JP3612457B2 - パッチ - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
この発明は、皮膚に付着させて所望の処置、例えば、表皮上に放出されて所望の作用効果をもたらす活性成分を用いる化粧的処置をおこなうパッチに関する。
【０００２】
【従来の技術】
この種のタイプのパッチは従来から多数知られている。一般的には、このようなパッチは１種もしくは複数種のポリマーを基材とする接着性マトリックスを含む多層構造を有しており、該マトリックスの一方の面は皮膚と直接的に接触するが、他方の面は裏地に付着するように設計されている。
【０００３】
この発明は特に、乾燥状態で接着特性を示すマトリックスを含むパッチに関する。このようなパッチにおいては、表皮上へ放出されて所望の作用効果、例えば、水和作用や再生作用を発揮する１種もしくは複数種の活性成分をマトリックスに含有させるのが有利である。このような活性成分はパッチを付着させる前に皮膚を濡らすことによって放出させることができる。
【０００４】
変形態様においては、特にマトリックスの表面に含まれる活性成分を溶液にするための水はパッチの真下に位置する皮膚領域からの水を利用する。この場合、局部的蒸散が優先的におこなわれるような閉塞性裏地を使用するのが好ましい。
【０００５】
既知のパッチは十分に満足すべきものではない。特に、パッチを付着させる前の皮膚上の付着水量は、上記のようにマトリックス中に含まれる活性成分を溶液にするのには不十分である。さらに、閉塞性裏地は冷却効果や清涼効果よりも保温効果をもたらすので、使用時に不快感を発現させる。
【０００６】
従って、１種もしくは複数種の活性成分をパッチを用いて皮膚へ供給する条件を改良することが要請されている。
【０００７】
【発明が解決しようとする課題】
この発明はこのような要請に応え、実用上十分に満足すべき新規なパッチと提供するためになされたものである。
【０００８】
【課題を解決するための手段】
即ちこの発明は、乾燥状態において接着性を示すと共に少なくとも１種の活性成分を含有するマトリックスを含むパッチであって、該マトリックスがその一方の面を介して裏地と付着すると共に他方の面を介して皮膚に付着するパッチにおいて、該マトリックス中に含まれる活性成分の少なくとも一部を溶解させるのに適した予め選択された液体を保有できるように該裏地が選定されることおよび該マトリックスが該液体を透過させることを特徴とするパッチに関する。
【０００９】
【発明の実施の形態】
本発明においては、水または他のいずれかの溶剤であってもよい上記の液体は、一種の貯液容器を構成する裏地からマトリックスを通って皮膚の方向へ拡散するが、このことは多重的な利点をもたらす。
【００１０】
第一に、液体がマトリックスを通って拡散すると、該液体は上記の活性成分を溶液中に取り込むので、該活性成分はマトリックスから放出される。
マトリックスは毛管作用によって裏地に含浸される液体を吸収する「灯心」のような作用をすると共に、粒状物を保持して溶解活性成分を通過させる「フィルター」のような作用をする。
【００１１】
さらに、特に液体が水であってパッチを濡れた皮膚に付着させるときには、水が含浸された裏地は皮膚との界面の乾燥を遅延させるので、閉塞性裏地として作用するが、閉塞性裏地を用いるときの欠点、特にユーザーの使用感に関する欠点は回避される。
【００１２】
液体は皮膚と液体含浸裏地との界面を流すことができるが、これは皮膚呼吸、皮膚と接触する活性成分の交換補充および／または皮膚との界面で放出される夾雑物もしくは毒素の裏地からの除去の観点から有利である。
【００１３】
最後に、液体を含浸した裏地の熱慣性および該裏地の表面からの液体の蒸発はユーザーに涼しさもしくは清涼感を与えるので、ユーザーの使用心地をさらに高めることができる。
【００１４】
本発明の好ましい態様においては、マトリックスはエラストマーであってもよい１種もしくは複数種のポリマーを含有する。
裏地に含浸させる液体は水または水溶液もしくはアルコール溶液であってもよい。この場合、マトリックスは少なくとも１種の疎水性ポリマーを含有するのが好ましい。
裏地は多孔性マトリックス、例えば、不織布から形成させるのが有利である。
【００１５】
マトリックスに含有させる活性成分は化粧的活性成分、好ましくは水溶性成分であってもよく、また、マトリックス中に粒状形態で分散させてもよい。
化粧的活性成分は、例えば、次の群から選択される：皮膚軟化剤、モイスチャライザー、治癒剤、再生剤、抗皺剤、引締剤、麻酔剤、日焼け止め剤、平滑剤、人工日焼け剤、明化剤、隠蔽剤、脂肪分減少剤およびこれらの混合剤。
【００１６】
本発明の好ましい態様においては、マトリックスは少なくとも１種の液体吸収成分、例えば、使用する液体が水または水溶液もしくはアルコール溶液であるときには親水性の水吸収性成分等を含む粒状フィラーを分散状態で含有していてもよい。
水吸収性成分は、例えば、次の群から選択される：水中において大きな膨潤ファクターを有する超吸収性架橋ポリアクリレート、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、セルロースの半合成誘導体、デンプン、バイオゴム、バイオサッカリド、硬グルカン、カゼイン、アルギン酸塩のようなフォトコロイド、ゼラチン、綿繊維、ゼラン（ｇｅｌｌａｎｅ）、キサンタン、ラポナイト、シリカおよびこれらの混合物。
【００１７】
例えば、液体吸収性フィラーの濃度はマトリックスの全重量に対して０．２〜５０重量％、好ましくは１〜２０重量％、より好ましくは１〜１０重量％である。
好ましくは、マトリックス中の液体吸収性成分の含有量は、該成分によって吸収される液量が、マトリックス中に含まれる活性成分を溶解させるのに必要な液量以上になるように選定される。
【００１８】
マトリックスは、裏地に含浸された液体をマトリックスが透過させるためおよび／または皮膚との界面と裏地との間のガスおよび／または液体を優先的に交換させるためにギャップ、例えば微穿孔を有していてもよい。
マトリックスは裏地上に格子模様等の形態で形成させてもよい。
また、マトリックスは使用する液体と化学的に反応する少なくとも１種の活性成分を含有していてもよい。
【００１９】
本発明の特定の態様においては、パッチは密閉封止状のパッケージ内に収納され、裏地には液体を予め含浸させる。
【００２０】
本発明は、前述のようなパッチおよびマトリックスに含まれる裏地に含浸させる液体を保有する容器から構成されるキットも提供する。
液体は皮膚上において所望の効果（化粧上の効果やその他の効果）をもたらす少なくとも１種の活性成分、例えば、麻酔剤等を含有していてもよい。
【００２１】
また、本発明は（ｉ）前述のようなパッチを供給し、（ｉｉ）該パッチを皮膚に付着させる前または付着させた後、予め選定された液体を裏地へ含浸させる過程を含む方法も提供する。
この方法の特定の態様においては、パッチを皮膚に付着させる前に皮膚を濡らす。
【００２２】
裏地の単価面積あたりの吸水量は皮膚の単位面積あたりの付着水量よりも多くするのが好ましい。
パッチの皮膚上の存置時間は、例えば、５〜６０分間である。
【００２３】
本発明のその他の特徴と利点は以下において添付図に基づいて詳述する本発明の非制限的な実施態様によって明らかにする。
図１は本発明の第１の態様によるパッチの模式的断面図である。
図２は図１に示すパッチの使用法を示す模式図である。
図３は図１に示すパッチの使用法を示す模式図である。
図４は裏地に含浸された液体がマトリックスを通って伝播する一様式を示す模式図であある。
図５は本発明の変形態様によるパッチの模式的斜視図である。
図６は密閉封止状パッケージ内に収納されたパッチの模式的断面図である。
【００２４】
図１に示すパッチは疎水性ポリマーを基材とするマトリックス（２）を有しており、該マトリックスの一方の面（３）は剥離可能な保護膜（４）によって被覆され、該マトリックスの他方の面（５）は多孔質裏地（６）が付着されている。該裏地は、図示する態様の場合には、セルロース繊維を基材とする不織布によって構成される。
【００２５】
この場合、マトリックス（２）はポリアクリル系接着剤から形成されており、乾燥状態で接着特性を示す。
マトリックス（２）を着色させることによって、パッチの剥離後に、パッチ表面に付着することがある夾雑物をユーザーが視覚的に認識できるようにするのが有利である。
【００２６】
本発明において一般的に使用するのに適した他の疎水性の接着性材料にはシリコーン系もしくはポリビニル系接着剤、ポリウレタン、ラテックスエラストマーおよびＥＰＤＭエラストマーが包含されるが、これらに限定されるものではない。
【００２７】
図示する態様においては、マトリックス（２）は吸水性の親水性フィラー粒子（９）および裏地含浸用液体に可溶性の化粧的に活性な成分を含有する。
マトリックスの厚さはパッチの処置特性、フィラーの特性およびマトリックス中に含まれる化粧的活性成分の特性の関数として容易に選定される。
マトリックス（２）の厚さは一般的には２μｍ〜１．５ｍｍ、好ましくは５μｍ〜５００μｍであり、図示する態様の場合には２００μｍである。
【００２８】
粒子（９）は、図４に模式的に示すように、マトリックス（２）を構成するポリマー中に分散される。
粒子（９）の平均粒径は、例えば、５〜７０μｍであり、該粒子は皮膚に付着されるべきマトリックスの外部面（３）から突出する。
マトリックス（２）の外部面上に存在する粒子（９）は、マトリックスを構成するポリマー製の非常に薄い層で被覆される。
【００２９】
図示する態様の場合、使用される吸水性の親水性材料はＡＴＯ社から「アクアキープ（ＡＱＵＡＫＥＥＰ）」の商品名で販売されている吸水性ポリアクリレートであり、マトリックス（２）中の該吸水性ポリマーの濃度は約１０重量％である。
【００３０】
図示する態様の場合、マトリックス（２）は次の化粧的活性成分を含有する（各々の成分の濃度は６重量％よりも低くするのが一般的である）：アスコルビン酸（４重量％）、メントール（０．０５重量％）、ラベンダーエキス（１重量％）、ポリアミド粉末（３重量％）、クエン酸（１重量％）およびアラントイン（１重量％）。
【００３１】
乾燥した皮膚上のパッチの接着力（パッチを剥離させるために接着剤層の平面に対して垂直に加えられる力）は約５００ｇ／ｃｍ^２である。
【００３２】
図示する態様の場合、裏地（６）の厚さは２ｍｍであるが、該厚さは一般的には３ｍｍよりも小さくすることによってパッチの過度の硬直化を回避すると共に、パッチが皮膚に付着したときに嵩張らないようにするのが好ましい。
【００３３】
図１に示すパッチを使用する場合には、図２に示すように、裏地（６）を濡らして水またはローションのような水溶液を十分に含浸させ、次いで、保護膜（４）を剥離させた後、図３に示すように、マトリックス（２）の外部面（３）を介してパッチを皮膚の被処置領域へ付着させる。
図示する態様の場合、皮膚は予め濡らしておくが、変形態様の場合には、必要とする処置の種類に応じて、パッチを乾燥した皮膚に付着させてもよい。
【００３４】
マトリックス（２）は、マトリックス中に吸水性の親水性成分の粒子（９）が存在するので、図４に模式的に示すように、裏地（６）に含浸された液体を透過させる。
皮膚との界面に隣接して存在する粒子（９）は過度に吸水するので、皮膚とマトリックス（２）との間にゲル状中間層となって介在し、該中間層内において化粧的活性成分が溶解する。このため、放出された活性成分は表皮と接触する。
【００３５】
化粧的活性成分を皮膚上の付着液に溶解させて裏地（６）に含浸させることによって該活性成分を放出させ、これによって同一溶液中に長時間保存できない該活性成分をマトリックス（２）内へ含有させることができる。
【００３６】
裏地（６）はパッチと皮膚との界面の乾燥を遅延させるので、化粧的活性成分の皮膚内での作用の延長および、適当な場合には、表皮内への該活性成分の良好な拡散が有効におこなわれる。
水を含浸した裏地（６）はユーザーに清涼感または鮮やかな感触をもたらす。
【００３７】
さらに、皮膚の表面上に存在する夾雑物もしくは毒素はマトリックスの表面上で溶解させてマトリックスから含液状裏地（６）の方向へ濃度勾配の作用によって拡散させることができる。
従って、含水裏地（６）の存在は皮膚洗浄の点で有利である。
【００３８】
図示する態様の場合、パッチを約３０分後に剥離させると、皮膚の処置領域の色はアスコルビン酸とクエン酸の存在に起因してより白くなると共に、よりしなやかで柔らかくなる。
【００３９】
図５に示すように、本発明の範囲を逸脱することなく、マトリックス（２）にギャップを形成させてもよい。
このようなギャップは微穿孔（１１）によって構成されていてもよく、あるいはマトリックス（２）を比較的小さいもしくは大きなメッシュの格子模様の形態で裏地（６）上に形成させることによって得てもよい。
【００４０】
図６は図１に示すパッチ（１）を収納した密閉封止状パッケージ（１０）を示す。この場合、パッチの裏地（６）には液体が予め含浸されているので、ユーザーが裏地（６）を濡らす必要はなく、また、水以外の液体を使用することも可能である。
【００４１】
本発明は上記の実施態様に限定されるものではない。
特に、皮膚に所望の作用効果をもたらす１種もしくは複数種の活性成分、例えば、麻酔剤を含有する液体を使用することによって皮膚を局部的に無感覚にすることができる。
【００４２】
裏地は図示する態様の場合のように、セルロース繊維を基材とする不織布であってもよいが、変形態様においては、裏地は使用液を保有できる化学構造を有する材料、例えば、水膨潤性材料、フェルトまたは発泡体によって構成されるか、またはこれらの材料を含んでいてもよい。
【００４３】
【発明の効果】
本発明によれば、パッチを用いて種々の活性成分を皮膚へ供給する条件が改良されるので、従来のパッチの問題点、例えば、使用に際して活性成分を溶解させる液量が不十分であり、また、使用時にユーザーに不快感を発現させる等の問題点は解消される。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の第１の態様によるパッチの模式的断面図である。
【図２】図１に示すパッチの使用法を示す模式図である。
【図３】図１に示すパッチの使用法を示す模式図である。
【図４】裏地に含浸された液体がマトリックスを通って伝播する一様式を示す模式図である。
【図５】本発明の変形態様によるパッチの模式的斜視図である。
【図６】密閉封止状パッケージ内に収納されたパッチの模式的断面図である。
【符号の説明】
１：パッチ、２：マトリックス、４：保護膜、６：裏地、９：フィラー粒子、１０：密閉封止状パッケージ、１１：微穿孔

Claims (19)

1. 乾燥状態において接着性を示すと共に少なくとも１種の活性成分を含有するマトリックスを含むパッチであって、該マトリックスがその一方の面を介して多孔性の裏地と付着すると共に他方の面を介して皮膚に付着するパッチにおいて、（i）マトリックス中に含まれる活性成分の少なくとも一部を溶解させるのに適した予め選択された液体を保有できるように該裏地（６）が選定されること、（ii）該マトリックス（２）が該液体を透過させること、（iii）該液体がマトリックスを通って拡散したときに、該液体が該活性成分を溶液中に取り込むことによって、該活性成分がマトリックスから放出されること、および（iv）使用に際して、該裏地に該液体が含浸されることを特徴とするパッチ。
2. マトリックスが１種もしくは複数のポリマーを含有する請求項１記載のパッチ。
3. 液体が水または水溶液もしくはアルコール溶液であって、マトリックス（２）が少なくとも１種の疎水性ポリマーを含有する請求項２記載のパッチ。
4. 裏地（６）が多孔質材料によって形成された請求項１から３いずれかに記載のパッチ。
5. 裏地（６）が不織布によって形成された請求項４記載のパッチ。
6. マトリックス中に含まれる活性成分が粒状形態で存在する請求項１から５いずれかに記載のパッチ。
7. 化粧的活性成分である少なくとも１種の活性成分をマトリックスが含有する請求項１から６いずれかに記載のパッチ。
8. 化粧的活性成分が次の群から選択される請求項１から７いずれかに記載のパッチ：皮膚軟化剤、モイスチャライザー、抗皺剤、引締剤、日焼け止め剤、平滑剤、人工日焼け剤、脂肪分減少剤およびこれらの混合物。
9. マトリックスが、裏地（６）に含まれる液体を吸収する少なくとも１種の吸収性成分の粒子（９）から成るフィラーを分散状態で含有する請求項１から８いずれかに記載のパッチ。
10. マトリックス中の吸収性成分の濃度が、該成分が吸収できる液量がマトリックス中に含まれる活性成分を溶解させるのに必要な液量以上になるように選定される請求項９に記載のパッチ。
11. 吸収性成分が次の群から選択される請求項９または１０記載のパッチ：水中において膨潤ファクターを有する超吸収性架橋ポリアクリレート、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、セルロースの半合成誘導体、デンプン、バイオゴム、バイオサッカリド、硬グルカン、カゼイン、フォトコロイド、ゼラチン、綿繊維、ゼラン、キサンタン、ラポナイト、シリカおよびこれらの混合物。
12. 吸収性成分の粒子から成るフィラーの濃度がマトリックスの全重量に対して０．２〜５０重量％である請求項９から１１いずれかに記載のパッチ。
13. 吸収性成分の粒子から成るフィラーの濃度がマトリックスの全重量に対して１〜１０重量％である請求項９から１１いずれかに記載のパッチ。
14. マトリックス（２）がギャップを有する請求項１から１３いずれかに記載のパッチ。
15. マトリックスが微穿孔（１１）を有する請求項１から１４いずれかに記載のパッチ。
16. マトリックス（２）が裏地（６）上に格子模様の形態で付着された請求項１から１５いずれかに記載のパッチ。
17. 密閉封止状パッケージ（１０）内に収納され、裏地（６）に液体が含浸された請求項１から１６いずれかに記載のパッチ。
18. 請求項１から１６いずれかに記載のパッチおよび裏地（６）に含浸させるための液体を保有する容器から構成されるキット。
19. 液体が予め選定された効果を皮膚上で発現する活性成分を少なくとも１種含有する請求項１８記載のキット。

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