JP3588664B2 - 四輪駆動車 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、主原動機の回転駆動力を駆動輪から流体圧伝動機構を介して従動輪に伝達するようにした四輪駆動車に係り、特に、駆動輪の駆動力を制御して駆動輪のスリップを防止するようにしたトラクションコントロールシステムを備えた四輪駆動車に関する。
【0002】
【従来の技術】
悪路や不整地等の走行性能が向上する四輪駆動車は、主原動機から複数の車軸へ駆動トルクを配分するためにプロペラシャフト及び差動装置を備えている。また、近年の四輪駆動車では、路面状況の変化に応じて駆動力を配分するために、駆動軸間にビスカスカップリングやクラッチを採用して駆動力の配分比率を可変にしたものも普及している。しかし、このような機械式により駆動力配分を可変制御する四輪駆動車は、複雑な装置構造となりやすく、また、車体床下を通過するプロペラシャフトや車軸間の差動制限装置等が必要となるので重量が増大し、車体の小型、軽量化を阻害するおそれがある。
【0003】
このような問題を解決するものとして、本出願人が先に特願平6−262639号に記載したように、主原動機に駆動される駆動車軸と、この駆動車軸に連動して回転する流体圧ポンプと、従動車軸と連動するとともに、容量変更手段として斜板を備えた斜板式の可変容量モータと、前記流体圧ポンプの吐出口及び前記可変容量モータの吸込口を連通する第1流路と、前記流体圧ポンプの吸込口及び前記可変容量モータの吐出口を連通する第2流路と、前記可変容量モータの容量が減少する方向へ前記斜板を駆動する付勢手段とを備えた四輪駆動車がある(以下、従来技術1と称する。)。そしてこの従来技術1は、斜板式の可変容量モータは、モータ回転軸に対して同軸にシリンダブロックが連結し、このシリンダブロックに、モータ回転軸と平行に、且つシリンダブロックの回転方向に沿って等間隔にボアが形成されている。そして、各ボア内にピストンが配置されているとともに、これらピストンの先端部と対向する位置には、所定の傾斜角度まで揺動するように斜板が配設されており、この斜板によりボア内から押し出されるピストンのストロークが規制されるようになっている。また、ピストンを配置している各ボアは、シリンダブロックが回転することにより、作動流体吸入口及び作動流体戻り口に交互に連通可能とされている。
【0004】
そして、上記構成の従来技術1は、駆動軸の回転数が従動車軸の回転数より増大して四輪駆動走行を必要とする場合には、流体圧ポンプの吐出流量が可変容量モータの吐出流量を上回り作動流体吸入口からボア内に高圧の作動油が供給されるので、高圧の作動油に応じたトルクがモータ回転軸に発生し、従動車軸に駆動トルクが配分されて四輪駆動走行状態となる。
【0005】
ところで、上記従来技術1の四輪駆動車は、四輪駆動走行状態となるときに駆動軸の回転数が増大し過ぎる。また、車速の増大によって四輪駆動走行状態から二輪駆動走行状態に移行する際に、従動車軸に配分されている駆動トルクが急激に降下すると、駆動輪の空転(スリップ)が増大して運転車に違和感を与える場合がある。
【0006】
そこで、車両の発進性、加速性の向上及び尻振り防止による車両安定性の向上を図ることが可能なトラクションコントロールシステムを前記従来技術1の四輪駆動車に搭載して上記問題を解決することが考えられる。
【0007】
前記トラクションコントロールシステムとしては、例えば特開平4−66336号公報(以下、従来技術2と称する。)に記載されているように、各駆動輪及び従動輪の車輪速度を検出し、これら車輪速度からスロットル制御用のスリップ値及びブレーキ制御用のスリップ値を算出し、且つスロットル制御用目標スリップ値及びブレーキ制御用目標スリップ値を設定すると共に、小閾値及び大閾値でなる2つの制御開始閾値を設定し、駆動輪の車輪速度が小閾値を越えたときに、スロットル制御用のスリップ値がスロットル制御用目標スリップ値と一致するようにフィードバック制御するスロットル制御を行うと共に、ブレーキ制御用のスリップ値がブレーキ制御用目標スリップ値と一致するようにフィードバック制御するブレーキ制御を行うようにしたシステムが知られている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このトラクションコントロールシステムを四輪駆動車に搭載すると、これら両者の機能を充分に発揮することができないおそれがある。
【0009】
すなわち、例えば駆動輪及び従動輪の間の回転速度差を検出しておき、この回転速度差が基準開始値以上となったときに、トラクションコントロールシステムの制御を開始することが考えられるが、前記基準開始値を小さな値の一定値に設定してしまうと、伝達トルクを発生する前に駆動軸の回転数が減少してしまい四輪駆動走行状態を得ることができない不都合が生じ、逆に、前記基準開始値を大きな値の一定値に設定すると、車両が二輪駆動状態で走行する際にトラクションコントロールシステムが作動せず、駆動輪が空転して加速性が向上せず、尻振りを防止することができないおそれがある。
【0010】
そこで、本発明は、上記従来例の未解決の課題に着目してなされたものであり、主原動機の回転駆動力を駆動輪から流体圧伝動機構を介して従動輪に伝達する四輪駆動状態と、車両安定性の向上を図るトラクションコントロールシステムの両者の性能を充分に発揮することが可能な四輪駆動車を提供することを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に係る四輪駆動車は、主原動機により駆動される駆動車軸と、該駆動車軸に連動して回転する流体圧ポンプと、従動車軸に連動して回転する流体圧モータと、前記流体圧ポンプの吐出口と前記流体圧モータの吸入口とを連通する第1の流路と、前記流体圧ポンプの吸入口と前記流体圧モータの吐出口とを連通する第2の流路と、前記流体圧ポンプの吐出量が前記流体圧モータの吸入量を上回るときに、前記流体圧モータへ流れる作動流体の最高吐出圧を規制して前記従動車軸側への伝達トルクの最大値を設定するトルク制限手段とを備えた四輪駆動車において、前記駆動車軸に連結する駆動輪及び前記従動車軸に連結する従動輪の車輪速度を検出する車輪速検出手段と、車体速を検出する車体速検出手段と、前記駆動輪及び前記従動輪間の回転速度差を検出する回転速度差検出手段と、前記駆動輪に対する制動力及び前記主駆動源から出力される駆動力を調整して駆動力制御を行う駆動力制御手段と、前記回転速度差演算手段で検出した前記回転速度差が所定の開始基準値以上となったときに前記駆動力制御手段の制御を開始する制御開始設定手段とを備え、前記制御開始設定手段の前記開始基準値を、前記車体速検出手段で検出した車体速に基づいて、四輪駆動走行を必要とする低速の車体速であるときに大きな値の第1開始基準値に設定するとともに、二輪駆動走行を必要とする前記低速以上の車体速であるときには、前記第1開始基準値より小さな値の第2開始基準値に設定した。
【0012】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の四輪駆動車において、前記第1開始基準値を、前記トルク制限手段の作動によって前記従動輪への伝達トルクが最大値となる所定の回転速度差以上の値に設定した。
【0013】
また、請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の四輪駆動車において、前記第2開始基準値を、加速時に前記駆動輪がホイールスピンする際に発生する回転速度差に設定した。
【0014】
また、請求項4記載の発明は、請求項1乃至3の何れかに記載の四輪駆動車において、前記第1開始基準値を、前記車体速検出手段で検出した車体速に基づいて、前記車体速が増大するに従って徐々に大きな値となるように設定した。
【0015】
一方、請求項5記載の四輪駆動車は、主原動機により駆動される駆動車軸と、該駆動車軸に連動して回転する流体圧ポンプと、従動車軸に連動して回転する流体圧モータと、前記流体圧ポンプの吐出口と前記流体圧モータの吸入口とを連通する第1の流路と、前記流体圧ポンプの吸入口と前記流体圧モータの吐出口とを連通する第2の流路と、前記流体圧ポンプの吐出量が前記流体圧モータの吸入量を上回るときに、前記流体圧モータへ流れる作動流体の最高吐出圧を規制して前記従動車軸側への伝達トルクの最大値を設定するトルク制限手段とを備えた四輪駆動車において、前記駆動車軸に連結する駆動輪及び前記従動車軸に連結する従動輪の車輪速度を検出する車輪速検出手段と、車体速を検出する車体速検出手段と、前記駆動輪及び前記従動輪間の回転速度差を検出する回転速度差検出手段と、前記駆動輪に対する制動力及び前記主駆動源から出力される駆動力を調整して駆動力制御を行う駆動力制御手段と、前記回転速度差演算手段で検出した前記回転速度差が所定の開始基準値以上となったときに前記駆動力制御手段の制御を開始する制御開始設定手段とを備え、前記制御開始設定手段の前記開始基準値を、加速時に前記駆動輪がホイールスピンする際に発生する回転速度差に設定するとともに、この開始基準値を、前記車体速検出手段に基づいて二輪駆動走行を必要とする中高速以上の車体速のときのみに設定した。
【0016】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、駆動力制御手段の制御を開始する制御開始設定手段の開始基準値を、車体速検出手段で検出した車体速に基づいて四輪駆動走行を必要とする低速の車体速であるときに大きな値の第1開始基準値に設定したので、四輪駆動走行状態となるときに駆動車軸の回転数が増大し過ぎると、駆動力制御手段の作動により駆動車軸の不要な空転を抑えることができ、運転車に違和感を与えない。それと同時に、前記開始基準値を、二輪駆動走行を必要とする前記低速以上の車体速であるときには、第1開始基準値より小さな値の第2開始基準値に設定したので、車両が二輪駆動状態で走行する際には、駆動力制御手段の作動により駆動輪の空転を迅速に防止することができる。
【0017】
また、請求項2記載の発明によると、請求項1記載の効果を得ることができるとともに、第1開始基準値を、トルク制限手段の作動によって従動輪への伝達トルクが最大値となる所定の回転速度差以上の値に設定したので、確実に従動輪に伝達トルクを伝達することが可能となり、四輪駆動制御を充分に発揮することができる。
【0018】
また、請求項3記載の発明によると、請求項1又は2記載の効果を得ることができるとともに、第2開始基準値を、加速時に駆動輪がホイールスピンする際に発生する回転速度差に設定したので、駆動輪の空転を防止して加速性を向上させ、車両の尻振りを防止することができる。
【0019】
また、請求項4記載の発明によると、低速の車体速であるほど小さな回転数差で最大の伝達トルクが発生しやすく、高速の車体速になるに従い大きな回転数差が生じないと最大の伝達トルクが発生しにくい。そのため、本発明では、第1開始基準値を、車体速検出手段で検出した車体速に基づいて車体速が増大するに従って徐々に大きな値となるように設定したので、さらに確実に従動輪に伝達トルクを伝達することが可能となり、四輪駆動状態を充分に発揮することができる。
【0020】
さらに、請求項5記載の発明によると、駆動力制御手段の制御を開始する制御開始設定手段の開始基準値を、加速時に前記駆動輪がホイールスピンする際に発生する回転速度差に設定するとともに、この開始基準値を、車体速検出手段に基づいて二輪駆動走行を必要とする中高速以上の車体速のときのみに設定したので、複雑な制御を行うことなく四輪駆動制御と、駆動輪の空転を防止して加速性を向上させ、車両の尻振りを防止する制御を行うことができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の第1の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明に係る前輪駆動車をベースとした四輪駆動車に適用した場合の概略構成図であって、図中、10は主原動機としてのエンジンであって、このエンジン10の回転駆動力が変速機12を介して前輪側差動装置13に入力され、この差動装置13の出力側に駆動車軸としての前車軸14を介して前輪が連結されている(図1では、右前輪1FRのみを示している。)。
【0022】
前輪側差動装置13は、デファレンシャギヤケース13aに形成されたリングギヤ13bが変速機12の出力側に連結されたギヤ12aと噛合して回転駆動し、このディファレンシャルギヤケース13a内に形成された一対のピニオンシャフト13cにピニオン13dが取付けられ、これらピニオン13dに一対のサイドギヤ13eが噛合し、これらサイドギヤ13eに前車軸14が連結されている。
【0023】
また、ディファレンシャルギヤケース13aにリングギヤ13bと並列に形成されたリングギヤ13fが、これに噛合するギヤ13gを介して流体圧ポンプとしての吸入絞り型ピストンポンプ(以下、ピストンポンプと略称する。)16の回転軸16aに連結されている。
【0024】
このピストンポンプ16は、その吸込口16bがリザーバタンク17内に配設されたストレーナ17aに連結されていると共に、第2の流路としての低圧配管18Lを通じて2位置4ポートの電磁方向切換弁19のタンクポートTに接続され、吐出口16cが第1の流路としての高圧配管18Hを通じて前後進切換用の電磁方向切換弁19のポンプポートPに接続されている。
【0025】
また、前後進切換用の電磁方向切換弁19は、ソレノイド19aが非通電状態であるノーマル位置でポンプポートPを出力ポートAに、タンクポートTを出力ポートBに夫々連通し、ソレノイド19aが通電状態であるオフセット位置でポンプポートPを出力ポートBに、タンクポートTを出力ポートAに夫々連通し、出力ポートA及びBが流体圧モータとしての斜板式可変容量モータ(以下、可変容量モータと略称する。)20の流入・流出ポート20a、20bに接続されており、ノーマル位置で高圧配管18Hの高圧油を可変容量モータ20の流入ポート20aに、低圧配管18Lを流出ポート20bに連通させて回転軸20cを前進走行時の回転方向例えば左側面からみて時計方向に回転駆動し、逆にオフセット位置で高圧配管8Hの高圧油を可変容量モータ20の流出ポート20bに、低圧配管18Lを流入ポート20aに連通させて回転軸20cを後進走行時の回転方向例えば左側面からみて反時計方向に回転駆動する。
【0026】
なお、電磁方向切換弁19は可変容量モータ20に内蔵され、出力ポートA及びBが配管を介することなく可変容量モータ20の流入・流出ポート20a、20bに連結されている。また、電磁方向切換弁19のソレノイド19aへの通電は、ソレノイド19aが図示しないがシフトレバーで後進を選択したときに、オン状態となるシフト位置検出スイッチ19bを介して直流電源19cに接続されることにより、前進走行時には非通電状態に、後進走行時には通電状態に夫々制御される。
【0027】
また、ピストンポンプ16の吸込口16b及び吐出口16c間には、ピストンポンプ16の吐出圧の上限を定めるトルク制限手段としてのリリーフ弁21が介挿されている。また、ピストンポンプ16及び電磁方向切換弁19間における高圧配管18H及び低圧配管18L間を連通する連通配管22Aには、低圧配管18L側から高圧配管18H側への流体流れを許容する逆止弁23が介挿されていると共に、連通配管22Aと並列に配設された連通配管22Bに逆止弁23と並列関係に固定オリフィス24が接続されている。
【0028】
一方、可変容量モータ20の回転軸20cにはギヤ20dが取付けられ、このギヤ20dに後輪側差動装置27のディファレンシャルギヤケース27aに形成されたリングギヤ27bが噛合されている。この後輪側差動装置27は、前述した前輪側差動装置3と略同様の構成を有し、ディファレンシャルギヤケース27a内に形成された一対のピニオンシャフト27cにピニオン27dが取付けられ、これらピニオン27dに一対のサイドギヤ27eが噛合し、これらサイドギヤ27eに後車軸28が連結され、この後車軸28に後輪が連結されている(図1では、右後輪1RRのみを示している。)。
【0029】
また、図2及び図3に示すものは、前述した可変容量モータ20の具体的構成を示すものであり、この可変容量モータ20は、ポンプハウジング100内に、ベアリング101に支持された回転軸20cが回転自在に配設されているとともに、回転軸20cの外周に円筒状のシリンダブロック102が同軸に固定されている。また、シリンダブロック102には、周方向に所定間隔をあけて回転軸20cと平行に複数のボア103が形成されており、各ボア103にはピストン104が収容されている。そして、シリンダブロック102の図2の右端面に対向する位置には斜板105が揺動自在に配設されている。
【0030】
この斜板105は、円筒部105aと、円筒部105aの図2の上端から突出する突出部105bと、各ピストン104の端部と係合したシュー106を周方向に摺動自在に係止するシューホルダ107とを備えている。そして、前記シューホルダ107は、押圧スプリング108によってニードル109を介して斜板105側に押圧されている。また、図2の符号Pで示す位置は、斜板105の揺動軸であり、この揺動軸Pは、回転軸20cの軸線と直交する方向に所定量εだけオフセットした位置に設けられており、この揺動軸Pを中心として所定の傾斜角度αまで斜板105が揺動する。また、ポンプハウジング100内には、斜板105と対向する位置にストッパ110が配設されており、斜板105がこのストッパ110に当接すると揺動が規制され、斜板105の最大傾斜角度αmax が設定される。
【0031】
また、シリンダブロック102の図2の左端面は、ポンプハウジング100に固定されたバルブプレート111と摺接している。このバルブプレート111には、図3に示すように、流入ポート20a(後進時には流出ポート)、流出ポート20b(後進時には流入ポート)が形成されており、これら流入ポート20a及び流出ポート20bは、ピストン104を収容している各ボア103と連通孔112を介して連通している。
【0032】
そして、前進走行時には、流入ポート20aからボア103内に作動油が供給されてピストン104がボア103から押し出され、作動油圧に比例した軸力が斜板105に伝達され、その反力によってシリンダブロック102が回転し、回転軸20cに駆動トルクが伝達されるようになっている。また、後進走行時には、流出ポート20bからボア103内に作動油が供給されてピストン104がボア103から押し出され、作動油圧に比例した軸力が斜板105に伝達され、その反力によってシリンダブロック102が逆回転し、回転軸20cに駆動トルクが伝達されるようになっている。
【0033】
そして、ホンプハウジング100内に揺動自在に配設された斜板105は、付勢手段120により傾斜角度αが小さくなる方向に付勢されている。すなわち、付勢手段120は、収容室120a内にコントロールピストン120b及びコイルバネ120cを収容した構造とし、コイルバネ120cが作用する付勢力によってコントロールピストン120bが斜板105を押圧している。
【0034】
ところで、前述したピストンポンプ16は、回転軸16aの回転方向によって吸入口と吐出口とが入れ替わることがなく、その吐出流量は、図4の特性曲線Lで示すように、車速が“0”から所定値Vaに達するまでの間では、車速の増加に比例して増加し、所定値Va以上では最大吐出流量Qmax で飽和するように設定されている。
【0035】
また、可変容量モータ20の吐出流量は、斜板105の傾斜角度αが増大するに従って増加し、斜板105がストッパ110に当接して最大傾斜角度αmax となった時点で最大吐出流量となるが、その流量特性は、図4の特性曲線Lで示すように、車速が“0”から所定値V(V<Va)に達するまでの間では、車速の増加に比例して増加し、所定値V以上では、ピストンポンプ16が最大吐出流量Qmax で飽和しているので、この最大吐出流量Qmax を維持する。
【0036】
そのため、車速V以上では、ピストンポンプ16のポンプ吐出流量は、斜板式可変容量モータ20のモータ流量を上回ることがなく、後輪に駆動トルクを伝達することはできなくなる。ここで、“0”〜Vの範囲の車速は、四輪駆動走行を必要とする低速走行領域であり、V以上の車速は、二輪駆動走行を必要とする高速走行領域である。
【0037】
次に、図5は、上記構成の四輪駆動車に搭載されて駆動輪(前輪)のスリップ状態に応じてブレーキ制御処理及びスロットル制御処理を行うトラクションコントロール制御装置を示す概略構成図である。図中、1FL,1FRは左右前輪、1RL,1RRは左右後輪であり、前輪1FL,1FRには、エンジン10の回転駆動力が変速機12及び前輪側作動装置13を介して伝達される。そして、各前輪1FL、1FRには、それぞれ制動用シリンダ40FL、40FRが取付けられている。
【0038】
また、各前輪1FL,1FRには、これらの車輪の回転速度に応じた周波数の正弦波でなる車輪速信号を出力する車輪速センサ42FL,42FRが各々取付けられ、後輪1RL,1RRにも、これらの回転速度に応じた周波数の正弦波でなる車輪速信号を出力する車輪速センサ42RL,42RRが取付けられている。
【0039】
そして、ブレーキペダル44を踏み込むと、その踏込み力が油圧ブースタHBによって倍増されてマスタシリンダ46に伝達され、このマスタシリンダ46で発生したマスタシリンダ圧が、アクチュエータ48により制御されて各制動用シリンダ40FL、40FRに供給されるようになっている。
【0040】
また、ブレーキペダル44には、その踏み込みに応動するストップランプスイッチ44aが取付けられ、このストップランプスイッチ44aから、ブレーキペダル44を開放しているときにはローレベルのスイッチ信号、ブレーキペダル44を踏み込んでいるときにはハイレベルのスイッチ信号がコントローラ52に出力されるようになっている。
【0041】
さらに、エンジン10の吸気管路(具体的にはインテークマニホールド)10aには、アクセルペダル50の踏込み量に応じて開度が調整されるメインスロットルバルブ10bと、コントローラ52によって制御されるステップモータ10cに連結されてそのステップ数に応じた回転角で開度が調整されるサブスロットルバルブ10dとが配設されている。ここで、サブスロットルバルブ20dの開度を、メインスロットルバルブ20bの開度以下にすることにより、エンジン出力を減少させることができる。
【0042】
ここで、前記アクチュエータ48は、図6に示す構成となっている。すなわち、前記マスタシリンダ46と接続している油圧配管49aに、第1駆動力制御用切換弁53Aが介挿され、油圧ブースタHBと接続している油圧配管49bに、第2駆動力制御用切換弁53Bが介挿されているとともに、これら第1及び第2駆動力制御用切換弁53A、53Bは、油圧配管49cに並列に接続されている。そして、前述した制動用シリンダ40FL、40FRには、ソレノイドバルブ54FL、54FRの供給ポート54sが接続し、これらソレノイドバルブ54FL、54FRの排出ポート54rは、絞り56FL及び56FRを介して油圧配管49dに接続されている。なお、この油圧配管49dは、前述したマスタシリンダ46と接続する油圧配管49aに接続されている。そして、ソレノイドバルブ54FL、54FRの入力ポート54iは、前記油圧配管49cに接続されている。また、油圧配管49cには、コントローラ52により制御される電動モータ60により駆動するアクチュエータポンプ62が介挿されている。さらに、各ソレノイドバルブ54FL、54FRには、供給ポート54sから入力ポート54iへのブレーキ流体の通過を許容するバイパス用チェックバルブ55FL、55FRが接続されている。そして、アクチュエータポンプ62の吸込側と接続する油圧配管49c及び油圧配管49dの接続部にはリザーバタンク64が配設されている。このリザーバタンク64は、コイルスプリング64aによって付勢されたピストン64bを有し、マスタシリンダ圧が低下したときに、リザーバタンク64内に残留するブレーキ流体をコイルスプリング64aの弾性によって押し出し、非制動時にブレーキ流体が残留することがないように構成されている。
【0043】
そして、前述した第1駆動力制御用切換弁53Aは、そのソレノイドが非通電状態であるときに油圧配管49aを連通するノーマル位置となり、ソレノイドを通電状態とすることにより、マスタシリンダ46からの作動油の流入を阻止する逆止弁を介挿したオフセット位置に切換えられる。
【0044】
また、第2駆動力制御用切換弁53Bは、逆にソレノイドが非通電状態であるときに油圧ブースタHBからの作動油の流入を遮断するノーマル位置となり、ソレノイドを通電状態とすることにより、油圧ブースタHBからの所定圧の作動油をソレノイドバルブ54FL、54FRに供給するオフセット位置に切換えられる。
【0045】
また、ソレノイドバルブ54FL及び54FRは、ソレノイドSLへの励磁電流が非通電状態では排出ポート54rを遮断する増圧位置となり、ソレノイドSLに通電される励磁電流が中電流値であるときに、入力ポート54i、供給ポート54s及び排出ポート54rを全て遮断する保持位置となり、ソレノイドSLに通電される励磁電流が高電流値であるときに、入力ポート54iを遮断し、且つ供給ポート54s及び排出ポート54rを連通する減圧位置となる。
【0046】
そして、前述した車輪速センサ42FL〜42RL及びストップランプスイッチ44aの各検出信号はコントローラ52に入力される。
コントローラ52は、図7に示すように、車輪速センサ42FL〜42RRの交流電圧信号を増幅し、且つ波形整形して矩形波に変換する波形整形回路52aと、波形整形回路52aから出力された矩形波信号、ストップランプスイッチ44aのスイッチ信号を入力する入力インタフェース回路52bと、車輪速・推定車体速度を演算し、前後輪の回転速度差に応じて駆動力制御処理を実行する演算処理装置52bと、処理手順及び演算結果等を記憶する記憶装置52bと、処理結果に応じて制御信号を出力する出力インタフェース回路52bとを有するマイクロコンピュータ52bとを備えている。
【0047】
ここで、記憶装置52bには、演算処理装置52bの演算処理実行に必要な制御データが予め記憶されている。制御データの一つとして、図8に示す特性線図が記憶されている。この特性線図は、後輪1RL、1RR側に伝達される駆動トルクTと前後輪の間の回転数差(回転速度差)の関係を示すものであり、前記駆動トルクは、前後輪の間に回転速度差が生じて初めて発生し、その回転速度差の増大とともに急増し、前述したピストンポンプ16の吐出圧の上限を定めるリリーフ弁21の圧力制限によって最大駆動トルクTMAX が規制されている。そして、図8の特性線図では、前後輪の回転速度差が所定値に達したときに、後述する駆動力制御処理を開始する回転速度差、即ち、制御開始設定値が記憶されている。すなわち、図8の符号ΔNは、後輪1RL、1RRに最大駆動トルクTMA を伝達することが可能な基準の回転速度差を示しているが、この基準の回転速度差ΔNより大きな値として第1の制御開始設定値ΔN(ΔN>ΔN)が記憶されているとともに、基準の回転速度差ΔNより小さくほとんど後輪への駆動トルクを発生しない前後輪の回転速度差として第2の制御開始設定値ΔN(ΔN<ΔN)が記憶されている。また、他の制御データとして、図9に示すブレーキ圧制御に使用するマップデータが記憶されている。
【0048】
また、図7に戻って、コントローラ52は、出力インタフェース回路52bからモータ駆動信号Sが入力されてアクチュエータポンプ62の電動モータ60を駆動するモータ駆動回路52cと、出力インタフェース回路52bからスロットル開度制御信号θが入力され、このスロットル開度制御信号θに応じてサブスロットルバルブ10dのステップモータ10cを駆動するモータ駆動回路52cと、同じく出力インタフェース回路52bから減圧信号DSFL、DSFR及び保持信号HSFL、HSFRが入力されるソレノイド駆動回路52c、52cと、出力インタフェース回路52bから駆動力制御信号Sが入力されるソレノイド駆動回路52c、52cとを備えている。
【0049】
ソレノイド駆動回路52c、52cの夫々は、減圧信号DS及び保持信号HS(i=FL、FR)が共に低レベルであるときに各ソレノイドバルブ54FL、54FRに対する通電を遮断し、保持信号HSのみが高レベルであるときには中電流値の励磁電流をソレノイドバルブ54iのソレノイドSLに通電し、減圧信号DSのみが高レベルであるときには高電流値の励磁電流をソレノイドバルブ54iのソレノイドSLに通電する。
【0050】
ソレノイド駆動回路52c、52cは、入力される駆動力制御信号Sが高レベルであるときには第1及び第2駆動力制御用切換弁53A及び53BのソレノイドSLに通電してノーマル位置からオフセット位置に切換え、駆動力制御信号Sが低レベルであるときは第1及び第2駆動力制御用切換弁53A及び53Bへの通電を遮断してノーマル位置に保持する。
【0051】
次に、マイクロコンピュータ52bの演算処理装置52bで実行する制御処理を図10及び図11のフローチャートを伴って説明する。
図10の制御処理は、所定時間(例えば5msec)毎のタイマ割込処理として実行され、先ずステップS1で、各車輪速センサ42FL〜42RRの車輪速検出値VFL〜VRRを読込み、これらとタイヤ径とから車輪の周速度即ち車輪速VwFL〜VwRRを算出する。
【0052】
次いで、ステップS2に移行して、、下記(1)式の演算を行って前輪平均速度MVWFを算出してからステップS3に移行する。
MVWF=(VwFL+VwFR)/2 …………(1)
ステップS3では、下記(2)式の演算を行って後輪平均速度MVWRを算出してからステップS4に移行する。
【0053】
MVWR=(VwRL+VwRR)/2 …………(2)
ステップS4では、ステップS3で算出した後輪平均速度MVWRを推定車体速度Vとし、この推定車体速度Vを記憶装置52bの推定車体速度記憶領域に更新記憶してステップS5に移行する。
【0054】
ステップS5では、下記(3)式の演算を行って前後輪速度差ΔMVを算出してからステップS6に移行する。
ΔMV=MVWF−MVWR …………(3)
ステップS6では、推定車体速度Vと、予め設定した車両の低速領域の最大値である基準車速V(図4で示した四輪駆動走行及び二輪駆動走行の境の速度)との比較判定を行う。そして、この比較判定により、推定車体速度Vcが基準車速Vを下回るときには(Vc<V)、ステップS7に移行し、他方、推定車体速度Vcが基準車速V以上であるときには(Vc≧V)、ステップS8に移行する。
【0055】
そして、前記ステップS7では、前後輪速度差ΔMVと第1の制御開始設定値ΔNとの比較判定を行い、前後輪速度差ΔMVが第1の制御開始設定値ΔN以上であるときには(ΔMV≧ΔN)、ステップS9に移行し、他方、前後輪速度差ΔMVが第1の制御開始設定値ΔNを下回るときには(ΔMV<ΔN)、タイマ割込処理を終了して所定のメインプログラムに復帰する。
【0056】
また、ステップS8では、前後輪速度差ΔMVと第2の制御開始設定値ΔNとの比較判定を行い、前後輪速度差ΔMVが第2の制御開始設定値ΔN以上であるときには(ΔMV≧ΔN)、ステップS9に移行し、他方、前後輪速度差ΔMVが第2の制御開始設定値ΔNを下回るときには(ΔMV<ΔN)、タイマ割込処理を終了して所定のメインプログラムに復帰する。
【0057】
そして、前記ステップS9では、駆動輪1RL,1RRのスリップ状態に応じてブレーキ制御処理及びスロットル制御処理を行う駆動力制御処理を実行してからタイマ割込処理を終了して所定のメインプログラムに復帰する。
【0058】
前述したステップS9の駆動力制御処理は、図11に示すように、先ず、ステップS10で車輪速Vw(i=FL,FR,RL,RR)に基づいて下記(4)及び(5)式の演算を行って駆動輪としての前輪1FL,1FRのブレーキ制御用スリップ量SBFL,SBFRを算出する。
【0059】
SBFL=VwFL−MVWR=VwFL−(VwRL+VwRR)/2 …………(4)
SBFR=VwFR−MVWR=VwFR−(VwRL+VwRR)/2 …………(5)
次いで、ステップS11に移行して、スリップ量SBFL,SBFRの何れかがブレーキ制御開始閾値K以上であるか否かを判定し、スリップ量SBFL,SBFRの何れかが閾値K以上であるときには、ステップS12に移行して、高レベルの駆動力制御信号Sをソレノイド駆動回路52c、52cに出力し、次いでステップS13に移行して、ブレーキ制御を維持する制御変数Nを“0”にクリアしてからステップS14に移行する。
【0060】
このステップS14では、車輪速Vwに基づいて下記(6)及び(7)式の演算を行って駆動輪となる前輪1FL,1FRの現在のスリップ率S(n),S(n) を算出すると共に、記憶装置52bの現在値記憶領域に格納されている前回のスリップ率S(n−1),S(n−1) を前回値記憶領域に格納し、且つ算出した現在値S(n),S(n) を現在値記憶領域に格納する。
【0061】
(n) =(VwFL−VwRL)/VwRL …………(6)
(n) =(VwFR−VwRR)/VwRR …………(7)
次いで、ステップS15に移行して、現在値記憶領域及び前回値記憶領域に記憶されているスリップ率の現在値S(n),S(n) と前回値S(n−1),S(n−1) とをもとに下記(8)及び(9)式の演算を行ってスリップ率変化量α,αを算出する。
【0062】
α=S(n) −S(n−1) …………(8)
α=S(n) −S(n−1) …………(9)
次いで、ステップS16に移行して、スリップ率の現在値S(n),S(n) とスリップ率変化量αL,αとをもとに、図9のブレーキ圧制御マップを参照してアクチュエータ48の各ソレノイドバルブ54FL,54FRに対する制御モードを設定し、次いでステップS17に移行して、設定された制御モードに対応した減圧信号DSFL,DSFR及び保持信号HSFL,HSFRをソレノイド駆動回路52c,52cに出力してからステップS18に移行する。
【0063】
一方、前記ステップS11の判定結果が、SB<Kであるときには、ステップS18に移行して、制御変数Nが予め設定した設定値NBS以上となったか否かを判定し、N<NBSであるときにはステップS19に移行して、変数NをインクリメントしてからステップS20に移行して緩減圧モードを設定してからステップS22に移行し、N≧NBSであるときにはステップS21に移行して低レベルの駆動力制御信号Sをソレノイド駆動回路52c、52cに出力してからステップS22に移行する。
【0064】
ステップS22では、各車輪速VwFL〜VwRRに基づいて下記(10)式の演算を行ってスロットル制御用スリップ率SSを算出すると共に、記憶装置52bに記憶されたスロットル制御用スリップ率の現在値記憶領域に格納されているスリップ率の前回値SS(n−1) を前回値記憶領域に格納し、且つ算出した現在値SS(n) を現在値記憶領域に格納する。
【0065】
SS(n) ={(VwFL+VwFR)/2}−{(VwRL+VwRR)/2}…(10)
次いで、ステップS23に移行して、現在値記憶領域及び前回値記憶領域に格納されているスロットル制御用スリップ率の現在値SS(n) 及び前回値SS(n−1) をもとに下記(11)式の演算を行ってスリップ率変化量βを算出する。
【0066】
β=SS(n) −SS(n−1) …………(11)
次いで、ステップS24に移行して、スリップ率の現在値SS(n) が予め設定した前述したブレーキ制御開始閾値Kより小さいスロットル制御開始閾値K以上であるか否かを判定し、SS(n) <Kであるときには、ステップS25に移行して、スロットル開度θをステップ状に増加させるための待機時間を表す変数Nが“0”であるか否かを判定し、N=0であるときには、ステップS26に移行して変数NをインクリメントしてからステップS27に移行する。
【0067】
このステップS27では、スロットル開度θが全開状態を表す設定値θMAX に達したか否かを判定し、θ<θMAX であるときにはステップS28に移行して、スロットル開度θに所定値Δθを加算した値を新たなスロットル開度θに設定して、これをモータ駆動回路52cに出力してから処理を終了し、θ=θMAX であるときにはステップS29に移行してスロットル制御開始時に“1”にセットされる制御フラグFSを“0”にリセットし、次いでステップS30に移行して変数Nを“0”にクリアしてから処理を終了する。
【0068】
また、ステップS25の判定結果が、N≠0であるときには、ステップS31に移行して、変数Nをインクリメントし、次いでステップS32に移行して、変数Nが予め設定した待機時間に対応する設定値NSSに達したか否かを判定し、N=NSSであるときには前記ステップS30に移行し、N<NSSであるときにはそのまま処理を終了する。
【0069】
一方、前記ステップS24の判定結果がスリップ率SS(n) が閾値K以上であるときには、ステップS33に移行して、制御フラグFSが“1”にセットされているか否かを判定し、これが“0”にリセットされているときには、スロットル制御開始時であると判断してステップS34に移行し、スロットル開度θとして全閉状態に近い最小設定値θMIN に設定して、これをモータ駆動回路52cに出力し、次いでステップS35に移行して、制御フラグFSを“1”にセットしてから処理を終了する。
【0070】
また、前記ステップS33の判定結果が、制御フラグFSが“1”にセットされているものであるときには、2回目以降の処理であると判断してステップS36に移行し、スリップ率変化量βが正であるか否かを判定する。この判定は、スリップ率SS(n) が増加傾向にあるか否かを判定するものであり、β≦0であるときにはスリップ率が変化しないか減少しているものと判断してそのまま処理を終了することにより、スロットル開度θが前回値に保持され、β>0であるときには、スリップ率が増加しているものと判断して、ステップS37に移行して、現在のスロットル開度θから所定値Δθを減算した値を新たなスロットル開度θとして設定し、これをモータ駆動回路52cに出力してから処理を終了する。
【0071】
ここで、図5の車輪速センサ42FL,42、42RL,42RR及び図10のステップS1が本発明の車輪速検出手段に対応し、図10のステップS4が、本発明の車体速検出手段に対応し、図10のステップS2、ステップS3及びステップS5が本発明の回転速度差検出手段に対応し、図10のステップS9及び図11が本発明の駆動力制御手段に対応し、図10のステップS6、ステップS7、ステップS8が本発明の制御開始設定手段に対応し、図10のステップS7で示す第1の制御開始設定値ΔNが本発明の第1開始基準値に対応し、図10のステップS8で示す第2の制御開始設定値ΔNが本発明の第2開始基準値に対応する。
【0072】
次に、駆動力制御処理の動作について、図12のタイムチャートを参照して説明する。
駆動輪である前輪1FL、FRの車輪速Vwj(j=FL、FR)が後輪平均車輪速MVWRより早くなってスリップ状態となり、図12(a)の時点tでスロットル制御用スリップ量SSがスロットル制御開始閾値K以上となると、図11の処理のステップS24からステップS35に移行して最小設定値θMIN が設定され、これがモータ駆動回路52cに出力される。このため、ステップモータ10が回転駆動し、サブスロットルバルブ10dのスロットル開度θが図12(b)に示すように急激に減少し、これによりエンジン出力が低下する。
【0073】
その後、図12の時点tでブレーキ制御用スリップ量SBjが閾値K以上となると、ステップS11からステップS12に移行して、高レベルの駆動力制御信号Sをソレノイド駆動回路52c、52cに出力し、これらソレノイド駆動回路52c、52cからアクチュエータ48の駆動力制御用切換弁53A,53BのソレノイドSLに通電されて、これら切換弁53A,53Bがオフセット位置に切換えられる。
【0074】
このため、アクチュエータ48のソレノイドバルブ54jがマスタシリンダ46に代えて所定圧力に保持された油圧ブースタHBに連通される状態となる。そして、ステップS13において制御変数Nが“0”にクリアされ、ステップS14においてブレーキ制御用スリップ量Sを算出すると共に、ステップS15においてスリップ量変化量αを算出する。
【0075】
そして、ステップS16でスリップ率Sとスリップ率変化量αとをもとに図9の制御マップを参照することにより、ステップS17において急増圧モードが設定され、減圧信号DS及び保持信号HSが共に論理値“0”に設定される。
【0076】
このため、ソレノイドバルブ54jが増圧位置に維持されて、油圧ブースタHBの高ブレーキ液圧が制動用シリンダ40jに供給されることにより、ホイールシリンダ圧が急増して、駆動輪となる前輪1FL、1FRに大きな制動力が作用される。
【0077】
このように、エンジン出力が低下すると共に、前輪1FL,1FRに対する制動力が作用されることにより、車輪速Vwの増加傾向が抑制されて、時点tでスリップ率変化量αが零から負に変わると、保持モードが設定され、これによって保持信号HSが論理値“1”に反転されることにより、ソレノイドバルブ54jが保持位置に切換わって、制動用シリンダ40jのブレーキ液圧が図12(c)に示すように保持される。
【0078】
その後、時点tでブレーキ制御用スリップ量SBが閾値Kより低下する車輪速Vwとなると、図11の処理においてステップS11からステップS18,S19を経てステップS20に移行して、緩減圧モードが設定されて、減圧信号DS及び保持信号HSが所定のデューティ比で互いに逆関係に論理値“1”及び論理値“0”を繰り返すことにより、ソレノイドバルブ54jが減圧位置と保持位置とに所定間隔で切換えられて制動用シリンダ40jのブレーキ液圧が図12(c)に示すようにステップ状に低下する。
【0079】
次いで、時点tでスロットル制御用スリップ量SSが閾値K未満となると、図11の処理において、ステップS24からステップS25に移行し、変数Nが“0”にクリアされているので、ステップS26に移行して変数Nがインクリメトされ、スロットル角θが最小値θMIN であるので、ステップS27からステップS28に移行して、現在のスロットル角θに所定値Δθを加算した値を新たなスロットル角θとして設定する共に、これをモータ駆動回路52cに出力することにより、スロットル角θが図12(b)で破線図示のようにステップ状に増加される。
【0080】
その後、スロットル制御用スリップ量SSが閾値K未満の状態を継続し、このとき、変数Nが“0”ではない正の値となるので、ステップS25からステップS31に移行して、順次変数Nをインクリメントするが、スロットル開度θは変更されず、これが繰り返されて変数Nが所定数NSSに達するとステップS32からステップS30に移行して、変数Nが“0”にクリアされる。
【0081】
このため、変数Nが“0”にリセットされた後に時点tでステップS24、S25、S26、S27を経てステップS28に移行することにより、スロットル開度θが再度Δθ分ステップ状に増加され、エンジン出力が増加される。
【0082】
このように、スロットル制御用スリップ量SSが閾値K未満の状態を継続している間スロットル開度θがステップ状に増加され、この間にブレーキ制御では、緩減圧モードが継続されているので、時点tで制動用シリンダ6jのブレーキ流体圧が零となると共に、制御変数Nが所定値NBS に達したときにステップS22に移行して低レベルの駆動力制御信号Sが駆動力制御用トランジスタ42に出力されることにより、アクチュエータ48の駆動力制御用切換弁53A,53Bがノーマル位置に切換えられ、ソレノイドバルブ54jは、油圧ブースタHBに代えてマスタシリンダ46に連通される。
【0083】
その後、時点tでスロットル制御用スリップ量SSが閾値K以上となると、ステップS24からステップS33に移行し、制御フラグFSが“1”にセットされているので、ステップS36に移行し、スリップ量変化量βが正であるので、ステップS37に移行して、現在のスロット開度θから所定値Δθを減算した値を新たなスロット開度θとして設定する共に、このスロット開度θをモータ駆動回路52cに出力し、これによってスロットル開度θが図12(b)に示すように減少し、エンジン出力が低下される。
【0084】
その後、時点tでスリップ量変化量βが零となって減少傾向に変化すると、ステップS36からそのまま処理を終了することにより、スロットル開度θが保持状態となり、時点t10でスロットル制御用スリップ量SSが閾値K未満となると、スロットル開度θがステップ状態に増加されてエンジン出力が徐々に増加される。
【0085】
その後、スロットル制御用スリップ量SSが閾値K未満の状態を継続して、スロットル開度θが最大値θMAX に達すると、ステップS27からステップS29に移行して、制御フラグFSが“0”にリセットされ、次いでステップS30で変数Nも“0”にクリアされて、駆動力制御が終了する。
【0086】
したがって、駆動力制御処理は、スロットル開度θの調整によりエンジン出力を増減させてブレーキ液圧を増減させる制御を行うことにより、駆動輪である前輪1FL、FRの空転を減少させることが可能となる。
【0087】
次に、本実施形態の四輪駆動車の全体的な動作について、図1、図10のフローチャート及び図13に示す車速及び前後輪の回転速度差の変化を参照しながら説明する。
【0088】
今、車両がイグニッションスイッチをオフ状態として停車している状態からブレーキペダル44を踏込んだ状態でイグニッションスイッチをオン状態とすると、これによってマイクロコンピュータ52bに電源が投入され、初期状態で各種フラグが“0”にリセットされる。
【0089】
そして、エンジン10がアイドリング状態にある制動状態から前進走行を開始すると、ステップS1において車輪速センサ42FL、42FRが駆動輪である前輪1FL、1FRの車輪速VwFL、VwFRを検出し、車輪速センサ42FL、42FRが従動輪である後輪1RL、1RRの車輪速VwRL、VwRRを検出する。次いで、ステップS2及びステップS3において前輪平均速度MVWF及び後輪平均速度MVWRを算出し、ステップS4において後輪平均速度MVWRから推定車体速度Vwを算出し、ステップS5において前後輪速度差ΔMVを算出する。
【0090】
そして、ステップS6において、車両が四輪駆動走行を必要とする速度で走行しているか(基準車速Vを下回って走行しているか)、それとも二輪駆動走行で充分な速度で走行しているのか(基準車速V以上で走行しているか)、推定車体速度Vwと基準車速Vとを比較する。
【0091】
今、車両が乾燥路面等の高摩擦係数路を前進走行し、駆動輪である前輪1FL、1FRにスリップが発生していないものとすると、シフトレバーが前進走行側に切換えたことにより後進走行側のシフト位置検出スイッチ19bはオフ状態を維持するため、前後進切換用電磁方向切換弁19のソレノイド19aは非通電状態を維持して、切換位置が図1に示すノーマル位置を継続する。この状態でアクセルペダル50を踏込むことにより、エンジン10の回転力が変速機12を介して前輪側差動装置13に伝達され、この前輪側作動装置13で前輪1FL、1FRを前進方向に回転駆動することにより前進走行を開始する。
【0092】
このとき、ピストンポンプ16の回転軸16aが回転駆動することにより、このピストンポンプ16から回転速度に応じた吐出流量の作動油が吐出される。この吐出された作動油は、高圧配管18H、前後進切換用電磁方向切換弁19を介して可変容量モータ20の流入ポート20aに吸入され、流出ポート20bから吐出される。
【0093】
そして、車両が低速領域(基準速度Vを下回る車速)で走行する場合には、ピストンポンプ16と可変容量モータ20の吐出流量は、図4に示したように、可変容量モータ20の最大斜板傾斜角時の吐出流量がピストンポンプ16と比較して大きくなるように設定されているので、通常走行により後輪1RR、1RLと前輪1FR、1FLとが同一回転速度で回転駆動する状態では、後輪1Rへの駆動トルクはほとんど伝達されない。
【0094】
その際、図10の制御処理では、車両が基準速度Vを下回る速度で走行しているのでステップS6からステップS7に移行し、駆動輪である前輪1FL、1FRにスリップが発生していないのでステップS7からステップS8に移行した後にプログラムの実行を中断し、ステップS9の駆動力制御処理には移行しない。 また、車両が、基準車速V以上の速度で高摩擦係数路を走行し、前輪1FL、1FRにスリップが生じていない場合には、ステップS6からステップS8に移行した後にプログラムの実行を中断し、ステップS9の駆動力制御処理には移行しない。
【0095】
次に、車両が凍結路、降雪路等の低摩擦係数路を急発進し、その際、前輪1FL、1FRにスリップが発生したものとすると、前輪1FL、1FR及び後輪1RL、1RRとの間に前輪1FL、1FRが高回転となる回転数差が生じる。これによって、ピストンポンプ16の吐出流量が可変容量モータ20の吐出流量を上回ることになるので、可変容量モータ20の抵抗が負荷となり最大駆動トルクTMAX を発生し、この駆動トルクを後輪側差動装置27を介して後輪1RL、1RRに伝達するので、車両は四輪駆動状態で走行する。
【0096】
その際、図10の制御処理では、車両の発進直後(車速が基準速度V以下)においてステップS6からステップS7に移行する。そして、前輪1FL、1FRが高回転でスリップ状態となっていることから、図13の車速“0”近傍のように、前後輪速度差ΔMVが第1の制御開始設定値ΔNを上回るので、ステップS7からステップS9の駆動力制御処理に移行する。そして、駆動力制御処理では、前述したように、スロットル開度θの調整によりエンジン出力を増減させてブレーキ液圧を増減させる制御を行うことにより、駆動輪である前輪1FL、FRの空転を減少させていく。
【0097】
これにより、車両の発進直後において、前後輪速度差ΔMVが最大駆動トルクTMAX を発生する回転速度差(図8に示した回転速度差ΔN)より大きくなっても、後輪1RL、1RRへの駆動トルクは増大せず、本実施形態では、ステップS9における駆動力制御処理によって最大駆動トルクTMAX を発生するために必要な回転以上の前輪1FL、FRの空転を減少しているので、運転者に違和感を与えずに四輪駆動状態に移行することができる。
【0098】
そして、アクセルペダル50を踏み込んで車速を増大していくと、前輪1FL、1FRのスリップ状態が減少することによって、図13に示すように前後輪速度差ΔMVが小さくなっていく。
その際、図10の制御処理では、車速が基準速度Vに達した時点でステップS6からステップS8に移行する。そして、この車速近傍では、前後輪速度差ΔMVが第2の制御開始設定値ΔNを上回っているので、ステップS8からステップS9の駆動力制御処理に移行する。そして、駆動力制御処理では、前述した動作と同様に、スロットル開度θの調整によりエンジン出力を増減させてブレーキ液圧を増減させる制御を行うことにより、前輪1FL、FRの空転を減少させていく。
【0099】
ここで、車速が基準速度Vを越えると、ピストンポンプ16の吐出流量は可変容量ポンプ20のモータ容量を上回ることがなく、後輪1RL、1RRへの駆動トルクの伝達が発生しないので、車両は二輪駆動状態に移行するが、車速が基準速度Vを下回っているときの四輪駆動状態から前述した二輪駆動状態に移行するときまで、ステップS9の駆動力制御処理が連続的に実行され、後輪1RL、1RRへの駆動トルクが急激に減少するのに対応して前輪1FL、1FRの空転を効果的に防止することができるので、運転者に違和感を与えることがない。
【0100】
さらに、車両が車速V以上で走行している際に、低摩擦係数路を通過することによって前輪1FL、1FRが空転状態となると、図10の制御処理では、ステップS8において前後輪速度差ΔMVが第2の制御開始設定値ΔNを上回っているので、ステップS8からステップS9の駆動力制御処理に移行する。
【0101】
この駆動力制御処理によってスロットル開度θの調整によりエンジン出力を増減させてブレーキ液圧を増減させる制御を行うことにより、駆動輪である前輪1FL、FRの空転を減少させてホイールスピンを防止することができるので、車両の発進性、加速性の向上及び尻振り防止による車両安定性の向上を図ったトラクションコントロール制御を行うことができる。
【0102】
次に、車両を後進させる場合には、シフトレバーを後進位置に切換えることによりシフト位置検出スイッチ19bがオン状態となり、電磁方向切換弁19のソレノイド19aが通電状態となり、切換位置がノーマル位置からオフセット位置に切換わる。これによって、高圧配管18H内部の作動油を可変容量モータ20の流出ポート20bに供給し、流入ポート20aから吐出される作動油を低圧配管18L側に戻すことにより、可変容量モータ20の回転軸20cを前進走行時とは逆転させて、後輪1RL、1RRを逆回転させる。このため、後進時においても前進時と全く同様の作用をする。
【0103】
次に、本発明の第2の実施形態について図14から図16を参照して説明する。なお、図1から図13に示した第1の実施形態と同様の構成には、同一符号を付してその説明を省略する。
【0104】
図14は、本実施形態の記憶装置52bに記憶されている演算処理装置52bの演算処理実行に必要な制御データである。この制御データは、後輪1RL、1RR側に伝達される駆動トルクTと前後輪の間の回転数差(回転速度差)の関係を示すものであるが、ピストンポンプ16と可変容量モータ20の吐出流量特性の固有域における流量が車速が高いほどその流量差が大きくなることに起因して、駆動トルクTは、低車速時ほど小さな前後輪の回転速度差で発生しやすく、車速が増大するにつれて、大きな前後輪の回転速度差が発生しないと駆動トルクTが発生しにくい。なお、上記車速の範囲は、基準車速V以下の速度である。
【0105】
そこで、本実施形態では、車速の変化に応じた複数の駆動トルク線図を設定し、それら各駆動トルク線図の最大駆動トルクTMAX を発生する回転速度差より大きな値に設定した複数の第1の制御開始設定値ΔNH1、ΔNH2、ΔNH3を、車速に対応して記憶している。すなわち、低車速に対応して小さな第1の制御開始設定値ΔNH1を記憶し、所定値だけ増大する車速に対応して、前述した値ΔNH1より大きな第1の制御開始設定値ΔNH2、ΔNH3が順に記憶されている。
【0106】
また、図15は、マイクロコンピュータ52bの演算処理装置52bが、図14の制御データを使用して実行する制御処理を示すものである。なお、この制御処理において、図10に示したステップ番号と同一部分には、同一ステップ番号を付してその説明を省略する。なお、この制御処理も、所定時間(例えば5msec)毎のタイマ割込処理として実行されている。
【0107】
この図15の制御処理は、ステップS6において推定車体速度Vと予め設定した車両の低速領域の最大値である基準車速Vとの比較判定を行った結果、推定車体速度Vcが基準車速Vを下回るときには(Vc<V)、ステップS40に移行し、他方、推定車体速度Vcが基準車速V以上であるときには(Vc≧V)、ステップS8に移行する。
【0108】
そして、前記ステップS40では、図14の制御データを参照して推定車体速度Vcに対応した第1の制御開始設定値ΔNH(n)(n=1、2、3)を算出し、ステップS41に移行する。
【0109】
ステップS41では、前後輪速度差ΔMVと第1の制御開始設定値ΔNH(n)との比較判定を行い、前後輪速度差ΔMVが第1の制御開始設定値ΔNH(n)以上であるときには(ΔMV≧ΔNH(n))、ステップS9に移行し、他方、前後輪速度差ΔMVが第1の制御開始設定値ΔNH(n)を下回るときには(ΔMV<ΔNH(n))、タイマ割込処理を終了して所定のメインプログラムに復帰する。
【0110】
そして、ステップS8では、前後輪速度差ΔMVと第2の制御開始設定値ΔNとの比較判定を行い、前後輪速度差ΔMVが第2の制御開始設定値ΔN以上であるときには(ΔMV≧ΔN)、ステップS9に移行し、他方、前後輪速度差ΔMVが第2の制御開始設定値ΔNを下回るときには(ΔMV<ΔN)、タイマ割込処理を終了して所定のメインプログラムに復帰する。
【0111】
そして、前記ステップS9では、図11の制御処理により駆動輪1RL,1RRのスリップ状態に応じてブレーキ制御処理及びスロットル制御処理を行う駆動力制御処理を実行してからタイマ割込処理を終了して所定のメインプログラムに復帰する。
【0112】
ここで、図15のステップS6、ステップS40、ステップS41及びステップS8が本発明の制御開始設定手段に対応し、図15のステップS41で示す第1の制御開始設定値ΔNH(n)が本発明の第1開始基準値に対応する。
【0113】
本実施形態において車両が凍結路、降雪路等の低摩擦係数路を急発進し、その際、前輪1FL、1FRにスリップが発生すると、ピストンポンプ16の吐出流量が可変容量モータ20の吐出流量を上回り、可変容量モータ20の抵抗が負荷となり最大駆動トルクTMAX を発生し、この駆動トルクを後輪側差動装置27を介して後輪1RL、1RRに伝達するので、車両は四輪駆動状態で走行する。
【0114】
その際、図15の制御処理では、車両の発進直後(車速が略“0”に近い速度)においてステップS6からステップS40に移行する。そして、図14の制御データを参照して例えば略“0”に近い車速に対応した第1の制御開始設定値ΔNH1を算出し、ステップS41において前後輪速度差ΔMVと第1の制御開始設定値ΔNH1との比較判定を行う。そして、図16の車速“0”近傍のように、前後輪速度差ΔMVが第1の制御開始設定値ΔNH1を上回るので、ステップS41からステップS9の駆動力制御処理に移行する。そして、駆動力制御処理では、前述したように、スロットル開度θの調整によりエンジン出力を増減させてブレーキ液圧を増減させる制御を行うことにより、駆動輪である前輪1FL、FRの空転を減少させていく。
【0115】
そして、アクセルペダル50の踏み込みによって車速(基準車速V以下)が増大すると、ステップS40において図14の制御データの参照により増大した車速に対応する、例えば第1の制御開始設定値ΔNH2を算出し、この第1の制御開始設定値ΔNH2を比較対象としてステップS41からステップS9に移行して駆動力制御処理を行う。
【0116】
このように、本実施形態では、車速の増大に応じて第1の制御開始設定値ΔNH(n)も小さい値から大きい値に適宜変更して制御を行っているので、車速の変化により最大駆動トルクTMAX を発生する前後輪の回転速度差が変化しても、最大駆動トルクTMAX を発生するために必要な回転以上の前輪1FL、FRの空転のみを駆動力制御処理によって減少することができる。言い換えると、四輪駆動状態となる最大駆動トルクTMAX が発生する前に駆動力制御処理が実行してしまうという不都合を解消することが可能となり、四輪駆動車の性能を充分に発揮しながら車両安定性の向上を図るトラクションコントロール制御を確実に行うことができる。
【0117】
そして、本実施形態は、第1の実施形態と同様に、車速が基準速度Vを下回っているときの四輪駆動状態から前述した二輪駆動状態に移行するときまで、駆動力制御処理が連続的に実行されているので、後輪1RL、1RRへの駆動トルクが急激に減少するのに対応して前輪1FL、1FRの空転を効果的に防止することが可能となり、運転者に違和感を与えることがない。
【0118】
また、車両が車速V以上で走行している際に、低摩擦係数路を通過することによって前輪1FL、1FRが空転状態となっても、駆動力制御処理によってスロットル開度θの調整によりエンジン出力を増減させてブレーキ液圧を増減させる制御を行うことにより、駆動輪である前輪1FL、FRの空転を減少させてホイールスピンを防止することができるので、車両の発進性、加速性の向上及び尻振り防止による車両安定性の向上を図ったトラクションコントロール制御を行うことができる。
【0119】
次に、本発明の第3の実施形態について図17及び図18を参照して説明する。なお、この実施形態も、図1から図13に示した第1の実施形態と同様の構成には、同一符号を付してその説明を省略する。
【0120】
図17は、マイクロコンピュータ52bの演算処理装置52bが実行する制御処理を示すものである。この図17の制御処理は、ステップS42において推定車体速度Vと予め設定した車両の低速領域の最大値である基準車速Vとの比較判定を行った結果、推定車体速度Vcが基準車速V以上であるときには(Vc≧V)、ステップS43に移行し、他方、推定車体速度Vcが基準車速Vを下回るときには(Vc<V)、タイマ割込処理を終了して所定のメインプログラムに復帰する。
【0121】
そして、前記ステップS43では、前後輪速度差ΔMVと第2の制御開始設定値ΔNとの比較判定を行い、前後輪速度差ΔMVが第2の制御開始設定値ΔN以上であるときには(ΔMV≧ΔN)、ステップS9に移行し、他方、前後輪速度差ΔMVが第2の制御開始設定値ΔNを下回るときには(ΔMV<ΔN)、タイマ割込処理を終了して所定のメインプログラムに復帰する。
【0122】
そして、前記ステップS9では、図11の制御処理により駆動輪1RL,1RRのスリップ状態に応じてブレーキ制御処理及びスロットル制御処理を行う駆動力制御処理を実行してからタイマ割込処理を終了して所定のメインプログラムに復帰する。
【0123】
ここで、図17のステップS42、ステップS43が本発明の制御開始設定手段に対応し、図15のステップS43で示す第2の制御開始設定値ΔNが本発明の開始基準値に対応する。
【0124】
本実施形態にあっては、車両が基準車速Vを下回って走行する際に前輪1FL、1FRにスリップが発生すると、ピストンポンプ16の吐出流量が可変容量モータ20の吐出流量を上回り、可変容量モータ20の抵抗が負荷となり最大駆動トルクTMAX を発生するので、四輪駆動状態で走行する。そして、本実施形態は、前述した第1及び第2の実施形態と異なり、基準車速Vを下回る車速では駆動力制御処理を実行しない。
【0125】
一方、車両が基準車速V以上の二輪駆動状態で走行すると、ステップS42からステップS43に移行して、前後輪速度差ΔMVと第2の制御開始設定値ΔNとの比較を行う。そして、図18に示すように、車速V(V>V)に加速した時点において車両が低摩擦係数路を通過して前輪1FL、1FRが空転状態となると、図17の制御処理では、ステップS43において前後輪速度差ΔMVが第2の制御開始設定値ΔNを上回るので、ステップS43からステップS9の駆動力制御処理に移行する。
【0126】
この駆動力制御処理によってスロットル開度θの調整によりエンジン出力を増減させてブレーキ液圧を増減させる制御を行うことにより、駆動輪である前輪1FL、FRの空転を減少させてホイールスピンを防止することができるので、車両の発進性、加速性の向上及び尻振り防止による車両安定性の向上を図ったトラクションコントロール制御を行うことができる。
【0127】
このように、本実施形態では、基準車速V以上の車速においてのみ駆動力制御処理を実行するので、複雑な制御を行うことなく四輪駆動制御とトラクションコントロール制御との両立を図ることができる。
【0128】
なお、図6に示したアクチュエータ48において、3ポート3位置のソレノイドバルブ54FL、54FRで構成する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、これらソレノイドバルブ54FL、54FRの夫々を2ポート2位置の流入側電磁切換弁及び流出側電磁切換弁の2つの切換弁で置換するようにしてもよい。
【0129】
また、上記実施形態においては、油圧ブースタHBを適用して、これを駆動力制御用の油圧源とする場合について説明したが、これに限定されるものではなく、別途電動モータで駆動される流体圧ポンプを適用して、これを駆動力制御用の油圧源とするようにしてもよい。
【0130】
さらに、上記実施形態においては、駆動力制御処理においてブレーキ制御とスロットル制御の双方を行う場合について説明したが、これに限定されるものではなく、ブレーキ制御又はスロットル制御のみを行うようにしてもよい。
【0131】
また、上記実施形態においては、後輪の制動用シリンダ40FL,40FRを個別に制御する場合について説明したが、これらを共通のアクチュエータで制御するようにしてもよい。
【0132】
また、図1に示した四輪駆動車においては、後輪側差動装置27を設けた場合について説明したが、これに限定されるものではなく、後輪差動装置27を省略し、これに代えて左右後輪1RL、1RRの左右車軸28に個別に可変容量モータを設けるように構成してもよい。
【0133】
さらにまた、上記第1から第3の実施形態においては、前輪駆動車をベースとした実施形態について説明したが、これに限らず後輪駆動車をベースとした場合にも、後輪1RL、1RRを駆動輪として各構成部品を備えることにより、上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る四輪駆動車を示す概略構成図である。
【図2】本発明に係る流体圧モータとしての斜板式アキシャルピストンモータの断面図である。
【図3】斜板式アキシャルピストンモータの機構を示す概念図である。
【図4】本発明に係る流体圧ポンプと流体圧モータの吐出流量の特性を示す線図である。
【図5】本発明に係るトラクションコントロール制御装置を示す概略構成図である。
【図6】図5のアクチュエータの具体例を示す構成図である。
【図7】図5のコントローラの具体例を示すブロック図である。
【図8】本発明の第1の実施形態で使用する制御開始設定値のデータを示す図である。
【図9】駆動力制御におけるブレーキ制御用制御マップを示す図である。
【図10】本発明の第1の実施形態の制御処理の手順を示すフローチャートである。
【図11】本発明に係る駆動力制御処理の手順を示すフローチャートである。
【図12】駆動力制御の動作説明に供するタイムチャートである。
【図13】第1の実施形態の制御処理における制御開始設定値と車速の関係を示す図である。
【図14】本発明の第2の実施形態で使用する制御開始設定値のデータを示す図である。
【図15】本発明の第2の実施形態の制御処理の手順を示すフローチャートである。
【図16】第2の実施形態の制御処理における制御開始設定値と車速の関係を示す図である。
【図17】本発明の第3の実施形態の制御処理の手順を示すフローチャートである。
【図18】第3の実施形態の制御処理における制御開始設定値と車速の関係を示す図である。
【符号の説明】
10 エンジン(主原動機)
14 駆動車軸
16 ピストンポンプ(流体圧ポンプ)
18H 高圧配管(第1の流路)
18L 低圧配管(第2の流路)
20 可変容量モータ(流体圧モータ)
21 リリーフ弁(トルク制限手段)
42FL,42FR、42RL,42RR 車輪速センサ(車輪速検出手段)
52 コントローラ
ΔN、ΔNH(n) 第1の制御開始設定値(第1開始基準値)
ΔN 第2の制御開始設定値(第2開始基準値)
ΔMV 前後輪速度差(回転速度差)
Vc 推定車体速度(車体速)

Claims (5)

  1. 主原動機により駆動される駆動車軸と、該駆動車軸に連動して回転する流体圧ポンプと、従動車軸に連動して回転する流体圧モータと、前記流体圧ポンプの吐出口と前記流体圧モータの吸入口とを連通する第1の流路と、前記流体圧ポンプの吸入口と前記流体圧モータの吐出口とを連通する第2の流路と、前記流体圧ポンプの吐出量が前記流体圧モータの吸入量を上回るときに、前記流体圧モータへ流れる作動流体の最高吐出圧を規制して前記従動車軸側への伝達トルクの最大値を設定するトルク制限手段とを備えた四輪駆動車において、
    前記駆動車軸に連結する駆動輪及び前記従動車軸に連結する従動輪の車輪速度を検出する車輪速検出手段と、車体速を検出する車体速検出手段と、前記駆動輪及び前記従動輪間の回転速度差を検出する回転速度差検出手段と、前記駆動輪に対する制動力及び前記主駆動源から出力される駆動力を調整して駆動力制御を行う駆動力制御手段と、前記回転速度差演算手段で検出した前記回転速度差が所定の開始基準値以上となったときに前記駆動力制御手段の制御を開始する制御開始設定手段とを備え、
    前記制御開始設定手段の前記開始基準値を、前記車体速検出手段で検出した車体速に基づいて、四輪駆動走行を必要とする低速の車体速であるときに大きな値の第1開始基準値に設定するとともに、二輪駆動走行を必要とする前記低速以上の車体速であるときには、前記第1開始基準値より小さな値の第2開始基準値に設定したことを特徴とする四輪駆動車。
  2. 前記第1開始基準値を、前記トルク制限手段の作動によって前記従動輪への伝達トルクが最大値となる所定の回転速度差以上の値に設定したことを特徴とする請求項1記載の四輪駆動車。
  3. 前記第2開始基準値を、加速時に前記駆動輪がホイールスピンする際に発生する回転速度差に設定したことを特徴とする請求項1又は2記載の四輪駆動車。
  4. 前記第1開始基準値を、前記車体速検出手段で検出した車体速に基づいて、前記車体速が増大するに従って徐々に大きな値となるように設定したことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の四輪駆動車。
  5. 主原動機により駆動される駆動車軸と、該駆動車軸に連動して回転する流体圧ポンプと、従動車軸に連動して回転する流体圧モータと、前記流体圧ポンプの吐出口と前記流体圧モータの吸入口とを連通する第1の流路と、前記流体圧ポンプの吸入口と前記流体圧モータの吐出口とを連通する第2の流路と、前記流体圧ポンプの吐出量が前記流体圧モータの吸入量を上回るときに、前記流体圧モータへ流れる作動流体の最高吐出圧を規制して前記従動車軸側への伝達トルクの最大値を設定するトルク制限手段とを備えた四輪駆動車において、
    前記駆動車軸に連結する駆動輪及び前記従動車軸に連結する従動輪の車輪速度を検出する車輪速検出手段と、車体速を検出する車体速検出手段と、前記駆動輪及び前記従動輪間の回転速度差を検出する回転速度差検出手段と、前記駆動輪に対する制動力及び前記主駆動源から出力される駆動力を調整して駆動力制御を行う駆動力制御手段と、前記回転速度差演算手段で検出した前記回転速度差が所定の開始基準値以上となったときに前記駆動力制御手段の制御を開始する制御開始設定手段とを備え、前記制御開始設定手段の前記開始基準値を、加速時に前記駆動輪がホイールスピンする際に発生する回転速度差に設定するとともに、この開始基準値を、前記車体速検出手段に基づいて二輪駆動走行を必要とする中高速以上の車体速のときのみに設定したことを特徴とする四輪駆動車。
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