JP3586391B2 - 列車の人身事故防止装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉄道におけるとっさの飛び込み事故に対応することのできる事故防止装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
昨今、鉄道における飛び込み事故が頻発し、事故者の不幸はもちろん、一旦事故が発生するとその復旧に多大の時間を要し、多くの利用者に非常な迷惑がかかるものである。
一方、これら鉄道事故に対しては、従来、ATS装置等の非常ブレーキを作動させる手段が採られているが、このATS装置は閉塞区間内での列車同士の近接には有効に作動しても、飛び込み事故のような緊急性を要する事故に対しては殆ど作動が期待できない。
【0003】
又、その非常ブレーキも、在来線を走る車両には、ブレーキをかけてから600m以内で停止できるような性能を持たせるよう法制化されているが、やはり600m程度の停止では、飛び込み事故には抗し得ない。
従って、この飛び込み事故には殆ど有効な手段が見い出されていないのが現状である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記実状を解決しようとしてなされたもので、衝撃の緩和性と作動の迅速性に優れた装置を開発し、とっさの飛び込み事故に対応出来るよう工夫したものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明列車の人身事故防止装置は、列車の進行方向先端位置に、前袋及び底袋を備え、該前袋及び底袋の表面に人体と袋とを粘性によって結合させる為の粘着剤を塗布すると共に各袋間の界面に各袋が折り畳まれた状態にあって相互の粘着を防ぐ剥離紙を挟んだ緩衝装置を収納し、該前袋及び底袋に配した連結管を介してスイッチ機構の入力により膨張ガスを発生するインフレータを連結させると共に、該インフレータの作動に関連づけて該緩衝装置を地面近くまで降下させる昇降機構を付設させて構成される。
そして、事故の発生を感知した運転者が事故直前において人為的に押す入力スイッチ機構と、画像データをコンピュータの画像処理システムで認識しその認識に基づいて一定条件下でスイッチを自動的に入力させる自動入力機構とを備え、双方をOR回路で結び、インフレータを始動させる回路構成をとることが好ましい。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明事故防止装置は、列車の先頭車両の前面に配する緩衝装置10と、該緩衝装置10にガスを供給するインフレータ20と、該緩衝装置を地面近くまで降下させる昇降機構30とから成る。
【0007】
該緩衝装置は10、先ず図1及び図3に示す如く、列車進行方向の先端正面に位置し、列車と同一又は若干幅狭とした事故対象者を正面から受け止める為の前袋11を配する。該前袋11の背面には、袋体を支えるための板体11aを付設するのが好ましいが、膨張時のガス圧で袋の形態を維持できる場合には必要ない。
又、該前袋11の下面に、該前袋と連結させて、対象者を底面から支える底袋12を配する。このときも、板体12aを付設させるのが、上記前袋の場合と同様の理由で好ましい。
そして、該前板袋1と底袋12との間に、必要に応じて左右側面から対象者を保護する側袋13、13を配設し、該側袋13,13は、前記前袋11及び底袋12と同様ガスの充填で膨張する形態としても良いが、横方向への衝撃は小さいことから、膨張のない通常の布体としても良い。
又、14は、対象者が列車の車体と地面とのすき間に潜り込んでしまうのを防いで、底袋内に導く為の誘導板である。
【0008】
そして、該前袋11、底袋12及び側袋13,13は後述のガスの出し入れによって折り畳み自在であって、通常時には、一定のケース内に折り畳んで収納されるようガスを抜いた状態にして置く(図2及び図3参照)。
該袋の素材は、袋体としての可撓性と強靱性を備えたものであればいずれであっても良いが、コーティングされたナイロン素材とするのが一般的である。
【0009】
又、該前袋11及び底袋12(必要に応じて側袋13,13)の各袋には、その部屋毎に後述のインフレータ20と連通させるための連結管を設け、膨張したガスが一瞬に各袋に充填されるようにする。
【0010】
そして、連結孔の先に、袋体を膨張、展開させるためのガスを発生するインフレータ20を配設する。該インフレータの一例を示すと、図4の如くで、着火剤21と、ガス発生剤22を備え、電気信号によって少量の火薬に点火し、その燃焼熱によって推薬に点火し、アジ化ナトリウムを主成分とした推薬が分解反応する時に発生する窒素ガスを袋体に送るものである。
【0011】
該インフレータ20には、点火のための電気信号を送るスイッチ機構が連結されるが、該スイッチ機構には、手動スイッチ機構とコンピュータソフトを利用した自動入力機構のものとがある。
先ず、手動スイッチ機構は、事故の発生を感知した運転者が、事故直前において人為的に押す入力スイッチであって、熟練した運転者が過去の経験と、鋭い注意力によって作動させるので、実効性の高い手段である。
【0012】
一方、自動入力機構は、例えば、列車先頭部に映像機器を配置し、その映像からの画像データをコンピュータの画像処理システムに送り、パターン認識等によって列車の線路上、又は、その近辺に存在する人体、動物、その他の障害物等を認識し、その認識に基づいて、一定条件下でスイッチを自動的に入力させるものでとする。又、該画像は将来的には、衛星から発せられる画像情報を利用しても良い。
【0013】
該スイッチ機構は、上記いずれか一方でも良いが、望ましくは、双方を備えることが理想であり、人為によるものは、緊急性と俊敏性に優れるが、見落とし等の恐れがあり、一方、センサ機構によるものは、見落とし等はないが、事故か否かの判断に曖昧さが残る欠点があり、互いが補完する関係が望ましい。
【0014】
又、上記袋体へは、一旦膨張したガスが経時的に萎んだ場合に、これを補う為にエアーコンプレッサに連結した連通管をも併設することが望ましく、該コンプレッサの始動スイッチと後述のインフレータの始動スイッチ機構とはタイマーを介して袋体の膨満が維持されるように配線する。
【0015】
次に、上記緩衝機構10には、通常時には車両の走行を妨げない適正な高さに保ち、作動時にあって、底袋12が可及的に地面に近い位置まで降下させる昇降機構30を付設する。
該昇降機構30の具体例を示すと、図5及び図6の如くで、緩衝機構10の袋体を折り畳んで収納した収納ボックス31の一部に緩衝装置10の板体11aに連結した吊下ロープ32を配し、更に、その上部に定滑車33を配設し、一定距離をおいて下方に定滑車34を配設し、その吊下ロープの終端部に上下方向に往復動するシリンダ35を配して成る。
該シリンダ35は、油圧シリンダでも良いが、該シリンダに迅速な応答性を期待してエアーシリンダとし、更に該シリンダ室内に上記インフレータ20に発生した膨張ガスを流入させ、その圧力でピストンロッドを下方に降下させる態様とするのが望ましい。
【0016】
更に、上記前袋11、底袋12、側袋13、13の表面には、比較的強い粘着力を発揮する粘着剤を塗布し、互いの袋体の界面には離剥紙を挟んで置くのが望ましい。
即ち、上記袋体によって緩衝作用が発揮された後には、その弾性ゆえに反発力が働き、人体が跳ね返される恐れがあり、それを粘着剤の粘性によって衣服等と袋体との間に結合力を発揮させ、暫しの間、袋体に留めようとするものである。離剥紙は、折り畳んだ状態にあって各袋体同士の粘着を防ぐためのものである。
【0017】
尚、本発明装置は、既に稼働中の列車には新たに取り付け、今後新設する列車には予め装備するようにする。
【0018】
次に、本発明実施態様の作用を説明する。
先ず、列車が走行中にあって、車両の進行方向に不審者があらわれた場合、警笛を鳴らし徐行運転に入るのは従来と同様であり、それが飛び込み事故につながると判断した瞬間に、非常ブレーキを作動させると同時に、インフレータのスイッチを入力する。
このとき、入力の方法には、手動による人為的入力と、コンピュータに連動した自動入力との二つの態様があり、いずれか一方がある場合にはその一つを、又、双方がある場合には、いずれか一方の入力によってインフレータを作動させる。
このとき、人為的入力には、熟練者の経験と、鋭い注意力が発揮され実効性の高い手段であり、又一方、コンピュータの画像処理システムによるものは、パターン認識等によって列車の線路付近に存在する人体、動物、その他の障害物等を認識することができ、人為的ミスを犯さない確実な手段であるが、双方に一長一短がある。そこで、双方を活用するのが望ましいが、このとき、いずれか一方が入力されたら、必ずインフレータが作動されるよう双方をOR回路で結んだ回路構成とする。それは、いずれか一方が過誤であったとしても、それを容認して事故の未然防止を確実とする為である。
【0019】
ついで、該インフレータのスイッチが入力されると、火薬に点火し、その燃焼熱によって、アジ化ナトリウムを主成分とした推薬が分解反応を起こして窒素ガスを発生させる。
これと同時に、又これより若干前に昇降機構30のスイッチを入力し、シリンダ35のピストンロッドを伸長させ、滑車33,34を介した吊下ロープ32を吊下させ、これに連結した緩衝装置10全体を下方に降下させる。
このとき、昇降機構30のシリンダ35は、列車の装備したエアーコンプレッサによって作動させても良いが、前記膨張したガスの一部をシリンダ35に送ると、インフレータ20の作動と同時に降下が瞬時に完了するので、迅速性に優れたものとなる。
その結果、緩衝装置10を、可及的に地面に近い位置に臨ませることができる。
【0020】
次に、上記インフレータ20に発生した膨張力のあるガスは、連結孔を介して、前袋11、底袋12(必要に応じて側袋13,13)の各袋の部屋毎に瞬時に送られる。すると、収納ボックス31内に折り畳まれた各袋体は、膨張と同時に展開し、底袋12は前袋11から離れて約90度開いて底面を形成し、側袋13、13は両者の脇部に展開する。
そして、互いに膨張を続けると、各袋にはガスが充填され、一定の厚みを満たし、気体による弾性で衝突に対する緩衝作用を発揮するものとなる。
【0021】
そしてもし、事故に遭遇したら、誘導板14が対象者をすくい上げ、前袋11は身体を正面から受け止め、その緩衝作用で衝突による衝撃を和らげ、底袋12は正面からの落下を受け止めてその位置に保ち、側袋13,13 は側面に跳ね返された場合にこれを受け止めて底袋12へと維持する。
斯くして、衝突によって相当な衝撃があったとしても、各袋の空気弾性によって破壊力が和らげられ、少なくとも人命が失われないよう機能する。
又、事故者の身体は、各袋体で形成された緩衝装置に留められるので、身体の損傷を可及的に少なくすることができる。
【0022】
このとき、袋体表面に粘着剤が施されていると、付着力の高い衣服と袋体との間に粘性による結合が促され、例えば、空気弾性によって跳ね返される恐れがある場合に、瞬時的にその反発力に抗し、上記保護を一層厚くする。
【0023】
又、該袋体にエアーコンプレッサに連結した連通管を併設すると、一旦膨張したガスが経時的に萎んだ場合にも、袋体の膨張状態が維持される。
【0024】
【発明の効果】
以上の構成及び作用に基づく本発明は、スイッチ入力から瞬時に緩衝装置が作動し、どんなにとっさの飛ぶ込み事故であっても対応できる緊急性に優れたものであり、且つ、衝突による衝撃に対しガスを充満した前袋、底袋が事故対象者を捉えて確実に緩衝作用を発揮する。従って、従来まったく対策のなかった鉄道飛び込み事故に対し、極めて有効な解決手段となり、人命救助に資する優れた発明である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を装備した列車で緩衝装置が展開した状態の斜視図。
【図2】本発明を装備した列車で緩衝装置が展開する前の斜視図。
【図3】本発明緩衝装置部の側面図で、(A)が袋体の展開前、(B)が展開後を示す。
【図4】本発明のインフレータ部を示す斜視図。
【図5】本発明昇降機構部の正面図。
【図6】本発明昇降機構部の側面図で、(A)が降下前、(B)が降下後を示す。
【符号の説明】
10 緩衝装置
11 前袋
12 底袋
13 側袋
20 インフレータ
21 着火剤
22 ガス発生剤
30 昇降機構
31 収納ボックス
32 吊下ロープ
33、34 定滑車
35 シリンダ
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉄道におけるとっさの飛び込み事故に対応することのできる事故防止装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
昨今、鉄道における飛び込み事故が頻発し、事故者の不幸はもちろん、一旦事故が発生するとその復旧に多大の時間を要し、多くの利用者に非常な迷惑がかかるものである。
一方、これら鉄道事故に対しては、従来、ATS装置等の非常ブレーキを作動させる手段が採られているが、このATS装置は閉塞区間内での列車同士の近接には有効に作動しても、飛び込み事故のような緊急性を要する事故に対しては殆ど作動が期待できない。
【0003】
又、その非常ブレーキも、在来線を走る車両には、ブレーキをかけてから600m以内で停止できるような性能を持たせるよう法制化されているが、やはり600m程度の停止では、飛び込み事故には抗し得ない。
従って、この飛び込み事故には殆ど有効な手段が見い出されていないのが現状である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記実状を解決しようとしてなされたもので、衝撃の緩和性と作動の迅速性に優れた装置を開発し、とっさの飛び込み事故に対応出来るよう工夫したものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明列車の人身事故防止装置は、列車の進行方向先端位置に、前袋及び底袋を備え、該前袋及び底袋の表面に人体と袋とを粘性によって結合させる為の粘着剤を塗布すると共に各袋間の界面に各袋が折り畳まれた状態にあって相互の粘着を防ぐ剥離紙を挟んだ緩衝装置を収納し、該前袋及び底袋に配した連結管を介してスイッチ機構の入力により膨張ガスを発生するインフレータを連結させると共に、該インフレータの作動に関連づけて該緩衝装置を地面近くまで降下させる昇降機構を付設させて構成される。
そして、事故の発生を感知した運転者が事故直前において人為的に押す入力スイッチ機構と、画像データをコンピュータの画像処理システムで認識しその認識に基づいて一定条件下でスイッチを自動的に入力させる自動入力機構とを備え、双方をOR回路で結び、インフレータを始動させる回路構成をとることが好ましい。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明事故防止装置は、列車の先頭車両の前面に配する緩衝装置10と、該緩衝装置10にガスを供給するインフレータ20と、該緩衝装置を地面近くまで降下させる昇降機構30とから成る。
【0007】
該緩衝装置は10、先ず図1及び図3に示す如く、列車進行方向の先端正面に位置し、列車と同一又は若干幅狭とした事故対象者を正面から受け止める為の前袋11を配する。該前袋11の背面には、袋体を支えるための板体11aを付設するのが好ましいが、膨張時のガス圧で袋の形態を維持できる場合には必要ない。
又、該前袋11の下面に、該前袋と連結させて、対象者を底面から支える底袋12を配する。このときも、板体12aを付設させるのが、上記前袋の場合と同様の理由で好ましい。
そして、該前板袋1と底袋12との間に、必要に応じて左右側面から対象者を保護する側袋13、13を配設し、該側袋13,13は、前記前袋11及び底袋12と同様ガスの充填で膨張する形態としても良いが、横方向への衝撃は小さいことから、膨張のない通常の布体としても良い。
又、14は、対象者が列車の車体と地面とのすき間に潜り込んでしまうのを防いで、底袋内に導く為の誘導板である。
【0008】
そして、該前袋11、底袋12及び側袋13,13は後述のガスの出し入れによって折り畳み自在であって、通常時には、一定のケース内に折り畳んで収納されるようガスを抜いた状態にして置く(図2及び図3参照)。
該袋の素材は、袋体としての可撓性と強靱性を備えたものであればいずれであっても良いが、コーティングされたナイロン素材とするのが一般的である。
【0009】
又、該前袋11及び底袋12(必要に応じて側袋13,13)の各袋には、その部屋毎に後述のインフレータ20と連通させるための連結管を設け、膨張したガスが一瞬に各袋に充填されるようにする。
【0010】
そして、連結孔の先に、袋体を膨張、展開させるためのガスを発生するインフレータ20を配設する。該インフレータの一例を示すと、図4の如くで、着火剤21と、ガス発生剤22を備え、電気信号によって少量の火薬に点火し、その燃焼熱によって推薬に点火し、アジ化ナトリウムを主成分とした推薬が分解反応する時に発生する窒素ガスを袋体に送るものである。
【0011】
該インフレータ20には、点火のための電気信号を送るスイッチ機構が連結されるが、該スイッチ機構には、手動スイッチ機構とコンピュータソフトを利用した自動入力機構のものとがある。
先ず、手動スイッチ機構は、事故の発生を感知した運転者が、事故直前において人為的に押す入力スイッチであって、熟練した運転者が過去の経験と、鋭い注意力によって作動させるので、実効性の高い手段である。
【0012】
一方、自動入力機構は、例えば、列車先頭部に映像機器を配置し、その映像からの画像データをコンピュータの画像処理システムに送り、パターン認識等によって列車の線路上、又は、その近辺に存在する人体、動物、その他の障害物等を認識し、その認識に基づいて、一定条件下でスイッチを自動的に入力させるものでとする。又、該画像は将来的には、衛星から発せられる画像情報を利用しても良い。
【0013】
該スイッチ機構は、上記いずれか一方でも良いが、望ましくは、双方を備えることが理想であり、人為によるものは、緊急性と俊敏性に優れるが、見落とし等の恐れがあり、一方、センサ機構によるものは、見落とし等はないが、事故か否かの判断に曖昧さが残る欠点があり、互いが補完する関係が望ましい。
【0014】
又、上記袋体へは、一旦膨張したガスが経時的に萎んだ場合に、これを補う為にエアーコンプレッサに連結した連通管をも併設することが望ましく、該コンプレッサの始動スイッチと後述のインフレータの始動スイッチ機構とはタイマーを介して袋体の膨満が維持されるように配線する。
【0015】
次に、上記緩衝機構10には、通常時には車両の走行を妨げない適正な高さに保ち、作動時にあって、底袋12が可及的に地面に近い位置まで降下させる昇降機構30を付設する。
該昇降機構30の具体例を示すと、図5及び図6の如くで、緩衝機構10の袋体を折り畳んで収納した収納ボックス31の一部に緩衝装置10の板体11aに連結した吊下ロープ32を配し、更に、その上部に定滑車33を配設し、一定距離をおいて下方に定滑車34を配設し、その吊下ロープの終端部に上下方向に往復動するシリンダ35を配して成る。
該シリンダ35は、油圧シリンダでも良いが、該シリンダに迅速な応答性を期待してエアーシリンダとし、更に該シリンダ室内に上記インフレータ20に発生した膨張ガスを流入させ、その圧力でピストンロッドを下方に降下させる態様とするのが望ましい。
【0016】
更に、上記前袋11、底袋12、側袋13、13の表面には、比較的強い粘着力を発揮する粘着剤を塗布し、互いの袋体の界面には離剥紙を挟んで置くのが望ましい。
即ち、上記袋体によって緩衝作用が発揮された後には、その弾性ゆえに反発力が働き、人体が跳ね返される恐れがあり、それを粘着剤の粘性によって衣服等と袋体との間に結合力を発揮させ、暫しの間、袋体に留めようとするものである。離剥紙は、折り畳んだ状態にあって各袋体同士の粘着を防ぐためのものである。
【0017】
尚、本発明装置は、既に稼働中の列車には新たに取り付け、今後新設する列車には予め装備するようにする。
【0018】
次に、本発明実施態様の作用を説明する。
先ず、列車が走行中にあって、車両の進行方向に不審者があらわれた場合、警笛を鳴らし徐行運転に入るのは従来と同様であり、それが飛び込み事故につながると判断した瞬間に、非常ブレーキを作動させると同時に、インフレータのスイッチを入力する。
このとき、入力の方法には、手動による人為的入力と、コンピュータに連動した自動入力との二つの態様があり、いずれか一方がある場合にはその一つを、又、双方がある場合には、いずれか一方の入力によってインフレータを作動させる。
このとき、人為的入力には、熟練者の経験と、鋭い注意力が発揮され実効性の高い手段であり、又一方、コンピュータの画像処理システムによるものは、パターン認識等によって列車の線路付近に存在する人体、動物、その他の障害物等を認識することができ、人為的ミスを犯さない確実な手段であるが、双方に一長一短がある。そこで、双方を活用するのが望ましいが、このとき、いずれか一方が入力されたら、必ずインフレータが作動されるよう双方をOR回路で結んだ回路構成とする。それは、いずれか一方が過誤であったとしても、それを容認して事故の未然防止を確実とする為である。
【0019】
ついで、該インフレータのスイッチが入力されると、火薬に点火し、その燃焼熱によって、アジ化ナトリウムを主成分とした推薬が分解反応を起こして窒素ガスを発生させる。
これと同時に、又これより若干前に昇降機構30のスイッチを入力し、シリンダ35のピストンロッドを伸長させ、滑車33,34を介した吊下ロープ32を吊下させ、これに連結した緩衝装置10全体を下方に降下させる。
このとき、昇降機構30のシリンダ35は、列車の装備したエアーコンプレッサによって作動させても良いが、前記膨張したガスの一部をシリンダ35に送ると、インフレータ20の作動と同時に降下が瞬時に完了するので、迅速性に優れたものとなる。
その結果、緩衝装置10を、可及的に地面に近い位置に臨ませることができる。
【0020】
次に、上記インフレータ20に発生した膨張力のあるガスは、連結孔を介して、前袋11、底袋12(必要に応じて側袋13,13)の各袋の部屋毎に瞬時に送られる。すると、収納ボックス31内に折り畳まれた各袋体は、膨張と同時に展開し、底袋12は前袋11から離れて約90度開いて底面を形成し、側袋13、13は両者の脇部に展開する。
そして、互いに膨張を続けると、各袋にはガスが充填され、一定の厚みを満たし、気体による弾性で衝突に対する緩衝作用を発揮するものとなる。
【0021】
そしてもし、事故に遭遇したら、誘導板14が対象者をすくい上げ、前袋11は身体を正面から受け止め、その緩衝作用で衝突による衝撃を和らげ、底袋12は正面からの落下を受け止めてその位置に保ち、側袋13,13 は側面に跳ね返された場合にこれを受け止めて底袋12へと維持する。
斯くして、衝突によって相当な衝撃があったとしても、各袋の空気弾性によって破壊力が和らげられ、少なくとも人命が失われないよう機能する。
又、事故者の身体は、各袋体で形成された緩衝装置に留められるので、身体の損傷を可及的に少なくすることができる。
【0022】
このとき、袋体表面に粘着剤が施されていると、付着力の高い衣服と袋体との間に粘性による結合が促され、例えば、空気弾性によって跳ね返される恐れがある場合に、瞬時的にその反発力に抗し、上記保護を一層厚くする。
【0023】
又、該袋体にエアーコンプレッサに連結した連通管を併設すると、一旦膨張したガスが経時的に萎んだ場合にも、袋体の膨張状態が維持される。
【0024】
【発明の効果】
以上の構成及び作用に基づく本発明は、スイッチ入力から瞬時に緩衝装置が作動し、どんなにとっさの飛ぶ込み事故であっても対応できる緊急性に優れたものであり、且つ、衝突による衝撃に対しガスを充満した前袋、底袋が事故対象者を捉えて確実に緩衝作用を発揮する。従って、従来まったく対策のなかった鉄道飛び込み事故に対し、極めて有効な解決手段となり、人命救助に資する優れた発明である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を装備した列車で緩衝装置が展開した状態の斜視図。
【図2】本発明を装備した列車で緩衝装置が展開する前の斜視図。
【図3】本発明緩衝装置部の側面図で、(A)が袋体の展開前、(B)が展開後を示す。
【図4】本発明のインフレータ部を示す斜視図。
【図5】本発明昇降機構部の正面図。
【図6】本発明昇降機構部の側面図で、(A)が降下前、(B)が降下後を示す。
【符号の説明】
10 緩衝装置
11 前袋
12 底袋
13 側袋
20 インフレータ
21 着火剤
22 ガス発生剤
30 昇降機構
31 収納ボックス
32 吊下ロープ
33、34 定滑車
35 シリンダ
Claims (2)
- 列車の進行方向先端位置に、前袋及び底袋を備え、該前袋及び底袋の表面に人体と袋とを粘性によって結合させる為の粘着剤を塗布すると共に各袋間の界面に各袋が折り畳まれた状態にあって相互の粘着を防ぐ剥離紙を挟んだ緩衝装置を収納し、
該前袋及び底袋に配した連結管を介してスイッチ機構の入力により膨張ガスを発生するインフレータを連結させると共に、
該インフレータの作動に関連づけて該緩衝装置を地面近くまで降下させる昇降機構を付設させたことを特徴とする人身事故防止装置。 - 事故の発生を感知した運転者が事故直前において人為的に押す入力スイッチ機構と、画像データをコンピュータの画像処理システムで認識しその認識に基づいて一定条件下でスイッチを自動的に入力させる自動入力機構とを備え、双方をOR回路で結び、インフレータを始動させる回路構成とした請求項1記載の人身事故防止装置。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP18214699A JP3586391B2 (ja) | 1999-06-28 | 1999-06-28 | 列車の人身事故防止装置 |
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JP18214699A JP3586391B2 (ja) | 1999-06-28 | 1999-06-28 | 列車の人身事故防止装置 |
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---|---|
JP2001010495A JP2001010495A (ja) | 2001-01-16 |
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