JP3608457B2 - 木質調成形体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自然な木質感を有する木質調成形体に関する。
【0002】
【従来の技術】
合成樹脂と天然樹脂からなる複合材料を成形することにより得られる木質系成形体は、従来、例えば特開平8−142016号公報に記載されているように、チップ等の木片を解繊機等により解繊して得られた木質繊維に合成樹脂を添加し、これを加熱圧縮成形により成形することにより製造されている。この木質系成形体は、風合い、触感を木材に近づけた合成木材として、木材の代用用途に用いられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このような従来の木質系成形体は、木質繊維が成形体内にランダムに存在しており、表面意匠性が乏しい、すなわち天然木材に似た木目を表面に再現することが困難であり、従って自動車の内装品、電気製品のキャビネット及び家具等において芯材としてのみ用いられていた。そして表面に天然木材の木目を表そうとする場合には、塩化ビニルフィルム、メラミンフィルム、上質紙等のような木目模様を印刷した表皮材を表面に設けることが必要であった。しかしながら、このような表皮材では天然木材の風合い、触感を再現することは困難であった。
【0004】
本発明は、このような従来の木質系成形体の問題を解決し、自然な木質感を有する木質調成形体を提供する。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記問題点を解決するために1番目の発明によれば、基材と、この基材上に積層された木質調表皮材からなる木質調成形体において、前記木質調表皮材が木質繊維と光透過性の樹脂から構成されている。
【0006】
また、上記問題点を解決するために2番目の発明によれば、1番目の発明において、前記基材に木目模様が付与されている。
また、上記問題点を解決するために3番目の発明によれば、1又は2番目の発明において、前記木質調表皮材中における木質繊維が、その繊維方向を一方向に配列されている。
また、上記問題点を解決するために4番目の発明によれば、1〜3番目の発明において、前記木質調表皮材中における木質繊維が、その密度を変化させて配置されている。
【0007】
1番目の発明では、木質調表皮材と基材の積層体において、木質調表皮材を構成する樹脂を光透過性とすることにより、表皮材側から見た場合に下の基材が表皮材を通して透けて見ることができる。その結果、表皮材の木目に立体感が強調され、天然の木材に似た外観を与えることができる。さらに、表皮材中の木質繊維の密度を変化させることにより、この密度が低い部分からは下の基材がよく透けて見え、逆に密度の高い部分からはあまり見ることができず、この透過性の差異によって木質感の複雑性を再現することができる。
【0008】
2番目の発明では、基材に木目模様を付与することにより、天然の木材に似た木目を与えることができる。
3番目の発明では、表皮材中の木質繊維の繊維方向を一方向にそろえることにより、さらに天然の木材に似た木目を与えることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明における木質調表皮材は、木質繊維と光透過性の樹脂から構成されている。この木質繊維としては、木材、麻、ヤシ、竹等の天然素材を解繊することにより得られるものを用いることができる。この解繊方法は特に限定されず、従来の方法を用いることができる。例えば、ヒノキ、アカマツ、スギ、ラワン、ブナ等の木材を加圧して蒸煮し、そのままの圧力で機械的にほぐす方法や、蒸煮した後、常圧で機械的にほぐす方法等を用いることができる。
【0010】
樹脂としては、光透過性であり、木質繊維と一体的に結合し、成形体を形成するものであればよく、熱可塑性樹脂、例えば高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソプレン、ポリエステル、ナイロン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート等、並びに熱硬化性樹脂、例えばエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル等を用いることができるが、成形性、加工性等の観点から熱可塑性樹脂が好ましい。
【0011】
この樹脂に木質繊維を混入し、樹脂を固化させることにより木質調表皮材が得られる。この木質調表皮材中の樹脂の含有量は、木質繊維と樹脂の混合物全体の20〜50重量%であることが好ましい。20重量%より少ないと得られる表皮材に十分な結合が得られず、一方50重量%より多いとコストが高くなり、さらに木質調の外観が乏しくなるからである。
【0012】
また、木質調表皮材中の木質繊維は、その繊維方向を一方向にそろえることが好ましい。この木質繊維の繊維方向をそろえるには各種方法を用いることができる。例えば、木質繊維と樹脂とを混合し、加熱圧縮成形により、図1に示すようなブロック状を成形体1を形成する。この圧縮成形の条件は、使用する木質繊維と樹脂、及びこれらの使用量に応じて、ブロック状の成形体が得られるようにする。樹脂として熱可塑性樹脂を用いる場合は、加熱して樹脂を溶融させた状態で圧縮成形を行い、次いで冷却して成形体を成形する。熱硬化性樹脂を用いる場合は、半硬化状態において成形を行う。
【0013】
このように圧縮成形することにより、圧縮成形前には樹脂との混合物にランダムに存在していた木質繊維は、図1に示すように圧縮方向に対して直交方向に配向するようになる。そこで、図2に示すように、このブロック状の成形体を圧縮方向に沿って切断すると、切断面3から見た場合にこの木質繊維が一方向に配向し、繊維方向がそろった表皮材2を得ることができる。
【0014】
また、上記のようにして木質繊維と樹脂からなる複合材料から圧縮成形によりブロック状の成形体1を形成し、これを図3に示すように板厚方向に積層し、こうして得られた積層体を図4に示すように、積層方向に切断して表皮材2を形成してもよい。この表皮材2は、切断面3から見た場合に、木質繊維が一方向に配向しており、さらにブロック状成形体の間の界面5が明確に現れ、木目がより明確になる。
【0015】
さらに、木質繊維として長繊維を用い、この長繊維をその繊維方向をそろえて配列し、かつこの繊維の周囲に樹脂を配して圧縮成形することにより、ブロック状成形体を形成してもよい。この木質繊維の長繊維は、撚糸状の連続繊維の形態であることが好ましく、その直径は0.1 〜1mmであることが好ましい。樹脂としては、上記と同様に、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂共に使用することができる。
【0016】
具体的には、木質繊維の長繊維に樹脂を含浸させておき、この樹脂を含浸させた長繊維をその繊維方向をそろえて束ね、圧縮成形を行う。このように、あらかじめ繊維の方向をそろえてから成形するため、得られる表皮材においては、繊維の配向性が一層向上することになり、木目がより明確になる。
【0017】
樹脂として熱可塑性樹脂を用いる場合、この熱可塑性樹脂を長繊維として用いることが好ましい。すなわち、図5に示すように、木質繊維の長繊維6と熱可塑性樹脂の長繊維7を束ねる。この際、熱可塑性樹脂の繊維の含有率は、上記と同様に、表皮材全体の20〜50重量%であることが好ましい。
【0018】
次いで、この木質繊維と熱可塑性樹脂繊維の束を、その繊維方向をそろえて成形型に入れ、加熱圧縮する。この際の温度は用いる熱可塑性樹脂によってきまり、すなわち樹脂が溶融するに十分な温度に加熱する。この加熱圧縮により、繊維束中において熱可塑性樹脂は溶融し、木質繊維の間の隙間を埋める。この後、冷却することにより、溶融した熱可塑性樹脂は固化し、表皮材が得られる。この成形において、木質繊維の繊維方向を一方向にそろえて成形しているため、得られた表皮材において木質繊維はその繊維方向が一方向に配向されており、表面に天然木材の柾目に似た外観を呈することになる。
【0019】
さらに、この表皮材中において、木質繊維の密度を変化させることが好ましい。例えば上記の表皮材の圧縮成形において、成形型に投入する木質繊維の分布を不均質にすることにより、又は木質繊維の長繊維と樹脂繊維の長繊維の繊維束の形成において木質繊維の分布を不均質にすることにより、得られる表皮材中の木質繊維の密度を変化させることができる。
【0020】
この木質調表皮材を積層させる基材は各種のもの、例えば、樹脂板、樹脂中に木質繊維を混入させたファイバーボード、合板、又は天然木材を用いることができる。この基材は濃色であることが好ましい。また、この基材は木目模様を有していることが好ましい。例えば、基材として天然木材を用いる場合は当然に木目を有しているが、樹脂板を用いる場合には、この表面に木目模様が印刷されたシートを貼り付けることにより木目模様を付与する。このように基材に木目模様を付与することにより、表皮材を通して木目を見ることができ、木質の複雑性を表現することができる。
【0021】
こうして得られた、木質調表皮材2と基材8を、図6に示すように積層し、一体化することにより、本発明の木質調成形体9が得られる。得られた木質調成形体においては、木質調表皮材2を通して基材8が透けて見えるため、表皮材中の木質繊維に立体感が現れ、木質感が向上する。
【0022】
【実施例】
直径10〜30μm 、繊維長20〜30mmの麻繊維を撚ることにより形成された、直径200 〜400 μm の撚糸を一方向に配列させるため、150mm ×200mm 、板厚3mmの鋼板の長手方向に巻き付けた。この巻付けは、繊維の厚さが約1mmになるまで行った。この繊維が巻き付けられた鋼板に透明な液状エポキシ樹脂を含浸させた後、加熱圧縮成形によって厚さが0.5mm になるように圧縮し、樹脂を硬化させ、次いで鋼板から成形体を取り出した。
【0023】
得られた成形体、すなわち本発明における表皮材は光透過性であり、図7に示すように、繊維が配向しており、緻密な凹凸を有している。この成形体を、図8に示すような木目模様を表面に有する基材(木質繊維を接着剤で固めたファイバーボード)上に接着した。得られた木質調成形体は、図9に示すように、木目の複雑な模様を有している。
【0024】
【発明の効果】
基材と木質調表皮材からなる本発明の木質調成形体は、表皮材が光透過性であるため、下の基材が透けて見え、木質の複雑性を再現することができる。さらに、基材に木目模様を与え、さらに表皮材中の木質繊維を一方向に配向させ、木質繊維の密度を変化させることにより、さらに木質の複雑性をより再現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】木質繊維と樹脂から形成したブロック状成形体の略図である。
【図2】図1のブロック状成形体から表皮材を切断する際の略図である。
【図3】木質繊維と樹脂から形成したブロック状成形体を積層する際の略図である。
【図4】図3の積層体から表皮材を切断する際の略図である。
【図5】木質繊維と樹脂繊維の束を示す略図である。
【図6】表皮材と基材を積層させる工程図である。
【図7】得られた表皮材の表面構造を示す図面に代わる写真である。
【図8】木目模様を有する基材の表面構造を示す図面に代わる写真である。
【図9】得られた木質調成形体の表面構造を示す図面に代わる写真である。
【符号の説明】
1…ブロック状成形体
2…木質調表皮材
6…木質繊維
7…熱可塑性樹脂繊維
8…基材
9…木質調成形体
Claims (3)
- 基材と、この基材上に積層された木質調表皮材からなり、前記木質調表皮材が木質繊維と光透過性の樹脂から構成されており、前記木質調表皮材中において木質繊維がその密度を変化させて配置されていることを特徴とする木質調成形体。
- 前記基材が木目模様を有する、請求項1記載の木質調成形体。
- 前記木質調表皮材中において木質繊維が、その繊維方向を一方向に配列されている、請求項1又は2記載の木質調成形体。
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