JP3587556B2 - 包材の製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は包材の製造方法に係り、特にバリアー性を有する包材の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、バリアー性を有する包材が種々の用途に使用されており、通常、このような包材は、金属薄膜等のバリアー層を樹脂で挟み込んだ積層構造をなしている。
【0003】
バリアー性を有する包材としては、例えば、樹脂フィルムにCu、Al、Ni、Si、Sn等の無機酸化物の皮膜をスパッタリング、イオンプレーティング等の物理蒸着法や化学蒸着法により形成したもの(特開平3−275433号)があり、無機酸化物皮膜は酸素、水分のバリアー材として有用であることが知られている。また、レトルトパウチ用の包材として、ドライラミネート法により金属酸化物皮膜面に樹脂フィルムをラミネートしたものが開発されている(特開昭62−103139号)。
【0004】
一方、押し出しラミネート法は、汎用的加工方法として知られ、被ラミネート物に溶融状態の樹脂を押し出してラミネートするものであり、上記の包材に適用する場合、ポリオレフィン樹脂等の溶融樹脂が無機酸化物皮膜等のバリアー層上にラミネートされることになる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、押し出しラミネートによるラミネート強度は、押し出される樹脂の加熱溶融温度を高くして樹脂の酸化を促進することにより向上するものであり、低密度ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂の押し出しラミネートの場合、310〜330℃の高温で溶融したポリオレフィン樹脂を使用するため、この溶融樹脂が無機酸化物皮膜に接触すると、いわゆる熱負けによるクラックが無機酸化物皮膜に発生して、バリアー性の低下を来すという問題があった。このため、バリアー性を有する包材の製造は、従来よりドライラミネート法が採られていたが、製造コストの低減において限界があった。
本発明は上述のような実情に鑑みてなされたものであり、優れたバリアーを有する包材を工業的有利に製造できる包材の製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
このような目的を達成するために、本発明は無機酸化物皮膜を有する基材の該無機酸化物皮膜面に、ダイから260℃乃至310℃の範囲で溶融して薄膜状に押し出され、強制的に吹き付けられたものではない空気との接触時間が0.05〜0.2秒の範囲内であり炭素数10000当たりのカルボニル基の数が0.5個以上であるようなポリオレフィン樹脂をラミネートするような構成とした。
【0007】
以下、本発明に係る包材の製造方法について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0008】
図1は本発明の包材の製造方法を説明するための押し出しラミネータの概略図であり、図2は本発明により製造される包材の一例を示す概略断面図である。図1において、押し出しラミネータ11は、溶融されたポリオレフィン樹脂を薄膜状に押し出すためのダイ12と、ダイ12から押し出された溶融薄膜状のポリオレフィン樹脂Rと供給された基材2とを押圧・冷却してラミネートするための冷却ロール13、ニップロール14と、基材シート2を冷却ロール13およびニップロール14間に供給するためのアンワインダー15と、成形された包材1を巻き取るためのワインダー16とを備えている。
【0009】
本発明において、押し出しラミネータ11のダイ12は特に制限はなく、合成樹脂シート成形用の通常のTダイを用いることができる。
【0010】
本発明では、ダイ12から押し出された溶融薄膜状のポリオレフィン樹脂Rのダイ直下での温度は260℃乃至310℃の範囲であり、また、このポリオレフィン樹脂Rと空気との接触時間は0.05〜0.2秒の範囲内であるため、炭素数10000当たりのカルボニル基の数は0.5個以上であることを特徴としている。
【0011】
ここで、本発明における炭素数10000当たりのカルボニル基の数は、ポリオレフィン樹脂の反射赤外分析法によりカルボニル基に由来する吸収帯(1740cm−1) の吸光度から、下記の式にしたがって算出することができる。
【0012】
【数1】
I1 :1740cm−1近傍のベースライン(1800〜1650cm−1近傍の曲線の共通接線)の透過率(%)
I2 :1740cm−1の透過率(%)
I3 :1370cm−1近傍のベースライン(1450〜1250cm−1近傍の曲線の共通接線)の透過率(%)
I4 :1370cm−1の透過率(%)
吸光係数:1.07
次に、図2に示される包材1を例にして本発明の包材の製造方法を説明する。図2に示される包材1は、基材2とポリオレフィン樹脂層5とを有しており、基材2は樹脂シート3および無機酸化物皮膜4との積層体であり、包材1としては3層構造をなしている。
【0013】
このような包材1は、ダイ12から薄膜状に溶融されて押し出されたポリオレフィン樹脂Rが、アンワインダー15から供給された基材2の無機酸化物皮膜4上にラミネートされ、冷却ロール13とニップロール14とで押圧・冷却されることにより成形される。
【0014】
この際、上述のように、ダイ12から押し出された溶融薄膜状のポリオレフィン樹脂Rの温度は260℃乃至310℃の範囲にあり、従来の押し出しラミネートによるポリオレフィン樹脂の溶融温度(310〜330℃)に比べて低温に設定されているため、基材シート2の無機酸化物皮膜4は溶融されたポリオレフィン樹脂Rに接触しても、いわゆる熱負けによるクラックを生じることはない。
【0015】
また、ダイ12から押し出された溶融薄膜状のポリオレフィン樹脂Rは、冷却ロール13とニップロール14との間に到達するまでに、雰囲気である空気との接触時間が0.05〜0.2秒間あり、この空気接触時間が確保されることにより、アンワインダー15から供給された基材2の無機酸化物皮膜4上にラミネートされる際には、ポリオレフィン樹脂Rにおける炭素数10000当たりのカルボニル基の数は0.5個以上となり、表面酸化度としては高い状態となる。このため、上記のような比較的低い溶融温度(260〜310℃)であっても、無機酸化物皮膜4とポリオレフィン樹脂層5とのラミネート強度は、ラミネート直後ではやや低いものの、経時により無機酸化物皮膜に悪影響を与えることなく十分な強度(150g/15mm幅 以上)まで向上する。尚、上記の接触時間が0.05秒未満であると、カルボニル基の生成量が不十分であり、また、0.2秒を超えると溶融樹脂の冷却が始まり、十分な接着強度が得られなくなる。
【0016】
また、本発明では、図3に示されるような包材21を製造することも可能である。包材21は、基材22、ポリオレフィン樹脂層25およびポリオレフィン樹脂シート26とを有しており、基材22は樹脂シート23および無機酸化物皮膜24との積層体であり、包材21としては4層構造をなしている。
【0017】
このような包材21は、図4に示されるようにポリオレフィン樹脂シート26を冷却ロール13とニップロール14間に供給するためのアンワインダー17を備えた押し出しラミネータ11´により製造可能である。すなわち、ダイ12からポリオレフィン樹脂Rが薄膜状に押し出され、アンワインダー15からは基材22が、アンワインダー17からはポリオレフィン樹脂フィルム26がそれぞれ供給されて、基材22の無機酸化物皮膜24上に溶融ポリオレフィン樹脂Rを介してポリオレフィン樹脂フィルム26がラミネートされ、冷却ロール13とニップロール14とで押圧・冷却されることにより成形される。尚、図4の押し出しラミネータ11´は、アンワインダー17を備えている点を除いて図1に示される押し出しラミネータ11と同じであるため、同一部材には同一の番号を付して説明は省略する。
【0018】
また、本発明により製造できる包材の構造は、上記の包材1、21に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレンテレフタレート層/ポリオレフィン層/無機酸化物皮膜/ポリエチレンテレフタレート層/ポリオレフィン層の5層構造等、任意に変更することができる。尚、上記の5層構造の包材においては、ポリエチレンテレフタレート層とポリオレフィン層との間にアンカーコート剤層を介在させてもよい。
【0019】
上述のような包材1,21の基材2,22を構成する樹脂シート3,23としは、熱安定性の点からポリエチレンテレフタレート、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリブチレンテレフタレート等の二軸延伸樹脂シートが好ましく使用できる。また、耐熱性に優れたポリカーボネート、ポリイミド、ポリアリレート等の未延伸樹脂シートも使用することができる。
【0020】
さらに、基材2,22を構成する無機酸化物皮膜4,24は、Mg、Si、Al、Sn、Ni等の無機酸化物皮膜(厚さ5〜2000nm)とすることができる。このような無機酸化物皮膜の形成は、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、プラズマ溶射の他、化学蒸着法等により行うことができる。
【0021】
尚、ラミネート強度を向上させるために無機酸化物皮膜4,24上にアンカーコート剤層を設けることができる。アンカーコート剤層は、ウレタン系アンカーコート剤、ポリエチレンイミン系アンカーコート剤、有機チタン系アンカーコート剤、ゴム系アンカーコート剤、ポリエステル系アンカーコート剤等を用いて塗布量0.2〜1.0g/m2 の範囲で選ぶことができる。
【0022】
本発明において用いるポリオレフィン樹脂としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレンーアクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン−αオレフィン共重合体、およびこれらのブレンド化物、または共重合体等を挙げることができる。そして、このポリオレフィン樹脂は、ダイから溶融されて押し出された状態で、上述のように温度は260℃乃至310℃の範囲であり、雰囲気である空気との接触時間が0.05〜0.2秒間であるため、アンワインダーから供給された基材の無機酸化物皮膜上にラミネートされる際には、その炭素数10000当たりのカルボニル基の数を0.5個以上とすることができる。
【0023】
【作用】
ダイから溶融して薄膜状に押し出されたポリオレフィン樹脂は、溶融温度が260℃乃至310℃の範囲内であるため、基材上の無機酸化物皮膜にクラックを発生させることがなく、かつ、上記の溶融ポリオレフィン樹脂は、空気との接触時間が0.05〜0.2秒の範囲内であるため炭素数10000当たりのカルボニル基の数が0.5個以上であり、これにより、無機酸化物皮膜とのラミネート強度が十分に高いものとなる。
【0024】
【実施例】
以下、本発明の内容および効果を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を越えない限り以下に記載の例に限定されるものではない。
【0025】
基材として、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂シートにシリカ系酸化物皮膜を蒸着して形成した基材No.1(三菱化成(株)製 テックバリアH、厚さ12μm)を準備した。また、溶融押し出しに用いるポリオレフィン樹脂として、低密度ポリエチレン(LDPE)(三井石油化学(株)製 M11P)およびエチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)(三井石油化学(株)製 N1108C)を準備した。
【0026】
一方、比較として、軟質アルミニウム箔(厚さ30μm)からなる基材No.2、および、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂シートにアルミニウム蒸着層を形成した基材No.3(東洋紡(株)製 T7071、厚さ12μm)を準備した。さらに、溶融押し出しに用いるポリオレフィン樹脂として、低密度ポリエチレン(三井石油化学(株)製 M−11P)を準備した。
【0027】
次に、下記の表1に示される条件で基材上にポリオレフィン樹脂を押し出してポリオレフィン樹脂層(厚さ30μm)をラミネートし、包材を作成した(試料1〜22)。
【0028】
【表1】
そして、上記の各包材について、ラミネート直後のラミネート強度および2週間経過後のラミネート強度、酸素バリアー値を、下記に記載した条件で測定し、結果を表2に示した。
(ラミネート強度の測定条件)
JIS Z1707に準じて測定した。
【0029】
・剥離速度 : 100mm/分
・剥離方法 : T字剥離
(酸素バリアー値の測定条件)
酸素モーコン法により測定した。
【0030】
【表2】
表2に示されるように、本発明の製造方法により作成された包材(試料2〜4、6、7)は、ラミネート直後におけるラミネート強度がやや低かったものの、2週間経過により十分な強度(150g/15mm幅 以上)まで向上し、かつ、酸素バリアー性も良好な値を示している。
【0031】
これに対して、試料1はポリオレフィン樹脂の溶融温度が低く、試料9〜11は酸素との接触時間が不十分で押し出されたポリオレフィン樹脂における炭素数10000当たりのカルボニル基の数が本発明で必須とする範囲にないものであり、ラミネート強度は2週間経過しても不十分なものであった。また、試料5、12は、押し出されたポリオレフィン樹脂の温度が本発明で必須とする温度範囲より高いため、無機酸化物皮膜にクラックが発生して、酸素バリアー性が大幅に低下したものとなっている。また、試料8はポリオレフィン樹脂における炭素数10000当たりのカルボニル基の数が本発明の範囲にあるものの、ポリオレフィン樹脂の溶融温度が低く、かつ酸素との接触時間が長すぎたため、十分なラミネート強度が得られていない。
【0032】
さらに、試料13、14、17、18、21では、ポリオレフィン樹脂の溶融温度は本発明で必須とする温度範囲にあるものの、アルミニウムとポリオレフィン樹脂とのラミネート強度が不十分であり、また、試料15、16、19、20、22では、アルミニウムとポリオレフィン樹脂とのラミネート強度が必要最低限度程度であり、経時によるラミネート強度の向上はみられず、包材として安定した特性を備えたものとは言えない。
【0033】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、ダイから260℃乃至310℃の温度範囲で溶融して薄膜状に押し出され、空気との接触時間を0.05〜0.2秒の範囲内とされたポリオレフィン樹脂が基材上の無機酸化物皮膜にラミネートされるので、基材上の無機酸化物皮膜にはクラックが発生せず、また、上記のポリオレフィン樹脂においては炭素数10000当たりのカルボニル基の数が0.5個以上であるため、ラミネート強度は初期状態ではやや低いものの、経時により無機酸化物皮膜に悪影響を与えることなく十分な強度まで向上するので、優れたバリアー性を有する包材を安定して製造することが可能となり、製造コストの低減もなし得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の包材の製造方法を説明するための押し出しラミネータの概略図である。
【図2】本発明により製造される包材の一例を示す概略断面図である。
【図3】本発明により製造される包材の他の例を示す概略断面図である。
【図4】本発明の包材の製造方法の他の例を説明するための押し出しラミネータの概略図である。
【符号の説明】
1,21…包材
2,22…基材
3,23…樹脂シート
4,24…無機酸化物皮膜
5,25…ポリオレフィン樹脂層
26…ポリオレフィン樹脂シート
R…溶融薄膜状のポリオレフィン樹脂
11,11´…押し出しラミネータ
12…ダイ
13…冷却ロール
14…ニップロール
15,17…アンワインダー
16…ワインダー
Claims (2)
- 無機酸化物皮膜を有する基材の該無機酸化物皮膜面に、ダイから260℃乃至310℃の範囲で溶融して薄膜状に押し出され、強制的に吹き付けられたももではない空気との接触時間が0.05〜0.2秒の範囲内であり炭素数10000当たりのカルボニル基の数が0.5個以上であるようなポリオレフィン樹脂をラミネートすることを特徴とする包材の製造方法。
- 前記無機酸化物皮膜は、シリカ系酸化物皮膜であることを特徴とする請求項1に記載の包材の製造方法。
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JP15532294A JP3587556B2 (ja) | 1994-06-14 | 1994-06-14 | 包材の製造方法 |
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JP15532294A JP3587556B2 (ja) | 1994-06-14 | 1994-06-14 | 包材の製造方法 |
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Family Applications (1)
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JP15532294A Expired - Lifetime JP3587556B2 (ja) | 1994-06-14 | 1994-06-14 | 包材の製造方法 |
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1994
- 1994-06-14 JP JP15532294A patent/JP3587556B2/ja not_active Expired - Lifetime
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