JP3609887B2 - 合成皮革及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は,表面強力および剥離強力がきわめて高く、柔軟で、表面仕上げ工程での有機溶剤を使用しない為に作業環境性に優れ、且つ安価に製造できる銀面層付き合成皮革及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、銀面層付の合成皮革の製造方法としては、離型紙上にポリウレタン溶液を塗布し、乾燥してフイルムを形成したあと、該フイルムを編織布又は不織布からなる基材の表面に接着剤で貼り合せ、離型紙を剥離する方法、いわゆる乾式法が一般的に用いられている。また基材の表面に、ポリウレタン溶液を塗布し、湿式凝固又は乾式凝固方法にて多孔質のポリウレタン層を形成し、そのうえに着色剤を含む樹脂溶液を塗布・乾燥して着色層を形成した後、エンボスロールで凹凸模様を形成する方法も一般に用いられている。
【0003】
また特開昭53ー62803号公報には、基材上に形成した合成樹脂層の上に、押出機を用いて合成樹脂溶融物を膜状に押し出し、一体化すると共に表面をエンボスする合成皮革の製造方法が記載されており、また特公平7ー3033号公報には、金属蒸着層にT−ダイから押し出されたポリウレタン溶融体を積層するシートの製造方法が記載されている。また特開平2−307986号公報には、合成繊維布帛の表面にシランカプリング剤をあらかじめ付与しておき、しかる後にその表面に熱可塑性樹脂を溶融押出して布帛に圧着し、布帛と熱可塑性樹脂層との接着強力を向上させる方法が記載されている。
【0004】
【発明を解決しようとする課題】
しかしながら、これら公知の方法では、作業環境を悪化させる有機溶媒が用いられていたり、あるいは引張った時に表面に安っぽい印象を与える基材に基づく凹凸が現れたり、さらに、基材層と表面層との剥離が容易に生じたり、さらに表面層の凝固に長時間を要し、製造工程の速度を高めることができず、結果的に製造コストが高くならざるを得ないという問題点を有している。
本発明は、上記したような問題点を有しない合成皮革及びその製造方法を提供するものであり、すなわち有機溶剤を使用する必要がないことより作業環境を悪化させることがなく、また製造工程の速度を高めることができ、製造コストが低く、そして得られる合成皮革は、引張時に安っぽい凹凸が生じず、従来方法では得られない高級感ある銀面層付きのものであって、さらに層間で剥離が生じにくく合成皮革およびその製造方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、繊維質基材(A)の表面に、気泡を有する熱可塑性エラストマーからなり溶融製膜法により製造された多孔質層(B)を有し、その上に該多孔質層(B)を構成する熱可塑性エラストマーの流動開始温度より20℃以上高い流動開始温度を有する熱可塑性エラストマーからなり溶融製膜法により製造された無孔質層(C)を有し、且つ該無孔質層(C)の表面には凹凸模様が存在している合成皮革であって、好ましくは無孔質層(C)及び多孔質層(B)を構成する熱可塑性エラストマーがポリウレタンである合成皮革である。
【0006】
また本発明は、繊維質基材(A)の表面に、気泡又は気泡発生物質を含有する熱可塑性エラストマー(b)の溶融物を押出機により膜状に押し出し、該樹脂(b)が流動性を有する内に基材(A)の表面に該押出物を押し付けて、基材表面に多孔質層(B)が一体化されたシートを作製し、次に実質的に気泡又は気泡発生物質を含有せず、かつ該樹脂(b)の流動開始温度よりも20℃以上高い流動開始温度を有している熱可塑性エラストマー(c)の溶融物を押出機により膜状に押し出し、該樹脂(c)が流動性を有する内に該多孔質層(B)の表面に押し付け、かつ該樹脂(c)が流動性を有している内に樹脂(c)からなる無孔質層(C)の表面を型押して凹凸模様を形成する合成皮革の製造方法であり、そして好ましくは熱可塑性エラストマー(b)及び(c)がともにポリウレタン樹脂である上記の製造方法である。
【0007】
すなわち本発明は、基本的には、繊維質基材(A)、気泡を有する多孔質エラストマー層(B:中間層と称する場合もある)及び無孔質エラストマー層(C:表面層と称する場合もある)の3層からなる合成皮革であって、しかもこれら(B)層及び(C)層はともに溶融押出により形成されるものであり、したがって従来技術のように有機溶媒を用いる必要がなく、しかも溶融成型であることより、従来技術の湿式凝固法や乾式凝固法と比べて製造工程の速度を格段に高めることができ、したがって製造コストの低い合成皮革が得られることとなる。
しかも本発明の合成皮革においては、繊維質基材(A)と表面の無孔質エラストマー層(C)の間に多孔質エラストマー層(B)が存在していることより、引張時に安っぽい凹凸が生じずに従来方法では得られない高級感ある銀面層付きの合成皮革が得られることとなる。さらに本発明の合成皮革において、無孔質層(C)及び多孔質層(B)を構成する熱可塑性エラストマーがポリウレタンであり、かつ無孔質層(C)を構成するポリウレタンが多孔質層(B)を構成するポリウレタンの流動開始温度より20℃以上高い流動開始温度を有する場合には、無孔質層(C)の積層時に無孔質層(C)の熱により多孔質層(B)の表面が溶融、あるいはそれに近い状態となり、両ポリマーが溶けるかあるいはそれに近い状態となるため、多孔質層(B)と無孔質層(C)の間での層間剥離が生じにくくなる。
【0008】
図1に本発明の合成皮革を製造する方法の代表例を示す。図中、1は繊維質基材(A)、2は多孔質層(B)用の溶融熱可塑性エラストマー、3は多孔質層(B)、4は無孔質層(C)用の溶融熱可塑性エラストマー、5は無孔質層(C)、6は賦形ロール、7はバックロールを示す。
【0009】
以下本発明を詳細に説明する。まず本発明で使用する繊維質基材(A)は、適度な厚み及び充実感を有し、且つ柔軟な風合いを有するシートであれば使用することができ、したがって従来一般の皮革様シートの製造方法に使用されている各種の繊維質基材をそのまま本発明に使用することができる。たとえば、極細繊維又はその束状繊維、通常繊維、天然繊維等からなる絡合不織シート、編織物シート及び又はそのシートの繊維間にバインダーとしてポリウレタン等の高分子弾性体が含有されている繊維質基材が挙げられる。極細繊維束を構成する繊維の細さとしては、好ましくは0.5デニール以下、特に望ましくは0.1デニール以下であり、また極細繊維束のトータルデニールとしては0.5〜10デニールの範囲が好ましい。繊維の種類としては、ナイロン系の繊維やポリエステル系の繊維などが挙げられる。
【0010】
中でも天然皮革にもっとも近い風合いを有する繊維質基材として、極細繊維束からなる不織布中に、高分子弾性体を有する繊維シートが好適例として挙げられる。高分子弾性体としては、従来から皮革様シートの製造に使用されている樹脂であり、ポリウレタン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、ポリアクリル酸系樹脂、ポリアミノ酸系樹脂、シリコン系樹脂やこれらの樹脂の混合物が挙げられ、これら樹脂はもちろん共重合体であってもよい。繊維質基材の少なくとも表面部を構成する高分子弾性体としては、表面仕上げに用いる熱可塑性エラストマーと同種のものが接着性の点で好ましく、特にポリウレタンが強度や天然皮革調の性能が得られる点で好ましい。繊維質基材を構成する繊維と高分子弾性体との量比としては、重量比で90:10〜40:60の範囲が好ましい。
繊維質基材の厚みは、得られた合成皮革の用途により任意に選択でき、特に限定されるものではないが、中間層及び表面層とのバランスの点から好ましくは0.3mm〜3mm、特に好ましくは0.5mm〜2.0mmの範囲である。
【0011】
本発明の多孔質中間層(B)及び無孔質表面層(C)に用いる熱可塑性エラストマーとしては、強度、耐久性および天然皮革調の性能が得られる点で熱可塑性ポリウレタン樹脂が好ましく、そして熱可塑性ポリウレタン樹脂の種類としては、たとえばポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、ポリエステルポリエーテルジオール、ポリラクトンジオール、ポリカーボネートジオールなどの平均分子量500〜3500のポリマージオールから選ばれた少なくとも一種と有機ジイソシアネートと活性水素原子を2個有する鎖伸張剤とを反応させて得られるポリウレタンが挙げられる。これらポリウレタンは、2種以上の異種ポリウレタンを混合したものでもよい。ただし、中間層(B)に用いる熱可塑性ポリウレタンと表面層(C)に用いる樹脂の種類は同じものである方が、相溶性及び接着強力の点で好ましい。
【0012】
次に、中間層(B)のコーティング方法としては、押出機にて加温加圧下で熱可塑性エラストマーのチップ及び発泡剤、必要があれば着色剤及び酸化防止剤を添加したものを溶融混練した後に、Tーダイから溶融状態でフイルム状に押し出して、流動性を有する状態で、繊維質基体表面に押圧固化して発泡コート層を形成させる方法、いわゆる溶融製膜法が用いられる。発泡方法としては、公知の発泡剤による方法が挙げられ、特に限定されない。発泡剤の代表例として、分子量低下を起こす発泡剤(d)とポリウレタンに架橋を促進する発泡剤(e)とがあるが、用途により、それらを単独で使用してもよく、また混合して用いても良い。望ましくは、発泡剤(d)と(e)のそれぞれから少なくとも1種類以上を選び併用する方法であり、この方法により溶融形成発泡に伴うポリウレタンの見掛粘度低下を押さえ、良好な発泡構造物を得ることができる。更に、この方法の場合には、成型発泡シートのポリウレタンの架橋度を適宜調節出来る為、機械的性能、物理的性能、化学的性能の向上が可能となる。
【0013】
発泡剤(d)として、たとえばアゾジカルボンアミド(ADCAと略されている)、4 ,4−オキシビス(ベンゼンスルフォニルヒドラジン)、P−トルエンスルフニルヒドラジン、重炭酸ナトリウム等があり、発泡剤(e)として、例えば、ジニトロソペンタメチレンテトラミンなどがある。
発泡剤の添加量としては、熱可塑性エラストマーに対して0.3〜1.5重量%、好ましくは0.6〜1.0重量%である。
中間層のコート厚みは用途により適宜選べばよく、一般的な好適範囲としては0.01mm〜0.30mmで、より好ましくは0.02mm〜0.15mmの範囲である。また中間層の発泡の程度としては、中間層の20〜80vol%が気泡である程度が好ましく、20vol%より気泡含有率が低い場合には、引張時に安っぽい凹凸が生じることを解消することができず、逆に80vol%より高い場合には、剥離強力が低下し、高級感ある銀面層付きの合成皮革が得られない。好ましくは30〜70vol%の範囲である。
【0014】
中間層(B)に含まれる気泡は、好ましくは発泡剤が気体を発生することにより生じるものである。湿式凝固方法によりポリウレタンを多孔質に凝固させて合成皮革を製造する方法が一般的に用いられているが、この方法により得られる多孔質層の場合には、ポリウレタン溶液を塗布したのち凝固浴に投入してポリウレタンの溶媒と凝固液とを置換して凝固させ、しかも該溶媒を完全にポリウレタン層から除去しない場合には、折角形成した気泡が潰れることとなるため、凝固後に溶媒の完全抽出および乾燥等の工程を必要とし、多孔質層の形成に多くの時間とユーティリティを必要とすることとなり、したがって製造ラインの速度を高めることができず、さらに製造コストも高くならざるを得ないのに対して、本発明の溶融製膜方法を用いると発泡樹脂層を単に冷却するだけで多孔質層が得られることとなるため、ラインスピードを格段に高めることができ、しかも低コストで得られることとなる。
【0015】
中間層(B)の熱可塑性エラストマーとしてポリウレタンを用いることが上記したように本発明において極めて好ましいのであるが、ポリウレタンを用いる場合には、中間層(B)として用いるポリウレタンの選択は、表面層(C)の流動開始温度により決定されるのが好ましい。特に中間層(B)のポリウレタンとしては、流動開始温度が100℃〜180℃、特に130℃〜170℃の範囲内であるものが好ましい。流動開始温度が180℃を越える場合には、表面層(C)のポリウレタンとして流動開始温度が中間層(B)のそれより20℃以上高いポリウレタンを用いるのが中間層(B)と表面層(C)との剥離強度を高めるうえで好ましいため、そのような高流動開始温度のポリウレタンを用いると、得られる合成皮革が堅くなり過ぎて感性の劣る物となる。また中間層(B)のポリウレタンの流動開始温度が100℃未満の場合には、たとえ製品になったとしても、少しの環境変化や製造工程や加工工程での加熱変化により変形が起こり商品としての価値の低いものとなる。
【0016】
もちろん中間層(B)及び表面層(C)として、ポリウレタン以外の熱可塑性エラストマーを用いた場合にも、中間層(B)を構成する熱可塑性エラストマーの流動開始温度は表面層(C)を構成する熱可塑性エラストマーの流動開始温度よりも20℃以上低いのが好ましい。そして中間層(B)を構成する熱可塑性エラストマーと表面層(C)を構成する熱可塑性エラストマーは剥離強度の点で同種のポリマーが好ましい。
【0017】
次に、表面層(C)の成型方法について説明する。表面層(C)には、色調、凹凸模様、表面物性、触感等の品質に関わる項目が多く、用途により、適宜最適条件を選べばよい。表面層(C)の熱可塑性エラストマーの種類については、中間層(B)の熱可塑性エラストマーと同じ種類のものが好ましく、特にポリウレタンを用いる場合には、同種のポリウレタン、すなわちポリウレタンを構成するポリマージオールをポリエステル系、ポリエーテル系、ポリカーボネート系等に分類した場合に、同じ分類に属するポリウレタンが好ましく、特にポリマージオールの繰り返し単位の半数以上、すなわち50モル%以上が同一であるポリマーの組み合わせを用いるのが好ましい。もちろん熱可塑性エラストマーは、各種混合したものでもよく、要するに使用用途により選択すればよい。表面層(C)の流動開始温度は120℃〜220℃、望ましくは150℃〜200℃の範囲である。
【0018】
表面層(C)の成形方法としては、熱可塑性エラストマーのチップに、必要があれば着色剤及び酸化防止剤などを添加して、押出機にて加温加圧下で溶融混練した後に、Tーダイから溶融状態でフイルム状に押出して、流動性を有する状態で、繊維質基体の中間層(B)面上に押圧固化して表面層(C)を形成させる方法が用いられる。表面層(C)としての厚みは、熱可塑性エラストマーの種類や性能などによっても異なるが、一般には皮革様の風合いを有し、且つ表面強度、接着強力および屈曲性等の物性を満足する上で10μm以上400μm以下が好ましく、30μm以上200μm以下がより好ましい。表面層(C)の厚みが薄すぎると同じ色調に着色する場合の顔料濃度(対ポリウレタン)が高くなり、表面物性が低下することとなる。また表面層(C)の厚みが厚すぎると屈曲性が悪くなったり、ゴムライクな風合となり好ましくない。表面層(C)は、その下に存在している中間層(B)と異なり、実質的に気泡を含有していないことが必要であり、中間層(B)のように気泡を含有している場合には、表面の摩耗性や強度、平滑性、色斑等の点で本発明の目的とするものが得られない。
【0019】
表面に凹凸模様又は鏡面模様を形成する方法としては、Tーダイよりフイルム状に溶融押し出しされた表面層(C)用熱可塑性エラストマーが流動性を有する内に、繊維質基体の多孔質層(B)面と賦型ロールの間で表面層(C)用熱可塑性エラストマーを押圧して繊維質基体と接着するとともに表面に賦型する方法と、押圧ロールにより繊維質基体の多孔質層(B)に表面層(C)を接着したあと表面層(C)用熱可塑性エラストマーが流動性を有する内に加熱したエンボスロールで凹凸模様をつける方法があるが、特に限定されるものでない。生産性、すなわち生産速度を高める上からは、賦型ロールで接着と賦型を同時に行う方法が好ましい。本発明で言う賦型ロールとは、表面に鏡面又は凹凸模様のエンボス模様を有するエンボスロールであり、また離型性のエンボスシートと通常のロールを組み合わせたものであってもよい。好ましくは表面に鏡面又は凹凸模様のエンボス模様を有するエンボスロールであり、鏡面模様のエンボスロールを用いた場合には、エナメル調の合成皮革が得られることとなるが、場合によっては得られるエナメル調の表面に、凹凸のエンボスを付与して表面を凹凸模様としてもよい。
【0020】
フイルム状に押し出した熱可塑性エラストマー(c)を、中間層(B)を有する繊維質基材と賦型ロールとの間で押圧する方法としては、あらかじめ熱可塑性エラストマー(c)を、中間層(B)を有する繊維質基材の中間層側上へ押し出した後、賦型ロールと該賦型ロールに対向するバックロールとの間を通して押圧する方法、熱可塑性エラストマー(c)を賦型ロール上へ押し出した後、該賦型ロールと対向するバックロールとの間に中間層(B)を有する繊維質基材を供給して押圧する方法、又は中間層(B)を有する繊維質基材と賦型ロールの間に熱可塑性エラストマーを直接押し出して対向するバックロールで押圧する方法があげられるが、押圧時に熱可塑性エラストマーが流動性を有していればいずれの方法であっても特に大きな違いはない。
【0021】
ロールの材質としては、エンボスロールの場合は金属ロールが用いられる。バックロールとしては金属ロール、弾性体ロールのいずれでもよいが、押圧の安定性の点からは弾性体ロールを用いることが望ましい。押圧する圧力は、熱可塑性エラストマーの流動性、繊維質基材上の多孔質層(B)の構造により異なり一慨に言えないが、一般にゲージ圧が5〜15kg/cm2の範囲を目安に賦型性と接着強力を満足する条件で行えばよい。
表面が賦型された積層体は、実質的に熱可塑性エラストマーの温度が低下して流動性がなくなってから賦型ロールから剥離される。まだ熱可塑性エラストマーが流動性を有する内に剥離すると、凹凸模様あるいは鏡面模様が崩れ、いわゆるシボ流れが発生し、シャープな凹凸模様あるいは極めて平滑な鏡面が得られない。このためにエンボスロールは必要に応じてロール内部に冷却液を循環する構造となっているものや強制的に冷風により剥離点付近を冷却するような構造となっているものが好ましい。
【0022】
以上のようにして本発明の合成皮革は製造されるが、必要により、表面に耐摩耗性や防汚性等を向上させるため、あるいはより深みのある色調を付与するために、樹脂や表面仕上げ剤や着色剤等を付与してもよい。
なお流動開始温度は以下の方法により測定される。
【0023】
【実施例】
次に本発明を具体的に実施例で説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の部及び%は断わりのない限り重量に関するものである。
【0024】
実施例1
細さ2.5デニールのポリエステル繊維からなる絡合不織布にバインダーとしてポリウレタン弾性体を含浸した、厚さ1.3mm、繊維とポリウレタン弾性体との重量比は8:2で、目付455g/m2の繊維質基材を準備した。次に、ポリウレタン(流動開始温度165℃のポリメチルペンタンアジペートポリエステル系ポリウレタン)100部、黒顔料ペレット(顔料濃度20%:樹脂ポリエチレン)30部、発泡剤としてセルマイクー22(三協化成社製品、アゾジカルボンアミド系)0.3部、マルクA(三協化成社製品、ジニトロソペンタメチレンテトラミン系)0.6部を混合して得たポリウレタン組成物を直径25mmの押出機に仕込み、溶融帯温度178℃、ダイス導入部温度180℃、リップ幅0.5mm、ダイ幅300mmでフイルム状に製膜しながら溶融状態で、弾性体バックロールと毛穴シボの凹凸模様を有する金属製エンボスロールの間に通した繊維質基材とエンボスロールの間に供給し、繊維質基材の表面に発泡した50μmの多孔質層付き繊維質基材を得た。多孔質層の気泡含有率は 70vol%であった。
【0025】
次に流動開始温度が高いポリウレタン(流動開始温度190℃のポリメチルペンタンアジペートポリエステル系ポリウレタン:上記多孔質層に用いたポリウレタンとは重合度で異なる)100部、黒顔料ペレット(顔料濃度20%:樹脂ポリエチレン)30部を混合したポリウレタン組成物を、先の押出機及びT−ダイを用いて、溶融帯温度218℃、ダイス導入部温度220℃、リップ幅0.5mm,ダイ幅300mmでフイルム状に製膜しながら溶融状態で、弾性体バックロールと毛穴シボの凹凸模様を有する金属製エンボスロールの間に通した先の多孔質層付き繊維質基材をエンボスロールの間に供給し、ゲージ圧10kg/cm2でコールドプレスして毛穴シボを有する厚さ平均40μmの無孔質表面層を得た。表面層の剥離強力は、10.2kg/25mmであった。また表面強力が強く、引張時に安っぽい凹凸が生じずに感性の良好な皮革様シートを得た。この皮革様シートは製造速度としては、ラインスピード25m/分で安定して製造することができた(このラインスピードを通常の湿式凝固方法で達成するためには極めて長い凝固浴を必要とする)。得られた皮革様シートの物性値について下記の表1に示す。
【0026】
実施例2
平均デニールが0.007デニールの極細繊維が約300本集束したナイロンの極細繊維束の絡合不織布に、ポリウレタン弾性体を含有して厚さ1.3mmの繊維質基材を準備した。この基材の目付は442g/m2で、繊維とポリウレタン弾性体との重量比は60:40であった。
次に、白顔料を20PHR添加したポリウレタン(流動開始温度165℃のポリメチルペンタンアジペートポリエステル系ポリウレタン)100部、 発泡剤としてセルマイクー22(三協化成社製品、アゾジカルボンアミド系)0.30部、 マルクA(三協化成社製品、ジニトロソペンタメチレンテトラミン系)0.60部を混合して得たポリウレタン組成物を直径25mmの押出機に仕込み、溶融帯温度198℃、ダイス導入部温度200℃、リップ幅0.5mm,ダイ幅300mmでフイルム状に製膜しながら溶融状態で、弾性体バックロールと毛穴シボの凹凸模様を有する金属製エンボスロールの間に通した繊維質基材のエンボスロールの間に供給し、繊維質基材の表面に発砲した50μmの多孔質層付き繊維質基材を得た。得られた多孔質層の気泡含有率は70vol%であった。
【0027】
次に流動開始温度が上記多孔質層用のポリウレタンより高い白顔料を50PHR添加したポリウレタン(流動開始温度190℃のポリメチルペンタンアジペートポリエステルポリウレタン:上記多孔質層に用いたポリウレタンとは重合度で異なる)を、先の押出機及びT−ダイを用いて、溶融帯温度218℃、ダイス導入部温度220℃、リップ幅0.5mm,ダイ種幅300mmでフイルム状に製膜しながら溶融状態で、弾性体バックロールと鏡面を有する金属製ロールの間に通した先の多孔質層付き繊維質基材を鏡面ロールの間に供給し、ゲージ圧10kg/cm2でコールドプレスして押圧して中間層が厚さ50μmの多孔質で表面層が厚さ40μmの無孔質層である皮革様シートが得られた。このシートを表面が180℃に加熱した毛穴シボ模様のあるエンボスロールにて型押しすると白のスポーツ靴用皮革様シート物が得られた。このものの表面強力は強く、外観も天然皮革ライクで、多孔質層と表面層との剥離強力は11.3kg/25mmであり、無理に剥離させたものは剥離面が極細繊維の絡合部であった。この皮革様シートは、引張時に安っぽい凹凸が生じずに感性の極めて良好なものであり、高級感を有するものであった。この皮革様シートは製造速度としては、ラインスピード25m/分で安定して製造することができた。得られた皮革様シートの物性値について下記の表1に示す。
【0028】
実施例3
実施例1で表面層に使用した、流動開始温度190℃のポリウレタンを中間の多孔質層に用いて、ポリウレタンに対する添加剤はすべて実施例1と同様にして、試作条件も実施例1と同様にして皮革様シートを作製した。出来た製品については、実施例1のものと比べて若干硬く、表面強度は実施例1と同じレベルであったが、剥離強力は3.6kg/25mmと低く、剥離面はトップ層と中間層の界面で剥離していた。それ以外の点においては実施例1で得られた皮革様シートと殆ど変わらずに優れたものであった。また生産速度においても実施例1のものと同一の速度を採用することができた。得られた皮革様シートの物性値について下記の表1に示す。
【0029】
【表1】
【0030】
【発明の効果】
上記したように、本発明は、基本的には、繊維質基材(A)、独立気泡を有する多孔質エラストマー層(B)及び無孔質エラストマー層(C)の3層からなる合成皮革であって、しかもこれら(B)層及び(C)層はともに溶融押出により形成されるものであり、したがって従来技術のように有機溶媒を用いる必要がなく、しかも溶融成型であることより、従来技術の湿式凝固法や乾式凝固法と比べて製造工程の速度を高めることができ、したがって製造コストの低い合成皮革が得られることとなる。
【0031】
しかも本発明の合成皮革においては繊維質基材(A)と表面の無孔質エラストマー層(C)の間に多孔質エラストマー層(B)が存在していることより、引張時に安っぽい凹凸が生じずに従来方法では得られない高級感ある銀面層付きの合成皮革が得られることとなる。さらに本発明の合成皮革において、無孔質層(C)及び多孔質層(B)を構成する熱可塑性エラストマーがポリウレタンであり、かつ無孔質層(C)を構成するポリウレタンが多孔質層(B)を構成するポリウレタンの流動開始温度より20℃以上高い流動開始温度を有する場合には、無孔質層(C)の積層時に無孔質層(C)の熱により多孔質層(B)の表面が溶融し両ポリマーが溶けるため、多孔質層(B)と無孔質層(C)の間での剥離が生じにくくなる。このようにして得られた本発明の合成皮革は、靴、ブーツの素材として、またバッグや鞄の素材として、さらにカメラケース、ベルト、財布、コート、ブレザー、スカート等の衣料の素材として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の合成皮革を製造することができる代表的な工程図である。
【図2】ポリマーの流動開始温度を算出する図の一例である。
【符号の説明】
1:繊維質基材(A)
2:多孔質層(B)用の溶融熱可塑性エラストマー
3:多孔質層(B)
4:無孔質層(C)用の溶融熱可塑性エラストマー
5:無孔質層(C)
6:賦形ロール
7:バックロール
Claims (4)
- 繊維質基材(A)の表面に、気泡を有する熱可塑性エラストマーからなり溶融製膜法により製造された多孔質層(B)を有し、その上に該多孔質層(B)を構成する熱可塑性エラストマーの流動開始温度より20℃以上高い流動開始温度を有する熱可塑性エラストマーからなり溶融製膜法により製造された無孔質層(C)を有し、且つ該無孔質層(C)の表面には凹凸模様又は鏡面模様が存在している合成皮革。
- 無孔質層(C)及び多孔質層(B)を構成する熱可塑性エラストマーがポリウレタンである請求項1に記載の合成皮革。
- 繊維質基材(A)の表面に、気泡又は気泡発生物質を含有する熱可塑性エラストマー(b)の溶融物を押出機により膜状に押し出し、該樹脂(b)が流動性を有する内に基材(A)表面に該押出物を押し付けて基材表面に多孔質層(B)が一体化されたシートを作製し、次に実質的に気泡又は気泡発生物質を含有せず、かつ該樹脂(b)の流動開始温度よりも20℃以上高い流動開始温度を有している熱可塑性エラストマー(c)の溶融物を押出機により膜状に押し出し、該樹脂(c)が流動性を有する内に該多孔質層(B)の表面に押し付け、かつ該樹脂(c)が流動性を有している内に樹脂(c)からなる無孔質層(C)の表面を型押して凹凸模様又は鏡面模様を形成する合成皮革の製造方法。
- 熱可塑性エラストマー(b)及び(c)がともにポリウレタンである請求項3に記載の合成皮革の製造方法。
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