JP3631389B2 - スピーカ用磁気回路およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気信号を音響出力に変換する動電形のスピーカ用磁気回路およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、図4に示すような動電形のスピーカ1が、各種音響製品などに広く用いられている。最も基本的なスピーカ1の形態としては、大略的に円錐状の振動板2の中心に円筒状のボビン3を接合し、ボビン3の外周面にボイスコイル4を巻回する。振動板2の中央部にはセンターキャップ5を装着し、振動板2の周縁部はフレーム6にエッジ7を介して接合する。ボビン3の中間部分をダンパ8でフレーム6に接合する。エッジ7やダンパ8は、振動板2およびボビン3を軸線方向に振動可能なように弾性的に支持し、かつ振動を減衰させるダンピング作用も有するように構成される。
【0003】
ボビン3に巻回されるボイスコイル4は、磁気回路10に形成される磁気空隙11で強力な磁場中に保持される。磁気空隙11は、ボトムヨーク12のセンターポール13の外周面14と、プレート15の透孔16の内周面17との間に形成され、永久磁石18から発生する磁束が高密度で集中する。
【0004】
スピーカ1では、電気的な入力に対して発生される音響出力の比率を、能率として評価する。スピーカ1の能率は、磁気空隙11の磁束密度が高いほど大きくなる。また、スピーカ1のボイスコイル4が磁気空隙11中で電磁的な作用を受けると、ボイスコイル4には軸線方向の電磁力が作用し、ボビン3および振動板2が軸線方向に変位する。ボイスコイル4も磁気空隙11中で軸線方向に変位するので、ボイスコイル4が変位してもボイスコイル4と鎖交する磁束の密度が均一であることが望ましい。ボイスコイル4が変位することによって鎖交する磁束密度が変化すると、電気的な入力に対する音響出力の直線性が損なわれ、音質が劣化してしまうからである。
【0005】
図5は、図4の磁気回路10の磁気空隙11の部分の構成を(a)に示し、磁気空隙11で軸線方向に沿った磁束密度の変化を(b)に示す。磁気空隙11での磁束密度は、一般にプレート15の厚みよりも短い範囲で大きくなり、厚みの両端付近では低下する。外部への漏洩が多くなったりするからである。特に先端側では、ボトムヨーク12のセンターポール13の外周面14の先端が丸みを帯び、プレート15の透孔16の内周面17との距離が大きくなったりするので、基端側よりも低下の傾向が大きくなる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
図5に示すような磁気回路10では、ボトムヨーク12のセンターポール13の形状が円柱状で、先端面に凹凸がなく、センターポール13の上面とプレート15の上面との高さはほぼ同一であることが一般的である。また、ボトムヨーク12は鉄材を鍛造して製造することが多い。このため、センターポール13の外周面14の先端は、或る程度丸みを帯びており、センターポール13の先端面とプレート15の表面とがほぼ等しい高さであると、磁気空隙11の先端側でのセンターポール13の外周面14とプレート15の透孔16の内周面17との間の距離は、中央部よりもかなり大きくなってしまう。このようなセンターポール13の先端側の丸みによっても、図5(b)に示す磁束密度は、先端側で大きく落ち込んでしまう。
【0007】
図5(b)に示すような磁気空隙11内の磁束分布の対称性の欠如や不均一性は、スピーカとしての振幅リニアティの低下や、永久磁石18の持つ実力を充分に発揮させることができず、能率が小さくなって音圧レベルの低下を招く一因となっている。
【0008】
本発明の目的は、磁気空隙での磁束分布の均一性を改善し、スピーカとしての能率や音質上の直線性を改善することができるスピーカ用磁気回路およひその製造方法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ボイスコイルに電磁力を作用させるために、センターポールの外周面とプレートに形成される透孔の内周面との間に磁気空隙を形成するスピーカ用磁気回路において、
センターポール先端面の中心部分に、円柱状の凹部が形成され、
センターポールの半径から該凹部の半径を減算した値と、該凹部の深さとは、5:4の関係を有することを特徴とするスピーカ用磁気回路である。
【0010】
本発明に従えば、センターポール先端面の中心部分に円筒状の凹部が形成され、凹部の半径とセンターポールの半径との差の値と、凹部の深さとは5:4の関係を有するので、センターポールの先端付近を通る磁束は、中心部よりも周縁部で密度が高くなる。センターポールの先端の周縁の磁束密度が高まり、センターポールの外周面とプレートの透孔の内周面との間に形成される磁気空隙でも、センターポールの軸線方向の先端側での磁束密度を高め、センターポールの先端側での能率と音質上の直線性の劣化を改善することができる。
【0011】
さらに本発明は、ボイスコイルに電磁力を作用させるために、センターポールの外周面とプレートに形成される透孔の内周面との間に磁気空隙を形成するスピーカ用磁気回路において、
センターポール先端面の周縁部は、軸線を含む断面での形状が円弧状となるような曲面に形成され、
該曲面の曲率半径は、センターポール先端のプレート表面からの突出量に等しく、
センターポール先端面の中心部分に、円柱状の凹部が形成され、
センターポールの半径から該凹部の半径を減算した値と、該凹部の深さとは、5:4の関係を有することを特徴とするスピーカ用磁気回路である。
【0012】
本発明に従えば、センターポールの先端は、プレートの表面から突出し、突出量はセンターポールの周縁部の曲面の曲率半径と等しく、かつセンターポールの先端面の中心側に凹部が形成され、センターポールの半径と凹部の半径との差に対して凹部の深さは5:4の関係を有するので、磁気空隙での磁束密度を高めてスピーカとしての能率を向上させ、軸線方向に沿う均一性を改善して音質の直線性を向上させることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
図1は、(a)で、本発明の実施の一形態としての磁気回路20の磁気空隙21の部分の概略的な構成を示す。磁気空隙21は、ボトムヨーク22のセンターポール23の外周面24と、プレート25の透孔26の内周面27との間に形成される。ボトムヨーク22は、中心軸線方向に延び、大略的に円柱状の形状を有するセンターポール23と、センターポール23の基端から、中心軸線20aに垂直な半径方向に広がるフランジ状のボトム部分22aとで構成される。ボトムヨーク22のフランジ部分22aは、プレート25との間で、永久磁石28を挟持する。永久磁石28は、円環状であり厚さ方向に磁化されている。これによって、永久磁石28の上面からプレート25内を通り、プレート25の透孔26の内周面27から磁気空隙21を経て、ボトムヨーク22のセンターポール23の外周面24からセンターポール23内に入って、ボトムヨーク22のフランジ部分22aの上面から永久磁石28の下面に至る磁路が形成される。この磁路のうち、プレート25やボトムヨーク22内を通る部分は、プレート25やボトムヨーク22が強磁性体である鉄材などで形成されているので、磁気抵抗が比較的小さく、磁気的に飽和しない限り、多くの磁束を良好に通過させることができる。磁気空隙21では、ボトムヨーク22やプレート25内よりは磁束が通りにくい。磁気抵抗は、磁気空隙21の間隔が大きくなるほど増大するので、磁気空隙21の間隔が大きすぎる部分は磁束密度も低下してしまう。
【0016】
本実施形態では、図1(a)に示すように、センターポール23の先端を、プレート25の表面よりも突出させ、突出量hがセンターポール23の先端の曲率半径Rと等しくなる(h=R)ようにしているので、磁気空隙22のセンターポール23の先端側での間隔の増大を防ぎ、磁気空隙21でのセンターポール23の外周面とプレート25の透孔26の内周面27との間隔を、均一にすることができる。これによって、図1(b)に示すように、磁気空隙21での磁束分布の軸線方向の均一性や対称性が増大し、スピーカとしての能率の向上や音質の改善を図ることができる。このような効果は、実験および有限要素法を用いるシミュレーションで確認されている。
【0017】
図2は、(a)で、本発明の実施の他の形態の磁気回路30の磁気空隙31の部分の概略的な構成を示す。本実施形態で図1の実施形態に対応する部分には同一の参照符を付し、重複する説明を省略する。図2(a)に示す磁気回路30では、ボトムヨーク32のセンターポール33の先端面の中心部分に、大略的に円柱状の凹部35を形成する。凹部35の半径とセンターポール33の半径との差Aと凹部35の深さBとの関係は、A:B=5:4となるように決定する。センターポール33は、中心部が凹んでいるので、センターポール33内では磁束が周縁部に集中するようになり、磁気空隙32に臨む表面での磁束密度を高めることができる。磁気空隙31で、センターポール33の外周面34で磁束密度が高くなっているので、磁気空隙31内でも図2(b)に示すように、磁束密度を高めることができる。このような効果は、実験および有限要素法を用いる実験結果で確認されている。これによって永久磁石28の有するマグネット性能を効率的に使用することができ、磁気空隙31内での電磁変換効率を改善して、スピーカとしての能率の向上を図ることができる。
【0018】
図3は、本発明の実施のさらに他の形態としての磁気回路40の磁気空隙41部分の概略的な構成を示す。本実施形態で、図1または図2の実施形態に対応する部分には、同一の参照符を付し、重複する説明を省略する。図1および図2の実施形態では、磁気回路20,30が外磁形であるけれども、本実施形態では内磁形である。内磁形の磁気回路40はポールピース42の先端側がセンターポール43となり、センターポール43の外周面44と、ヨークプレート45の表面の透孔46の内周面47との間に磁気空隙41が形成される。永久磁石48は、ポールピース42の下面と、ヨークプレート45の中心部の上面との間に挟持される。本実施形態のポールピース42は、センターポール43の先端がヨークプレート45の表面から突出し、突出量hがセンターポール43の周縁部の丸みの曲率半径Rと等しく、図1の実施形態と同様の効果を生じる。しかもポールピース42の先端の中心側には、図2の実施形態の凹部35と同様な凹部49が形成され、図2の実施形態と同様な効果も奏する。このようにして、図3(b)に示すように、本実施形態では、磁気空隙41での軸線方向の磁束分布の均一性と、磁束密度の向上とを合わせて図ることができる。
【0019】
図1および図2の実施形態では外磁形の磁気回路20,30を用いているけれども、図3の実施形態と同様の内磁形の磁気回路であっても同様に磁気空隙21,31での磁束分布の均一化と磁束密度の増大とを図ることができる。図3の実施形態では内磁形の磁気回路30を構成しているけれども、図1および図2の実施形態と同様の外磁形でも、図1と図2の実施形態とを合わせたような効果を奏するようにすることができる。
【0020】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、ポールピースの先端面には中心部分に円筒状の凹部が形成され、ポールピースの半径と凹部の半径との差に対し、凹部の深さは、5:4の関係を有するので、センターポール内部の周縁側の磁束密度を高め、磁気空隙でも先端側の磁束を増大させて、磁気空隙での磁束密度を高めることができる。
【0021】
さらに本発明によれば、センターポールの周縁部の曲面の曲率半径を、センターポールがプレート表面から突出する突出量と等しくし、しかもセンターポールの先端面には中心部分に円筒状の凹部が形成され、凹部の半径とポールピースの半径との差に対し、凹部の深さの値は、5:4の関係を有するので、磁気空隙で磁束密度高め、均一性も改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態の磁気回路20の磁気空隙21付近の構成を示す部分的な断面図と、磁気空隙21での磁束分布を示すグラフである。
【図2】本発明の実施の他の形態の磁気回路30の磁気空隙31付近の構成を示す部分的な断面図と、磁気空隙31での磁束分布を示すグラフである。
【図3】本発明の実施のさらに他の形態の磁気回路40の磁気空隙41付近の構成を示す部分的な断面図と、磁気空隙41での磁束分布を示すグラフである。
【図4】従来からの、一般的な動電形スピーカ1の概略的な構成を示す断面図である。
【図5】図4のスピーカ1の磁気回路10の磁気空隙11付近の構成を示す部分的な断面図と、磁気空隙11での磁束分布を示すグラフである。
【符号の説明】
20,30,40 磁気回路
21,31,41 磁気空隙
22,32 ボトムヨーク
23,33,43 センターポール
24,34,44 外周面
25 プレート
26,46 透孔
27,47 内周面
28,48 永久磁石
35,49 凹部
42 ポールピース
45 ヨークプレート
Claims (2)
- ボイスコイルに電磁力を作用させるために、センターポールの外周面とプレートに形成される透孔の内周面との間に磁気空隙を形成するスピーカ用磁気回路において、
センターポール先端面の中心部分に、円柱状の凹部が形成され、
センターポールの半径から該凹部の半径を減算した値と、該凹部の深さとは、5:4の関係を有することを特徴とするスピーカ用磁気回路。 - ボイスコイルに電磁力を作用させるために、センターポールの外周面とプレートに形成される透孔の内周面との間に磁気空隙を形成するスピーカ用磁気回路において、
センターポール先端面の周縁部は、軸線を含む断面での形状が円弧状となるような曲面に形成され、
該曲面の曲率半径は、センターポール先端のプレート表面からの突出量に等しく、
センターポール先端面の中心部分に、円柱状の凹部が形成され、
センターポールの半径から該凹部の半径を減算した値と、該凹部の深さとは、5:4の関係を有することを特徴とするスピーカ用磁気回路。
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