JP3590662B2 - 油圧シリンダの昇降体のロック構造 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は油圧シリンダの昇降体のロック構造に関する。本発明は、産業上油圧 シリンダを利用する分野、例えば工業用ロボット、車輌用整備リフト、荷揚げや車椅子用リフトを有する車輌、電気工事用車輌、家具類・電気機器などの試験装置に利用可能である。
【0002】
【従来の技術】
従来、油圧シリンダの機構の一例は、実開昭57ー77706号公報に記載されている。
【0003】
この実施例は、図7で示すように、1対の側壁102、103を有するシリン ダハウジング101と、このシリンダハウジングに嵌合したピストン104と、このピストンに連結され、前記ハウジングの一方の側壁102を通して外方に突出するピストンロッド105と、前記ピストン104を挾んで前記ハウジングの 両側部に設けた1対の油出入口108、109とを備えた油圧シリンダ機構において、前記ピストン104及びピストンロッド105を中空となし、前記ハウジングの他方の側壁103に配設した断面積補償用ロッド111をピストン104及びピストンロッド105の中空部110に嵌合したことを特徴とする。
【0004】
しかしながら、上記油圧シリンダの機構に於いては、油圧シリンダ100を縦 方向に配設し、例えば車輌用整備リフトに使用した場合には、次のような問題点があった。
【0005】
すなわち、シリンダハウジング101の内周壁と摺接するピストン104の外周壁に設けられたパッキン113が摩耗して油漏れが生じた場合には、ピストン104は自然(ゆるやか)に下降する。また下流側の油圧ホース114が電食などの原因で破損した場合にはピストン104は急激に下降する。
【0006】
したがって、上記構成の油圧シリンダ100には、ピストン104の下降を防止する安全装置を装着しなければならないが、一般に前記安全装置は、例えば実開平1ー138000号公報に記載されているように「油圧シリンダの外部に設けたラックと係止爪との組み合わせ」や「油圧シリンダの外部に設けた複数個の係合孔を有する係合板と安全棒としての係止ピンとの組み合わせ」である。
【0007】
しかしながら、油圧シリンダに装着される安全装置は、ほとんどが油圧シリンダの外部に装着ないし配設されるため、整備作業空間がその分少なくなるだけではなく、時には付帯設備(たとえばラックや係合板を収納する鞘)に水や土砂が入り込んで作動不良を起こすこともあった。
【0008】
そこで、油圧シリンダに上記欠点を解消する安全装置(昇降体の下降防止手段)の出現が要求されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は以上のような従来の要求に鑑み、油圧シリンダの外部に安全装置を装着ないし配設する必要がなく、したがって、油圧シリンダの外部空間を十分に確保することができ、また油圧シリンダの昇降体を任意の位置に直ちに停止させることができ、さらに、油圧シリンダの昇降体を任意の位置に停止させた場合に於いて、仮にシリンダーパッキンからのリーク(漏れ)又は第1油出入り口(駆動)側の油圧ホースの破損により第1油圧室の油圧が低下しても、昇降体としてのピストン及び内筒ハウジングが下降しない油圧シリンダの昇降体のロック構造を得ることである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の油圧シリンダの昇降体のロック構造は、縦方向に配設され、下端部に第1油出入り口3が、一方、上端部に第2油出入り口4がそれぞれ形成された外筒ハウジング2内に摺動可能に嵌合され、かつ、下壁部5の内壁に固定的に立設された案内ロッド13に摺動自在に嵌着したピストン11と、上壁部7の開口8を介して外筒ハウジング2に摺動可能に嵌挿され、かつ、下端部16aが前記ピストン11の上面11aに固定的に設けられた昇降体としての内筒ハウジング16と、前記ピストン11に設けられ、かつ、ピストンの下面11b側の前記第1油出入り口3と連通する第1油圧室22、内筒ハウジング16の内壁と案内ロッド13の外壁との間に相対的に形成されたロック油圧室19、ピストンの上面11a側の前記第2油出入り口4と連通する外筒ハウジング2と内筒ハウジング16との間の第2油圧室17とそれぞれ連通する油の流通孔27、30、36を有するチェック弁25とから成り、前記チェック弁25は、ピストン11が上昇する時、第1油圧室22に圧送される油はピストン11に形成された第1流路26及び第2流路29を介して第1油圧室22からロック油圧室19へ流れる反面、ピストン11が任意の位置で停止した時には逆方向には流れず、一方、ピストン11の下降の際、第2油圧室17に圧送される油はピストン11に形成された第3流路35及び前記油の流通孔36を介して弁押圧体34を押し上げて弁32を開き、前記ロック油圧室19に充満しているロック油18を案内ロッド13の内筒ハウジング16への浸入に伴いながら第1油圧室22に流すことを特徴する。
【0011】
【作用】
まずチェック弁は、ピストンが上昇する時、第1油圧室に圧送される油はピストンに形成された第1流路及び第2流路を介して第1油圧室からロック油圧室へ流れる。この場合ピストン及び内筒ハウジングが上昇すると、案内ロッドが内筒ハウジングから抜ける格好になるので、内筒ハウジングの容量(体積)が昇降体の上昇に追従して序々に増える。
【0012】
次にピストンは駆動モータを停止させると任意の位置で直ちに停止する。ピストンが停止した時、ロック油圧室に充満しているロック油は逆方向には流れずその逃げ場を失う。したがつて、仮にピストンの外パッキンからの漏れ又は第1油出入り口側の油圧ホースの破損により第1油圧室の油圧が低下しても、昇降体としてのピストン及び内筒ハウジングが下降しない。
【0013】
一方、ピストンの下降の際、第2油圧室に圧送される油はピストンに形成された第3流路を介して弁を開き、前記ロック油圧室に充満しているロック油を案内ロッドの内筒ハウジングへの浸入に伴いながら第1油圧室に流す。したがつて、昇降体は下降する。
【0014】
【実施例】
以下、図面に示す実施例により本発明を詳細に説明する。
【0015】
図1ないし図6に示す一実施例に於いて、1は昇降体(ピストン及び内筒ハウジング)のロック構造あるいはロック機構を有する油圧シリンダである。この油圧シリンダ1は、油圧機構を利用してシリンダ内を昇降動するピストン及び外側のシリンダハウジング(これを以下、外筒ハウジングという。)と摺動関係にある内筒ハウジングを任意の位置で停止させ、かつ、ロックする。すなわち、油圧シリンダ1は、昇降動するピストンが任意の位置で停止した時、ロック油圧室内のロック油でロックされ、仮にシリンダーパッキンからのリーク(漏れ)又は第1油出入り口(駆動)側の油圧ホースの破損により第1油圧室の油圧が低下しても、昇降体としてのピストン及び内筒ハウジングは下降しない。
【0016】
そこで、まず図1を基準にして油圧シリンダ1を説明する。2は油圧シリンダ1の外筒ハウジングで、この外筒ハウジング2の下端部には、駆動側の第1油出入り口3が、一方、その上端部には第2油出入り口4がそれぞれ形成されている。5は油圧シリンダ1の下壁部5で、この下壁部5の内壁には板状のピストン受け部6が適宜に突設されている。一方、7は油圧シリンダ1の上壁部で、この上壁部7には開口8が形成されている。上壁部7はフランジ9を有し、固着具10を介して外筒ハウジンク2のフランジ2aに固着されている。
【0017】
次に11は油圧シリンダ1の外筒ハウジング2内に摺動可能に嵌合され、かつ、前記下壁部5の内壁中央部に固定的に立設された案内ロッド13に貫通孔14を介して摺動自在に嵌着したピストンである。案内ロッド13は、本実施例ではピストン11のバランスを図るために下壁部5の内壁中央部に固着具15を介して1本だけ設けられている。もちろん、ピストン11のバランスを図ることができれば、ピストン11に前記貫通孔14を複数個形成し、これらの貫通孔14の数に対応して案内ロッド13を複数本設けても良い。案内ロッド13の長さはピストン11の昇降位置を考慮して決められる。本実施例では上壁部7内まで伸びている。
【0018】
次に16は油圧シリンダ1の上壁部7の開口8を介して外筒ハウジング2内に摺動可能に嵌挿され、かつ、下端部がピストン11に固定的に設けられた内筒ハウジングである。内筒ハウジング16の開口側下端部16aは、ピストン11の上面11aに段差状に周設された周壁(突起)部に固定され、一方、内筒ハウジング16の上端部16bは、外筒ハウジング2の上壁部7から多少突出している。この内筒ハウジング16の上端部16bに、例えば用途発明の一例である車両用整備リフトの場合に於いては、車両の床下を支持する支持板(支持アーム)が固定的に取り付けられる。
【0019】
しかして、外筒ハウジング2と内筒ハウジング16との間には第2油出入り口4と連通する第2油圧室17が形成され、また内筒ハウジング16と案内ロッド13の外壁(外周壁も含まれる。)との間には、ロック油18を有するロック油圧室19が相対的に形成される。なお、内筒ハウジング16の上端部16bにはロック油圧室の一部を形成するロック上壁部20が密閉状態に嵌合し、このロック上壁部20の中央部にはエアー抜き弁21が設けられている。
【0020】
次に22は油圧シリンダ1の下壁部5と昇降動するピストン11の下面11bとの間に形成される第1油圧室で、この第1油圧室22は第1油出入り口3と連通する。第1油圧室22や第1油出入り口3はピストン11を上昇させる場合には駆動側に相当する。したがって、前記第1油出入り口3には第1ホース23が連結され、一方、前述した第2油出入り口4には第2ホース24が連結される。
【0021】
次に25はピストン11に設けられ、ピストン11が上昇する時は第1ホース23から圧送される油が第1油圧室22からロック油圧室19へは流れるが、ピストンが任意の位置で停止した場合には逆方向には流れず、一方、ピストン11の下降の際に第2油圧室17の油圧が上昇した時ロック油圧室19のロック油18を第1油圧室22に流すチェック弁である。このチェック弁25の一例としては、図2及び図3で示すようにパイロットチェックバルブが使用されている。このチェック弁25はピストン11を適当に加工して該ピストンに組込みあるいは取付けられる。そして、ピストンには適当な油の流路が複数個形成される。
【0022】
すなわち、26はチェック弁25の第l流通孔27と一次側に相当する油圧シリンダ1の第1油圧室22とを結ぶ第1流路で、この第1流路26はピストン11の下面11b側から前記第l流通孔27に向かって形成されている。チェック弁25の第l流通孔27は、周方向の環状溝28に対して交差方向に複数個設けられている。
【0023】
次に29はチェック弁25の複数個の第2流通孔30と二次側に相当する油圧シリンダ1のロック油圧室19とを結ぶ第2流路で、この第2流路29はピストン11の上面11aから前記第2流通孔30に向かって形成されている。チェック弁25の第1流通孔27と第2流通孔30との間には、バネ部材31のバネ力で常時油の通路を閉じている弁32が介在している。
【0024】
次に34はチェック弁25のピストンの機能を有する弁押圧体で、この弁押圧体34はピストン部34aと、このピストン部から弁32方向に伸びるバー状の押圧部34bとから成る。
【0025】
次に35はチェック弁25の第3流通孔36とパイロット圧側に相当する油圧シリンダ1の第2油圧室17とを結ぶ第3流路で、この第3流路35はピストン11の上面11aの外側よりの部位(正確には内筒ハウジング16の下端部16aの固定位置よりも外側よりの部位)から前記第3流通孔36に向かって形成されている。
【0026】
次に油圧シリンダ1には適宜に複数個のパッキンが設けられているが、特に37は外筒ハウジグ2の内周壁と摺接するピストン11の外周壁に設けられた外パッキンであり、一方、38は案内ロッド13と摺接するピストン11の内周壁に設けられた内パッキンである。
【0027】
次に図6に示す油圧記号を用いた一般的な油圧回路図を参照しながら本発明の作用について説明する。なお、図6に於いて、符号を簡単に説明すると、40は油タンク、41は駆動モータ、42は油圧ポンプ、43は油の方向を切り換える方向制御弁、44は逆止弁である。
【0028】
まず油圧シリンダ1の昇降体(ピストン11及び内筒ハウジング16)を上昇させる場合は、駆動モータ41を回転させ、油圧ポンプ42にて油タンク40から油を圧送する。方向制御弁43は油をAポートへ流れるように切り換える。Aポートへ流れてきた油は、第1ホース23及び第1油出入り口3を介して油圧シリンダ1の第1油圧室22に入る。そこで、第1油圧室22に入った油はピストン11を押し上げる。そうすると、ピストン11は案内ロッド13に案内されながら上昇する。この時ピストン11と一体である内筒ハウジング16は外筒ハウジング2の上壁部7に案内されながら垂直状態にそのまま上昇する。
【0029】
しかして、図4で示すようにピストン11及び内筒ハウジング16が上昇すると、案内ロッド13が内筒ハウジング16から抜ける格好になるので、内筒ハウジング16の容量(体積)が昇降体11、16の上昇に追従して序々に増えると同時に、第1油圧室22内の油は、まずピストンの第1流路26を通過し、次いでチェック弁25の開いた通路及びピストンの第2流路29を通過してロック油圧室19に圧送される。
【0030】
そこで、昇降体11、16の上昇中に駆動モータ41を任意に止めると、ピストン11及び内筒ハウジング16はそのまま任意の位置で停止する。この場合通常ではチェック弁25により、ロック油圧室19内のロック油18は第1油圧室22側へは流れない。
【0031】
ところで、今仮に外パッキン37のシール性が何らかの原因で低下したり、又は駆動側の第1ホース23が破損したとする。この様な状況では一般の油圧シリンダのピストンは自然に下降又は落下するが、本実施例の油圧シリンダ1ではピストン11が下がろうとしてもロック油圧室19のロック油18は内筒ハウジング16内に密閉され、いわゆる逃げ場がないので、下降しない。
【0032】
次に油圧シリンダ1の昇降体11、16を下降させる場合は、再び駆動モータ41を回転させ、油圧ポンプ42にて油タンク40から油を圧送する。方向制御弁43は今度は油をBポートへ流れるように切り換える。Bポートへ流れてきた油は、第2ホース24及び第2油出入り口4を介して油圧シリンダ1の第2油圧室17に入る。
【0033】
しかして、第2油圧室17に入った油は、図5で示すようにピストンの第3流路35を通過し、弁押圧体34を介してチェック弁25を開く。したがって、ロック油圧室19から第1油圧室22へとロック油18が逆流し、その結果、昇降体11、16は案内ロッド13及び外筒ハウジンク2の上壁部7に案内されながら下降する。
【0034】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明にあっては次に列挙するような効果がある。(1)油圧シリンダの外部に安全装置を装着ないし配設する必要がなく、したがって、油圧シリンダの外部空間を十分に確保することができる。
(2)駆動モータを停止させるだけで、油圧シリンダの昇降体を任意の位置に直ちに停止させることができる。
(3)油圧シリンダの昇降体を任意の位置に停止させた場合に於いて、仮にシリンダーパッキンからのリーク(漏れ)又は第1油出入り口(駆動)側の油圧ホースの破損により第1油圧室の油圧が低下しても、昇降体としてのピストン及び内筒ハウジングが下降しない。
(4)産業上油圧シリンダを利用する分野、例えば油圧シリンダが縦方向に配設される車輌用整備リフトに利用することができる。
【図面の簡単な説明】
図1ないし図6は本発明の一実施例を示す各説明図。
【図1】本発明の概略断面説明図。
【図2】図1に於ける要部の拡大説明図。
【図3】要部を斜視の状態で示した説明図。
【図4】作動状態(昇降体の上昇)の説明図。
【図5】作動状態(昇降体の下降)の説明図。特に要部の作動状態である。
【図6】油圧回路図を参照しながら本発明の作用を説明する説明図。
【図7】従来の一例を示す概略説明図。
【符号の説明】
1…油圧シリンダ、2…外筒ハウジング、11…ピストン、13…案内ロッド、
16…内筒ハウジング、17…第2油圧室、18…ロック油、19…ロック油圧 室、22…第1油圧室、25…チェック弁、26…第1流路、27…第1流通路、
29…第2流路、30…第1流通路、34…弁押圧体、36…第3流通路、37 …外パッキン。
Claims (1)
- 縦方向に配設され、下端部に第1油出入り口が、一方、上端部に第2油出入り口がそれぞれ形成された外筒ハウジング内に摺動可能に嵌合され、かつ、下壁部の内壁に固定的に立設された案内ロッドに摺動自在に嵌着したピストンと、上壁部の開口を介して外筒ハウジングに摺動可能に嵌挿され、かつ、下端部が前記ピストンの上面に固定的に設けられた昇降体としての内筒ハウジングと、前記ピストンに設けられ、かつ、ピストンの下面側の前記第1油出入り口と連通する第1油圧室、内筒ハウジングの内壁と案内ロッドの外壁との間に相対的に形成されたロック油圧室、ピストンの上面側の前記第2油出入り口と連通する外筒ハウジングと内筒ハウジングとの間の第2油圧室とそれぞれ連通する油の流通孔を有するチェック弁とから成り、前記チェック弁25は、ピストン11が上昇する時、第1油圧室22に圧送される油はピストンに形成された第1流路26及び第2流路29を介して第1油圧室からロック油圧室19へ流れる反面、ピストンが任意の位置で停止した時には逆方向には流れず、一方、ピストンの下降の際、第2油圧室17に圧送される油はピストンに形成された第3流路35及び前記油の流通孔36を介して弁押圧体34を押し上げて弁32を開き、前記ロック油圧室19に充満しているロック油18を案内ロッド13の内筒ハウジング16への浸入に伴いながら第1油圧室に流すことを特徴とする油圧シリンダの昇降体のロック構造。
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