JP2562193Y2 - パーキングブレーキ機構付きディスクブレーキ用針状ころ軸受 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案はパーキングブレーキ機構
付きディスクブレーキに用いられる針状ころ軸受に関す
るものである。

【０００２】

【従来の技術】ピストンが突出し可能に嵌合されるとと
もにそのピストンの突出し方向と反対側の端部にそのピ
ストンの軸心と直角な方向において取付穴が設けられた
シリンダ部と、その取付穴に軸心回りの回転可能に設け
られたカム軸と、そのカム軸の一端部に相対回転不能に
設けられてパーキングブレーキ操作力が入力されるレバ
ー部材と、そのカム軸の回転に伴って前記ピストン側へ
推されるトグルとを備えた形式のパーキングブレーキ機
構付きディスクブレーキが知られており、トグルに生じ
た推力によりピストンが突き出されてパーキングブレー
キが作動させられるようになっている。

【０００３】かかる形式のパーキングブレーキ機構付き
ディスクブレーキにおいては、通常、外輪の内周側に複
数の針状ころが配設されて成る針状ころ軸受により前記
カム軸が前記取付穴内に回転可能に支持されており、そ
の外輪の軸心と平行な方向の中間部に設けられた挿通穴
を前記トグルが挿通させられるようになっている。

【０００４】

【考案が解決しようとする課題】しかしながら、上記針
状ころ軸受の針状ころとしては、通常、外輪の軸心方向
長さより僅かに短い程度の比較的長いものが用いられて
おり、その針状ころの長手方向の中間部にトグルが配置
されるので、外輪の挿通穴にトグルを挿通させるために
その外輪の挿通穴が設けられている部分には針状ころを
配設することができなかった。このため、従来において
は、針状ころ軸受の外輪の全周に亘って針状ころが設け
られていないことから、カム軸の一端部に設けられたレ
バー部材にパーキングブレーキ操作力が入力されてカム
軸が回転させられる際にカム軸が傾いて、パーキングブ
レーキ効率が充分に得られない場合があった。

【０００５】これに対し、トグルの両側に別々に針状こ
ろ軸受を配設すれば、そのトグルの両側において針状こ
ろを外輪の全周に亘ってそれぞれ配設することができる
ため、パーキングブレーキ操作時におけるカム軸の傾き
を好適に防止できると考えられる。しかし、この場合に
は、一対の針状ころ軸受を別々に圧入等にて取付穴の所
定位置に固定しなければならないため、その針状ころ軸
受の取付穴への固定作業に時間を要するとともに、その
針状ころ軸受の固定作業時における位置決め性が悪くな
るという問題がある。また、トグルの両側に一対の針状
ころ軸受を設けると、針状ころ軸受の軸心と平行な方向
における設置スペースが増大する欠点がある。

【０００６】本考案は以上の事情を背景にして為された
ものであって、その目的とするところは、シリンダ部の
取付穴に針状ころ軸受により回転可能に設けられて一端
部に設けられたレバー部材にパーキングブレーキ操作力
が入力されるカム軸と、その針状ころ軸受の外輪を挿通
するように設けられてカム軸の回転に伴ってピストン側
へ推されるトグルとを備えた形式のパーキングブレーキ
機構付きディスクブレーキにおいて、パーキングブレー
キ操作時においてカム軸が傾くのを防止し得る針状ころ
軸受を提供することにある。

【０００７】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
の本考案の要旨とするところは、ピストンが突出し可能
に嵌合されるとともにそのピストンの突出し方向と反対
側の端部にそのピストンの軸心と直角な方向において取
付穴が設けられたシリンダ部と、その取付穴に軸心回り
の回転可能に設けられたカム軸と、そのカム軸の一端部
に相対回転不能に設けられてパーキングブレーキ操作力
が入力されるレバー部材と、そのカム軸の回転に伴って
前記ピストン側へ推されるトグルとを備えた形式のパー
キングブレーキ機構付きディスクブレーキにおいて、外
輪の内周側に複数の針状ころが配設されて成り且つその
外輪に前記トグルが挿通させられる挿通穴を有し、前記
カム軸を前記取付穴内において回転可能に支持する針状
ころ軸受であって、前記外輪の挿通穴のその外輪の軸心
と平行な方向の両側に位置する部分にも針状ころを有す
ることにある。

【０００８】

【作用および考案の効果】かかる構成のパーキングブレ
ーキ機構付きディスクブレーキ用針状ころ軸受によれ
ば、外輪のトグルが挿通させられる挿通穴の外輪軸心と
平行な方向の両側に位置する部分にも針状ころが設けら
れているので、外輪の全周に亘って針状ころを配置する
ことができる。これにより、トグルの両側に別々に針状
ころ軸受を設けて取付穴への針状ころ軸受の固定作業に
要する時間を増大させたりその固定作業時における針状
ころ軸受の位置決め性を悪化させたり更には針状ころ軸
受の軸心と平行な方向の設置スペースを増大させたりす
ることなく、パーキングブレーキ操作時におけるカム軸
の傾きを防止し得てパーキングブレーキ効率を充分に確
保し得る。

【０００９】

【実施例】以下、本考案の一実施例を図面に基づいて詳
細に説明する。

【００１０】図２は本考案の一例である針状ころ軸受を
備えたパーキングブレーキ機構付きディスクブレーキの
要部を示す図である。図において、車輪と共に回転可能
に設けられたディスクロータ１０の外周部にはキャリパ
１２が跨設されており、そのキャリパ１２は図示しない
非回転部材に固定された支持部材１４に図示しないスラ
イドピン等を介してディスクロータ１０の軸心と平行な
方向の移動可能に支持されている。キャリパ１２は、第
１シリンダボア１６を有し、その第１シリンダボア１６
内に全体として有底円筒状を成すピストン１８が軸心ま
わりの相対回転不能な状態で一方向の突出し可能に嵌合
されたシリンダ部２０と、そのシリンダ部２０のピスト
ン１８の突出し方向と反対側の端部においてシリンダ部
２０に一体に設けられた突出部２２と、シリンダ部２０
のピストン１８突出し方向の端部から一体に延び出して
ディスクロータ１０を間にしてシリンダ部２０と対向す
る二股状の爪部２４とを備えている。キャリパ１２の内
側、すなわち、ピストン１８と爪部２４との間には、一
対のパッド２６，２８がディスクロータ１０を挟んだ状
態で配設されており、それらパッド２６，２８は前記支
持部材１４によりディスクロータ１０の軸心と平行な方
向の移動可能に支持されている。

【００１１】上記突出部２２の内部には、第１シリンダ
ボア１６と隣接し且つ略同心に第２シリンダボア３０が
形成されており、その第２シリンダボア３０には、雄ね
じ部３２およびそれより大径の頭部３４を有するアジャ
ストボルト３６がその雄ねじ部３２がピストン１８内に
位置する状態で頭部３４において軸心方向の相対移動可
能かつ軸心回りの相対回転不能に嵌合されている。アジ
ャストボルト３６は、その頭部３４と第１シリンダボア
１６の内周面に一体的に設けられた座金３８との間に介
装されたスプリング４０によりピストン１８から離隔す
る方向へ常時付勢されており、雄ねじ部３２にはアジャ
ストナット４２が軸方向において所定のがたつきを有す
る状態で螺合されている。このアジャストナット４２の
雄ねじ部３２先端側に位置する端部には外周方向へ突き
出すフランジ部４４が設けられている。

【００１２】ピストン１８の開口側内周面には、板状を
成す環状部材４６がかしめにより一体的に固定されてい
るとともに、アジャストナット４２の円筒状部分の外周
側にはスラストベアリング４８および平座金５０がフラ
ンジ部４４に隣接して設けられている。これら平座金５
０と環状部材４６との間にはスプリング５２が所定の予
圧状態で介挿されており、このスプリング５２の付勢力
に従ってアジャストナット４２がそのフランジ部４４の
外周面に形成されテーパ面においてピストン１８のテー
パ状の内壁とピストン１８の突出し方向において当接さ
せられるようになっている。なお、スプリング５２の付
勢力は前記スプリング４０の付勢力よりも小さく設定さ
れている。また、図２において、５４は、ピストン１８
と第１シリンダボア１６との間を液密にシールするとと
もにピストン１８の戻し作用を為すピストンシールであ
る。

【００１３】突出部２２の内部には、更に、図１および
図２に示すように、第２シリンダボア３０の第１シリン
ダボア１６側と反対側において第１シリンダボア１６お
よび第２シリンダボア３０の軸心と直角な方向に延びる
取付穴５６がその第２シリンダボア３０と連通する状態
で設けられており、その取付穴５６内にはカム軸５８が
針状ころ軸受６０を介して軸心まわりの回転可能に取り
付けられている。

【００１４】針状ころ軸受６０は、図１乃至図３に示す
ように、円筒状を成し、周壁の軸心と平行な方向の中間
部にたとえば長手矩形状の挿通穴６１を有する外輪６２
と、その外輪６２の内周側であって軸心と平行な方向の
両端部側に位置する部分に挿通穴６１にかからないよう
にして外輪６２の全周に亘って２列で設けられ、保持器
６４により保持された多数の比較的短い針状ころ６６と
から構成されており、外輪６２において前記取付穴５６
の内周面に圧入にて固定されている。なお、上記保持器
６４にも外輪６２の挿通穴６１と対応する形状の挿通穴
６８が設けられている。

【００１５】カム軸５８の一端部であって突出部２２の
外側に位置する部分には、図１および図２に示すよう
に、パーキングブレーキ操作力が入力されるレバー部材
７２が相対回転不能に取り付けられているとともに、カ
ム軸５８の長手方向中間部には係合凹所７４が形成され
ており、その係合凹所７４とアジャストボルト３６の頭
部３４の先端面に形成された係合凹所７６との間に、棒
状を成すトグル７８が針状ころ軸受６０の外輪６２の挿
通穴６１および保持器６４の挿通穴６８を挿通する状態
で介装されている。なお、図１において、８０はダスト
カバーである。

【００１６】以上のように構成されたディスクブレーキ
のパーキングブレーキ操作時においては、レバー部材７
２によりカム軸５８が図２中左回りに回転させられるに
伴ってトグル７８に推力が生じ、その推力がアジャスト
ボルト３６、アジャストナット４２を介してピストン１
８に伝達されることにより、ピストン１８とキャリパ１
２の爪部２４とによって互いに接近させられるパッド２
６，２８によりディスクロータ１０が狭圧されて制動が
行われる。一方、油圧による制動時においては、ピスト
ン１８と共に前進させられる環状部材４６によりスラス
トベアリング４８等を介してアジャストナット４２が一
方向へ回転させられることに基づいて、パーキングブレ
ーキ操作ストロークが自動的に調節されるようになって
いる。なお、上記ブレーキ作動および調節作動は本考案
の理解に必ずしも必要ではないため、その詳細な説明は
省略する。

【００１７】上述のように本実施例によれば、針状ころ
軸受６０の針状ころ６６は、外輪６２の軸心と平行な方
向の両端部側に位置する部分に挿通穴６１にかからない
ようにして外輪６２の全周に亘って２列で設けられてい
るので、パーキングブレーキ操作時におけるカム軸５８
の傾きを好適に防止することができて、パーキングブレ
ーキ効率を充分に確保することができる。

【００１８】ここで、図６は従来の針状ころ軸受９０の
一例を示す図である。なお、以下の説明において、前述
の実施例と共通する部分には同一の符合を付して説明を
省略する。上記針状ころ軸受９０は、外輪６２の軸心と
平行な方向の長さより僅かに短い程度の比較的長い多数
の針状ころ９２（図６においては１個のみ図示）が保持
器９４にて保持されて、それら針状ころ９２の長手方向
中間部にトグル７８が配置される構成であることから、
外輪６２の挿通穴６１が設けられている部分には針状こ
ろ９２を配置することができない。このため、外輪６２
の全周に亘って針状ころ９２が設けられていないことに
起因して、カム軸５８の一端部に設けられたレバー部材
７２（図示せず）にパーキングブレーキ操作力が入力さ
れてカム軸５８が回転させられる際に、カム軸５８がた
とえば図６において一点鎖線で示すように傾いて、パー
キングブレーキ効率が充分に得られない場合があったの
である。この場合において、トグル７８の両側に別々に
針状ころ軸受を設けてそのトグル７８の両側において針
状ころを外輪の全周に亘ってそれぞれ配置すれば、パー
キングブレーキ操作時におけるカム軸５８の傾きを好適
に防止できると考えられるが、一対の針状ころ軸受を別
々に圧入にて取付穴５６の所定位置に固定しなければな
らないため、取付穴５６への針状ころ軸受の固定作業に
時間を要するとともに、その固定作業時における針状こ
ろ軸受の位置決め性が悪くなる一方、トグル７８の両側
に一対の針状ころ軸受を設けると、針状ころ軸受の軸心
と平行な方向の設置スペースが増大する欠点がある。

【００１９】これに対し、本実施例の針状ころ軸受６０
によれば、上述のように、外輪６２の軸心と平行な方向
の両端部側に位置する部分に挿通穴６１にかからないよ
うにして外輪６２の全周に亘って２列で針状ころ６６が
設けられているので、トグル７８の両側に別々に針状こ
ろ軸受を設けて取付穴５６への針状ころ軸受の固定作業
に要する時間を増大させたりその固定作業時における針
状ころ軸受の位置決め性を悪化させたり更には針状ころ
軸受の軸心と平行な方向の設置スペースを増大させたり
することなく、パーキングブレーキ操作時におけるカム
軸５８の傾きを好適に防止できるのである。

【００２０】次に、本考案の他の実施例を図４および図
５に基づいて説明する。なお、以下の説明において前述
の実施例と共通する部分には同一の符合を付して説明を
省略する。

【００２１】図４および図５において、針状ころ軸受８
２は、外輪６２の挿通穴６１の外輪６２軸心と平行な方
向の両側に位置する部分にのみ配置された前述の実施例
と同様の比較的短い針状ころ６６と、外輪６２の周方向
において挿通穴６１以外の部分に配置された前記従来の
針状ころ軸受９０の針状ころ９４と同様の比較的長い針
状ころ８４とが、挿通穴６８を有する保持器８６により
保持されて成る。このようにしても前述の実施例と同様
の効果が得られる。

【００２２】以上、本考案の一実施例を図面に基づいて
説明したが、本考案はその他の態様においても適用され
る。

【００２３】たとえば、前記実施例では、針状ころ軸受
６０は外輪６２、針状ころ６６、および保持器６４にて
構成されているが、針状ころ軸受は内輪を有するもので
あっても差し支えない。

【００２４】その他、本考案はその趣旨を逸脱しない範
囲において種々変更が加えられ得るものである。

【図面の簡単な説明】

【図１】第２図におけるＩ─Ｉ視断面の要部を示す図で
ある。

【図２】本考案の一実施例である針状ころ軸受を備えた
パーキングブレーキ機構付きディスクブレーキの要部を
示す断面図である。

【図３】図１における針状ころ軸受のＩＩＩ−ＩＩＩ視
断面図であって、保持器を除去して示す図である。

【図４】図５における針状ころ軸受のＩＶ−ＩＶ視断面
図であって、保持器を除去して示す図である。

【図５】本考案の針状ころ軸受の他の例を示す図であっ
て、図３に相当する図である。

【図６】従来の針状ころ軸受により回転可能に支持され
たカム軸のパーキングブレーキ操作時における傾きを説
明するための図である。

【符号の説明】

１８ ピストン ２０ シリンダ部 ２２ 突出部 ５６ 取付穴 ５８ カム軸 ６０，８２ 針状ころ軸受 ６１ 挿通穴 ６２ 外輪 ６６，８４ 針状ころ ７８ トグル

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 ピストンが突出し可能に嵌合されるとと
   もに該ピストンの突出し方向と反対側の端部に該ピスト
   ンの軸心と直角な方向において取付穴が設けられたシリ
   ンダ部と、該取付穴に軸心回りの回転可能に設けられた
   カム軸と、該カム軸の一端部に相対回転不能に設けられ
   てパーキングブレーキ操作力が入力されるレバー部材
   と、該カム軸の回転に伴って前記ピストン側へ推される
   トグルとを備えた形式のパーキングブレーキ機構付きデ
   ィスクブレーキにおいて、外輪の内周側に複数の針状こ
   ろが配設されて成り且つ該外輪に前記トグルが挿通させ
   られる挿通穴を有し、前記カム軸を前記取付穴内におい
   て回転可能に支持する針状ころ軸受であって、 前記外輪の挿通穴の該外輪の軸心と平行な方向の両側に
   位置する部分にも針状ころを有することを特徴とするパ
   ーキングブレーキ機構付きディスクブレーキ用針状ころ
   軸受。