JP3617823B2 - インクジェットプリンタヘッド及びその製造方法 - Google Patents

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  • Particle Formation And Scattering Control In Inkjet Printers (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェットプリンタヘッド及びその製造方法に係る。特に、本発明は、インク室内に形成される電極の構成及びその形成方法の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、インクジェットプリンタには、各色のインクを記録用紙に向かって吐出するためのプリンタヘッドが備えられている。このプリンタヘッドのインク吐出方式として、インク室を仕切る圧電材料で成る壁部に形成された駆動電極に所定の電圧を印加することで壁部を剪断変形させ、これによってインクに圧力波を生じさせ、インク滴を吐出させることが知られている。
【0003】
この種のプリンタヘッドの具体的な製造方法としては、図19に示すように、圧電材料よりなるヘッドプレートaに複数の溝b,b,…を形成すると共に、各溝b,b,…を仕切っている壁部c,c,…を溝bの内部空間であるインク室dの深さ方向に分極し、この壁部cの所定領域(例えば上側半分)に駆動電極eを形成する(図19では駆動電極eの形成部分に斜線を付している)。そして、図20に示すように、この溝bの上部を閉鎖するようにヘッドプレートa上に天板fを取り付ける。これにより、画像信号に応じた電圧を各駆動電極e,e,…に個別に印加することで各壁部c,c,…を剪断変形させ、インク滴の吐出動作が行えるようになっている。尚、図中g,g,…は各駆動電極e,e,…に印加電圧を供給するための外部取り出し電極である。
【0004】
また、この種のプリンタヘッドを開示する従来技術として特開平7−276624号公報や特表平11−506402号公報がある。
【0005】
前者の公報には、上記壁部を圧電部材と誘電率の低い低剛性部材とから成し、電圧印加時の壁部の変形量の増大を図ることが開示されている。
【0006】
一方、後者の公報には、壁部のうちインク吐出動作に殆ど寄与しない部分、つまり、インク室内の上流端付近(吐出ノズルからの距離が離れた部分)において、圧電材料と駆動電極との間に低誘電率の部材を挟み込むことで、プリンタヘッド全体としての静電容量の低減を図ることが開示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
また、これまでの駆動電極の形成は斜め蒸着法によって行われていた。この手法による駆動電極の形成に関し、電極形成面(壁部の表面など)が平滑面である場合には均一厚さの駆動電極が形成可能である。しかしながら、この電極形成面が平滑面でない場合、つまり、電極形成面に凹凸がある場合や2つの面が交わる稜線部分においては、駆動電極の厚さが不均一となって電圧の印加動作を良好に行うことができなくなる可能性がある。このため、従来の蒸着法による駆動電極の形成にあっては、駆動電極の形成が可能な面の形状に制約があり、プリンタヘッドの設計自由度が大きく制限されてしまっていた。
【0008】
一方、メッキにより駆動電極を形成する場合は、下地の形状に拘わらず均一な膜厚となり、良好な導電性が得られ、また密着性も良い。一般的にメッキにより所定箇所のみに電極を形成するには、電極が不要な部分をマスキングするなどの方法がとられるが、図19に示すように圧電部材に複数の溝が形成されている3次元的な形状のものに対してマスキングすることは、工程が複雑になってしまう。
【0009】
この課題を解決する手段として、圧電部材とメッキ電極との間の所定箇所に低誘電部材を挟み込むことで、インク室内全面に電極を形成しながらも、つまりマスキングを用いることなしに電極をメッキにより形成しながらも、低誘電部材の存在しない箇所のみを作動させるようにすることが掲げられる。
【0010】
上記各公報には低誘電部材で覆われた壁部上に駆動電極を形成することが開示されている。ところが、これら各公報には以下に述べる課題があり、メッキ法による電極形成の実用性を向上させるためには未だ改良の余地が残されていた。
【0011】
先ず、特開平7−276624号公報に開示されているものでは、圧電部材と低剛性部材とによって壁部を形成しているため、それぞれに高い寸法精度が要求されることになる。例えば、低剛性部材の作製工程において厚さ管理や表面性管理等が必要となり、プリンタヘッドの作製作業の煩雑化を招くものであった。
【0012】
一方、特表平11−506402号公報に開示されているものでは、圧電材料と駆動電極との間に挟み込まれた低誘電率の部材は、外部引出し電極部の静電容量を低減するだけのものであり、インクの吐出動作に何ら関与するものではない。また、電極の形成は斜め蒸着法によるもので、メッキ法による電極形成の実用性を向上させるためのものではない。
【0013】
本発明の発明者らは、この低誘電率の物質の有効利用により、メッキ法による電極形成の利点を十分に発揮させることに着目して考察を行った。
【0014】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、駆動電極への電圧印加によって壁部を剪断変形させてインクを吐出するインクジェットプリンタヘッドに対し、低誘電部材の成形と無電解メッキ法による電極形成を行う場合において、その形成作業が簡素であって、しかも圧電部材の性能を十分に発揮できるようにすることにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
−発明の概要−
上記の目的を達成するために、本発明は、駆動電極の下地として部分的に低誘電体を存在させることにより、メッキ法によって壁部の全体に駆動電極を形成しながらも、壁部の変形に必要な部分のみに電界を発生させることを可能にしている。
【0016】
−解決手段−
具体的に、本発明は、圧電部材で構成された壁部によって仕切られた複数のインク室を備え、このインク室の内面に設けられた駆動電極に所定の駆動電圧を印加することに伴う壁部の変形によりインク室からインク滴を吐出するインクジェットプリンタヘッドを前提とする。このインクジェットプリンタヘッドに対し、壁部のインク室深さ方向の約半分を圧電部材の材料よりも誘電率の低い低誘電体で覆うと共に、その低誘電体の表面を含むインク室の内面に駆動電極を形成した構成としている。
【0017】
また、このインクジェットプリンタヘッドの製造方法として、圧電体基材の上面にレジスト材をコーティングするコーティング工程及びこのレジスト材コーティング側から圧電体基材に亘って溝を形成してこの溝の両側に壁部を形成する吐出チャンネル形成工程を行った後、上記圧電体基材の材料よりも誘電率の低い低誘電体膜を、上記壁部の上側約半分の領域に斜め蒸着法により成膜する低誘電体膜形成工程を行う。その後、上記壁部の上面及び側面と溝の底部とに亘ってメッキ前処理を行うメッキ前処理工程及びリフトオフにより壁部上面の低誘電体膜を除去するリフトオフ工程を行った後、無電解メッキ法により上記メッキ前処理部分に駆動電極を形成する無電解メッキ工程を行うようにしている。
【0018】
これら特定事項により、壁部のうち低誘電体が存在する部分では、駆動電極に電圧を印加したとしても圧電部材には殆ど電界が生じない。つまり、この部分では圧電効果による変形は生じない。一方、低誘電体が存在しない部分では、駆動電極への電圧印加に伴って圧電部材に電界が生じ、圧電効果による変形によってインクの吐出動作が行われる。このように、壁部の全体に亘って駆動電極が形成されているにも拘わらず、低誘電体が存在する部分では圧電部材には電界が殆ど生じず、この低誘電体が存在しない部分においてのみ壁部を変形させるための電界が発生することになる。このため、メッキ法によって駆動電極を形成しながらも良好なインクの吐出動作を行わせることが可能になる。また、メッキ法の採用により、電極形成面は必ずしも平滑面である必要はなくなり、様々な形状の電極形成面に対して電極の形成が可能になる。
また、上記製造方法によれば、リフトオフの際にレジスト材と共に除去されるのは壁部上面の低誘電体膜とメッキ前処理部分のみであり(電極材料をも除去するものではない)、その除去を容易に行うことができる。また、リフトオフ後の無電解メッキ工程では、溝の内面にはメッキが施されるが、メッキ前処理部分が除去された壁部上面はメッキされないため、壁部上面の電極材料を除去するといった作業は必要なくなる。
【0019】
また、上記壁部のインク室深さ方向の約半分を覆う低誘電体の材質として、光硬化性を有する樹脂組成物が露光により硬化されたものが採用可能である。
【0020】
従来より、プリント基板絶縁層や半導体用絶縁膜として様々な光硬化性の低誘電率樹脂が開発されている。その一例として、特開平6−19129号公報に開示されているものがある。この公報には、光硬化性樹脂であって、比誘電率が2.8、しかも無電解メッキ液耐性、耐熱性に優れた材料が開示されている。また、別の例として、特開平11−214815号公報には、高感度で且つ高解像度の光硬化性樹脂であって、比誘電率が3.2〜3.4であり、メッキ密着強度が高い樹脂組成物が開示されている。これらの優れた材料を、上述の如くインクジェットプリンタヘッドに適用することで、無機材料では実現不可能であった低誘電体材料を低温プロセスで成膜することが可能になる。
【0034】
駆動電極に電圧を印加するための外部取り出し電極の形成に関して以下の方法が挙げられる。つまり、インク室の延長方向に対して略直交する方向に延びる面に、駆動電極に連続する外部取り出し電極をメッキ法により形成する外部取り出し電極形成工程を備えさせている。
【0035】
また、この外部取り出し電極の形成位置に、圧電部材の材料よりも誘電率の低い低誘電体膜を予め成膜しておく外部取り出し電極下地処理工程を備えさせている。
【0036】
上記外部取り出し電極形成工程による外部取り出し電極の形成を行った場合、外部取り出し電極をインク供給路まで含む長さに設定しておく必要はない。従来では、電極が蒸着により形成されており、駆動電極と外部取り出し電極とを連続した平滑面上に連続形成する必要があった。このため、外部取り出し電極をインク供給路まで含む長さに設定しておかねばならなかった。本発明では、メッキ法の採用により、駆動電極と外部取り出し電極とを連続した平坦面上に連続形成する必要がなくなるため、外部取り出し電極の取り出し位置の自由度が拡大し、この外部取り出し電極の長さを短くできる。例えば、外部取り出し電極を圧電部材に溝加工した面と略直交する面(インクジェットヘッドの後端面)へ屈曲させることが可能となり、インク供給部を含まない外部取出し電極が実現できる。
【0037】
また、上記外部取り出し電極下地処理工程を行った場合、この部分での静電容量を低減することができ、ここでのエネルギロスを抑制できる。
【0038】
外部取り出し電極下地処理工程の具体的な動作として以下のものが挙げられる。先ず、一つの方法として、外部取り出し電極下地処理工程において、インク室壁部の低誘電体膜蒸着工程とは別工程としてインク室の延長方向に対して略直交する方向に延びる面の延長方向に対してインク室壁部に平行な面内において45°以下の角度から斜め蒸着法により低誘電体膜を蒸着させるもので、これにより、不要なインク室壁面への蒸着領域を小さくすることができる。
【0039】
他の方法として、外部取り出し電極下地処理工程において、インク室壁部の低誘電体膜蒸着工程とは別工程としてインク室内をマスク材によりマスキングした状態で低誘電体膜を蒸着させることで、不要なインク室壁面への蒸着を完全に防ぐこともできる。
【0040】
これら特定事項により、インク室内に不要な低誘電体膜が形成されてしまうことを防止できる。また、上記斜め蒸着法により、インク室内面とそれに略直交する面との稜線部分においても良好に低誘電体膜を形成することが可能になる。
【0041】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0042】
−プリンタヘッドの構成説明−
先ず、プリンタヘッドの基本構成について説明する。図1はプリンタヘッド1の外観を示す斜視図である。図2はプリンタヘッド1の分解斜視図である。これら図に示すように、プリンタヘッド1は、ヘッドプレート2、カバープレート3、ノズルプレート4及びインクインレット5を備えている。
【0043】
ヘッドプレート2は、図3にも示すように、底壁部21と、この底壁部21の上面に配置された複数の側壁部22,22,…とを備えている。これら側壁部22,22,…同士は所定間隔を存して平行に配置されている。これにより、各側壁部22,22,…同士の間には後述するインク室6を構成するための複数の溝23,23,…が形成されている(図4参照)。また、上記ヘッドプレート2の側壁部22は、その高さ方向(図4に矢印で示す方向)に分極されている。
【0044】
カバープレート3は、上記ヘッドプレート2の上部に一体的に組み付けられて、各溝23,23,…の上部を閉鎖している。具体的には、図5(図4におけるV−V線に沿った断面図)に示すように、このカバープレート3は、ヘッドプレート2の上部に組み付けられ、これにより、ヘッドプレート2の底壁部21及び側壁部22,22と、カバープレート3とによって囲まれた空間がインク室6として構成され、このインク室6が側壁部22を挟んで水平方向に複数配置されている。
【0045】
上記ヘッドプレート2の内側には、駆動電極7が形成されている。以下、この駆動電極7及びその周辺部の構成について説明する。
【0046】
図4に示すように、ヘッドプレート2の各側壁部22の側面のうち上側約半分には、ヘッドプレート2の構成材料である圧電材料よりも誘電率の低い材料(例えばSiNや光硬化性を有する樹脂組成物)で成る低誘電体膜8,8,…が蒸着法によって形成されている。また、駆動電極7は、この低誘電体膜8の表面を含む溝23の内面全体、つまり、側壁部22及び底壁部21におけるインク室6に臨む面全体に亘って形成されている。この駆動電極7は無電解メッキ法によって形成されている(これら低誘電体膜8及び駆動電極7の形成工程については後述する)。更に、この駆動電極7は、図5及び図6(図5におけるVI−VI線に沿った図であって電極の形成部分に斜線を付している)に示すように、ヘッドプレート2の背面25側にも形成されている。つまり、背面25に形成されたこの部分が外部取り出し電極71として機能するようになっている。また、この外部取り出し電極71とヘッドプレート2との間にも上記と同様の低誘電体膜81が形成されており、これによってヘッドプレート2全体としての静電容量を低減できるようになっている。このようにして、外部取り出し電極71に電圧が印加されることによりインク室6内で対面する両駆動電極7,7には同電圧が印加される構成となっている。
【0047】
以下、各側壁部22の側面の上側約半分に低誘電体膜8,8,…を形成したことに起因する側壁部22の各部に対する電圧の印加状態について説明する。ここでは、図7に示すように、側壁部22の厚さ寸法を70μm、高さ寸法を300μm、長さ寸法を1000μmとし、側壁部22を構成する圧電材料として比誘電率4300の材料を使用し、低誘電体膜8としてSiN(比誘電率7.5)を使用し、この低誘電体膜8の膜厚を2μmとした場合であって、真空誘電率を8.854×10−18F/μmとして説明する。
【0048】
この場合、側壁部22で低誘電体膜が形成されている部分(側壁の上半分)の静電容量Cpztは、
Figure 0003617823
となる。これは、低誘電体膜の無い側壁の下半分も同じである。一方、
低誘電体膜8の静電容量Csinは、
Figure 0003617823
となる。
【0049】
そして、低誘電体膜が形成されている側壁部(上半分)の総静電容量Cは、
Figure 0003617823
となる。
【0050】
そして、側壁部22の両側の電極7,7に印加する電位差をVとし、このとき低誘電体膜8に生じる電位差をVsin、側壁部22に生じる電位差をVpztとした場合、
V=2Vsin+Vpzt …(4)
となり、VsinとVpztとの比は、
Figure 0003617823
である。
【0051】
今、印加電圧を30Vとしたとき、側壁部22の上側半分(低誘電体膜8,8が形成されている部分)では一対の低誘電体膜8,8に生じる電位差の合計は29.11Vであり、側壁部22に生じる電位差は0.89Vとなる。一方、側壁部22の下側半分(低誘電体膜8,8のない部分)の圧電材料には直接的に30Vの電位差を生じる。
【0052】
つまり、この低誘電体膜8が形成されている部分にあっては圧電材料には殆ど電界が生じず、事実上、圧電材料を動作させるには至らない。言い換えると、側壁部22の全体に亘って駆動電極7が形成されているにも拘わらず、低誘電体膜8が形成されている部分では圧電材料には電界が殆ど生じず、この低誘電体膜8が形成されていない部分においてのみ側壁部22を剪断変形させるための電界が発生することになる。これにより、側壁部22の高さ方向の半分のみに駆動電極7を形成した場合と同様の動作によってインク室6内に波動を発生させ、インクの吐出動作を行うことができるようになっている。
【0053】
また、図1に示すように、上記外部取り出し電極71には、フレキシブル回路基板11を介してドライバIC12が接続されている。
【0054】
ノズルプレート4は、ヘッドプレート2及びカバープレート3の前面側(図2における手前側)に取り付けられて、インク室6を閉鎖していると共に、各インク室6,6,…に対応してノズル41,41,…が形成されている。つまり、インク室6内にインク吐出用の圧力が発生した場合、このインク室6に臨むノズル41から所定量のインク滴が水平方向(図2の矢印参照)に吐出されるようになっている。
【0055】
インクインレット5は、インク導入開口となるインク室6の後端面を覆うように取り付けられており、図示しないインクタンクからインク室6,6,…へ供給されるインクを濾過するフィルタ材51が設けられている。
【0056】
−インク滴の吐出原理の説明−
以下、インク室6からインク滴を吐出する際の動作原理について説明する。図8はプリンタヘッド1をインク室6の延長方向から見た断面図である。何れの駆動電極7,7,…にも電圧が印加されていない状態を図8(a)に示す。この場合、ヘッドプレート2の何れの側壁部22,22,…においても変形を生じておらず、全てのインク室6,6,…の断面形状は同一となっている。
【0057】
ここでは、図8(a)において符号6Bを付したインク室からインク滴を吐出する場合の動作原理について説明する。
【0058】
このインク室6Bの両側に隣接するインク室6A,6Cの駆動電極7A,7A,7C,7Cをローレベル(0V)とし、インク室6Bの駆動電極7B,7Bに電圧を印加(例えばハイレベル30Vを印加)させる。これにより、このインク室6Bの駆動電極7B,7Bと、それぞれに隣り合う駆動電極7A,7Cとの間に電位差が生じ、その際に発生する電界の作用によってインク室6Bを構成している側壁部(圧電材)22,22は剪断変形してインク室6Bの内部を拡大させる(図8(b)参照)。これにより、インク室6Bにはインクタンクからインクが吸引される。
【0059】
その後、インク室6Bの駆動電極7B,7Bへのハイレベルの電圧の印加を解除すると共に、インク室6Bの両側に位置するインク室6A,6Cの駆動電極7A,7A,7C,7Cに電圧を印加する。これにより、このインク室6Bの駆動電極7B,7Bと、それぞれに隣り合う駆動電極7A,7Cとの間に上記とは逆方向の電界が作用し、これによってインク室6Bを構成している側壁部22,22は剪断変形してインク室6Bの内部を縮小させる(図8(c)参照)。これにより、インク室6B内に所定の吐出圧力(波動)が発生し、ノズル41からインク滴が吐出される。
【0060】
その後、再び何れの駆動電極7A,7B,7Cをもローレベル(0V)とすることにより、図8(d)に示すように、全てのインク室6A,6B,6Cの断面形状が同一となる。このような各駆動電極7A,7B,7Cへの電圧印加制御により、所望のノズル41からインク滴を吐出できるようになっている。
【0061】
−プリンタヘッドの作製工程の説明−
次に、本形態の特徴の一つであるプリンタヘッド1の複数種類の作製工程について説明する。ここでは、ヘッドプレート2の作製工程についてのみ説明する。本発明に係るヘッドプレート2の作製工程としては第1実施形態から第4実施形態が挙げられる。以下、各実施形態について個別に説明する。
【0062】
(第1実施形態)
本形態に係るヘッドプレート2の作製工程を図9に示す。この作製工程では、先ず、図9(a)に示すように、直方体状の圧電体基材24の上面にレジスト材Rをコーティングする(コーティング工程)。そして、図9(b)に示すように、このコーティング面側(図中上側)から図示しない切削装置によって溝23の切削加工を行う。これにより、溝23の両側に側壁部22,22が形成されることになる(吐出チャンネル形成工程)。この際、側壁部22の上端部のみにレジスト材Rのコーティング層が残っている。
【0063】
その後、図9(c)に示すように、SiN等の低誘電材料を斜め蒸着法により蒸着させる(低誘電体膜形成工程)。この蒸着方向としては、側壁部22の高さ方向の上側約半分に低誘電体膜8が形成されるように設定される。つまり、側壁部22の高さ方向の下側約半分に対しては、隣接する側壁部22がマスキングすることにより低誘電体膜8が形成されないようにしている。具体的には、図10に示すように、2工程の蒸着動作が行われる。先ず、第1の蒸着動作では、図10(a)に示すように、図中右斜め上方から低誘電材料を蒸着させる。これにより、側壁部22の上面及び図中右側の側面の上側約半分に低誘電体膜8が形成される。第2の蒸着動作では、図10(b)に示すように、図中左斜め上方から低誘電材料を蒸着させる。これにより、側壁部22の上面及び図中左側の側面の上側約半分に低誘電体膜8が形成されることになる。これら斜め蒸着の方向は側壁部22の高さ寸法(溝23の深さ寸法)、溝23の溝幅寸法に応じて設定される。
【0064】
また、外部取り出し電極71を形成する部分における低誘電体膜81の形成動作においては、上記2工程の蒸着動作が行われた後、図11(a)に示すように溝23の内部をメタルマスクMによるマスキングを行った状態で外部取り出し電極71の形成部分に対して低誘電材料の蒸着動作が行われる。この製造方法によると、インク室6の内面(溝底部23や側壁部22)の不要な部分への低誘電体材料の蒸着を確実に防ぐことができる。
【0065】
また、図11(b)に示すように、インク室壁部に平行な面内において45°以下の角度から斜め蒸着法により低誘電体膜81の形成を行うことも可能である。この場合、インク室6の内面への低誘電体の蒸着も考えられるため、45°以下の角度から蒸着することが望ましい。
【0066】
そして、図9(d)に示すように、少なくとも側壁部22の全体及び溝23の底部に対してメッキ前処理(メッキ前処理工程)を行った後、図9(e)に示すように、無電解メッキ法による電極形成を行う(無電解メッキ工程)。この状態では、ヘッドプレート2の全面に亘って電極7,71が形成された状態となる。
【0067】
上記メッキ前処理工程を具体的に説明すると、洗浄、キャタライジング、アクセラレーティング処理が行われる。洗浄は、メッキ形成面の活性化及びキャタリスト液、アクセレータ液やメッキ液が溝23に入り易くするための親水化を目的として行われる。キャタライジング処理は、塩化パラジュウム、塩化第一錫、濃硫酸等からなる前処理液としてのキャタリスト液に圧電体基材24を浸し、溝23の内面にPd・Snの錯化物を吸着させる目的で行う。アクセラレーティング処理は、キャタライジング処理で吸着された錯化物を触媒化する目的で行うもので、側壁部22等に吸着された錯化物は触媒核としての金属化されたPdとなる。
【0068】
また、無電解メッキ工程では、上記の前処理を施した圧電体基材24をメッキ液に浸漬して無電解メッキを行う。メッキ液は、金属塩及び還元剤からなる主成分と、pH調整剤、緩衝剤、錯化剤、促進剤、安定剤、改良剤等からなる補助成分とからなる。このメッキ液に圧電体基材24を浸すと、金属化されたPdを触媒核としてメッキが生成され、図9(e)に示すように溝23の全体及び側壁部22の上面に亘って駆動電極7が形成される。
【0069】
また、他の無電解メッキによる電極形成方法として無電解ニッケルメッキ法がある。このメッキ法は、脱脂した圧電基材24を塩化第一錫溶液中に浸せきさせ、錫イオン(Sn2+)を圧電基材24の表面に吸着させる。そして、水洗の後、圧電基材24を塩化パラジウム溶液中に浸せきすると、Sn2+が溶液中のPd2+と酸化還元反応を起こし、触媒核としての金属パラジウムが表面に形成される。それをジメチルアミンボラン等を還元剤とするメッキ浴に圧電基材24を浸せきすることによって純度99%以上の金属ニッケルを還元析出させる。このようにして駆動電極7が形成される。
【0070】
このようなメッキ前処理工程及び無電解メッキ工程を行った後、図9(f)に示すように、リフトオフ法によって上記レジスト材Rのコーティング層を溶剤により溶融させ、側壁部22の上面に形成されていた駆動電極7を除去する(リフトオフ工程)。これにより、インク室6の全体に亘って駆動電極7が形成され、且つ側壁部22の側面の上側半分にあっては、側壁部22と駆動電極7との間に低誘電体膜8が介在した状態でヘッドプレート2が作製される。尚、ヘッドプレート2の背面25の全面に亘って外部取り出し電極71を形成した場合には、YAGレーザなどにより外部取り出し電極71の一部を除去して、図6に示すように各インク室6,6,…毎に外部取り出し電極71,71,…を独立させる。また、ダイシングによって各外部取り出し電極71,71,…を独立させるようしてもよい。また、ノズルプレート4の接着面等の余分な電極材形成面は必要に応じて、切削、研磨により電極材を除去する。リフトオフにより側壁部22の上面が露出するため、この上面にカバープレート3を接着した場合の接着強度が長期間に亘って維持でき、プリンタヘッド1の耐久性が向上する。
【0071】
(第2実施形態)
次に、ヘッドプレート2の作製工程の第2実施形態について説明する。本形態に係るヘッドプレート2の作製工程を図12に示す。この作製工程におけるコーティング工程(図12(a)参照)、吐出チャンネル形成工程(図12(b)参照)、低誘電体膜形成工程(図12(c)参照)、メッキ前処理工程(図12(d)参照)は、上述した第1実施形態における各工程と同様にして行われる。従って、ここでは、これら工程についての説明は省略し、メッキ前処理工程を行った後の作製工程についてのみ説明する。
【0072】
本形態では、上記メッキ前処理工程の後、リフトオフ工程が行われる。このリフトオフ工程では、図12(e)に示すように、側壁部22の上面に残っているレジスト材Rのコーティング層を溶融または剥離させ、側壁部22の上面に形成されていた低誘電体膜8を除去する。これにより、この側壁部22の上面のメッキ前処理部分も除去されることになる。
【0073】
そして、図12(f)に示すように、無電解メッキ法による電極形成を行う(無電解メッキ工程)。この工程により、メッキ前処理が残っている側壁部22の側面及び溝23の底部、更には、ヘッドプレート2の背面全体に電極7,71が形成され、これによって、インク室6の全体に亘って駆動電極7が形成され、且つ側壁部22の側面の上側半分にあっては、側壁部22と駆動電極7との間に低誘電体膜8が介在した状態でヘッドプレート2が作製される。
【0074】
本第2実施形態の作製工程によれば、側壁部22の上面には、電極材は形成されないことから、新ためて電極材を除去する必要がなくなる。
【0075】
(第3実施形態)
次に、ヘッドプレート2の作製工程の第3実施形態について説明する。本形態に係るヘッドプレート2の作製工程を図13に示す。この作製工程では、先ず、図13(a)及び図13(b)に示すように、直方体状の圧電体基材24の上面に図示しない切削装置によって溝23の切削加工を行う。これにより、溝23の両側に側壁部22,22が形成されることになる(吐出チャンネル形成工程)。
【0076】
その後、図13(c)に示すように、側壁部22の全体及び溝23の底部に対してメッキ前処理(メッキ前処理工程)を行った後、図13(d)に示すように、SiN等の誘電材料を斜め蒸着法により蒸着させる(成膜工程)。この蒸着方向としても、側壁部22の高さ方向の上側半分に低誘電体膜8が形成されるように設定される。つまり、側壁部22の高さ方向の下側半分に対しては、隣接する側壁部22がマスキングすることにより低誘電体膜8が形成されないようにしている。これにより、側壁部22の高さ方向の下側半分のみにメッキ前処理部分が露出した状態となる。
【0077】
その後、図13(e)に示すように、無電解メッキ法による電極形成を行う(無電解メッキ工程)。これにより、側壁部22の高さ方向の下側半分及びヘッドプレート2の背面全体に電極7,71が形成された状態でヘッドプレート2が作製される。
【0078】
本第3実施形態の作製工程によれば、駆動電極7の無電解メッキ部分を必要最小限に抑えることができる。つまり、必要以外の部分に駆動電極をメッキした後にその部分の電極を除去するといったことを行わないため、プリンタヘッド1の製造に使用される電極材料の削減を図ることができ、材料コストの削減を図ることができる。
【0079】
(第4実施形態)
本実施形態は、低誘電体膜8,8,…として上述した窒化珪素に代えて光硬化性を有する樹脂材料を使用した場合である。本形態における低誘電体膜8,8,…の配設位置も上述した位置と同様である。
【0080】
この種の低誘電体膜8,8,…を使用したプリンタヘッドの作製工程を説明する前に、この場合の各部に対する電圧の印加状態について説明する。ここでも、図7に示すように、側壁部22の厚さ寸法を70μm、高さ寸法を300μm、長さ寸法を1000μmとし、側壁部22を構成する圧電材料として比誘電率4300の材料を使用し、光硬化性低誘電体膜8(比誘電率3.2)を使用し、この光硬化性低誘電体膜8の膜厚を2μmとした場合であって、真空誘電率を8.854×10−18F/μmとして説明する。
【0081】
この場合、側壁部22で光硬化性低誘電体膜8が形成されている部分(側壁の上半分)の静電容量Cpztは、
Figure 0003617823
となる。これは、光硬化性低誘電体膜8の無い側壁の下半分も同じである。一方、
光硬化性低誘電体膜8の静電容量Cresは、
Figure 0003617823
となる。
【0082】
そして、光硬化性低誘電体膜8が形成されている側壁部(上半分)の総静電容量Cは、
Figure 0003617823
となる。
【0083】
そして、側壁部22の両側の電極7,7に印加する電位差をVとし、このとき光硬化性低誘電体膜8に生じる電位差をVres、側壁部22に生じる電位差をVpztとした場合、
V=2Vres+Vpzt …(9)
となり、VresとVpztとの比は、
Figure 0003617823
である。
【0084】
今、印加電圧を30Vとしたとき、側壁部22の上側半分(光硬化性低誘電体膜8,8が形成されている部分)では一対の光硬化性低誘電体膜8,8に生じる電位差の合計は29.6V程度であり、圧電材料に生じる電位差は0.4V程度となる。一方、側壁部22の下側半分(光硬化性低誘電体膜8,8のない部分)の圧電材料には直接的に30Vの電位差を生じる。
【0085】
つまり、この光硬化性低誘電体膜8が形成されている部分にあっては圧電材料には殆ど電界が生じず、事実上、圧電材料を動作させるには至らない。言い換えると、側壁部22の全体に亘って駆動電極7が形成されているにも拘わらず、光硬化性低誘電体膜8が形成されている部分では圧電材料には電界が殆ど生じず、この光硬化性低誘電体膜8が形成されていない部分においてのみ側壁部22を剪断変形させるための電界が発生することになる。これにより、側壁部22の高さ方向の半分のみに駆動電極7を形成した場合と同様の動作によってインク室6内に波動を発生させ、インクの吐出動作を行うことができるようになっている。
【0086】
以下、光硬化性低誘電体膜8,8,…を使用した場合のプリンタヘッドの作製工程について説明する。このプリンタヘッドの作製工程としては、第1及び第2の2つのタイプがある。
【0087】
−第1タイプ−
本第1タイプに係るヘッドプレート2の作製工程を図14に示す。この作製工程では、先ず、図14(a)に示すように、直方体状の圧電体基材24の上面に図示しない切削装置によって溝23の切削加工を行う。これにより、溝23の両側に側壁部22,22が形成されることになる(吐出チャンネル形成工程)。
【0088】
その後、図14(b)に示すように、光硬化性低誘電材料の溶液をノズル噴射法により塗布する(塗布工程)。この溶液噴射方向としては、側壁部22の高さ方向の少なくとも上側約半分に光硬化性低誘電体膜8が均一に塗布されるように設定される。つまり、側壁部22の上方からアレイ方向に傾きをもち、隣接する壁部22が邪魔にならない程度の角度で噴射することにより、比較的効率良く塗布することができる。また、光硬化性低誘電体溶液自体は、塗布後に側壁部22より大部分が流れ落ちたりすることがなく、また、所望の塗布膜厚が得られるように予め適度に粘度(流動性)の調整がなされている。具体的には、側壁部22の両側面に塗布させるため、図15に示すように、2回の塗布動作が行われる。先ず、第1の塗布動作では、図15(a)に示すように、図中右斜め上方から光硬化性低誘電体溶液を噴射する。これにより、側壁部22の上面及び図中右側の側面の少なくとも上側半分に光硬化性低誘電体溶液が塗布される。このとき、側壁部22の側面の上半分の塗布膜厚がコントロールされていれば、側壁部22の上面の塗布膜厚が多少厚くなったり、塗布時や塗布後の流動によって側壁部22の側面の下半分に付着しても構わない。第2の塗布動作では、図15(b)に示すように、図中左斜め上方から第1の塗布動作と同様に光硬化性低誘電体溶液を噴射する。これにより、側壁部22の上面及び図中左側の側面の少なくとも上側半分に光硬化性低誘電体溶液が塗布されることになる。
【0089】
また、この後、絶対必要とはしないが、80℃〜120℃程度の温度でベークすることにより、光硬化性低誘電体溶液中の溶剤を揮発させ、光硬化性低誘電体溶液の流動を防ぐことができる(図示しないプリベーク工程)。この工程では光硬化性低誘電体塗布膜は完全には硬化していない(光硬化性樹脂や熱硬化性樹脂でいうところの重合作用による硬化ではない)。また、ベーク温度についても、圧電材料のキュリー点(分極を喪失する温度であり、今回用いた圧電材料は210℃)より十分に低いため、圧電体基材24の特性を損なうものではない。
【0090】
次に、光硬化性樹脂の硬化条件に適した波長の光を照射することで、所定領域の光硬化性低誘電体膜8を硬化させる(露光工程)。このとき光の進む方向は光学レンズ等によって一方向に整えられた平行光であることが好ましい。拡散光で広範な領域を照射しようとした場合には余計な部分を露光するおそれがあり、逆に照射領域を絞った場合にはスループットが低下する。また、蒸着等で低誘電体膜を形成する場合、蒸着方向を広範囲に亘り平行にすることは困難であり、スループットに限界があった(実際の蒸着方向は放射状になっており、極限られた領域内で処理することで単一の方向性があるかのように見立てていた)。しかし、本形態のように平行光を得ることは比較的容易であり、スループットが向上する。また、図14(c)に示すように、光の照射角度は、側壁部22の上方より側壁部22のアレイ方向に傾きを有し、側壁部22の下半分が、隣接する側壁部22によって陰になるよう調整されている。つまり、特にマスクを用いることなく、側壁部22の側面上半分の光硬化性低誘電体膜8を選択的に硬化させることができる(実際には、側壁部22の上面部分も硬化される)。具体的には、側壁部22の両側面の光硬化性低誘電体膜8を硬化させるために、図16に示すように、2回の露光動作が行われる。先ず、第1の露光動作では、図16(a)に示すように、図中右斜め上方から照射する。これにより、側壁部22の上面及び図中右側面の上側半分の光硬化性低誘電体膜8が硬化する。第2の露光動作では、図16(b)に示すように、図中左斜め上方から第1の露光動作と同様に光を照射し、これにより、側壁部22の上面及び図中左側面の上側半分の光硬化性低誘電体膜8が硬化する。
【0091】
そして、図14(d)に示すように、溶剤を用いて硬化されなかった光硬化性低誘電体膜8を溶解・除去する(溶液除去工程)。この際用いる溶剤としては、光硬化性低誘電体膜8の露光部分を溶解しないことが必要であり、純水、アルコール系、ケトン系などのものが挙げられる。
【0092】
その後、図14(e)に示すように、無電解メッキ工程により、光硬化性低誘電体膜8上を含む圧電体基材24の全面に金属膜を形成する(無電解メッキ工程)。無電解メッキによって得られる金属膜として、ニッケルが一般的であるが、銅など他の金属であってもよい。
【0093】
そして、図14(f)に示すように、金属膜をインク室毎に対応して分離し駆動電極7,7,…を形成する電極形成工程を行う。その手段として、切削や研磨、YAGレーザといった一般的手法が挙げられるが、どの手段を用いるかは任意に選択可能である。例えば、側壁部22の上面部に対しては研磨によって圧電部材が露出するまで金属膜と光硬化性低誘電体膜8とを除去し、電極分離する。これは、後に接合されるカバープレート3との接着面を平滑にし、接着強度を向上させるためのものである。また、電極分離以外の目的で厳密な寸法・形状が要求されない箇所、例えばインク室の後端面等は、ダイシングブレードによる切削法やYAGレーザによる溶断法がスループットの面で有利である。尚、図18は、本形態においてヘッドプレート2の背面25側における駆動電極7の形成状態を示している。
【0094】
このようにして、ヘッドプレート2が得られる。本形態の製作工程によれば、低誘電体膜8を蒸着する場合に比べて、加工精度を改善し、生産効率を向上させることができる。また、蒸着の輻射熱等の熱ストレスを受けることがないので、圧電部材本来の特性を発揮でき、高性能なインクジェットヘッドが得られる。
【0095】
−第2タイプ−
次に、第2タイプの作製工程について説明する。本タイプは、ヘッドプレート2とカバープレート3とが接合された状態でメッキ電極を形成するものである。本タイプの作製工程を図17に示す。この作製工程における、吐出チャンネル形成工程(図17(a)参照)、低誘電体膜塗布工程(図17(b)参照)、プリベーク工程(図示せず)、露光工程(図17(c)参照)、溶液除去工程(図17(d)参照)は、上述した第1タイプにおける各工程と同様にして行われる。従って、ここでは、これら工程についての説明は省略し、溶液除去工程を行った後の作製工程についてのみ説明する。
【0096】
本タイプでは、上記溶液除去工程の後、図17(e)に示すように、側壁部22上面の光硬化性低誘電体膜8を研磨によって除去し、圧電部材表面を露出させ(研磨工程)、図17(f)に示すように、カバープレート3を接着する(ボンディング工程)。
【0097】
次に、無電解メッキ工程を行って、ヘッドプレート2及びカバープレート3の露出した表面全体に金属膜を形成する(無電解メッキ工程、図17(g)参照)。
【0098】
そして、第1タイプの場合と同様に、電極形成工程を行う(図示せず)。本第2タイプによると、カバープレート3側に外部取り出し電極71を形成でき、設計の自由度が向上する。
【0099】
−その他の実施形態−
上述した各実施形態では、側壁部22の側面のうち上側約半分に低誘電体膜8を形成していた。本発明は、これに限らず、側壁部22の側面の下側約半分に低誘電体膜8を形成するようにしてもよい。
【0100】
【発明の効果】
以上のように、本発明では、駆動電極の下地として部分的に低誘電体を存在させることにより、メッキ法によって壁部の全体に駆動電極を形成しながらも、壁部の変形に必要な部分のみに電界を発生させることを可能にしている。つまり、壁部のうち低誘電体が存在する部分では駆動電極に電圧を印加したとしても殆ど電界を生じず、低誘電体が存在しない部分のみで駆動電極への電圧印加に伴って電界が生じるようにしている。このため、メッキ法による駆動電極の形成を実現可能としながら、良好なインクの吐出動作を行わせることが可能になる。また、このメッキ法の採用により、電極形成面は必ずしも平坦面である必要はなくなり、様々な形状の電極形成面に対して電極の形成が可能になって、プリンタヘッドの設計自由度の拡大を図ることができる。
【0102】
インクジェットプリンタヘッドの製造方法として、低誘電体膜の成膜後、壁部の全体にメッキ前処理を行い、不要なメッキ前処理部分をリフトオフにより除去した後にメッキ法による電極の形成を行うようにした場合には、リフトオフの際にレジスト材と共に除去されるのは低誘電体膜のみであり、その除去を容易且つ確実に行うことができ、製品の信頼性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】プリンタヘッドの外観を示す斜視図である。
【図2】プリンタヘッドの分解斜視図である。
【図3】ヘッドプレートの斜視図である。
【図4】インク室内の電極形成状態を示す縦断面図である。
【図5】図4におけるV−V線に沿った断面図である。
【図6】図5におけるVI−VI線に沿った図である。
【図7】側壁部の各部に対する電圧の印加状態を説明するための側壁部の斜視図である。
【図8】インク滴の吐出動作原理を説明するための図4相当図である。
【図9】第1実施形態におけるヘッドプレートの作製工程を示す図である。
【図10】斜め蒸着動作を説明するための図である。
【図11】ヘッドプレートの背面への低誘電体膜の形成動作を説明するための図である。
【図12】第2実施形態におけるヘッドプレートの作製工程を示す図である。
【図13】第3実施形態におけるヘッドプレートの作製工程を示す図である。
【図14】第4実施形態の第1タイプにおけるヘッドプレートの作製工程を示す図である。
【図15】光硬化性低誘電体溶液の塗布動作を説明するための図である。
【図16】光硬化性低誘電体溶液に対する露光動作を説明するための図である。
【図17】第4実施形態の第2タイプにおけるヘッドプレートの作製工程を示す図である。
【図18】第4実施形態における図6相当図である。
【図19】従来のヘッドプレートを示す斜視図である。
【図20】従来例における図4相当図である。
【符号の説明】
1 インクジェットプリンタヘッド
21 底壁部
22 側壁部
23 溝
24 圧電体基材
25 背面
6 インク室
7 駆動電極
71 外部取り出し電極
8 低誘電体膜
R レジスト材

Claims (3)

  1. 圧電部材で構成された壁部によって仕切られた複数のインク室を備え、このインク室の内面に設けられた駆動電極に所定の駆動電圧を印加することに伴う壁部の変形によりインク室からインク滴を吐出するインクジェットプリンタヘッドにおいて、
    上記壁部のインク室深さ方向の約半分が圧電部材の材料よりも誘電率の低い低誘電体で覆われていると共に、その低誘電体の表面を含むインク室の内面に駆動電極が形成されていることを特徴とするインクジェットプリンタヘッド。
  2. 請求項1記載のインクジェットプリンタヘッドにおいて、
    低誘電体は光硬化性を有する樹脂組成物が露光により硬化されたものであることを特徴とするインクジェットプリンタヘッド。
  3. 圧電部材で構成された壁部によって仕切られた複数のインク室を備え、このインク室の内面に設けられた駆動電極に所定の駆動電圧を印加することに伴う壁部の変形によりインク室からインク滴を吐出する構成とされたインクジェットプリンタヘッドの製造方法であって、
    圧電体基材の上面にレジスト材をコーティングするコーティング工程及びこのレジスト材コーティング側から圧電体基材に亘って溝を形成してこの溝の両側に壁部を形成する吐出チャンネル形成工程を行った後、
    上記圧電体基材の材料よりも誘電率の低い低誘電体膜を、上記壁部の上側約半分の領域に斜め蒸着法により成膜する低誘電体膜形成工程を行い、
    その後、上記壁部の上面及び側面と溝の底部とに亘ってメッキ前処理を行うメッキ前処理工程及びリフトオフにより壁部上面の低誘電体膜を除去するリフトオフ工程を行った後、
    無電解メッキ法により上記メッキ前処理部分に駆動電極を形成する無電解メッキ工程を行うことを特徴とするインクジェットプリンタヘッドの製造方法。
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