JP3591122B2 - 耐熱酸化劣化性、耐低温脆化性および耐水二次密着性に優れたポリプロピレン被覆鋼管 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、パイプラインまたは配管用鋼管などに利用される、耐熱酸化劣化性、耐低温脆化性および耐水二次密着性に優れたポリプロピレン被覆鋼管に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、配管内の流体を加温および加圧して配管内の流体効率を向上するために、100 ℃程度の高温環境にて使用可能な被覆鋼管が求められている。
従来、石油、ガスまたは水道用のラインパイプとして用いられているポリエチレン被覆鋼管は、ポリエチレンが高温で軟化するため、その使用可能温度域の上限は60℃程度である。また、高密度ポリエチレンを用いた場合でも、使用可能温度域の上限は70〜80℃程度であり、100 ℃での連続使用は不可能である。現有のポリエチレン被覆鋼管の製造設備で使用できる熱可塑性樹脂の内、コストを考慮すると、ポリプロピレンが最も好ましいが、実際の製品に適用するためには、次の(1) 〜(3) の問題点の全てを克服しなければならない。
【0003】
(1) 耐熱性について、とりわけポリプロピレンを酸素の存在する高温環境下に長期間暴露すると、ポリプロピレンは熱酸化によって劣化する結果、ポリプロピレン層にクラックが発生して防食性が著しく低下する。
(2) ポリプロピレンの結晶化度はポリエチレンより高いために、0℃程度の低温で脆化し、小さな衝撃でポリプロピレン層に割れが生じる。
(3) ポリプロピレンの熱収縮応力はポリエチレンより大きいために、ポリエチレン被覆鋼管と比較すると、ポリプロピレン被覆鋼管の被覆層の接着強度は被覆層を透過した水、酸素及びイオンによって低下しやすく、すなわち、耐水二次密着性に劣り、また鋼面に達する欠陥が被覆層に存在する場合、電気防食に由来する陰極剥離距離が大きく、すなわち、耐陰極剥離性に劣る。
【0004】
上記(1) で触れたポリプロピレンの熱酸化による劣化を防止する手法について、特開平6−143493号および特公平6−15221 号各公報あるいは特開平5−254057号公報等に、それぞれ開示されている。
すなわち、特開平6−143493号および特公平6−15221 号各公報では、特定のフェノール系酸化防止剤とアミン系酸化防止剤をポリプロピレンに配合することにより、ポリプロピレンの熱酸化劣化を防止している。ここでは、高分子量のアミン系酸化防止剤を使用しているため耐抽出性に優れるが、高温乾燥環境では、フェノール系酸化防止剤と硫黄系酸化防止剤を組み合わせた場合と比較すると、熱酸化劣化に対する耐性(以下、耐熱酸化劣化性という)は劣るものであった。
【0005】
また、特開平5−254057号公報では、特定のフェノール系酸化防止剤と硫黄系酸化防止剤とを配合することにより、ポリプロピレンの熱酸化劣化を防止することが提案されている。この提案では、80℃の熱水に5000時間浸漬した後、150 ℃のギアオーブンで加熱したときの、ポリプロピレン層にクラックが発生する時間によって、ポリプロピレン被覆鋼管の耐熱酸化劣化寿命を評価している。
【0006】
ところで、上記した使途におけるポリプロピレン被覆鋼管の温度は100 ℃前後と予想されるから、耐熱酸化劣化性の評価は100 ℃以上で行う必要がある。一方、100 ℃での耐熱試験は極めて長居時間を要するため、140 〜160 ℃程度の高温域で耐熱促進試験を行って、その温度依存性からアーレニウスプロットを用いて、100 ℃での耐熱酸化劣化寿命を推定するのが、一般的である。その際、推定される寿命は、アーレニウスプロットの傾き(活性エネルギー)に大きく依存するため、実使用温度よりも高い特定の一温度において耐熱酸化劣化寿命に優れたポリプロピレンが、実使用温度でも耐熱酸化劣化寿命に優れるとは、必ずしも限らない。すなわち、特開平5−254057号公報の実施例では、150 ℃における耐熱酸化劣化寿命のみを評価して、その温度依存性を全く考慮していないため、ここで規定した酸化防止剤の組み合わせによって、100 ℃前後の実使用温度域で十分な耐熱酸化劣化性が得られることは、必ずしも保証されないのである。
【0007】
上記(2) で触れたポリプロピレンの低温での脆化に対する耐性(以下、耐低温脆化性という)について、特公平1−36784 号および同3−29588 号公報等では、ポリプロピレンの構造と低温脆化温度を規定することにより、耐低温脆化性および高温での押し込み深さを両立させている。なお、押し込み深さとは、DIN 30670 に準拠して、圧力をポリプロピレン被覆鋼管の被覆層に24時間加えた後のへこみ深さであり、その目的は被覆層の表面硬度を測定することにある。
【0008】
しかしながら、ポリプロピレンの構造と低温脆化温度を規定すると、ポリプロピレンの熱収縮応力が変化する結果、有機被覆鋼管の重要な性能である、上記(3) で触れた、耐水二次密着性や耐陰極剥離性に大きな影響を与えることになる。従って、ポリプロピレンの構造と低温脆化温度を規定する際には、耐低温脆化性や耐熱性の他にも、耐水二次密着性や耐陰極剥離性を考慮して、ポリプロピレンの構造を決定する必要がある。ところが、特公平1−36784 号および同3−29588 号公報に開示の技術は、耐水二次密着性や耐陰極剥離性を考慮して、ポリプロピレンの構造を規定していないため、耐低温脆化性に加えて耐水二次密着性や耐陰極剥離性にも優れたポリプロピレン被覆鋼管は得られていない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、この発明は、低温環境における脆化が少なく、また酸素の存在する高温環境において長期にわたって耐熱酸化劣化性に優れ、しかも耐水二次密着性および耐陰極剥離性にも優れる、ポリプロピレン被覆鋼管を提供しようとするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
発明者らは前記問題点を解決すべく鋭意研究を行った結果、変性ポリプロピレンおよびポリプロピレンの構造と、これらに含有されるエチレン−プロピレンの量を規定し、さらに特定の酸化防止剤を組み合わせて配合することにより、上記した種々の特性に優れるポリプロピレン被覆鋼管が得られることを見出し、この発明を完成した。
【0011】
すなわち、この発明は、鋼管の周面上に、エポキシプライマー層、無水マレイン酸変性ポリプロピレン層およびポリプロピレン層を順に積層したポリプロピレン被覆鋼管において、上記無水マレイン酸変性ポリプロピレン層およびポリプロピレン層は、ポリプロピレンに対して5〜40重量%のエチレン−プロピレンラバーを有する、エチレン−プロピレンブロック共重合体であり、さらに無水マレイン酸変性ポリプロピレン層およびポリプロピレン層の各層に、酸化防止剤として、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシルベンジル)ベンゼン、テトラキス−{メチレン−3−(3′,5′−ジ−tert−ブチル−4′−ヒドロキシ−フェニル)プロピオネート}メタン、およびペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオプロピオネート)のそれぞれを、ポリプロピレンに対して0.03〜1.8 重量%にて配合して成ることを特徴とする耐熱性、耐低温脆化性および二次密着性に優れたポリプロピレン被覆鋼管である。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に、この発明を詳細に説明する。
この発明に従うポリプロピレン被覆鋼管は、鋼管の周面上にエポキシプライマー層、無水マレイン酸変性ポリプロピレン層およびポリプロピレン層を順に積層した構造になる。
ここで、エポキシプライマー層を接着する鋼管の周面は、エポキシプライマー層との接着強度を向上させるために、表面を清浄に保つことが重要である。すなわち、鋼管表面の酸化層および油などを除去し、その表面粗さを十点平均粗さでRz:40〜100 μm 程度に仕上げておくことが好ましい。なお、酸化層および油などを除去する手段はとくに限定されないが、例えばスチールブラスト処理またはスチールグリッド処理等が有利に適合する。
【0013】
この鋼管の周面上に形成する、エポキシプライマー層は、二液または一液のエポキシプライマーであり、その膜厚は鋼管の表面粗さを考慮すると、20〜100 μm 程度にすることが好ましい。また、ポリプロピレン被覆鋼管における、耐陰極剥離性および耐水二次密着性をさらに向上させるために、エポキシプライマー中に無機顔料としてリン酸系やクロム酸系の防錆顔料を、主剤であるエポキシ樹脂に対して5〜40重量%添加することができる。さらに、耐陰極剥離性および耐水二次密着性を向上させるために、エポキシプライマー層を鋼管に塗布する前に鋼管表面にクロメート処理を施すことも可能である。
【0014】
次に、エポキシプライマー層上に、無水マレイン変性ポリプロピレン層、そしてポリプロピレン層を形成する。
ここで、無水マレイン変性ポリプロピレン層は、低温での耐脆化性に優れ、かつ高温の弾性率の高いエチレン−プロピレンブロック共重合体の変性物、そしてポリプロピレン層は、同様にエチレン−プロピレンブロック共重合体とすることが肝要である。
【0015】
一般に、ポリオレフィンは結晶性高分子であるが、ポリプロピレンの結晶化度はポリエチレンのそれより高いため、ポリプロピレンはポリエチレンよりも高い、0℃前後の温度で脆化する。ところで、ラインパイプは、主に屋外で使用されるが、寒冷地では施工時に外気温が−20℃に達することもあり、その際、小さな衝撃で鋼管のポリプロピレン層に割れが生じるため、このような環境下ではポリプロピレン被覆鋼管の使用は困難である。
【0016】
ここで、ポリプロピレンの耐低温脆化性を改善するには、ポリプロピレンに一部ポリエチレンを添加することが有利である。このポリエチレンを添加したポリプロピレンは、その構造から、ランダム共重合体とブロック共重合体とに大別される。前者のランダム共重合体は、融点がポリプロピレンよりも大幅に低下するため高温で軟化し、120 ℃での押し込み深さが著しく低下する。一方、後者のブロック共重合体は、ポリプロピレンの融点の低下が小さいにもかかわらず、脆化温度が大きく低下するため、この発明では、耐低温脆化性と120 ℃での押し込み深さを両立させるために、エチレン−プロピレンブロック共重合体を用いるのである。
【0017】
さらに、この発明で用いるエチレン−プロピレンブロック共重合体は、エチレン−プロピレンラバーの含有率が5〜40重量%でなければならない。なぜなら、エチレン−プロピレンラバーの含有率が5重量%未満では、ポリプロピレンの熱収縮応力が大きくなるため、耐水二次密着性および耐陰極剥離性がポリエチレン被覆鋼管よりも著しく劣る上、耐低温脆化性も改善されない。一方、エチレン−プロピレンラバーの含有率が40重量%をこえると、良好な耐水二次密着性、耐陰極剥離性および耐低温脆化性が得られるものの、ポリプロピレンの融点が低下するために、120 ℃での押し込み深さが急激に増加し、高温環境下でポリプロピレン層の十分な表面硬さを確保できない。
【0018】
また、無水マレイン酸変性ポリプロピレン層の膜厚は100 〜500 μm およびポリプロピレン層の膜厚は2〜4mmとすることが、それぞれ好ましい。なぜなら、無水マレイン酸変性ポリプロピレン層の膜厚が100 μm 未満では接着強度が著しく低下し、500 μm 超ではコストに見合うだけの効果が得られない。
そして、ポリプロピレン層の膜厚が2mm未満では、防食性が著しく低下し、4mm超では接着界面にかかる熱収縮応力が増大し、耐陰極剥離性が低下する。
【0019】
最後に、無水マレイン酸変性ポリプロピレン層およびポリプロピレン層の各層に、添加する酸化防止剤として、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシルベンジル)ベンゼン、テトラキス−{メチレン−3−(3′,5′−ジ−tert−ブチル−4′−ヒドロキシ−フェニル)プロピオネート}メタン、およびペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオプロピオネート)を、それぞれポリプロピレンに対して5〜40重量%にて配合することが、肝要である。
【0020】
なぜなら、ポリプロピレン被覆鋼管は、主に土砂中に埋設して使用されるため、耐熱酸化劣化性は勿論、耐抽出性にも優れた酸化防止剤を選定しなければならない。すなわち、上記の酸化防止剤のうち、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシルベンジル)ベンゼンは、分子量が大きく、かつ分子内に加水分解されやすいエステル基を持たないため、特に耐抽出性に優れるが、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシルベンジル)ベンゼンの単独では、長期にわたって優れた耐熱酸化劣化性を発現できないため、酸化劣化防止性能に優れたフェノール系酸化防止剤と、これと相乗効果を発揮する硫黄系酸化防止剤を併用する。そして、併用するフェノール系酸化防止剤と硫黄系酸化防止剤は、耐抽出性の観点から極力高分子量のものが有利であるから、フェノール系酸化防止剤には、テトラキス−{メチレン−3−(3′,5′−ジ−tert−ブチル−4′−ヒドロキシ−フェニル)プロピオネート}メタンを、これと併用する硫黄系酸化防止剤には、ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオプロピオネート)を、それぞれ採用することとした。
【0021】
さらに、上記酸化防止剤は、無水マレイン酸変性ポリプロピレン層およびポリプロピレン層の各層に、それぞれポリプロピレンに対して0.03〜1.8 重量%にて配合する。すなわち、各酸化防止剤の配合量が0.03重量%未満の場合は、100 ℃前後の高温環境において20年以上の長期にわたり、優れた耐熱酸化劣化性を付与することが難しい。一方、各酸化防止剤配合量が1.8 重量%を越える領域では、添加した酸化防止剤がポリプロピレン表面にブリードアウトして外観を損ねることになる。
【0022】
なお、各酸化防止剤の配合量が0.03〜1.8 重量%を満足すれば、酸化防止剤同士の配合比は特に限定する必要はないが、フェノール系酸化防止剤の総配合量、つまり1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシルベンジル)ベンゼンおよびテトラキス−{メチレン−3−(3′,5′−ジ−tert−ブチル−4′−ヒドロキシ−フェニル}プロピオネート)メタンの合計配合量と、硫黄系酸化防止剤の配合量との比が、1:1〜1:5の範囲にあることが好ましい。
【0023】
【実施例】
以下、実施例に基づいて、この発明を具体的に説明する。
まず、ブラスト加工にてRz:75μm の表面粗さに仕上げた、板厚6.0 mmの鋼板に、エポキシプライマーを30〜40μm の厚さで塗布した。ここで使用した、エポキシプライマーは、硬化剤にジシアンジアミドおよび触媒にイミダゾール化合物をそれぞれ配合した、一液型エポキシプライマーに、さらにストロンチウムクロメートを添加したものである。
【0024】
次いで、塗布したエポキシプライマーを160 ℃でゲル化させた後、その上に、無水マレイン酸変性のエチレン−プロピレンブロック共重合体によるシートとエチレン−プロピレンブロック共重合体によるシートとを重ねて、加圧力:1 kgf/cm2 、加熱温度:180 ℃および圧着時間:10分間の条件にて圧着し、無水マレイン酸変性ポリプロピレン層(膜厚:400 μm )およびポリプロピレン層(膜厚:2mm)を形成した。また、比較として、エチレン−プロピレンランダム共重合体によるポリプロピレン層を、同様に形成した被覆鋼板も同様に作製した。
【0025】
かくして得られたポリプロピレン被覆鋼板について、押し込み深さ、耐低温衝撃性、耐陰極剥離性および耐水二次密着性を調査した。
すなわち、押し込み深さは、DIN30670に準拠して120 ℃で測定し、耐低温衝撃性は、ASTM G14の落錘衝撃試験(高さ:30cmおよび重さ:5kgf )に準拠して、−20℃,−10℃,0℃で行い、ポリプロピレン層の亀裂の有無をピンホールテスターにて調査した。
【0026】
耐陰極剥離性は、試験片の中央部に鋼板面に達する直径:6mmの人工欠陥を作製し、80℃の3%NaCl水溶液中で標準電極に対して、−1.5 Vの電位を鋼板に30日間印加した後、被覆層の剥離距離を測定した。
【0027】
耐水二次密着性は、試験片を90℃の3%NaCl水溶液中に1000時間浸漬する処理の前後における、被覆層の接着強度を、ピール試験法(剥離角度:90°および剥離速度:10mm/min )で測定した。
【0028】
表1に、押し込み深さ、耐低温衝撃性、耐陰極剥離性および耐水二次密着性を調査した結果について示す。なお、この種のポリプロピレン被覆鋼管に対する目標値は、120 ℃押し込み深さは0.3 mm以下、耐低温衝撃性はわれ発生温度が−20℃以下、耐陰極剥離性は80℃×30日で6mm以下および耐水二次密着性は処理後密着強度が80℃×1000時間で10 kgf/cm2 以上である。
【0029】
同表に示すように、各プロピレン層を、エチレン−プロピレンラバー含有率が5〜40重量%のエチレン−プロピレンブロック共重合体としたときに限って、上記した目標値を満足することが明らかである。すなわち、エチレン−プロピレンラバー含有率が5重量%未満のエチレン−プロピレンブロック共重合体を用いる比較例1は、耐低温衝撃性、耐陰極剥離性および耐水二次密着性に劣り、またエチレン−プロピレンラバー含有率が40重量%をこえるエチレン−プロピレンブロック共重合体を用いる比較例2は、120 ℃の押し込み深さが増大した。一方、エチレン−プロピレンランダム共重合体を用いる比較例3〜6は、エチレン−プロピレンラバーの含有率に係わらず、いずれも、押し込み深さ、耐低温衝撃性、耐陰極剥離性および耐水二次密着性を同時に満足することができない。
【0030】
【表1】
【0031】
また、上記したエチレン−プロピレンラバー含有率が20%のエチレン−プロピレンブロック共重合体からなる、前記プロピレン層と無水マレイン酸変性プロピレン層について、各プロピレン層に種々の酸化防止剤を配合して、同様にプロピレン被覆鋼板を作製し、その耐熱酸化劣化性について調査した。
【0032】
ここで、耐熱酸化劣化性は、JIS2型1/2試験片に打ち抜いたポリプロピレン(板厚2mm)を140 、150 、160 ℃のギヤオーブンとオートクレーブ中に暴露した後、引張試験(チャック間距離40mm、引張速度20mm/min )を行い、加熱後のポリプロピレンの破断伸び(初期破断伸びは約400 %)が50%になった時間を、その温度での耐熱酸化劣化寿命と定義し、140 、150 、160 ℃の耐熱酸化劣化寿命のアーレニウスプロットから100 ℃での耐熱酸化劣化寿命を推定した。なお、オートクレーブの内部は純水で満たし、1週間毎に水を交換した。従って、ギヤオーブンを用いた試験から求めた結果は、乾燥環境での耐熱酸化劣化寿命を意味し、オートクレーブから求めた結果は湿潤環境での耐熱酸化劣化寿命を意味する。
【0033】
耐熱酸化劣化性に関する調査結果を、表2に示す。なお、この種のポリプロピレン被覆鋼管に対する目標値は、乾燥環境および湿潤環境において、いずれも20年以上である。
【0034】
同表に示すように、酸化防止剤として、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシルベンジル)ベンゼン、テトラキス−{メチレン−3−(3′,5′−ジ−tert−ブチル−4′−ヒドロキシ−フェニル)プロピオネート}メタン、およびペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオプロピオネート)のそれぞれを、ポリプロピレンに対して0.03〜1.8 重量%にて配合した場合に、上記の目標値が達成されることがわかる。これに対して、上記3種の酸化防止剤のいずれかの配合量が少ない比較例7、3種の酸化防止剤のいずれかが配合されていない比較例8〜10、そして上記3種以外の酸化防止剤を組み合わせた比較例11〜13は、どれも十分な耐熱酸化劣化性が得られなかった。
【0035】
【表2】
【0036】
【発明の効果】
この発明によれば、耐熱性、とりわけ耐熱酸化劣化性、耐低温脆性および二次密着性に優れたポリプロピレン被覆鋼管を得ることができる。
Claims (1)
- 鋼管の周面上に、エポキシプライマー層、無水マレイン酸変性ポリプロピレン層およびポリプロピレン層を順に積層したポリプロピレン被覆鋼管において、上記無水マレイン酸変性ポリプロピレン層およびポリプロピレン層は、ポリプロピレンに対して5〜40重量%のエチレン−プロピレンラバーを有する、エチレン−プロピレンブロック共重合体であり、さらに無水マレイン酸変性ポリプロピレン層およびポリプロピレン層の各層に、酸化防止剤として、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシルベンジル)ベンゼン、テトラキス−{メチレン−3−(3′,5′−ジ−tert−ブチル−4′−ヒドロキシ−フェニル)プロピオネート}メタン、およびペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオプロピオネート)のそれぞれを、ポリプロピレンに対して0.03〜1.8 重量%にて配合して成ることを特徴とする耐熱酸化劣化性、耐低温脆化性および耐水二次密着性に優れたポリプロピレン被覆鋼管。
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