JP3588647B2 - 蓄冷器および冷凍機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は蓄冷器および冷凍機に係り、特に、多数の粒状物によって構成された蓄冷材を有する蓄冷器、および、多数の粒状物によって構成された蓄冷材を用いた冷凍機に関する。
【0002】
【従来の技術】
ギフォード・マクマホン式冷凍機(以下、「GM冷凍機」と略記する。)、スターリング冷凍機、パルスチューブ冷凍機等の冷凍機では、内部に蓄冷材が充填された蓄冷器を利用して、低温を得る。
【0003】
例えばGM冷凍機では、蓄冷器を備えたディスプレーサピストンとこのディスプレーサピストンが挿入されるシリンダとを有する膨張器に、圧縮された作動流体(冷媒ガス)を供給し、この作動流体(冷媒ガス)を膨張器内で断熱膨張させて寒冷を得る。
【0004】
得ようとする寒冷の温度等に応じて、使用する膨張器の段数が適宜選定されると共に、蓄冷器に使用される蓄冷材の種類も適宜選定される。
【0005】
例えば、4K程度以下まで冷却することができるタイプのGM冷凍機では、一般に、2段ディスプレーサが使用される。高温部側に配置される第1段目の蓄冷器には、例えば、多数の鉛玉によって構成される第1の蓄冷材と、多数の金属メッシュによって構成される第2の蓄冷材とが、低温部側からこの順番で充填される。低温部側に配置される第2段目の蓄冷器には、例えば、粒状の多数の磁性材料によって構成される第1の蓄冷材と、多数の鉛玉によって構成される第2の蓄冷材とが、低温部側からこの順番で充填される。
【0006】
1つの蓄冷器内に第1および第2の蓄冷材を充填する場合には、一般に、これら2つの蓄冷材の間に仕切り材が配置される。この仕切り材は、第1の蓄冷材と第2の蓄冷材との間にガス流路を確保しつつ、これら第1および第2の蓄冷材を隔て、フェルト製の仕切り材が多用されている。
【0007】
蓄冷器内から蓄冷器外への蓄冷材の流出を防止するために、上記の仕切り材と同様にして構成される流出防止材が、第1の蓄冷材における低温部側の端に隣接して、また、第2の蓄冷材における高温部側の端に隣接して、それぞれ配置される。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
冷凍機の運転時には、蓄冷器内の高温部側から低温部側へと、また、低温部側から高温部側へと、冷媒ガスが高速で繰り返し流通する。第1および第2の蓄冷材が充填された蓄冷器では、冷媒ガスの流通に伴って、第1および第2の蓄冷材を隔てている仕切り材に外力が働く。
【0009】
この外力によって仕切り材が変形したり傾いたりすると、第1の蓄冷材と第2の蓄冷材とが混合することがある。このような混合が生じると、蓄冷器の性能、ひいては冷凍機の性能が低下する。
【0010】
また、第1の蓄冷材と第2の蓄冷材とを共に多数の粒状物によって構成する場合、第1の蓄冷材は、例えば、第2の蓄冷材を構成する粒状物の平均粒径よりも小さな平均粒径を有する多数の粒状物によって構成される。
【0011】
このようにして構成された第1の蓄冷材と第2の蓄冷材とが混合すると、蓄冷器の性能が低下する。また、蓄冷材全体のかさ体積が減少し、第1の蓄冷材の低温部側の端に隣接して配置された流出防止材、または、第2の蓄冷材の高温部側の端に隣接して配置された流出防止材が変形したり傾いたりして、蓄冷器内から蓄冷材が流出することもある。
【0012】
蓄冷器からの蓄冷材の流出は、蓄冷器の性能、ひいては冷凍機の性能を低下させるばかりでなく、冷凍機の異常動作の要因となる。
【0013】
本発明の目的は、性能が低下し難い蓄冷器を提供することである。
【0014】
本発明の他の目的は、性能が低下し難い冷凍機を提供することである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明の一観点によれば、長さ方向の一方の端部ないしその近傍および他方の端部ないしその近傍にそれぞれガス流通口が設けられた中空の筒状容器と、前記筒状容器内の第1の領域に充填された多数の粒状物によって構成される第1の蓄冷材と、前記筒状容器の長さ方向に関して前記第1の領域に隣り合う第2の領域に充填された第2の蓄冷材と、前記第1の蓄冷材と前記第2の蓄冷材との間に配置され、これら第1および第2の蓄冷材間にガス流路を確保しつつ、前記第1の蓄冷材から前記第2の蓄冷材への前記粒状物の移動を抑止する仕切り材と、前記仕切り材の両側に設けられて該仕切り材の傾きを防止する傾き防止材とを有する蓄冷器が提供される。
【0016】
本発明の他の観点によれば、圧縮された冷媒ガスを生成する圧縮機と、(i) シリンダ、(ii)前記シリンダ内に挿入され、該シリンダの一方の端部に第1の空間を画定すると共に他方の端部に第2の空間を画定しつつ往復運動を行うピストン、(iii) 前記第1の空間と前記第2の空間との間に形成されたガス流路、および、(iv)前記ガス流路内に配置された蓄冷器であって、(a) 長さ方向の一方の端部ないしその近傍および他方の端部ないしその近傍にそれぞれガス流通口が設けられた中空の筒状容器と、(b) 前記筒状容器内の第1の領域に充填された多数の粒状物によって構成される第1の蓄冷材と、(c) 前記筒状容器の長さ方向に関して前記第1の領域に隣り合う第2の領域に充填された第2の蓄冷材と、(d) 前記第1の蓄冷材と前記第2の蓄冷材との間に配置され、これら第1および第2の蓄冷材間にガス流路を確保しつつ、前記第1の蓄冷材から前記第2の蓄冷材への前記粒状物の移動を抑止する仕切り材と、(e) 前記仕切り材の傾きを防止する傾き防止材とを有する蓄冷器と、を含み、前記圧縮機から前記圧縮された冷媒ガスの供給を受ける膨張器とを具備した冷凍機が提供される。
【0017】
第1の蓄冷材と第2の蓄冷材とを仕切り材によって隔てる他に、この仕切り材の傾きを傾き防止材によって防止することにより、第1の蓄冷材と第2の蓄冷材との混合を防止することが可能になる。蓄冷器からの蓄冷材の流出を防止することも可能になる。その結果として、蓄冷器の性能低下、ひいては冷凍機の性能低下が抑制される。
【0018】
【発明の実施の形態】
図1は、実施例による蓄冷器を含むディスプレーサピストンを概略的に示す断面図である。同図に示すディスプレーサピストン30は、外周面に螺旋状の溝1aが切られたディスプレーサ筒1と、ディスプレーサ筒1の一方の開放端に装着された下蓋3と、ディスプレーサ筒1の他方の開放端に装着された上蓋5とによって構成された筒状容器7を備える。下蓋3は、ディスプレーサ筒1内と外部とを繋ぐガス流路3aを有し、上蓋5は、ディスプレーサ筒1内と外部とを繋ぐガス流路5aを有する。
【0019】
第1の蓄冷材8と第2の蓄冷材9とが、下蓋3側からこの順番で筒状容器7内に充填されて、蓄冷器を構成している。
【0020】
第1の蓄冷材8は、例えばHoCu2 またはErNi0.9Co0.1等の磁性材料からなる多数の粒状物8aによって構成された磁性蓄冷材である。粒状物8a全体の平均粒径は、例えば0.2mm程度であり、個々の粒状物8aの組成は互いに同一である。
【0021】
第2の蓄冷材9は、例えば鉛からなる多数の粒状物(鉛玉)9aによって構成され、これらの鉛玉9a全体の平均粒径は、例えば0.4mmである。
【0022】
2枚の金属メッシュ10aが下蓋3の内側表面上に配置され、この金属メッシュ10a上にフェルト製の下部流出防止材11が配置される。金属メッシュ10aは、下部流出防止材11の変形を抑制する支持材として機能すると同時に、下蓋3と共に、下部流出防止材11の下蓋3(ガス流路3a)側への移動や傾きを防止する機能を有する。
【0023】
1枚の金属メッシュ10bが下部流出防止材11上に配置され、この金属メッシュ10bに隣接して固定用リング12が配置される。固定用リング12は、ディスプレーサ筒1の内周面に圧接される。金属メッシュ10bは、下部流出防止材11の変形を抑制する支持材として機能すると同時に、固定用リング12と共に、下部流出防止材11の第1の蓄冷材8側への移動や傾きを防止する傾き防止材13を構成する。
【0024】
下部流出防止材11の移動や傾きが防止されることから、この下部流出防止材11は、第1の蓄冷材8とガス流路3aとの間にガス流路を確保しつつ、第1の蓄冷材8からガス流路3aへの粒状物8aの流出を長期に亘って抑止することができる。
【0025】
固定用リング15aが第2の蓄冷材9上に配置される。固定用リング15aは、ディスプレーサ筒1の内周面に圧接される。第2の蓄冷材9を構成している多数の鉛玉9aの一部は、固定用リング15aの内周面によって画定される空間内に入り込む。
【0026】
1枚の金属メッシュ16aが固定用リング15a上に配置され、この金属メッシュ16a上にフェルト製の上部流出防止材17が配置される。金属メッシュ16aは、上部流出防止材17の変形を抑制する支持材として機能すると同時に、固定用リング15aと共に、上部流出防止材17の第2の蓄冷材9側への移動や傾きを防止する傾き防止材18aを構成する。
【0027】
2枚の金属メッシュ16bが上部流出防止材17上に配置され、この金属メッシュ16bに隣接して固定用リング15bが配置される。固定用リング15bは、ディスプレーサ筒1の内周面に圧接される。金属メッシュ16bは、上部流出防止材17の変形を抑制する支持材として機能すると同時に、固定用リング15bと共に、上部流出防止材17の上蓋5側への移動や傾きを防止する傾き防止材18bを構成する。
【0028】
上部流出防止材17の移動や傾きが防止されることから、この上部流出防止材17は、第2の蓄冷材9とガス流路5aとの間にガス流路を確保しつつ、第2の蓄冷材9からガス流路5aへの鉛玉9aの流出を長期に亘って抑止することができる。
【0029】
図示のディスプレーサピストン30においては、第1の蓄冷材8と第2の蓄冷材9との間に、第1の蓄冷材8側から順番に、ディスプレーサ筒1の内周面に圧接された固定用リング20aと、1枚の金属メッシュ21aと、フェルト製の仕切り材22と、1枚の金属メッシュ21bと、ディスプレーサ筒1の内周面に圧接された固定用リング20bとが配置される。
【0030】
図2は、固定用リング20a、金属メッシュ21a、仕切り材22、金属メッシュ21bおよび固定用リング20bを拡大して示す分解斜視図である。
【0031】
固定用リング20aは第1の蓄冷材5上に配置される。第1の蓄冷材5を構成している多数の粒状物8aの一部は、固定用リング20aの内周面によって画定される空間内に入り込む。
【0032】
金属メッシュ21aは固定用リング20a上に配置され、この金属メッシュ21a上に仕切り材22が配置される。金属メッシュ21aは、仕切り材22の変形を抑制する支持材として機能すると同時に、固定用リング20aと共に、仕切り材22の第1の蓄冷材8側への移動や傾きを防止する傾き防止材23aを構成する。
【0033】
金属メッシュ21bは仕切り材22上に配置され、この金属メッシュ21b上に固定用リング20bが配置される。第2の蓄冷材9を構成している多数の鉛玉9aの一部は、固定用リング20bの内周面によって画定される空間内に入り込む。金属メッシュ21bは、仕切り材22の変形を抑制する支持材として機能すると同時に、固定用リング20bと共に、仕切り材22の第2の蓄冷材9側への移動や傾きを防止する傾き防止材23bを構成する。
【0034】
仕切り材22の移動や傾きが防止されることから、この仕切り材22は、第1の蓄冷材8と第2の蓄冷材9との間にガス流路を確保しつつ、第1および第2の蓄冷材8、9間での粒状物8aと鉛玉9aとの混合を長期に亘って防止することができる。
【0035】
このように、ディスプレーサピストン30では、蓄冷材の流出が長期に亘って防止されると共に、第1の蓄冷材8と第2の蓄冷材9との混合が長期に亘って防止されることから、その性能が長期に亘って低下し難い。
【0036】
ディスプレーサピストン30の温度は、このディスプレーサピストン30を用いた冷凍機の運転時と停止時とで大きく変動する。冷凍機の運転時および停止時のいずれにおいても個々の固定リング12、15a、15b、20a、20bがディスプレーサ筒1の内周面に圧接されるように、各固定用リングの大きさおよび材質、ならびにディスプレーサ筒1の材質を選定することが好ましい。
【0037】
例えば、ディスプレーサ筒1および各固定用リングは同じ組成のステンレス鋼(SUS304)によって作製され、各固定用リングの外径はディスプレーサ筒1の内径より若干大きき目にされる。各固定用リングは、例えば室温下でディスプレーサ筒1内に圧入される。
【0038】
ディスプレーサピストン30内部での冷媒ガスの流れを乱さないように、各固定用リングの肉厚は、できるだけ薄いことが好ましい。固定用リングの肉厚は、その材質、外径等に応じて適宜選定される。
【0039】
次に、実施例による冷凍機について、図3を参照しつつ説明する。
【0040】
図3は、実施例による冷凍機の構成を概略的に示す。同図に示す冷凍機100は、圧縮された冷媒ガス(以下、「圧縮冷媒ガス」という。)を生成する圧縮機40と、圧縮機40から圧縮冷媒ガスの供給を受け、この圧縮冷媒ガスを断熱膨張させて寒冷を得る膨張器60と、膨張器60上に配置された動力室90とを備えた2段式のGM冷凍機である。冷媒ガスとしては、例えばヘリウムガスが用いられる。
【0041】
膨張器60は、2段式のシリンダ70と、このシリンダ70内に挿入された2段のディスプレーサピストン80とを有する。
【0042】
シリンダ70は、内径が相対的に大きい第1段目のシリンダ部72と、内径が相対的に小さい第2段目のシリンダ部74と、第2段目のシリンダ部74の一端を閉塞する冷却ステージ76とを有する。以下、冷却ステージ76およびその近傍を「低温部」という。
【0043】
第2段目のシリンダ部74の他端は第1段目のシリンダ部72の一端に連接され、第1段目のシリンダ部72の他端につば部78が固着される。以下、第1段目のシリンダ部72におけるつば部78側の開口およびその近傍を「高温部」という。動力室90が高温部側の開口を塞いでいる。
【0044】
第1段目のシリンダ部72および第2段目のシリンダ部74は、ステンレス鋼のような熱伝導率が低く気密性の高い剛性材料によって形成され、冷却ステージ76は銅のような熱伝導性の良好な材料によって形成される。このシリンダ70は、図示を省略した真空容器内に収められる。
【0045】
ディスプレーサピストン80は、第1蓄冷器(第1ディスプレーサピストン)82と、図1に示したディスプレーサピストン30によって構成される第2蓄冷器(第2ディスプレーサピストン;以下、「第2蓄冷器30」という。)と、ピストンロッド84とを有する。
【0046】
第1蓄冷器82は、第1段目のシリンダ部72内に挿入される。この第1蓄冷器82には、多数の鉛玉によって構成される第1の蓄冷材と、多数の金属メッシュによって構成される第2の蓄冷材とが、低温部側からみてこの順番で充填される。第1の蓄冷材と第2の蓄冷材とは、例えばフェルト製の仕切り材によって互いに隔てられる。
【0047】
第1蓄冷器82の外周面にはシール材86、例えば環状のスリッパシール86が装着される。
【0048】
第2蓄冷器30は、第1蓄冷器82における低温部側の端面に連結器具88を介して連結され、第1段目のシリンダ部72における低温部側の領域から第2段目のシリンダ部74内にかけて挿入される。第2蓄冷器30は、下蓋3が冷却ステージ76側に位置するように配置される。
【0049】
ピストンロッド84の一端は第1蓄冷器82における高温部側の端面に連結され、他端は、図示を省略したクランクに接続される。このクランクは、つば部78上に配置された動力室90内のモータMの回転軸に接続される。モータMは、ディスプレーサピストン80をシリンダ70の軸方向に往復運動させるための動力を発生する。
【0050】
ディスプレーサピストン80は、第2蓄冷器30における低温部側の端面と冷却ステージ65の内側底面との間に常に空間S1を、また、第1蓄冷器82における低温部側の端面と第2段目のシリンダ部における高温部側の端面との間に常に空間S2を形成しつつ、往復運動を行う。このとき、第1蓄冷器82における高温部側の端面と動力室90を画定しているハウジング92の底面との間には、常に空間S3が形成される。空間S1、S2およびS3それぞれの広さは、ディスプレーサピストン80の往復運動に伴って変化する。
【0051】
動力室90内には、2つのバルブV1、V2を備えたロータリーバルブ装置Vが配設される。ロータリーバルブ装置Vは、例えば上記のモータMから動力の供給を受ける。
【0052】
バルブV1、V2それぞれの一端には配管50が接続され、それぞれの他端には、圧縮機40から圧縮冷媒ガスの供給を受ける圧縮冷媒ガス供給管52または膨張器60から排出された冷媒ガスの供給を受ける冷媒ガス回収管54が接続される。配管50の一端は、ハウジング92の底に形成された開口92aに接続される。
【0053】
圧縮機40で生成された圧縮冷媒ガスは、圧縮冷媒ガス供給管52、ロータリーバルブ装置V(バルブV1)および配管50を介して、開口92aからシリンダ70内に供給される。シリンダ70内に供給された冷媒ガスは、空間S3、第1蓄冷器82内、空間S2、第2蓄冷器30内および空間S1に達する。
【0054】
シリンダ70内に供給された冷媒ガスは、所定のタイミングで、開口92aからシリンダ70外へ排出される。排出された冷媒ガスは、配管50、ロータリーバルブ装置V(バルブV2)および冷媒ガス回収管54を経て、圧縮機40に回収される。圧縮機40に回収された冷媒ガスは、再利用される。
【0055】
シリンダ70内への圧縮冷媒ガスの供給のタイミングおよびシリンダ70外への冷媒ガスの排出のタイミングは、例えば、ロータリーバルブ装置Vによって制御される。
【0056】
冷凍機100の動作時には、シリンダ70内への圧縮冷媒ガスの供給とシリンダ70内からの冷媒ガスの排出とが、ディスプレーサピストン80の往復運動と所定の位相差の下に繰り返し行われる。ディスプレーサピストン80の往復運動に伴って、空間S1、空間S2内で吸熱が生じる。
【0057】
冷却された冷媒ガスが第2蓄冷器30内および第1蓄冷器82内を通過することによってこれらの蓄冷器30、82内の蓄冷材が徐々に冷却され、やがてほぼ一定の温度となる。このとき、第2蓄冷器30の到達温度は、第1蓄冷器82の到達温度よりも低い。冷却ステージ65が例えば4K程度まで冷却される。
【0058】
前述したように第2蓄冷器30では、蓄冷材の流出が長期に亘って防止されると共に、第1の蓄冷材8(図1参照)と第2の蓄冷材9(図1参照)との混合が長期に亘って防止されることから、その性能が長期に亘って低下し難い。
【0059】
また、第1蓄冷器82には、前述したように、多数の鉛玉によって構成される第1の蓄冷材と、多数の金属メッシュによって構成される第2の蓄冷材とが充填される。第2の蓄冷材を構成する多数の金属メッシュは第1蓄冷器82の長さ方向に積層されて充填され、第1の蓄冷材と第2の蓄冷材とは仕切り材によって互いに隔てられる。したがって、第1の蓄冷器82においても、第1の蓄冷材(鉛玉)と第2の蓄冷材(金属メッシュ)との混合は起こり難い。第1の蓄冷器82の性能は、長期に亘って低下し難い。
【0060】
第1および第2の蓄冷器82および30の性能が長期に亘って低下し難いことから、冷凍機100の性能も長期に亘って低下し難い。
【0061】
以上、実施例による蓄冷器および冷凍機について説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0062】
例えば、蓄冷器用の筒状容器は、ディスプレーサ筒と上蓋が一体成形されたものであってもよい。ディスプレーサ筒の外周面に螺旋状に溝を切ることは必須ではないが、2段式のディスプレーサピストンにおいて低温部側に配置される蓄冷器では、ディスプレーサ筒の外周面に螺旋状に溝を切ることが好ましい。
【0063】
図示した蓄冷器30において第1の蓄冷材を構成する粒状物の材質は、磁性材料に限定されるものではない。蓄冷器に求められる性能や用途等に応じて、鉛玉等を使用することも可能であろう。また、この第1の蓄冷材を構成する多数の粒状物は、必ずしも粒径が揃っていなくてもよい。全体での平均粒径は、その材質および蓄冷器に求められる性能や用途等に応じて、概ね0.2〜0.5mmの範囲内で適宜選択可能である。
【0064】
例えば、2段ディスプレーサを用いて到達温度が概ね4K以下の極低温冷凍機を構成する場合、2段ディスプレーサにおける低温部側の蓄冷器では、磁性材料からなる粒状物によって第1の蓄冷材を構成することが好ましい。磁性材料の具体例としては、前述したHoCu2 およびErNi0.9Co0.1の他に、NdInCu2 、SmInCu2 、Er3Ni、Er0.7Ho0.3Ni 等が挙げられる。
【0065】
このとき、第2の蓄冷材の構成材料は鉛玉に限定されるものではない。蓄冷器に求められる性能や用途等に応じて、例えば複数種の磁性材料によって第2の蓄冷材を構成することも可能であろう。
【0066】
第2の蓄冷材を多数の粒状物によって構成する場合、これら多数の粒状物全体での平均粒径は、その材質および蓄冷器に求められる性能や用途等に応じて、概ね0.1〜1.0mmの範囲内で適宜選択可能である。
【0067】
なお、本明細書でいう「粒状物」とは、粉砕粉のように不定形の物、球状物、および、ペレット状に成形したものを含むものとする。
【0068】
仕切り材は、フェルト以外に、多孔性金属、積層された複数枚の金網等によって作製することもできる。
【0069】
仕切り材の傾きを防止する傾き防止材は、金属メッシュと固定用リングとによって構成する他、多数の孔が形成されたパンチングメタルや、扁平形状の金属リング等によって構成することも可能である。
【0070】
固定用リングを用いて傾き防止材を構成する場合、固定用リングは、切欠き付きリングであってもよい。
【0071】
固定用リングは、ディスプレーサ筒の内周面に圧接させる他、接着剤を用いてディスプレーサ筒の内周面に固着させてもよい。また、ディスプレーサ筒の内周面に雌ねじを切り、固体用リングの外周面に雄ねじを切って、ディスプレーサ筒内に固定用リングを螺入させることでディスプレーサ筒内の所定位置に固定用リングを配置してもよい。
【0072】
ディスプレーサピストンは、蓄冷器を2台備えた2段ディスプレーサの他、蓄冷器を1台のみ備えた1段ディスプレーサであってもよい。3つ以上の蓄冷器を連結させて3段以上のディスプレーサピストンを構成することも可能である。
【0073】
例えば、図3に示した高温部側の空間S3と低温部側の空間S1とを繋ぐガス流路をシリンダ70の外に設け、このガス流路の一部を第1蓄冷器82と第2蓄冷器30とによって構成することも可能である。この場合、ディスプレーサピストン70に代えて、内部にガス流路を有さないピストンが用いられる。蓄冷器を1台のみ用いる場合についても同様である。
【0074】
第1の蓄冷材と第2の蓄冷材との混合を、1つの仕切り材と、この仕切り材の両側に配置した計2つの傾き防止材とによって防止した蓄冷器は、GM冷凍機以外にも、例えばスターリング冷凍機やパルスチューブ冷凍機に使用することができる。
【0075】
その他、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【0076】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば性能が低下し難い蓄冷器および冷凍機が提供される。装置寿命の長い冷凍機を得ることが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例によるディスプレーサピストンを概略的に示す断面図である。
【図2】図1に示したディスプレーサピストン内に装填された金属メッシュ、仕切り材および固定用リングを拡大して示す分解斜視図である。
【図3】実施例による冷凍機を示す概略図である。
【符号の説明】
7…筒状容器、 8…第1の蓄冷材、 8a…第1の蓄冷材を構成する粒状物、 9…第2の蓄冷材、 9a…第2の蓄冷材を構成する粒状物(鉛玉)、 20a、20b…固定用リング(固定材)、 21a、21b…金属メッシュ(支持材)、 22…仕切り材、 23a、23b…傾き防止材、 30…ディスプレーサピストン、 40…圧縮機、 60…膨張器、 70…シリンダ、 80…ディスプレーサピストン、 82…第1蓄冷器、 100…冷凍機。
Claims (13)
- 長さ方向の一方の端部ないしその近傍および他方の端部ないしその近傍にそれぞれガス流通口が設けられた中空の筒状容器と、
前記筒状容器内の第1の領域に充填された多数の粒状物によって構成される第1の蓄冷材と、
前記筒状容器の長さ方向に関して前記第1の領域に隣り合う第2の領域に充填された第2の蓄冷材と、
前記第1の蓄冷材と前記第2の蓄冷材との間に配置され、これら第1および第2の蓄冷材間にガス流路を確保しつつ、前記第1の蓄冷材から前記第2の蓄冷材への前記粒状物の移動を抑止する仕切り材と、
前記仕切り材の両側に設けられて該仕切り材の傾きを防止する傾き防止材であって、該傾き防止材の各々が、前記仕切り材の変形を抑止する支持材と、前記支持材に隣接しつつ、外周面が前記筒状容器の内側面に接触する環状の固定材とを含む傾き防止材と
を有する蓄冷器。 - 前記仕切り材が、フェルト、多孔性金属、又は積層された複数枚の金網によって構成された請求項1に記載の蓄冷器。
- 長さ方向の一方の端部ないしその近傍および他方の端部ないしその近傍にそれぞれガス流通口が設けられた中空の筒状容器と、
前記筒状容器内の第1の領域に充填された多数の粒状物によって構成される第1の蓄冷材と、
前記筒状容器の長さ方向に関して前記第1の領域に隣り合う第2の領域に充填された第2の蓄冷材と、
前記第1の蓄冷材と前記第2の蓄冷材との間に配置され、これら第1および第2の蓄冷材間にガス流路を確保しつつ、前記第1の蓄冷材から前記第2の蓄冷材への前記粒状物の移動を抑止し、繊維によって構成された仕切り材と、
前記仕切り材の両側に設けられて該仕切り材の傾きを防止する傾き防止材であって、該傾き防止材の各々が、前記仕切り材の変形を抑止する支持材と、前記支持材に隣接しつつ、外周面が前記筒状容器の内側面に接触する環状の固定材とを含む傾き防止材と
を有する蓄冷器。 - 前記支持材が、金属メッシュ、又はパンチングメタルによって構成された請求項1〜3のいずれかに記載の蓄冷器。
- 前記固定材が、扁平形状の金属リング、又は切欠き付きリングによって構成された請求項1〜4のいずれかに記載の蓄冷器。
- 前記固定材が、前記筒状容器内に圧入された請求項1〜5のいずれかに記載の蓄冷器。
- 圧縮された冷媒ガスを生成する圧縮機と、
(i)シリンダ、(ii)前記シリンダ内に挿入され、該シリンダの一方の端部に第1の空間を画定すると共に他方の端部に第2の空間を画定しつつ往復運動を行うピストン、(iii)前記第1の空間と前記第2の空間との間に形成されたガス流路、および、(iV)前記ガス流路内に配置された蓄冷器であって、(a)長さ方向の一方の端部ないしその近傍および他方の端部ないしその近傍にそれぞれガス流通口が設けられた中空の筒状容器と、(b)前記筒状容器内の第1の領域に充填された多数の粒状物によって構成される第1の蓄冷材と、(c)前記筒状容器の長さ方向に関して前記第1の領域に隣り合う第2の領域に充填された第2の蓄冷材と、(d)前記第1の蓄冷材と前記第2の蓄冷材との間に配置され、これら第1および第2の蓄冷材間にガス流路を確保しつつ、前記第1の蓄冷材から前記第2の蓄冷材への前記粒状物の移動を抑止する仕切り材と、(e)前記仕切り材の両側に設けられて該仕切り材の傾きを防止する傾き防止材であって、該傾き防止材の各々が、前記仕切り材の変形を抑止する支持材と、前記支持材に隣接しつつ、外周面が前記筒状容器の内側面に接触する環状の固定材とを含む傾き防止材とを有する蓄冷器と、を含み、前記圧縮機から前記圧縮された冷媒ガスの供給を受ける膨張器と
を具備した冷凍機。 - 前記仕切り材が、フェルト、多孔性金属、又は積層された複数枚の金網によって構成された請求項7に記載の冷凍機。
- 圧縮された冷媒ガスを生成する圧縮機と、
(i)シリンダ、(ii)前記シリンダ内に挿入され、該シリンダの一方の端部に第1の空間を画定すると共に他方の端部に第2の空間を画定しつつ往復運動を行うピストン、(iii)前記第1の空間と前記第2の空間との間に形成されたガス流路、および、(iV)前記ガス流路内に配置された蓄冷器であって、(a)長さ方向の一方の端部ないしその近傍および他方の端部ないしその近傍にそれぞれガス流通口が設けられた中空の筒状容器と、(b)前記筒状容器内の第1の領域に充填された多数の粒状物によって構成される第1の蓄冷材と、(c)前記筒状容器の長さ方向に関して前記第1の領域に隣り合う第2の領域に充填された第2の蓄冷材と、(d)前記第1の蓄冷材と前記第2の蓄冷材との間に配置され、これら第1および第2の蓄冷材間にガス流路を確保しつつ、前記第1の蓄冷材から前記第2の蓄冷材への前記粒状物の移動を抑止し、繊維によって構成された仕切り材と、(e)前記仕切り材の両側に設けられて該仕切り材の傾きを防止する傾き防止材であって、該傾き防止材の各々が、前記仕切り材の変形を抑止する支持材と、前記支持材に隣接しつつ、外周面が前記筒状容器の内側面に接触する環状の固定材とを含む傾き防止材とを有する蓄冷器と、を含み、前記圧縮機から前記圧縮された冷媒ガスの供給を受ける膨張器と
を具備した冷凍機。 - 前記支持材が、金属メッシュ、又はパンチングメタルによって構成された請求項7〜9のいずれかに記載の冷凍機。
- 前記固定材が、扁平形状の金属リング、又は切欠き付きリングによって構成された請求項7〜10のいずれかに記載の冷凍機。
- 前記固定材が、前記筒状容器内に圧入された請求項7〜11のいずれかに記載の冷凍機。
- 前記固定材が、前記冷凍機の運転時および停止時のいずれにおいても前記筒状容器の内周面に圧接されるような材質からなる請求項7〜12のいずれかに記載の冷凍機。
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