JP3587388B2 - 樹脂複合弾性体の製造方法 - Google Patents

樹脂複合弾性体の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP3587388B2
JP3587388B2 JP16034893A JP16034893A JP3587388B2 JP 3587388 B2 JP3587388 B2 JP 3587388B2 JP 16034893 A JP16034893 A JP 16034893A JP 16034893 A JP16034893 A JP 16034893A JP 3587388 B2 JP3587388 B2 JP 3587388B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
resin
metal
elastic body
resin composite
composite elastic
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP16034893A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH06345899A (ja
Inventor
瀬 進 川
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Soken Chemical and Engineering Co Ltd
Original Assignee
Soken Chemical and Engineering Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Soken Chemical and Engineering Co Ltd filed Critical Soken Chemical and Engineering Co Ltd
Priority to JP16034893A priority Critical patent/JP3587388B2/ja
Publication of JPH06345899A publication Critical patent/JPH06345899A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3587388B2 publication Critical patent/JP3587388B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Manufacture Of Macromolecular Shaped Articles (AREA)
  • Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)
  • Non-Insulated Conductors (AREA)

Description

【0001】
【発明の技術分野】
本発明は、無電解メッキ金属層を有する金属被覆微粒子が樹脂マトリックス中に分散している新規な樹脂複合弾性体、およびこの樹脂複合弾性体を製造する方法に関する。
【0002】
【技術的背景およびその問題点】
ゴム弾性を有する樹脂複合体として、ゴム系材料や、プレポリマーあるいはポリマー系材料等のポリマーマトリックス中に、充填剤を配合して混練した組成物が知られている。ここで使用される充填剤としては、得ようとする樹脂複合体の特性を考慮して種々の材料が使用されている。例えば樹脂複合体に導電性を賦与しようとする場合には、導電性粉末材料、導電性繊維状材料および導電性針状材料などの導電性材料(例:金属粉末、金属酸化物およびカーボンブラック)を配合している。さらにこうしたポリマーマトリックスには、炭酸カルシウム、タルク、マイカおよび酸化チタンなどの無機物粉末も配合される。こうした充填剤は、ポリマーに配合して充分に混練することによりポリマー中に均一に分散させることができ、こうして均一に分散させることにより所望の物性が発現する。例えば、特開昭64−1765号では、高分子弾性体に、亜鉛金属系充填剤および変性ポリオレフィンを配合した高比重複合樹脂組成物が開示されており、この組成物は弾性を有している。そして、このような弾性体は、高分子マトリックス、充填剤および変性ポリオレフィンの混合物を昇温してゲル化させた後、充分に混練することにより製造されている。
【0003】
即ち、このような弾性体は、ゴムに代表されるようにポリマーマトリックス中に架橋構造が形成されることによりゴム弾性が発現するのである。こうしたゴム弾性を発現させる架橋構造は、高温条件下における組成物の混練、加熱条件下または外部環境温度下における架橋剤の反応または反応性基同士の架橋反応により形成される。
【0004】
このようにして架橋構造が形成された弾性体は、接着剤、粘着材、コンクリート接着剤、レジンコンクリート、塗料、コーティング剤、防塵・防水・耐薬品被覆膜、電気部品用被膜形成剤(ボッティング材など)、建築・土木用シーリング剤、自動車フロントガラス接着剤シーリング、はき物材料(ユニットソール、ヒール)、工業用弾性材料(車両用安全対策部品、バンパーなど)、工業用ゴム資材(ベルト、ホース、防振ゴム、パッキングなど)、各種発泡体などとして利用されており、複合導電弾性体としては、例えば半導体材料として、低抵抗バンド、帯電防止材料として、非帯電ベルトコンベア、医学用ゴム製品、導電タイヤ、IC収納ケース、謄写用・紡績用ロール、導電性材料として、導電性塗料、接着剤、導電性ゴム(各種キーボードスイッチ)、異方導電性ゴム(コネクター素子)、加圧導電ゴム(スイッチ素子)等として利用されている。
【0005】
しかしながら、これらの弾性体は被着体に対する接着性を有していないため、これらを基材に接着して用いる場合には、これらの弾性体とは別に接着剤が必要になる。さらに、このような弾性体は、上記のように工場内における混練工程または架橋反応工程で架橋構造が形成され、こうして架橋構造が形成された弾性体を一定の規格化された形状に成形して供給される。従ってこのような弾性体を作業現場で使用する際には、弾性体が付設される部分の形状および大きさを測定し、これに合わせて工場で一定形状に成形された弾性体を切断する必要がある。このように従来の弾性体は、工場内で架橋しているため、その付設の際における作業性が悪い等、種々の問題を有していた。
【0006】
殊に、最近、ビルの壁材、床材等のように広範囲に導電性材料あるいは電磁波シールド材料等を使用することが多くなってきており、このように導電性材料あるいは電磁波シールド材料等の付設面積が大きくなると、使用される接着剤の量も非常に多量になる。この接着剤は、有機溶剤を含有しており、最近の地球環境問題の観点から、こうした多量の有機溶剤を使用環境の整っていない状況下に使用することが問題になっている。
【0007】
こうした観点から、有機溶剤を含有しておらず、しかも塗布することにより付設が可能な水系樹脂エマルジョンから形成される弾性体が提案されている。さらに昨今ではこうした弾性体をより軽量にしようとする要請が強い。
【0008】
水性樹脂エマルジョンから形成される弾性体として、例えば、少なくとも2種の相互に不相溶性、水不溶性の重合体であって、かつ前記重合体の少なくとも1つは、N−メチロール官能基を含有することからなる周囲温度乾燥性塗料用組成物が開示されている(特開平3−174483号公報参照)。この組成物は、N−メチロール基による架橋と、ポリマーラテックスの混合物中に異なった相(コア/シェル)を存在させることにより、弾性が発現する。即ち、この組成物では、ポリマーマトリックス中に異相構造を形成させることによりポリマー成分の架橋方法を改善しているのであり、この架橋構造の形成には充填剤は関与していない。
【0009】
また、ポリマーマトリックス中に充填剤を配合した従来例として、建造物の外装、内装の表面仕上げ材として、ゴム状高弾性無機系仕上げ材(特開昭62−25640号公報参照)および弾性ポリマーセメントモルタル(特開平3−50145号公報参照)が開示されている。
【0010】
しかしながら、これらの従来技術は、低いガラス転移温度(Tg)を有するポリマーマトリックス中にセメント骨材、無機物を充填剤として配合し、これらの仕上げ材あるいはモルタル中では充填剤は、ポリマーマトリックスとは独立して存在しており、ポリマーマトリックスの有する弾性がそのまま仕上げ材あるいはモルタルの弾性として表れている。従って、このような仕上げ材あるいはモルタルは、用いたポリマーの有する弾性に対応した弾性を示すものの、架橋構造等は形成されていないため、圧縮力、引張り力などの応力がかかったときに、復元力があり、しかも広い温度領域で高い弾性率を示すゴム弾性体のような複合弾性体とは異なるものである。
【0011】
ところで、表面に金属メッキ層を有する微粒子は、導電性材料、電磁波シールド材料等の分野で使用されており、例えば特開昭60−96548号公報には、芯材として比重の低い微細な中空ガラスを用い、その表面に無電解メッキ被膜を付与させた導電性材料が開示されており、特開平4−36902号公報には表面に突起を持った非導電性微粒子の表面に金属メッキを施した導電性微粒子が開示されており、さらに特開平4−228503号公報には、樹脂微粒子表面に無機質微粒子を機械的剪断力、圧縮力、衝撃力などのエネルギーにより固着させ、その上に無電解メッキ被膜を形成させた金属被覆粉体材料が開示されている。
【0012】
これらの金属メッキ微粒子材料を、塗料、接着剤、合成樹脂などのバインダー樹脂に配合して、金属固有の特性を発現させて、導電性付与、電磁波シールド性付与といった性質を組成物に反映させた機能付与材料として利用されている。こうした金属メッキ被膜を形成させる金属の種類としては、耐食性の観点から、Ni、Ag、Au、Sn、Cu、Pb、Coなどが例示されている。
【0013】
殊に導電性接着剤の用途では、金属メッキ微粒子は回路接続用接着剤として信頼性を高める観点から多くの提案があり、例えば、接着剤組成物(特開昭63−245484号)、導電性粘着剤およびこの粘着剤を用いた導電性粘着シート(特開平1−221481号)、導電性粘着剤(特開平2−115290号)、導電性微粒子および導電性接着剤(特開平4−36902号)などが開示されている。
【0014】
これら金属メッキ微粒子は、芯材粒子表面と金属メッキ被膜との密着性は良く、金属メッキ被膜が芯材から剥離したり、離脱しないように金属メッキ皮膜を形成することにより、この金属メッキ微粒子が導電性賦与あるいは電磁波シールド性賦与という機能を組成物に賦与することができるようになる。従って、上記公報に記載されている金属メッキ微粒子では、芯材表面が金属メッキ皮膜によって完全に被覆されなければならず、その金属メッキ皮膜もある程度の厚みを有すると共に、金属層が剥離しないように芯材表面に強固に固定されていることが必要になる。芯材を上記のように厚くしかも完全に被覆するようにメッキすると、金属メッキ皮膜は、粒状でなく、平滑な厚膜状または突起状になる。
【0015】
こうした金属メッキ粒子は樹脂に対する活性を有しておらず、このような金属メッキ微粒子を樹脂中に配合しても樹脂に弾性を発現しない。即ち、例えば樹脂に導電性などの特性を賦与するために、金属メッキ粒子を樹脂に配合することはあっても、この金属メッキ粒子は単に樹脂に導電性等の特性を賦与するための充填剤に過ぎず樹脂に配合しても樹脂に分散するだけであり、こうした充填剤の配合によって樹脂に弾性を発現させることはできない。
【0016】
逆に接着剤または感圧接着剤に弾性を付与する方法として、理論上、導電性物質を配合した接着剤または感圧接着剤のポリマーマトリックスを硬化させながら適度に架橋構造を形成する方法が考えられるが、この方法には以下のような問題がある。
【0017】
すなわち、接着剤の場合、接着剤組成物を構成するポリマーは、凝集力の大きい分子構造であり、液状物から架橋により硬化物になると、分子運動が著しく制約されるため弾性が喪失し、また、液状接着剤に充填剤を配合して硬化物にある程度の弾性を付与すると、この接着剤組成物は、基材に対する濡れ性が悪くなり、接着性が低下する。
【0018】
さらに、感圧接着剤の場合、感圧接着剤を構成するポリマーは、ガラス転移温度(Tg)の低い分子構造を有しており、適度な架橋を形成することにより、粘弾性を示すようになる。しかし、架橋剤との反応が進行すると、弾性は高くなるが、この反応が進むにつれて塗膜の可撓性、伸張性、粘着性が低下する。逆に架橋反応を抑制すると、感圧接着性は優れているが弾性に劣るという相離反する問題があった。
【0019】
こうした問題を解決するためにはポリマー粒子の成膜時に架橋反応を行い、ポリマー分子間で理想的な架橋構造が形成されるように樹脂水性エマルジョンのポリマー粒子の分子設計をすればよいが、このようなポリマー設計は理論的には可能であっても実際には極めて困難であり、さらにこれらの架橋反応を充填剤の存在下に行うことはさらに難しい。従って、従来技術の組み合わせや既存材料の組み合わせでは、接着剤に感圧接着性を必要に応じて付与すると共に、ゴム弾性を示す複合弾性体の提供はできないのが現状である。
【0020】
【発明の目的】
本発明は、新規な樹脂複合弾性体およびこの樹脂複合弾性体を製造する方法を提供することを目的とする。さらに詳しくは本発明は、芯材の表面に粒子状の形態を維持している無電解メッキ金属層を有する金属被覆微粒子によって弾性が付与された新規な樹脂弾性複合体およびこの新規な樹脂弾性複合体を製造する方法を提供することを目的としている。
【0021】
【発明の概要】
本発明の樹脂複合弾性体は、金属の少なくとも一部が粒子の形態を維持している平均層厚0.05〜5μmの無電解メッキ金属層を芯材表面に有する粒子径0.5〜100μmの金属被覆微粒子を樹脂中に含有する樹脂複合弾性体であり、周波数1〜100Hz、温度−50℃〜200℃の条件で測定した該樹脂複合弾性体の貯蔵弾性率と損失弾性率との比で表されるtanδのピーク温度として定義したガラス転移温度よりも20℃高い温度以上の温度における該樹脂複合弾性体の損失弾性率が、同一条件で測定した該樹脂複合弾性体を形成する樹脂単独の損失弾性率よりも高いことを特徴としている。
【0022】
さらに本発明の樹脂複合弾性体の製造方法は、成膜された樹脂の貯蔵弾性率と損失弾性率との比で表されるtanδのピーク温度として定義されるガラス転移温度が10℃以下である樹脂成分であって、かつ酸成分単位を有する樹脂成分が水に分散した水性エマルジョンに、
金属の少なくとも一部が粒子の形態を維持した状態の平均層厚0.05〜5μmの無電解メッキ金属層を芯材表面に有する粒径0.5〜100μmの金属被覆微粒子を分散させて接触させることを特徴としている。
【0023】
本発明の樹脂複合弾性体は、芯材表面に金属粒子の形態を維持した状態の無電解メッキ金属層を有する特定の金属被覆微粒子によって弾性が発現した樹脂複合弾性体である。すなわち、この金属被覆微粒子は、単に樹脂複合弾性体に分散しているのではなく、この樹脂複合弾性体を形成する樹脂との間に何らかの結合が形成されていると考えられ、この結合によって弾性が発現する。
【0024】
この金属被覆微粒子と樹脂との間では、上記の結合が常温で形成される。従って、本発明の樹脂複合弾性体は、例えば従来の架橋剤等を用いて架橋構造を形成する場合のように加熱あるいは加熱下での混練のような加熱下における操作を必要とせず、常温で樹脂水性エマルジョンと金属被覆微粒子とを混合することにより製造することができる。
【0025】
このように樹脂と金属被覆微粒子との間に常温で結合が形成されるのは、金属被覆微粒子に形成されている無電解メッキ金属層が、芯材の表面に析出した金属が初期の状態である粒子状態を維持しているため、金属の活性が非常に高いためであろうと考えられる。
【0026】
【発明の具体的説明】
次に本発明の樹脂複合弾性体およびその製造方法について具体的に説明する。本発明の樹脂複合弾性体は、特定の金属被覆微粒子が樹脂中に含有された複合弾性体であり、所定の条件で測定したこの複合弾性体の損失弾性率がガラス転移温度よりも20℃以上高い領域において原料である樹脂の損失弾性率よりも高い値を有している。
【0027】
本発明で樹脂中に含有される金属被覆微粒子は、金属の少なくとも一部が粒子の形態を維持している無電解メッキ金属層を芯材表面に有している。
ここで芯材には、種々の素材を使用することができる。例えば無機粒子、有機粒子、有機重合体、金属、金属酸化物、これらの複合物等である。本発明で芯材の形状は、不定形、りん片状、針状、球状等の種々のものが使用できるが、特に球状の有機重合体が好ましい。このような有機重合体からなる芯材を有する金属被覆微粒子は、樹脂の比重と近似した比重を有しているので、樹脂中への金属被覆微粒子の分散が容易になる。即ち、金属被覆微粒子の比重は、芯材の粒子径および比重と金属層の厚さおよび比重によって異なる。芯材の比重は、通常1.0〜1.6程度であり、Niメッキ微粒子の場合、金属被覆微粒子の比重は、1.2〜2.8程度であり、このような比重を有する金属被覆微粒子は、樹脂(樹脂の水性エマルジョン)と混合する際に分散性がよく、また一旦分散した後は、沈降しにくい。なお、比重が1.2以下の金属被覆微粒子は分散性などは良いが、実際には製造が難しく、芯材粒子への金属析出量が少なくなり、芯材粒子表面が多く露呈した金属被覆微粒子を多く含むことになり、活性が低いことが多い。
【0028】
芯材を形成する有機重合体の例としては、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン/(メタ)アクリル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート系樹脂、フェノール系樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ウレタン系樹脂およびポリイミド系樹脂を挙げることができる。この有機重合体は、架橋重合体または非架橋重合体のいずれであってもよい。
【0029】
この芯材の粒子径は通常は0.5〜100μmの範囲内にある。芯材の粒子径が0.5μm以下になると、曲率が大きいため、析出する金属微粒子が芯材表面に付着しにくくなり、反応系には金属微粒子が単独で析出する場合があり、目的とする金属被覆微粒子を製造することが難しくなる。
【0030】
また芯材粒子が100μmを超えると、単位重量当たりの表面積が小さくなり、充填剤としての効果が減少するとともに、塗膜としたときに表面の外観が損なわれる。
【0031】
本発明で使用される金属被覆微粒子は、無電解メッキで形成された金属層の平均層厚が0.05〜5μmの範囲内にあり、粒径が0.5〜100μmの範囲内にある粒子である。ここで、金属層の平均層厚とは、芯材表面に均一に金属が析出して層を形成したと仮定した場合の層の厚さを意味する。本発明で使用される金属被覆微粒子は、芯材の表面に粒状の形態を維持した金属が析出しており、しかもこの金属粒子は芯材全体を覆い尽くしているとは限らないので、本発明で規定する平均層厚は、析出金属量、金属の比重および芯材の表面積から算出される値である。
【0032】
さらに、この金属被覆微粒子に形成される金属層の厚さDとこの金属被覆微粒子の直径Rとは、金属被覆微粒子の粒子径が0.5〜20μmの範囲においては、0.05μm≦D、かつD/R≦0.25の関係を有していることが好ましく、また金属被覆微粒子の粒子径が20μmを超え100μm以下では、0.05≦D≦5μmの関係を有していることが好ましい。
【0033】
上記のような芯材の表面に形成されている無電解メッキ金属層では、この層を形成する金属の少なくとも一部が粒子状の形態を有している。図1は、このような金属被覆微粒子の粒子構造の例を示す走査電子顕微鏡写真である。
【0034】
無電解メッキ法により芯材の表面に析出する金属は、図1に示すように初期の段階では粒状である。そして次第に析出量が多くなるにつれて粒子状の金属は隣接する金属粒子と連結して粒子状の形態が消失して均一な金属層になる。本発明では、このように析出金属の少なくとも一部が、上記のような粒子状の形態を維持している金属被覆微粒子を使用する。
【0035】
このような粒子状の形態を維持している金属被覆微粒子は、例えば次のようにして形成される。上述した芯材に無電解メッキ法における通常の前処理および活性化処理を行う。この前処理や活性化処理によって、金属の析出状態あるいは析出した金属の状態を制御することができる。
【0036】
こうして処理された芯材は、室温〜90℃の範囲内の温度に維持された無電解メッキ液中に投入され、攪拌下に10分〜24時間反応させる。すなわち、この時の反応時間および反応条件は、通常は、芯材の粒子径をRμm、形成される金属層の厚さをDμmとしたときに、得られる金属被覆ポリマー粒子の粒子径が0.5〜20μmの場合は、金属層の厚さDが0.05μm≦Dであり、かつD/R≦0.25となるように、そして得られる金属被覆ポリマーの粒子径が20μmを超え、100μm以下の場合には、0.05μm≦D≦5μmの条件を満足するように設定することが好ましい。
【0037】
一般に、平面上の被メッキ物上に無電解メッキ法により金属膜を形成する場合には、相当の厚みの皮膜を形成することができる。しかしながら、表面に曲率を有する被着体(即ち、本発明において芯材として使用されるような粒子)上に無電解メッキにより金属を析出させようとすると、形成されるメッキ被膜の厚さは芯材の粒子径が小さくなるに従って薄くなる傾向がある。この傾向は芯材として球状微粒子を用いた場合に特に顕著に表れ、平均粒子径がミクロンサイズの芯材を使用する場合には、芯材の表面に析出する金属は一層の粒状金属の連続体になる。そして、金属メッキ層の厚さを厚く成長させようとしても粒状の金属が芯材表面に数個突出したような構造になるだけである。従って、本発明において金属層の厚さD値は、こうして形成された粒状金属の層の厚さに相当する0.05〜数μm程度(すなわち、5μm程度)である。
【0038】
上記のようにして金属を芯材の周囲に析出させることにより、金属層は粒子状の金属が粒界を形成しながら連続的に成長していく。この金属層は、芯材に部分的に固着した状態であってもよいし、網状に形成されていても良いし、完全に芯材を被覆した状態でもよく、不連続的に形成されていても良い。またこれらの状態が組み合わされたものでも良いし、金属層を形成する粒子状の金属が一部離脱していても良い。
【0039】
このような金属層を有する金属被覆微粒子に関連した技術について既に出願している(例えば特願平5ー47379号、同5−47380号明細書参照)。
この金属被覆微粒子の金属層の特性を調べるためにこの金属被覆微粒子を種々の樹脂水性エマルジョンに混合して、その混合状態を光学顕微鏡観察したところ、図2に模式的に示すように、上述の範囲の粒子径を有しその表面における金属の形態が粒状である金属被覆微粒子を樹脂水性エマルジョンに配合したところ、エマルジョンを形成する樹脂微粒子が金属被覆微粒子の周辺に凝集し成膜する現象を見出した。さらに、これらの混合物から成膜した複合体は、ゴム弾性を有している。
【0040】
上記の金属被覆微粒子は、樹脂中に分散されている。ここで樹脂複合弾性体を形成する樹脂は、後述する樹脂水性エマルジョンを形成している樹脂である。
この樹脂複合弾性体における樹脂成分25〜99.5重量部、好ましくは50〜95重量部、金属被覆微粒子は0.5〜75重量部、好ましくは5〜50重量部の量で含有されている。また、この樹脂複合弾性体は、通常は0.5〜20重量部程度、多くの場合2〜15重量部程度の水を含有している。この水は、樹脂と金属被覆微粒子との間の結合の形成に関与して含有されていることもあるし、また樹脂と金属被覆微粒子との間で例えば架橋構造のような結合が形成されている場合には、こうした架橋体中に水が包接されていることもある。
【0041】
金属被覆微粒子は、こうした樹脂中に単に分散しているだけではなく、この樹脂との間に何らかの結合が形成されていると考えられ、こうして結合が形成されることにより、本発明の樹脂複合弾性体は良好なゴム弾性を示す。
【0042】
即ち、本発明の樹脂複合弾性体は、周波数1〜100Hz、温度−50℃〜200℃の条件で測定したこの樹脂複合弾性体の貯蔵弾性率G’と損失弾性率G”との比で表されるtanδのピーク温度として定義されるガラス転移温度(Tg)よりも20℃高い温度以上の温度、特に高温温度領域において、この複合弾性体の損失弾性率G”(A)が、樹脂複合弾性体を形成する樹脂の損失弾性率G”(B)よりも高くなる。一般に、ガラス転移温度近傍の温度においては、樹脂複合弾性体および樹脂複合弾性体を形成する樹脂の貯蔵弾性率G’と損失弾性率G”とは、ポリマー主鎖の分子運動が制約凍結されるため、ほとんど差が出ない。
【0043】
ところが、図4a、図5aに示すように、樹脂水性エマルジョンに広範に使用されている粘着性樹脂は、温度の上昇に伴って弾性率が著しく低下する。しかし、図4b、図5bに示すように、金属被覆微粒子をこのような樹脂水性エマルジョンに配合して両者を接触させると、樹脂と金属被覆微粒子との間に結合が形成され、このように結合が形成された本発明の樹脂複合弾性体の損失弾性率は、極めてわずかな低下を示すにとどまる。具体的には、例えば、アクリル系樹脂水性エマルジョンを用いた場合には、樹脂複合弾性体のガラス転移温度(Tg)よりも45℃高い温度における周波数10および100Hzで測定したり樹脂複合弾性体の損失弾性率G”(B)は、この樹脂複合弾性体を形成する樹脂単独の損失弾性率G”(A)よりも通常は1.5倍〜3.2倍高い値を示し、このことはとりもなおさずこの樹脂複合弾性体が極めて優れた弾性を有していることを意味する。
【0044】
この樹脂複合弾性体における金属被覆微粒子の分散状態の例を示す走査電子顕微鏡写真を図3に示す。
本発明の樹脂複合弾性体は、特定の樹脂および酸成分を含有する水性エマルジョンに、上記特定の金属被覆微粒子を配合して両者を接触させることより製造することができる。
【0045】
樹脂複合弾性体を構成する樹脂として、金属被覆微粒子を配合してポリマーマトリックスを形成する際に、例えば架橋構造のような結合を形成し得る樹脂を使用する。さらに一般的なゴム弾性体における場合と同様、ガラス転移温度が低く、室温でポリマー鎖(主鎖)が比較的自由に回転運動できる樹脂を使用することが好ましい。このような樹脂は水性媒体中に微粒子状に分散して水性エマルジョンを形成し、媒体中では固体粒子として安定に分散状態を維持しているが、媒体が蒸発、揮散することにより成膜化する樹脂であることが望ましい。
【0046】
また、このような樹脂は、水性媒体に分散しているポリマー微粒子内部で架橋構造が形成されていてもよく、従って通常はゲル分率が0〜95%程度の樹脂が使用される。このゲル分率が95%を超えると、成膜性が悪くなり、粘着性が低下することがある。またゲル分率が0〜20%程度のものは、粘着性は高いが、保持力が低くなり、弾性が低くなる傾向があるので、この樹脂の弾性率、凝集力を改善し良好な樹脂複合弾性体を得るには、ゲル分率が20〜80%程度の樹脂を使用することが好ましい。
【0047】
本発明の製造方法で使用される樹脂水性エマルジョンは、粘弾性測定により求められる貯蔵弾性率と損失弾性率との比で表されるtanδのピーク温度として定義されるガラス転移温度(Tg)が10℃以下、好ましくは10〜−80℃の樹脂が水系媒体に微細粒子を形成して分散している樹脂水性エマルジョンである。
【0048】
上記のように樹脂のガラス転移温度を調整するには、この樹脂を形成する不飽和単量体の種類を選択すればよく、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類を主成分とするものが好適である。中でも炭素数4以上のアクリル酸エステルおよび/またはアクリル酸エステル類を主成分とする共重合体が特に好適である。
【0049】
ここでアクリル酸エステル類およびメタクリル酸エステル類の例としては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、メタクリル酸オクチル、アクリル酸イソノニル、メタクリル酸イソノニル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸ステアリルのような一価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル類を挙げることができる。
【0050】
これらの不飽和単量体には、必要に応じて他の不飽和単量体および/または多官能単量体を共重合させることもできる。
ここで他の不飽和単量体の例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、アクリロニトリル、(メタ)アクリルアマイドおよびその変性物;塩化ビニル、塩化ビニリデンおよびエチレンなどの他;各種変性アルコール類と(メタ)アクリル酸とのエステル;原料である(メタ)アクリル酸の一部をモノカルボン酸で置換した形の変性(メタ)アクリル酸エステル類;アルコキシ(ポリ)アルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル、アルコキシ(ポリ)アルキレングリコールポリ(メタ)アクリル酸エステルおよびこれらのポリエステル;ポリエステルアミド;ポリカーボネート;ポリブタジエン;ポリペンタジエン;ひまし油系の各種ポリオール類とポリ(メタ)アクリル酸とのエステル化合物;ならびに、ウレタン変性(メタ)アクリル酸エステル類を挙げることができる。
【0051】
また、多官能単量体の例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ネオペンチルグリコールおよびヘキサンジオールのような二価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル類;トリメチロールプロパンおよびペンタエリスリトールのような多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル類;ジビニルベンゼンなどを挙げることができる。また、官能基含有不飽和単量体としてエポキシ基含有不飽和単量体、水酸基含有不飽和単量体、N−メチロール基含有不飽和単量体、アミノ基含有不飽和単量体、イソシアネート基含有不飽和単量体などを必要に応じて共重合させることができる。
【0052】
また、樹脂水性エマルジョンには、粘着賦与樹脂として、種々のタッキファイヤのエマルジョンを配合することもできる。しかし、これらの樹脂エマルジョンは有機溶媒を含有することが多く、これらは、エマルジョンの安定状態を損なわないように配合される。
【0053】
このような樹脂水性エマルジョン中に含有される樹脂には、金属被覆微粒子との間で、例えば架橋構造のような結合状態を形成するための反応性基を有しており、この反応性基は、樹脂中に導入された酸成分単位である。このように樹脂に導入される反応性基としてはカルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基のようなイオン性の基を挙げることができる。
【0054】
これらの基は、酸基含有単量体として上記の不飽和単量体および/または多官能単量体との共重合や酸基含有重合開始剤を用いることによりポリマー成分中に導入することができる。カルボン酸含有単量体としては、α,β−不飽和カルボン酸を挙げることができ、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸およびマレイン酸などを例示することができる。また、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸などの酸無水物を使用することもできる。スルホン酸含有単量体としては、スルホン基を有する(メタ)アクリル酸エステル、例えばスルホエチル(メタ)アクリレート、スルホプロピル(メタ)アクリレート、スルホブチル(メタ)アクリレートなどを例示することができる。
【0055】
リン酸基含有単量体の例としては、メタクリロキシエチルフォスフェート、3−クロロ−2−アシッドフォスフォキシプロピルメタクリレート、ビス(メタクリロキシエチル)フォスフェートなどを挙げることができる。
【0056】
これらの基はその反応性を考慮すると遊離型であることが望ましいが、塩型であってもよい。
即ち、金属被覆微粒子を配合することによって反応が急速に進行し過ぎる場合には、この反応性基を塩型とすることによりこの反応速度を制御することもできる。特にアンモニア水でpH値を6.5以上、好ましくは7以上に調整した樹脂水性エマルジョンは、密閉状態では長期間安定した状態が維持されるが、解放系では比較的短時間にアンモニアが放出されてエマルジョンのpH値が低下して反応性が発現する。
【0057】
これらの反応性基は、通常ポリマー成分として、他のモノマー成分100重量部に対して0.1〜10重量部の範囲の量で配合して重合させることにより樹脂中に導入することができる。10重量部以上導入すると、水溶性が増し、ポリマー微粒子が媒体に溶解したり、増粘して取り扱いにくくなったり、成膜後のポリマーマトリックスの耐水性が低下することがあり、また、0.1重量部以下だと凝集力がなく、架橋反応が起こりにくくなり、所望の弾性が発現しないことがある。
【0058】
さらに、上記のような樹脂には、室温で成膜するようなポリマー成分を適宜混合することもできる。室温で成膜する樹脂水性エマルジョンは感圧接着剤、塗料あるいは接着剤などに使用されており、アクリル/酢酸ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体の他、高分子弾性体として、天然ゴム、合成ゴムおよびエラストマーなどを挙げることができる。
【0059】
ここで合成ゴムおよびエラストマーの具体的な例としては、ブタジエン重合体、ブタジエン/スチレン共重合体、ブタジエン/アクリロニトリル共重合体、スチレン/ブタジエン/アクリロニトリル共重合体、クロロプレン重合体などのブタジエン・イソプレンなどのジエン系重合体を挙げることができる。また、エラストマーの例としては、ポリエステル系エラストマー、ポリアクリレート系エラストマー、ポリオレフィンエラストマー系、ポリ塩化ビニル系エラストマー、スチレン/ブタジエン系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリアミド系エラストマーおよびポリウレタン系エラストマーを挙げることができる。
【0060】
また、これらの単独重合体、共重合体には上述の酸成分から誘導される基を導入してもよい。
これらの樹脂水性エマルジョンは、公知の方法によって製造することができるが、乳化重合法が特に好適である。この重合反応において重合開始剤としては、通常の乳化重合で使用する過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩、アゾビスシアノバレリアン酸およびその塩などを使用することができる。また、ポリマーの分子構造や架橋密度を制御するため、重合反応系にメルカプタン類などの連鎖移動剤を併用することもできる。
【0061】
乳化剤としては、通常用いられている乳化重合を使用できるが、特にアニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤またはその併用が望ましい。また、塗膜の乾燥性向上や混合物の増粘のために、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどの水溶性ポリマーを添加することもできる。
【0062】
上記のようにして製造される樹脂水性エマルジョンの中には、感圧接着剤として使用されるものが多く、本発明では樹脂水性エマルジョンとして、このような感圧接着剤として使用される樹脂水性エマルジョンを使用することが好ましい。このような樹脂水性エマルジョンについてJIS−Z−0237−8に準拠して測定した180度剥離強度は通常は0.3〜3Kg/inch、好ましくは0.5〜2.5Kg/inchであり、本発明で樹脂水性エマルジョンとして、上記のような剥離強度を有する樹脂を含有する水性エマルジョン(即ち、感圧接着剤)を使用することが特に好ましい。
【0063】
上記のような樹脂水性エマルジョンは、樹脂水性エマルジョンの樹脂固形分換算で通常は25〜99.5重量部、好ましくは50〜95重量部、金属被覆微粒子は通常は0.5〜75重量部、好ましくは5〜50重量部の量で配合される。金属被覆微粒子の配合量が75重量部を超えると分散物の粘度が急速に上昇し、金属被覆微粒子を均一に分散しにくくなると共に、ポリマー微粒子の凝集が起こり、混合した瞬間にゲル化して得られる樹脂複合弾性体の均一性が損なわれることが多くなる。本発明の樹脂複合弾性体の弾性は、金属被覆微粒子の混合割合により、調整することができ、金属被覆微粒子の配合割合が増すにつれて、弾性が強くなる。
【0064】
また、金属被覆微粒子を配合することにより、本発明の樹脂複合弾性体は、導電性、静電徐放性、熱伝導性、電磁波シールド性などの機能を有するようになり、これらの機能を利用するために、金属被覆微粒子の配合量は上記範囲内で適宜設定することができる。
本発明では、上記のような樹脂水性エマルジョンと金属被覆微粒子とを接触させる。具体的には、樹脂水性エマルジョンに金属被覆微粒子を添加して攪拌する。この攪拌には特別の装置を必要とせず、金属被覆微粒子を樹脂水性エマルジョン中に均一に分散できる程度の攪拌能力を有する攪拌手段が使用される。また、この攪拌の際に加熱する必要はなく、常温で攪拌することにより、次第に粘稠性が発現する。こうして得られた粘稠物を所望の形状に賦形し、あるいは、塗布することにより、所望の形状の弾性体を得ることができる。
【0065】
上記のようにして樹脂水性エマルジョンに所定の金属被覆微粒子を配合することにより弾性体が得られることについて、その構造、機構などの全てが必ずしも明確になっている訳ではない。
【0066】
しかしながら、金属被覆微粒子の無電解メッキ金属層を形成する金属は、析出初期の状態である粒状を維持しているので活性が高く、しかも樹脂水性エマルジョン中のポリマー微粒子成分は酸成分単位を有しているので、酸成分単位と金属被覆微粒子との間に例えば架橋構造を形成するような何等かの結合が形成されるものと考えられ、こうした結合が形成されることによって、単に樹脂水性エマルジョンを成膜して得られる硬化物とは全く異なる特性、即ち弾性率が大きく、ゴム弾性を示す樹脂複合弾性体が形成されるのであろうと考えられる。
【0067】
しかも、樹脂水性エマルジョンと金属被覆微粒子とを混合すると、混合直後から樹脂エマルジョンの凝集、成膜が速やかに起こり、水媒体が存在していても硬化が進行する。さらに、成膜とともに反応(おそらく架橋反応)が起こり、感圧接着剤のもつ粘着力は、樹脂複合弾性体の生成に伴って次第に低下し、最終的には全く粘着性を示さなくなる。この硬化機構は今のところ明かではないが、金属キレートなどによるイオン架橋とは異なった機構で硬化が進行すると考えられる。即ち、樹脂水性エマルジョンと金属被覆微粒子との混合を光学顕微鏡で観察すると、空気との接触境界面に3〜4層のポリマー微粒子の動かない樹脂の層と、金属メッキ微粒子の表面に3〜4層のポリマー微粒子の動かない樹脂の層があることがわかった。これらの動かない樹脂の層は、成膜が始まる直後から形成されゲル化すると考えられる。即ち、この樹脂水性エマルジョンと金属被覆微粒子との混合物をビニール袋に封入・貯蔵して経時的なゲルの発生について検討したところ、この混合物製造後、数分から数日でゲル化していた。比較のため、金属をメッキする前の芯材微粒子と樹脂水性エマルジョンとを混合して観察したが、ゲル化は起こらなかった。
【0068】
この金属メッキ微粒子の表面に樹脂水性エマルジョンのポリマー粒子が凝集、硬化する現象は、酸成分単位を導入したポリマー微粒子ほど著しく、また、成膜後の複合体の粘着性の低下も著しかった。
【0069】
こうした現象は、樹脂水性エマルジョンと金属被覆微粒子との間で何等かの反応が起こっていることを明らかに示唆するものである。
そして、樹脂水性エマルジョンおよび金属被覆微粒子の構成からすると両者の間の反応は架橋反応であると考えられる。
【0070】
樹脂の粘弾性を表す指標として貯蔵弾性率と損失弾性率とがあることが知られている。架橋構造が形成されると、測定温度の上昇に伴うこの損失弾性率の低下が少なくなることが研究の結果明らかになっている。
【0071】
そこで、本発明の樹脂複合弾性体およびこの樹脂複合弾性体を形成する樹脂の粘弾性を周波数1〜100Hz、測定温度−50〜200℃の条件で測定して両者の粘弾性、特に、損失弾性率を比較した。
【0072】
その結果、本発明の樹脂複合弾性体では、ガラス転移温度(Tg)+20℃以上の領域で、貯蔵弾性率G’および損失弾性率G”のいずれもが上昇し、特に損失弾性率G”の上昇が顕著になる。さらにガラス転移温度(tanδのピーク温度)も僅かに高くなる。
【0073】
これらの結果から、本発明の樹脂複合弾性体中には金属被覆微粒子が関与した架橋構造が形成されているものと推定される。
このような架橋反応を起こす金属被覆微粒子の構造は、先に記載した膜厚のものがよく、膜厚が厚くなり、粒状の金属の形態が消失すると金属の活性が低下して架橋が形成されない。
【0074】
さらに、本発明の樹脂複合弾性体は、樹脂水性エマルジョンに金属被覆微粒子を配合すると、水性媒体が存在していても硬化反応が進行する。そしてこの硬化反応が進行しても水が遊離してくるのではなく、樹脂複合弾性体のポリマーマトリックス内部に水分が存在したまま硬化する。従って、乾燥条件を変えることにより様々な水分含有量の樹脂複合弾性体が得られる。
【0075】
このような活性を有する金属被覆微粒子は、樹脂水性エマルジョンに非常に良好に分散するので、樹脂複合弾性体中にも均一に分散して均一に架橋構造のような結合が形成される。このよう均一に結合が形成されるので本発明の樹脂複合弾性体の機械的強度が高い。
【0076】
また、金属被覆微粒子は、球状であるため、分散性に優れ、圧縮力、引張り力に対して機械的な強度が大きく、複合体のポリマーマトリックス中で等方性を有する結合(架橋構造)を形成することができる。
【0077】
本発明の樹脂複合弾性体は、上述のように樹脂中に金属被覆微粒子が分散した構成を有するが、さらにこの樹脂複合弾性体を製造する際には、樹脂水性エマルジョンと金属メッキ微粒子との混合物に、弾性の制御、加工性の向上、粘着性の制御などを目的とし、所望に応じて無機質充填剤、有機質充填剤を配合することができる。
【0078】
無機質充填剤としては、例えば、シリカ、ケイ藻土、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト、酸化バリウム、軽石、軽石バルーンおよびアルミナ繊維などの酸化物、水酸化マグネシウムおよび塩基性炭酸マグネシウムなどの水酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトおよびドーソナイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸アンモニウム、亜硫酸アンモニウムおよび亜硫酸カルシウムなどの硫酸塩または亜硫酸塩、タルク、クレー、マイカ、アスベスト、ガラス繊維、ガラスバルーン、ガラスビーズ、ケイ酸カルシウム、モンモリロナイトおよびベントナイトなどのケイ酸塩、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維および炭素中空球などの炭素類、ならびに、硫化モリブデン、ボロン繊維、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウム、炭化ケイ素繊維、黄銅繊維、単結晶チタン酸カリウム、チタン酸ジルコン酸鉛などを挙げることができる。
【0079】
これらの無機質充填剤は単独であるいは組み合わせて使用しても良い。
また、有機質充填剤としては、例えば、モミ殻、木炭、ジュート、木綿、木粉、紙細片、セロハン片、芳香族ポリアミド繊維、セルロース繊維、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、ナイロン繊維および各種ポリマー微粒子材料などを挙げることができる。これら有機質充填剤は単独であるいは組み合わせて使用しても良いし、また無機質充填剤と併用しても良い。
【0080】
さらに、本発明の樹脂複合弾性体は、各種の添加剤を含有していてもよい。このような添加剤としては、例えば、滑剤、着色剤、安定剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、可塑剤、発泡剤などを配合することができる。
【0081】
また、本発明の樹脂複合弾性体には、導電性材料を配合して導電性を賦与することができる。導電性の賦与材料としては、各種金属粉末、カーボンブラック、金属酸化物、各種形態の芯材(球状、不定形、針状、繊維状、中空粒子など)に金属メッキした金属メッキ粉末、高分子導電性物質などを挙げることができる。また、本発明の樹脂複合弾性体を製造する際に、樹脂水性エマルジョンを形成している媒体に溶解または分散する物質を配合して樹脂複合弾性体に導電性、電気伝導性を向上させることができる。ここで使用される水性媒体に溶解性または分散性の物質としては、例えば、酸性物質、アルカリ性物質、NaCl、KClなどの無機電解質、ポリアクリル酸塩などの水溶性高分子電解質、高分子電解質と無機電解質との混合物、電解質をドープしたポリマーを挙げることができる。このような物質を樹脂水性エマルジョン中に溶解または分散させ、この樹脂水性エマルジョンに金属被覆微粒子を配合して硬化させることより、得られる樹脂複合弾性体の導電性、電気伝導性が向上する。
【0082】
本発明の樹脂複合弾性体は、従来慣用とされている成形方法、例えば、射出成形、押し出し成形、プレス成形、注型成形などの方法により、所望の形状の成形品とすることができるし、キャスティング法、コーター塗布、スプレー塗布および各種印刷方式などにより、各種基材に直接塗布し、成形品とすることができる。また、剥離紙上に塗布して、平板の塗膜やシート状物、テープ形状物にしたり、成膜後剥離紙で挟持した構造とすることができる。
【0083】
また、現場施工が必要な場合は、混合物を空気遮断する容器に入れ、直接被着物に塗布、または充填、シーリングして成膜する方法、感圧接着性のある複合弾性体シートを切り抜き、圧着する方法などがある。
【0084】
本発明の複合弾性体の用途としては、導電性、電磁波シールド性、静電徐放性などの機能を有する感圧接着剤、接着剤、塗料の分野ばかりでなく、ゴム弾性を合わせもつ部品、例えば電子、電気、機械、自動車、船舶、航空機などの様々な分野における機械部品、精密部品、構造部品、あるいは一般工業部品、家具や日用雑貨に用いることができる。また、建築、土木の分野では、外装材、内装材、シーラント、ポリマーセメントモルタルなどに使用することができる。
【0085】
【発明の効果】
本発明の樹脂複合弾性体は、芯材表面に金属粒子の形態を維持した状態の無電解メッキ金属層を有する金属被覆微粒子が樹脂中に分散された測定温度の上昇に伴う損失弾性率の低下が少ない弾性体である。従来樹脂に充填剤を配合することは知られているが、従来技術において充填剤を配合して樹脂にゴム弾性を賦与するという技術は知られていない。
【0086】
しかも、上記のような特定の金属被覆微粒子を用いることにより、樹脂に常温でゴム弾性を賦与することができる。即ち、従来の弾性体は、溶融混練、加熱下における架橋剤の反応のような加熱を伴う工程でゴム樹脂に弾性を賦与しているのが一般的であるが、本発明によれば樹脂のゴム弾性は、原料である樹脂水性エマルジョンと上記特定の金属被覆微粒子とを常温で混合することにより発現する。従って本発明によれば、従来のように弾性体を製造するために多大な設備を必要とせず、さらに、本発明の樹脂複合弾性体は、この弾性体を付設する作業現場においてさえ調製することが可能である。従って、複雑な形状を有する弾性体の付設部分あるいは非常に広範囲に弾性体を付設しなければならないような場合において、その作業現場でこの樹脂水性エマルジョンと金属被覆微粒子とを混合して塗布することにより、従来付設が困難であった上記のような付設部分にも容易に弾性体を付設することができる。
【0087】
そして、この樹脂複合弾性体の弾性率は、金属被覆微粒子の配合割合を変えることにより容易に制御することができる。
さらに、この金属被覆微粒子は、樹脂に近似した比重を有しているので、樹脂に対する分散性がよく、しかも樹脂水性エマルジョン中で沈降しにくい。従って、本発明の樹脂複合弾性体中には均一に結合が形成され、機械的強度の強い弾性体が得られ、さらにこの弾性体に導電性、電磁波シールド性、静電徐放性等の性質を付与できる。
【0088】
本発明において、原料である樹脂水性エマルジョンとして例えば感圧接着剤を使用すると、金属被覆微粒子の配合前にはこの樹脂水性エマルジョンは粘着性を有しているが、金属被覆微粒子を配合してゴム弾性が発現するに従って、原料として使用された樹脂水性エマルジョンの粘着性は低下して非粘着性になる。従って、樹脂水性エマルジョンとして感圧接着剤を使用した場合、この感圧接着剤と金属被覆微粒子とを混合した直後は、この混合物は粘接着性を有しており、塗工することができるが、結合(架橋構造)が形成されるにつれて経時的にこの粘着力は低下し、ゴム弾性が発現する。従って、従来弾性体を付設する際に接着剤を必要とするような用途においても、本発明では初期における接着力を利用することにより特に接着剤を使用することなく、本発明の樹脂複合弾性体を基材に密着して付設することができる。
【0089】
さらに本発明の樹脂複合弾性体は、金属被覆微粒子の表面を介して樹脂水性エマルジョンを形成する樹脂が結合していると考えられ、こうした結合が形成されることに伴って、耐水性、耐有機溶剤性などの特性にも優れる。
【0090】
また、上記のような結合は、水性媒体が存在した状態で形成され、この際、水性媒体中に、電解質、結晶質、無機質などが溶解されていてもよく、樹脂複合弾性体はこれらの物質を封じ込めた状態で形成される。このようにして樹脂複合弾性体中に封じ込める物質の特性を積極的に利用することもできる
さらに、本発明の樹脂複合弾性体を製造する際には、必要に応じて無機質充填剤、有機質充填剤を配合することができ、これらを配合することにより混合物の粘度、流動性の制御ができるので、用途に応じたレオロジー特性をもつ混合物を使用することができる。
【0091】
また、樹脂水性エマルジョンと金属被覆微粒子との混合物は、pH値6.5以下の酸性領域で反応が迅速に進行し、この値を超える領域、特にpH値7以上では安定であるので、この混合物のpH値を6.5以上に調整しておけば、樹脂水性エマルジョンと金属メッキ微粒子との混合物を安定に貯蔵することができる。
【0092】
【実施例】
次に実施例を示して本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0093】
【実施例1】
樹脂水性エマルジョン(感圧接着剤)の合成
ガラス製攪拌翼、冷却器、窒素ガス導入管、温度計および滴下ロートを備えた容量1リットルのセパラブルフラスコに、イオン交換水150重量部を秤量して投入し、窒素ガスを流しながら70℃に昇温した。
【0094】
アニオン系乳化剤1.8重量部、ノニオン系乳化剤1.8重量部、アクリル酸ブチル345.6重量部、アクリル酸14.4重量部、イオン交換水90重量部および重合開始剤過硫酸カリウム3.6重量部を秤量し、これらを滴下ロートに入れ、良く振り混ぜて乳化させた後、滴下ロートより、セパラブルフラスコ内のイオン交換水中に3時間かけて滴下した。滴下終了後さらに3時間、反応温度70℃に保持して反応させた。
【0095】
反応後、乳化重合物を冷却して取り出し、25℃におけるpH値、粘度((JIS K6833 6.3準拠) 不揮発分(JIS K5400 8.2.1準拠)を測定したところ、それぞれ、4.5、40Poise、62.0%であった。
【0096】
この感圧接着剤をシリコン剥離紙上にドクターブレードにより50μmの膜厚に塗布し、70℃にて10分乾燥した。この塗膜上に不織布を重ね、その上からドクターブレードにより上記感圧接着剤を50μmの膜厚に塗布して70℃にて10分乾燥した。このようにして作製した不織布を支持体とした塗膜を、剥離紙より剥離して試験片を調製し、この試験片についてアセトンによりソックスレー抽出し、ゲル分率を算出したところ、50%であった。
【0097】
【数1】
Figure 0003587388
【0098】
感圧接着剤の粘着物性である粘着力(g/25mm)(JIS Z0237 8準拠)、保持力(60分−mm)(JIS Z0237 11準拠)およびボールタック(JIS Z0237 12準拠)を測定したところ、それぞれ800g/25mm、60分−0.1mm、23であった。
金属メッキ微粒子の調製
芯材として、平均粒子径7μmの架橋ポリメチルメタクリレート微粒子(MR−7G、綜研化学(株)製)を用意し、この芯材に無電解メッキにおける通常の前処理および活性化処理を施した後、この芯材にNiの無電解メッキ処理を行った。
【0099】
すなわち、市販の無電解メッキ液を5倍に希釈した反応液4000mlをプラスチック製ビーカーに取り、昇温して50℃に保持した。この反応液に上記のようにして活性化処理した芯材を6.0g加えて、攪拌しながら12時間反応させた。
【0100】
反応後、Niメッキされた微粒子を濾取し、この微粒子をイオン交換水および希塩酸で繰り返し洗浄して、Niメッキされた金属被覆ポリマーを得た。
この金属被覆ポリマー粒子を乾燥機で6時間熱風乾燥した後、ボールミルで解砕した。
【0101】
解砕した金属被覆粒子を、75メッシュの篩にかけて75メッシュ篩通過分を回収した。回収量は11.3gであり、芯材1gあたりのNi析出量は、0.88gであり、このメッキ層の平均厚さは計算値で約0.15μmであった。
【0102】
この試料を取り出して、走査電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、Niメッキ粒子は球状であり、Niメッキ層は、約0.15ミクロン程度の微粒子状Niで覆われていた。
【0103】
この金属被覆微粒子の性状を表1に示す
樹脂複合弾性体の調製
上記で調製した感圧接着剤12.9g(固形分8.0g)をプラスチック製ビーカーに取り、上記で調製したNiメッキ粒子2.0gを加え、ガラス棒でビーカーの壁に擦りつけるように良く混合した。約2分後、混合物は糸引き状態となり、増粘したので、混合物をビーカーの壁に付着させ、そのまま室温で24時間放置した。この混合物は、ゴム弾性があり、粘着性がなく、ビーカー壁から簡単に剥ぎ取ることができた。
【0104】
上記のようにして得られた樹脂複合弾性体の特性を表2に示す。
樹脂複合弾性体の粘弾性の測定
上記で調製した感圧接着剤100gをビーカーに取り、アンモニア水(25%)2.4gを加えて、pH値を7.2に調整した。
【0105】
この感圧接着剤を51.6g(固形分32.0g)ビーカーに取り、上記で調製したNiメッキ粒子8.0gを加え、ガラス棒で良く混合した後、400メッシュのステンレス製金網で濾過した。
【0106】
濾過物は、pH値が高いために、粘度増加や、糸引き現象は観察されなかった。
この混合物を、シリコン剥離紙上にドクターブレードにより膜厚50μm(乾燥膜厚)になるように塗布し、70℃にて10分乾燥した。このように乾燥させることにより、アンモニアの蒸散に伴って徐々に混合物が硬化した。
【0107】
この塗膜上に同様の操作で混合物を塗布、乾燥し、100μm(乾燥膜厚)の樹脂複合弾性体を得た。
この樹脂複合弾性体を剥離紙から剥し、8枚重ね合わせて圧着し、800μmのシートを作製した。
粘弾性測定
このシートを用い、粘弾性測定装置(岩本製作所(株)製、VES−P3型)にて、粘弾性測定を行い、貯蔵弾性率G’、損失弾性率G”、ガラス転移温度を測定した。測定条件は、24.3℃にて0.1Hzから100Hzの周波数領域、ならびに10Hzおよび100Hzにて測定温度−50℃〜200℃の温度領域とした。
【0108】
感圧接着剤より作製したポリマーの粘弾性測定結果を図4a、図5aに示す。
また、上記のようにして製造した樹脂複合弾性体の粘弾性測定結果を図4b、図5bに示す。
【0109】
上記のようにして得られた樹脂複合弾性体の貯蔵弾性率G’、損失弾性率G”は、ガラス転移温度よりも高い室温から200℃までの領域で、感圧接着剤に特有の極端な低下がなく、また、貯蔵弾性率G’と損失弾性率G”との差も大きくなかったことから、弾性率が大幅に増大した。
ゲル分率の測定
上述した樹脂水性エマルジョンから製造した試験片の製造方法に準じて作製したシート状の樹脂複合弾性体について、アセトンを抽出溶媒として、ソックスレー抽出した結果より算出したゲル分率を表2に示した。
【0110】
Niメッキ粒子の種類により、ゲル分率の数値に違いが認められ、感圧接着剤にニッケルメッキ粒子を20重量%混合したとして計算したゲル分率60%よりも、大きな数値であった。
【0111】
【実施例2】
実施例1で使用した金属被覆微粒子の代わりに、球状の形状を有し、平均粒子径が7μmであり、ニッケル含有率が31重量%であり、メッキ層の厚さが計算値で0.07μmの金属粒子を用いた以外は同様にして樹脂複合弾性体を製造した。
【0112】
この金属被覆微粒子の性状を表1に示す
なお、このメッキ層では粒状の金属が一部融着していたが、金属の粒状形態は維持されていた
上記のようにして得られた樹脂複合弾性体の特性を表2に示す。
【0113】
【実施例3】
実施例1で使用した金属被覆微粒子の代わりに、球状の形状を有し、平均粒子径が10μmであり、ニッケル含有率が47重量%であり、メッキ層の厚さが計算値で0.17μmの金属粒子を用いた以外は同様にして樹脂複合弾性体を製造した。
【0114】
この金属被覆微粒子の性状を表1に示す
なお、このメッキ層では無電解メッキ金属は粒状の金属の形態を維持して芯材表面に存在していた。
【0115】
上記のようにして得られた樹脂複合弾性体の特性を表2に示す。
【0116】
【比較例1】
実施例1で使用した金属被覆微粒子の代わりに、球状の形状を有し、平均粒子径が10μmであり、ニッケル含有率が50重量%であり、メッキ層の厚さが計算値で0.22μmの均一な金属膜(連続層)を芯材表面に有するメッキ粒子を用いた以外は同様にして樹脂複合弾性体を製造した。
【0117】
この金属被覆微粒子の性状を表1に示す
上記のようにして得られた樹脂複合弾性体の特性を表2に示す。
【0118】
【比較例2】
実施例1で使用した金属被覆微粒子の代わりに、ニッケル微粉末(形状:不定形、粒径:2μm、ニッケル含量:100%)を用いた以外は同様にして樹脂複合弾性体を製造した。
【0119】
このニッケル微粉末の性状を表1に示す
上記のようにして得られた樹脂複合弾性体の特性を表2に示す。
【0120】
【比較例3】
実施例1において、金属被覆微粒子を使用しなかった以外は同様に操作した。
上記のようにして得られた硬化物の特性を表2に示す。
【0121】
【表1】
Figure 0003587388
【0122】
【表2】
Figure 0003587388

【図面の簡単な説明】
【図1】金属被覆微粒子の粒子構造の例を示す走査電子顕微鏡写真である。
【図2】金属被覆微粒子を樹脂水性エマルジョンに混合した際の混合物を光学顕微鏡で観察してその変化状態を模式的に示す図である。
【図3】樹脂複合弾性体における金属被覆微粒子の分散状態の例を示す走査電子顕微鏡写真である。
【図4】測定条件100Hzで測定した貯蔵弾性率G’、損失弾性率G”およびtanδの関係を示すグラフである。
【図5】測定条件10Hzで測定した貯蔵弾性率G’、損失弾性率G”およびtanδの関係を示すグラフである。

Claims (11)

  1. 成膜された樹脂の貯蔵弾性率と損失弾性率との比で表されるtanδのピーク温度として定義されるガラス転移温度が10℃以下である樹脂成分であって、かつ酸成分単位を有する樹脂成分が水に分散した水性エマルジョンに、
    金属の少なくとも一部が粒子の形態を維持している平均層厚0.05〜5μmの無電解メッキ金属層を芯材表面に有する粒径0.5〜100μmの金属被覆微粒子を分散させて接触させ、樹脂成分を金属被覆微粒子表面に成膜させながら賦形することを特徴とする樹脂複合弾性体の製造方法。
  2. 上記水性エマルジョンを樹脂固形分量で25〜99.5重量部、金属被覆微粒子を0.5〜75重量部の量で配合することを特徴とする請求項第項記載の樹脂複合弾性体の製造方法。
  3. 得られた樹脂複合弾性体について、周波数1〜100Hz、温度−50〜200℃の条件で測定した該樹脂複合弾性体の貯蔵弾性率と損失弾性率との比で表されるtanδのピーク温度として定義したガラス転移温度よりも20℃高い温度以上の温度における損失弾性率が、同一条件で測定した該樹脂複合弾性体を形成する樹脂単独の損失弾性率よりも高いことを特徴とする請求項第項記載の樹脂複合弾性体の製造方法。
  4. 金属被覆微粒子の芯材が有機重合体であることを特徴とする請求項第項記載の樹脂複合弾性体の製造方法。
  5. 水性エマルジョンのpH値を6.5以上に調整した後、該水性エマルジョンに金属被覆微粒子を配合することを特徴とする請求項第項記載の樹脂複合弾性体の製造方法。
  6. 水性エマルジョンのpH値を調整するのに、アンモニア水を使用することを特徴とする請求項第項記載の樹脂複合弾性体の製造方法。
  7. 水性エマルジョンが、室温で成膜性のある樹脂を含有することを特徴とする請求項第項記載の樹脂複合弾性体の製造方法。
  8. 水性エマルジョンを形成する樹脂についてJIS-Z-0237-8に準拠して測定した180度剥離強度が0.3〜3Kg/inchの範囲内にあることを特徴とする請求項第項または第項記載の樹脂複合弾性体の製造方法。
  9. 水性エマルジョンがアクリル系樹脂の水性エマルジョンであることを特徴とする請求項第項、第項乃至第項のいずれかの項記載の樹脂複合弾性体の製造方法。
  10. 水性エマルジョン中に含有される樹脂が、カルボン酸基、スルホン酸基およびリン酸基よりなる群から選ばれる少なくとも一種類の基を有する酸成分単位を含むことを特徴とする請求項第項または第項記載の樹脂複合弾性体の製造方法。
  11. 金属被覆微粒子の無電解メッキ金属層が、Fe、Ni、CoおよびCuから選ばれる少なくとも一種類の金属を含有することとを特徴とする請求項第項記載の樹脂複合弾性体の製造方法。
JP16034893A 1993-06-04 1993-06-04 樹脂複合弾性体の製造方法 Expired - Fee Related JP3587388B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP16034893A JP3587388B2 (ja) 1993-06-04 1993-06-04 樹脂複合弾性体の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP16034893A JP3587388B2 (ja) 1993-06-04 1993-06-04 樹脂複合弾性体の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH06345899A JPH06345899A (ja) 1994-12-20
JP3587388B2 true JP3587388B2 (ja) 2004-11-10

Family

ID=15713044

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP16034893A Expired - Fee Related JP3587388B2 (ja) 1993-06-04 1993-06-04 樹脂複合弾性体の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3587388B2 (ja)

Families Citing this family (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4634671B2 (ja) * 2001-09-17 2011-02-16 神島化学工業株式会社 水酸化マグネシウム系難燃剤の表面被覆状態の評価方法
JP4803350B2 (ja) * 2005-06-03 2011-10-26 信越化学工業株式会社 圧着性異方導電性樹脂組成物及び微細電極の接続方法
JP2009135605A (ja) * 2007-11-28 2009-06-18 Tosoh Corp フィルムアンテナ
JP6004680B2 (ja) * 2012-03-12 2016-10-12 住友ゴム工業株式会社 タイヤ用ゴム組成物及びタイヤ
JP6679870B2 (ja) * 2015-10-05 2020-04-15 三菱マテリアル株式会社 放熱シート
CN110178188B (zh) * 2017-02-22 2020-10-30 富士胶片株式会社 导电性薄膜、具有三维形状的该薄膜及其制造方法、拉伸薄膜制造方法、触控传感器薄膜

Also Published As

Publication number Publication date
JPH06345899A (ja) 1994-12-20

Similar Documents

Publication Publication Date Title
CN102300949B (zh) 导热性粘合剂组合物和导热性粘合片
KR101546659B1 (ko) 모노모달 입도분포의 나노 사이즈 라텍스 입자를 포함하는 아크릴계 에멀젼 점착제 조성물 및 이의 제조방법
JP6525961B2 (ja) アクリルフォーム粘着テープおよびこれを適用したフラットパネルディスプレイ
CN102858896A (zh) 导热性粘合片
EP1599557A2 (en) Reactive hot melt adhesive
KR100910342B1 (ko) 폴리페닐렌술피드 수지 구조체
CN113302250B (zh) 粘合带
WO2006019154A1 (ja) 導電性微粒子及び異方性導電材料
CN101688087B (zh) 用于粘结弹性体的粉末粘合剂
JP3197587B2 (ja) エポキシ樹脂系接着性組成物
SI20078A (sl) Stabilizirane adhezivne mikro-kroglice
WO2005121267A1 (en) Adhesive sheet comprising hollow parts and method for preparing the same
CN101831251A (zh) 丙烯酸系粘合片
CN102753638A (zh) 导热性粘合片的制造方法
KR20140068950A (ko) 전기 전도성 접착제 화합물 및 접착 테이프
JP3587388B2 (ja) 樹脂複合弾性体の製造方法
JPH0753812A (ja) アミノ基含有ポリプロピレン樹脂組成物
JPS61261383A (ja) 再剥離性粘着剤組成物
JP2004161856A (ja) 熱伝導性樹脂成形体用組成物およびそれから得られる成形体
JP3572653B2 (ja) フレキシブル印刷配線板用接着剤組成物
JP5192138B2 (ja) 蓄熱性アクリル系樹脂組成物及びそれを用いた蓄熱性シート状成形体
JP3507849B2 (ja) アクリル系接着シートおよびその製造方法
JP3347425B2 (ja) 水性エマルション型粘接着剤
JP5685002B2 (ja) 制振材用エマルション及び制振材組成物
JP2009235146A (ja) アクリル系樹脂シート状成形体

Legal Events

Date Code Title Description
A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20040123

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20040414

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20040609

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20040714

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20040806

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees