JP3597680B2 - 列車の定位置停止支援装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、主として鉄道車両等の列車の運転操作、特に定位置での停止操作を支援する列車の定位置停止支援装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
鉄道車両の運転員が該車両を所定の停止位置へ正確に停止させようとする場合、通常は進行方向の前方あるいは後方にある停止位置を注視し、即座に停止すべき位置を判断し、車両の停止操作を行なわなければならない。
【0003】
この場合の判断は、停止位置目標が1つだけある場合にはその定位置目標を、停止位置目標が複数ある場合にはそれらの中から該当するものを選択してその選択した定位置目標を、また停止位置目標がない場合にはそれに代わる周囲のなんらかの物体を、それぞれ目標対象として行なうため、停止位置を即座に且つ正確に判断するには運転員に細心の注意力を必要とする。
【0004】
また、上記判断は車両の構造、形状と、位置、周辺設備、規模等の立地条件が多様な環境の中で定位置停止が要求される場合に、停止位置とそれまでの距離との確認を即座に正確に行なわなくてはならない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述した如く鉄道車両の運転員が該車両を所定の停止位置へ正確に停止させようとする場合の判断は、運転員の習熟と労力に基づいて細心の注意力と的確な判断力をもって行なわれており、特に停止位置目標が見えにくい場合や停止位置目標が多数あってどれが本来の停止位置目標であるのかが判別しにくい場合などには停止位置が曖昧になる危険があり、運転員に緊張による心理的負担の伴う労働を強いる等の不具合を生じていた。
【0006】
本発明は上記のような実情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、停止するべき位置を列車の運転員に分かりやすい状態で迅速且つ正確に誘導することが可能な列車の定位置停止支援装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、列車の走行路近傍に設置され、該走行路を通過する列車からその列車の車両長の情報を受信する受信手段と、この受信手段で受信した列車の車両長の情報から上記列車の停止位置目標を判断する判断手段と、上記列車の走行路に沿って複数設置され、上記判断手段で得られた上記列車の停止位置目標に対応して1つのみを選択して点灯表示する停止位置目標表示手段とを具備したことを特徴とする。
【0008】
このような構成とすれば、列車の車両長に対応して複数の停止位置目標から適切なもののみを選択して点灯表示させるため、地上側で停止するべき位置を列車の運転員に分かりやすい状態で迅速且つ正確に誘導することができる。
【0010】
請求項2記載の発明は、上記請求項1記載の発明において、上記列車は複数車両で編成され、上記列車の車両長の情報は単体の車両長と編成長とからなることを特徴とする。
【0011】
このような構成とすれば、上記請求項1記載の発明の作用に加えて、例えば鉄道車両などのように複数車両で編成された列車に対しても対応することができる。
【0012】
請求項3記載の発明は、上記請求項1または2記載の発明において、上記受信手段は、上記列車に対してその受信手段の設置位置から予め設定された停止位置までの距離情報を送信する送信機能を有し、上記列車は、上記受信手段に対してその列車の車両長の情報を送信する一方、上記受信手段からの距離情報を受信する情報伝送手段と、上記走行路上での移動量を検出する移動量検出手段と、上記情報伝送手段で得た距離情報と上記移動量検出手段で得た移動量とから上記停止位置目標までの距離を算出する演算手段と、この演算手段で算出した上記停止位置目標までの距離を表示する表示手段とをさらに具備したことを特徴とする。
【0013】
このような構成とすれば、上記請求項1または2記載の発明の作用に加えて、車上側においても上記停止位置目標までの距離を随時正確に表示するため、列車の運転員により分かりやすく停止位置を迅速且つ正確に誘導支援することができる。
【0014】
請求項4記載の発明は、上記請求項3記載の発明において、上記演算手段は、上記移動量検出手段の検出する移動量により当該列車が停止したと判断した際に、上記情報伝送手段で得た距離情報とそれまで上記移動量検出手段で得ていた移動量とからその停止位置が妥当であるか否かを判断する判断機能を有し、上記表示手段は、上記判断機能による判断結果を表示することを特徴とする。
【0015】
このような構成とすれば、上記請求項3記載の発明の作用に加えて、停止位置の妥当性を確認することもでき、運転員の負担をより軽減することができる。
請求項5記載の発明は、上記請求項4記載の発明において、上記列車は、上記判断機能による判断結果に対応した放音を行なう音声出力手段をさらに具備したことを特徴とする。
【0016】
このような構成とすれば、上記請求項4記載の発明の作用に加えて、停止位置の妥当性を音によっても確認することもでき、さらに運転員の負担を軽減することができる。
【0017】
請求項6記載の発明は、上記請求項4記載の発明において、上記列車は、上記判断機能による判断結果を外部機器に出力する外部機器接続手段をさらに具備したことを特徴とする。
このような構成とすれば、上記請求項4記載の発明の作用に加えて、停止位置の妥当性を示す情報を他の外部機器に出力してこの列車の停止状態に関する情報を活用させることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下図面を参照して本発明の実施の一形態を説明する。
図1はその機能回路構成を示すものであり、1は制御対象となる列車に設置された車上伝送制御部、2は上記列車の走行路Rの近傍に設置され、列車の通過時に上記車上伝送制御部1と相互無線伝送を行なう地上伝送制御部である。
【0019】
車上伝送制御部1は、予め設定されているこの列車の車両長及び編成長をデータとして保持し、列車が上記地上伝送制御部2近傍を通過する際に保持したデータを地上伝送制御部2へ送信すると共に、地上伝送制御部2から設置地点距離のデータを受信する。
【0020】
また地上伝送制御部2は、この地上伝送制御部2から停止位置までの予め設定した設置地点距離をデータとして保持し、これを列車通過時にその列車に搭載設置されている車上伝送制御部1へ送信すると共に、当該車上伝送制御部1からその列車の車両長及び編成長を受信する。
【0021】
しかるに、地上伝送制御部2は地上データ処理部4と接続され、この地上データ処理部4は地上伝送制御部2から受けた通過列車の車両長及び編成長データに応じて停止位置目標表示灯5を点灯制御する。この場合、停止位置目標表示灯5が複数ある場合には、それらの中から特に上記地上伝送制御部2から受けた通過列車の車両長及び編成長データに対応する適切なものを判断して該当するもののみを点灯制御する。
【0022】
一方、列車側にあって、車上伝送制御部1は、車上データ処理部3の制御の下に動作するもので、車上データ処理部3は、車上伝送制御部1の他に車軸回転検出部6、表示部7、音声出力部8、及び外部機器接続部9を接続し、これらの動作制御も行なっている。
【0023】
車軸回転検出部6は、列車の車軸の回転数を検出するものであり、その検出信号は上記車上データ処理部3へ送られる。
車上データ処理部3は、車上伝送制御部1により上記地上伝送制御部2から得た停止位置目標までの距離を示す設置地点距離のデータと、車軸回転検出部6の検出信号及び予め設定されている車輪径を用いて算出する当該列車の移動量とを比較し、停止位置目標までの距離を算出するもので、算出した停止位置目標までの距離を表示部7により表示させる。
【0024】
また、列車が停止した際には、車軸回転検出部6の検出信号により車上データ処理部3が停止状態であることを認識し、その時点での距離、すなわち列車の移動量と、列車の車両長及び編成長に適した停止位置目標間での距離とを比較し、その時点での停止位置が妥当であるか否かを判断するもので、その判断結果を表示部7により表示出力させる一方、該判断結果を音声出力部8により音声としても拡声出力する
なお、車上データ処理部3は外部機器接続部9により上記地上伝送制御部2以外の外部機器ともデータの送受を行なうことができるようになっており、列車の停止時に車上データ処理部3から出力されるその停止位置が妥当であるか否かを示す判断結果の情報も外部機器へ出力することが可能となっている。
【0025】
上記のような構成にあって、停止位置目標から予め設定された距離だけ離れた走行路近傍の地点に設置された地上伝送制御部2において、列車の通過によりその列車に搭載設置されている車上伝送制御部1に対して設置地点距離のデータを送信する一方、この車上伝送制御部1からその列車の車両長及び編成長のデータを受信すると、受信したデータは直ちに地上データ処理部4へ転送される。
【0026】
地上データ処理部4は、地上伝送制御部2からの通過列車の車両長及び編成長のデータに応じ、停止位置目標表示灯5が1個しかない場合にはその停止位置目標表示灯5を、また停止位置目標表示灯5が複数ある場合にはそれらの中から特に上記地上伝送制御部2から受けた通過列車の車両長及び編成長データに対応する適切なもののみを判断して点灯制御し、上記列車の停止に際して誘導支援を行なう。
【0027】
また、列車側では、車上データ処理部3が、車軸回転検出部6の検出信号及び予め設定されている車輪径を用いて当該列車の移動量を算出し、算出した移動量と、車上伝送制御部1を介して地上伝送制御部2から得た停止位置目標までの距離を示す設置地点距離のデータとを比較して、停止位置目標までの距離を常時算出するもので、算出した停止位置目標までの距離を具体的に表示部7により表示させ、運転員に対して上記停止位置目標表示灯5の点灯表示と併せて停止位置の誘導支援を行なう。
【0028】
そして、運転員が列車を停止した際には、車上データ処理部3が車軸回転検出部6からの検出信号により停止状態であることを認識し、その時点での距離、すなわち上記地上伝送制御部2を通過してからの列車の移動量と、地上伝送制御部2から受信した設置地点距離、つまりこの列車の車両長及び編成長に適した停止位置目標間での距離とを比較し、その時点での停止位置が妥当であるか否かを判断してその判断結果を表示部7により表示出力させる一方、該判断結果を音声出力部8により所定の音声信号としても拡声出力する
この場合、さらに該判断結果の情報を外部機器接続部9より図示しない外部機器へ出力し、この列車の停止状態に関する情報を活用させるものとしてもよい。
【0029】
このような動作を行なうことで列車の運転員は、停止位置目標表示灯5の点灯表示と表示部7での距離表示による誘導支援を受けながら列車を停止させ、その実際に停止させた位置が妥当であるか否かを、表示部7での表示内容と音声出力部8での音声信号とによって確認することができる。
【0030】
したがって、停止するべき位置を列車の運転員に非常に分かりやすい状態で迅速且つ正確に誘導することができ、運転員に強いている注意力を従来よりも大幅に軽減させ、緊張による心理的負担を緩和させて、運転員の疲労が危険に直結することから、安全性の向上にも寄与することができる。
【0031】
なお、上記車上伝送制御部1を搭載設置した列車を旅客電車とし、地上伝送制御部2を鉄道の駅に設置した場合の具体例について図2により説明する。
図2(a)において、車上伝送制御部21は例えば電車先頭車両Vの下部側に設置し、この車上伝送制御部21と相対向する駅構内の特定位置に地上伝送制御部22を設置する。
【0032】
図2(b)は車上伝送制御部21と地上伝送制御部22のより詳細な設置位置を例示するもので、Wは電車先頭車両Vの車輪、RRは走行路Rである軌道であり、車上伝送制御部21を電車車両V側面の乗車位置より下部側、例えばスカート部に設置すると共に、この車上伝送制御部21と相対向するように、地上伝送制御部22を駅プラットホームHMの電車進入側側面に設置するものとする。
【0033】
この場合、車上伝送制御部21は常時地上伝送制御部22を呼出すコマンドの送信と、地上伝送制御部22からの応答を受ける受信状態を時分割で交互に繰返すもので、車上伝送制御部21が発したコマンドに対して地上伝送制御部22からの応答があった場合に、車上伝送制御部21では応答信号が終了するまで新ためて受信状態を継続し、その受信が終了した時点でデータの誤り訂正を行ない、データに誤りがないか、あるいはあっても訂正し得る範囲内であればその訂正したデータを上記車上データ処理部3に相当する回路部へ送出する。
【0034】
車上伝送制御部21と地上伝送制御部22は、例えば電磁誘導結合方式により各々コイルの電磁誘導が及ぶ範囲で送受信を行なうものとする。この場合、車上伝送制御部21から地上伝送制御部22へコマンド送信を行なうには、比較的大きな送信出力が得られ、その出力レベルで発生ノイズを押さえることができると共に、地上伝送制御部22の受信回路を簡易な構成とすることができる、振幅偏移変調方式を用いるものとする。
【0035】
一方、地上伝送制御部22から車上伝送制御部21へ応答信号の送信を行なうには、送信出力のレベルが低くてもノイズの影響を受けにくい周波数偏移変調方式を用いるものとする。
【0036】
なお、上記図2では、列車としての旅客電車が鉄道の駅構内で停止する場合の装置に適用したものについて説明したが、本発明はこれに限るものではなく、複数の車両からなる列車がある程度限定される走行路を通過し、定位置で停止する必要があるような対象であれば、いずれにも適用可能であることはいうまでもない。
【0037】
また、上記図2における車上伝送制御部21と地上伝送制御部22の設置位置や送受信する信号の変調方式等はこれに限るものではなく、その他の設置位置、変調方式等を用いるものとしてもよいことは勿論である。
その他、本発明はその要旨を逸脱しない範囲内で種々変形して実施することが可能であるものとする。
【0038】
【発明の効果】
請求項1記載の発明によれば、列車の車両長に対応して複数の停止位置目標から適切なもののみを選択して点灯表示させるため、地上側で停止するべき位置を列車の運転員に分かりやすい状態で迅速且つ正確に誘導することができる。
【0039】
請求項2記載の発明によれば、上記請求項1記載の発明の効果に加えて、例えば鉄道車両などのように複数車両で編成された列車に対しても対応することができる。
【0040】
請求項3記載の発明によれば、上記請求項1または2記載の発明の効果に加えて、車上側においても上記停止位置目標までの距離を随時正確に表示するため、列車の運転員により分かりやすく停止位置を迅速且つ正確に誘導支援することができる。
【0041】
請求項4記載の発明によれば、上記請求項3記載の発明の効果に加えて、停止位置の妥当性を確認することもでき、運転員の負担をより軽減することができる。
【0042】
請求項5記載の発明によれば、上記請求項4記載の発明の効果に加えて、停止位置の妥当性を音によっても確認することもでき、さらに運転員の負担を軽減することができる。
【0043】
請求項6記載の発明によれば、上記請求項4記載の発明の効果に加えて、停止位置の妥当性を示す情報を他の外部機器に出力してこの列車の停止状態に関する情報を活用させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態に係る機能回路構成を示すブロック図。
【図2】同実施の形態に係る車上伝送制御部と地上伝送制御部の具体的な設置例を示す図。
【符号の説明】
1,21…車上伝送制御部
2,22…地上伝送制御部
3…車上データ処理部
4…地上データ処理部
5…停止位置目標表示灯
6…車軸回転検出部
7…表示部
8…音声出力部
9…外部機器接続部
Claims (6)
- 列車の走行路近傍に設置され、該走行路を通過する列車からその列車の車両長の情報を受信する受信手段と、
この受信手段で受信した列車の車両長の情報から上記列車の停止位置目標を判断する判断手段と、
上記列車の走行路に沿って複数設置され、上記判断手段で得られた上記列車の停止位置目標に対応して1つのみを選択して点灯表示する停止位置目標表示手段と
を具備したことを特徴とする列車の定位置停止支援装置。 - 上記列車は複数車両で編成され、上記列車の車両長の情報は単体の車両長と編成長とからなることを特徴とする請求項1記載の列車の定位置停止支援装置。
- 上記受信手段は、上記列車に対してその受信手段の設置位置から予め設定された停止位置までの距離情報を送信する送信機能を有し、
上記列車は、上記受信手段に対してその列車の車両長の情報を送信する一方、上記受信手段からの距離情報を受信する情報伝送手段と、
上記走行路上での移動量を検出する移動量検出手段と、
上記情報伝送手段で得た距離情報と上記移動量検出手段で得た移動量とから上記停止位置目標までの距離を算出する演算手段と、
この演算手段で算出した上記停止位置目標までの距離を表示する表示手段と
をさらに具備したことを特徴とする請求項1または2記載の列車の定位置停止支援装置。 - 上記演算手段は、上記移動量検出手段の検出する移動量により当該列車が停止したと判断した際に、上記情報伝送手段で得た距離情報とそれまで上記移動量検出手段で得ていた移動量とからその停止位置が妥当であるか否かを判断する判断機能を有し、
上記表示手段は、上記判断機能による判断結果を表示する
ことを特徴とする請求項3記載の列車の定位置停止支援装置。 - 上記列車は、上記判断機能による判断結果に対応した放音を行なう音声出力手段をさらに具備したことを特徴とする請求項4記載の列車の定位置停止支援装置。
- 上記列車は、上記判断機能による判断結果を外部機器に出力する外部機器接続手段をさらに具備したことを特徴とする請求項4記載の列車の定位置停止支援装置。
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