNが1をこえるときは,炉内燃焼の安定性が損なわれる方向と判断し,炉内温度を制御することを優先する。つまり初期状態では,炉内温度制御を開始し,制御が継続中では炉内温度制御のバンド幅が狭くなるようにその設定値を修正する。これと同時に,蒸気発生量制御のバンド幅が広くなるようにその設定値を修正する。
(工程S4)
比率DNが1以下であるときは,炉内燃焼が安定であると判断し,蒸気発生量を制御することを優先する。つまり初期状態では,蒸気発生量制御を開始し,制御が継続中では蒸気発生量制御のバンド幅が狭くなるようにその設定値を修正する。これと同時に,炉内温度制御のバンド幅が広くなるようにその設定値を修正する。
炉内温度および蒸気発生量制御のバンド幅を修正する場合は次式による。
θL (t+△t)=g(DN)×θL (t)…(3)
VL (t+△t)=f(DN)×VL (t)…(4)
ここで,θL は炉内温度のバンド幅,VL は蒸気発生量のバンド幅,△tは修正周期を表す。またg(DN),f(DN)は次式を満たし,かつ,それぞれ単調減少,単調増加の関数である。
∂g(DN)/∂(DN)≦0,g(1)=1…(5)
∂f(DN)/∂(DN)≧0,f(1)=1…(6)
Dθ,DN,f(DN),g(DN)の計算機能9によって炉内燃焼の安定性の評価値Dθ,比率DN,関数f(DN),関数g(DN)を求める。
θL ,VL の計算機能10によって炉内温度のバンド幅θL ,蒸気発生量のバンド幅VL を求める。
【0009】
ところで炉内温度のバンド幅制御とは次のような制御をいう。すなわち炉内温度が目標値θ0 に対して,(θ0 −θL )〜(θ0 +θL )のバンドの中にあれば制御を施さない。一方,このバンドを逸脱すれば,ごみ供給量を操作し,バンド内に戻れるようにフィードバック制御する。蒸気発生量のバンド幅制御も同様であり,これらは周知の技術である。
炉内温度,蒸気発生量のバンド幅制御機能11によってごみ投入量を求め,ホッパ1から所定量のごみを投入する。
以上の工程のうち,S2〜S4を制御周期毎に繰り返す。
このように本実施の形態によれば,炉内温度と蒸気発生量の目標値に対してそれぞれバンド幅θL ,VL が設定され,炉内燃焼の安定性が評価されるが,その際に炉内温度の安定性を数学的な評価値Dθによって定量評価することができる。
また炉内燃焼が安定していると評価された場合は,炉内温度のバンド幅θL が広くなるように修正されて炉内温度の制御量の変動が許容され,かつ,蒸気発生量のバンド幅VL が狭くなるように修正されて蒸気発生量の制御量が目標値の近傍になるようにごみの投入量が操作されるので,安定したエネルギ回収が可能となる。
また炉内燃焼が不安定であると評価された場合は,蒸気発生量のバンド幅VL が広くなるように修正されて蒸気発生量の制御量の変動が許容され,かつ,炉内温度のバンド幅θL が狭くなるように修正されて炉内温度の制御量が目標値の近傍になるようにごみの投入量が操作されるので,炉内燃焼が速やかに安定化する。
その結果,ごみ投入量のみを操作することによって,発生蒸気量と炉内温度を制御することができ,流動床式ごみ焼却炉に好適な制御方法を得ることができる。
【0010】
【実施例】
上記実施の形態では,工程S3において,炉内燃焼が安定していると評価された場合は,炉内温度のバンド幅θL が広くなるようにこのバンド幅θL を修正して炉内温度の制御量の変動を許容し,かつ,蒸気発生量のバンド幅VL が狭くなるようにこのバンド幅VL を修正して蒸気発生量の制御量を目標値の近傍になるようにごみの投入量を操作しているが,ここで炉内温度のバンド幅θL が広くなるようにこのバンド幅θL を修正する代わりに,炉内温度の制御を停止することとしてもよい。この場合には,制御ロジックがより簡単なものとなる。
また工程S4において,炉内燃焼が不安定であると評価された場合は,蒸気発生量のバンド幅VL が広くなるようにこのバンド幅VL を修正して蒸気発生量の制御量の変動を許容し,かつ,炉内温度のバンド幅θL が狭くなるようにこのバンド幅θL を修正して炉内温度の制御量を目標値の近傍になるようにごみの投入量を操作しているが,ここで蒸気発生量のバンド幅VL が広くなるようにこのバンド幅VL を修正する代わりに,蒸気発生量の制御を停止することとしてもよい。この場合には,制御ロジックがより簡単なものとなる。
【0011】
【発明の効果】
以上説明したように,本発明によれば,炉内温度と蒸気発生量の目標値に対してそれぞれ制御範囲が設定され,炉内燃焼の安定性が評価されるが,その際に炉内温度の安定性を定量評価することができる。
また炉内燃焼が安定していると評価された場合は,炉内温度の制御範囲が広くなるように修正されて炉内温度の制御量の変動が許容され,かつ,蒸気発生量の制御範囲が狭くなるように修正されて蒸気発生量の制御量が目標値の近傍になるようにごみの投入量が操作されるので,安定したエネルギ回収が可能となる。
また炉内燃焼が不安定であると評価された場合は,蒸気発生量の制御範囲が広くなるように修正されて蒸気発生量の制御量の変動が許容され,かつ,炉内温度の制御範囲が狭くなるように修正されて炉内温度の制御量が目標値の近傍になるようにごみの投入量が操作されるので,炉内燃焼が速やかに安定化する。
その結果,ごみ投入量のみを操作することによって,発生蒸気量と炉内温度を制御することができ,流動床式ごみ焼却炉に好適な制御方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る流動床式ごみ焼却炉の制御概念を示す模式図。
【図2】本発明の実施の形態に係る流動床式ごみ焼却炉の制御動作を示すフロー図。
【図3】従来の廃熱ボイラ付きごみ焼却炉の一例における制御動作を示すフロー図。
【符号の説明】
1…ホッパ
2…砂層
3…一次空気
4…一次空気量制御弁
5…フリーボード
6…排ガス出口
7…廃熱ボイラ
8…バンド幅の初期値設定機能
9…Dθ,DN,f(DN),g(DN)の計算機能
10…θL ,VL の計算機能
11…炉内温度,蒸気発生量のバンド幅制御機能
Claims (4)
- ごみを焼却すると共に,その廃熱により蒸気を発生させる廃熱ボイラを備えた流動床式ごみ焼却炉の制御方法において,
炉内温度と蒸気発生量の目標値に対してそれぞれ制御範囲を設定する工程と,
炉内燃焼の安定性を評価する工程と,
炉内燃焼が安定していると評価された場合は,炉内温度の制御範囲が広くなるようにこの制御範囲を修正して炉内温度の制御量の変動を許容し,かつ,蒸気発生量の制御範囲が狭くなるようにこの制御範囲を修正して蒸気発生量の制御量を目標値の近傍になるようにごみの投入量を操作する工程と,
炉内燃焼が不安定であると評価された場合は,蒸気発生量の制御範囲が広くなるようにこの制御範囲を修正して蒸気発生量の制御量の変動を許容し,かつ,炉内温度の制御範囲が狭くなるようにこの制御範囲を修正して炉内温度の制御量を目標値の近傍になるようにごみの投入量を操作する工程とを具備してなることを特徴とする流動床式ごみ焼却炉の制御方法。 - 上記炉内燃焼の安定性の評価値が標準的な燃焼状態における評価値をこえるときには炉内燃焼が不安定であると評価され,かつ,上記炉内燃焼の安定性の評価値が標準的な燃焼状態における評価値をこえないときには炉内燃焼が安定であると評価される請求項1記載の流動床式ごみ焼却炉の制御方法。
- 上記炉内燃焼の安定性の評価値が,次式で表される請求項2記載の流動床式ごみ焼却炉の制御方法。
Dθ=∫t0 t1{α|∂θ/∂t|+β|∂2 θ/∂t2 |}dt
ここに,Dθは炉内燃焼の安定性の評価値,θは炉内温度,t0〜t1は安定性を評価する時間帯,α,βは各項に対する重み係数である。 - 上記炉内燃焼が安定していると評価された場合の工程において,炉内温度の制御範囲が広くなるようにこの制御範囲を修正する代わりに,炉内温度の制御を停止し,かつ,上記炉内燃焼が不安定であると評価された場合の工程において,蒸気発生量の制御範囲が広くなるようにこの制御範囲を修正する代わりに,蒸気発生量の制御を停止する請求項1〜3のいずれか1項に記載の流動床式ごみ焼却炉の制御方法。
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