JP3603610B2 - 非線形誘電体素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば高輝度放電灯(HIDランプ)に組み込まれて高圧パルスを発生するのに用いられる非線形誘電体素子に関し、より詳細には、電極とリード端子との接合部分が改良された非線形誘電体素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、高輝度を実現するランプとして上記HIDランプが用いられている。この種のHIDランプには、高圧ナトリウムランプやメタルハライドランプのように、始動時に1〜4kV程度の高圧パルスを必要とするものがある。そこで、この種のHIDランプでは、高圧パルスを発生させるために、非線形特性を有するコンデンサが組み込まれている。
【0003】
例えば、特公平5−87940号公報には、上記高圧パルスを発生させるための非線形コンデンサが内蔵された高圧放電ランプが開示されている。この先行技術に記載の非線形コンデンサの構造を、図4に示す。
【0004】
コンデンサ51は、チタン酸バリウム系セラミックスよりなるセラミック板52の両面にAgペーストの塗布・焼き付け等により形成される電極53,54を形成した構造を有する。電極53,54の中央には、Ag及び低融点ガラスを含む接合材55a,55bを介してリード端子56,57が接合されている。また、リード端子56,57が引き出されている部分を除いて全体が、ガラスペーストを塗布し、焼き付けることにより形成されたガラス被覆層58により被覆されている。
【0005】
上記従来の非線形コンデンサ51では、金属よりなるリード端子56,57は、Ag及び低融点ガラスを含む接合材55a,55bを介して電極53,54に、それぞれ、接合されていた。すなわち、上記ガラス含有接合材55a,55bを用いて焼付け法によりリード端子56,57が電極53,54に接合されていた。通常、この接合材55a,55bには、接合機能を果たすために比較的多量のガラス成分が含有されている。
【0006】
しかしながら、ガラス含有接合材55a,55bを用いる場合、含有されているガラス成分が多すぎると、接合に際しての焼付け時にガラス成分がセラミック板52の粒界に拡散し、非線形特性が劣化し、発生パルス電圧が低下するという問題があった。
【0007】
また、得られた非線形コンデンサ51を例えばHIDランプに組み込んで使用すると、300℃程度の高温に晒されるため、経時によりやはり接合材55a,55b中のガラス成分がセラミック板52に拡散し、さらにパルス電圧が低下したり、セラミック板52の機械的強度が低下するという問題があった。
【0008】
他方、上記のような問題を解消するには、接合材55a,55bに含有されているガラス成分を少なくすればよい。しかしながら、ガラス成分の含有割合が少なくなると、接合強度が低下する。
【0009】
他方、特開平2−177412号公報には、上記のような非線形コンデンサにおいて、接合材中のガラス成分の含有割合を39〜60重量%とすることにより、接合強度をある程度の値に維持しつつ、パルス電圧の低下の抑制が図られる旨が記載されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、接合材中のガラスの割合を制御したとしても、リード端子を焼付けにより接合する際、並びに高温下で使用される際に、やはりガラス成分のセラミックスの粒界への拡散を防止することはできず、パルス電圧の低下や機械的強度の低下を防止することはできなかった。
【0011】
本発明の目的は、従来技術の欠点を解消し、リード端子を接合する際の工程による非線形特性の劣化、すなわちパルス電圧の低下を防止することができ、かつ高温下で使用された場合であっても経時によるパルス電圧の低下や機械的強度の低下が生じ難い、信頼性に優れた非線形誘電体素子を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本願の第1の発明は、電界−電荷特性においてヒステリシスを示す非線形誘電体素子であって、非線形特性を示す誘電体セラミックスよりなるセラミック素体と、前記セラミック素体の第1,第2の面に形成された第1,第2の電極と、前記第1,第2の電極にそれぞれ接合された第1,第2のリード端子とを備え、前記第1,第2のリード端子と第1,第2の電極との接合が、接合材を介して金属元素が固溶することにより果たされていることを特徴とする。
【0013】
上記接合材としては、リード端子及び電極を金属元素が固溶することにより接合し得る適宜の金属もしくは合金を用いることができるが、好ましくは、Ag系金属、より好ましくはAg−Pd系合金またはAg−Au系合金を好適に用いることができる。もっとも、上記接合材は、非線形誘電体素子の第1,第2の電極を構成する材料及びリード端子を構成する材料に応じて適宜選択することができ、これらの材料種に応じて最適の金属もしくは合金を選択すればよい。
【0014】
第1の発明の特定的な局面では、上記リード端子がNiまたはその合金よりなり、リード端子の少なくとも接合材と接触される面がAg系金属によりメッキされており、第1,第2の電極がAg系金属よりなる。この場合、上記接合材として、Ag系金属、Ag−Pd系合金またはAg−Au系合金を好適に用いることができ、リード端子と電極とを強固に接合することができる。
【0015】
本願の第2の発明は、電界−電荷特性においてヒステリシスを示す非線形誘電体素子であって、非線形特性を示す誘電体セラミックスよりなるセラミック素体と、前記セラミック素体の第1,第2の面に形成された第1,第2の電極と、前記第1,第2の電極にそれぞれ接合された第1,第2のリード端子とを備え、前記第1,第2のリード端子と第1,第2の電極との接合が、接合材を介して同じ金属元素が固溶することにより果たされていることを特徴とする。
【0016】
第2の発明においても、上記接合材としては、リード端子の接合材と接触される面の材料、第1,第2の電極及び接合材は、同種の金属同士の固溶により接合し得る適宜の金属もしくは合金により構成することができるが、好ましくは、Ag系金属が用いられる。Ag系金属とは、Agだけでなく、Agを含む合金、例えばAg−Pd系合金もしくはAg−Au系合金などを含むものとする。もっとも、第2の発明において、上記接合材としては、非線形誘電体素子の第1,第2の電極を構成する材料、リード端子構成材料やリード端子表面のメッキ層を構成する材料などにおいて適宜選択するこでき、これらの材料種に応じて最適の金属もしくは合金を選択すればよい。
第2の発明に係る非線形誘電体素子においては、好ましくは、上記金属元素としてAgが用いられる。
【0017】
また、第2の発明の特定的な局面では、前記第1,第2のリード端子がNiまたはその合金からなり、該リード端子の少なくとも接合材と接触される面がAg系金属によりメッキされており、前記第1,第2の電極がAg系金属よりなる。この場合、上記接合材として、Ag系金属を好適に用いることができ、リード端子と電極とを強固に接合することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の非限定的な実施例を挙げることにより、本発明をより詳細に説明する。
【0019】
(第1の参考例)
図1は、本発明の第1の参考例に係る非線形誘電体素子を説明するための断面図である。
【0020】
非線形誘電体素子1は、円板状のセラミック素体2を用いて構成されている。セラミック素体2は、電界−電荷特性においてヒステリシスを示す、いわゆる非線形特性を示す適宜の誘電体セラミックスにより構成される。このような誘電体セラミックスとしては、特に限定されるわけではないが、例えば、チタン酸バリウム系セラミックスを用いることができる。
【0021】
セラミック素体2の上面2a及び下面2b上には、円形状の第1,第2の電極3,4がそれぞれ形成されている。電極3,4の径は、セラミック素体2の径よりも小さくされている。電極3,4は、適宜の導電性材料により構成することができるが、本参考例では、Agを主成分とする導電ペーストを焼き付けることにより形成されている。もっとも、電極3,4は、導電ペーストの焼付けのほか、蒸着、メッキ、もしくはスパッタリングなどの適宜の方法で形成することができる。
【0022】
なお、セラミック素体2及び電極3,4の平面形状は円形に限定されず、四角形等の他の形状であってもよい。
また、セラミック素体2の上面2a及び下面2bにおいて、上記電極3,4の外周縁近傍を被覆するように、リング状の絶縁層5,6が形成されている。絶縁層5,6は、例えばガラスや樹脂、セラミックスなどの適宜の絶縁性材料で構成することができ、該絶縁層5,6の形成により、電極3,4間の絶縁性が高められている。好ましくは、絶縁層5,6は、セラミックスにより構成される。
【0023】
電極3,4の中央には、リード端子7,8が接合されている。リード端子7,8を構成する材料についても、特に限定されるものではなく、例えば、NiもしくはNi系合金、あるいはCuまたはその合金など適宜の金属材料により構成することができる。
【0024】
本参考例では、上記リード端子7,8は、Niよりなり、かつ電極3,4に接合される側に、径の大きなフランジ部7a,8aを有する。フランジ部7a,8aは、リード端子7,8の本体部分よりも径が大きく、従って、電極3,4に対してより大きな面積で接合することを可能としている。
【0025】
本参考例の特徴は、リード端子7,8が、接合材9,10を介して電極3,4にそれぞれ接合されているが、この接合が合金化により果たされていることにある。接合材9,10としては、リード端子7,8を構成する材料及び電極3,4を構成する材料に応じて、すなわちこれらの両者と合金化して接合し得る適宜の材料により構成される。
【0026】
本参考例においては、リード端子7,8がNiからなり、電極3,4がAgを主体とするため、接合材9,10は、Ag−Pd系合金により構成されている。
上記リード端子7,8を接合材9,10を介して電極3,4に合金化により接合するにあたっては、電極3,4とリード端子7,8との間に接合材9,10を介在させ、リード端子7,8を電極3,4側に圧接させた状態で加熱すればよい。
【0027】
本参考例の非線形誘電体素子1では、リード端子7,8が電極3,4に対し接合材9,10を介して合金化により接合されている。従って、接合材9,10がガラス成分を含有しないため、リード端子7,8の接合に際して加熱処理を施したとしても、ガラス成分のセラミック素体内への拡散によるパルス電圧の低下や機械的強度の低下が生じ難い。加えて、例えばHIDランプに組み込まれてパルス電圧を発生させる用途に用いた場合には、300℃程度の高温に晒されるが、接合材9,10がガラス成分を含有しないため、高温使用下におけるセラミック素体内への接合材成分の拡散によるパルス電圧の低下や機械的強度の低下も生じ難い。
【0028】
次に、上記参考例の非線形誘電体素子1の効果を、具体的な実験例に基づき説明する。
直径18mm×厚さ0.7mmのチタン酸バリウムよりなる円板状のセラミック素体2の上面2a及び下面2bに、直径16mmとなるように、Agを主成分とする電極ペーストを塗布し、焼付け、電極3,4を形成した。次に、電極3,4の外周縁近傍を被覆するように、リング状に絶縁層5,6を形成した。
【0029】
しかる後、電極3,4の中央にAg−Pd粉末を主成分とし、ガラスを含有していない金属ペーストを塗布し、接合材9,10とした。次に、接合材9,10上に、Niよりなるリード端子7,8を当接させ、600℃の温度で加熱し、リード端子7,8を電極3,4に対して接合材9,10を介して接合した。このようにして、リード端子7,8を電極3,4に対して接合材9,10を介して合金化により接合し、参考例の非線形誘電体素子1を得た。
【0030】
比較のために、接合材9,10に代えて、Ag粉末を主成分とし、ガラスフリットを10体積%含有する接合材を用い、該接合材を介してリード端子7,8を電極3,4に700℃の温度で加熱して接合したことを除いては、上記参考例と同様にして比較例の非線形誘電体素子を得た。
【0031】
上記のようにして得た参考例及び比較例の非線形誘電体素子について、図2に示す回路を用い、初期状態の発生パルス電圧及び300℃の温度下で5000時間放置した後の発生パルス電圧を測定した。なお、図2において、電源11に直列に400Wの高圧水銀ランプ用安定器12が接続されており、該高圧水銀ランプ用安定器12の後段に、非線形誘電体素子1及びブレークオーバー電圧150Vの半導体スイッチ13が接続されている。また、Vは電圧計を示す。
【0032】
また、上記参考例及び比較例の各非線形誘電体素子について、リード端子7,8の引張強度を引張試験機を用い、初期状態で、及び300℃の温度で5000時間放置した後に測定した。結果を下記の表1に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
表1から明らかなように、比較例の非線形誘電体素子に比べ、参考例の非線形誘電体素子1では、初期状態の機械的強度及びパルス電圧が高いだけでなく、300℃の温度下において5000時間電圧を印加した後においても、十分な機械的強度及びパルス電圧を示すことがわかる。特に、比較例の非線形誘電体素子では、300℃の温度下で5000時間放置した後に、機械的強度及び発生パルス電圧が大きく低下したのに対し、参考例の非線形誘電体素子では、発生パルス電圧がさほど低下しないことがわかる。
【0035】
(第2の参考例)
図3は、本発明の第2の参考例に係る非線形誘電体素子21を示す断面図である。非線形誘電体素子21では、セラミック素体2の上面2a及び下面2bに形成された電極3,4の外周縁近傍だけでなく、中央領域まで覆うように絶縁層5A,6Aが形成されている。絶縁層5A,6Aの中央部においては、リード端子7,8を接合材9,10を介して接合するために、貫通孔が形成されている。その他の点について、第1の参考例の非線形誘電体素子1と同様である。
【0036】
本参考例の非線形誘電体素子21においても、リード端子7,8が、接合材9,10を介して電極3,4に合金化により接合されている。従って、第1の参考例の非線形誘電体素子1と同様に、機械的強度に優れ、かつ大きな発生パルス電圧を得ることができ、さらに経時によるこれらの特性の劣化も生じ難い。
【0037】
なお、上述した第1,第2の参考例では、Agを主体とする電極3,4とNiからなるリード端子7,8との接合材として、Ag−Pdを主成分とし、かつガラスを含まない接合材9,10を用いたが、合金化するための接合材は、Ag−Au系合金などの他の金属や合金であってもよい。また、低温での合金化が必要な場合には、Pdに代えて、Sn、Pb、In、Cdなどの低融点金属やこれらの合金を用いてもよい。もっとも、リード端子7,8の接合強度を高める上では、金属間化合物を生成しないAg−PdやAg−Au系合金を接合材9,10として用いることが好ましい。
【0038】
(第1の実施例)
第1の実施例は、本願の第2の発明についての実施例に相当する。この第1の実施例に係る非線形誘電体素子は、リード端子と第1,第2の電極との接合材を介した接合構造が異なることを除いては、図1に示した第1の参考例に係る非線形誘電体素子と同様に構成されている。従って、その他の点については、第1の参考例の説明を援用することにより、省略する。図1を参照して第1の実施例の非線形誘電体素子の第1の参考例の非線形誘電体素子と異なる点のみを説明する。
【0039】
第1の実施例の非線形誘電体素子では、図1に示すリード端子7,8が、第1,第2の電極3,4に対し、接合材9,10を介して接合されているが、この接合が同種金属の固溶により果たされている。
【0040】
すなわち、第1,第2のリード端子7,8の接合材9,10と接触する面の材料、接合材9,10を構成する材料及び第1,第2の電極3,4を構成する材料が、全て同じ金属元素を含み、接合材9,10を加熱することにより、これらに含有されている同種金属元素が固溶し、接合が果たされる。
【0041】
上記第1,第2のリード端子7,8の接合材9,10と接触される面を構成する材料とは、リード端子7,8の表面にメッキ層などを形成しない場合には、リード端子7,8を構成する材料そのものであり、リード端子7,8の接合材9,10と接触される面にメッキなどにより被覆層を形成した場合には、該被覆層を構成する材料である。
【0042】
また、同一金属元素を含む金属材料とは、純金属に限らず、合金などを含むものとする。一例を挙げると、第1,第2のリード端子7,8をNiで構成し、リード端子7,8の表面にAgよりなるメッキ層を形成した場合、接合材9,10として、Ag系金属が、第1,第2の電極3,4としてAg系金属が用いられる。この場合、加熱により、Agがリード端子7,8と接合材9,10との界面を越えて相手方に移動し、固溶し、リード端子7,8と接合材9,10とが接合される。同様に、接合材9,10と第1,第2の電極3,4との接合界面を越えて、Agが相手方に移動し、固溶し、両者が接合される。
【0043】
なお、Ag系金属とは、Agだけでなく、上述したように、Ag−Pd合金やAg−Au合金などをも含むものとする。
また、上記同種金属としては、Agに限らず、Cu、Ni、Zn、Al、W、Crなどを用いることも可能であり、Agに必ずしも限定されるものではない。
【0044】
上記のように、第1の実施例においても、接合材9,10として、金属材料を用い、金属元素の固溶により接合を果たしているため、ガラス粉末を含有させる必要がない。従って、接合材9,10からセラミック素体2へのガラスの拡散に起因する問題が生じない。また、上記のように固溶により第1,第2のリード端子7,8が第1,第2の電極3,4に対して接合材9,10を介して接合されているので、初期接合強度が高められると共に、後述の実施例から明らかなように、パルス電圧の低下を防止することができる。
【0045】
次に、具体的な実験例につき説明する。
直径18mm×厚さ0.7mmのチタン酸バリウムよりなる円板状のセラミック素体2の上面2a及び下面2bに、直径16mmとなるように、Agを主成分とする電極ペーストを塗布し、焼付け、電極3,4を形成した。次に、電極3,4の外周縁近傍を被覆するように、リング状に絶縁層5,6を形成した。
【0046】
しかる後、電極3,4の中央にAg粉末を主成分とし、ガラスを含有していない金属ペーストを塗布し、接合材9,10とした。次に、接合材9,10上に、Niよりなり、ただし表面がAgによりメッキされているリード端子7,8を当接させ、600℃の温度に加熱し、リード端子7,8を電極3,4に対して接合材9,10を介して接合した。
【0047】
この場合、電極3,4がAgを含有し、接合材9,10がAg粉末を主成分とし、リード端子7,8の表面にAgよりなるメッキ層が形成されているため、リード端子7,8、電極3,4及び接合材9,10は、Ag原子の拡散固溶により接合されている。このようにして、第1の実施例に係る非線形誘電体素子を得た。
【0048】
比較のために、接合材9,10に代えて、Ag粉末を主成分とし、ガラスフリットを4体積%含有する接合材を用い、該接合材を介してリード端子7,8を電極3,4に700℃の温度で加熱して接合したことを除いては、上記実施例と同様にして比較例の非線形誘電体素子を得た。
【0049】
上記のようにして得た実施例及び比較例の非線形誘電体素子について、第1の参考例についての実験例の場合と同様にして、初期状態の発生パルス電圧及び300℃の温度下で5000時間放置した後の発生パルス電圧を測定した。
【0050】
また、上記実施例及び比較例の非線形誘電体素子について、リード端子7,8の引っ張り強度を引っ張り試験機を用い、初期状態で、及び300℃の温度で5000時間放置した後に測定した。結果を下記の表2に示す。
【0051】
【表2】
【0052】
表2から明らかなように、比較例の非線形誘電体素子に比べ、第1の実施例に係る非線形誘電体素子では、初期状態の機械的強度及びパルス電圧が高いだけでなく、300℃の温度下において5000時間電圧を印加した後においても、十分な機械的強度及びパルス電圧を示すことがわかる。特に、比較例の非線形誘電体素子では、300℃の温度下で5000時間放置した後に、機械的強度及び発生パルス電圧が大きく低下したのに対し、本実施例の非線形誘電体素子では、発生パルス電圧がさほど低下しないことがわかる。
【0053】
【発明の効果】
第1の発明に係る非線形誘電体素子では、第1,第2のリード端子が、接合材を介して第1,第2の電極に金属元素が固溶化することによりそれぞれ接合されており、接合材としてガラスを含有するものを用いる必要がない。従って、従来の非線形誘電体素子では、リード端子の接合にガラス含有導電性接合材を用いているため、接合材の焼付けに際し、あるいは高温下での使用に際し、ガラス成分がセラミック素体内の粒界に侵入することにより、パルス電圧が低下したり、セラミック素体の機械的強度が低下したりするという問題があったのに対し、第1の発明に係る非線形誘電体素子では、このような問題が生じない。よって、機械的強度に優れ、大きなパルス電圧を発生させることができ、さらに経時によるこれらの特性の劣化が生じ難い、高性能かつ信頼性に優れた非線形誘電体素子を提供することが可能となる。
【0054】
また、経時による特性の劣化が生じ難いため、非線形誘電体素子を組み込んだ機器、例えばHIDランプの長寿命化を図ることができる。
【0055】
さらに、請求項3に記載の構成では、接合材としてAg−Pd系合金またはAg−Au系合金を用いており、これらは金属元素が固溶化するに際して金属間化合物を生成し難いので、第1,第2のリード端子を第1,第2の電極に対してそれぞれ強固に接合することができる。
【0056】
本願の第2の発明に係る非線形誘電体素子では、第1,第2のリード端子と第1,第2の電極との接合が、接合材を介して同種金属元素の固溶により果たされているので、接合材としてガラスを含有するものを用いる必要がない。従って、従来の非線形誘電体素子では、ガラス成分がセラミック素体内の粒界に侵入することにより、パルス電圧が低下したり、セラミック素体の機械的強度が低下したりするという問題があったのに対し、第2の発明に係る非線形誘電体素子では、このような問題が生じない。よって、機械的強度に優れ、大きなパルス電圧を発生させることができ、さらに経時によるこれらの特性の劣化が生じ難い、高性能であり、かつ信頼性に優れた非線形誘電体素子を提供することが可能となる。
【0057】
また、経時による特性の劣化が生じ難いため、非線形誘電体素子を組み込んだ機器、例えばHIDランプの長寿命化を図ることができる。
また、第2の発明において、同種金属元素としてAgを用いた場合には、Agが拡散固溶することにより、リード端子−接合材−第1,第2の電極が接合されるが、Agが容易に拡散固溶し、これらが強固に一体化されると共に、Agが導電性に優れているため、電気的接続の信頼性も高められる。
【0058】
さらに、リード端子がNiもしくはその合金からなり、少なくとも接合材と接触する表面がAg系金属によりメッキされており、第1,第2の電極がAg系金属よりなる場合には、接合材としてAg系金属を用いることにより、Agの拡散固溶により、第1,第2のリード端子を第1,第2の電極に対して強固に接合することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の参考例に係る非線形誘電体素子を説明するための断面図。
【図2】図1に示した参考例、実施例及び比較例の非線形誘電体素子の特性を評価するための回路を説明するための回路図。
【図3】本発明の第2の参考例に係る非線形誘電体素子を説明するための断面図。
【図4】従来の非線形コンデンサを説明するための断面図。
【符号の説明】
1…非線形誘電体素子
2…セラミック素体
2a,2b…第1,第2の面としての上面及び下面
3,4…第1,第2の電極
5,6…絶縁層
7,8…第1,第2のリード端子
9,10…接合材
21…非線形誘電体素子
Claims (7)
- 電界−電荷特性においてヒステリシスを示す非線形誘電体素子であって、
非線形特性を示す誘電体セラミックスよりなるセラミック素体と、
前記セラミック素体の第1,第2の面に形成された第1,第2の電極と、
前記第1,第2の電極にそれぞれ接合された第1,第2のリード端子とを備え、
前記第1,第2のリード端子と第1,第2の電極との接合が、接合材を介して金属元素が固溶することにより果たされていることを特徴とする、非線形誘電体素子。 - 前記接合材がAg系金属よりなることを特徴とする、請求項1に記載の非線形誘電体素子。
- 前記接合材がAg−Pd系またはAg−Au系合金よりなることを特徴とする、請求項1に記載の非線形誘電体素子。
- 前記第1,第2のリード端子がNiまたはその合金からなり、
該リード端子の少なくとも接合材と接触される面がAg系金属によりメッキされており、
前記第1,第2の電極がAg系金属よりなることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の非線形誘電体素子。 - 電界−電荷特性においてヒステリシスを示す非線形誘電体素子であって、
非線形特性を示す誘電体セラミックスよりなるセラミック素体と、
前記セラミック素体の第1,第2の面に形成された第1,第2の電極と、
前記第1,第2の電極にそれぞれ接合された第1,第2のリード端子とを備え、
前記第1,第2のリード端子と第1,第2の電極との接合が、接合材を介して同じ金属元素が固溶することにより果たされていることを特徴とする、非線形誘電体素子 。 - 前記金属元素がAgである、請求項5に記載の非線形誘電体素子。
- 前記第1,第2のリード端子がNiまたはその合金からなり、該リード端子の少なくとも接合材と接触される面がAg系金属によりメッキされており、
前記第1,第2の電極がAg系金属よりなる、請求項5または6に記載の非線形誘電体素子。
Priority Applications (1)
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- 1998-09-03 JP JP24946598A patent/JP3603610B2/ja not_active Expired - Lifetime
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