JP3609675B2 - クラッチ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関等の動力源と変速機との間のトルク伝達を行わせる車両用摩擦クラッチ装置に係り、特に、クラッチディスクやアクチュエータ等の特性の経時変化に適切に対応し得るクラッチ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、この種のクラッチ装置においては、クラッチフェーシング(クラッチディスク)の摩耗に伴ってダイヤフラムスプリングの姿勢が変化するため、クラッチを非係合とする(遮断する)のに必要な操作力(クラッチカバーに対する荷重)が増大する。このため、例えば、特開平5−215150号公報に開示された装置は、クラッチ操作時におけるクラッチカバーに対する荷重(クラッチカバーに固定されたセンサダイヤフラムに対する荷重)に応じてダイヤフラムスプリングの支点高さを変更し、これによりダイヤフラムスプリングの姿勢を修正し、以てクラッチフェーシングの摩耗に伴うクラッチの操作特性の変化を補償するようになっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、この種のクラッチ装置は、ダイヤフラムスプリングとレリーズベアリング間、レリーズベアリングと変速機入力軸間、或いはレリーズフォークとそのピボット運動の支点部間等に摺動部を有している。係る摺動部の摺動抵抗は、クラッチ装置の作動回数(クラッチディスクがフライホイールに対して係合状態から非係合状態に移行する回数、又は非係合状態から係合状態に移行する回数)に応じて変化する。また、クラッチディスクの摩擦係数は使用初期において小さく、その後増大し、所定の大きさとなってほぼ安定する特性を有する。更に、レリーズフォークを押動するアクチュエータ(例えば、電動モータ等)の出力特性も経時変化する。このため、クラッチフェーシングの摩耗が小さく同摩耗の程度が問題とはならない場合、更には、上記従来技術等により摩耗が補償されている場合であっても、クラッチの操作特性(主として応答特性)がクラッチの作動回数に応じて変化するという問題がある。
【0004】
【発明の概要】
本発明は、上記課題に対処すべくなされたものであって、その構成上の特徴は、駆動源の出力軸と一体的に回転するフライホイールに対向配置されるとともに変速機の入力軸方向に移動可能なクラッチディスクと、前記フライホイールに固定されて同フライホイールと一体的に回転するクラッチカバーと、前記変速機の入力軸方向に進退可能になっていて前記クラッチディスクを前記フライホイール側に押圧し、同クラッチディスクを同フライホイールに係合させるための圧着荷重を同クラッチディスクに付与するプレッシャプレートと、前記クラッチカバーに対してリング部材により同リング部材を中心に揺動可能に支持された複数のレバー部材を放射状に備えてなり外周部にて前記プレッシャプレートを押動して同プレッシャプレートに前記圧着荷重を生ぜしめるダイヤフラムスプリングと、前記ダイヤフラムスプリングの中央部近傍の力点部に力を加え、同ダイヤフラムスプリングを変形させることにより前記クラッチディスクと前記フライホイールとを非係合とするレリーズ機構とを備えた車両用クラッチ装置において、前記クラッチディスクが非係合状態から係合状態へ、又はその逆へ移行した回数に応じ、前記ダイヤフラムスプリングのレバー部材と前記変速機の入力軸とのなす角度が直角に近づくように同ダイヤフラムスプリングの姿勢を変更することにより前記圧着荷重を調整する調整手段を備えたことにある。
【0005】
これによれば、調整手段は、クラッチディスクが非係合状態から係合状態へ、又はその逆へ変化した回数に応じてダイヤフラムスプリングのレバー部材と前記変速機の入力軸とのなす角度が直角に近づくように同ダイヤフラムスプリングの姿勢を変更することにより圧着荷重を変更する。この結果、クラッチディスクを係合状態から非係合状態へと移行させる際の操作荷重を変更することができるので、摺動部の抵抗変化に応じたクラッチ操作が可能となり、クラッチの操作特性を所望のものとすることが可能となる。また、圧着荷重の変更により、同圧着荷重をクラッチディスクの摩擦係数の変化に適した値とすることができる。
【0006】
上記クラッチ装置において、前記レリーズ機構は、前記ダイヤフラムスプリングと前記力点部にて当接するレリーズベアリングと、前記レリーズベアリングを押動するレリーズフォークと、前記レリーズフォークを変位させるアクチュエータとを含むものとすることができる。
【0007】
この場合、使用によるアクチュエータ(例えば、電動モータ)の特性変化をも考慮に入れ、上記圧着荷重(即ち、操作荷重)を変更することが可能であるので、アクチュエータを用いてクラッチ操作を行うクラッチ自動制御装置にあっても、クラッチの操作特性を所望のものとすることが可能となる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明によるクラッチ装置の第1実施形態について図1〜図13を参照しつつ説明する。図1に概略的に示された本クラッチ装置は、駆動源としてのエンジン10と変速機11との間に配設される摩擦クラッチ20と、同クラッチ20を操作するアクチュエータ30と、このアクチュエータ30に駆動指令信号を出力するクラッチ制御回路40とを含んで構成されている。
【0009】
摩擦クラッチ20は、図2にその詳細を示したように、フライホイール21、クラッチカバー22、クラッチディスク23、プレッシャプレート24、ダイヤフラムスプリング25、レリーズベアリング26、レリーズフォーク27、変速機ケース11aに固定されたピボット支持部材28、及びアジャストウエッヂ部材29を主たる構成要素として備えている。なお、プレッシャプレート24、ダイヤフラムスプリング25、及びアジャストウエッヂ部材29等はクラッチカバー22に一体的に組み付けられるため、これらをクラッチカバー組立体(アッセンブリ)と称することがある。
【0010】
フライホイール21は、鋳鉄製の円板であり、エンジン10のクランクシャフト(駆動源の出力軸)10aにボルト固定されていて、同クランクシャフト10aと一体的に回転するようになっている。
【0011】
クラッチカバー22は、略円筒形状であって、円筒部22aと、円筒部22aの内周側に形成されたフランジ部22bと、円筒部22aの内周縁に周方向に等間隔で形成された複数の保持部22cと、円筒部22aから内周側に向けて屈曲されたプレッシャプレートストッパ部22dとを含んでなり、円筒部22aの外周部にてフライホイール21にボルト固定されて同フライホイール21と一体的に回転するようになっている。
【0012】
クラッチディスク23は、エンジン10の動力を変速機11に伝達する摩擦板であって、フライホイール21とプレッシャプレート24との間に配設され、中央部にて変速機11の入力軸とスプライン連結されることにより軸方向に移動できるようになっている。また、クラッチディスク23の外周部の両面には、摩擦材からなるクラッチフェーシング23a,23bがリベットにより張り付け固定されている。
【0013】
プレッシャプレート24は、変速機11の入力軸方向に進退可能になっていて、クラッチディスク23をフライホイール21側に押圧してフライホイール21との間に挟み込み、クラッチディスク23をフライホイール21と係合させて一体的に回転させるものである。このプレッシャプレート24は、クラッチカバー22の回転に伴って回転するように、ストラップ24aにより同クラッチカバー22と連結されている。
【0014】
ストラップ24aは、積層された複数枚の薄い板ばね材から構成されていて、図3にも示したように、その一端がリベットR1によりクラッチカバー22の外周部に固定されるとともに、その他端がリベットR2によりプレッシャプレート24の外周部に設けられた突起部に固定されている。これにより、ストラップ24aは、プレッシャプレート24がフライホイール21から離間し得るように、同プレッシャプレート24に対して軸方向の付勢力を付与している。
【0015】
図2及び図4に示したように、プレッシャプレート24の最外周部には、同プレッシャプレート24がダイヤフラムスプリング25側に所定量だけ移動したときに、クラッチカバー22のプレッシャプレートストッパ部22dと当接する当接部24bが設けられている。この当接部24bの内周側には、ダイヤフラムスプリング25側に向けガイド部24cが立設されている。ガイド部24cの内周側には、図5に示したように、鋸歯状のテーパ部24dがダイヤフラムスプリング25に向けて立設されている。
【0016】
ダイヤフラムスプリング25は、図3にも示したように、クラッチカバー22の円筒部22aの内周に沿って放射状に配置された12本の弾発性の板材25a(以下、「レバー部材25a」と称する。)から構成されている。各レバー部材25aは、図2に示したように、クラッチカバー22の保持部22cに、各レバー部材25aの軸方向両側に配置された一対のリング状の支点部材25b,25cを介して挟持されている。これにより、レバー部材25aは、クラッチカバー22に対しリング部材25b,25cを支点としたピボット運動をすることができるようになっている。
【0017】
上記プレッシャプレート24のテーパ部24dと、上記ダイヤフラムスプリング25の外周部との間には、調整部材(調整手段)の一部としてのアジャストウエッヂ部材29が配設されている。このアジャストウエッヂ部材29は、リング状の部材であって、図5に示したように、テーパ部24dと同一形状のウエッヂ側テーパ部29aを有し、ウエッヂ側テーパ部29aとテーパ部24dとはテーパ面TPにて互いに当接している。また、アジャストウエッヂ部材29のダイヤフラムスプリング25側(図5において上側)は、平坦とされている。このアジャストウエッヂ部材29は、プレッシャプレート24とダイヤフラムスプリング25との間の力の伝達経路を形成し、ダイヤフラムスプリング25に付与される力及び同ダイヤフラムスプリング25が発生する力をプレッシャプレート24に伝達する。
【0018】
アジャストウエッヂ部材29のダイヤフラムスプリング25側の適宜の位置には切り欠き29bが設けられ、プレッシャプレート24のテーパ部24dの適宜の位置には貫通孔24eが設けられている。この切り欠き29bと貫通孔24eの各々には、引張されたコイルスプリングCSの各端部が係止されている。これにより、プレッシャプレート24とアジャストウエッヂ部材29は、テーパ部24dの各頂部とウエッヂ側テーパ部29aの各頂部とが近づく方向に相対回転するように付勢されている。
【0019】
レリーズベアリング26は、変速機11の入力軸の外周を包囲するように変速機ケース11aに支持された支持スリーブ11bに対し摺動可能に支持されていて、レバー部材25aの内端部(ダイヤフラムスプリング25の中央部)をフライホイール21側に押動するための力点部26aを構成している。
【0020】
レリーズフォーク27(フォーク部材)は、アクチュエータ30の作動に応じてレリーズベアリング26を軸方向に摺動させるためのものであって、一端がレリーズベアリング26と当接し、他端がアクチュエータ30のロッド31の先端部と当接部27aにて当接している。また、レリーズフォーク27は、変速機ケース11aに固定されたスプリング27cによりピボット支持部材28に組みつけられていて、同レリーズフォーク27の略中央部27bにて同ピボット支持部材28を支持点として揺動するようになっている。
【0021】
アクチュエータ30は、前述したロッド31を進退移動させるものであって、直流電動モータ32と、この電動モータ32を支持するとともに車両の適宜個所に固定されたハウジング33とを備えている。ハウジング33内には、電動モータ32により回転駆動される回転軸34と、側面視にて扇型をなしハウジング33に揺動可能に支持されたセクタギヤ35と、アシストスプリング36とが収容されている。
【0022】
前記回転軸34にはウオームが形成され、前記セクタギヤ35の円弧部と歯合している。また、ロッド31の基端部(レリーズフォーク27と当接している先端部と反対側の端部)は、セクタギヤ35に回動可能に支持されている。これらにより、電動モータ32が回転するとセクタギヤ35が回転し、ロッド31がハウジング33に対して進退移動するようになっている。
【0023】
前記アシストスプリング36は、セクタギヤ35の揺動範囲内において圧縮されている。アシストスプリング36の一端はハウジング33の後端部に係止され、他端はセクタギヤ35に係止されている。これにより、アシストスプリング36はセクタギヤ35を時計回転方向に付勢し、これにより、ロッド31を右方向へ付勢して電動モータ32によるロッド31の右方向への移動を補助している。
【0024】
再び図1を参照すると、クラッチ制御回路40は、マイクロコンピュータ(CPU)41、インターフェース42〜44、EEPROM45、電源回路46、及び駆動回路47等から構成されている。CPU41は、後述するプログラム及びマップ等を記憶したROM、及びRAMを内蔵している。
【0025】
インターフェース42は、バスを介してCPU41に接続されるとともに、変速機のシフトレバーが操作されたときに生じる荷重(シフトレバー荷重)を検出するシフトレバー荷重センサ51、車速Vを検出する車速センサ52、実際の変速段を検出するギヤ位置センサ53、変速機11の入力軸11aの回転数を検出する変速機入力軸回転数センサ54、及びアクチュエータ30に固定されセクタギヤ35の揺動角度を検出することによりロッド31のストロークSTを検出するストロークセンサ37と接続されていて、CPU41に対し各センサの検出信号を供給するようになっている。
【0026】
インターフェース43は、バスを介してCPU41に接続されるとともに、エンジン制御装置60と双方向の通信が可能となるように接続されている。これにより、クラッチ制御回路40のCPU41は、エンジン制御装置60が入力しているスロットル開度センサ55及びエンジン回転数センサ56の情報を取得し得るようになっている。
【0027】
インターフェース44は、バスを介してCPU41に接続されるとともに、電源回路46のOR回路46aの一入力端子と駆動回路47とに接続されていて、CPU41からの指令に基づきこれらに所定の信号を送出するようになっている。
【0028】
EEPROM45は、電源が供給されていない場合においても、データを記憶・保持する不揮発性のメモリである。このEEPROM45は、バスを介してCPU41に接続されていて、電源供給時においてCPU41から供給されるデータを格納するとともに、同CPU41に記憶しているデータを供給するようになっている。
【0029】
電源回路46は、前記OR回路46aと、同OR回路46aの出力端がベースに接続されたパワートランジスタTrと、定電圧回路46bとを備えている。パワートランジスタTrのコレクタは車両に搭載されたバッテリ70のプラス端子と接続され、エミッタは定電圧回路46bと駆動回路47と接続されていて、パワートランジスタTrがオン状態とされたとき、それぞれに電源を供給するようになっている。定電圧回路46bは、バッテリ電圧を所定の一定電圧(5V)に変換するもので、CPU41、インターフェース42〜44、及びEEPROM45に接続されていて、各々に電源を供給するようになっている。OR回路46aの他の入力端子には、運転者によりオン状態及びオフ状態に操作されるイグニッションスイッチ71の一端が接続されている。このイグニッションスイッチ71の他端は、バッテリ70のプラス端子に接続されている。また、イグニッションスイッチ71の前記一端はインターフェース42にも接続されていて、CPU41はイグニッションスイッチ71の状態を検出し得るようになっている。
【0030】
駆動回路47は、インターフェース44からの指令信号によりオン又はオフする4個のスイッチング素子(図示省略)を内蔵している。これらのスイッチング素子は、周知のブリッジ回路を構成し、選択的に導通状態とされるとともに導通時間が制御され、電動モータ32に所定方向及び同所定方向とは逆方向の任意の大きさの電流を流すようになっている。
【0031】
エンジン制御装置60は、図示しないマイクロコンピュータを主として構成され、エンジン10の燃料噴射量及び点火時期等を制御するものであり、前述したようにエンジン10のスロットル開度TAを検出するスロットル開度センサ55と、同エンジン10の回転数NEを検出するエンジン回転数センサ56等と接続され、それぞれのセンサからの信号を入力・処理するようになっている。
【0032】
次に、上記のように構成されたクラッチ装置の作動について説明する。この装置においては、従来の運転者によるクラッチペダル操作に代わり、アクチュエータ30がクラッチ断接操作を自動的に行う。即ち、断接操作は、CPU41が、例えば(1)車両が走行している状態から停止する状態に移行していることを検出した場合(変速機入力軸回転数が所定値以下に低下した場合)、(2)シフトレバー荷重センサ51の検出する荷重が所定値以上となったことを検出した場合(ドライバーの変速意思が確認された場合)、(3)車両が停止している状態において、アクセルペダルが踏込まれたことを検出した場合、等において実行される。
【0033】
このクラッチ装置において、クラッチを係合状態(接状態)とし、エンジン10の動力を変速機11に伝達する場合の作動について説明すると、先ず、クラッチ制御回路40からの指令信号により駆動回路47が電動モータ32に所定の電流を流し、電動モータ32を回転駆動する。これにより、セクタギヤ35が図2において反時計方向に回転し、ロッド31が左方向に移動する。
【0034】
一方、レリーズベアリング26は、ダイヤフラムスプリング25により、フライホイール21から離間する方向(図2における右方向)に力を受けている。この力は、レリーズベアリング26を介してレリーズフォーク27に伝達されるため、レリーズフォーク27は、ピボット支持部材28を中心として図2において反時計回転方向に回動する力を受けている。従って、ロッド31が図2において左方向に移動すると、レリーズフォーク27は反時計回転方向に回動するとともにダイヤフラムスプリング25の中央部はフライホイール21から離間する方向に移動する。
【0035】
このとき、ダイヤフラムスプリング25はリング部材25b,25cを中心に揺動し(姿勢変化し)、同ダイヤフラムスプリング25の外周部と当接するアジャストウエッヂ部材29をフライホイール21側に押動する。この結果、プレッシャプレート24はテーパ部24dにてフライホイール21に向かう力を受け、クラッチディスク23を同フライホイール21との間で挟み込む。これにより、クラッチディスク23は、フライホイール21と係合して同フライホイール21と一体的に回転するようになり、変速機11にエンジン10の動力を伝達する。
【0036】
次に、クラッチを非係合状態(断状態)とし、エンジン10の動力を変速機11に伝達しない状態とする場合について説明すると、先ず、電動モータ32を回転駆動してセクタギヤ35を図2において時計回転方向に回転させる。これにより、ロッド31が図2において右方向に移動し、レリーズフォーク27に対し当接部27aにて右方向の力を与えるため、同レリーズフォーク27はピボット支持部材28を支持点として図2において時計回転方向に回動し、レリーズベアリング26をフライホイール21側に押動する。
【0037】
このため、ダイヤフラムスプリング25は中央部近傍の力点部26aにてフライホイール21に向う力を受け、リング部材25b,25cを中心に揺動(姿勢変化)するため、ダイヤフラムスプリング25の外周部はフライホイール21から離間する方向に移動し、アジャストウエッヂ部材29を介してプレッシャプレート24をフライホイール21側に押圧していた力は減少する。一方、プレッシャプレート24は、ストラップ24aによりクラッチカバー22と接続されていて、フライホイール21から離間する方向に常に付勢されているため、この付勢力によりクラッチディスク23から僅かに離れる。この結果、クラッチディスク23はフリー状態となって、エンジン10の動力が変速機11に伝達されない状態となる。
【0038】
なお、通常の運転時においてクラッチを非係合状態とする場合においては、図4(A)に示したように、プレッシャプレート24の当接部24bと、クラッチカバー22のプレッシャプレートストッパ部22dとが所定の距離Yを維持して当接することがないように、ロッド31のストロークを値ST0に制御する。
【0039】
ところで、係るクラッチ20を搭載した車両が使用(運転)されると、クラッチディスク23はフライホイール21に対し、係合状態、半係合状態(所謂、半クラッチ状態)、又は、非係合状態に制御される。このような、状態変化が繰り返されると、クラッチの特性、特に、非係合状態から係合状態へ、又はその逆に変化するのに要する時間(以下、この時間を「クラッチの応答時間」といい、クラッチの応答時間で表されるクラッチの性能を「クラッチの応答特性」という。)が変化する。本クラッチ装置は、このようなクラッチ操作特性の経時変化を自動的に補償し、同クラッチ操作特性を所望のものとする。そこで、以下においては、本クラッチ装置による上記補償方法の原理について説明する。
【0040】
先ず、電動モータ32の経時変化について説明すると、電動モータ32の出力トルクは、図6(A)に示したように、モータに流れる電流が同一であっても、クラッチが係合状態から非係合状態に、又は非係合状態から係合状態に移行された回数、即ち、クラッチ作動回数が大きくなるに従って次第に低下する。これは、モータ巻線近傍に生ずるカーボンによりトルク発生に寄与するモータ電流が実質的に減少する等の理由によるものである。
【0041】
また、上記クラッチ装置は、ダイヤフラムスプリング25とレリーズベアリング26間、レリーズベアリング26と支持スリーブ11b間、レリーズフォーク27とピボット支持部材28間、及びロッド31の先端部とレリーズフォーク27間等に摺動部を有している。この摺動部の摺動抵抗は、図6(B)に示したように、クラッチ作動回数が大きくなるに従って次第に増大する。
【0042】
以上に説明した電動モータ32の出力トルクの低下、或いは、摺動部の摺動抵抗の増大は、クラッチの応答時間を増大する要因となる。一方、クラッチの応答時間は、アクチュエータ30がロッド31を移動するために必要な力(操作荷重)を低下させることにより、短縮することができる。このことから、例えば、図6(C)に示したように、前記操作荷重をクラッチの作動回数の増大に従って次第に低下させることにより、クラッチ操作特性を維持する(特に、クラッチの応答時間を一定に維持する)ことが可能となる。
【0043】
また、クラッチフェーシング23a,23bの摩擦材の摩擦係数は、図7(A)に示したように、クラッチ作動回数が小さい場合には小さく、その後、急激に増大し、やがて、ある値にて安定する。今、TCをクラッチディスク23が伝達するトルク(以下、「クラッチトルク」という。)、Aを所定の係数、μを上記摩擦材の摩擦係数、Pをクラッチディスク23がフライホイール21に押圧される圧着荷重とするとき、これらの間には、TC=A×μ×Pの関係が成立する。従って、図7(B)に示したように、摩擦係数μの経時変化に応じ、即ち、クラッチ作動回数に応じ、クラッチディスク23がフライホイール21と完全に係合した状態を維持するのに必要な荷重(以下、「必要圧着荷重」という。)を変更することにより、アクチュエータ30の行う不要な仕事を低減することができる。
【0044】
以上に説明した、電動モータ32の出力特性の変化、摺動部の摺動抵抗の変化、及び摩擦材の摩擦係数の変化等を考慮すると、一般的には、図8のラインL1(実線)、又はラインL2(破線)にて示したように、クラッチ作動回数の増大に伴い圧着荷重をステップ的に、又は連続的に低下させることが好適である。
【0045】
一方、圧着荷重は、図9に示したように、クラッチディスク23が完全係合状態にあるときのダイヤフラムスプリング25の姿勢により変化する。同図9において、ダイヤフラムスプリング25の姿勢が大きい(図9の横軸方向)とは、ダイヤフラムスプリング25がより平坦な形状となる(図2において、ダイヤフラムスプリング25と変速機入力軸とのなす角度が直角に近づく)ことを意味している。また、図9の矢印に沿った変更は、ダイヤフラムスプリング25の荷重を下げることを意味している。
【0046】
そこで、本実施形態においては、クラッチ作動回数をカウント(計測)しておき、カウントしたクラッチ作動回数に応じて望ましい圧着荷重が得られるように、アクチュエータ30に特別な作動をさせて調整部材であるアジャストウエッヂ部材29を回転させ、これによりダイヤフラムスプリング25の姿勢を変更し、以って、上記経時変化を自動的に補償する。以下においては、この補償動作(アジャスト動作)について、図10〜図13に示したルーチンを参照しつつ説明する。
【0047】
図10に示したルーチンは、上記経時変化のアジャスト動作を実行する必要があるか否かを決定するためのルーチンであり、CPU41は、このルーチンを所定時間の経過毎に繰り返し実行している。従って、CPU41は、所定のタイミングとなるとステップ1000から処理を開始し、ステップ1005にてクラッチ20(クラッチディスク23)が完全係合状態となったか否かを判定する。具体的には、CPU41は、ストロークSTが予め定めた所定のストロークSTKIGOと等しいときに完全係合状態と判定し、ストロークSTが前記所定のストロークSTKIGOより大きいとき、完全係合状態でないと判定する。
【0048】
そして、クラッチ20が完全係合状態にある場合には、CPU41はステップ1005にて「Yes」と判定し、ステップ1010に進んで推定演算許可フラグFEKの値を「1」に設定する。この推定演算許可フラグFEKは、後述するステップ1040にて実行されるクラッチストロークを推定する演算を許可するか否かを決定するためのものである。次いで、CPU41はステップ1015に進み、同ステップ1015にて推定クラッチストロークSISTに現在のストロークST(ストロークセンサ37の検出値)を設定し、推定クラッチストロークSISTを初期化する。その後、CPU41はステップ1020に進んで、推定クラッチストローク速度SIVの値を「0」に設定して同推定クラッチストローク速度SIVを初期化し、ステップ1025へと進む。一方、ステップ1005にて、クラッチ20が完全係合状態でないと判定される場合には、CPU41はステップ1025へと直接進む。
【0049】
次いで、CPU41は、ステップ1025にてクラッチ20が非係合状態にあるか否かを判定する。具体的には、CPU41は、ストロークSTが所定のストロークSTKIGOより大きい予め定めた所定のストロークSTHIKGより大きいとき、クラッチ20が非係合状態にあると判定し、その他の場合には非係合状態でないと判定する。そして、クラッチ20が非係合状態にあると、CPU41はステップ1025にて「Yes」と判定してステップ1030に進み、同ステップ1030にて前記推定演算許可フラグFEKの値を「0」に設定する。
【0050】
次いで、CPU41はステップ1035に進み、推定演算許可フラグFEKの値が「1」であるか否かを判定し、「1」である場合にはステップ1035にて図11に詳細を示したクラッチストロークを推定するための推定クラッチストローク演算を実行する。
【0051】
ここで、推定クラッチストローク演算について説明すると、CPU41は、先ず、図11のステップ1100から1105に進み、既に計算されている推定モータ電流値SIIM(初期値は「0」)と、その時点においてクラッチ制御回路60が電動モータ32に通電を指示している電流の大きさ(即ち現時点のモータ電流値)IMとを用い、ステップ1105に記載した計算式に基づいて新たな推定モータ電流値SIIMの演算を行う。なお、ステップ1105に示した式において、Knは0〜1の所定の定数であり、この計算により、推定モータ電流値SIIMは現在のモータ電流値IMに対して時間的に遅らされる(一次遅れが付与される)ことになる。これは、モータのインダクタンスによる電流の遅れを考慮したものであり、これにより、電動モータ32に流れる電流値がより精度よく求められる。
【0052】
次いで、CPU41はステップ1110に進み、クラッチ作動カウンタNの値をEEPROM45から読出す。このクラッチ作動カウンタNは、クラッチ20が係合状態から非係合状態となった回数を示すものであり、具体的には、図12に示したクラッチ作動回数カウントルーチンにより更新される。
【0053】
即ち、CPU41は、所定の短時間の経過毎に図12のルーチンをステップ1200から開始し、ステップ1205に進んでクラッチ20が係合状態から非係合状態になったか否かをクラッチストロークSTの変化から判定する。そして、ステップ1205にて「Yes」と判定される場合には、ステップ1210にてクラッチ作動カウンタNの値を「1」だけ増大し、続くステップ1215にてクラッチ作動カウンタNの値をEEPROM45に格納し、ステップ1295にて本ルーチンを一旦終了する。なお、ステップ1215にてカウンタNの値をEEPROM45に格納するのは、イグニッションスイッチ71がオフ状態とされた場合であっても、それまでのクラッチ作動回数を記憶しておくためである。また、ステップ1205にて「No」と判定される場合には、CPU41はそのままステップ1295に進み、本ルーチンを一旦終了する。以上により、クラッチ作動カウンタNは、クラッチが係合状態から非係合状態へと変更された回数をカウントすることになる。
【0054】
CPU41は、図11のルーチンのステップ1110でクラッチ作動カウンタの値を読出した後、ステップ1115にてクラッチ作動カウンタNの値が所定値N0以下か否かを判定する。そして、ステップ1115にて「Yes」と判定される場合には、CPU41はステップ1120に進み、同ステップ1120に示したクラッチ負荷マップ1と、その時点で得られている推定クラッチストロークSIST(前回の推定クラッチストロークSIST)とからクラッチ負荷CLを決定する。
【0055】
なお、推定クラッチストロークSISTは、後述のステップ1140にて更新されるが、推定演算許可フラグFEKの値が「0」から「1」に変更された後に初めてステップ1120が実行される場合には、前述のステップ1015により、実際のストロークSTと等しくなっている。また、クラッチ負荷CLとは、ストロークSTが所定の値のときに、電動モータ32(アクチュエータ30)に加わるべきものと設計上決定された理想の負荷であり、ステップ1120にて使用されるクラッチ負荷マップ1は、クラッチ作動回数が所定値N0以下の場合において、クラッチストロークSTと理想とするクラッチ負荷CLとの関係を予め定めたものである。
【0056】
一方、クラッチ作動回数Nが所定値N0より大きい場合には、CPU41はステップ1115にて「No」と判定しステップ1125へと進み、同ステップ1125に示したクラッチ負荷マップ2と、その時点で得られている推定クラッチストロークSIST(前回の推定クラッチストロークSIST)とからクラッチ負荷CLを決定する。クラッチ負荷マップ2は、クラッチ作動回数が所定値N0より大きい場合において、クラッチストロークSTと理想とするクラッチ負荷CLとの関係を予め定めたものであり、同一の推定クラッチストロークSISTに対するクラッチ負荷CLは、クラッチ負荷マップ1よりも小さくなるように設定されている。
【0057】
CPU41は、上記ステップ1120、又はステップ1125にてクラッチ負荷CLを決定すると、ステップ1130に進んで推定クラッチストローク加速度SIACCを算出する。即ち、推定モータ電流値SIIMに所定の定数KTを乗じた値からクラッチ負荷CLを減算した値を、新たな推定クラッチストローク加速度SIACCに設定する。ここで、電動モータ32の出力トルクが同電動モータ32に流れる電流値に比例することから、推定モータ電流値SIIMに所定の定数KTを乗じた値は、同電動モータ32がロッド31を進退させる力を表す。従って、この値からクラッチ負荷CLを減じた値、即ち、ステップ1130にて求められる推定クラッチストローク加速度SIACCは、ロッド31に加わっている力と比例する値であり、従って、クラッチストロークSTの加速度を推定した値となる。
【0058】
次いで、CPU41はステップ1135に進み、推定クラッチストローク加速度SIACCを擬似的に積分して、推定クラッチストローク速度SIVを求める。具体的には、上記推定クラッチストローク加速度SIACCに本ルーチンの実行周期tを乗じた値(t・SIACC)を、既に求められている推定クラッチストローク速度SIVに加え、その結果を新たな推定クラッチストローク速度SIVとして設定する。
【0059】
次いで、CPU41はステップ1140に進み、推定クラッチストローク速度SIVを擬似的に積分して、推定クラッチストロークSISTを求める。具体的には、上記推定クラッチストローク速度SIVに本ルーチンの実行周期tを乗じた値(t・SIV)を、既に求められている推定クラッチストロークSISTに加え、その結果を新たな推定クラッチストローク速度SISTとして設定する。そして、CPU41はステップ1195に進み、本ルーチンを一旦終了する。以上により、クラッチ作動回数Nに応じ、電動モータ32の電流値IMに基づいて、理想(目標)とされるクラッチストローク(推定クラッチストロークSIST)が決定される。
【0060】
CPU41は、上記推定クラッチストロークSISTの演算を実行した後、図10のステップ1045に進み、同ステップ1045にて推定クラッチストロークSISTと実際のクラッチストロークSTとの差が、所定の閾値ΔS以上か否かを判定する。そして、同ステップ1045にて「Yes」と判定される場合は、経時変化が進み、所定の電流を流しても実際のストロークが理想とするストロークと大きく離れていることを意味し、従って、経時変化に対するアジャスト動作を実行する必要があるため、CPU41はステップ1050に進んでアジャスト動作要求フラグFADJの値を「1」に設定し、ステップ1095に進んで本ルーチンを一旦終了する。一方、ステップ1045にて「No」と判定される場合には、経時変化に対するアジャスト動作を実行する必要はないので、ステップ1095に直接進んで、本ルーチンを一旦終了する。以上により、アジャスト動作を実行する必要があるか否かが判定され、その結果がアジャスト動作要求フラグFADJの値に反映される。
【0061】
次に、アジャスト動作を実際に実行する際の作動について、図13に示したルーチンを参照しつつ説明する。CPU41は、この図13のルーチンについても、所定時間の経過毎に繰り返し実行している。従って、CPU41は、所定のタイミングとなるとステップ1300から処理を開始し、ステップ1305以降に進む。ステップ1305〜1320は、アジャスト動作の実行条件が成立しているか否かを判定するためのステップである。
【0062】
ここで、アジャスト動作の実行条件(ステップ1305〜1320)が全て成立しているものと仮定して説明を続けると、CPU41は、ステップ1305にて前述したアジャスト動作要求フラグFADJの値が「1」か否かを判定する。これは、アジャスト動作を実行すべき要求がある場合にのみ、同アジャスト動作を実行するように構成するためのステップである。
【0063】
前述の仮定に従えば、アジャスト動作要求フラグFADJの値は「1」となっているので、CPU41はステップ1305にて「Yes」と判定してステップ1310に進み、同ステップ1310にてクラッチディスク23が非係合状態にあるか否かを判定する。これは、運転状態によりクラッチ20が係合状態に維持されている場合には、アジャスト動作を実行できないからである。
【0064】
前述の仮定に従えば、クラッチディスク23は非係合状態であるので、CPU41はステップ1310にて「Yes」と判定してステップ1315に進み、同ステップ1315にてエンジン回転数NEが、所定の低速側回転数α(例えば、エンジン作動に最低限必要な400rpm)より大きく、且つ所定の高速側回転数β(例えば、エンジン10の振動が大きくなり始める回転数である2000rpm)より小さいか否かを判定する。
【0065】
これは、できるだけエンジンの振動が小さく、クラッチ20が共振等を発生しない場合にのみアジャスト動作を行うことにより、誤調整することがないようにするためである。また、回転数αよりも大きい状態においてのみ、アジャスト動作を行うこととしたのは、所定の変速ギヤが係合されている状態にて車両を駐車する「ギヤ駐車」時に、クラッチディスク23を非係合状態にするアジャスト動作を実行することは好ましくないためであり、エンジン回転数NEが所定回転数α以上であれば、ギヤ駐車状態ではないものと判断できるからである。
【0066】
前述の仮定に従えば、エンジン回転数NEは、低速側回転数αより大きく、高速側回転数βよりも小さいので、CPU41はステップ1315にて「Yes」と判定してステップ1320に進み、同ステップ1320にて車速Vが「0」であるか否かを判定する。これは、車両の走行に伴う振動により誤調整することがないようにするためである。前述の仮定に従えば、車両は停止していて、車速Vは「0」となっているので、CPU41はステップ1320にて「Yes」と判定してステップ1325に進む。
【0067】
CPU41は、ステップ1325にてストロークSTが、ストロークST0に、ストロークSX及びストロークSYを加えた値(ST0+SX+SY)より大きくなっているか否かを判定する。ストロークST0は、前述したように、通常運転時の非係合状態におけるストロークSTである。ストロークSYは、通常運転時の非係合状態においてプレッシャプレート24の当接部24bとクラッチカバー22のプレッシャプレートストッパ部22dとがなす距離Yに相当するストロークである。ストロークSXは、今回のアジャスト動作によりダイヤフラムスプリング25の外周部がプレッシャプレート24の外周部から離間される調整量Xに相当するストロークである。
【0068】
現段階においては、クラッチ20は通常の非係合状態にあるので、ストロークSTはST0と等しく、従って、CPU41はステップ1325にて「No」と判定してステップ1330に進み、同ステップ1330にて電動モータ32の電流値IMをアジャスト用電流値IMADJとする。これにより、ストロークSTは、ステップ1325の判定値(ST0+SX+SY)に次第に近づき始める。その後、CPU41は、ステップ1395に進み、同ステップ1395にて本ルーチンを一旦終了する。
【0069】
以降においても、CPU41は本ルーチンを所定時間の経過毎に実行しているので、ステップ1305〜1320にてアジャスト実行条件が満足されているかをモニターし、ステップ1325にてストロークSTが判定値(ST0+SX+SY)と等しくなったか否かをモニターすることとなる。
【0070】
その後、所定の時間が経過すると、ダイヤフラムスプリング25は、図4(A)に示した状態から図4(B)に示した状態へと姿勢変化する。即ち、ダイヤフラムスプリング25は力点部26aにてフライホイール21に向う力を受け、リング部材25b,25cを中心に揺動(姿勢変化)し、プレッシャプレート24の当接部24bと、クラッチカバー22のプレッシャプレートストッパ部22dとが当接する。
【0071】
この時点においては、ストロークSTは、判定値よりも小さい値(ST+SY)であるので、CPU41はステップ1325にて「No」と判定し、ステップ1330を実行する。このため、電動モータ32には電流値IMADJの電流が継続して流され、ダイヤフラムスプリング25の姿勢は更に変化する。このとき、プレッシャプレート24の当接部24bは、クラッチカバー22のプレッシャプレートストッパ部22dに当接しているため、プレッシャプレート24は、それ以上の移動が規制される。この結果、ダイヤフラムスプリング25の外周端部とプレッシャプレート24のテーパ部24dとの距離が大きくなり、図5に示したようにアジャストウエッヂ部材29がコイルスプリングCSの作用によって回転し、アジャストウエッヂ部材29のテーパ部29aとプレッシャプレート24のテーパ部24dとがより高い部分同士で当接し、これにより同アジャストウエッヂ部材29の平坦部がダイヤフラムスプリング25の外周端部の移動に追従する。
【0072】
そして、所定の時間が経過してストロークSTが判定値(ST0+SX+SY)と等しくなると、CPU41はステップ1325にて「Yes」と判定し、ステップ1335に進んでアジャスト動作要求フラグFADJの値を「0」に設定し、ステップ1395に進んで本ルーチンを一旦終了する。これにより、アジャスト動作が完了するとともに、以降においては、各運転状態に応じた電流が電動モータ32に通電され、適切なクラッチ制御が実行されるようになる。
【0073】
以上の作動により、ダイヤフラムスプリング25とプレッシャプレート24との距離は調整量Xだけ大きくなる(図4(C)参照)。この結果、ダイヤフラム姿勢が変化し、図9の矢印にて示したように、クラッチディスク23の圧着荷重(従って、クラッチ20の操作荷重)が変更され、これによりクラッチ(の操作特性の)の経時変化が補償される。
【0074】
次に、図13に示したルーチンの実行時に、アジャスト動作の実行条件(ステップ1305〜1320)の何れかが不成立である場合について説明すると、CPU41は、ステップ1305〜1320の何れかにおいて「No」と判定し、ステップ1395に進んで本ルーチンを一旦終了する。そして、以降においては、各運転状態に応じた電流が電動モータ32に通電され、適切なクラッチ制御が実行される。
【0075】
以上に説明したように、第1実施形態によれば、クラッチの作動回数に応じて、ダイヤフラムスプリング25の姿勢が変更され、これによりクラッチの操作荷重、及び圧着荷重が理想的に制御される。この結果、クラッチの操作特性が良好に維持されるとともに、必要以上の負荷がアクチュエータ30に加わることがなく、消費電力の低減やアクチュエータ30の耐久性向上が達成される。
【0076】
次に、本発明によるクラッチ装置の第2実施形態について図14〜図21を参照しつつ説明する。第2実施形態に係るクラッチは、プレッシャプレート24の外周部と、ダイヤフラムスプリング25の外周部との間に配設されるアジャスト機構(調整手段、調整部材)のみが第1実施形態と相違するため、以下において第1実施形態と同一部材には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0077】
第2実施形態においては、プレッシャプレート24の外周部にリング状のテーパ部材81が固定されていて、これにより、テーパ部材81が有する鋸歯状の複数のテーパ部81aがダイヤフラムスプリング25に向けて形成される(図19参照)。また、上記テーパ部81aとダイヤフラムスプリング25の外周部との間には、調整手段の一部としてのアジャストウエッヂ部材82が配設されている。
【0078】
このアジャストウエッヂ部材82は、リング状の部材であって、テーパ部材81により、同テーパ部材81と同軸回転可能に保持されている。また、アジャストウェッヂ部材82は、テーパ部81aと同一形状のウエッヂ側テーパ部82aを有していて、図17に特に示したように、ウエッヂ側テーパ部82aとテーパ部81aとはテーパ面TP1にて互いに当接している。なお、アジャストウエッヂ部材82のダイヤフラムスプリング25側は平坦とされている。
【0079】
図17に示したように、アジャストウエッヂ部材82のダイヤフラムスプリング25側の適宜の位置には切り欠き82bが設けられ、プレッシャプレート24に固定されたテーパ部材81の適宜の位置には係止部81bが設けられていて、切り欠き82bと係止部81bの各々には、引張されたコイルスプリングCS1の各端部が係止されている。これにより、プレッシャプレート24(テーパ部材81)とアジャストウエッヂ部材82は、テーパ部81aの各頂部とウエッヂ側テーパ部82aの各頂部とが近づく方向に相対回転するように付勢されている。
【0080】
アジャストウエッヂ部材82の外周側面には、アジャストラック83が組み付け固定されている。このアジャストラック83には、プレッシャプレート24側からダイヤフラムスプリング25に向けて起立する第1鋸歯83a(又は等間隔に配置される三角状の歯)がアジャストウエッヂ部材82の周方向に延設されるとともに、この第1鋸歯83aと対向すると共に半ピッチだけ位相が異なる(ずれた)第2鋸歯83bが形成されている。
【0081】
プレッシャプレート24の適宜位置には、上面が開放した円筒部材84が固定されていて、この円筒部材84に対し底面が開放した中空円筒状のアジャストピニオン85が摺動可能に支持されている。円筒部材84とアジャストピニオン85の間にはコイルスプリング86が配設されている。また、アジャストラック83の第1,第2鋸歯83a,83bの間にはアジャストピニオン85の側面に複数個形成された歯85aが配置され、第1,第2鋸歯83a,83bと歯85aが噛合(係止)するようになっている(図19、図21参照)。
【0082】
次に、第2実施形態に係るクラッチ装置の作動について説明する。通常の運転時においては、第1実施形態と同様に、図示を省略したアクチュエータがロッドを退避させると、ダイヤフラムスプリング25の中央部はフライホイール21から離間する方向に移動する。このとき、ダイヤフラムスプリング25はリング部材25b,25cを中心に揺動し(姿勢変化し)、アジャストウエッヂ部材82をフライホイール21側に押動する。この結果、プレッシャプレート24はテーパ部材81を介してフライホイール21に向かう力を受け、クラッチディスク23を同フライホイール21との間で挟み込む。これにより、クラッチディスク23は、フライホイール21と係合して一体的に回転するようになり、変速機11にエンジン10の動力が伝達される。
【0083】
この通常運転時のクラッチ係合状態においては、図18に示したように、アジャストピニオン85の上面85bとクラッチカバー22とは当接しないようになっている。このため、図21(A)に概念的に示したように、アジャストピニオン85の歯85aとアジャストラック83の第2鋸歯83bとの噛合状態は維持され、アジャストウエッヂ部材82はプレッシャプレート24に対し相対回転しない。
【0084】
次に、クラッチを非係合状態とし、エンジン10の動力を変速機11に伝達しない状態とする場合について説明する。この場合には、図示しない電動モータを回転駆動してロッドを前進させ、図示しないレリーズベアリングをフライホイール21側に押動する。
【0085】
このため、ダイヤフラムスプリング25は中央部近傍位置の力点部26aにてフライホイール21に向う力を受け、リング部材25b,25cを中心に揺動(姿勢変化)するため、ダイヤフラムスプリング25の外周部はフライホイール21から離間する方向に移動し、アジャストウエッヂ部材82を介してプレッシャプレート24をフライホイール21側に押圧していた力は減少する。一方、プレッシャプレート24は、ストラップ24aによりクラッチカバー22と接続されていて、フライホイール21から離間する方向に常に付勢されているため、この付勢力によりクラッチディスク23から僅かに離れる。この結果、クラッチディスク23はフリー状態となって、エンジン10の動力が変速機11に伝達されない状態となる。
【0086】
この通常運転時のクラッチ非係合状態においては、アジャストピニオン85の上面85bとクラッチカバー22とが当接し、スプリング86が僅かに圧縮される程度にアクチュエータのロッドのストロークを制御しておく。これにより、図21(B)に概念的に示したように、アジャストピニオン85の歯85aとアジャストラック83の第2鋸歯83bとの噛合状態は維持され、アジャストウエッヂ部材82はプレッシャプレート24に対し相対回転しない。なお、図18に示したように、通常運転時の非係合状態においても、アジャストピニオン85の上面85bとクラッチカバー22との間に僅かな間隙Zが維持されるようにロッドのストロークを制御してもよい。この場合には、通常運転時におけるクラッチ断接操作において、アジャストピニオン85と円筒部材84との摺動が発生しないので、両者の頻繁な摺動による摩耗を低減することができる。
【0087】
次に、クラッチ装置の経時変化を補償するためのアジャスト動作について、第1実施形態の図13のルーチンに代わる図20のルーチンを参照しつつ説明すると、図20のルーチンは図13のルーチンのステップ1325をステップ2025に置換した点においてのみ図13のルーチンと異なっている。従って、以下、図20に示した各ステップのうち図13に示した各ステップと同一のステップについては図13と同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。なお、第2実施形態においても、図10〜図12のルーチンが所定時間の経過毎に実行されていて、これによりアジャスト動作要求フラグFADJの操作がなされるとともに、クラッチ作動回数Nがカウントされる。
【0088】
CPU41は、所定のタイミングにて図20のルーチンをステップ2000から開始する。この時点において、アジャスト動作を許容する条件が成立していると、CPU41は、ステップ1305〜1320の全てのステップにて「Yes」と判定してステップ2025に進み、同ステップ2025にてロッドのストロークSTが所定の閾値L0より大きくなったか否かを判定する。
【0089】
この閾値L0は、通常の運転時におけるクラッチ非係合時のストロークより十分に大きく設定してあるため、ステップ1305〜1320の条件が始めて成立してステップ2025に至った場合には、ストロークSTは所定の閾値L0より小さい。このため、CPU41は同ステップ2025にて「No」と判定してステップ1330に進み、電動モータ32に流れる電流IMを十分に大きな所定の電流IMADJに設定し、ステップ2095にて本ルーチンを一旦終了する。
【0090】
以降においては、所定時間の経過毎にステップ1305〜1320、及びステップ2025が繰り返し実行され、アジャスト動作許可条件(ステップ1305〜1320)が成立しているか否かがモニタされるとともに、ステップ2025にてストロークSTが閾値L0より大きくなったか否かがモニタされる。そして、ストロークSTが閾値L0に至る前に、アジャスト動作許可条件が不成立となると、CPU41はステップ1305〜1320の何れかのステップにて「No」と判定し、ステップ2095に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0091】
一方、アジャスト動作許可条件の成立が継続すると、電動モータ32の電流の大きさは値IMADJに維持される。このため、ダイヤフラムスプリング25は姿勢変化を続け、所定の時間が経過するとアジャストピニオン85の上面85bとクラッチカバー22とが当接し、その時点以降は同アジャストピニオン85の移動が規制される。しかしながら、プレッシャプレート24はクラッチカバー22との間に設けられたストラップ24aによりフライホイール21から離間する方向に付勢されているので、スプリング86の力に抗して更に移動する。
【0092】
この結果、アジャストラック83とアジャストピニオン85の相対位置の変化が開始し、この相対位置の変化量が所定量以上となると図21(C)に示したようにアジャストピニオン85の歯85aと第2鋸歯83bとの噛合が解除される。このため、アジャストウエッヂ部材82は、コイルスプリングCS1の付勢力によりプレッシャプレート24(テーパ部材81)に対して回転する。但し、この状態においては、アジャストピニオン85の歯85aと第1鋸歯83aとが噛合し得る位置関係にあるので、アジャストウエッヂ部材82の回転は、アジャストピニオン85の歯85aと第1鋸歯83aとが噛合した時点で規制される。以上の動作により、テーパ部81aとウエッヂ側テーパ部82aとの当接位置が第1鋸歯83aと第2鋸歯83bの半ピッチ分だけ変化する。
【0093】
この後、所定の時間が経過してストロークSTが閾値L0よりも大きくなると、CPU41はステップ2025にて「Yes」と判定してステップ1335に進み、アジャスト動作要求フラグFADJの値を「0」に設定し、ステップ2095にて本ルーチンを一旦終了する。
【0094】
その後、図示しない他のルーチンの実行により、クラッチディスク23が通常の非係合位置へと戻されると、アジャストラック83とアジャストピニオン85の相対位置が通常の状態に復帰する。従って、アジャストピニオン85の歯85aと第1鋸歯83aとの噛合が解除されるため、アジャストウエッヂ部材82は、コイルスプリングCS1の付勢力によりプレッシャプレート24(テーパ部材81)に対して再び回転する。そして、この回転は、アジャストピニオン85の歯85aと第2鋸歯83bとが噛合した時点で規制されるため、テーパ部81aとウエッヂ側テーパ部82aとの当接位置が第1鋸歯83aと第2鋸歯83bの半ピッチ分だけ更に変化する。以上により、通常運転時におけるダイヤフラムスプリング25の姿勢が修正され、クラッチの操作荷重、圧着荷重がクラッチ作動回数に応じた適した値となる。
【0095】
以上説明したように、第2実施形態においては、経時変化の補償が必要となった場合(アジャスト動作要求フラグFADJの値が「1」となった場合)、一度のアジャスト動作にて第2鋸歯83bの一ピッチ分に応じた量だけプレッシャプレート24の外周部とダイヤフラムスプリング25の外周部との距離が増大され、ダイヤフラムスプリング25の姿勢が変更され、これによりクラッチ装置の経時変化補償がなされる。また、第2実施形態においては、第1鋸歯83aと第2鋸歯83b及び歯85aとの係合により、アジャストウエッヂ部材82の回転を規制しているので、通常の運転時に調整量が変化することが確実に回避され、常に適正な状態でクラッチの断接がなされ得る。更に、第2実施形態においては、閾値L0を十分に大きな所定量とすることができるため、プレッシャプレート24とダイヤフラムスプリング25との距離を調整量Xだけ精度良く大きくさせる必要がある第1実施形態に比較して、より容易にアジャスト動作を達成することができる。
【0096】
以上のように、本発明に基づくクラッチ装置によれば、クラッチ作動回数に応じてダイヤフラムスプリング25の姿勢が調整され、電動モータ32の出力特性変化、各摺動部の抵抗変化、及びクラッチフェーシング23a,23bの摩擦係数μの変化等が補償され、常に望ましいクラッチの操作特性を維持することができる。また、このようなアジャスト動作を、クラッチカバー等が車両の振動の影響を受けることの少ない任意の時期において行うように構成しているので、ダイヤフラムスプリング25の姿勢を過度に変更してしまう可能性を低減することができる。
【0097】
なお、本発明の範囲内において種々の変形例が採用可能であり、例えば、上記電動モータ32を使用したアクチュエータ30に代え、電磁バルブ等を使用して油圧を制御し、この油圧によりロッド31を進退させる油圧式のアクチュエータ(油圧シリンダ)を採用することもできる。また、上記第1,第2実施形態においては、車両の振動によりクラッチカバーが共振することの可能性が小さい場合にのみ、アクチュエータを作動させ、ダイヤフラムスプリング25の姿勢を補正してアジャスト動作を実行することとしたが、他の任意の条件が成立したときに、必要に応じてダイヤフラムスプリング25の姿勢を制御するようにしてもよい。また、クラッチ制御回路40はアクチュエータ30と一体或いは別体のどちらであってもよい。
【0098】
更に、上記第1,第2実施形態においては、クラッチ作動回数を直接カウントし、これに応じて圧着荷重を変更していたが、クラッチ作動回数を間接的に表す走行距離や運転時間等を計測し、これらに応じて圧着荷重を変更してもよい。また、上記第1,第2実施形態においては、クラッチ作動回数の増大に応じて圧着荷重を低下させたが、図8のラインL3(一点鎖線)のように、クラッチ作動回数(カウンタNの値)が所定値に達するまでは圧着荷重を次第に低下させ、その時点以降は逆に圧着荷重を増大させるように圧着荷重を変更してもよい。
【0099】
なお、この場合には、クラッチ作動回数(カウンタNの値)が所定値に達した時点にて上記圧着荷重の変更(即ち、調整部材を使用したダイヤフラムスプリング25の姿勢変更)を中止し、それ以降はクラッチフェーシング23a,23bの摩耗進行に伴って、係合時におけるダイヤフラムスプリング25の姿勢が自動的に変化することで、上記圧着荷重の変更を行わせる。このようにすれば、クラッチ作動回数が大きくなるに従い、クラッチの応答時間が長くなることから、運転者にクラッチフェーシング23の摩耗が進行していることを認知させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるクラッチ装置の概略を示す全体図である。
【図2】図1に示したクラッチの概略断面図である。
【図3】図1に示したクラッチの正面図である。
【図4】図1に示したクラッチの作動を説明するための図である。
【図5】図1に示したクラッチ(調整部材)の作動を説明するための図である。
【図6】(A)は図1に示した電動モータの出力特性の経時変化を示した図、(B)はクラッチの摺動部の摺動抵抗の経時変化を示した図、(C)は電動モータ及び摺動部の経時変化を考慮した場合に、クラッチ性能を維持するために必要な操作荷重を示した図である。
【図7】(A)は図1に示したクラッチフェーシングの摩擦材の摩擦係数の経時変化を示した図、(B)は摩擦材の経時変化を考慮した場合に、必要とされる圧着荷重を示した図である。
【図8】クラッチ作動回数に対して理想とする圧着荷重を示した図である。
【図9】ダイヤフラムスプリングの姿勢に対する圧着荷重の変化を示した図である。
【図10】図1に示したCPUが実行するプログラムを示す図である。
【図11】図1に示したCPUが実行するプログラムを示す図である。
【図12】図1に示したCPUが実行するプログラムを示す図である。
【図13】図1に示したCPUが実行するプログラムを示す図である。
【図14】本発明による第2実施形態に係るクラッチの概略断面図である。
【図15】図14に示したクラッチの正面図である。
【図16】図14に示したクラッチの調整部材の側面図である。
【図17】図14に示したクラッチのプレッシャプレート及び調整部材の斜視図である。
【図18】図14に示したクラッチの調整部材近傍の拡大図である。
【図19】図14に示したクラッチのプレッシャプレート及び調整部材の組立図である。
【図20】本発明の第2実施形態に係るCPUが実行するプログラムを示すフローチャートである。
【図21】図14に示したクラッチの作動を説明するための図である。
【符号の説明】
10…エンジン、11…変速機、20…摩擦クラッチ、21…フライホイール、22…クラッチカバー、23…クラッチディスク、24…プレッシャプレート、25…ダイヤフラムスプリング、26…レリーズベアリング、27…レリーズフォーク、28…ピボット支持部材、29…アジャストウエッヂ部材、30…アクチュエータ、32…直流電動モータ、37…ストロークセンサ、40…クラッチ制御回路、41…CPU。
Claims (2)
- 駆動源の出力軸と一体的に回転するフライホイールに対向配置されるとともに変速機の入力軸方向に移動可能なクラッチディスクと、
前記フライホイールに固定されて同フライホイールと一体的に回転するクラッチカバーと、
前記変速機の入力軸方向に進退可能になっていて前記クラッチディスクを前記フライホイール側に押圧し、同クラッチディスクを同フライホイールに係合させるための圧着荷重を同クラッチディスクに付与するプレッシャプレートと、
前記クラッチカバーに対してリング部材により同リング部材を中心に揺動可能に支持された複数のレバー部材を放射状に備えてなり外周部にて前記プレッシャプレートを押動して同プレッシャプレートに前記圧着荷重を生ぜしめるダイヤフラムスプリングと、
前記ダイヤフラムスプリングの中央部近傍の力点部に力を加え、同ダイヤフラムスプリングを変形させることにより前記クラッチディスクと前記フライホイールとを非係合とするレリーズ機構とを備えた車両用クラッチ装置において、
前記クラッチディスクが非係合状態から係合状態へ、又はその逆へ移行した回数に応じ、前記ダイヤフラムスプリングのレバー部材と前記変速機の入力軸とのなす角度が直角に近づくように同ダイヤフラムスプリングの姿勢を変更することにより前記圧着荷重を調整する調整手段を備えたことを特徴とするクラッチ装置。 - 前記レリーズ機構は、前記ダイヤフラムスプリングと前記力点部にて当接するレリーズベアリングと、前記レリーズベアリングを押動するレリーズフォークと、前記レリーズフォークを変位させるアクチュエータとを含む請求項1に記載のクラッチ装置。
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