JP3616604B2 - 印刷胴の軸受装置 - Google Patents
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Description
【０００１】
【発明の属する技術分野】
この発明は、輪転印刷機の印刷胴の軸受装置に関し、特に印刷胴が印刷作用位置と、非印刷作用位置とに移動可能に動作するブランケット胴及び版胴の軸受装置に関する。
【０００２】
【従来の技術】
印刷胴の軸受装置については、特許第２５３３０４０号公報に示されるものが公知である。
【０００３】
特許第２５３３０４０号公報には、印刷機の印刷胴の軸受装置が示され、この軸受装置は、それぞれの間にころがり軸受列が配置される軌道輪である、内輪と、中間輪と、外輪とで構成されている。そして、軸受装置の内輪は印刷胴のジャーナルに嵌め込まれ、外輪は軸受ケーシングに嵌め込まれる。
【０００４】
中間輪の内径の中心線は印刷胴の軸の中心線と一致し、また、外径の中心線は軸受ケーシングの穴の中心線と一致していて中心線が相違しており、偏心している。軸受ケーシングの外部に位置した操作部材により中間輪は外径の中心線を支点にして円周方向に角変位される。また、中間輪が角変位されることにより、中間輪の内径の中心線と軸の中心線が一致している印刷胴は、同様に中間輪の外径の中心線を支点にして移動する。
【０００５】
また、内輪と中間輪との間のころがり軸受列は、円筒ローラー軸受列および玉軸受列またはクロスローラー軸受列が設けられ、中間輪と外輪との間のころがり軸受列は、円筒ローラー軸受列および玉軸受列が設けられる。
【０００６】
【発明が解決しようとする課題】
特許第２５３３０４０号公報においては、内輪と中間輪及び中間輪と外輪との間に、印刷胴の軸方向に並べて円筒ローラー軸受列及び玉軸受列又はクロスローラー軸受列が配置されている。
【０００７】
円筒ローラー軸受列は、印刷胴の半径方向に作用するラジアル荷重を支持するための軸受であり、玉軸受列またはクロスローラー軸受列は、印刷胴の軸方向に作用するスラスト荷重を支持するための軸受けである。この作用の異なる軸受列が内輪と中間輪間および中間輪と外輪間に並べて設けられているので、いずれか一つが破損した場合には、内輪、中間輪、外輪及び間に配置されているころがり軸受列すべてを交換しなければならなかった。
【０００８】
また、前記軸受装置の内輪は、印刷胴のジャーナルに挿め込まれ、軸方向を固定され、また、軸受装置の外輪は、印刷機の軸受ケーシングの穴部に嵌め込まれ、軸方向を固定されている。印刷胴の軸方向及び半径方向に作用するラジアル荷重及びスラスト荷重は、軸受装置の内輪、中間輪、外輪、軸受ケーシングへと伝達され、内輪と中間輪との間及び中間輪と外輪との間に設けられた２つの軸受列の、円筒ローラー軸受列がラジアル荷重を、玉軸受列又はクロスローラー軸受列がスラスト荷重を受けている。このように、荷重を複数かつ複数段の軸受列で受けるので、大きながたが生じやすく、とりわけ、スラスト荷重によるがたは、内輪と中間輪の間の軸受列によるがたと、外輪と中間輪の間の軸受列によるがたの累積により、がたが顕著にあらわれ易かった。
【０００９】
他方、ラジアル軸受およびスラスト軸受を別々に独立して設けた印刷胴の軸受装置として、特許第２７５８３４６号に開示されているものがある。この装置は、印刷胴の軸にラジアル軸受を設け、印刷胴の半径方向に作用するラジアル荷重を支持しており、また、ラジアル軸受の両側より、ラジアル軸受が嵌め込まれている印刷機のフレームを両側より挟むようにスラスト軸受を配置して、印刷胴の軸方向に作用するスラスト荷重を受けるようになっている。しかし、この軸受装置は固定軸受として構成されており、印刷胴を印刷作用位置と、非印刷作用位置とに移動させることができなかった。
【００１０】
この発明は、前記従来の技術がかかえていた課題を一挙に解決しようとするもので、印刷胴を支持するためのがたが少なく、印刷胴の半径方向、軸方向に作用する荷重を別々の軸受で支持することにより、いずれかの軸受手段が破損した場合でも、別々に取り外し、取り付けができ、メインテナンスが容易で、印刷胴を印刷作用位置と、非印刷作用位置との間を移動可能に動作させることができる軸受装置を提供することを目的としている。
【００１１】
【課題を解決するための手段】
そのためこの発明の印刷胴の軸受装置は、印刷胴を回転可能に、かつ印刷作用位置と非印刷作用位置とに移動可能に、支持体に支持せしめる印刷胴の軸受装置において、支持体と印刷胴の軸との間に、支持体に設けた穴の中心線周りに角変位可能、かつ支持体に設けた穴と中心線を異にする穴を有する偏心部を少なくとも備えたラジアル荷重支持手段と、印刷胴の軸方向への移動を禁止するスラスト荷重支持手段と、偏心部に連係し、かつ支持体と当該支持体に固着された保持手段とで挟むことによって支持体に対して印刷胴の軸方向への移動を禁止するよう設けたハウジング部と、前記偏心部を支持体の穴の中心線周りに角変位させるとともに、その位置を保持可能な偏心部角変位駆動手段とを備え、前記スラスト荷重支持手段が前記ラジアル荷重支持手段と並んで印刷胴の同一径の軸に配置されるとともに前記ハウジング部と前記印刷胴の軸との間に介在されて設けられ、かつ前記ハウジング部の下端が前記スラスト荷重支持手段の位置を規制するようにされていることを特徴としている。
【００１２】
そして前記スラスト荷重支持手段は、アンギュラ形玉軸受が用いられる。
【００１３】
また前記ラジアル荷重支持手段が、中心線を共有する外輪と中間輪を有し、かつこれらとは中心線の相違する内輪を有し、内輪と中間輪との間及び外輪と中間輪の間にそれぞれころがり部材を介在させたラジアル荷重軸受であり、中間輪が支持体の穴の中心線周りに角変位可能である場合と、中心線の相違する内輪と外輪を有するとともに内輪と外輪との間にころがり部材を介在させたラジアル荷重軸受であり、外輪が支持体の穴の中心線周りに角変位可能である場合と、中心線を共有する内輪と外輪を有し、かつ内輪と外輪との間にころがり部材を介在させたラジアル荷重軸受と、このラジアル荷重軸受を内周面に嵌め合わせられるとともに内周面と中心線が相違する外周面を有する偏心スリーブとからなり、偏心スリーブが支持体の穴の中心線周りに角変位可能である場合とがある。
【００１４】
そして前記ころがり部材は、円筒ころが用いられる。
【００１５】
偏心部角変位駆動手段によって印刷作用位置と非印刷作用位置との移動が可能となり、印刷胴の軸方向への移動を禁止するハウジング部の構造により、スラスト荷重によるがたが減少する。また、印刷胴の半径方向に作用するラジアル荷重を支持するラジアル荷重支持手段と、印刷胴の軸方向に作用するスラスト荷重を支持するスラスト荷重支持手段とが別個に設けられて印刷胴の軸に嵌め込まれる構造であるので、破損した軸受手段だけの交換が可能となる。
【００１６】
【発明の実施の形態】
次に、この発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【００１７】
図１はこの発明の実施の形態の印刷胴の軸受装置の概略断面図、図２は第２実施の形態の印刷胴の軸受装置の概略断面図、図３は第３実施の形態の印刷胴の軸受装置の概略断面図を示している。
【００１８】
図１において、印刷機の印刷胴１２は、印刷胴１２の両端近傍にある支持体であるフレーム６の穴１３に設けられた軸受装置１により印刷胴１２の円周方向に回転可能に支持され、また、印刷胴１２は、印刷作用位置と、非印刷作用位置との間を移動可能に支持されている。
【００１９】
この発明の実施の形態の印刷胴１２の一方の軸受装置１が示されており、また図示されていないが、他方側も同様の軸受装置が設けられている。
【００２０】
軸受装置１は、ラジアル荷重支持手段３と、スラスト荷重支持手段４と、ハウジング部５と、支持体であるフレーム６と、ハウジング部軸方向保持手段７と、偏心部角変位駆動手段８とを備えて構成されている。以下これら及びこれらに隣接する各部について構成を説明する。
【００２１】
（１） 印刷胴１２の軸２
印刷胴１２の軸２は、印刷胴１２の軸方向の両側に位置し、印刷胴１２の外径より小径の軸状で、後で説明するラジアル荷重支持手段３及びスラスト荷重支持手段４が嵌め込まれ、これら荷重支持手段の軸方向の位置が固定可能なように、段差２５が設けられている。
【００２２】
（２） ラジアル荷重支持手段３
ラジアル荷重支持手段３は、印刷胴１２の軸２に嵌め込まれるとともにフレーム６の穴１３に嵌め込まれ、印刷胴１２をフレーム６に対し回転可能にしている。ラジアル荷重支持手段３は、内輪１０と、中間輪１４と、外輪１５及び、内輪１０と中間輪１４の間に内輪１０の外周面にそって円筒ころ１６を複数配した、ラジアル荷重を受けるための円筒ころ列と、中間輪１４と外輪１５との間に中間輪１４の外周面にそってニードル１７又は円筒ころ（円筒ころ１６と同様のもの）を複数配した、ラジアル荷重を受けるためのニードル列又は円筒ころ列とで構成されている。
【００２３】
〔１〕 内輪１０
内輪１０は、フレーム６の穴１３の中心線と相違する位置に中心線を有するリング状体であり、内径が印刷胴１２の軸２の外径と同径で、軸２に嵌め込まれる。
【００２４】
〔２〕 中間輪１４
中間輪１４は、内径が内輪１０の中心線と共通の中心線を有するとともに外径はフレーム６の穴の中心線と共通の中心線を有する偏心したリング状体である。つまり、中間輪１４の内径と外径の中心位置は偏心している。中間輪１４と内輪１０との間には、内輪１０の外周面にそって複数の円筒ころ１６を配した、印刷胴１２の半径方向のラジアル荷重を支持することが可能な円筒ころ列が複数配置されている。
【００２５】
〔３〕 外輪１５
外輪１５は、フレーム６の穴１３の中心線と共通の中心線を有するリング状体であり、フレーム６の穴１３に嵌め込まれる。
【００２６】
中間輪１４と外輪１５との間には、中間輪１４の外周面にそって複数のニードル１７を配したニードル列が複数設けられ、ニードル列は、印刷胴１２の半径方向のラジアル荷重を支持するとともに、中間輪１４及び中間輪１４とボルトで連結されている後で説明するハウジング部５を、フレーム６の穴１３の中心線を支点としてスムースに角変位可能に支持している。
【００２７】
また、前記ニードル１７は、例えば円筒ころであってもよい。
【００２８】
（３） スラスト荷重支持手段４
スラスト荷重支持手段４は、前記軸２に嵌め込まれ、印刷胴１２に作用する軸方向のスラスト荷重を支持する。
【００２９】
この実施の形態では、スラスト荷重支持手段４は、１組のアンギュラ形玉軸受を使用する。スラスト荷重支持手段４としてのアンギュラ形玉軸受４は、スラスト荷重を支持することが可能であり、また支持する方向が決まっているので、図１に示されるように、軸方向の左右両方向のスラスト荷重を受けるために１組のアンギュラ形玉軸受４を荷重がかかる方向に向き合わせ、又は背面合わせにして取り付ける。
【００３０】
前記ラジアル荷重支持手段３の円筒ころ列を配する内輪１０とアンギュラ形玉軸受４との間は、互いの間を軸方向に位置決めされるようにカラー９が設けられ、軸２の末端に設けた軸受押え１１により、円筒ころ列を配する内輪１０及びアンギュラ形玉軸受４に一定圧の予圧をかけるようになっている。
【００３１】
（４） ハウジング部５
ハウジング部５は、片側断面がＬ字形のリング形状をしており、Ｌ字形の突起部１８側の端面は、前記ラジアル荷重支持手段３の中間輪１４とボルトで連結され、ハウジング部５は中間輪１４と一体になっている。また、この端面の半径方向外側に近い突起部１８のフレーム６側の面がフレーム６の側面に接触させられており、後で説明するハウジング部軸方向保持手段７によって印刷胴１２の軸方向の動きを禁止すべく規制されて、保持されている。ハウジング部５の穴の中心線は、印刷胴１２の中心線と一致しており、穴の径は、アンギュラ形玉軸受４の外径と同じであり、穴にアンギュラ形玉軸受４が嵌め込まれる。
【００３２】
また、軸受押え２１によりアンギュラ形玉軸受４を印刷胴１２の軸方向に位置決めして、一定圧の予圧がかけられる。
【００３３】
（５） ハウジング部軸方向保持手段７
ハウジング部軸方向保持手段７は、断面Ｌ形のブロック体であり、Ｌ形のその短足がフレーム６の側面に接触させて取り付けられるとともに、ハウジング部５の外側の突起部１８が、Ｌ形の長足側面とフレーム６の側面との間に僅かにゆるめに挟まれる構成で、ハウジング部５を円周方向に角変位可能、かつ印刷胴１２の軸方向の動きを禁止すべく規制して、保持する。
【００３４】
（６） 偏心部角変位駆動手段８
偏心部角変位駆動手段８は、ラジアル荷重支持手段３の中間輪１４の側面に取り付けられたアーム２２と、アーム２２の先端に角変位可能に連結され、アーム２２を介して中間輪１４に、円周方向の外力を伝える駆動連結板１９と、駆動連結板１９に駆動を与える図示しない駆動源よりなる。駆動の伝達は、駆動源より駆動連結板１９を中間輪１４の外周の接線と平行方向、すなわち図１において（後の図２、図３においても同様）は紙面に対し垂直方向に押し又は引くことにより、アーム２２の先端をフレーム６の穴１３の中心線周りに角変位するように押し又は引き、アーム２２と連結され一体で動作するラジアル荷重支持手段３の中間輪１４及びこの中間輪１４と連結されたハウジング部５をフレーム６の穴１３の中心線を支点にして角変位させる。
【００３５】
以上のように構成された本発明の実施の形態の印刷胴１２の軸受装置１は、印刷機の印刷胴１２が回転され、印刷稼働されることにより、印刷胴１２には、半径方向のラジアル荷重及び軸方向のスラスト荷重が生じる。このラジアル荷重は、軸受装置１のラジアル荷重支持手段３により受けられ、また印刷胴１２のスラスト荷重は、アンギュラ形玉軸受４により受けらる。このようにラジアル荷重及びスラスト荷重を別個の荷重支持手段で受けることにより、軸受装置１は、印刷胴１２を支持する。
【００３６】
また、印刷胴１２を印刷作用位置と非印刷作用位置との間を移動させるには、偏心部角変位駆動手段８の駆動源より駆動連結板１９を押し又は引くことによりアーム２２に駆動を伝える。アーム２２と連結しているラジアル荷重支持手段３の中間輪１４は、フレーム６の穴１３の中心線を支点にして、中間輪１４の外周面にそって複数のニードル１７を配したニードル列と中間輪１４の外周面間で角変位される。中間輪１４と連結されているハウジング部５は、ハウジング部軸方向保持手段７により印刷胴１２の軸方向の動きを禁止すべく規制された状態で、前記中間輪１４と一体で角変位される。詳細には、ハウジング部５は、突起部１８のフレーム６側の面をフレーム６に接触させられながら角変位される。そして、ラジアル荷重支持手段３及びハウジング部５に嵌め込まれているアンギュラ形玉軸受４に支持される印刷胴１２は、中心線が相違するフレーム６の穴１３の中心線を支点にして移動する。この動作により印刷胴１２は、印刷作用位置と、非印刷作用位置との間を移動する。
【００３７】
図２に示された第２実施の形態に係る印刷胴１２の軸受装置１’は、図１に示される実施の形態とはラジアル荷重支持手段３’が相違している。
【００３８】
すなわち図２に示されるように、ラジアル荷重支持手投３’は、印刷胴１２の軸２に嵌め込まれるとともにフレーム６’の穴１３’に嵌め込まれ、印刷胴１２をフレーム６’に対し回転可能にしている。ラジアル荷重支持手段３’は、内輪１０、外輪２０及び、内輪１０と外輪２０との間に内輪１０の外周面にそって円筒ころ１６を複数配した、ラジアル荷重を受けるための円筒ころ列とで構成されている。
【００３９】
ラジアル荷重支持手段３’の内輪１０は、フレーム６’の穴１３’の中心線と相違する位置に中心線を有するリング状体であり、内径が印刷胴１２の軸２の外径と同径で、軸２に嵌め込まれる。また、外輪２０は、内径が内輪１０の中心線と共通の中心線を有するとともに外径はフレーム６’の穴１３’の中心線と共通の中心線を有する偏心したリング状体であり、フレーム６’の穴１３’に角変位可能に嵌め込まれる。また、外輪２０は、ハウジング部５とボルトで連結されており、外輪２０及びハウジング部５は、一体でフレーム６’の穴１３’の中心線を支点として角変位する。外輪２０と内輪１０との間には、内輪１０の外周面にそって複数の円筒ころ１６を配した、印刷胴１２の半径方向のラジアル荷重を支持することが可能な円筒ころ列が複数配置されている。
【００４０】
この第２実施の形態に係る印刷胴１２の軸受装置１’は、ラジアル荷重支持手段３’以外の構成としては前記図１に示される実施の形態で説明したスラスト荷重支持手段４と、ハウジング部５と、ハウジング部軸方向保持手段７と、偏心部角変位駆動手段８を有する。これらの構成要素は、前記実施の形態と同じであり、その説明は省略する。
【００４１】
このように構成された第２実施の形態の印刷胴１２の軸受装置１’は、印刷胴１２により生ずるラジアル荷重及びスラスト荷重を、前記図１の実施の形態と同様に、印刷胴１２の軸２に嵌め込まれ、別個に配置されるラジアル荷重支持手段３と、アンギュラ形玉軸受４とにより別々に受けて、軸受装置１’は、印刷胴１２を支持する。
【００４２】
また、印刷胴１２を印刷作用位置と非印刷作用位置との間を移動させるには、偏心部角変位駆動手段８の駆動源より駆動連結板１９を押し又は引くことによりアーム２２に駆動を伝える。アーム２２と連結されているラジアル荷重支持手段３ ’の外輪２０は、フレーム６’の穴１３’の中心線を支点にして、外輪２０の外周面と穴１３’の内周面間で角変位される。外輪２０と連結しているハウジング部５は、ハウジング部軸方向保持手段７により印刷胴１２の軸方向の動きを禁止すべく規制された状態で、前記外輪２０と一体で角変位される。詳細には、ハウジング部５は、突起部１８のフレーム６’側の面をフレーム６’に接触させられながら角変位される。そして、ラジアル荷重支持手投３’及びハウジング部５に嵌め込まれているアンギュラ形玉軸受４に支持される印刷胴１２は、中心線が相違するフレーム６’の穴１３’の中心線を支点にして移動する。この動作により印刷胴１２は、印刷作用位置と、非印刷作用位置との間を移動する。
【００４３】
図３に示された第３実施の形態に係る印刷胴１２の軸受装置１’’は、図１に示される実施の形態とはラジアル荷重支持手段３’’が相違している。
【００４４】
すなわち図３に示されるように、ラジアル荷重支持手段３’’は、印刷胴１２の軸２に嵌め込まれるとともにフレーム６’’の穴１３’’に嵌め込まれ、印刷胴１２をフレーム６’’に対し回転可能にしている。ラジアル荷重支持手投３’’は、内輪１０、外輪２６及び、内輪１０と外輪２６との間に内輪１０の外周面にそって円筒ころ１６を複数配した、ラジアル荷重を受けるための円筒ころ列とを有する円筒ころ軸受２４と、この円筒ころ軸受２４を内周面に嵌め合わせられるとともに、フレーム６’’の穴１３’’に嵌め込まれた偏心スリーブ２７とで構成されており、図示の実施の形態では、偏心スリーブ２７は後で説明するハウジング部２３と一体に形成されている。
【００４５】
円筒ころ軸受２４の内輪１０は、フレーム６’’の穴１３’’の中心線と相違する位置に中心線を有するリング状体であり、内径が印刷胴１２の軸２の外径と同径で、軸２に嵌め込まれる。また、外輪２６は、内輪１０の中心線と共通の中心線を有するリング状体であり、後に説明する偏心スリーブ２７の内周面に嵌め込まれる。内輪１０と外輪２６との間には、内輪１０の外周面にそって複数の円筒ころ１６を配した、印刷胴１２の半径方向のラジアル荷重を支持することが可能な円筒ころ列が複数配置されている。
【００４６】
偏心スリーブ２７は、内径の中心線は、印刷胴１２の中心線と一致しており、内径は、円筒ころ軸受２４の外輪２６の外径と同じであり、内径に円筒ころ軸受２４が嵌め込まれる。また、偏心スリーブ２７の外径は、フレーム６’’の穴１３’’の中心線と共通の中心線をもち、フレーム６’’の穴１３’’に角変位可能に嵌め込まれる。つまり、偏心スリーブ２７の内径と外径の中心位置は偏心している。
【００４７】
このように構成された第３実施の形態に係る印刷胴１２の軸受装置１’’は、ラジアル荷重支持手段３’’以外の構成としては前記図１に示される実施の形態で説明したスラスト荷重支持手段４と、ハウジング部２３と、ハウジング部軸方向保持手段７と、偏心部角変位駆動手段８を有する。これらの構成要素は、ハウジング部２３がラジアル荷重支持手段３’’の偏心スリーブ２７と一体に形成されている点を除けば前記実施の形態と同じであり、その説明は省略する。なお、ハウジング部２３を偏心スリーブ２７と別個の部材とし、両者をボルト連結してもよいことは勿論である。
【００４８】
このように構成された第３実施の形態の印刷胴１２の軸受装置１’’は、図３に示されるように、印刷胴１２により生ずるラジアル荷重及びスラスト荷重を、前記実施の形態と同様に、印刷胴１２の軸２に嵌め込まれ、別個に配置されるラジアル荷重支持手段３’’の円筒ころ軸受２４と、アンギュラ形玉軸受４とにより別々に受けて、軸受装置１’’は、印刷胴１２を支持する。
【００４９】
また、印刷胴１２を印刷作用位置と非印刷作用位置との間を移動させるには、偏心部角変位駆動手段８の駆動源より駆動連結板１９を押し又は引くことによりアーム２２に駆動を伝える。アーム２２と連結されている円筒ころ軸受２４が嵌め込まれている偏心スリーブ２７と、アンギュラ形玉軸受４が嵌め込まれ、かつ偏心スリーブ２７と一体に形成されたハウジング部２３は、フレーム６’’の穴１３’’の中心線を支点にして、偏心スリーブ２７の外周面と穴１３’’の内周面間で角変位される。ハウジング部２３は、ハウジング部軸方向保持手段７により印刷胴１２の軸方向の動きを禁止すべく規制された状態で、偏心スリーブ２７とともに角変位される。詳細には、ハウジング部２３は、突起部１８のフレーム６’’側の面をフレーム６’’に接触させられながら角変位される。そして、偏心スリーブ２７に嵌め込まれている円筒ころ軸受２４と、ハウジング部２３に嵌め込まれているアンギュラ形玉軸受４に支持される印刷胴１２は、中心線が相違するフレーム６’’の穴１３’’の中心線を支点にして移動する。この動作により印刷胴１２は、印刷作用位置と、非印刷作用位置との間を移動する。
【００５０】
図１、図２、図３で説明したように、印刷稼働することにより生じる印刷胴１２のラジアル荷重及びスラスト荷重は、印刷胴１２の軸２に嵌め込まれ、別個に設けたラジアル荷重支持手段３及びスラスト荷重支持軸受手段４により支持されるようにしたので、いずれかの軸受手段が破損した場合でも、破損した軸受手段だけを交換可能となり、更に、フレーム６、６’、６’’に対してハウジング部５（図１、図２の場合）又は２３（図３の場合）を、印刷胴１２の軸方向の動きを禁止すべく規制して、保持するようにし、ハウジング部５又は２３と印刷胴１２の軸２との間に、スラスト荷重を支持する軸受手投を１段の軸受列にして設けたことにより、軸受列の累積によるがたを従来のものよりはるかに小さくすることができ、スラスト荷重によるがたを少なくできた。
【００５１】
【発明の効果】
以上記載の通りであるので、この発明の実施により以下の効果が得られる。
【００５２】
印刷胴を回転可能に、かつ印刷胴の中心線と相違する支持体の穴の中心線を支点にして印刷胴を印刷作用位置と非印刷作用位置とに移動可能に支持する印刷胴の軸受装置において、印刷胴が回転し、稼働することにより生じる印刷胴の半径方向に作用するラジアル荷重を支持するラジアル荷重支持手段と、印刷胴の軸方向に作用するスラスト荷重を支持するスラスト荷重支持手段とを個別化して、印刷胴の軸に嵌め込む構造としたことにより、いずれかの軸受手段が破損した場合には、破損した軸受手段だけを交換可能でメインテナンスが容易となった。
【００５３】
また、支持体に対してハウジング部を、印刷胴の軸方向への移動を禁止して設け、ハウジング部と印刷胴の軸との問に、スラスト荷重を支持するスラスト荷重支持手段を１段の軸受列にして設けたことにより、軸受列の累積によるスラスト荷重によるがたを少なくすることができ、印刷精度が向上した。
【００５４】
また、スラスト荷重支持手段として、アンギュラ形玉軸受にしたことにより、印刷胴のスラスト荷重を効率よく支持することが容易となった。
【図面の簡単な説明】
【図１】この発明の実施の形態の印刷胴の軸受装置の概略断面図である。
【図２】第２実施の形態の印刷胴の軸受装置の概略断面図である。
【図３】第３実施の形態の印刷胴の軸受装置の概略断面図である。
【符号の説明】
１，１’，１’’ 軸受装置
２ 軸
３，３’，３’’ ラジアル荷重支持手段
４ スラスト荷重支持手段（アンギュラ形玉軸受）
５ ハウジング部
６，６’，６’’ フレーム（支持体）
７ ハウジング部軸方向保持手段
８ 偏心部角変位駆動手段
９ カラー
１０ 内輪
１１ 軸受押え
１２ 印刷胴
１３，１３’，１３’’ 穴
１４ 中間輪
１５ 外輪
１６ 円筒ころ
１７ ニードル
１８ 突起部
１９ 駆動連結板
２０ 外輪
２１ 軸受押え
２２ アーム
２３ ハウジング部
２４ 円筒ころ軸受
２５ 段差
２６ 外輪
２７ 偏心スリーブ
【発明の属する技術分野】
この発明は、輪転印刷機の印刷胴の軸受装置に関し、特に印刷胴が印刷作用位置と、非印刷作用位置とに移動可能に動作するブランケット胴及び版胴の軸受装置に関する。
【０００２】
【従来の技術】
印刷胴の軸受装置については、特許第２５３３０４０号公報に示されるものが公知である。
【０００３】
特許第２５３３０４０号公報には、印刷機の印刷胴の軸受装置が示され、この軸受装置は、それぞれの間にころがり軸受列が配置される軌道輪である、内輪と、中間輪と、外輪とで構成されている。そして、軸受装置の内輪は印刷胴のジャーナルに嵌め込まれ、外輪は軸受ケーシングに嵌め込まれる。
【０００４】
中間輪の内径の中心線は印刷胴の軸の中心線と一致し、また、外径の中心線は軸受ケーシングの穴の中心線と一致していて中心線が相違しており、偏心している。軸受ケーシングの外部に位置した操作部材により中間輪は外径の中心線を支点にして円周方向に角変位される。また、中間輪が角変位されることにより、中間輪の内径の中心線と軸の中心線が一致している印刷胴は、同様に中間輪の外径の中心線を支点にして移動する。
【０００５】
また、内輪と中間輪との間のころがり軸受列は、円筒ローラー軸受列および玉軸受列またはクロスローラー軸受列が設けられ、中間輪と外輪との間のころがり軸受列は、円筒ローラー軸受列および玉軸受列が設けられる。
【０００６】
【発明が解決しようとする課題】
特許第２５３３０４０号公報においては、内輪と中間輪及び中間輪と外輪との間に、印刷胴の軸方向に並べて円筒ローラー軸受列及び玉軸受列又はクロスローラー軸受列が配置されている。
【０００７】
円筒ローラー軸受列は、印刷胴の半径方向に作用するラジアル荷重を支持するための軸受であり、玉軸受列またはクロスローラー軸受列は、印刷胴の軸方向に作用するスラスト荷重を支持するための軸受けである。この作用の異なる軸受列が内輪と中間輪間および中間輪と外輪間に並べて設けられているので、いずれか一つが破損した場合には、内輪、中間輪、外輪及び間に配置されているころがり軸受列すべてを交換しなければならなかった。
【０００８】
また、前記軸受装置の内輪は、印刷胴のジャーナルに挿め込まれ、軸方向を固定され、また、軸受装置の外輪は、印刷機の軸受ケーシングの穴部に嵌め込まれ、軸方向を固定されている。印刷胴の軸方向及び半径方向に作用するラジアル荷重及びスラスト荷重は、軸受装置の内輪、中間輪、外輪、軸受ケーシングへと伝達され、内輪と中間輪との間及び中間輪と外輪との間に設けられた２つの軸受列の、円筒ローラー軸受列がラジアル荷重を、玉軸受列又はクロスローラー軸受列がスラスト荷重を受けている。このように、荷重を複数かつ複数段の軸受列で受けるので、大きながたが生じやすく、とりわけ、スラスト荷重によるがたは、内輪と中間輪の間の軸受列によるがたと、外輪と中間輪の間の軸受列によるがたの累積により、がたが顕著にあらわれ易かった。
【０００９】
他方、ラジアル軸受およびスラスト軸受を別々に独立して設けた印刷胴の軸受装置として、特許第２７５８３４６号に開示されているものがある。この装置は、印刷胴の軸にラジアル軸受を設け、印刷胴の半径方向に作用するラジアル荷重を支持しており、また、ラジアル軸受の両側より、ラジアル軸受が嵌め込まれている印刷機のフレームを両側より挟むようにスラスト軸受を配置して、印刷胴の軸方向に作用するスラスト荷重を受けるようになっている。しかし、この軸受装置は固定軸受として構成されており、印刷胴を印刷作用位置と、非印刷作用位置とに移動させることができなかった。
【００１０】
この発明は、前記従来の技術がかかえていた課題を一挙に解決しようとするもので、印刷胴を支持するためのがたが少なく、印刷胴の半径方向、軸方向に作用する荷重を別々の軸受で支持することにより、いずれかの軸受手段が破損した場合でも、別々に取り外し、取り付けができ、メインテナンスが容易で、印刷胴を印刷作用位置と、非印刷作用位置との間を移動可能に動作させることができる軸受装置を提供することを目的としている。
【００１１】
【課題を解決するための手段】
そのためこの発明の印刷胴の軸受装置は、印刷胴を回転可能に、かつ印刷作用位置と非印刷作用位置とに移動可能に、支持体に支持せしめる印刷胴の軸受装置において、支持体と印刷胴の軸との間に、支持体に設けた穴の中心線周りに角変位可能、かつ支持体に設けた穴と中心線を異にする穴を有する偏心部を少なくとも備えたラジアル荷重支持手段と、印刷胴の軸方向への移動を禁止するスラスト荷重支持手段と、偏心部に連係し、かつ支持体と当該支持体に固着された保持手段とで挟むことによって支持体に対して印刷胴の軸方向への移動を禁止するよう設けたハウジング部と、前記偏心部を支持体の穴の中心線周りに角変位させるとともに、その位置を保持可能な偏心部角変位駆動手段とを備え、前記スラスト荷重支持手段が前記ラジアル荷重支持手段と並んで印刷胴の同一径の軸に配置されるとともに前記ハウジング部と前記印刷胴の軸との間に介在されて設けられ、かつ前記ハウジング部の下端が前記スラスト荷重支持手段の位置を規制するようにされていることを特徴としている。
【００１２】
そして前記スラスト荷重支持手段は、アンギュラ形玉軸受が用いられる。
【００１３】
また前記ラジアル荷重支持手段が、中心線を共有する外輪と中間輪を有し、かつこれらとは中心線の相違する内輪を有し、内輪と中間輪との間及び外輪と中間輪の間にそれぞれころがり部材を介在させたラジアル荷重軸受であり、中間輪が支持体の穴の中心線周りに角変位可能である場合と、中心線の相違する内輪と外輪を有するとともに内輪と外輪との間にころがり部材を介在させたラジアル荷重軸受であり、外輪が支持体の穴の中心線周りに角変位可能である場合と、中心線を共有する内輪と外輪を有し、かつ内輪と外輪との間にころがり部材を介在させたラジアル荷重軸受と、このラジアル荷重軸受を内周面に嵌め合わせられるとともに内周面と中心線が相違する外周面を有する偏心スリーブとからなり、偏心スリーブが支持体の穴の中心線周りに角変位可能である場合とがある。
【００１４】
そして前記ころがり部材は、円筒ころが用いられる。
【００１５】
偏心部角変位駆動手段によって印刷作用位置と非印刷作用位置との移動が可能となり、印刷胴の軸方向への移動を禁止するハウジング部の構造により、スラスト荷重によるがたが減少する。また、印刷胴の半径方向に作用するラジアル荷重を支持するラジアル荷重支持手段と、印刷胴の軸方向に作用するスラスト荷重を支持するスラスト荷重支持手段とが別個に設けられて印刷胴の軸に嵌め込まれる構造であるので、破損した軸受手段だけの交換が可能となる。
【００１６】
【発明の実施の形態】
次に、この発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【００１７】
図１はこの発明の実施の形態の印刷胴の軸受装置の概略断面図、図２は第２実施の形態の印刷胴の軸受装置の概略断面図、図３は第３実施の形態の印刷胴の軸受装置の概略断面図を示している。
【００１８】
図１において、印刷機の印刷胴１２は、印刷胴１２の両端近傍にある支持体であるフレーム６の穴１３に設けられた軸受装置１により印刷胴１２の円周方向に回転可能に支持され、また、印刷胴１２は、印刷作用位置と、非印刷作用位置との間を移動可能に支持されている。
【００１９】
この発明の実施の形態の印刷胴１２の一方の軸受装置１が示されており、また図示されていないが、他方側も同様の軸受装置が設けられている。
【００２０】
軸受装置１は、ラジアル荷重支持手段３と、スラスト荷重支持手段４と、ハウジング部５と、支持体であるフレーム６と、ハウジング部軸方向保持手段７と、偏心部角変位駆動手段８とを備えて構成されている。以下これら及びこれらに隣接する各部について構成を説明する。
【００２１】
（１） 印刷胴１２の軸２
印刷胴１２の軸２は、印刷胴１２の軸方向の両側に位置し、印刷胴１２の外径より小径の軸状で、後で説明するラジアル荷重支持手段３及びスラスト荷重支持手段４が嵌め込まれ、これら荷重支持手段の軸方向の位置が固定可能なように、段差２５が設けられている。
【００２２】
（２） ラジアル荷重支持手段３
ラジアル荷重支持手段３は、印刷胴１２の軸２に嵌め込まれるとともにフレーム６の穴１３に嵌め込まれ、印刷胴１２をフレーム６に対し回転可能にしている。ラジアル荷重支持手段３は、内輪１０と、中間輪１４と、外輪１５及び、内輪１０と中間輪１４の間に内輪１０の外周面にそって円筒ころ１６を複数配した、ラジアル荷重を受けるための円筒ころ列と、中間輪１４と外輪１５との間に中間輪１４の外周面にそってニードル１７又は円筒ころ（円筒ころ１６と同様のもの）を複数配した、ラジアル荷重を受けるためのニードル列又は円筒ころ列とで構成されている。
【００２３】
〔１〕 内輪１０
内輪１０は、フレーム６の穴１３の中心線と相違する位置に中心線を有するリング状体であり、内径が印刷胴１２の軸２の外径と同径で、軸２に嵌め込まれる。
【００２４】
〔２〕 中間輪１４
中間輪１４は、内径が内輪１０の中心線と共通の中心線を有するとともに外径はフレーム６の穴の中心線と共通の中心線を有する偏心したリング状体である。つまり、中間輪１４の内径と外径の中心位置は偏心している。中間輪１４と内輪１０との間には、内輪１０の外周面にそって複数の円筒ころ１６を配した、印刷胴１２の半径方向のラジアル荷重を支持することが可能な円筒ころ列が複数配置されている。
【００２５】
〔３〕 外輪１５
外輪１５は、フレーム６の穴１３の中心線と共通の中心線を有するリング状体であり、フレーム６の穴１３に嵌め込まれる。
【００２６】
中間輪１４と外輪１５との間には、中間輪１４の外周面にそって複数のニードル１７を配したニードル列が複数設けられ、ニードル列は、印刷胴１２の半径方向のラジアル荷重を支持するとともに、中間輪１４及び中間輪１４とボルトで連結されている後で説明するハウジング部５を、フレーム６の穴１３の中心線を支点としてスムースに角変位可能に支持している。
【００２７】
また、前記ニードル１７は、例えば円筒ころであってもよい。
【００２８】
（３） スラスト荷重支持手段４
スラスト荷重支持手段４は、前記軸２に嵌め込まれ、印刷胴１２に作用する軸方向のスラスト荷重を支持する。
【００２９】
この実施の形態では、スラスト荷重支持手段４は、１組のアンギュラ形玉軸受を使用する。スラスト荷重支持手段４としてのアンギュラ形玉軸受４は、スラスト荷重を支持することが可能であり、また支持する方向が決まっているので、図１に示されるように、軸方向の左右両方向のスラスト荷重を受けるために１組のアンギュラ形玉軸受４を荷重がかかる方向に向き合わせ、又は背面合わせにして取り付ける。
【００３０】
前記ラジアル荷重支持手段３の円筒ころ列を配する内輪１０とアンギュラ形玉軸受４との間は、互いの間を軸方向に位置決めされるようにカラー９が設けられ、軸２の末端に設けた軸受押え１１により、円筒ころ列を配する内輪１０及びアンギュラ形玉軸受４に一定圧の予圧をかけるようになっている。
【００３１】
（４） ハウジング部５
ハウジング部５は、片側断面がＬ字形のリング形状をしており、Ｌ字形の突起部１８側の端面は、前記ラジアル荷重支持手段３の中間輪１４とボルトで連結され、ハウジング部５は中間輪１４と一体になっている。また、この端面の半径方向外側に近い突起部１８のフレーム６側の面がフレーム６の側面に接触させられており、後で説明するハウジング部軸方向保持手段７によって印刷胴１２の軸方向の動きを禁止すべく規制されて、保持されている。ハウジング部５の穴の中心線は、印刷胴１２の中心線と一致しており、穴の径は、アンギュラ形玉軸受４の外径と同じであり、穴にアンギュラ形玉軸受４が嵌め込まれる。
【００３２】
また、軸受押え２１によりアンギュラ形玉軸受４を印刷胴１２の軸方向に位置決めして、一定圧の予圧がかけられる。
【００３３】
（５） ハウジング部軸方向保持手段７
ハウジング部軸方向保持手段７は、断面Ｌ形のブロック体であり、Ｌ形のその短足がフレーム６の側面に接触させて取り付けられるとともに、ハウジング部５の外側の突起部１８が、Ｌ形の長足側面とフレーム６の側面との間に僅かにゆるめに挟まれる構成で、ハウジング部５を円周方向に角変位可能、かつ印刷胴１２の軸方向の動きを禁止すべく規制して、保持する。
【００３４】
（６） 偏心部角変位駆動手段８
偏心部角変位駆動手段８は、ラジアル荷重支持手段３の中間輪１４の側面に取り付けられたアーム２２と、アーム２２の先端に角変位可能に連結され、アーム２２を介して中間輪１４に、円周方向の外力を伝える駆動連結板１９と、駆動連結板１９に駆動を与える図示しない駆動源よりなる。駆動の伝達は、駆動源より駆動連結板１９を中間輪１４の外周の接線と平行方向、すなわち図１において（後の図２、図３においても同様）は紙面に対し垂直方向に押し又は引くことにより、アーム２２の先端をフレーム６の穴１３の中心線周りに角変位するように押し又は引き、アーム２２と連結され一体で動作するラジアル荷重支持手段３の中間輪１４及びこの中間輪１４と連結されたハウジング部５をフレーム６の穴１３の中心線を支点にして角変位させる。
【００３５】
以上のように構成された本発明の実施の形態の印刷胴１２の軸受装置１は、印刷機の印刷胴１２が回転され、印刷稼働されることにより、印刷胴１２には、半径方向のラジアル荷重及び軸方向のスラスト荷重が生じる。このラジアル荷重は、軸受装置１のラジアル荷重支持手段３により受けられ、また印刷胴１２のスラスト荷重は、アンギュラ形玉軸受４により受けらる。このようにラジアル荷重及びスラスト荷重を別個の荷重支持手段で受けることにより、軸受装置１は、印刷胴１２を支持する。
【００３６】
また、印刷胴１２を印刷作用位置と非印刷作用位置との間を移動させるには、偏心部角変位駆動手段８の駆動源より駆動連結板１９を押し又は引くことによりアーム２２に駆動を伝える。アーム２２と連結しているラジアル荷重支持手段３の中間輪１４は、フレーム６の穴１３の中心線を支点にして、中間輪１４の外周面にそって複数のニードル１７を配したニードル列と中間輪１４の外周面間で角変位される。中間輪１４と連結されているハウジング部５は、ハウジング部軸方向保持手段７により印刷胴１２の軸方向の動きを禁止すべく規制された状態で、前記中間輪１４と一体で角変位される。詳細には、ハウジング部５は、突起部１８のフレーム６側の面をフレーム６に接触させられながら角変位される。そして、ラジアル荷重支持手段３及びハウジング部５に嵌め込まれているアンギュラ形玉軸受４に支持される印刷胴１２は、中心線が相違するフレーム６の穴１３の中心線を支点にして移動する。この動作により印刷胴１２は、印刷作用位置と、非印刷作用位置との間を移動する。
【００３７】
図２に示された第２実施の形態に係る印刷胴１２の軸受装置１’は、図１に示される実施の形態とはラジアル荷重支持手段３’が相違している。
【００３８】
すなわち図２に示されるように、ラジアル荷重支持手投３’は、印刷胴１２の軸２に嵌め込まれるとともにフレーム６’の穴１３’に嵌め込まれ、印刷胴１２をフレーム６’に対し回転可能にしている。ラジアル荷重支持手段３’は、内輪１０、外輪２０及び、内輪１０と外輪２０との間に内輪１０の外周面にそって円筒ころ１６を複数配した、ラジアル荷重を受けるための円筒ころ列とで構成されている。
【００３９】
ラジアル荷重支持手段３’の内輪１０は、フレーム６’の穴１３’の中心線と相違する位置に中心線を有するリング状体であり、内径が印刷胴１２の軸２の外径と同径で、軸２に嵌め込まれる。また、外輪２０は、内径が内輪１０の中心線と共通の中心線を有するとともに外径はフレーム６’の穴１３’の中心線と共通の中心線を有する偏心したリング状体であり、フレーム６’の穴１３’に角変位可能に嵌め込まれる。また、外輪２０は、ハウジング部５とボルトで連結されており、外輪２０及びハウジング部５は、一体でフレーム６’の穴１３’の中心線を支点として角変位する。外輪２０と内輪１０との間には、内輪１０の外周面にそって複数の円筒ころ１６を配した、印刷胴１２の半径方向のラジアル荷重を支持することが可能な円筒ころ列が複数配置されている。
【００４０】
この第２実施の形態に係る印刷胴１２の軸受装置１’は、ラジアル荷重支持手段３’以外の構成としては前記図１に示される実施の形態で説明したスラスト荷重支持手段４と、ハウジング部５と、ハウジング部軸方向保持手段７と、偏心部角変位駆動手段８を有する。これらの構成要素は、前記実施の形態と同じであり、その説明は省略する。
【００４１】
このように構成された第２実施の形態の印刷胴１２の軸受装置１’は、印刷胴１２により生ずるラジアル荷重及びスラスト荷重を、前記図１の実施の形態と同様に、印刷胴１２の軸２に嵌め込まれ、別個に配置されるラジアル荷重支持手段３と、アンギュラ形玉軸受４とにより別々に受けて、軸受装置１’は、印刷胴１２を支持する。
【００４２】
また、印刷胴１２を印刷作用位置と非印刷作用位置との間を移動させるには、偏心部角変位駆動手段８の駆動源より駆動連結板１９を押し又は引くことによりアーム２２に駆動を伝える。アーム２２と連結されているラジアル荷重支持手段３ ’の外輪２０は、フレーム６’の穴１３’の中心線を支点にして、外輪２０の外周面と穴１３’の内周面間で角変位される。外輪２０と連結しているハウジング部５は、ハウジング部軸方向保持手段７により印刷胴１２の軸方向の動きを禁止すべく規制された状態で、前記外輪２０と一体で角変位される。詳細には、ハウジング部５は、突起部１８のフレーム６’側の面をフレーム６’に接触させられながら角変位される。そして、ラジアル荷重支持手投３’及びハウジング部５に嵌め込まれているアンギュラ形玉軸受４に支持される印刷胴１２は、中心線が相違するフレーム６’の穴１３’の中心線を支点にして移動する。この動作により印刷胴１２は、印刷作用位置と、非印刷作用位置との間を移動する。
【００４３】
図３に示された第３実施の形態に係る印刷胴１２の軸受装置１’’は、図１に示される実施の形態とはラジアル荷重支持手段３’’が相違している。
【００４４】
すなわち図３に示されるように、ラジアル荷重支持手段３’’は、印刷胴１２の軸２に嵌め込まれるとともにフレーム６’’の穴１３’’に嵌め込まれ、印刷胴１２をフレーム６’’に対し回転可能にしている。ラジアル荷重支持手投３’’は、内輪１０、外輪２６及び、内輪１０と外輪２６との間に内輪１０の外周面にそって円筒ころ１６を複数配した、ラジアル荷重を受けるための円筒ころ列とを有する円筒ころ軸受２４と、この円筒ころ軸受２４を内周面に嵌め合わせられるとともに、フレーム６’’の穴１３’’に嵌め込まれた偏心スリーブ２７とで構成されており、図示の実施の形態では、偏心スリーブ２７は後で説明するハウジング部２３と一体に形成されている。
【００４５】
円筒ころ軸受２４の内輪１０は、フレーム６’’の穴１３’’の中心線と相違する位置に中心線を有するリング状体であり、内径が印刷胴１２の軸２の外径と同径で、軸２に嵌め込まれる。また、外輪２６は、内輪１０の中心線と共通の中心線を有するリング状体であり、後に説明する偏心スリーブ２７の内周面に嵌め込まれる。内輪１０と外輪２６との間には、内輪１０の外周面にそって複数の円筒ころ１６を配した、印刷胴１２の半径方向のラジアル荷重を支持することが可能な円筒ころ列が複数配置されている。
【００４６】
偏心スリーブ２７は、内径の中心線は、印刷胴１２の中心線と一致しており、内径は、円筒ころ軸受２４の外輪２６の外径と同じであり、内径に円筒ころ軸受２４が嵌め込まれる。また、偏心スリーブ２７の外径は、フレーム６’’の穴１３’’の中心線と共通の中心線をもち、フレーム６’’の穴１３’’に角変位可能に嵌め込まれる。つまり、偏心スリーブ２７の内径と外径の中心位置は偏心している。
【００４７】
このように構成された第３実施の形態に係る印刷胴１２の軸受装置１’’は、ラジアル荷重支持手段３’’以外の構成としては前記図１に示される実施の形態で説明したスラスト荷重支持手段４と、ハウジング部２３と、ハウジング部軸方向保持手段７と、偏心部角変位駆動手段８を有する。これらの構成要素は、ハウジング部２３がラジアル荷重支持手段３’’の偏心スリーブ２７と一体に形成されている点を除けば前記実施の形態と同じであり、その説明は省略する。なお、ハウジング部２３を偏心スリーブ２７と別個の部材とし、両者をボルト連結してもよいことは勿論である。
【００４８】
このように構成された第３実施の形態の印刷胴１２の軸受装置１’’は、図３に示されるように、印刷胴１２により生ずるラジアル荷重及びスラスト荷重を、前記実施の形態と同様に、印刷胴１２の軸２に嵌め込まれ、別個に配置されるラジアル荷重支持手段３’’の円筒ころ軸受２４と、アンギュラ形玉軸受４とにより別々に受けて、軸受装置１’’は、印刷胴１２を支持する。
【００４９】
また、印刷胴１２を印刷作用位置と非印刷作用位置との間を移動させるには、偏心部角変位駆動手段８の駆動源より駆動連結板１９を押し又は引くことによりアーム２２に駆動を伝える。アーム２２と連結されている円筒ころ軸受２４が嵌め込まれている偏心スリーブ２７と、アンギュラ形玉軸受４が嵌め込まれ、かつ偏心スリーブ２７と一体に形成されたハウジング部２３は、フレーム６’’の穴１３’’の中心線を支点にして、偏心スリーブ２７の外周面と穴１３’’の内周面間で角変位される。ハウジング部２３は、ハウジング部軸方向保持手段７により印刷胴１２の軸方向の動きを禁止すべく規制された状態で、偏心スリーブ２７とともに角変位される。詳細には、ハウジング部２３は、突起部１８のフレーム６’’側の面をフレーム６’’に接触させられながら角変位される。そして、偏心スリーブ２７に嵌め込まれている円筒ころ軸受２４と、ハウジング部２３に嵌め込まれているアンギュラ形玉軸受４に支持される印刷胴１２は、中心線が相違するフレーム６’’の穴１３’’の中心線を支点にして移動する。この動作により印刷胴１２は、印刷作用位置と、非印刷作用位置との間を移動する。
【００５０】
図１、図２、図３で説明したように、印刷稼働することにより生じる印刷胴１２のラジアル荷重及びスラスト荷重は、印刷胴１２の軸２に嵌め込まれ、別個に設けたラジアル荷重支持手段３及びスラスト荷重支持軸受手段４により支持されるようにしたので、いずれかの軸受手段が破損した場合でも、破損した軸受手段だけを交換可能となり、更に、フレーム６、６’、６’’に対してハウジング部５（図１、図２の場合）又は２３（図３の場合）を、印刷胴１２の軸方向の動きを禁止すべく規制して、保持するようにし、ハウジング部５又は２３と印刷胴１２の軸２との間に、スラスト荷重を支持する軸受手投を１段の軸受列にして設けたことにより、軸受列の累積によるがたを従来のものよりはるかに小さくすることができ、スラスト荷重によるがたを少なくできた。
【００５１】
【発明の効果】
以上記載の通りであるので、この発明の実施により以下の効果が得られる。
【００５２】
印刷胴を回転可能に、かつ印刷胴の中心線と相違する支持体の穴の中心線を支点にして印刷胴を印刷作用位置と非印刷作用位置とに移動可能に支持する印刷胴の軸受装置において、印刷胴が回転し、稼働することにより生じる印刷胴の半径方向に作用するラジアル荷重を支持するラジアル荷重支持手段と、印刷胴の軸方向に作用するスラスト荷重を支持するスラスト荷重支持手段とを個別化して、印刷胴の軸に嵌め込む構造としたことにより、いずれかの軸受手段が破損した場合には、破損した軸受手段だけを交換可能でメインテナンスが容易となった。
【００５３】
また、支持体に対してハウジング部を、印刷胴の軸方向への移動を禁止して設け、ハウジング部と印刷胴の軸との問に、スラスト荷重を支持するスラスト荷重支持手段を１段の軸受列にして設けたことにより、軸受列の累積によるスラスト荷重によるがたを少なくすることができ、印刷精度が向上した。
【００５４】
また、スラスト荷重支持手段として、アンギュラ形玉軸受にしたことにより、印刷胴のスラスト荷重を効率よく支持することが容易となった。
【図面の簡単な説明】
【図１】この発明の実施の形態の印刷胴の軸受装置の概略断面図である。
【図２】第２実施の形態の印刷胴の軸受装置の概略断面図である。
【図３】第３実施の形態の印刷胴の軸受装置の概略断面図である。
【符号の説明】
１，１’，１’’ 軸受装置
２ 軸
３，３’，３’’ ラジアル荷重支持手段
４ スラスト荷重支持手段（アンギュラ形玉軸受）
５ ハウジング部
６，６’，６’’ フレーム（支持体）
７ ハウジング部軸方向保持手段
８ 偏心部角変位駆動手段
９ カラー
１０ 内輪
１１ 軸受押え
１２ 印刷胴
１３，１３’，１３’’ 穴
１４ 中間輪
１５ 外輪
１６ 円筒ころ
１７ ニードル
１８ 突起部
１９ 駆動連結板
２０ 外輪
２１ 軸受押え
２２ アーム
２３ ハウジング部
２４ 円筒ころ軸受
２５ 段差
２６ 外輪
２７ 偏心スリーブ
Claims (6)
- 印刷胴を回転可能に、かつ印刷作用位置と非印刷作用位置とに移動可能に、支持体に支持せしめる印刷胴の軸受装置において、
支持体と印刷胴の軸との間に、支持体に設けた穴の中心線周りに角変位可能、かつ支持体に設けた穴と中心線を異にする穴を有する偏心部を少なくとも備えたラジアル荷重支持手段と、
印刷胴の軸方向への移動を禁止するスラスト荷重支持手段と、
偏心部に連係し、かつ支持体と当該支持体に固着された保持手段とで挟むことによって支持体に対して印刷胴の軸方向への移動を禁止するよう設けたハウジング部と、
前記偏心部を支持体の穴の中心線周りに角変位させるとともに、その位置を保持可能な偏心部角変位駆動手段とを備え、
前記スラスト荷重支持手段が前記ラジアル荷重支持手段と並んで印刷胴の同一径の軸に配置されるとともに前記ハウジング部と前記印刷胴の軸との間に介在されて設けられ、かつ前記ハウジング部の下端が前記スラスト荷重支持手段の位置を規制するようにされていることを特徴とする印刷胴の軸受装置。 - 前記スラスト荷重支持手段が、アンギュラ形玉軸受であることを特徴とする請求項１に記載の印刷胴の軸受装置。
- 前記ラジアル荷重支持手段が、中心線を共有する外輪と中間輪を有し、かつこれらとは中心線の相違する内輪を有し、内輪と中間輪との間及び外輪と中間輪の間にそれぞれころがり部材を介在させたラジアル荷重軸受であり、中間輪が支持体の穴の中心線周りに角変位可能であることを特徴とする請求項１又は請求項２に記載の印刷胴の軸受装置。
- 前記ラジアル荷重支持手段が、中心線の相違する内輪と外輪を有するとともに内輪と外輪との間にころがり部材を介在させたラジアル荷重軸受であり、外輪が支持体の穴の中心線周りに角変位可能であることを特徴とする請求項１又は請求項２に記載の印刷胴の軸受装置。
- 前記ラジアル荷重支持手段が、中心線を共有する内輪と外輪を有し、かつ内輪と外輪との間にころがり部材を介在させたラジアル荷重軸受と、このラジアル荷重軸受を内周面に嵌め合わせられるとともに内周面と中心線が相違する外周面を有する偏心スリーブとからなり、偏心スリーブが支持体の穴の中心線周りに角変位可能であることを特徴とする請求項１又は請求項２に記載の印刷胴の軸受装置。
- 前記ころがり部材が、円筒ころであることを特徴とする請求項３又は請求項４又は請求項５に記載の印刷胴の軸受装置。
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