JP3612319B2 - 電気音響変換器 - Google Patents

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Description

技術分野
本発明は電気信号を音に変換するスピーカやヘッドホン、イヤホン等、あるいは受信した音を電気信号に変換するマイクロホンや音波センサ等に適用される電気音響変換器に関する。
背景技術
従来、ガムーゾン型スピーカとよばれる電気音響変換器は、ボイスコイルに相当する導電体のパターンが形成された音響振動板を磁界発生器の対の中間部に設置し、導電体に駆動電流を供給することによって音響振動板をその振動面に対して垂直に振動させるようにしたものが用いられている。
このガムーゾン型のものは、導電体を音響振動板のほぼ全域に配置させた構造のために、全面が同位相で駆動され広帯域で良好な過渡特性を得ることができる特徴を有している。
このような電気音響変換器に類するものとして、以下のようなものが提案されている。
(1)特公昭35−10420号公報(以下イ号公報という)には、隣接する帯状磁石(または磁石板における帯状領域)のNS極を交互に異ならせて配置して、これら多数の帯状磁石からなる磁石板の全体を平板状に形成し、さらにNS極の方向がこの平板面に対して垂直になるように配置し、この磁石板の平面に対向して導電体が形成された音響振動板を配置した電気音響変換器が提案されている。
(2)特開昭51−26523号公報(以下ロ号公報という)には、内周側と外周側にNS極を形成するように、半径方向に同一に磁化させた厚さが均一なリング状の磁石2個の間に導電体を蒸着した音響振動板を配置させ、磁石の中央に形成された開口部から音波を外部に放射するようにした電気音響変換器が提案されている。
(3)特開昭59−75799号公報(以下ハ号公報という)には、中心部と外周部とが異なる極性で磁化された1対の平板状有孔磁石板を、互いに反発しあう状態で一定の間隔をおいて対向させると共に、それらの間に導電体を渦巻状に巻き回してなる音響振動板(平面コイル振動板)を前記磁石板と平行に配設させた電気音響変換器が開示されている。
(4)特開昭52−38915号公報(以下ニ号公報という)には、音響振動板と平行な方向に着磁された複数個の帯状永久磁石を同極同士が相対向するように一定の間隔をおいて磁石板(磁性板)を構成し、前記磁石板を導電体が形成された音響振動板の両面に配置してこの少なくとも片方側の磁石板における帯状永久磁石間に多数の開口を形成させた電気音響変換器が記載されている。
(5)特開昭57−23394号公報(以下ホ号公報という)には、環状の過渡面域により分割された複数の環状NS極を、隣接する磁極が異なる極性となる状態に同心に有した一対の平坦な孔あき永久磁石板の間に、複数のスパイラル状導電体が形成された音響振動板を設置し、磁石板の孔より音波を外部に放射するようにした電気音響変換器が提案されている。
しかしながら、前記従来の電気音響変換器においては、以下のような課題を有していた。
(1)イ号公報に記載の電気音響変換器では、NS極の方向を交互に異ならせて配置しているので磁束の方向が大きく変化し、音響振動板をその面に対して垂直な方向に駆動させるための磁束の密度、即ち音響振動板の導電体に作用する電磁力の方向が振動方向となる磁束(以下「有効作用磁束」という)の密度(以下「有効作用磁束密度」という)は振動方向に対して変化が大きく、音質等を劣化させる非直線歪の原因となるという課題があった。
(2)イ号公報のように帯状磁石のNS極の方向を交互に異ならせた場合、音響振動板の振動面に対して平行となる有効作用磁束は、隣り合う帯状磁石においてその中間部に対向する音響振動板の領域で密度が高くなり、帯状磁石に対向する振動板の部分では低くなる。このため、所定の有効作用磁束密度を有する領域を滑らかに連続して形成させることが困難であり、音響振動板の全面で均一な駆動力を得ることができず、良好な振動特性を持った完全な全面駆動型スピーカとすることができなかった。
(3)また、導電体を巻く方向についても、交互に逆方向となる有効作用磁束に合わせて同様に交互に逆方向とし、さらに所定の磁束密度を有する幅の狭い領域に導電体を適正配置する必要があり、高い工作精度を要し生産性が劣るという課題があった。
(4)ロ号公報に記載された、半径方向に同一に磁化され厚さが均一なリング状磁石の間に音響振動板を配置した電気音響変換器では、リング状磁石は部分領域単位で磁化するのではなく、全内周側と全外周側とでそれぞれ一体となってNS極を形成するように磁化されている。リング状磁石の場合、外周側の磁極の有効面積は半径の差により内周側の磁極の有効面積よりも広くなるが、磁石におけるN極側の総磁束とS極側の総磁束は常に等しいため、外周側の磁束密度が内周側よりも低下して有効作用磁束密度も低下する。従って、リング状磁石の外径と内径の間、即ち半径方向の幅を広くする程、外周側磁極の有効面積と内周側磁極の有効面積との差が大きくなって有効作用磁束密度が低下するため、半径方向の幅は狭くして使用する必要があった。これにより設計条件が制約されて、種々の条件に適合させた音響特性に優れた電気音響変換器とすることが困難であるという課題があった。
(5)また、このようなリング状磁石の磁化の方法として、その内周縁側と外周縁側とに対となる磁極を配置して全体を磁化させる方法が一般的に用いられているが、リング状の半径方向の幅が広くなると内周側と外周側の磁極の面積差により、磁化強度に差が生じて内周部が先に磁気的に飽和してしまうなど強力で均一な磁化が困難であった。
(6)このような磁化における飽和の問題やリング状磁石の外周近傍における前記磁束密度低下等の問題を少なくするために、リング状の半径方向の幅を狭くした磁石を使用する必要があった。従って、リング状の外径と内径の間、即ち音響振動板の振動に寄与する部分の面積を大きくできないため、高い有効作用磁束密度が広範囲に形成され難く、磁束の利用効率はさらに悪くなるという課題があった。
(7)ハ号公報に記載された有孔磁石板を用いた電気音響変換器では、磁石板に形成された音孔を介して音波を外部に放出できるものの、対向して配置された有孔磁石板の磁化の方向は、磁石板全体が一体となってまとまったN極とS極を形成するような角度としており、音響振動板の導電体に対して有効作用磁束密度を高くするための最適な角度となるように調整されていないため、磁束の利用効率が悪くなるという課題を有していた。即ち、音響振動板の導電体における有効作用磁束をその導電体の領域で積算した値(U)と、磁石板の全体積(V)との比、即ちU/V(以後「有効作用磁束比」という)で示される磁石板の単位体積当りの有効作用磁束が低下していた。また、このような磁石板の磁化方向では、音響振動板の導電体に対する有効作用磁束密度の部分的な補正を加えることが難しいため、音響振動板の半径方向に対する有効作用磁束密度の変化も大きくなるという課題があった。
(8)ニ号公報に記載の帯状永久磁石間に開口を多数形成させた電気音響変換器では、磁石板に形成される多数の開口は全体の配列形状が方形となるように縦横の方向に揃えて配置されている。従って、円板状に構成した振動板と方形となる開口部の配列形状が合わず、振動板の負荷分布の影響により円板状の周縁等で振動が不均一となって、再生される音の音質が悪化するという課題があった。
(9)また、音響振動板の設置位置において所定の有効作用磁束密度を有する領域を連続して形成できないために、音響振動板の全面に導電体を配置することができず、良好な振動特性を持った全面駆動型スピーカとすることができないという課題があった。
(10)ホ号公報に記載された、環状の過渡面域により分割された複数の環状NS極を、隣接する磁極が異なる極性となる状態に同心に有した一対の平坦な孔あき永久磁石板の間に音響振動板を設置した電機音響変換器では、磁石板を構成しているそれぞれのリング状磁石における環状のNS極が、環状の過渡面域により分割されている。即ち、それぞれのリング状磁石では部分領域単位ではなく、全内周側と全外周側でそれぞれ一体となってNS極が形成されている。リング状磁石の場合、外周側の磁極の有効面積は半径の差により内周側の磁極の有効面積よりも広くなるが、磁石におけるN極側の総磁束とS極側の総磁束は常に等しいため、外周側の磁束密度が内周側よりも低下して、後述の第5(b)図に示すように有効作用磁束密度も低下する。リング状磁石の半径方向の幅は広くする程、外周側磁極の有効面積と内周側磁極の有効面積との差が大きくなるため、この半径方向の幅は狭くして使用する必要があり、低歪率でエネルギーの変換能率に優れた電気音響変換器とするための設計条件が制約されるという課題があった。
(11)また、それぞれのリング状磁石の磁化方法として、その内周縁側と外周縁側とに対となる磁極を配置して全体を磁化させる方法が一般的に用いられているが、リング状の半径方向の幅が広くなると内周側と外周側の磁極の面積差により、磁化強度に差が生じて内周部が先に磁気的に飽和してしまうなど強力で均一な磁化が困難であった。これにより、リング状磁石における半径方向の幅が制限されるという課題があった。
(12)このような磁化における飽和の問題やリング状磁石の外周近傍における前記磁束密度低下等の問題を少なくするために、リング状の半径方向の幅を狭くした磁石を使用する必要があった。従って、実際には磁化方向の異なる複数のリング状磁石を組み合わせて磁石板としており、これにより音響振動板も複数のスパイラル状導電体を組み合わせて構成する必要があった。このため、組み合わせた各スパイラル状導電体がそれぞれ独立して振動(分割振動)し、音響振動板の均一振動が妨げられて歪みの少ない音響特性とすることが難しくなっていた。
本発明は上記従来の課題を解決するもので、音響振動板の導電体とその振動方向に対して必要とされる有効作用磁束密度の分布を広範囲に設定することができ、音響振動板を均一に振動させて歪の発生を抑制すると共に、製作に際して高い工作精度を要せず、電気信号から音へ、又は音から電気信号への変換を効率よく行えるスピーカ、ヘッドホン、イヤホン、マイクロホンや音波センサ等の電気音響変換器を提供することを目的とする。
発明の開示
上記目的を達成するために本発明は以下の構成を有している。
本発明の請求の範囲第1項に記載の電気音響変換器は、全体が円盤状又はリング状に形成された磁石板と、前記磁石板に対して平行配置されその面上に導電体が形成された音響振動板とを有する電気音響変換器であって、前記磁石板の各部分領域の磁化方向において前記音響振動板の振動面と平行な成分をゼロ又は前記磁石板の半径方向とし、かつ前記磁化方向が前記音響振動板の振動面に対してなす角度を前記磁石板の中心軸からの距離に対して漸次異ならせて構成されている。
この構成によって以下の作用が得られる。
(a)磁石板の各部分領域における磁化の方向を調整して、それぞれ音響振動板の導電体に対する有効作用磁束の寄与分が最も大きくなるように設定できるため、音響振動板の振動面に沿った半径方向の磁束を有効に発生させることができ、高い有効作用磁束密度を有する領域を広くまとまった範囲で確保できる。
(b)有効作用磁束密度の高くなる領域を音響振動板の位置に広くまとまった範囲で形成させることができるため、導電体が配置された音響振動板の全面に電磁力による駆動力を発生させることができる。これにより、振動面の全面を同位相で作動させることのできる音響振動板の設計が可能となり、低歪率の理想的な全面駆動型平面スピーカが実現できる。
(c)磁石板の各部分領域における磁化の方向を音響振動板の振動面に対してそれぞれ所定の角度に設定するため、必要とする有効作用磁束密度の領域を広範囲に確保しながら、音響振動板の振動方向における各位置での有効作用磁束密度は変化の少ない分布が得られる。従って、音響振動板の振動方向における有効作用磁束密度の高低の差により生じる歪を抑制して、スピーカやヘッドホン等においては発生する音の音質を、また、マイクロホン等においては音より変換される電気信号を良好に維持できる。
(d)音響振動板を2枚の磁石板の対の間に平行配置した場合には、磁石板を1枚とする場合に比べ振動方向に対する有効作用磁束密度の変化を少なくできるので、音響振動板の振幅が大きくなる場合や音響振動板の設置位置に多少の誤差が生じても、良好な音質を維持させることができる。
(e)2枚の磁石板の対の間に音響振動板を配置した場合には、磁石板を1枚とする場合に比べ有効作用磁束密度を高くすることができる。
ここで磁石板は、磁石材の全体を円盤状又はリング状に形成して、その磁石材の部分領域の磁化を所定の方向や大きさとしたものである。
磁石板は音響振動板の前後両面に対向して2枚を配置するか、あるいは音響振動板に対向して1枚だけを配置してもよい。
音響振動板を挟んでその前後両面に磁石板2枚を配置する場合は、一方の磁石板の厚さを他方の磁石板より薄くしたり、互いの磁石板の厚さの分布を変えたりすることで音響振動板における磁界の方向や強さを調整できる。これにより、2枚の磁石板を音響振動板の両側に配置する場合の特徴と、片側に1枚だけ磁石板を配置する場合の特徴とを補完、調整して、その音響特性を所定の状態に制御することができる。
音響振動板の前後両面にそれぞれ対向して2枚の磁石板を配置する場合、2枚の磁石板における部分領域の磁化方向は、一般的には音響振動板の振動面に対してそれぞれ対称となるように配置するが、2枚の磁石板において互いの厚さや厚さの分布を変える場合等では、磁束の利用効率や音響振動板近傍における磁束分布の均一性を改善するために対称としない場合がある。
磁石板の各部分領域における磁化の方向を音響振動板の振動面に対して漸次異ならせて設定する場合、それぞれの部分領域の磁化の方向は磁石板全体が一体となってまとまったN極とS極を形成するような角度ではなく、各部分領域が互いに異なる独立した磁極を形成するような角度とする。
なお、特定の部分領域において磁化方向を音響振動板の振動面と平行な成分がゼロとなるように、即ち磁化方向を音響振動板の振動面に対して垂直にしてもよい。これによって、磁化方向の調整がより柔軟にできるようになり、磁石板により音響振動板に形成される有効作用磁束密度の適正な調整が容易になる。
また、部分領域は磁石板を小さく分割して形成し、この隣接した部分領域間の磁化の角度を漸次少しずつ異ならせてそれぞれを最適化した角度とすることが好ましく、これによって磁束分布のばらつきを少なくし、歪みの少ない音響特性を有した電気音響変換器を実現できる。即ち、製作の難しさを考慮しなければ、隣接した部分領域における磁化角度は半径方向や厚さ方向に対して少しずつ連続して最適化させたものが理想的である。
このような磁石板の素材にはネオジム−鉄−ボロン系(以下「ネオジム系」という)あるいはSm−Co系等の希土類磁石、フェライト磁石、KS鋼磁石、MK鋼磁石、OP磁石、新KS鋼磁石、アルニコ磁石などの永久磁石を適用することができる。
導電体が形成される音響振動板は、非磁性体であるポリイミド、ポリエチレン、ポリカーボネート等の合成樹脂やセラミック、合成繊維、木質繊維あるいはこれらの複合材等からなる薄肉基板材の面に、アルミニウム、銅、銀、金等の導電体を蒸着手段やエッチング手段等でスパイラル状やコイル状、あるいは矩形状の折り返しを繰り返して形成される迷宮状等のパターンとして回路を形成したもの等が使用できる。なお、音響振動板は、導電体としての絶縁されたコイルを面状に形成する事によって、担持体としての非磁性薄膜を省略することもできる。
請求の範囲第2項に記載の電気音響変換器は、全体が円盤状又はリング状に形成された磁石板と、前記磁石板に対して平行配置されその面上に導電体が形成された音響振動板とを有する電気音響変換器であって、前記磁石板の各部分領域の磁化方向において前記音響振動板の振動面と平行な成分を前記磁石板の半径方向とし、かつ前記磁化方向が前記音響振動板の振動面に対してなす角度を一定値にして構成されている。
この構成によって、請求の範囲第1項の作用の他、以下の作用が得られる。
(a)磁石板の磁化方向を音響振動板の振動面に対して一定の角度にしているため、磁石板の磁化方向を磁石板の中心軸からの距離に対して漸次異ならせた角度とする場合に比べ、磁石板の設計及び製作を容易にできる。
(b)磁石板の磁化方向を音響振動板の振動面に対して一定の角度にしているので、磁化方向を中心軸からの距離に対して漸次異ならせた角度とする場合に比べ、音響振動板の半径方向に対する有効作用磁束密度の高低差を少なくして、有効作用磁束密度の分布を適正化させるのに必要な補正を少なくできる。
(c)磁石板の厚さの分布を変化させて有効作用磁束密度の補正を行う場合、厚さによる補正量を少なくできるので、磁石板に形成される音通過孔においてその深さが及ぼす音響特性への影響を少なくできる。
請求の範囲第3項に記載の発明は、請求の範囲第1項又は第2項に記載の電気音響変換器において、前記磁石板が前記各部分領域に対応した小磁石の集合体で構成されている。
これによって、請求の範囲第1項又は第2項の作用の他、以下の作用が得られる。
(a)磁石板が小磁石の集合体で構成されているので、複雑な磁化のパターンを有する磁石板であっても、予め所定の角度で磁化した多数の小磁石を配列することにより比較的容易に実現することができる。
(b)小磁石を集合させて全体の磁石板が形成されるので、それぞれの小磁石に対し個別に強力な磁化が可能となり、磁石材の能力を最大限にした磁石板の製作が容易になる。
(c)磁石板を構成する各小磁石の磁化角度や磁化強度、大きさ等を所定の値に変化させることが容易にできる。これにより、音響振動板の導電体における有効作用磁束密度の分布状態を、必要とする音響特性に合わせて容易に調整することができる。
(d)小磁石間の隙間を音通過孔として利用することができるため、音通過製作のための穿孔作業等を必要とせず、優れた音質の電気音響変換器を簡単に構成できる。
(e)小磁石として同一の形状で同一の磁化強度を有するものを用い、それぞれのNS極の音響振動板の振動面に対する角度を変えて配置することにより磁石板を形成させることもできるので、規格化された安価な材料を用いた電気音響変換器を製造することができる。この場合、小磁石として直径方向に磁化した円板状のものを用い、小磁石の面を磁石板の面に対して垂直とし径の方向が磁石板の半径方向となるように同心円状に配置し、NS極の角度を変化させて使用すれば、音通過孔や周囲の小磁石に対する角度の変化による形状が及ぼす影響を少なくすることができる。
ここで、小磁石としては永久磁石や電磁石が使用される。この小磁石を面上に配列集合させて、全体が円盤状又はリング状等に形成された磁石板を構成させることができる。小磁石としては、例えば単独の形状が棒状や矩形状、円板状、リング状、扇形状、リング状または円盤状を小さく分割した要素等のものを用いることができる。
小磁石の組み上げ方法としては、所定の方向に磁化させた多数の小磁石をポリエチレン、ポリカーボネート、ポリイミド系等の合成樹脂や、エポキシ、シアノアクリレート系等の合成樹脂系接着剤、無機系接着剤等で全体を結合して構成したり、あるいは各小磁石が嵌合される非磁性材からなる枠体等を用いたりして全体を円盤状又はリング状に構成することもできる。
請求の範囲第4項に記載の発明は、請求の範囲第1項乃至第3項に記載の電気音響変換器において、全体が円盤状又はリング状に形成された前記磁石板が、その外周縁側から中心軸側にかけて厚さを漸次厚くして構成されている。
この構成によって、請求の範囲第1項乃至第3項の作用の他、以下の作用が得られる。
(a)磁石板の厚さをその外周縁側から中心軸側にかけて漸次厚くして、磁石板の各位置における磁界の寄与を漸次異ならせることにより、音響振動板の中心軸側で有効作用磁束密度が低下しがちな場合に対して中心軸側の有効作用磁束密度を高めることができる。これにより、音響振動板の導電体における有効作用磁束密度の分布を音響振動板が均一振動するパターンに設定でき、音響振動板の振動特性を容易に最適化できる。
(b)磁石板の中心軸側と外周縁側に磁石板の支持部を設置する場合は、最も支持強度が必要とされる磁石板の中心部が厚くなっているため、強度的に優れた構造とすることができる。
(c)磁石板の厚さを漸次変化させてその中心部側を厚くしているため、磁石板に穿設する音通過孔の深さも漸次緩やかに変化させることができる。これにより、音通過孔の深さと共に変化する音響インピーダンスも急激に変化することがなくなり、音響振動板における不規則振動の発生を防ぐことができる。
請求の範囲第5項に記載の発明は、請求の範囲第1項乃至第3項に記載の電気音響変換器において、全体が円盤状又はリング状に形成された前記磁石板が、その中心軸側と外周縁側との中間部における厚さを前記中心軸側及び前記外周縁側より厚くして構成されている。
この構成によって、請求の範囲第1項乃至第3項の内いずれか1項の作用の他、以下の作用が得られる。
(a)磁石板において、その中心軸側と外周縁側との中間部における厚さを前記中心軸側及び前記外周縁側より厚くして磁石板の各位置における磁界の寄与を漸次異ならせることにより、特に、音響振動板の前記中間部における有効作用磁束密度が低下する場合に対して、前記中間部の有効作用磁束密度を高めることができる。これにより、音響振動板の導電体における有効作用磁束密度の分布を音響振動板が均一振動するパターンに設定でき、音響特性に優れた電気音響変換器を提供できる。
(b)磁石板の厚くなる部分が半径の中間部となるため、厚い部分が一部分に集中しない構造となる。これにより、磁石板に穿設した音通過孔においてその深さが及ぼす音響インピーダンスへの影響を全体的に分散させることができ、音響インピーダンスの部分的な高低をなくして音響振動板の不規則振動を防ぐことができる。
請求の範囲第6項に記載の発明は、請求の範囲第1項乃至第5項の内いずれか1項に記載の電気音響変換器において、前記磁石板が外部又は内部で発生する音波を通過させる音通過孔を有して構成されている。
この構成によって、請求の範囲第1項乃至第5項の内いずれか1項の作用の他、以下の作用が得られる。
(a)磁石板に音波を通過させるための音通過孔が多数形成されているので、スピーカやヘッドホン等においては音響振動板の全域で発生した音波を互いに干渉させることなく放出し、また、マイクロホン等においては外部より受信する音の干渉を少なくして歪の少ない電気信号を得ることができる。
(b)2枚の磁石板の間に音響振動板を配置した場合、いずれか一方又は両方の磁石板に音通過孔を設けることができる。両方に音通過孔を形成した場合は、全体の構造を音響振動板の振動面に対して対称とすることができるため、音響振動板の振動に対し音響的に優れた構造とすることができる。
ここで音通過孔は、磁石板に形成した開口部である。音通過孔は主に孔の中心軸を音響振動板の振動面に対して垂直な方向にして形成させるが、この中心軸を傾斜させたり、孔の内部壁を音の進行方向に対して拡径、又は縮径するような傾斜部を設けたりすることにより、音響特性を改善したり集音性を高めたりすることもできる。
請求の範囲第7項に記載の発明は、請求の範囲第6項に記載の電気音響変換器において、前記磁石板に配置される前記音通過孔の大きさ、配置密度、配置パターンを前記磁石板の中心軸側から外周縁側にかけて漸次異ならせて構成されている。
この構成によって、請求の範囲第6項の作用の他、以下の作用が得られる。
(a)磁石板に形成される音通過孔の配置状態により、音響振動板の導電体における有効作用磁束密度の分布状態を調整できるので、有効作用磁束密度の分布を音響振動板が均一振動するパターンに設定でき、音響特性に優れた電気音響変換器を提供できる。
(b)磁石板に形成される音通過孔の配置状態により音響インピーダンスを調整できるので、音響振動板で発生または受信する音波の伝達特性と音響振動板の振動特性とを最適化することができる。
(c)音響振動板の導電体における有効作用磁束密度分布の調整に、磁石板の厚さや磁化強度を変化させて行うものと組み合わせて用いることにより、音響振動板の導電体に形成される有効作用磁束密度の分布を音響振動板が均一振動するパターンに容易に設定することが可能になる。
音通過孔の大きさ、配置密度、配置パターン、及び前記磁石板の厚さを変化させる場合の厚さのパターンは、以下のようなコンピュータを使用した有限要素法によるシミュレーションを行うことで設定できる。即ち、予め磁石板のモデルについてそのデータをシミュレーションプログラムに組み込み、音響振動板の近傍における有効作用磁束密度の分布を計算できるようにしておく。こうして、計算結果を元にその有効作用磁束密度が所定の分布となるように、磁石板の各位置における厚さに関するデータ、音通過孔の大きさや配置に関するデータ等を変化させ、調整することによりその最適値を求めることができる。
請求の範囲第8項に記載の発明は、請求の範囲第1項乃至第7項の内いずれか1項に記載の電気音響変換器を、それぞれサイズを異ならせて同心円状に複数配置して構成されている。
この構成によって、請求の範囲第1項乃至第7項の内いずれか1項の作用の他、以下の作用が得られる。
(a)それぞれサイズや音響特性の異なる独立した電気音響変換器を同心円状(同軸)に構成して全体を複合型の電気音響変換器とすることができるため、音波の放射面積、及び電気インピーダンス等の適用条件に応じてこれらを一体に適正配置でき、音響特性に優れた電気音響変換器とすることができる。例えば、高音域用、中音域用、低音域用等の周波数帯域別にそれぞれの電気音響変換器を組み合わせることにより、全周波数帯域において優れた性能を有する複合型の電気音響変換器を容易に構成できる。
(b)磁石板の半径が大きくなり有効作用磁束比が低下して磁束の利用効率が悪化するような場合でも、磁石板全体を複数のリング状等の磁石板に分け、それぞれの分割された隣り合う磁石板のNS極を互いに逆方向に設定することにより、有効作用磁束比の低下を防ぐことができる。
(c)互いに音響特性の異なる電気音響変換器を同軸に配置して複合型とすることができるので、位相特性や指向特性に優れた電気音響変換器を提供できる。
請求の範囲第9項に記載の発明は、請求の範囲第1項乃至第3項に記載の電気音響変換器において、全体が円盤状又はリング状に形成された前記磁石板が、その中心軸側と外周縁側との中間部における厚さを中心部、及び外周部より薄くして構成されている。
この構成によって、請求の範囲第1項乃至第3項の内いずれか1項の作用の他、以下の作用が得られる。
(a)磁石板において、その中心軸側と外周縁側との中間部における厚さを中心部、及び外周部より薄く形成するので、音響振動板により発生した音波の磁石板による干渉を少なくして外部に放出できる。また、磁石板の中間部において、その厚さを極端に薄くしたり、取り去ったりして磁石部の殆どを中心部、及び外周部のみとすれば、音響振動板により発生した音波の磁石板による干渉を完全になくすこともできる。
(b)磁石板の中間部の厚さ分布を所定の音響性能が得られるパターンに維持させたまま、磁石板の中心部及び外周部を厚くすることにより、音響振動板により発生した音波の磁石板による干渉を増加させることなく、有効作用磁束密度を高めてエネルギーの変換能率を改善することができる。
(c)磁石板の中間部の厚さを中心部、及び外周部より薄く形成することにより、特に、音響振動板の前記中間部における有効作用磁束密度が高過ぎる場合に対して、前記中間部の有効作用磁束密度を低下させることができる。これにより、音響振動板の導電体における有効作用磁束密度の分布を音響振動板が均一振動するパターンに設定でき、音響特性に優れた電気音響変換器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
第1図は実施の形態1の電気音響変換器の分解斜視図である。
第2図は実施の形態1の電気音響変換器の要部断面図である。
第3(a)図は電気音響変換器における音響振動板の要部平面図である。
第3(b)図は電気音響変換器における音響振動板の変形例の要部平面図である。
第4図は実施の形態1の電気音響変換器における磁石板の磁化パターンの模式図である。
第5(a)図は音響振動板の半径方向に対する有効作用磁束密度のグラフである。
第5(b)図は音響振動板の半径方向に対する有効作用磁束密度のグラフである。
第6図は電気音響変換器内部の有効作用磁束密度の分布図である。
第7(a)図は実施の形態2の電気音響変換器の要部断面図である。
第7(b)図は実施の形態2の磁石板の平面図である。
第8(a)図は実施の形態3の電気音響変換器の要部断面図である。
第8(b)図は実施の形態3の電気音響変換器における磁石板の磁化パターンの模式図である。
第9(a)図は実施の形態4の電気音響変換器の要部断面図である。
第9(b)図は実施の形態4の変形例の電気音響変換器の要部断面図である。
第10(a)図は実施の形態5の電気音響変換器の要部断面図である。
第10(b)図は実施の形態5の電気音響変換器における磁石板の磁化パターンの模式図である。
第11図は音響振動板の半径方向に対する有効作用磁束密度の絶対値のグラフである。
第12(a)図は実施の形態6の電気音響変換器の要部断面図である。
第12(b)図は音響振動板の前方に配置される磁石板の平面図である。
第12(c)図は音響振動板の後方に配置される磁石板の平面図である。
発明を実施するための最良の形態
以下、本発明の実施の形態につき図面を用いて説明する。
(実施の形態1)
第1図は実施の形態1の電気音響変換器の分解斜視図であり、第2図はその要部断面図である。
第1図及び第2図において、10は実施の形態1の電気音響変換器、11、12は円盤状に形成され互いに平行配置された一対の磁石板、11a、12aは磁石板11、12の中央に設けられた支持部挿入孔、13は磁石板11、12の中間位置に配置された音響振動板、13aは音響振動板13の中央に設けられた支持部挿入孔、14は音響振動板13に形成されたスパイラル状の導電体、15は磁石板11、12を構成するフェライト磁石等の永久磁石からなる小磁石、16は隣り合う小磁石15間に形成された音通過孔、16aは小磁石15の各列の間又は最も内側の列の内周縁側に設けられた小磁石15を固定するための接合部、17は導電体14の端子部、18aは磁石板11、12の支持部挿入孔11a、12aに18bは磁石板11、12の外周部にそれぞれ配設された磁石板11、12を平行に支持固定するための支持部、19は音響振動板13と支持部18a、18bとを弾性的に連結するサスペンション機能を有したエッジ部、19aは導電体14に接続される導線である。
音響振動板13は、第2図に示すように中心側に配置される円柱状の支持部18aと外周部側に配置される円筒状の支持部18bとの間にエッジ部19を介して接合され、互いに平行に設けられた磁石板11、12の中間位置に配置されている。
支持部18a、18bは合成樹脂等の非磁性体からなり、同極同士が対向して配置される2枚の磁石板11、12の反発力を支えるようになっている。
なお、駆動電流が外部から供給される端子部17は、導線19aを介してスパイラル状に形成された導電体14の両端に接続され、中心側の支持部18aと外周部側の支持部18bに取り付けられている。
円盤状又はリング状に形成された磁石板11、12は、それぞれ部分領域となる小磁石15を同心円状に配列して形成され、小磁石15の各列はポリカーボネート、ポリイミド等の合成樹脂からなる接合部16aにより固定されている。
小磁石15は、内側の列より順に接合部16aに接着剤を塗布し、列単位で所定位置に配置して固定しているが、小磁石15の各列間を接合部16aを介せずに直接接着したり各列間に樹脂を注入し硬化させて接合してもよい。
音通過孔16は、隣接する小磁石15間に設けられた間隙を直接、音通過孔16として用いている。
小磁石15のNS極は、後述するシミュレーション方法等を適用して音響振動板13の振動面に対して、それぞれ音響振動板13の導電体14に対する有効作用磁束の寄与を最も大きくするような角度となるように磁化されている。
第3(a)図は磁石板間の中間に配置される導電体がスパイラル状に形成された音響振動板の要部平面図であり、第3(b)図は音響振動板の別の変形例を示す要部平面図である。
薄肉リング状の音響振動板13は外周縁側及び内周縁側に設けられた図示しない弾性変形可能なエッジ部に接続され、このエッジ部を介して第2図の支持部18a、18bにより支持され、その表面に蒸着やメッキ、エッチング等の手段によりアルミニウムや銅等の導電体14がスパイラル状に形成されている。
音響振動板13は、円盤状又はリング状に形成された合成樹脂等の非磁性薄膜等の片面または両面上に、線状の導電体14をスパイラル状に形成して構成されている。このスパイラル状に形成された導電体14は、ボイスコイルに相当する機能を有している。
音響振動板13は所定の有効作用磁束密度分布を有する磁場内に置かれ、スピーカやヘッドホン等においては導電体14に流れる駆動電流により、音響振動板13の全面に電磁力による駆動力を発生させて全体を一体に振動させている。また、マイクロホン等においては音波により音響振動板13を振動させ、導電体14に発生する起電力を電気信号としている。
第3(a)図、第3(b)図では説明のために導電体14の巻き数を少なく記載して分布密度が低くなっているが、巻き数を多くしたり幅を広くして音響振動板13のほぼ全面に導電体14を配置し、分布密度を高めて構成することにより音響振動板13をより一体に振動させることができるようになる。また、導電体14の分布密度を高めることでエネルギーの変換能率を改善することができる。
なお、音響振動板13は2枚の合成樹脂などからなる非磁性薄膜で導電体14を挟んだものを音響振動板13として使用することも可能であり、また、絶縁された導電体14をスパイラル状に接合して全体を円盤状又はリング状に形成した非磁性薄膜を有しないものも使用できる。
ここで、スパイラル状に形成された導電体14として偏平率の高い幅広の平角線を用いることにより、巻き数を少なくして電気インピーダンスを低くできる。
また、第3(b)図の変形例に示すように導電体14を同心円となる複数のブロックにして巻き分けることもできる。これにより、ブロック毎に線の径、巻き数、各ブロックを接合する部分のスチフネス、コイル間の接合材料のスチフネスをそれぞれ変化させ、周波数帯域別にブロックを使い分けることにより、電気音響変換器10の周波数特性を改善することができる。
さらに、ブロック別に駆動電流の大きさを変化させることにより、各ブロックの振幅を制御することもできる。
また、電気信号がPCM(パルス符号変調信号)等のデジタル信号である場合、ビット数分のブロックに導電体14のパターンを分割して、各ビットに対応する出力を発生するようにそれぞれのブロック毎の面積を決定することにより、これをデジタル信号用スピーカとして用いることもできる。
第4図は実施の形態1の電気音響変換器10において磁石板11、12の各部分領域となる小磁石15の磁化角度のパターンを示す模式図である。
第4図において、12は磁石板、15aは磁石板11、12の各部分領域となる小磁石15の磁化の方向に対応付けられた磁化ベクトルである。なお、磁化ベクトル15aは小磁石15の内部でS極からN極に向かう方向をベクトルの正方向としているが、ここで磁石板11、12における全体のNS極を逆にしても電気音響変換器10としての特性は同じとなる。
第4図で示すように中心部側の磁化ベクトル15aが磁石板11、12の中心軸と交わる面側を磁石板11、12の表側とし、その磁化ベクトル15aが音響振動板13の振動面に対してなす角度θ1を正方向の磁化の角度としている。表側の有効作用磁束密度は裏側よりも高くなるため、磁石板11、12は表側を音響振動板13に向けて使用している。
形状、及び磁化パターンが同じである2枚の磁石板11、12は、互いに外周縁部の位置を揃えてそれぞれの表側を対向させ、さらに音響振動板13とも平行になるように支持部18a、18bに取り付けられている。
電気音響変換器10では、磁石板11、12の各小磁石15(部分領域)における磁化の強さを最大化させている。また、各小磁石15の磁化ベクトル15aは音響振動板13の振動面と平行な成分を磁石板11、12の半径方向とし、音響振動板13の振動面に対する角度θ1を磁石板11、12の半径方向に対して第4図のようなパターンで分布させている。
それぞれの角度θ1は、音響振動板13の導電体14に対する有効作用磁束の寄与を最も大きくするような角度にしている。即ち、導電体14における有効作用磁束を導電体14の領域で積算した値(U)と、磁石板11、12の全体積(V)との比U/V(有効作用磁束比)が最大となって磁束の利用効率が最も良くなるような磁化の角度としている。
ここでは、同心円状の領域となる、同一半径の位置毎に配置される小磁石15の集合で形成されたリング列の領域毎に、磁化ベクトル15aの角度θ1をそれぞれ異ならせたものを使用している。
このような角度θ1のパターンは、例えば本実施の形態をモデルとしてコンピュータを使用したシミュレーションを行うことで設定できる。
角度θ1のパターンを、実際に磁石板により形成される磁束密度を測定することによって求めようとすれば、磁石板の磁化角度を変化させてトライアル・アンドエラーを繰り返す必要があり、変化させる磁化角度別に磁石板を準備することは困難であった。また、磁束密度の測定では、磁束密度計の磁気センサ部において測定位置、磁石板の面に対する角度及び磁石板の半径方向に対する角度等でズレに起因する誤差が生じ、正確なデータが得られなかった。
シミュレーションプログラムでは有限要素法による解析手法を用い、また磁界及び磁束密度の計算式にビオ・サバールの法則を使用した。
ビオ・サバールの法則は電流とこれによって形成される磁界の関係式であるため、プログラムでは磁化された磁石によって形成される磁界の分布を、電流による磁界で実現し計算できるようにした。
磁石板11、12における各部分領域は、有限要素法による計算を行うためにさらに小さく要素に分割したデータとした。
この分割した要素における磁化の状態を円形コイルに流れる電流の強弱によって表すために、一つの要素に対して一つの円形コイルを仮定して配置した。円形コイルは中心軸を要素の磁化の方向に一致させ、また直径を要素の大きさ以下とした。
プログラムでは前記円形コイルを均等に分割し、分割した各位置Mにおける電流の方向、大きさ、座標をデータとした。そして、全ての要素に対応させてこのような円形コイルを仮定し、全ての分割した各位置Mにおける電流の方向、大きさ、座標の各データを生成しプログラムのデータとして設定した。
このようにして各要素の磁化の状態を各位置Mにおける電流の分布によって実現し、それぞれの電流が音響振動板13の電導体14に寄与する有効作用磁束を次のようにしてビオ・サバールの法則によって計算し積算することにより、磁石板11、12による有効作用磁束密度の分布を解析した。
次の式はビオ・サバールの法則を用いた、位置Mにおける電流と、磁束密度(dB)との関係式である。
dB=k・μ・i・di・sinθ/(4π・r2
dBは求める磁束密度、μは磁束密度dBを求める位置の透磁率、dlは円形コイルを分割した長さ、iは円形コイルを分割した各位置Mにおける電流の大きさ、θは位置Mから磁束密度dBを求める位置に至る線と位置Mにおける電流の方向とのなす角度、πは円周率、rは位置Mと磁束密度dBを求める位置との距離である。
kは、本シミュレーションの特徴である磁石板の磁化の状態を電流の状態に置き換えて求めるための係数、さらに有限要素法における要素の分割方法や位置Mの分布に関する係数等をまとめたものである。
円形コイルは均等に分割するため長さdlは一定である。電流の大きさiも有限要素法の要素、即ち一つの円形コイル単位で一定値となるが、さらに磁石板全体の磁化の強さが一定の場合は全ての電流の大きさiが同じ値となる。
本実施の形態では磁石板11、12全体の磁化の強さを一定としているため、次のようにまとめた係数Kを設定することができる。
K=k・μ・i・dl/4π
このような係数Kを設定することにより、前記の磁束密度dBを求める式は次のように変数を角度θ、及び距離rのみとすることができる。
dB=K・sinθ/r2
なお、ここでの磁束密度dBは絶対値であるため、有効作用磁束は音響振動板13の各位置における磁束密度dBの計算値を元に、音響振動板13の振動面と平行でかつ半径方向となる成分を計算することにより求める。また、磁界の強さについてはdB/μで求めることができる。
本シミュレーションでは係数Kの値については、実験用とした磁石板における磁束密度の実測値を元に上記計算式で逆算することにより設定した。
このようにして上記計算式をシミュレーションプログラムに組み込み、全ての位置Mにおける電流について音響振動板13の導電体14に寄与する有効作用磁束を積算することにより、磁石板11、12による有効作用磁束密度の分布を求めた。
なお、ネオジム系等のような希土類磁石やフェライト磁石のように減磁曲線が直線で近似できるような磁石材を使用した場合は、シミュレーション結果をかなり実測値に近くできるため、試作及び実験用磁石板の材料として希土類磁石やフェライト磁石を使用した。
実施の形態1の磁石板は、磁化のパターンを再現し易くするために多数の小磁石を組み合わせて作成した。このような磁石板を対象とした磁束密度の測定では測定誤差が生じると共に、部分領域としての小磁石がある程度の大きさを有することや小磁石間に間隔が存在すること等が磁束密度の分布にばらつきを生じさせる原因となった。従って、実験用とした磁石板における磁束のばらつきが少ない部分の磁束密度や、磁束の方向が反転する位置等の特徴ある部分のデータを元に、シミュレーションを繰り返して値を検証し、プログラムにおける有限要素法の要素の分割数や座標、係数等を調整した。
シミュレーションはリング状の領域、即ち同一半径となる位置の小磁石15の集合別に分けて行なった。リング状の領域別では磁化角度データを1度単位で変化させて計算を行い、有効作用磁束比が最大となる場合の磁化角度をリング状領域を構成する部分領域の磁化角度θ1とした。
なお、一般的なθ1のパターンをシミュレーションで調べる場合は、小磁石15のサイズをそのまま部分領域として計算すると、部分領域が大きく正確な特徴の把握が難しいため、さらに小さく分割した部分領域を仮定した状態でシミュレーションを行った。
これらの施行計算により、磁化ベクトル15aに関する次のような特徴が分かった。
音響振動板13の導電体14に対する有効作用磁束の寄与を最も大きくするための磁化ベクトル15aの変化のパターンは、磁化ベクトル15aの方向が振動面に対して垂直となる場合、即ち磁化角度が90度となる場合を除き、磁化ベクトル15aの音響振動板13の振動面と平行な成分が常に磁石板11、12の半径方向となった。そして、磁石板11、12の中心軸側から外周縁側への半径方向の位置の変化に対して、磁化ベクトル15aは音響振動板13の振動面とのなす角度θ1が常に減少するような、即ち磁化ベクトル15aが一方向に回転するような分布となることが分かった。
さらに、磁化ベクトル15aの分布は、磁石板11、12の全体が一体となってまとまったN極とS極を形成するような分布ではなく、各部分領域となる小磁石15の磁化ベクトル15aが互いに異なる独立した磁極を形成するような分布となった。
以下、音響振動板13の導電体14に対する有効作用磁束の寄与を最も大きくするための、磁化ベクトル15aと音響振動板13の振動面とのなす角度θ1の分布状態を一般的に説明する。
角度θ1のパターンは、磁石板11、12と音響振動板13との間隔Cや音響振動板13に形成されている導電体14の設置範囲により変化するため、ここでは音響振動板13における導電体14の内径と外径とで囲まれる範囲に対応する磁石板11、12の範囲に限定して説明する。
角度θ1は、前記範囲では中心軸側が最も大きくなりその角度の各設定条件による最大値は+90度となった。角度θ1は半径方向の外周側への位置の変化に対して常に減少し、一般的には前記範囲における外径の80%〜90%となる位置で0度となる。さらに外周側への位置の変化に対して角度θ1は負の値で減少し続け、前記範囲の外周縁側で最も小さな値となりその角度の各設定条件による最小値は約−70度となった。
このような磁化角度の分布を持つ磁石板11、12の着磁方法として、円盤状磁石材の表側となる面にスパイラル状に巻かれた励磁用コイルを平行配置し、直流との励磁電流を流すことにより磁石材に対し同様な磁化角度の分布を形成することができる。そして励磁用コイルの内径や外径を変化させることにより、磁石材に分布する部分領域における磁化の角度をそれぞれ調整することができる。
さらに、円盤状磁石材の裏側となる面にも表側と同じ励磁用コイルを平行配置し、表側コイルの磁極と対向するように励磁電流を流すことにより、磁石材に対して全部分領域の磁化方向を、ほぼ半径方向とした磁化分布を形成することができるが、裏側のコイルに対して励磁電流を小さくしたり、内径や外径を変化させたりすることにより、表側の励磁電流によって形成された磁化の角度を調整することもできる。
従って、このような方法を用いることで、円盤状に形成された磁石材全体が所定の磁化角度の分布状態となるように直接着磁させることも可能である。しかし、この方法は強力な磁化を行うためには非常に大きな励磁電流を必要とするので、本実施の形態では予め個別に着磁された小磁石15を使用し、接合部16aを介して組み合わせて構成する方法を採用した。
ここでは、磁石板11、12として、ネオジム系などのような希土類磁石やフェライト磁石のように減磁曲線が直線で近似できるような磁石を用い、その全体の厚さBを7mm、半径Rを48mmとし、磁石板11、12の間隔Hを6mmとした。
また、磁石板11、12は、縦、横、高さがそれぞれ5.5mm×2mm×7mmサイズの小磁石15をそれぞれ486個同心円状に7列として配置し、全体を構成した。この1列の幅を5.5mmとし、列と列の間隔となる接合部16aの幅を0.5mmとして配置したため、最も内側の列の内径が13mmで最も外側の列の外径が96mmとなった。
音響振動板13の導電体14の内径を26mm、外径を86mmとし、この内径と外径で挟まれたリング状部分に寄与する有効作用磁束を計算した。この値が最も大きくなるための磁化ベクトルと音響振動板13の振動面とのなす角度(第4図におけるθ1)を3mm間隔で半径別に求めると、半径が3mmで98度、6mmで97度、9mmで92度、12mmで78度、15mmで62度、18mmで51度、21mmで44度、24mmで38度、27mmで31度、30mmで23度、33mmで14度、36mmで0度、39mmで−20度、42mmで−49度、45mmで−84度、48mmで−99度となった。
また、本実施の形態における部分領域の磁化方向、即ち磁化ベクトル15aの角度θ1を小磁石15の各列別に求めると、内側の列より順にそれぞれ1列目88度、2列目62度、3列目44度、4列目31度、5列目12度、6列目−23度、7列目−78度となった。従って、本実施の形態でも、ほぼそのような磁化角度となるように設定した。
各列の幅は小さくして磁石板11、12の部分領域を細分化する程、音響振動板13に形成される有効作用磁束密度の分布のばらつきを少なくすることができる。従って、磁化の方向は中心軸からの距離に対して連続して切れ目なく最適化させたものが理想的であるが、実施の形態1では製作の容易性を考慮して7列としている。
このような構成にした結果、磁石板11、12における全ての小磁石15の全体積(P)と、小磁石15間の間隔Aとなる部分の全体積(Q)との体積比(P:Q)は3:1となった。また、小磁石15の材料として異方性のSrフェライト磁石を使用した場合、音響振動板13に形成されている導電体14における有効作用磁束密度の最大値は1800ガウスでありその設置範囲における平均値は1350ガウスであった。
以上のように構成された実施の形態1の電気音響変換器10について、以下その特徴について説明する。
第5(a)図は音響振動板の中心側から外周部近傍までの各位置における有効作用磁束密度を磁石板の設定条件毎に比較したグラフである。
コンピュータを使用したシミュレーションを行うことで、このようなデータを設定することができる。
シミュレーションでは、多数の小磁石を組み合わせて作成した実験用磁石板をモデルとして、磁石板の各部分領域における磁化の方向と強さのデータをプログラムに組み込み、磁石板の各位置より音響振動板の導電体に寄与する磁界の強さをビオ・サバールの法則を用いて計算し、有限要素法によって解析するようにしている。
実際に組み上げられた磁石板の磁束密度を測定する場合、磁束密度計を使用した測定において誤差が生じるだけでなく、磁石板の厚さ方向に対する磁界の影響を受けるため、測定データも厚さ方向に合成された値となって基本的な分布の特徴を把握することが難しくなる。
従って、実験用とした磁石板における磁束のばらつきが少ない部分の磁束密度や、磁束の方向が反転する位置等の特徴ある部分のデータを元に、シミュレーションを繰り返して値を検証し、プログラムにおける有限要素法の要素の分割数や座標、係数等を調整した。
このようにして、誤差が少なくなるように調整したシミュレーションプログラムにおいて、最小単位となる小磁石部をさらに小さな部分領域となるように分割したデータとし、また厚さの影響を受けない程度まで、即ち厚さを変化させてもこれによって有効作用磁束比(U/V)が変化しない程度まで磁石板の厚さデータを薄く変化させ、再度シミュレーションを繰り返し行うことにより第5(a)図における有効作用磁束密度の分布データを求めた。
第5(a)図において、aは実施の形態1のような電気音響変換器において、その音響振動板の導電体に対してそれぞれ有効作用磁束の寄与分が最も大きくなるような所定の角度で磁化された対向する2枚のネオジム磁石板を仮定し、磁石板から音響振動板までの距離Cと磁石板の半径Rとの比(C/R)を0.1とした場合における、音響振動板の半径方向に対する有効作用磁束密度の分布を示している。なお、2枚の磁石板は、全体が磁石部のみからなる音通過孔が存在しないもので、有効作用磁束比が厚さの影響を受けないように厚さを半径Rの1%とした薄い円板状のものを仮定している。また、第5(a)図のグラフの横軸に記述されている磁石板の外周部位置のサイズは、上記条件を満たしていればどのような値であっても構わない。
例えば、半径Rが50mmのネオジム磁石板では、その厚さを0.5mmとして、磁石板から5mm離した音響振動板の各位置における有効作用磁束密度をグラフから知ることができる。さらに、磁石板の厚さをその10倍(5mm)とした場合では、分布の形状は多少変化するが有効作用磁束密度はグラフ値を約8倍程度とすることで求めることができる。
また、cは音響振動板の振動面に対して垂直方向に磁化した円板状の磁石板を用いた場合において、磁石板の磁化方向以外の各条件をaの場合と同一にした有効作用磁束密度の分布を示している。
ここで、音響振動板の振動面に対して垂直方向に磁化された薄い帯状磁石を仮定した場合について、この帯状の幅を円板状の直径と見なした座標系で求めても、cとほぼ同様な分布が得られた。
従来例のように音響振動板に対して垂直方向に磁化した磁石板を使用している場合は、複数の磁石を組み合わせたものが多いが、cではその構成要素となる磁石について分布の状態を把握することができる。
なお、比(C/R)については、距離Cと磁石板の半径Rに関する後述の特徴等を元に、有効作用磁束比、有効作用磁束の分布状態、音響振動板の半径や振幅等を考慮して、実質的な有効作用磁束比が大きくなる比(C/R)の一例として0.1を設定し、第5図における各磁石板の有効作用磁束密度の分布を比較する条件としている。
第5(a)図のような有効作用磁束密度の分布を電気音響変換器で利用する場合、振動に寄与する有効作用磁束の領域はリング状となる。aの有効作用磁束密度分布において有効作用磁束をそのリング状領域で積算した値(U)と、磁石部の全体積(V)との比、即ちU/Vで示される有効作用磁束比を用いた磁束の利用効率は、cの分布の場合に比べると2〜2.5倍程度の値が得られた。
本実施の形態と従来例とは磁石板の構成方法が異なるため単純に比較することはできないが、このように、それぞれの部分領域において音響振動板の振動面に対して所定の角度で磁化された磁石板を用いた場合では、振動面に対して垂直方向に磁化された円板状の磁石板や帯状磁石を用いた場合に比べ、第5(a)図におけるaの分布で示されるように高い有効作用磁束密度をまとまった領域で広範囲にわたり確保できることが分かった。
その他、さまざまな設定条件でシミュレーションを行うことにより、磁石板から音響振動板までの距離C、磁石板の半径R、有効作用磁束比、及び有効作用磁束の分布状態等について次のような互いの関係が判明した。
第5(a)図のような音響振動板における有効作用磁束密度の分布の形状は、距離Cや半径Rの値の大小に関係なく比(C/R)によって決まることが分かった。従って、比(C/R)が共通であれば、距離C及び半径Rの値が変化しても有効作用磁束密度の分布の形状は同じとなった。
また、音響振動板における有効作用磁束比(磁石板の単位体積当たりの有効作用磁束)は、音響振動板の導電体における有効作用磁束をその導電体の領域で積算した値(U)と、磁石板の全体積(V)との比(U/V)で表される。
この有効作用磁束比(U/V)は、比(C/R)を一定とした場合には距離C及び半径Rの値にほぼ半比例することが分かった。例えば、距離C及び半径Rを共に1/2倍にした場合、音響振動板における有効作用磁束密度の分布の形状は変化しないが有効作用磁束比は約2倍となった。
なお、本発明のような動電型の電気音響変換器ではエネルギーの変換能率は磁束密度の2乗に比例するため、音響振動板の動電体における有効作用磁束密度や有効作用磁束比についてもほぼその2乗に比例して変換能率に影響する。例えば、上記のように距離C及び半径Rを共に1/2倍にして有効作用磁束比を2倍とした場合、変換能率はその2乗である4倍程度まで高くなる。
次に、音響振動板までの距離Cは短いほど有効作用磁束比(U/V)が増加するが、距離Cが定まった状態では、厚さの影響を受けない薄い円板状の磁石板において比(C/R)を約0.08〜0.4の範囲となるように磁石板の半径Rを設定することにより、有効作用磁束密度と共に有効作用磁束比をほぼ最大として磁束の利用効率を向上させることができた。
ここで、厚さの影響を受けない薄い磁石板とは、磁石板の厚さtの有効作用磁束比Zを算出して厚さtをゼロに収束させ有孔作用磁束比の極限値Z0を基準として、その有効作用磁束比Zとの差(|Z−Z0|)がZ0の3%未満となるような厚さtの磁石板である。例えば、その厚さtが半径Rの約1%以下となる磁石板が相当する。そのような磁石板により下記のような有効作用磁束比を比較することによって求める比(C/R)の誤差を0.5%未満とすることができる。
有効作用磁束比は磁石板の部分領域における磁化角度の分布によっても異なるが、比(C/R)が0.08よりも小さくなる程、又は0.4よりも大きくなる程低下する。従って、良好な有効作用磁束比を維持するためには、比(C/R)をこのような範囲0.08〜0.4内で設定することが好ましい。
本実施の形態1では距離Cが3mmで半径Rが48mmであるため比(C/R)は0.0625となる。しかし、磁石板11、12の厚さを7mmとして前記厚さの影響を受けない厚さ(半径48mmの約1%である0.5mm)より厚くしているので、比(C/R)の適正範囲は前述の場合とは異なる。
磁石板の厚さが厚い場合は、厚さの影響を受けなくなるまで薄くした場合のシミュレーション結果と比較して、磁石板の厚さが薄い場合に相当する比(C/R)の換算値を求める。
即ち、このシミュレーションにおいては、厚さ0.5mmの磁石板の半径Rを48mmに一定とした状態で距離Cを変化させ、有効作用磁束比が厚さ7mmの磁石板11、12を使用した実施の形態1の有効作用磁束比に最も近くなるような比(C/R)を求めて換算値とする。こうして磁石板11、12の厚みが7mmである実施の形態1においては、前述の厚さの影響を受けない場合の比(C/R)に相当する換算値として約0.12が求められた。
第6図は音響振動板13の中心から外周部近傍までの各位置において、音響振動板13の設置位置の有効作用磁束密度を基準とし、音響振動板13の振動面と垂直な方向、即ち振動方向に対する有効作用磁束密度の変化が1%以内となる範囲を斜線部Sで示している。
なお、磁束密度を実際に測定して上記密度変化を求める場合、磁束密度計を使用した有効作用磁束密度の測定では、磁気センサの方向を音響振動板13の振動面に対して平行とした状態で半径方向に向ける必要がある。従って、磁気センサの方向が正確でないと有効作用磁束密度の測定値に誤差が生じる。例えば磁気センサの方向が音響振動板13の振動面と平行な方向から1度ズレることにより平均で1%以上の誤差が生じ、半径方向から8度ズレることにより約1%の誤差が生じる。
従って、本実施の形態をモデルとしてシミュレーションを行うことにより、磁束密度計による実測を不要にして前記誤差をなくした。また、普通過孔16となる小磁石15間の各間隔Aの大きさや分布状態、磁石板11、12の間隔H等を変化させて組み合わせを設定し、それぞれの設定の組み合わせ毎にシミュレーションを行うことによって、均一で適正な有効作用磁束密度の分布を与える条件を求めた。
このような方法を用いて調べることにより、第6図のような音響振動板13の設置位置を基準とした振動方向に対する有効作用磁束密度の変化が少ない領域(斜線部S)について、正確な分布状況の把握が可能となり次のようなことが分かった。なお、斜線部Sの形状は音通過孔16の影響を受けて半径方向の設定位置により一定ではないため、各位置で最も条件が悪くなる(斜線部Sの範囲が狭くなる)場合の値を合成するようにシミュレーションプログラムを作成して斜線部Sを求めた。
第6図において、Yは斜線部Sの上下端間の間隔が、ほぼ最大となる部分の高さとしている。
有効作用磁束密度の変化が少ない領域で導電体14を駆動させるためには、導電体14の外径は高さがYである部分の範囲を考慮して決定する必要がある。従って、磁石板11、12の外周縁側から高さがYである領域の最も外周縁側までの距離Xは、導電体14の外径を決定する基準となる。シミュレーションの結果、距離Xは磁石板11、12の間隔Hにほぼ比例することが分かった。即ち、距離Xは磁石板11、12の間隔Hを広くするとほぼ比例するように長くなり、斜線部Sの高さがYである領域の範囲は狭くなった。
次に、音通過孔16や接合部16aとして利用している小磁石15間の間隔Aについては、その大きさや配置条件によって磁石板11、12により生じる磁界の分布が変化するため、有効作用磁束密度の均一性に影響を及ぼすことが分かった。
そして、間隔Aの大きさと分布の状況が高さYを決める大きな要因となっていた。即ち、間隔Aは小さく分割する程、また間隔Aの分布については同心円状の領域で均一に分布させる程、有効作用磁束密度の変化が少ない領域(斜線部S)の高さYは高くなることが分かった。
特に、有効作用磁束密度の変化に対する影響がなくなる程度まで音通過孔16を小さく均一にすることができれば、高さYを間隔Hとほぼ等しくすることも可能であり、これによって、斜線部Sの高さYを最大限にして磁石板11、12間のほぼ全体を有効作用磁束密度の変化が少ない領域とすることができる。
そこで、本実施の形態では接合部16aの幅を狭くし、音通過孔16のそれぞれが磁石板11、12上に同心円配列となるように均一に多数分布させた。そして、このような対策により有効作用磁束密度の変化を少なくすることに成功した。
本実施の形態では、小磁石15の同じ列における隣接する小磁石15間の各間隔Aの殆どを0.8mm以下として、ここに音通過孔16を形成したが斜線部Sの高さYと間隔Hとの比(Y/H)については約1/3であった。即ち、磁石板11、12の間隔Hは6mm、高さYはその約1/3の2mmであって、音響振動板13の設置位置からおよそ−1mm〜+1mmの範囲内において有効作用磁束密度の変化が1%以内の領域となる。このような領域において音響振動板13を非常に低歪の状態で振動させることができる。
実施の形態1の電気音響変換器10は以上のように構成されているので、以下の作用を有する。
(a)磁石板11、12の部分領域における磁化の方向を、音響振動板13の振動面に対してそれぞれ音響振動板13の導電体14に対する有効作用磁束の寄与分が最も大きくなるような所定の角度で設定するため、これにより音響振動板13における磁束の半径方向で振動面と平行な成分(有効作用磁束)を有効に発生させることができる。
(b)部分領域における磁化の方向を音響振動板13の振動面に対してそれぞれ所定の角度にしているため、高い有効作用磁束密度をまとまった領域で広範囲に確保することができる。これにより、薄いリング状に形成された音響振動板13において導電体14の領域を連続して広範囲に確保することが可能となるので、音響振動板13の全面に電磁力による駆動力を発生させることができ、歪が少なく過渡特性に優れた全面駆動型平面スピーカ等の電気音響変換器10が実現できる。
(c)磁石板11、12の各部分領域における磁化の方向を音響振動板13の振動面に対してそれぞれ所定の角度にしているため、必要とする有効作用磁束密度の領域を広範囲に確保しながら、音響振動板13の振動方向に対する各位置での有効作用磁束密度は変化の少ない分布が得られる。従って、音響振動板13の振動方向に対する有効作用磁束密度の高低の差により生じる歪を抑制して、スピーカやヘッドホン等において発生する音の音質や、また、マイクロホン等において音より変換される電気信号を良好に維持できる。
(d)有効作用磁束密度の均一分布の範囲を振動方向に広範囲に構成できるので、音響振動板13の振幅が大きくなる場合や音響振動板13の設置位置に多少誤差が生じた場合でも、良好な音質を維持させることができる。
(e)小磁石15のサイズや形状等を揃えて着磁させることができるので、円板状に形成された磁石材に直接着磁する場合に比べ、製造上の制約が少なく生産性に優れる。
(f)各部分領域の列別に同一の形状、磁化角度、磁化強度を有するものを用い、同心円状に配置するだけで磁石板11、12を作成することができるので、規格化された安価な材料を用いて強力な磁石板11、12を作成できる。
(g)小磁石15間に音波を通過させるための音通過孔16が形成されているので、スピーカやヘッドホン等では音響振動板13の全域において発生した音波を互いに干渉させることなく放出できる。また、マイクロホン等では外部より受信する音の干渉を少なくして歪の少ない電気信号を得ることができる。これにより音質に優れたスピーカやマイクロホン等の電気音響変換器10を提供できる。
(h)小磁石15間の隙間を音通過孔16として利用しているので、小磁石15を集合させるだけで音通過孔16が形成され、穿孔作業等を必要とすることなく電気音響変換器10を簡単に構成できる。
(i)全体の構造を音響振動板13の振動面に対して対称としているため、音響振動板13の振動に対し音響的に優れた構造とすることができる。
(実施の形態2)
第7(a)図は実施の形態2の電気音響変換器の要部断面図であり、第7(b)図はその磁石板の平面図である。
第7(a)図、第7(b)図において、20は実施の形態2の電気音響変換器、21、22は全体が円盤状に形成され互いに対向する面が平行に配置された一対の磁石板、23は磁石板21、22の中間位置に配置されスパイラル状に形成された導電体を有する音響振動板、25a〜25jはそれぞれ単独の形状がリング状に形成され、半径方向にほぼ同一の幅で同心円状に配置され、厚さを同心円状にそれぞれ異ならせて形成された磁石板21、22を構成する10個の小磁石、26は隣接する小磁石25a〜25jの側面間に形成された楕円状の音通過孔、27は導電体の端子部、28aは磁石板21、22と音響振動板23の中心部側を保持する円柱状の支持部、28bは外周部を保持する円筒状の支持部、29は音響振動板23と支持部28a、28bとを弾性的に連結するサスペンション機能を有したエッジ部である。
音響振動板23は、絶縁された銅クラッド・アルミニウム線からなる導電体をスパイラル状に巻き、エポキシ樹脂で接合して全体が薄肉リング状に形成されている。外周縁側及び内周縁側には弾性変形可能なエッジ部29が設けられている。
磁石板21、22を構成しているそれぞれ大きさの異なるリング状の小磁石25a〜25jは、音響振動板23の導電体に対して有効作用磁束の寄与分が最も大きくなるような所定の角度でそれぞれ磁化されている。また、その磁化の強さは最大化させて全て一定としている。
磁石板21、22の全体に対して直接このような所定の角度で磁化することは難しいため、本実施の形態では部分領域となるリング状の小磁石25a〜25jに分け、それぞれを所定の角度で磁化した後で組み合わせることによって磁石板21、22を構成している。
各小磁石25a〜25jにおいて、それぞれの小磁石に働く磁力の方向や大きさは一定ではないが、全体として組合わされた磁石板21、22間には合成された磁力として反発力が働く。
第7(a)図で示されるように、それぞれの隣接する小磁石25a〜25j間の側面には、傾斜部を形成して小磁石25a〜25jで発生した磁力が支持部28a、28bに伝わる過程で働く力を支えている。これによって小磁石25a〜25jのそれぞれが抜け落ちないようにすると共に、互いを密着させる構造としている。
また、各小磁石25a〜25jは互いを合成樹脂等の接着剤を介して接合するが、このような構造とすることにより強力な磁力を発生する小磁石25a〜25jの接合においても、接着力に依存しなくて済むと共に接着力不足による小磁石25a〜25j間のズレの発生を防ぐことができる。
本実施の形態2では、リング状に形成される小磁石を10個として磁石板21、22を構成したが、磁石板21、22の半径や厚さ、磁化角度の細分化の必要性に応じて、3〜20個の小磁石で磁石板21、22の全体を構成してもよい。
なお、音通過孔26はリング状の小磁石25a〜25jの隣接側面に予め窪みを設けておき、磁石板21、22の組み立て後に、この窪みによって音通過孔26が形成されるようにしているが、小磁石25a〜25jの厚さ方向に孔を穿設して形成してもよい。
また、磁石板21、22の厚さについては同心円状にそれぞれ異ならせて形成しているが、磁石板21、22に対して厚さや音通過孔26の配置を同心円状に変化させて調整することにより、磁界の寄与を所定の値にして音響振動板23を駆動させるための電磁力の分布状態、即ち、音響振動板23の導電体に対する有効作用磁束密度の分布を制御することができる。
本実施の形態では、有効作用磁束密度の変化について音響振動板23の振動方向に対してだけでなく、さらに半径方向に対しても考慮し、以下のように磁石板21、22の厚さの分布等を調整して制御することによって音響振動板23を均一振動させるようにした。
音響振動板23が一様な同相同振幅で振動(均一振動)しない場合は、音響振動板23の各部分が別々に振動する、即ち分割振動を起こす原因となる。
音響振動板23を均一振動させるためには、音響振動板23の導電体に対する有効作用磁束密度の分布だけでなく、音響振動板23を弾性的に支持するエッジ部29のスチフネスや音通過孔の分布、深さ、形状等を調整することにより制御する必要がある。音響振動板23の導電体において半径方向に有効作用磁束密度を一様に均一化させることが必ずしも音響振動板23を均一振動させる最良の方法とは限らないが、少なくとも効果的で一般的なひとつの方法である。従って、本実施の形態では有効作用磁束密度の分布を音響振動板23の導電体において半径方向に均一化させるために以下のような制御を行った。
前述の第5(a)図において、aの有効作用磁束密度の分布で示されるように、音響振動板の導電体に対する有効作用磁束の寄与分が最も大きくなるように所定の角度で磁化された磁石板を用いた場合、音響振動板の中心部の有効作用磁束密度が低くなる。
磁石板の各部分領域の磁化方向を漸次異ならせて設定する場合でも、有効作用磁束密度を音響振動板の半径方向にほぼ一様な分布にできる磁化角度のパターンが存在するが、その場合の有効作用磁束比は低下し磁束の利用効率が悪くなる。
このため、実施の形態2の電気音響変換器20では磁石板21、22に対し、音響振動板23の導電体において中心部の有効作用磁束の不足を補うように中心部の小磁石の厚さを増加させ、有効作用磁束比を維持した補正を行っている。ここで、磁石板21、22の中心部に対し音通過孔26の配置密度を低くしたり、孔径等を小さくしたりすることによっても不足する有効作用磁束を補うことができる。
磁石板21、22の厚さによって有効作用磁束密度の補正を行う場合、音響振動板23の導電体において有効作用磁束密度が不足する部分に対しては有効作用磁束密度を増やすように厚さを増加させ、過多な部分に対しては有効作用磁束密度を減らすように厚さを薄くして行う。
磁石板21、22の厚さを同心円状の領域で部分的に変えた場合、音響振動板23上では厚さを変えた位置と同一半径となる位置、又は同一半径に近い部分を中心にして有効作用磁束密度も変化する。
従って、実際の作業では有効作用磁束密度を補正する位置と同一半径となる部分、又は同一半径に近い部分に対して同心円状の領域で磁石板21、22の厚さを調整し、補正後の有効作用磁束密度を測定して確認する。又は、同様な内容の作業をシミュレーションによって行う。このような方法でトライアル・アンド・エラーを繰り返すことによって音響振動板23の導電体に対する有効作用磁束密度の分布を調整することができる。
本実施の形態のように音響振動板23の導電体に対する有効作用磁束の寄与分が最も大きくなるような所定の角度で磁化された磁石板21、22を用いた場合、磁石板21、22が厚さによる補正を行っていない平らな状態では、音響振動板23の半径方向に対する有効作用磁束密度の分布は、第5(a)図におけるaで示されるようになる。
この有効作用磁束密度の分布を音響振動板23の半径方向に均一にするための磁石板21、22の厚さのパターンについては一通りではないが、一般的には第7(a)図で示される本実施の形態のように、外周縁側が最も薄く中心軸側にかけて漸次厚くなるような厚さの分布となった。
音通過孔26の分布密度を磁石板の部位毎に調整することによって有効作用磁束密度の補正を行う場合、音響振動板23の導電体において有効作用磁束密度が過多な部分に対しては有効作用磁束密度を減らすように分布密度を高くし、不足する部分に対しては有効作用磁束密度を補うように分布密度を低くして行う。
実際の作業では、有効作用磁束密度を補正する部分と同一半径となる部分、又は同一半径に近い部分に対して音通過孔26の分布密度を調整し、補正後の有効作用磁束密度を測定して確認する。又は、同様な内容の作業をシミュレーションによって行う。このような方法でトライアル・アンド・エラーを繰り返すことによって、音響振動板23の導電体に対する有効作用磁束密度の分布を調整することができる。
以上のような補正は、磁石板21、22の材質及びその磁化強度を部分的に変化させて行うもの、音通過孔26の大きさや形状を変化させて行うもの等を含め、それぞれを組み合わせて用いることにより、より最適な制御を行うことが可能になる。
磁石板21、22に対しては外部側面にホーンを取り付けたり、音通過孔26の形状や大きさを異ならせて配置することにより高音域の特性を改善するためのイコライザ機能を持たせること等ができるが、このような場合には付加機能によって変化する音響インピーダンスを考慮する必要がある。
さらに、音響振動板23の振幅が部分的に大きくなる場合には、対向する磁石板21、22の面の一部を音響振動板23の振幅に合わせて削ることにより、音響振動板23の振幅が大きくなる部分の磁石板21、22への接触を防ぐことができる。
このように音響インピーダンスを考慮する場合や、磁石板21、22の形状を変える場合でも、磁石板21、22における厚さや材質、磁化強度、及び音通過孔26の分布密度を同心円状の領域毎に変化させて調整する方法を組み合わせて用いれば、所望の良好な歪特性を維持させながら電気音響変換器20の音響設計を行うことが可能になる。
なお、実施の形態2では、有効作用磁束比が最も大きくなるような所定の角度で磁化された磁石板21、22を用い、音響振動板23の導電体において有効作用磁束密度が低くなる中心部については磁石板21、22の中心部の厚さを増加させることにより補正を行ったが、この磁化の角度を音響振動板23の導電体に対する有効作用磁束密度を半径方向にほぼ一様な分布とするパターンに近付けることにより、有効作用磁束比、即ち磁束の利用効率を多少犠牲にして磁石板21、22の厚さによる補正の量を少なくすることができる。
このような有効作用磁束比と補正の度合いとの相互の関係を考慮した有用な磁化角度のパターンは数多く存在するが、何れの場合でも音響振動板の振動面とでなす磁化の角度は、磁石板の中心軸からの距離に対して漸次異なった分布となった。
実施の形態2では、磁石板21、22の厚さの分布を調整して補正を行ったが、本実施の形態2について前述の第6図の場合と同じように音響振動板23の振動方向に対する有効作用磁束密度の変化について調べたところ、磁石板21、22に対する厚さの補正を行っても前記密度変化への影響は殆どなく、有効作用磁束密度の変化が少ない領域(斜線部S)を広範囲に維持できることが分かった。
実施の形態2では、このようにして磁石板21、22に対する厚さの補正を行うことにより、音響振動板23の導電体において、有効作用磁束密度の分布をその振動方向だけでなく半径方向に対してもほぼ一様に均一化することができた。これにより、音響振動板23をさらに低歪の状態で振動させることができるようになった。
実施の形態2の電気音響変換器20は以上のように構成されているので、以下の作用を有する。
(a)磁石板21、22の厚さ、音通過孔26の分布、あるいは用いる磁石材の種類、及びその磁化強度等を同心円状に変化させて、音響振動板23の導電体における有効作用磁束密度の分布をその半径方向に対して均一振動するパターンに設定することにより、所望の音響特性を有する電気音響変換器20を提供できる。
(b)音通過孔26の分布、形状や大きさ、あるいは深さを変化させて音響インピーダンスを調整することにより、音響特性を改善することができ、品質を著しく向上できる。
(c)小磁石25a〜25jがリング状に形成され、これらの小磁石25a〜25jを集合させて磁石板21、22の全体を構成しているため、小磁石25a〜25jに分けて個別に着磁することを可能とし、比較的少ない数の小磁石25a〜25jで全体を組み上げることができるため、生産性に優れる。
(d)少ない数の小磁石25a〜25jで全体を組み上げることができるため、接合する部分が少なくなり、強度的に優れた信頼性の高い磁石板21、22の作成が可能になる。
(e)小磁石25a〜25jの隣接する面に傾斜部を形成し、小磁石25a〜25jで発生する磁力が支持部28a、28bに伝わる過程で互いを密着させる構造としているため、強力な接着手段を用いることなく全体を組み上げることができ、生産を容易にできる。
(f)小磁石25a〜25jは形成された隣接する面の傾斜部により、磁石板21、22の厚さ方向に対するズレが発生し難い構造となるため、強度的に優れた信頼性の高い磁石板21、22の作成が可能になり、また耐久性にも優れる。
(実施の形態3)
第8(a)図は実施の形態3の電気音響変換器の要部断面図であり、第8(b)図はその磁石板における部分領域の磁化パターンを示す模式図である。
第8(a)図において、30は実施の形態3の電気音響変換器、31、32は全体を円盤状として厚さを同心円状にそれぞれ異ならせて形成され、互いに対向する面が平行に配置された一対の磁石板、33は磁石板31、32の中間位置に配置されスパイラル状に形成された導電体を有する薄肉円板状の音響振動板、36は磁石板31、32に形成された音通過孔、37は導電体の端子部、38は磁石板31、32の外周部を保持する円筒状の支持部、39aは振動する音響振動板33を弾性的に支持するためのウレタンフォーム材又はウレタンなどの軟質合成樹脂を材料とした発泡樹脂等からなる円板状の保持板である。
薄肉円板状の音響振動板33には、その表面に蒸着やメッキ、エッチング等の手段により、アルミニウムや銅等の図示しない導電体がスパイラル状に形成されている。
保持板39aは音響振動板33の全体を均一な状態で支持しているため、音響振動板33の自重によるたわみを抑制して良好な音質を維持することができる。また、保持板39aの採用により実施の形態1のようなエッジ部が不要となるため、有効面積を広く確保することができる。
実施の形態3の電気音響変換器30は、磁石板31、32の各部分領域における磁化の強さを最大化させて全て一定としている。また、各部分領域の磁化ベクトル35aは音響振動板33の振動面と平行な成分を磁石板31、32の半径方向とし、第8(b)図に示すように音響振動板33の振動面に対してなす角度θ2を全て一定の20度としている。
なお、磁化ベクトル35aの方向と磁石板31、32の中心軸が交わる面側を磁石板31、32の表側としている。
表側の有効作用磁束密度は裏側よりも高くなるため、本実施の形態では磁石板31、32の表側を音響振動板33に向けて使用している。
磁石板31、32としては、その全体の形状が同じであれば実施の形態1や実施の形態2のように矩形状やリング状の小磁石を集合させたもの、リング状又は円盤状の磁石板を半径となる線で分割して形成される扇形状の小磁石を組み合わせたもの、さらに単独で円盤状の形状をしたものに音通過孔を穿設したものであっても構わない。
本実施の形態のように角度θ2を全て一定の20度とした磁石板では、磁石板の磁化方向以外の各条件を第5(a)図におけるaの場合と同一にした、即ち厚さを半径Rの1%とした薄い円板状のネオジム磁石板を仮定し、2枚の磁石板から音響振動板までの距離Cと磁石板の半径Rとの比(C/R)を0.1にした場合、音響振動板の半径方向に対する有効作用磁束密度の分布は第5(a)図におけるbで示されるようになった。
音響振動板の振動に寄与している有効作用磁束の領域では、bの分布はaの分布に比べて有効作用磁束密度の高低差が全体的に少なくなるという特徴を示した。特に、bの分布では音響振動板の中心部と外周部との間で凹状に有効作用磁束密度が低くなっているが、比(C/R)を大きくすることにより半径中間部の低い部分を少なくしてさらに高低差を少なくすることもできた。
また、第5(a)図のa、bのような分布を電気音響変換器で利用する場合、bの有効作用磁束比はaの分布に比べその82%程度まで低下し磁束の利用効率が悪くなった。なお、エネルギーの変換能率は有効作用磁束比のほぼ2乗に比例するため、bの分布の変換能率(η2)とaの分布の変換能率(η1)との比(η2/η1)は67%(=82%×82%)程度となる。
磁石板31、32の磁化ベクトル35aは、音響振動板33の振動面に対してなす角度θ2をゼロでない一定の20度としており、これは以下のような理由による。即ち、シミュレーションでは上記条件による比(C/R)を0.1にした場合、有効作用磁束比は一定とする角度θ2を30度前後としたときに最大となったが、磁化ベクトル35aの角度θ2は大きくする程、有効作用磁束密度分布の高低差が大きくなり、さらに分布の範囲が外周側に広がることが分かった。
従って、実施の形態3では有効作用磁束比と有効作用磁束密度分布における高低差、さらに有効作用磁束の分布範囲を考慮してゼロでない一定の角度θ2を前記30度より小さい20度とした。
また、電気音響変換器30では磁石板31、32に対し、音響振動板33の導電体に不足する半径中間部の有効作用磁束を補うようにその部分の厚さを増加させている。ここで、磁石板31、32の半径中間部に対し音通過孔36の分布密度を低くしたり、磁石材の材質等を異ならせて強力に磁化したものを配置したりすることによっても不足する有効作用磁束を補うことができる。
例えば、厚さが厚くなる部分には強力な磁化が可能な磁石材を使用することによって薄く調整することもできる。
また、この強い磁石と弱い磁石の組み合わせや、その割合を漸次変化させることにより、磁石板により発生させる磁界の微妙な調整を行えるようになる。
これにより、強い磁石と弱い磁石を、その価格と必要とされる磁界の強さや保磁力の大きさに応じて各部分毎に異ならせて配置することもできるので、最良のコストパフォーマンスを得ることができる。
さらに、磁石板に音通過孔を形成させる場合には、強い磁石と弱い磁石を組み合わせ、かつ部分的に磁石板の厚さを調整することにより音通過孔の深さを調整して音響特性を変化させることもできる。
実施の形態3では、磁石板31、32に対し厚さによる補正を行い、有効作用磁束密度の分布を音響振動板33の導電体において半径方向に均一化させた。
厚さによる補正を行っていない平らな磁石板を用い、角度θ2を全て一定の20度で磁化して比(C/R)を0.1にした場合、音響振動板の半径方向に対する有効作用磁束密度の分布は第5(a)図におけるbで示されるようになる。
この有効作用磁束密度の分布を音響振動板33の半径方向に均一にするための磁石板31、32の厚さのパターンについては一通りではないが、一般的には第8(a)図で示される本実施の形態のように、中心軸側と外周縁側との中間部が最も厚く中心軸側と外周縁側にかけて漸次薄くなるような厚さの分布となった。
このように磁石板31、32の厚さを調整して有効作用磁束密度の補正を行うことにより、電気音響変換器30における音響振動板33の導電体の位置に、全体としてほぼ一様で音響振動板33を均一振動させる有効作用磁束の密度分布を実現している。
また、本実施の形態の磁石板31、32を使用した場合や、その磁石板31、32として厚さ等の補正を行っていない状態のものを使用した場合において、第6図の場合と同じように音響振動板33の振動方向に対する有効作用磁束密度の変化が少ない領域Sについて調べたところ、形状及び領域等、殆ど全てにおいて実施の形態1又は実施の形態2と同様であり広範囲に確保できていることが分かった。
このようにして、音響振動板33を適正に低歪の状態で振動させることができ、音響特性に優れた電気音響変換器30を提供できる。
なお、本実施の形態では磁化ベクトル35aの角度θ2を一定の20度としているが、一定とする角度θ2をゼロとした、即ち部分領域の磁化方向を全て半径方向とした磁石板を用いた場合では、有効作用磁束比は本実施の形態に比べその89%程度まで低下することがシミュレーションで得られたデータに基づいて、ネオジム磁石を使用した検証を行うことにより分かった。また、エネルギーの変換能率は有効作用磁束比の2乗に比例するため、上記比89%はその2乗である79%程度となる。
この場合、有効作用磁束比が低下して磁束の利用効率が悪くはなるが、磁石板の磁化方向を磁石板の面に対して傾斜させる必要がないため、磁石材に対する磁化が容易になるという特徴も持つ。特に、実施の形態2のようにリング状の小磁石を組み合わせたものや、扇形状の小磁石を組み合わせて磁石板とする場合では、各要素となる小磁石の磁化が容易になる。
従って、前記小磁石を集合させて磁石板を構成し、磁石板の厚さや音通過孔による補正を行って有効作用磁束密度の分布を音響振動板を均一振動させるパターンに設定することにより、本発明の特徴である歪が少なく過渡特性に優れた全面駆動型平面スピーカ及びマイクロホンを容易に作成することができる。
第8図に示される電気音響変換器30では、部分領域毎にその磁化の強さを最大化させて全て一定とすることで、磁石板31、32が円盤状であっても第5(a)図におけるbで示されるような良好な有効作用磁束密度の分布が得られている。これにより、ロ号公報とホ号公報に記載されている従来例のように、磁石板全体のNS極を部分領域単位ではなく内周側と外周側でそれぞれ一体となって形成するように磁化させる場合に比べて、音響振動板における有効作用磁束密度を高めることができる。
前記公報のリング状磁石の場合、外周側の磁極の有効面積は半径の差により内周側の磁極の有効面積よりも広くなるが、磁石におけるN極側の総磁束とS極側の総磁束は常に等しいため、リング状磁石の半径方向の幅を大きくすると外周側の磁化強度と磁束密度が内周側よりも低下して、有効作用磁束密度も低下していた。
これに対して電気音響変換器30では、磁化ベクトル35aの角度θ2をゼロとした場合でも、部分領域毎にその磁化の強さを最大化させているため、磁石板が円盤状であっても第5(a)図におけるbで示される場合と同様に良好な有効作用磁束密度の分布とすることができた。なお、この場合における磁石板全体のNS極は、一方の磁極が磁石板の全外周部に形成されており、他方の磁極は全ての部分領域において磁石板の中心側となる部分に少しずつ形成されている。即ち、上記他方の磁極は、外周部を除く磁石板全体に分散した状態で存在し、内周側のみである従来例とは異なっている。
次に、これらの磁化方法の相違による磁束の利用効率について説明する。
第5(a)図は対向する2枚のネオジム磁石板を仮定し、磁石板から音響振動板までの距離Cと磁石板外周の半径Rとの比(C/R)を0.1にした場合に、音響振動板の中心側から外周部近傍までの各位置における有効作用磁束密度を磁石板の設定条件毎に比較したグラフである。なお、磁石板は全体が磁石部のみからなる音通過孔が存在しないもので、有効作用磁束比(U/V)が厚さの影響を受けないように厚さを半径Rの1%とした薄いリング状のものを仮定している。また、第5(b)図のグラフの横軸に記述されている磁石板の外周部位置のサイズは、上記条件を満たしていればどのような値であっても構わない。
従来例の電気音響変換器のように磁石板の全体をリング状の形状とし、内周側と外周側にそれぞれ一体にNS極を形成して、リング状磁石の外半径Rと内半径r1、r2の間、即ち半径方向のリング幅Wを外半径Rの1/3(=R−r2)とした場合のグラフをf2で、リング幅Wを2/3(=R−r1)とした場合のグラフをg2で示している。なお、このようなリング幅Wは上記磁化条件の磁石としては広過ぎて実用的ではないが、比較のために例として設定している。
第5(b)図では、全部分領域の磁化の強さを最大化させた本実施の形態の磁石板において、部分領域の磁化方向を全て半径方向とし、全体の形状とリング幅Wを前記従来例のグラフであるf2、g2の場合と同じに設定して求めたグラフ2を、それぞれf1、g1として比較している。
上記リング状磁石を実際に電気音響変換器として使用した場合を想定し、音響振動板の導電体における有効作用磁束をその導電体の領域で積算した値(U)と、磁石部の全体積(V)との比、即ちU/Vで示される有効作用磁束比を用いて設定条件別に磁束の利用効率を比較した。
この有効作用磁束比を用いた磁束の利用効率の比較では、リング幅Wを半径Rの1/3としたf1の場合でf2の約1.25倍、また、リング幅Wを半径Rの2/3としたg1の場合でg2の約2倍となった。
即ち、本実施の形態のように複数の部分領域で磁石板を構成し、各部分領域の磁化の強さを最大化させた磁石板を用いる場合(f1、g1)は、内周側と外周側にそれぞれ一体となってNS極を形成するように磁化されたリング状磁石を用いた従来例の場合(f2、g2)よりも磁束の利用効率が良くなることが分かり、また、リング状磁石の半径方向の幅Wを大きくする程、その差は大きくなることが分かった。
このように、従来の電気音響変換器ではリング幅Wを大きくすると磁束の利用効率が悪くなることから、基本的にリング幅Wの狭いリング状磁石が用いられており、音響振動板の面積を広くする場合には、磁化方向の異なる複数のリング状磁石を組み合わせて使用していた。しかし、このように複数のリング状磁石を単に組み合わせた場合には、音響振動板も複数のスパイラル状導電体を組み合わせて構成する必要があるため、組み合わせた各スパイラル状導電体がそれぞれ独立して振動(分割振動)し、音響振動板全体の均一振動が妨げられて歪みの少ない音響特性とすることが難しくなっていた。
これに対して部分領域毎にその磁化の強さを最大化させた磁石板では、リング幅Wを大きくしても第5(a)図におけるbで示される場合のように良好な有効作用磁束密度の分布が得られるため、磁石板を円盤状として用いることが可能となった。これにより、音響振動板の面積を広く形成でき、その全体に均一に導電体を分布させて低歪で変換能率に優れた高性能な電気音響変換器を構成することが可能となった。
実施の形態3の電気音響変換器30は以上のように構成されているので、以下の作用を有する。
(a)磁石板31、32の部分領域における全NS極を一定角度で磁化させるため、実施の形態1又は実施の形態2で採用されている各部分領域における磁化の角度がそれぞれ異なる磁石板の場合に比べ、目的の磁化の方向とした磁石板31、32の作成が容易になる。
(b)本実施の形態で採用している磁石板31、32の磁極分布では、実施の形態1又は実施の形態2で採用している磁石板の磁極分布に比べ、音響振動板33の導電体における有効作用磁束密度の高低差が少ないという特性を示すため、磁石板31、32の厚さや音通過孔36の分布密度等を利用した音響振動板33の導電体に対する有効作用磁束密度の補正が少なくて済む。
(c)音響振動板33の導電体の位置に全体として一様な有効作用磁束密度の分布を実現しているため、さらに保持板39aで音響振動板33の全体を均一に支持することにより、音響振動板33の全面に均一な振動を行わせることができる。
(d)保持板39aで音響振動板33の全体を均一に支持することができるため、音響振動板33の面積を広くする場合でも位置のズレが発生し難くなる。
(e)保持板39aで音響振動板33を支持することによりエッジ部が不要となるため、そのための面積を確保する必要がなくなり設計の自由度が増す。これにより、広くなった部分を利用して振動板となる部分の面積を増やせばエネルギーの変換能率を高めることもできる。
(f)磁石板31、32を複数の小磁石の集合体で構成し、小磁石として磁石板を半径となる線で分割した扇形状のものを用いれば、同心円状に厚さを変化させて有効作用磁束密度の補正を行う場合でも、全ての小磁石として同一角度に磁化された共通のものを用いることが可能になるため、規格化された安価な小磁石を用いて電気音響変換器30を容易に製造することができる。
(実施の形態4)
第9(a)図は実施の形態4の電気音響変換器の要部断面図であり、第9(b)図はその変形例の電気音響変換器の要部断面図である。
第9(a)図、第9(b)図において、40aは実施の形態4の電気音響変換器、40bは電気音響変換器40aの変形例である電気音響変換器、41は全体が円盤状に形成された磁石板、43はスパイラル状に形成された導電体を有する音響振動板、49aはポリウレタンなどを材料とした発泡樹脂等からなり磁石板41の面に音響振動板43を所定の間隔で弾性的に支持したリング状の保持板、48は磁石板41の外周部に設けられた円筒状の支持部、49は音響振動板43と円筒状の支持部48とを弾性的に連結するサスペンション機能を有したエッジ部、46は磁石板41に穿設された音通過孔、47は導電体の端子部である。
音響振動板43には、その表面に蒸着やメッキ、エッチング等の手段により、アルミニウムや銅等の図示しない導電体がスパイラル状に形成されている。
以下、実施の形態4の電気音響変換器40a、40bについて説明する。
2枚の磁石板の対の間に音響振動板を配置した場合、2枚の磁石板間における有効作用磁束密度の変化は磁石板間の中間、即ち音響振動板の設置位置を中心にして振動方向に対称となる。
これに対して、本実施の形態4のように音響振動板に対して1枚の磁石板を配置した場合、音響振動板の位置及びその近傍における有効作用磁束密度は音響振動板が磁石板から離れるほど低くなり、振動する音響振動板の各位置における有効作用磁束密度は音響振動板の設置位置に対して振動方向に非対称となる。そして、その有効作用磁束密度の変化の度合いは磁石板の半径Rに対する音響振動板が振動方向に変位した距離yとの比(y/R)で決まる。
例えば、磁石板の磁化ベクトルと音響振動板の振動面とのなす角度を全て一定とし、かつ磁石板を片側に1枚配置した構成では、比(y/R)が0.4%となるような距離yで音響振動板が振動方向に変位した場合、音響振動板上の有効作用磁束密度は平均で約1%変化することがシミュレーションにより分かった。
音響振動板43に対して1枚の磁石板41を配置した本実施の形態においては、磁石板41が前記一定角度で磁化されその半径Rを48mmとした場合、半径48mmの0.4%は約0.2mmとなるので、音響振動板43の振動方向に対して有効作用磁束密度の変化が1%以内となる範囲は、音響振動板43の設置位置を基準にしておよそ−0.2mm〜+0.2mmの範囲となる。
これに対して、前記一定角度で磁化された磁石板の2枚の対の間に音響振動板を配置した場合、磁石板の半径を48mm、磁石板間の間隔を6mm、磁石板に形成する音通過孔の幅を0.8mm以下とした例では、音響振動板の振動方向に対して有効作用磁束密度の変化が1%以内となる範囲は、音響振動板の設置位置を基準にしておよそ−1mm〜+1mmであった。
以上説明したように、本実施の形態4のように磁石板を片側1枚とした構造の電気音響変換器40a、40bでは、2枚の磁石板の対の間に音響振動板を配置した場合に比べ、音響振動板43の振動方向に対する有効作用磁束密度の変化の度合いが大きくなる。このため、電気音響変換器40a、40bを低歪な状態で使用するためには、比較的大きな振幅とならない電気信号を対象とした用途とする必要がある。例えば、高い周波数の電気信号では一般的に音響振動板43の振動方向に対する変位が小さくて済むため、低歪な状態での使用が可能となる。
電気音響変換器40a、40bでは、第9(a)図、第9(b)図に示すように磁石板41の厚さを半径方向に変化させて補正することにより、音響振動板43の導電体に形成される有効作用磁束密度を所定の値に設定している。
第9(a)図に示される電気音響変換器40aでは、保持板49aを吸音材としても機能させ、音響振動板43の後方から発生する音波を吸収するようにして音通過孔を廃止している。そして、この廃止した音通過孔の部分も磁石材とすることにより有効作用磁束密度を高めている。
また、第9(b)図に示される電気音響変換器40bでは、中心側の支持部及びエッジ部を廃止し音響振動板43を円板状に形成して中心部も振動板としている。音響振動板43の直径が小さい場合やエッジ部49のスチフネスが大きい場合では、このような構造とすることにより音波の放射面積を広くしてエネルギーの変換能率を高めることもできる。
実施の形態4の電気音響変換器40a、40bは以上のように構成されているので、以下の作用を有する。
(a)磁石板41と音響振動板43の一対のみで電気音響変換器40a、40bが構成されているので、音波は音響振動板43により音通過孔を経由することなく、スピーカやヘッドホン等においては放出され、また、マイクロホン等においては受信されて他から干渉されるようなことがなくなる。
(b)磁石板2枚を対向させる場合のような磁石板間の強力な反発力がなくなるため、反発力を支える機構が不要となり、反発力によるズレを発生する可能性もなくなる。
(c)磁石板41が1枚で済むため、構造を簡単にでき部品数をさらに少なくすることができると共に、必要とされる電気音響変換器の全体の厚さも磁石板を2枚とする場合の約半分となり薄型化が可能になる。
(d)音波は音響振動板43により音通過孔を経由することなく直接、放出又は受信されるので、音通過孔のための制約が少なくなり有効作用磁束密度を高めるために磁石板41を厚く設計することができる。
(実施の形態5)
第10(a)図は実施の形態5の複合型の電気音響変換器の要部断面図であり、第10(b)図はその磁石板における部分領域の磁化パターンを示す模式図である。
第10(a)図において、50は実施の形態5の複合型の電気音響変換器、60、70、80は電気音響変換器50を構成し、それぞれが独立して形成された電気音響変換器、62、71、72、81、82は全体を円盤状又はリング状として厚さを同心円状にそれぞれ異ならせて形成された磁石板、63、73、83はスパイラル状に形成された導電体を有する薄肉リング状の音響振動板、76は磁石板71、72に形成された音通過孔、86は磁石板81、82に形成された音通過孔、68は磁石板62の外周部と磁石板71、72の内周部を保持する非磁性体からなる円筒状の支持部、78は磁石板71、72の外周部と磁石板81、82の内周部を保持する支持部、88は磁石板81、82の外周部を保持する支持部、69aは音響振動板63を弾性的に支持するための発泡樹脂等からなるリング状の保持板、79は音響振動板73と円筒状の支持部68、78とを弾性的に連結するサスペンション機能を有したエッジ部、89は音響振動板83と円筒状の支持部78、88とを弾性的に連結するサスペンション機能を有したエッジ部である。
薄肉リング状の音響振動板63、73、83には、その表面に蒸着やメッキ、エッチング等の手段により、アルミニウムや銅等の図示しない導電体がスパイラル状に形成されている。
実施の形態5の複合型電気音響変換器50は、それぞれが独立した互いにサイズや音響特性の異なる電気音響変換器60、70、80を同軸(同心円状)に配置して構成している。
磁石板62、71、72、81、82は、各部分領域における磁化の強さを全て一定としている。また、各部分領域の磁化ベクトル65a、75a、85aは、音響振動板63、73、83の振動面と平行な成分を磁石板62、71、72、81、82の半径方向とし、第10(b)図に示すように音響振動板63、73、83の振動面に対してなす角度θ3を磁化ベクトル65a、85aでは一定の20度とし、磁化ベクトル75aではその逆方向となる−160度の角度で一定としている。
音響振動板63、73、83における導電体の図示しない端子部への外部機器からの接続は、一般的にはそれぞれ個別に接続するが並列や直列にして接続しても良い。
磁石板62、71、72、81、82に対しては、音響振動板63、73、83の導電体に形成される有効作用磁束の不足を補うように厚さを調整し、音響振動板63、73、83を均一振動させる有効作用磁束の密度分布を実現している。
以下、磁石板から音響振動板までの距離Cを一定にした場合に、磁石板の半径Rが電気音響変換器のエネルギーの変換能率に与える影響について述べる。
一般的には磁石板の半径Rは大きくする程、音響振動板の面積も広くできるため、音波の放射面積やスパイラル状に形成される導電体の占有面積を広くして変換能率を高めることができる。
一方、距離Cを一定とした状態で磁石板の半径Rがある程度以上大きくなると、有効作用磁束比が低下して磁束の利用効率は悪くなる。磁化ベクトルと音響振動板の振動面とのなす角度θ3を全て一定の20度として磁化した磁石板では、厚さを半径Rの0.33%(1/3%)とした薄い円板状の2枚のネオジム磁石板を仮定して、距離Cと半径Rとの比(C/R)を1/30にした場合、音響振動板の半径方向に対する有効作用磁束密度の分布は第11図のdに示されるようになる。なお、対向する2枚の磁石板は、全体が磁石部のみからなる音通過孔が存在しないものを仮定している。また、第11図のグラフの横軸に記述されている磁石板の外周部位置のサイズは、上記条件を満たしていればどのような値であっても構わない。
第11図は音響振動板の中心側から外周部近傍までの各位置における有効作用磁束密度を磁石板の設定条件毎に比較したグラフである。
第11図のdの分布は音響振動板の中心部と外周部との間で有効作用磁束密度が低くなって中間部が凹んだパターンとなるが、dの分布である比(C/R)が1/30の場合の有効作用磁束比は0.1(1/10)の場合、即ち距離Cが同じで半径がR/3の場合に比べその約50%程度まで低下する。また、エネルギーの変換能率は有効作用磁束比のほぼ2乗に比例するため、上記比(50%)は2乗となる25%程度となる。
これに対し、本実施の形態のように磁石板を3種類の円板状及びリング状磁石板に分割して、半径中央のリング状磁石板の磁化角度θ3を逆方向となる−160度で一定となるように設定し、dの場合と同じように厚さを半径Rの0.33%(1/3%)とした薄い円板状のネオジム磁石板を仮定した場合では、音響振動板の半径方向に対する有効作用磁束密度の分布は第11図におけるe1、e2、e3のようになった。
なお、第11図では比較のために有効作用磁束密度を絶対値で表示しているが、本来e2はe1、e3とは逆の方向の有効作用磁束となる。
第11図に示される有効作用磁束密度の分布e1、e2、e3の全体を平均した有効作用磁束比は、磁石板全体の半径をR/3と見なした、即ち比(C/R)を0.1とした場合に近い有効作用磁束比とすることができた。
そして、このような方法はそれ以外の分割数においても適用でき、例えば磁石板の全体を4種類の磁石板に分割した場合では、隣り合う磁石板の対応するNS極を互いに逆方向となるように設定することにより、半径がR/4の状態の有効作用磁束比に近付けることができた。
実施の形態5ではこのようにそれぞれの磁石板62、71、72、81、82に分割した磁化を行うことにより、電気音響変換器50における磁石板全体の半径が大きくなる場合でも、良好な有効作用磁束比、即ち磁束の利用効率を維持することができた。
また、本実施の形態では角度θ3を全て20度又は−160度に一定とした磁石板を用いているが、磁石板として各部分領域の磁化角度θ3を磁石板の中心軸からの距離に対して漸次異ならせて所定の角度に設定したものを用いた場合でも全く同様な効果が得られた。この場合でも各磁石板62、71、72、81、82が単独で本発明の磁石板としての機能を有するように、それぞれを所定の角度による独立したパターンで磁化し、隣り合う磁石板62、71、72、81、82の対応するNS極が互いに逆方向となるように設定して構成する。
さらに磁石板として、各部分領域の磁化角度θ3を全て一定としたものと、磁石板の中心軸からの距離に対して漸次異ならせて所定の角度に設定したものを組み合わせても同様な効果が得られた。
複合型電気音響変換器50では音波の放射面積、及び電気インピーダンス等を考慮して周波数帯域別に電気音響変換器60を高音域用、電気音響変換器70を中音域用、電気音響変換器80を低音域用としている。
実施の形態4のように磁石板を1枚とした電気音響変換器40a、40bでは、音響振動板43の振動方向に対して有効作用磁束密度の変化の度合いが大きくなる。しかし、高い周波数の信号など比較的大きな振幅を必要としない電気信号を対象とすれば、低歪な状態での使用が可能であった。
従って、実施の形態5の複合型電気音響変換器50でも、高い周波数用となる電気音響変換器60を磁石板1枚で構成し、かつ音響振動板63で発生する音波が音通過孔を経由しないような構造としている。
また、保持板69aを吸音材としても機能させ、音響振動板63の後方から発生する音波を吸収するようにして磁石板62の音通過孔を廃止している。
なお、本実施の形態では、磁石板62、71、72、81、82から対応する各音響振動板63、73、83までの距離Cを全て共通とし、低音域用で最も振幅が大きくなる音響振動板83の最大振幅に合わせた距離としたが、音響振動板63、73についてはそれぞれの最大振幅に応じた距離Cとし、短く調整することにより有効作用磁束密度を高くして有効作用磁束比を改善することができる。
また、音響振動板63、73、83の導電体を一枚の振動板上に形成して全体が一体となって振動するようにしても良い。
この場合は音響振動板73の部分における有効作用磁束の方向を音響振動板63、83部とは逆の方向にしているため、全体が一枚の振動板に形成される導電体を前記有効作用磁束の方向に対応させて交互に逆方向の駆動電流が流れるように配置し、音響振動の位相を音響振動板の全体で合わせて音響振動板を一様に駆動させるように構成する。
このような構成方法により磁石板から音響振動板までの距離に比べ磁石板の半径が大きくなる場合、例えばスピーカ等では口径が大きくなると磁石板全体の半径が大きくなって有効作用磁束比が低下する傾向にあるが、このような場合でも有効作用磁束比を適正に維持した設計が可能になる。
実施の形態5の複合型電気音響変換器50は以上のように構成されているので、以下の作用を有する。
(a)磁石板の半径が大きくなると有効作用磁束比が低下して磁束の利用効率が悪化する傾向にあるが、電気音響変換器50を構成する磁石板の全体を複数のリング状等の磁石板62、71、72、81、82に分割して、それぞれが独立して本発明の磁石板としての機能を有するように磁化させ、隣り合う磁石板62、71、72、81、82の対応するNS極が互いに逆方向となるように設定しているため、実質的な磁石板の半径を小さくすることができ、有効作用磁束比の低下を防ぐことができる。
(b)互いに音響特性の異なる本発明の電気音響変換器60、70、80を組み合わせて複合型としているため、各電気音響変換器60、70、80の特徴を生かして音響特性に優れた複合型電気音響変換器50を構成できる。
(c)各電気音響変換器60、70、80を同心円状(同軸)に配置して構成しているため、位相特性や指向特性に優れた構造とすることができる。
(実施の形態6)
第12(a)図は実施の形態6の電気音響変換器の要部断面図であり、第12(b)図は音響振動板の前方に配置される磁石板の平面図であり、第12(c)図は音響振動板の後方に配置される磁石板の平面図である。
第12図において、90は実施の形態6の電気音響変換器、91は全体が円盤状で中心軸側と外周縁側との中間部おける厚さが中心部、及び外周部より薄く形成された前方側の磁石板、92は全体が円盤状で中心軸側と外周縁側との中間部が最も厚く中心軸側と外周縁側にかけて漸次薄く形成され、磁石板91と互いに対向する面が平行に配置された後方側の磁石板、93は磁石板91、92の中間位置に配置されスパイラル状に形成された導電体を有する音響振動板、95aはそれぞれ単独の形状が扇形状に形成された磁石板91を構成する小磁石、95bはそれぞれ単独の形状が扇形状に形成された磁石板92を構成する小磁石、96aは隣接する小磁石95a間に形成された扇形状の音通過孔、96bは隣接する小磁石95b間に形成された扇形状の音通過孔、97は導電体の端子部、98aは磁石板91、92と音響振動板93の中心部側を保持する円柱状の支持部、98bは外周部を保持する円筒状の支持部、99は音響振動板93と支持部98a、98bとを弾性的に連結するサスペンション機能を有したエッジ部である。
音響振動板93は、絶縁された銅クラッド・アルミニウム線からなる導電体をスパイラル状に巻き、エポキシ樹脂で接合して全体が薄肉リング状に形成されている。外周縁側及び内周縁側には弾性変形可能なエッジ部99が設けられている。
電気音響変換器90は、磁石板91、92においてそれぞれの厚さの分布を異ならせて調整することによって、音波の磁石板91による干渉を少なくすると共に、音響振動板93の導電体における有効作用磁束密度の分布を半径方向に均一化させている。
磁石板91における音通過孔96aは、磁石板92における音通過孔96bよりも、その数だけでなく全体に占める面積割合を多くしている。このようにして音通過孔96aの面積割合を増やすことによっても、音波放出における磁石板91の干渉をさらに少なくしている。
音響振動板93から前方に発生した音波は磁石板91より外部へ放出されるが、磁石板91では、その中心軸側と外周縁側との中間部における厚さを中心部、及び外周部より薄く形成しているので、音波の透過率を高めることができる。
このようにして磁石板91における音響振動板93近傍の厚さを薄くすることで、音響振動板93により発生した音波の磁石板91による干渉を少なくして外部に放出する構造としている。
こうして、まず、磁石板91の厚さの分布を決定し、次に、音響振動板93の導電体における有効作用磁束密度の分布を半径方向に均一化させるように磁石板92の厚さの分布を決定している。
磁石板91、92は、各部分領域における磁化の強さを全て一定としている。また、各部分領域の図示しない磁化ベクトルは、音響振動板93の振動面と平行な成分を磁石板91、92の半径方向とし、音響振動板93の振動面に対してなす角度を全て一定の20度としている。
このような磁化の角度とした磁石板91,92において、磁石板91と共に有効作用磁束密度の分布を音響振動板93の導電体において半径方向に均一化させるような磁石板92の厚さの分布は、一般的には第12(a)図の磁石板92として示されるように、中心軸側と外周縁側との中間部が最も厚く中心軸側と外周縁側にかけて漸次薄くなるような厚さの分布となった。
磁石板を2枚とした構造の電気音響変換器では、音響振動板93の位置に高い有効作用磁束密度を形成させることができると共に、音響振動板93の振動方向に対する有効作用磁束密度の変化を少なくできるという特徴を有している。
電気音響変換器90はこれらの特徴に加えて、前方の磁石板91による音波の干渉が少なくなるように磁石板91の厚さの分布を調整しているため、音響振動板93により発生した音波を低歪のまま外部に放出させることができるという特徴を備えている。
このようにして非常に良好な音質を維持しながら変換能率を高くした電気音響変換器90が実現できた。
実施の形態6の電気音響変換器90は以上のように構成されているので、以下の作用を有する。
(a)前方の磁石板91において、その中心軸側と外周縁側との中間部における厚さを中心部及び外周部より薄く形成しているため、その中間部の厚さが薄くなり、音響振動板93により発生した音波の磁石板91による干渉を少なくして外部に放出することができる。これにより、発生した音波の低歪を維持できる。
(b)前方の磁石板91における全音通過孔96aが占める面積割合を、磁石板92における全音通過孔96bの面積割合よりも多くしているため、音響振動板93により発生した音波の磁石板91による干渉をさらに少なくして外部に放出させることができる。
(c)磁石板91、92の厚さのパターンをそれぞれ異ならせて設定することにより、磁石板の厚さによって決まる音通過孔の深さに変化を持たせることができる。これにより、磁石板91、92による音響振動板93の共振等の音響特性を微細に調整できるようになるため、2枚の磁石板の厚さの分布を同じにした場合に比べてその周波数特性をより均一化させることができる。
(d)小磁石95a、95bとしてそれぞれ一種類の扇形状の小磁石95a、95bを集合させて各磁石板91,92を構成しているため、規格化された安価な材料を使用して磁石板91,92が作成できる。
(e)扇形の小磁石95a、95bが全て支持部98a、98bに直接取り付けられているため強度的に優れる。
以上、実施の形態1〜6について述べたが、本発明はこれらのものに限定されることなく適用できる。例えば、磁石板については各実施の形態において、矩形状、リング状、扇形状等の小磁石を組み合わせたもの、又は円盤状、リング状のものを単独で使用する場合について述べたが、全体の形状が円盤状又はリング状となるものであれば、その組み合わせ方はどのようにしても構わない。
楕円状又は長円状のように円形を変形させた磁石板についても、基本的に本発明の原理で動作するため同様の効果を得ることができるが、外形は円形に近い程音響振動板の導電体に対する有効作用磁束密度の分布を均一化できる。
また、本発明の電気音響変換器では音響振動板を低歪の状態で振動させることができるため、コーン型スピーカやドーム型スピーカ等におけるボイスコイルと磁気回路からなる駆動系に、本発明の駆動原理を適用してもその効果を発揮させることができる。
なお、本発明の電気音響変換器は各実施の形態で示された特定のサイズや材質のものに限定されるものではなく、表示されている磁極についてもそのNS極の全体が逆になっても構わない。
産業上の利用可能性
請求の範囲第1項に記載の電気音響変換器によれば、以下の効果が得られる。
(a)磁石板の各部分領域における磁化の方向を、それぞれ音響振動板の導電体に対する有効作用磁束の寄与分が最も大きくなるように設定できるため、音響振動板の振動面に沿った半径方向の磁束を有効に発生させることができ、それにより高い有効作用磁束密度を有する領域を広くまとまった範囲で確保できる。
(b)有効作用磁束密度の高くなる領域を音響振動板の位置に広くまとまった範囲で形成させることができるため、音響振動板の全面に導電体を配置して音響振動板の全体で電磁力による駆動力を発生させることができる。振動面の全面を同位相で作動させることのできる音響振動板の設計が可能となり、低歪率の理想的な全面駆動型平面スピーカが実現できる。
(c)磁石板の各部分領域における磁化の方向を音響振動板の振動面に対してそれぞれ所定の角度に設定するため、必要とする有効作用磁束密度の領域を広範囲に確保しながら、音響振動板の振動方向に対する各位置での有効作用磁束密度は変化の少ない分布が得られる。従って、音響振動板の振動方向に対する有効作用磁束密度の高低の差により生じる歪を抑制して、スピーカやヘッドホン等においては発生する音の音質を、また、マイクロホン等においては音より変換される電気信号を良好に維持できる。
(d)音響振動板を2枚の磁石板の対の間に平行配置した場合には、磁石板を1枚とする場合に比べ振動方向に対する有効作用磁束密度の変化を少なくできるので、音響振動板の振幅が大きくなる場合や音響振動板の設置位置に多少の誤差が生じても、良好な音質を維持させることができる。
(e)2枚の磁石板の対の間に音響振動板を配置した場合には、磁石板を1枚とする場合に比べ有効作用磁束密度を高くすることができる。
請求の範囲第2項に記載の電気音響変換器によれば、請求の範囲第1項の効果の他、以下の効果が得られる。
(a)磁石板の磁化方向を音響振動板の振動面に対して一定の角度にしているため、磁石板の磁化方向を磁石板の中心軸からの距離に対して漸次異ならせた角度とする場合に比べ、磁石板の設計及び製作を容易にできる。
(b)磁石板の磁化方向を音響振動板の振動面に対して一定の角度にしているので、磁化方向を中心軸からの距離に対して漸次異ならせた角度とする場合に比べ、音響振動板の半径方向に対する有効作用磁束密度の高低差を少なくして、有効作用磁束密度の分布を適正化させるのに必要な補正を少なくできる。
(c)磁石板の厚さの分布を変化させて有効作用磁束密度の補正を行う場合、厚さによる補正量を少なくできるので、磁石板に形成される音通過孔においてその深さが及ぼす音響特性への影響を少なくできる。
請求の範囲第3項に記載の発明によれば、請求の範囲第1項又は第2項の効果の他、以下の効果が得られる。
(a)磁石板が小磁石の集合体で構成されているので、複雑な磁化のパターンを有する磁石板であっても、予め所定の角度で磁化した多数の小磁石を配列することにより比較的容易に実現することができる。
(b)それぞれの小磁石に対し個別に強力な磁化が可能となり、磁石材の能力を最大限にした磁石板の製作が容易になる。
(c)磁石板を構成する各小磁石の磁化角度や磁化強度、大きさ等を所定の値に変化させることが容易にできる。音響振動板の導電体における有効作用磁束密度の分布状態を、必要とする音響特性に合わせて容易に調整することができる。
(d)小磁石間の隙間を音通過孔として利用することができるため、音通過孔の製作のための穿孔作業等を必要とせず、優れた音質の電気音響変換器を簡単に構成できる。
(e)小磁石として同一の形状で同一の磁化強度を有するものを用い、それぞれのNS極の音響振動板の振動面に対する角度を変えて配置することにより磁石板を形成させることもできるので、規格化された安価な材料を用いた電気音響変換器を製造することができる。この場合、小磁石として直径方向に磁化した円板状のものを用い、小磁石の面を磁石板の面に対して垂直とし径の方向が磁石板の半径方向となるように同心円状に配置し、NS極の角度を変化させて使用すれば、音通過孔や周囲の小磁石に対する角度の変化による形状が及ぼす影響を少なくすることができる。
請求の範囲第4項に記載の発明によれば、請求の範囲第1項乃至第3項の効果の他、以下の効果が得られる。
(a)磁石板の厚さをその外周縁側から中心軸側にかけて漸次厚くして、磁石板の各位置における磁界の寄与を漸次異ならせることにより、音響振動板の中心軸側で有効作用磁束密度が低下しがちな場合に対して中心軸側の有効作用磁束密度を高めることができる。有効作用磁束密度の分布を音響振動板が均一振動するパターンに設定でき、音響振動板の振動特性を容易に最適化できる。
(b)磁石板の中心軸側と外周縁側に磁石板の支持部を設置する場合は、最も支持強度が必要とされる磁石板の中心部が厚くなっているため、強度的に優れた構造とすることができる。
(c)磁石板の厚さを漸次変化させているため、磁石板に穿設する音通過孔の深さも漸次変化させることができる。音通過孔の深さで変化する音響インピーダンスについても急激に変化する部分がなくなり、音響振動板における不規則振動の発生を防ぐことができる。
請求の範囲第5項に記載の発明によれば、請求の範囲第1項乃至第3項の内いずれか1項の効果の他、以下の効果が得られる。
(a)磁石板において、その中心軸側と外周縁側との中間部における厚さを前記中心軸側及び前記外周縁側より厚くして磁石板の各位置における磁界の寄与を漸次異ならせることにより、特に、音響振動板の前記中間部における有効作用磁束密度が低下する場合に対して、前記中間部の有効作用磁束密度を高めることができる。有効作用磁束密度の分布を音響振動板が均一振動するパターンに設定でき、音響特性に優れた電気音響変換器を提供できる。
(b)磁石板の厚くなる部分が半径の中間部となるため、厚い部分が一部分に集中しない構造となる。磁石板に穿設した音通過孔においてその深さで変化する音響インピーダンスへの影響を全体的に分散させることができ、音響インピーダンスの部分的な高低をなくして音響振動板の不規則振動を防ぐことができる。
請求の範囲第6項に記載の発明によれば、請求の範囲第1項乃至第5項の内いずれか1項の効果の他、以下の効果が得られる。
(a)磁石板に音波を通過させるための音通過孔が多数形成されているので、スピーカやヘッドホン等においては音響振動板の全域で発生した音波を互いに干渉させることなく放出し、また、マイクロホン等においては外部より受信する音の干渉を少なくして歪の少ない電気信号を得ることができる。
(b)2枚の磁石板の間に音響振動板を配置した場合、いずれか一方又は両方の磁石板に音通過孔を設けることができる。両方に音通過孔を形成した場合は、全体の構造を音響振動板の振動面に対して対称とすることができるため、音響振動板の振動に対し音響的に優れた構造とすることができる。
請求の範囲第7項に記載の発明によれば、請求の範囲第6項の効果の他、以下の効果が得られる。
(a)磁石板に形成される音通過孔の配置状態により、音響振動板の導電体における有効作用磁束密度の分布状態を調整できるので、有効作用磁束密度の分布を音響振動板が均一振動するパターンに設定でき、音響特性に優れた電気音響変換器を提供できる。
(b)磁石板に形成される音通過孔の配置状態により音響インピーダンスを調整できるので、音響振動板で発生または受信する音波の伝達特性と音響振動板の振動特性とを最適化することができる。
(c)音響振動板の導電体における有効作用磁束密度分布の調整に、磁石板の厚さや磁化強度を変化させて行うものと組み合わせて用いることにより、音響振動板の導電体に形成される有効作用磁束密度の分布を音響振動板が均一振動するパターンに容易に設定することが可能になる。
請求の範囲第8項に記載の発明によれば、請求の範囲第1項乃至第7項のいずれか1項の効果の他、以下の効果が得られる。
(a)それぞれサイズや音響特性の異なる独立した電気音響変換器を同心円状(同軸)に構成して全体を複合型の電気音響変換器とすることができるため、音波の放射面積、及び電気インピーダンス等の適用条件に応じてこれらを一体に適正配置でき、音響特性に優れた電気音響変換器とすることができる。例えば、高音域用、中音域用、低音域用等の周波数帯域別にそれぞれの電気音響変換器を組み合わせることにより、全周波数帯域において優れた性能を有する複合型の電気音響変換器を容易に構成できる。
(b)磁石板の半径が大きくなる場合でも、磁石板全体を複数のリング状等の磁石板に分け、それぞれの分割された磁石板が独立して本発明の磁石板としての機能を有するように磁化させ、隣り合う磁石板の対応するNS極が互いに逆方向となるように設定することにより、有効作用磁束比の低下を防ぐことができる。
(c)互いに音響特性の異なる電気音響変換器を同軸に配置して複合型とすることができるので、位相特性や指向特性に優れた電気音響変換器を提供できる。
請求の範囲第9項に記載の発明によれば、請求の範囲第1項乃至第3項のいずれか1項の効果の他、以下の効果が得られる。
(a)磁石板において、その中心軸側と外周縁側との中間部における厚さを中心部、及び外周部より薄く形成するので、音響振動板により発生した音波の磁石板による干渉を少なくして外部に放出できる。また、磁石板の中間部において、その厚さを極端に薄くしたり、取り去ったりして磁石部の殆どを中心部、及び外周部のみとすれば、音響振動板により発生した音波の磁石板による干渉を完全になくすこともできる。
(b)磁石板の中間部の厚さ分布を所定の音響性能が得られるパターンに維持させたまま、磁石板の中心部及び外周部を厚くすることにより、音響振動板により発生した音波の磁石板による干渉を増加させることなく、音響振動板の位置における有効作用磁束密度を高めることができる。
(c)磁石板の中間部の厚さを中心部、及び外周部より薄く形成することにより、特に、音響振動板の前記中間部における有効作用磁束密度が高過ぎる場合に対して、前記中間部の有効作用磁束密度を低下させることができる。これにより、音響振動板の導電体における有効作用磁束密度の分布を音響振動板が均一振動するパターンに設定でき、音響特性に優れた電気音響変換器を提供できる。

Claims (9)

  1. 全体が円盤状又はリング状に形成された磁石板と、前記磁石板に対して平行配置されその面上に導電体が形成された音響振動板とを有する電気音響変換器であって、
    前記磁石板の各部分領域の磁化方向において前記音響振動板の振動面と平行な成分をゼロ又は前記磁石板の半径方向とし、かつ前記磁化方向が前記音響振動板の振動面に対してなす角度を前記磁石板の中心軸からの距離に対して漸次異ならせていることを特徴とする電気音響変換器。
  2. 全体が円盤状又はリング状に形成された磁石板と、前記磁石板に対して平行配置されその面上に導電体が形成された音響振動板とを有する電気音響変換器であって、
    前記磁石板の各部分領域の磁化方向において前記音響振動板の振動面と平行な成分を前記磁石板の半径方向とし、かつ前記磁化方向が前記音響振動板の振動面に対してなす角度を一定値にしていることを特徴とする電気音響変換器。
  3. 前記磁石板が前記各部分領域に対応した小磁石の集合体で形成されていることを特徴とする請求の範囲第1項又は第2項に記載の電気音響変換器。
  4. 全体が円盤状又はリング状に形成された前記磁石板が、その外周縁側から中心軸側にかけて厚さを漸次厚くして形成されていることを特徴とする請求の範囲第1項乃至第3項の内いずれか1項に記載の電気音響変換器。
  5. 全体が円盤状又はリング状に形成された前記磁石板が、その中心軸側と外周縁側との中間部における厚さを前記中心軸側及び前記外周縁側より厚くして形成されていることを特徴とする請求の範囲第1項乃至第3項の内いずれか1項に記載の電気音響変換器。
  6. 前記磁石板が外部又は内部で発生する音波を通過させる音通過孔を有していることを特徴とする請求の範囲第1項乃至第5項の内いずれか1項に記載の電気音響変換器。
  7. 前記磁石板に配置される前記音通過孔の大きさ、配置密度、配置パターンを前記磁石板の中心軸側から外周縁側にかけて漸次異ならせていることを特徴とする請求の範囲第6項に記載の電気音響変換器。
  8. 請求の範囲第1項乃至第7項の内いずれか1項に記載の電気音響変換器を、それぞれサイズを異ならせて同心円状に複数配置したことを特徴とする電気音響変換器。
  9. 全体が円盤状又はリング状に形成された前記磁石板が、その中心軸側と外周縁側との中間部における厚さを中心部、及び外周部より薄くして形成されていることを特徴とする請求の範囲第1項乃至第3項の内いずれか1項に記載の電気音響変換器。
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