JP3623685B2 - 熱処理装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばフラットパネルディスプレイ用ガラス基板や、その基板を用いた電子部品等の板状被処理物の熱処理を行う熱風加熱式熱処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
窒素(N2 )等の雰囲気ガス中において液晶ディスプレイ装置用ガラス基板等の板状被処理物の熱処理を行うため、加熱室内において板状被処理物を熱風により加熱する熱処理装置が用いられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来の熱処理装置では、熱風の上流側と下流側とで板状被処理物に温度差が生じ、板状被処理物の加熱温度が不均一になるという問題がある。
【0004】
また、板状被処理物をロット単位(例えば液晶ディスプレイ装置用ガラス基板の場合20枚)で処理する場合、加熱室内でラックにより支持した状態で熱処理を行っている。その熱処理が終了した後、複数の板状被処理物をロボット等を有する搬送装置によりラックから一枚ずつ取り出しているが、長時間を要する。そのため、その搬送装置の耐熱性不足に対応するために加熱室の温度を低下させていた。そうすると、その後に別のロットの板状被処理物を処理する際に加熱室の温度を上昇させる必要がある。しかし、そのような温度の昇降により、加熱室内の温度分布特性が悪化し、また、炉内の蓄熱エネルギーがロスし、さらに、処理時間が長くなる。また、冷却に要する時間が長くならないように、加熱室内を急冷させるためのフィンクーラー等の付帯機器が必要になる。さらに、熱風用フィルターとして通常使用されているHEPA(High EfficiencyParticle Filter)フィルターに、急激な温度変化による熱膨張が生じると、フィルター濾材を構成するグラスファイバーから発塵するためクリーン度が低下する。
【0005】
また、板状被処理物をロット単位で処理する場合、カセットに収納した状態で加熱室内に出し入れし、そのカセットに収納した状態で熱処理していた。そのようなカセットを用いる場合、板状被処理物をカセットに出し入れする搬送装置と、カセットを熱処理装置に出し入れする搬送装置とが必要となりコストアップ、設置面積拡大の問題がある。また、複数の熱処理装置からなる熱処理システムを構成する場合、各熱処理装置の処理状況を管理しつつ両搬送装置を運転する必要があるので、運転操作が複雑になる。
【0006】
本発明は、上記問題を解決することのできる熱処理装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の熱処理装置は、加熱室と、その加熱室内において板状被処理物を加熱する熱風を発生する手段と、その熱風を通過させる除塵用フィルターと、その加熱室内において複数枚の板状被処理物を、厚さ方向を上下方向として上下に間隔をおいて支持可能な支持体と、その支持体を上下方向軸回りに回転駆動する手段と、その支持体により支持された各板状被処理物に横方向から吹き付けられるように熱風を循環させる手段とを備え、その加熱室における熱風は、板状被処理物の表裏面に沿って上流から下流に向かい流れるものとされ、その加熱室の内部に、その下流に至った熱風を上流に還流させる熱風通路が形成されている。
【0008】
本発明の構成によれば、熱風の上流側と下流側とで板状被処理物に温度差が生じるのを防止し、板状被処理物の加熱温度を平均化でき、複数の板状被処理物を加熱温度の偏りなく効率良く加熱できる。
【0009】
その加熱室に通じる冷却室と、その加熱室と冷却室との間で前記支持体を往復移動させる手段と、その加熱室と冷却室との接続口の開閉機構とを備え、その加熱室と冷却室とが上下に並列するように配置されているのが好ましい。
これにより、支持体を加熱室から冷却室に移動させた後に、板状被処理物を支持体から取り出して冷却することができる。よって、板状被処理物を支持体から取り出す時でも、加熱室を常に処理温度に保持し、あるいは処理温度からの温度低下を小さくして処理温度への昇温時間を短縮でき、急激な温度変化をなくすことができる。また、支持体は加熱室と冷却室との間で往復移動させるだけでよく、その往復移動の位置決めや速度に高い精度は不要である。よって、その支持体を往復移動させる機構は複雑な構成を必要とせず、且つ、同時に複数の熱処理装置を運転する場合でも複雑な運転操作を必要としない。また、加熱室を冷却する必要がないので、急冷フィンクーラーや冷却水ユーティリティー等が不要になる。さらに、支持体への板状被処理物の出し入れは室温付近で行えるので搬送装置の耐熱性は不要になる。そして、加熱室と冷却室とが上下に並列するように配置されることで、設置面積を可及的に小さくできる。
【0010】
【発明の実施の形態】
図1〜図3に示す熱風加熱式熱処理システム1は、横方向に並列する3台の熱風加熱式熱処理装置2と、単一の搬送装置4と、それら熱処理装置2と搬送装置4とを覆うカバー6とを備える。
【0011】
各熱処理装置2は、支持台11により支持される炉体12の内部空間により構成される加熱室13と、その炉体12の底面の接続口12aを介して加熱室13に通じる冷却室14と、液晶ディスプレイ装置用ガラス基板等の板状被処理物3を支持する支持体であるラック15と、その加熱室13内おいてラック15により支持された板状被処理物3を加熱する熱風を発生する熱風加熱機構16と、その熱風を通過させる除塵用フィルター17と、そのラック15を加熱室13と冷却室14との間で直線的に往復移動させる移動機構18と、そのラック15を上下方向軸まわりに回転駆動する回転機構19とを有する。
【0012】
その冷却室14は炉体12の下方の空間により構成され、これにより加熱室13と冷却室14とは上下に並列するように配置されている。この冷却室14において板状被処理物3は放冷可能とされている。図3に示すように、板状被処理物3を強制空冷する手段として、その冷却室14を挟むように送風ファンユニット31aと排気ファンユニット31bとが設けられている。
【0013】
そのラック15は、加熱室13と冷却室14とにおいて、複数枚の板状被処理物3を横方向に一枚ずつ取り出し可能に、厚さ方向を上下方向として上下に間隔をおいて支持するもので、例えば支柱から突出するツメを介して支持するものを用いることができる。
【0014】
その熱風加熱機構16は、加熱室13内で板状被処理物3を加熱する熱風を発生して循環させる。すなわち、図1に示すように、その加熱室13の内部に内壁21が設けられる。この内壁21の前後面と上面と炉体12の内面との間は熱風通路を構成する。その内壁21の内部に上記ラック15が配置可能とされ、この内壁21の後方において炉体12にヒータ22と熱風循環用ファン23が取り付けられる。その内壁21の後面に上記フィルター17としてHEPAフィルターが取り付けられ、前面に複数の通風口25が形成されている。図1において矢印で示すように、そのヒータ22により加熱された加熱室13内の窒素等の雰囲気は、ファン23により循環されることで、フィルター17を介してラック15により支持された各板状被処理物3に横方向から吹き付けられる熱風となる。その熱風は各板状被処理物3の表裏面に沿って流れ、しかる後に通風口25を介してヒータ22に至って再び加熱される。そのフィルター17は、急激な温度変化による熱膨張が生じると、フィルター濾材を構成するグラスファイバーから発塵する低コストのものが用いられている。
【0015】
その回転機構19は、ラック15を支持する回転台19aと、この回転台19aの支持台19bと、その回転台19aを上下方向軸まわりに回転駆動するアクチュエータ19cとを有する。その回転台19aの回転は連続回転でも間欠的回転でもよい。その支持台19bは上記接続口12aを閉鎖可能な大きさとされている。これにより、ラック15により支持された板状被処理物3を、その板状被処理物3への熱風の吹き付け方向である横方向に交叉する上下方向まわりに回転させることができる。
【0016】
図1に示すように、その移動機構18は、その冷却室14内に配置された支持台41と、この支持台41により支持される駆動機構43により上下方向に直線的に往復駆動されるスライダー42とを有する。その駆動機構43は例えば空圧シリンダーにより構成される。そのスライダー42の移動方向は加熱室13と冷却室14の並列方向に一致する。そのスライダー42により上記ラック15が回転機構19を介して支持される。そのスライダー42の往復移動により、ラック15は回転機構19と共に図1において実線で示すように冷却室14内に配置される位置と、2点鎖線で示すように加熱室13内に配置される位置とに位置決めされる。
【0017】
上記接続口12aを開閉する機構として保温シャッター51が設けられている。その保温シャッター51は駆動装置(図示省略)により、図1において実線で示すように接続口12aを閉鎖する位置と、2点鎖線で示すように接続口12aを開放する位置との間で駆動可能とされている。
【0018】
その搬送装置4は、板状被処理物3を冷却室14内のラック15に支持させ、また、冷却室14内のラック15により支持された板状被処理物3を取り出す機構として、ロボット61と、このロボット61を図1における実線位置と2点鎖線位置との間で昇降させる昇降機構62と、そのロボット61と昇降機構62を熱処理装置2の並列方向に沿って横方向に駆動する走行機構63とを有する。そのロボット61は、板状被処理物3の支持フォーク61aと、このフォーク61aの伸縮アーム61bとを有し、ラック15に板状被処理物3を出し入れする。その昇降機構62は、ロボット61を昇降させる。その走行機構63は、そのロボット61と昇降機構62をラック15に対向する位置に位置決めする。
【0019】
図1に示すように、カバー6の側方に別の工程から搬送されるカセット20が配置される。そのカセット20により複数枚の板状被処理物3が横方向に一枚ずつ取り出し可能に上下に間隔をおいて支持される。上記搬送装置4は、走行機構63によりロボット61と昇降機構62をカセット20に対向する位置に位置決めし、そのカセット20に板状被処理物3を支持させ、また、そのカセット20により支持された板状被処理物3を取り出すことができる。
【0020】
そのカバー6に、そのカセット20に対向する開閉可能な開口が設けられる。また、カバー6に内部空気の清浄装置71が取り付けられている。
【0021】
上記構成により熱処理を行う場合、各炉体12の接続口12aを保温シャッター51により閉鎖し、加熱室13の内部を熱風加熱機構16により処理温度(例えば230℃)に維持し、ラック15を冷却室14に配置させる。次に、板状被処理物3を搬送装置4によりカセット20から取り出し、次いでラック15に支持させる。次に接続口12aを開いて移動機構18によりラック15を加熱室13内に移動させる。そして、回転機構19の支持台19bにより接続口12aを閉鎖する。しかる後に熱風加熱機構16により板状被処理物3を加熱する。この加熱時に、図2に示すようにラック15を回転機構19により上下方向軸回りに回転させる。熱処理が終了すれば、ラック15の回転を停止させ、移動機構18によりラック15を冷却室14内に移動させ、接続口12aを再び保温シャッター51により閉鎖する。その冷却室14において、板状被処理物3を例えば200℃まで放冷し、続いて送風ファンユニット31aと排気ファンユニット31bにより強制空冷する。その強制空冷用の冷却風は、冷却室14においてラック15により支持された板状被処理物3に、熱処理装置2の並列方向に沿って横方向から吹き付けられる。しかる後に、板状被処理物3を搬送装置4によりラック15から取り出し、次いでカセット20に支持させる。
【0022】
上記構成によれば、加熱室13内でラック15を上下方向軸まわりに回転駆動することで、板状被処理物3を上下方向軸まわりに回転させ、熱風の上流側と下流側とで板状被処理物3に温度差が生じるのを防止し、板状被処理物3の加熱温度の平均化を計ることができる。特に、ラック15により板状被処理物3を、厚さ方向を上下方向として上下に間隔をおいて支持し、熱風を横方向から吹き付けるので、その回転により複数の板状被処理物3を加熱温度の偏りなく効率良く加熱できる。また、加熱室13と冷却室14とが上下に並列するので、両室13、14の設置に必要な面積は両室を横方向に並列する場合の略1/2になり、システム1の設置面積を可及的に小さくできる。さらに、ラック15を加熱室13から冷却室14に移動させた後に、板状被処理物3をラック15から取り出して冷却することができる。よって、板状被処理物3をラック15から取り出す時でも、加熱室13を常に処理温度に保持し、あるいは処理温度からの温度低下を小さくして処理温度への昇温時間を短縮できる。これにより、加熱室13内の温度分布特性を向上し、処理時間を短縮してコストを低減し、急激な温度変化をなくしてHEPAフィルター17の採用時におけるクリーン度を向上できる。また、加熱室13を冷却する必要がないので、急冷フィンクーラーや冷却水ユーティリティー等が不要で、さらに、ラック15への板状被処理物3の出し入れは室温付近で行えるので搬送装置4の耐熱性は不要で、コストを抑制できる。また、ラック15は加熱室13と冷却室14との間で移動機構18により往復移動させるだけでよく、その往復移動の位置決めや速度に高い精度は不要である。よって、その移動機構18は複雑な構成を必要とせず、且つ、同時に複数の熱処理装置2を運転する場合でも複雑な運転操作を必要としない。また、冷却室14においてラック15により支持された板状被処理物3を、200℃程度までは放冷することで破損を防止し、その後は強制空冷することで冷却時間を短縮できる。
【0023】
なお、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、熱風加熱式熱処理装置の数は限定されない。冷却室はカバーにより被覆されていなくてもよい。また、板状被処理物への熱風の吹き付け方向に限定されず、その吹き付け方向回りに板状被処理物が回転するのでなければよい。
【0024】
【発明の効果】
本発明によれば、板状被処理物の加熱温度を平均化でき、設置面積を可及的に小さくし、しかも、運転操作や構造を複雑化することなく、加熱室内の温度分布特性を向上し、処理時間を短縮し、板状被処理物の破損を防止し、コストを低減し、HEPAフィルター採用時におけるクリーン度を向上できる熱処理装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態の熱処理システムの側断面図
【図2】本発明の実施形態の熱処理システムの平断面図
【図3】本発明の実施形態の熱処理装置の正断面図
【符号の説明】
2 熱処理装置
3 板状被処理物
12a 接続口
13 加熱室
14 冷却室
15 ラック
16 熱風加熱機構
18 移動機構
19 回転機構
51 保温シャッター
Claims (1)
- 加熱室と、
その加熱室内において板状被処理物を加熱する熱風を発生する手段と、
その熱風を通過させる除塵用フィルターと、
その加熱室内において複数枚の板状被処理物を、厚さ方向を上下方向として上下に間隔をおいて支持可能な支持体と、
その支持体を上下方向軸回りに回転駆動する手段と、
その支持体により支持された各板状被処理物に横方向から吹き付けられるように熱風を循環させる手段と、
その加熱室に通じる冷却室と、
その加熱室と冷却室との間で前記支持体を往復移動させる手段と、
その加熱室と冷却室との接続口の開閉機構と、
その冷却室において板状被処理物を強制空冷する手段とを備え、
その加熱室における熱風は、板状被処理物の表裏面に沿って上流から下流に向かい流れるものとされ、
その加熱室の内部に、その下流に至った熱風を上流に還流させる熱風通路が形成され、
その加熱室と冷却室とが上下に並列するように配置されている熱処理装置。
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