JP3616321B2 - グラウンドアンカー - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はアンボンドタイプの引張材を貫通させた、支圧ロッドと鉄筋篭を取付けた耐荷体をその先端部の固定台座を介して、アンボンドタイプの引張材に緊張力を伝達するグラウンドアンカーに関するものである。
【0002】
また、アンボンドタイプのPC鋼材(PC鋼線、PC鋼棒、PC鋼より線)を防食する目的とアンカー体を定着させるためのグラウト注入管としての役目をもつシースパイプ内部をアンカーテンドンの捻れを防止すると共に、注入効率を高めるために星形注入スペーサー又はストランドセンタライザーを使用したグラウト注入法に関するものである。
【0003】
さらに、地すべりや斜面災害を防止又は復旧するために、確実性が高く且つ経済性が望まれる社会的要請に応えるグラウンドアンカー工法で、地表部で予測できない複雑な地中の地質条件の変化にも対応できるため、災害関連事業での活用範囲が拡大される。
【0004】
【従来の技術】
アンカー体の定着対象地盤を、岩盤、砂層、礫層、ローム層、土丹層等にとり、アンカーケーブルに上記のPC鋼材を使用し、緊張力を与えて構造物に定着するものを、グラウンドアンカー工法と呼んでおり、すべり防止,傾斜地崩壊防止、擁壁・土留転倒防止、地中構造物の浮き上がり防止等の構造物を安定させるアンカーとして用いられる。
【0005】
そして、一般的なアンカー体の対象地盤への定着にはセメントミルク等のグラウト材を注入し、孔壁及びアンカー体に付着させ、その周辺摩擦抵抗力により支持される。この他に、定着・支持機構としては、定着対象地盤での拡孔支圧型や先端圧縮型があり、出願人が先に提供した技術では、周辺摩擦抵抗及び先端圧縮力を併用した定着機構を持つものである。
【0006】
上記アンカーの定着方法は、例えば図8に示すように、アンボンドタイプ等の引張材(a)の端部に支圧板(b)を取付け、これを地中に掘削したアンカー孔(c)内に挿入し、そのアンカー孔の孔奥部の定着長部に、アンカーグラウト(セメントミルク・モルタル等)の硬化材を充填した後、硬化材の硬化を待って、自由長部に緊張力を与えて定着するものである。
この定着方法では,引張材(a)を緊張する際に、その引張材(a)に引抜き力が作用するため、アンカー躯体(d)がアンカー軸方向に圧縮されると同時に、アンカー孔(c)を拡径する方向に膨張する。従って、アンカー躯体(d)にクラック(e)が発生する恐れがあり、アンカー耐力が低下すると同時に、地下水等の浸入により引張材(a)が腐食する原因となる。
【0007】
そこで、本願出願人等は先に特許第2120240号に係るグラウンドアンカーに鉄筋籠等を設けることによって上記課題の解決を図った。当該特許の概要は次の通りである。
地すべりや崩壊危険斜面の防災工事、構造物の安定等のため、安定側地盤にアンカーを定着し、PC鋼線などの引張材を介して緊張する工法をグラウンドアンカー工法と呼んでいる。
アンカーの定着については、アンカー体とセメントミルク等のグラウト材との摩擦抵抗及びグラウト材とボーリング等で削孔した安定側地盤の孔壁との摩擦抵抗が、期待する引張材(アンカーテンドン)の緊張力より大きければよいとするものである。
【0008】
アンカーを緊張するとアンカー体が軸方向に圧縮され、また孔壁方向に膨張する力が働く。このときグラウト材にクラックが発生するおそれがあり、アンカー体の耐力が低下することになる。
【0009】
このようなクラックの発生を防止するために、アンカーテンドンの軸方向に位置させた横筋とアンカーテンドンの周方向に位置させたスパイラル筋とによる鉄筋篭をアンカー体に取付け、鉄筋コンクリート状にグラウト材を強化したもので、アンボンドタイプの引張材の一端に取付けた支圧板を介して応力が伝達される。
【0010】
このことは、アンカー先端に集中する荷重を上部にも分散することができるため、きわめて安定した定着が得られる。使用する鋼材等にはポリエチレン管・防水シール・グラウト材等の防食材により2重以上に防錆することで、永久アンカーとして優れた性能を発揮することができた。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
上記アンカーの定着方法では、PC鋼材群を緊張する際に、PC鋼材群に引抜き力が作用するため、アンカー躯体がアンカー軸方向に圧縮されると同時に,アンカー孔を拡径する方向に膨張する。従って,アンカー躯体にクラックが発生する恐れがあり、アンカー耐力が低下すると同時に、地下水等の浸入によりPC鋼材群が腐食する原因となっている。
【0012】
しかし、上記の特許にあっても地中構造物であるアンカーは定着地盤の地盤強度等が複雑な地質・水文条件によって変化することが多く、定着位置での孔壁の地盤強度が弱すぎたり、地下水の流動により注入グラウト材が流されたり,薄められて所定の強度を得られず、アンカー体が座屈したり、抜け出すことがある。また、地質・水文条件の変化を正しく判定することは、地質調査費用が膨大になり現実的でなくなる。
【0013】
このため、定着位置での孔壁の地盤強度の強弱によっては、アンカー体が受ける応力をアンカー体上部方向に分散して、孔壁周面の摩擦抵抗力として受ければ、孔壁が歪んでアンカー体が抜け出すことや孔壁が破壊してアンカー体が座屈することが防げる。
【0014】
また、アンカー体定着のための注入グラウト材については、孔内水をグラウト材に置き換えるだけの場合や細い注入管で極く少量づつグラウト材を注入する方法が一般的であるが、定着地盤付近でグラウト材が地下水などで稀釈されないで目的の位置に充填できるためには,注入管内のグラウト材がスムーズに流れるように工夫、注入目的位置に確実にグラウト材を充填できることが望まれる。
【0015】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明は従来の課題を解決し且つ発明の目的を達成するために提供するものである。すなわち、本発明の第1はグラウンドアンカーにおいて、荷重を外周面の凹凸によリグラウト材に伝達分散する固定金具および支圧ロッドと、支圧ロッドに接続してグラウト材を支圧する支圧プレートと、グラウト材が膨張破壊しないよう支圧ロッドを取り囲み支圧プレートにより固定される鉄筋篭とにより構成したものである。
本発明の第2は、第 1 の発明に係るグラウンドアンカーにおいて、引張材を覆う防食およびグラウト材を注入管と併用するシースパイプの中に、連続した星形柱状の注入断面を確保するため複線の引張材で挟み込むための鋼材またはその他の素材で作られた星形注入スぺーサーを設けたものである。
本発明の第3は、第 1 の発明に係るグラウンドアンカーにおいて、単線の引張材を注入用シースパイプの中心に位置させ、シースパイプ内中央に引張材を保持する鋼材またはその他の素材で作られたストランドセンタライザーを設けたものである。
【0016】
定着地盤の地盤強度の強弱によるアンカー体の座屈や引き抜けを防止するため,さらに、通常アンカー孔の孔壁方向への応力が集中する、アンカー体先端部(固定台座、固定金具)を鋼材により強化し、孔壁が弱くてもアンカー体が座屈しない構造としてある。
【0017】
このことで、定着部孔壁の強度が弱い場合は、アンカー体上部方向に緊張応力が分担伝達されることとなるので,鋼管等を加工して周辺摩擦抵抗力を向上させた支圧ロッドの強度を十分に確保した固定金具部に連結し、上記の鉄筋籠で取り囲む構造としたことで、摩擦型アンカーの効果が加わりグラウト材の圧縮破壊が防止され、定着地盤の複雑な地質変化に遭遇しても目的のアンカー緊張力が得られ、長期にわたり維持することができるグラウンドアンカーとなっている。
【0018】
アンカー体定着のためのグラウト材の注入方法として、アンボンドタイプのPC鋼材からなる引張材(アンカーテンドン)を防食する目的でもあるポリエチレンパイプ等によるシースパイプを注入管とすることは、注入管の管内断面積を大きくすることができて注入効率が高まり、孔内水の流動等による定着位置でのグラウト材の稀釈等によるグラウト材の強度低下が防げる。しかし、複数の引張材がシース内で捻れたり、交叉したりすれば,グラウト材の流動に渦ができたり、流速が乱れて閉塞するなどの障害を起こす懸念がある。
【0019】
星形注入スペーサーを複数の引張材を必要間隔で均等に挟み込むことにより、実際の注入断面は均等な柱状に連続した星形断面を形成し、グラウト材流動の障害がなく、グラウト材注入の目的が達成される。引張材が単線の場合はアンカーテンドンをストランドセンタライザーによりシースパイプの中央に保持することで、同様に注入断面が安定しグラウト材の流速を変化させる障害がなくなり安定した注入がなされる。
【0020】
不確実性が問われる、孔内水置換型のグラウト充填方法(通称:どぶ付け)や、小孔径の注入管による低速注入などでは、定着地盤付近の地下水流動等によりグラウト材が稀釈され、所要のグラウト強度が得られない不安があったが本発明により解決された。そして、本発明により、定着地盤の複雑な地質・水分条件に出会っても、確実にアンカー体を定着し、所要の緊張力を長期にわたり維持することができる。
【0021】
【実施例】
1は固定金具であり、当該固定金具は鋼製の筒体であり,外周面には中間部から両端部にかけて逆方向にネジを刻設してある。
2は下部の支圧プレートであり、固定金具1にネジで連結され、その固定金具から耐荷体(支圧ロッド、鉄筋篭)への分担荷重を伝達するために、支圧ロッド3とネジで連結され、その外周に取付ける鉄筋篭を上部の支圧プレート9との間に挟み込んで固定する。上部の支圧プレート9はアンボンドタイプの引張材を防食し、注入パイプとなるポリエチレン等の素材により、アンカー自由長部の周囲に配置するシースパイプを接続固定する。
前記上下の支圧プレート2・9は、この前面で定着部の剛性が小さくなることを利用して、圧縮力による半径方向への変位を得て、効果的に定着地盤へ荷重が伝達される。上下の支圧プレート2・9間(支圧ロッド3、鉄筋篭が挟み込まれる。)を耐荷体と称する。
【0022】
3は支圧ロッドであり、固定金具1の上部にアンカーの所要引き抜き力に十分抵抗できる材質及び断面積を有するものとする。
前記の支圧ロッド3は鋼管表面に細かな凹凸を設け,グラウト材との付着力を増強してある。そして、この支圧ロッドを取り囲むように鉄筋篭が上部の支圧プレート2と下部の支圧プレート9の間に挟み込まれて固定されている。
【0023】
4はボトムカバー、5は圧着グリップ、6は固定金具の周面に設けた突起、7はグラウト材の排出孔、8は圧着グリップ5を固定するための貫通孔付き固定台座を示す。
【0024】
10は鉄筋篭であり、複数の細径横筋をPC鋼材群の長手方向に位置させ、それらの外周囲に細径のスパイラル筋のように拘束筋を巻き付けて一体化したものである。
なお、拘束筋はスパイラル筋の代わりに、複数の独立したリング筋や四角形、八角形、楕円形等の補強材を取付けてもよい。また、前記鉄筋の代わりにカーボンファイバーやグラスファイバー等の耐腐食性材料を使用して、篭体を形成することもできる。
【0025】
11はアンボンドPC鋼より線から成る引張材であり、端部を固定台座8の貫通孔に貫通させて圧着グリップ5を圧着し、固定台座で引張力を受ける。
12は星形の注入スペーサーであり、アンボンドタイプの引張材11(アンカーテンドン)を覆う防食及び注入用シースパイプ13の注入効率を安定させる星形柱状断面を確保すると共に、複数の引張材11のシース内捻れを防止するために、アンボンドタイプの引張材11を均等に拘束するための鋼材又はその他の素材によるものであり、アンカーテンドン組立時に適宜間隔で複数のアンボンドタイプの引張材11で挟み込んで設置する。
【0026】
14はストランドセンタライザーであり、単線のアンボンドタイプの引張材11を使用する場合は、注入用シースパイプ13の中心に位置させ、注入効率を安定させ、引張材11の捻れを防止するPC鋼材又はその他の素材による中空三角柱型等の構造になっている。
【0027】
【施工例】
本発明は、固定金具1と耐荷体内の支圧ロッド3が荷重伝達軸となって、グラウト材に対してこの外周面の付着と、耐荷体に設けた上下の支圧プレート2・9による支圧によって荷重伝達される複合構造となっている。固定金具1と支圧ロッド3は、定着時の軸力分布に対して十分な圧縮強度を備え、軟岩など地盤Gの強度が小さい場合にも周辺摩擦抵抗を広く確保するために、孔軸方向へ十分な荷重伝達ができるようになっている。
また、上下の支圧プレート2・9は、この前面で定着部の剛性が小さくなることを利用して、圧縮力による半径方向への変位を得て、効果的に地盤へ荷重が伝達される。
さらに、半径方向への圧縮変形によるグラウト材の割裂破壊を防ぐため、支圧プレート前面のグラウト材は鉄筋篭10で補強され、グラウト材強度と、靱性(ねばり強さ)が高まる。
アンカー体はこうした複合形状の採用により、上下の支圧プレート2・9の前面は十分な被りが確保され、グラウト材の回り込みや充填性が優れるほか、アンカー体挿入中の泥やグリス等の付着による影響も、確実に引き抜き抵抗を得ることになる。
アンカーテンドンを覆い防錆保護するシースパイプ13を注入管とするために、星形注入スペーサー12やストランドセンタライザー14を適宜間隔でシースパイプ内に設置することにより、グラウト材注入作業が簡便になると共に、グラウト材の確実な充填が行えることになる。また、シースパイプ13に覆われる複数のPC鋼材等のアンカーテンドンはシースパイプ内で捻れや交叉することが無くなるため、個々のアンボンドPC鋼より線から成る引張材11の緊張時における片効き等が防止され、設計どおりのアンカー引張力が設定される。
【0028】
【発明の効果】
本発明は以上の構成であるから、次のような効果が得られる。
(1) グラウンドアンカーは定着部先端に圧縮力を作用させて、荷重を地盤に伝達する構造であり、グラウト材の圧縮強度が引張強度に対して極めて大きい特性を利用して、引張り亀裂の移転による進行性破壊の危険性を回避している。
(2) 固定金具台座は定着地盤の強度が小さくても大きな変位や座屈を生じず、上部の耐荷体方向に応力を分散し、耐荷体とグラウト材が一体となって定着地盤(アンカー孔壁)との周辺摩擦抵抗力により、所要のアンカー引張力が得られるため、広範囲な定着地盤条件に対応できるアンカーである。
(3) 通常のアンカーでは、予測できない強度の小さい定着地盤に遭遇した場合、弱い地盤を圧縮し過ぎて、アンカー体自体の座屈破壊やアンカー体の引き抜けなどを起こし、再施工や工法の変更が強いられることがあり、工事費の増大となり事業の継続に支障を生じることとなる。
(4) シースパイプを注入管とし,固定金具下部のグラウト排出孔よりグラウト材を排出し、孔内及びアンカー体外部にくまなく充填されるため、アンカー体がスライムや挿入時の削り泥などの中に設置されグラウト材の充填が不十分になるなどが防げる。
(5) シースパイプ内に設置する星形注入スペーサーにより、複数の引張材のシース内捻れを防止したため、引張材緊張時の片効きの不安がなくなる。この片効きは個々の引張材の一部に緊張力が集中しアンカー設計荷重より小さい緊張力でも破断する等の危険性があるが、これが除去されるのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るグラウンドアンカーの正面図である。
【図2】図1の中央縦断面図である。
【図3】図1の3−3線に沿う断面図である。
【図4】図3の別の例を示す複線用の断面図である。
【図5】図1の4−4線に沿う単線用の断面図である。
【図6】図5の別の例を示す複線用の断面図である。
【図7】本発明に係るグラウンドアンカーの使用状態を示す概略説明図である。
【図8】従来の周面摩擦アンカーの定着状態を示す中央縦断面図である。
【符号の説明】
1 固定金具
2 下部支圧プレート
3 支圧ロッド
4 ボトムキャップ
5 圧着グリップ
6 突起部
7 グラウト排出孔
8 固定台座
9 上部支圧プレート
10 鉄筋篭
11 引張材(アンボンドPC鋼より線)
12 星形注入スペーサー(複線用)
13 シースパイプ(注入ホース併用)
14 ストランドセンタライザー(単線用)
Claims (3)
- 荷重を外周面の凹凸によリグラウト材に伝達分散する固定金具 (1) および支圧ロッド (3) と、支圧ロッド (3) に接続してグラウト材を支圧する支圧プレート (2) ・ (9) と、グラウト材が膨張破壊しないよう支圧ロッド (3) を取り囲み支圧プレート (2) ・ (9) により固定される鉄筋篭 (10) とにより構成したことを特徴とするグラウンドアンカー。
- 引張材(11)を覆う防食およびグラウト材を注入管と併用するシースパイプ(13)の中に、連続した星形柱状の注入断面を確保するため複線の引張材(11)で挟み込むための鋼材またはその他の素材で作られた星形注入スぺーサー(12)を設けた請求項1記載のグラウンドアンカー。
- 単線の引張材(11)を注入用シースパイプ(13)の中心に位置させ、シースパイプ内中央に引張材(11)を保持する鋼材またはその他の素材で作られたストランドセンタライザー(14)を設けた請求項1記載のグラウンドアンカー。
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