JP2006016893A - 既存構造物のせん断補強方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 簡易な方法で、既存構造物の構成部材の部材厚を厚くすることなく該構成部材のせん断補強をおこなうことのできる既存構造物のせん断補強方法を提供すること。
【解決手段】 既存構造物の構成部材1の部材厚さ方向または略部材厚さ方向に所定長さの削孔部2を形成する削孔工程と、該削孔部2への充填材31の充填およびPC鋼線やPC鋼棒などの緊張部材4の挿入を行う緊張部材設置工程と、充填材31の硬化後に該緊張部材4に緊張力を導入し、該緊張部材4のうち挿入方向の後端付近に少なくとも定着板5を設置する緊張力導入工程と、からなる既存構造物のせん断補強方法である。ここで、削孔部2の削孔先端部には拡大削孔部8を設け、緊張部材4の先端に備えた突出部材7を該拡大削孔部4内に埋め込んだ状態とする。
【選択図】 図1
Description
本発明は、鉄筋コンクリートからなる既存構造物のせん断補強方法に係り、特に、地盤内に建設された地下構造物に対して簡易にせん断補強することができ、既存構造物を構成する構成部材の部材厚さを厚くすることなしにせん断補強することのできる既存構造物のせん断補強方法に関する。
地震国である我が国の建築基準法などに基づく耐震基準は、これまで大地震の発生を契機としてその都度改定が行われてきたと言っても過言ではない。最近では、平成7年に発生した阪神淡路大震災後に各種基準や各種指針における耐震基準が改定されており、したがって近時の構造物(一定規模以上の構造物)は該耐震基準を満足するような剛構造ないし柔構造の構造物として建設されている。
一方、既存の構造物(鉄筋コンクリート構造物)には、旧耐震基準(この中でも、耐震基準の変遷に伴って数段階に分かれている)に基づいて建設されたものが多数存在するのが現状である。かかる既存構造物は、場合によってはその建設当時の耐震基準による耐震性に関する要求がなかったことなどにより、阪神淡路大震災や関東大震災などの大規模地震に対するせん断補強が充分に行われておらず、したがってかかる地震時にせん断破壊に至る可能性を多分に秘めている。そこで、かかる旧耐震基準に基づいて建設された鉄筋コンクリートからなる構造物の耐震補強工事が、現在各地で盛んに行われている。例えば、高速道路や新幹線のラーメン橋脚などの地上構造物をはじめとして、各種の地下インフラ用のトンネルなど補強対象となる構造物は多岐に亘っている。かかる既存構造物の耐震補強は、構造物の重要度などによって補強程度に相違はあるものの、大地震時に全く構造物に損傷がない程度にまで補強される必要は必ずしもなく、少なくとも脆性的なせん断破壊等を起すことで人災等を誘発することのない程度まで補強されればよいと考えられている。
ところで、既存構造物のせん断特性を補強施工する場合には次のような点に留意する必要がある。すなわち、(1)補強工事費が比較的安価で補強効果も十分に期待できること。(2)原則的には供用中の構造物を補強することから、せん断補強工事に伴う供用休止期間を極力短くすること。(3)せん断補強によって既存構造物の形状が大きくなり、かかる形状変更が構造物の供用の妨げにならないこと(例えば、地下鉄用のトンネル内部にコンクリートを増設することにより、建築限界を侵してしまうなど)。
既存構造物(既存の鉄筋コンクリート構造物)をせん断補強することは、上記するように大地震時に脆性的なせん断破壊を起すことで大きな被害を招来することを防止することのほかに、上記するように補強ないし新規の造り替えによる工事費の高騰や工事期間中の供用停止に伴う社会生活への影響を最小限に抑えることも極めて重要な要素となってくる。
既存の鉄筋コンクリート構造物のせん断補強方法には種々の方法があり、一般的な方法の一つとしては該構造物の構成部材の部材厚を大きくする方法がある。例えば図3a,bに示すように、既存構造物の構成部材1である柱を増厚補強する場合には、柱の既存部分1aの周りに柱の主筋91,91,…を複数配設し、該主筋91,91,…を包囲するように複数の帯筋92,92,…を配設した状態でコンクリート93などを打設する方法である。他の方法としては、図4a,bに示すように構成部材1である柱(既存部分1a)を包囲するように補強用鋼板94を該柱との間に所定の隙間を置いた状態で巻き付け施工し、かかる隙間に無収縮モルタルなどの充填材95を充填硬化させて既存部分1aと補強用鋼板94との一体化を図る方法である。
上記する既存構造物の構成部材の補強方法は、構成部材の部材厚を厚くすることが可能な条件であれば問題はないが、既存構造物が既に建築限界程度ないし用地限界程度に建設されている場合(貯水池や地下鉄トンネルなど)や、既存構造物が地盤内に埋め込まれており、したがって補強対象の構成部材の背面に地盤が存在するなどの場合には採用することが難しい。
地盤内にある既存構造物をせん断補強する場合のように、部材厚を厚くする方法を採用できない場合における既存構造物のせん断補強方法(耐震補強方法)が特許文献1に開示されている。かかる補強方法は、既存の鉄筋コンクリート柱において建築物の屋上から鉛直方向に所定深度まで削孔後、かかる削孔部に鋼管や鋼棒などのせん断補強材を挿入し、必要な場合には該削孔部にグラウト材を充填する方法である。
また、その他の補強方法として既存構造物の構成部材の部材厚さ方向に削孔部を形成後、該削孔部にせん断補強用の異形鋼棒を挿入設置し、グラウトなどの充填材を充填硬化させて補強する方法もある。具体的には図5に示すように、既存構造物の構成部材1の一側面側から他側面の主筋11付近まで削孔部96を造成し、せん断補強用の異形鋼棒97を削孔部96に挿入するとともにグラウト98を充填して異形鋼棒97と構成部材1の一体化を図るものである。
特許文献1に開示の耐震補強方法によれば、既存構造物の構成部材の部材厚を厚くすることなくせん断補強(耐震補強)を行うことが可能となる。しかし、構成部材の上方から鉛直方向に削孔し、せん断補強材を挿入するためには対象構造物が地上である必要があり、仮に地下構造物の柱等に適用するとしても土被り部分の削孔ないしせん断補強材の押し込みなどの施工を余儀なくされ、場合によっては山留めを施した開作工事を行う必要が生じる。したがって、工事費の高騰や地上に工事占有地帯を確保する必要性、全体工期の長期化といった問題が十分に考えられる。さらに、地下構造物がトンネルなどの場合には、曲率形状に応じた既存構造物の削孔やせん断補強材の挿入などを要し、その施工は極めて困難となる。
また、構成部材の部材厚さ方向に削孔部を形成後、該削孔部にせん断補強用の異形鋼棒を挿入設置し、グラウトなどの充填材を充填硬化させて補強する方法によれば、上記する特許文献に開示の補強方法のような問題は生じ得ない。しかし、かかる補強方法では次のような問題が考えられる。すなわち、(1)せん断補強筋の挿入先端部の定着が不十分な場合にはせん断補強効果が期待できない。(2)大地震時に対応できるだけのせん断補強効果を得るためには、多くの削孔部を形成する必要があり、したがって工期が長期化する可能性が高くなるとともに多くの施工手間を要することとなる。(3)既存構造物に多くの削孔部を形成することにより、結果的には健全な構造物に損傷を与えてしまうこととなりかねない。
本発明は、上記する問題に鑑みてなされたものであり、簡易な方法で、既存構造物の構成部材の部材厚を厚くすることなく該構成部材のせん断補強をおこなうことのできる既存構造物のせん断補強方法を提供することを目的としている。特に、補強対象となる既存構造物が地盤内に埋め込まれている場合や、既存構造物が既に建築限界ないし用地限界程度に建設されている場合の該既存構造物のせん断補強に適用されるのが効果的である。また、本発明は、せん断補強施工時に既存構造物に損傷を与える可能性が極めて低い既存構造物のせん断補強方法を提供することを目的としている。
前記目的を達成すべく、本発明による既存構造物のせん断補強方法は、鉄筋コンクリートからなる既存構造物のせん断補強方法であって、前記既存構造物を構成する構成部材の部材厚さ方向または略部材厚さ方向に所定長さの削孔部を形成する削孔工程と、該削孔部への充填材の充填およびPC鋼線やPC鋼棒などの緊張部材の挿入を行う緊張部材設置工程と、前記充填材の硬化後に該緊張部材に緊張力を導入し、該緊張部材のうち挿入方向の後端付近に少なくとも定着板を設置する緊張力導入工程と、からなることを特徴とする。
鉄筋コンクリートからなる既存構造物とは、鉄筋コンクリート構造物のほか、鉄筋コンクリートと鉄骨が併用された鉄骨鉄筋コンクリート構造物などを含む広い意味である。既存構造物は、地上に立設するビルや上下水道の処理施設などの公共施設、地下鉄トンネルや地下共同溝トンネルなどの各種地下構造物などを含む意味である。
ここで、部材厚さ方向とは、例えば構成部材が壁の場合は壁厚方向を、構成部材が柱の場合は柱厚方向を意味する。また、略部材厚さ方向とは、施工性や施工誤差等により、部材厚さ方向から若干傾きをもった方向のことである。
さらに、所定長さの削孔部とは、例えば構成部材が壁の場合には、壁の一側面側から開始された削孔の削孔先端が他側面側のかぶり程度壁内部に入った付近まで削孔されてできた部分を意味する。通常、既存構造物の構成部材には所定間隔で主筋が配設されていることから、壁や柱などの上記する他側面側の主筋と主筋の間程度に削孔部の先端が位置するのがよい。また、削孔径は使用する緊張部材の寸法などから適宜の大きさを選定できる。なお、削孔部の造成に際しては、円筒状のコアビットを使用してコンクリートに穿設施工する公知のコアボーリングなどを使用することができる。
上記する削孔工程を施工延長に亘って一気に行うことで削孔部の造成を完了させた後に緊張部材設置工程に移行することもできるし、削孔工程を先行させながら削孔工程と緊張部材設置工程を並行させることもできる。すなわち、削孔工程と緊張部材設置工程の時系列的な関係は、工期(工期を短縮するためにはそれぞれの工程を並行させる)や工費(それぞれの工程を並行させることにより作業員の増員によって工費が高騰する)を勘案して適宜決定すればよい。
削孔部への充填材はグラウトやポリエステル樹脂などの樹脂材などを使用することができる。充填材を削孔部へ充填後、PC鋼線やPC鋼棒などの緊張部材の挿入を行う。充填材が緊張力を導入するのに適した強度まで硬化した後に該緊張部材に緊張力を導入する。緊張力導入後は緊張部材の端部に定着版を設置するとともにナット締めするなどして緊張力の保持を図る。ここで、既存構造物の構成部材の主筋と主筋の間の幅よりも使用する定着板の幅が広い場合には該定着板を主筋と主筋に外側から当接させ、該主筋をストッパーとして使用することができるため、緊張力をより効果的に構成部材に導入することができる。尤も、主筋と主筋の間の幅よりも使用する定着板の幅が狭い場合であっても、構成部材のコンクリートに直接緊張力が導入されることとなり、緊張力の導入効果は十分に期待できる。緊張部材のナット締め後は、既存構造物の内部の見栄えや漏水処理対策として、場合によっては間詰め用のモルタルなどで削孔部端部の後処理をおこなうこともできる。
上記するようにポストテンション方式を採用して緊張力を導入することで、既存構造物の構成部材には、極力少ない本数のせん断補強筋で効果的なせん断補強効果を得ることが可能となる。緊張力を導入しない場合には、異形鋼棒用の削孔部を本発明に比して相対的に多数造成する必要が生じるため、既存構造物への損傷や施工手間などの問題が生じ易くなるものと考えられる。さらに、既存構造物の構成部材の部材厚さ方向(または略部材厚さ方向)に削孔部を造成することから施工が簡易なものとなり、特に地下構造物のせん断補強施工には好適な方法と考えられる。
また、本発明による既存構造物のせん断補強方法の好ましい実施形態として、前記削孔部のうち、削孔方向の先端部分には該削孔部の他の部分に比べて大きく削孔された拡大削孔部が形成されており、前記緊張部材のうち、挿入方向の先端付近には該緊張部材の軸心から放射方向に突出する突出部材が備えてあり、該突出部材が前記拡大削孔部内に埋設されていることを特徴とする。
削孔部の先端(削孔方向先端)に拡大削孔部を設けるとともに、緊張部材の先端付近に該緊張部材の軸心から放射方向に突出する突出部材(例えばナットなど)が備えられ、かかる突出部材が拡大削孔部内に配置されるように緊張部材を挿入設置した状態で充填材が削孔部(および拡大削孔部)内で硬化することにより、緊張部材に緊張力が導入された際の構成部材の締め付け効果を向上させることができる。突出部材としてナットを使用する場合は緊張部材にねじ溝を刻設しておき、ナットを緊張部材の先端に螺合させた状態で削孔部内へ挿入する。また、突出部材としては、ナット以外にも鋼製の定着板を使用してPC鋼棒などの緊張部材の先端に溶着させた構成とすることもできる。
拡大削孔部を造成することにより、緊張部材に導入された緊張力を突出部材を介して既存構造物の構成部材(削孔部の周辺)に効果的に伝達することが可能となる。また、かかる拡大削孔部を造成する実施形態の場合には、少なくとも拡大削孔部内に十分に充填材を充填しておけば、必ずしも削孔部全体に充填材を充填する必要はない。拡大削孔部を介して緊張力が既存構造物の構成部材に十分に伝達されるため、十分なせん断補強効果を発揮することができると考えられるからである。また、かかる拡大削孔部を造成しない状態で緊張部材の先端付近に突出部材を備えた構成としてもよい。なお、拡大削孔部の削孔は、先端部が拡縮可能な公知のコアボーリングなどを使用することによりおこなうことができる。
かぶりに余裕がある場合には、拡大削孔部を主筋よりも外側まで造成するとともに緊張部材の先端付近に設けた突出部材が主筋の外側に配置されるまで該緊張部材を挿入設置するのが好ましい。この場合は、緊張部材に設けられた突出部材が主筋を外側から押さえ込むような配置となることから、通常の新設構造物における主筋にフック定着されたせん断補強筋とほぼ同様な効果を期待することができるからである。
また、本発明による既存構造物のせん断補強方法の好ましい実施形態として、せん断補強される前記既存構造物の構成部材が鉛直方向に立設する場合の前記削孔工程においては、前記削孔部が削孔方向の後端から先端へ向かって斜め下方に伸びるように形成されることを特徴とする。
せん断補強対象となる構成部材が、例えば壁や柱などの鉛直方向に立設する場合において、削孔部を削孔先端へ向かって斜め下方に造成することにより、グラウトなどの充填材を削孔部の先端まで確実に流し込むことができ、したがって緊張部材の先端部と構成部材との一体化を確実に図ることができる。この場合、削孔部の傾斜角は使用する充填材の粘性度や硬化速度などを勘案して適宜決定される。
さらに、本発明による既存構造物のせん断補強方法の他の実施形態として、前記既存構造物の構成部材が地盤内に埋設されている壁または柱であることを特徴とする。
既存構造物が地盤内に埋設されている場合においては、補強対象となる該既存構造物の構成部材である壁や柱の背面側は地盤と接している。かかる条件下では壁の増厚補強をすることによって増厚部分がそのまま既存構造物内部へ入ることとなり、構造物の内空寸法を小さくしてしまうことから、結局は補強施工を実施することができなくなる。したがって、本発明を既存構造物、特に地盤内に埋設された既存構造物に適用することにより、構造物の内空寸法を侵すことなく(建築限界を侵すことなく)、構成部材のせん断補強を実施することが可能となる。
以上の説明から理解できるように、本発明の既存構造物のせん断補強方法によれば、該既存構造物が地下構造物などの場合であっても、簡易に効果的なせん断補強を実現することができる。また、構成部材を増厚施工しないため、既存構造物の補強施工が抱える建築限界ないし用地限界との干渉といった問題を考慮する必要がない。また、緊張力を導入することにより、緊張部材挿入用の削孔部の数を極力少なくすることができ、したがって、せん断補強施工に際して既存構造物に損傷を与える可能性を極めて少なくすることができる。また、少なくとも拡大削孔部に充填材を充填することで所要のせん断補強効果を発揮することができ、したがって削孔部の全長に亘って充填材の充填を行う必要がないため、充填材量の軽減を図ることができる。さらには、相対的に短い工期にて施工できるため、補強対象となる既存構造物の供用に支障を来たすことなく、十分なせん断補強施工をおこなうことができる。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明のせん断補強方法によって補強された既存構造物の縦断面図を示しており、図2は、拡大削孔部から既存構造物の構成部材へ作用する支圧応力を模式的に示した説明図である。以下、図面をもとに地下に埋設された既存構造物の構成部材1として壁を取り上げて説明するが、せん断補強対象となる既存構造物は地上構造物であってもよく、さらには構成部材1が構造物を構成し得る柱や床版などであってもよいことは勿論のことである。また、削孔部は部材厚さ方向から若干斜め下方へ傾斜させて造成される場合を示しているが、水平方向(部材厚さ方向)に削孔部が造成されてもよいことは勿論のことである。
本発明の既存構造物のせん断補強方法を図1にもとづいて時系列的に説明する。まず、補強対象となる地盤G内に埋設された既存構造物の構成部材1である壁において、既存構造物内部から壁の鉛直方向および水平方向にそれぞれ所定間隔を置いて削孔部2を削孔する。削孔部2の造成に際してはコアボーリング(先端拡縮型のコアボーリング)を使用し、既存構造物の内部から外部へ向かって(削孔方向の後端から先端へ向かって)斜め下方に該削孔部2が造成されるように削孔をおこなう(削孔工程)。斜め下方となるように削孔部2を造成することで、後述する充填材31を削孔部2の先端まで確実に流し込むことが可能となる。ここで、削孔部2は、既存構造物の壁の内側主筋11a,11aの間に造成されるとともに、削孔部2の先端部も同様に壁の外側主筋11b,11bの間に配置されるように造成する。さらに、削孔部2の先端部は、コアボーリングの先端径を拡大させた状態で削孔をおこなうことで拡大削孔部8を造成することができる。かかる拡大削孔部8の先端付近が外側主筋11bの位置程度となるように削孔部2の造成延長を調整する。また、削孔部2の削孔径は壁の主筋11a,11a,…、11b,11b,…の配筋間隔や必要となるせん断補強程度、さらには使用される緊張部材4の部材径などに応じて適宜の削孔径を選定できる。
また、削孔部2のうち、既存構造物内部側の壁面から主筋11aまでの範囲においては、壁面から主筋11aに向かって除々に削孔径が小さくなるように形成するのがよい(最小径が削孔部2の一般部21と同径となる)。後述する定着板5を設置するための設置スペースとナット締め等するための作業スペースを確保するためである。
上記する削孔工程は、すべての削孔部2の造成を一気に行うこともできるし、削孔工程が若干先行しながら後述する緊張部材設置工程と該削孔工程を並行させることもできる。
次に、造成された削孔部2内部へ充填材31を充填する。充填材31は、既存構造物を構成するコンクリート製の壁や緊張部材4とそれぞれ十分な付着強度が確保できる材料を使用するのがよく、例えばグラウトやポリエステル系の樹脂材などを使用することができる。ここで、充填材31の充填範囲は、図1に示すように拡大削孔部8および若干削孔部2の一般部21に入る程度まででよい。その理由は後述する。尤も、削孔部2の全長に亘って充填材31を充填してもよいことは勿論である。
充填材31の充填後に緊張部材4を削孔部2内へ挿入する。ここで、緊張部材4はPC鋼棒やPC鋼より線などからなり、例えばPC鋼棒を使用する場合には、その両端部にねじ溝を刻設しておく。かかるねじ溝に螺合する突出部材7(例えばナットなど)をPC鋼棒の一端のねじ溝に螺合させた状態で該PC鋼棒を削孔部2内へ挿入する。この突出部材7が拡大削孔部8内に配置された状態でPC鋼棒の挿入設置が完了する(緊張部材設置工程)。なお、突出部材7としてはナットの代わりに、平面視矩形の鋼製プレートを使用し、PC鋼棒の先端部に該鋼製プレートを圧着させることもできる。
充填材31が緊張部材4に緊張力を導入するのに適した程度にまで硬化した後に、該緊張部材4に緊張力を導入する。緊張力の導入後は緊張部材4の端部に定着板5を設置するとともにナット6を緊張部材4端部のねじ溝に螺合させることで導入された緊張力を保持することができる。なお、図示するように削孔部2が水平方向から傾斜している場合には、一側面が少なくとも傾斜するように製作された定着板5を使用するのがよい。例えば、すべての緊張部材4の緊張力導入作業が終了した後に、削孔部2の端部(内壁面側)に間詰め材32(例えばモルタルなど)を間詰め施工することで緊張力導入工程が終了する。
図2は、図1のII部分を拡大した図である。緊張部材4に緊張力T1が導入されることにより、突出部材7から拡大削孔部8内の充填材31へ支圧応力T2が作用する。すなわち、支圧応力T2は緊張力T1が分散した応力であり、拡大削孔部8の孔面から該拡大削孔部8の外周の壁コンクリートへ支圧応力T2が伝達されることとなる。したがって、少なくとも該拡大削孔部8内に充填材31が十分に充填されていれば、緊張部材4に導入された緊張力T1は拡大削孔部8(の内部で硬化した充填材31)を介して既存構造物の壁コンクリートに伝達されるため、緊張力T1による既存構造物のコンクリートの締め付け効果は十分に期待できる。なお、突出部材7の配置される位置は図2に示すように主筋11の位置と縦断面的に同位置程度となる場合のほかに、主筋11からさらに地盤G側(外側)となる位置であってもよい(図示せず)。この場合は、拡大削孔部8が主筋11を外側から押さえ込むような配置となるため、通常の新設構造物における主筋にフック定着されたせん断補強筋とほぼ同様な効果を期待することができる。
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。
1…構成部材、2…削孔部、4…緊張部材、5…定着板、6…ナット、7…突出部材、8…拡大削孔部、11,11a,11b…主筋、21…一般部、31…充填材、32…間詰め材
Claims (4)
- 鉄筋コンクリートからなる既存構造物のせん断補強方法であって、
前記既存構造物を構成する構成部材の部材厚さ方向または略部材厚さ方向に所定長さの削孔部を形成する削孔工程と、該削孔部への充填材の充填およびPC鋼線やPC鋼棒などの緊張部材の挿入を行う緊張部材設置工程と、前記充填材の硬化後に該緊張部材に緊張力を導入し、該緊張部材のうち挿入方向の後端付近に少なくとも定着板を設置する緊張力導入工程と、からなることを特徴とする、既存構造物のせん断補強方法。 - 前記削孔部のうち、削孔方向の先端部分には該削孔部の他の部分に比べて大きく削孔された拡大削孔部が形成されており、前記緊張部材のうち、挿入方向の先端付近には該緊張部材の軸心から放射方向に突出する突出部材が備えてあり、該突出部材が前記拡大削孔部内に埋設されていることを特徴とする、請求項1に記載の既存構造物のせん断補強方法。
- 請求項1または2に記載の既存構造物のせん断補強方法であって、
せん断補強される前記既存構造物の構成部材が鉛直方向に立設する場合の前記削孔工程においては、前記削孔部が削孔方向の後端から先端へ向かって斜め下方に伸びるように形成されることを特徴とする、既存構造物のせん断補強方法。 - 前記既存構造物の構成部材が地盤内に埋設されている壁または柱であることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の既存構造物のせん断補強方法。
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