JP3611699B2 - 引手後付けタイプのスライドファスナー用スライダー - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、スライドファスナー用スライダーにおいて、最初に胴体を作製して、その後に各種形態の引手を後付け操作によって胴体に装着することができ、一旦装着した後は簡単に引手を取外すことが出来ない、引手後付けタイプのスライドファスナー用スライダーに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、スライドファスナー用スライダーにおいて、スライダー胴体に引手を後付けできる形態のスライダーは多数知られている。たとえば特公平1−14761号公報には、スライダー胴体の上翼板には、その前端に一体に連結される一端と、上翼板の後端に延びる他端とからなる引手保持体が突設されており、引手保持体と上翼板との間に引手取付軸部が保持されているスライダーにおいて、上翼板の上面と引手保持体の他端との間には、引手の取付軸部が通過できる間隙部が形成され、間隙部には、間隙を閉鎖する位置と、解放する位置との2位置を占めうる弾性部材が、胴体または引手保持体に保持されて配置され、弾性部材は、弾性変位により、引手取付軸部が引手挿入時に通過できるよう、常時閉鎖位置である上翼板の上面に凹設された凹陥部内に弾接させた引手を着脱できるスライダーが開示されている。
【0003】
また、特公平3−8761号公報には、スライダー胴体の上翼板の案内柱から後口部に向けて下向き凹状の引手保持体が突設され、引手保持体の後口部側の端部と上翼板との間隙部が引手の取付軸部の挿通間隙とされているとともに、間隙部には、間隙の閉鎖部材が、上翼板に後口部から案内柱に向け削設して形成した摺動溝に、間隙閉鎖位置と、案内柱側へ寄った間隙開口位置との間を摺動できるよう配設され、常時間隙閉鎖位置を占めるよう摺動溝内に配設した弾性体で付勢されている引手を着脱できるスライダーが開示されている。
【0004】
さらに図6に示すように、スライダー胴体の案内柱の前面に縦方向の溝部を設け、この溝部における下翼板面は閉鎖された底部を形成し、この溝部の下側にコイルスプリング、またその上側に台形のストッパーを遊嵌した後、溝部の前面を蓋板で封鎖固定し、ストッパーの端部を上翼板の後口側から肩口側に向けた片持梁形の引手取付杆の下面に弾接し、肩口側から引手の取付環を嵌挿可能に形成した引手後付けタイプのスライダーが中華民国専利第272386号公報に開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
前項で述べた第1例のスライダーは、引手の保持体が上翼板の前端すなわち肩口側に突設して後口側に延びるように設け、かつ引手取付軸部が通過できる間隙部を後口側に設け、この間隙部を閉鎖および解放する弾性部材を引手保持体に配設し、弾性部材は上翼板の後口側に設けた凹陥部に常時弾接するように設けたものであるから、引手の引張力はもろに弾性部材に作用し、しかも弾性部材は引手保持体内に設けているので、頑丈な引手掛止機構とはいえない。そのうえ引手を横向きで手前へ引寄せると間隙部と引手取付軸部とが略同寸法であるため、円弧状の取付軸部が弾性部材を後口側の外側から弾力に抗して押圧する結果、間隙部から引手取付軸部が脱出する弊害がある。また凹陥部を大きく形成することは後口側の上翼板では無理であり、引手取付軸部の脱出を未然に防ぐ機構が採り難いなど問題点がある。
【0006】
また第2例においても、引手保持体は案内柱の上面から後口側へ向けて突設され、保持体の先端の間隙を閉鎖する閉鎖部材を上翼板の後口側に設けるため、頑丈な閉鎖機構に形成することができない。また引手の引張力はもろに閉鎖部材に作用し、強固な引手掛止機構とはいえない。さらに前例と同様に間隙が引手取付軸部と略同寸法であるから、引手を横向きで手前へ引寄せると、円弧状の取付軸部が閉鎖部材を後口側の外側から弾力に抗して押圧する結果、間隙から引手取付軸部が脱出する弊害があるなど問題点がある。
【0007】
さらに図6に示すスライダーは、胴体の案内柱内に引手取付杆と上翼板との間隙を閉鎖する機構を内設することは、強力な閉鎖機構を完成させることができる利点がある。しかしながら図示のスライダーも前記各例と同様、引手を横向きで手前へ引寄せると円弧状の引手取付環によってストッパーを外側から弾力に抗して押圧する結果、間隙から引手取付環が脱出し引手が脱落するという弊害があり、さらにまたストッパーおよびそれを係止するスプリングを案内柱の前面から嵌入する形態であるとスライダーの自動組立加工には不向きな形態であるなど問題点がある。
【0008】
この発明は、上述の問題点を考慮して発明されたものであり、請求項1記載の発明は、引手取付杆の端部と上翼板との間隙を簡単な機構、例えばストッパーによって閉鎖して引手の後付け操作が簡易に行え、かつ引手の掛止はストッパーではなく取付杆によって行う頑丈なスライダーであり、引手をいかなる形態で操作しても取付杆から脱出させることが故意以外では不可能である。しかもスライダーの自動組立加工に適した形態の引手後付けタイプのスライドファスナー用スライダーを提供することが主たる目的である。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の目的に加え、引手の取付環を円滑かつ容易に後付けすることができ、しかも強力な間隙閉鎖機構を外観上からは分からない胴体の案内柱内に設置し、外観の美しいスライダーに仕上げることができ、スライダー自動組立加工に適した形態の引手後付けタイプのスライドファスナー用スライダーを提供することが目的である。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するため、この発明のうち請求項1記載の発明は、スライダー胴体1における上翼板3の上面に片持梁形の引手取付用の取付杆9を後口11側から肩口10側ヘ向けて突設し、案内柱5の上面に案内柱5の上面に凹陥部14を凹設し、取付杆9の端部と上翼板3上に形成した凹陥部14の表面との間に引手2の取付環23を嵌通することができる間隔の間隙15を設け、案内柱5には上下に貫通する透孔13を設け、この透孔13内に取付杆9の端部に弾接するストッパー18を挿入して間隙15を閉鎖し、引手2の取付環23がストッパー18を押圧して後退させ、間隙15を嵌通させて取付杆9内に嵌装して収容できるように形成した引手後付けタイプのスライドファスナー用スライダーを主な構成とするものである。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の構成に加え、間隙閉鎖機構の主要部であるストッパー18は上面が肩口10側へ向けて下向きに傾斜する状態で透孔13内に配し、スプリング20を介在させて透孔13の底部を支持板21によって固定した引手後付けタイプのスライドファスナー用スライダーである。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の引手後付けタイプのスライドファスナー用スライダーの実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0013】
この発明の引手後付けタイプのスライドファスナー用スライダーは、図1に示すようにスライダー胴体1が上翼板3と下翼板4とを案内柱5によって連結するとともに、上翼板3と下翼板4の両側縁にはファスナーエレメントをガイドするガイドフランジ6が屈設され、ガイド溝7が形成されている。なおガイドフランジ6はファスナーエレメントのタイプによって、一方側の翼板のみに設置することがある。
【0014】
胴体1の上翼板3には、後口11側の上面に肩口10側すなわち案内柱5の上面に向けて片持梁形の引手取付用の取付杆9を突設するとともに、案内柱5には上下に貫通する透孔13を図示のように穿設し、この透孔13の上面に横断面形状が弧状を呈する凹陥部14を凹設し、凹陥部14は図3に示すように取付杆9の先端下面9’を被う形で広い範囲にわたって上翼板3に設けて対面させ、取付杆9と上翼板3との間に間隙15を設ける。
【0015】
この凹陥部14は、引手2の一端に設けられた取付環23の外形に略合致する相似形状、たとえば図3に示すような横断面形状に形成し、取付杆9と凹陥部14の表面とは引手2の取付環23が嵌通できるような間隔に形成する。したがって図3に示すように上翼板3の水平面と取付杆9の先端下面9’との間隔Cは、引手2の取付環23の厚みよりも狭小寸法に形成する。この形態に形成することは、引手2を肩口10側に引張ったとき、常に取付環23はストッパー18でなく取付杆9の内側面に当接することができる。
【0016】
案内柱5に縦設する透孔13の下面には段部16が設けられ、かつ前後に突片17が突設されている。この透孔13内に、上面に斜面19を有する台形のストッパー18を挿入し、ストッパー18の下方にコイル状のスプリング20を介在させて支持板21を段部16に嵌入し、図2に示すように突片17を加締めて固定する。コイル状のスプリング20の上端はストッパー18の下面に設けた円孔22に嵌入固定し、また下端は支持板21に単に弾接させるか、または支持板21の表面に突起を突設して突起に嵌着させてもよい。
【0017】
透孔13に嵌装したストッパー18は、図2に示すように斜面19が肩口10側に向け下向きに傾斜する状態に配し、先端が取付杆9の下面9’に弾接する形態に形成する。そして肩口10側から引手2の取付環23を間隙15を利用して圧入するとストッパー18はスプリング20の弾力に抗して後退し、取付環23は取付杆9に嵌装できる。
【0018】
引手2は図1に示すように一端に弧状の取付環23が形成されているが、この取付環23とストッパー18とは図4に示すように引手2を取付杆9に嵌装しセットしたとき、取付環23のセンターがストッパー18の内側面よりも肩口10側にずれた位置を占める状態に形成するのが、引手2を取付杆9に嵌装後、脱出させることができない条件を満たすことになる。
【0019】
スライダーの胴体1およびストッパー18は、アルミニウム合金、亜鉛合金などの金属をダイキャスト成形手段によって成形し、金属製のコイル状のスプリング20、支持板21とを自動組立加工手段によって組立てる。この形態のスライダーが自動組立加工に適しているのは、ストッパー18、スプリング20、支持板21を一定方向から供給し、そのまま加締加工を行えばよいから、組立工程上有利な形態である。
【0020】
図5に示す引手後付けタイプのスライダーは、胴体1、引手2、ストッパー18、スプリング20、支持板21の全てをポリアミド、ポリアセタール、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレートなどの熱可塑性樹脂を用い、射出成形手段または押出成形手段によって成形し、スライダーを組立てる。
【0021】
この熱可塑性樹脂製のスライダーの態様は前記金属製のスライダーの態様と略同一であるが、異なるところは図示のようにストッパー18、スプリング20および支持板21を一体成形したことである。一体成形された閉鎖部材24は、支持板21の上面に蛇行単板のスプリング20、その端部に台形のストッパー18が形成されている。またスプリング20は蛇行板を前後または左右に併設してもよい。この閉鎖部材24を胴体1の案内柱5に形成された透孔13内に挿入し、ストッパー18の先端が取付杆9に弾接した状態で、支持板21を下翼板4に形成した突片17とを超音波加工によって溶着してスライダーを組立てる。
【0022】
以上、この引手後付けタイプのスライダーの構成について説明したが、このタイプのスライダーはファスナーチェンにスライダーを装着する前、または装着後であってもよいが、スライダー胴体1に各種類の引手2を胴体1に設けた凹陥部14上に形成された間隙15を取付環23が嵌通して、後付け過程で装着するものであり、一旦装着すると通常の使用態様では、引手2は胴体1から脱出させることができないような構成に仕上げた点に特長がある。
【0023】
【発明の効果】
この発明の引手後付けタイプのスライドファスナー用スライダーは、以上説明したとおりの構成であり、この構成によって下記の効果を奏する。
【0024】
この発明のうち請求項1記載の発明は、胴体における上翼板の上面に片持梁形の取付杆を後口側から肩口側へ向けて突設し、案内柱の上面に凹陥部を凹設し、取付杆の端部と凹陥部の表面との間に引手の取付杆が嵌通できる間隔の間隙を設け、案内柱を上下に貫通する透孔を穿設し、透孔内に取付杆の端部に弾接するストッパーを挿入して間隙を閉鎖し、引手の取付環がストッパーを押圧して後退させ、間隙を嵌通して取付杆に嵌装可能に形成したことによって、下記の効果を奏する。
【0025】
胴体における上翼板の後口から肩口へ向けて引手取付杆を設け、取付杆の端部と上翼板に設けた凹陥部との間に引手の取付環を容易に嵌通できる間隙を簡単に設置することができ、しかも間隙を閉鎖させる機構を案内柱を利用して簡単に設置して引手を後付けすることができる。また、引手の後付け操作は、胴体上に設けた凹陥部を利用することによりきわめて簡易かつ円滑に行うことができ、そのうえ凹陥部から嵌装された引手はストッパーでなく取付杆によって掛止され頑丈なスライダーに仕上げることができ、さらに凹陥部は案内柱の上面に形成するから、上翼板の後口側に深さが制限されて設けるのと異なり、凹陥部の大きさは案内柱内であれば自由に許容できる利点があり、従来品に比して性能を向上させる効果がある。
【0026】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加え、ストッパーは上面が肩口側に傾斜する形状で透孔に配し、スプリングを介在させて底部を支持板で固定したことによって、引手の取付環を上翼板と取付杆との間隙を嵌通させることができ、一旦嵌通させると故意以外の操作では引手を取付杆から脱却させることができない。また間隙閉鎖機構は外観上からは分からないので体裁のよいスライダーに仕上げ、スライダー自動組立加工に適した形態の引手後付けタイプのスライダーであり、生産性の向上が図れる効果があるなど、この発明が奏する効果はきわめて顕著である。
【図面の簡単な説明】
【図1】引手後付けタイプのスライドファスナー用スライダーの一部破断した分解斜視図である。
【図2】同上スライドファスナー用スライダーの縦断面図である。
【図3】同上スライドファスナー用スライダーの横断面図である。
【図4】同上スライドファスナー用スライダーの一部破断した平面図である。
【図5】引手後付けタイプのスライドファスナー用スライダーの第2実施例の一部破断した分解斜視図である。
【図6】公知の引手後付けタイプのスライドファスナー用スライダーの分解斜視図である。
【符号の説明】
1 胴体
2 引手
3 上翼板
4 下翼板
5 案内柱
9 取付杆
9’ 先端下面(取付杆)
10 肩口
11 後口
13 透孔
14 凹陥部
15 間隙
18 ストッパー
20 スプリング
21 支持板
23 取付環
25 横孔
C 間隔
Claims (2)
- 胴体1における上翼板3の上面に片持梁形の取付杆9を後口11側から肩口10側ヘ向けて突設し、案内柱5の上面に凹陥部14を凹設し、取付杆9の端部と凹陥部14の表面との間に引手2の取付環23が嵌通できる間隔の間隙15を設け、案内柱5を上下に貫通する透孔13を穿設し、透孔13内に取付杆9の端部に弾接するストッパー18を挿入して間隙15を閉鎖し、引手2の取付環23がストッパー18を押圧して後退させ、間隙15を嵌通して取付杆9に嵌装可能に形成したことを特徴とする引手後付けタイプのスライドファスナー用スライダー。
- ストッパー18は上面が肩口10側へ傾斜する形状で透孔13に配し、スプリング20を介在させて底部を支持板21で固定してなる請求項1記載の引手後付けタイプのスライドファスナー用スライダー。
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