JP3584839B2 - データキャリア - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電波信号を受信することによってアンテナ用コイルに誘起される起電力から電源を得て動作する構成のデータキャリアに関する。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】
移動体の識別システムとして、例えば高周波の電波を利用したリモートIDシステムがある。これは、リーダライタとIDタグ(データキャリア)との間で電波による通信を行い、離れた位置にあるIDタグのデータを読み取ったり、IDタグにデータを書き込んだりするものである。
【0003】
このようなリモートIDシステムは、配送システム、在庫管理システム、販売システムなど種々のシステムに応用することが考えられている。その一例として、例えば回転すし店の集計システムがある。この集計システムの概要は、すしを載せる皿にIDタグを埋め込んでおき、そのIDタグにすしの種類、作った時刻、売値などのデータを記録する。そして、客が食事を終えたとき、食べたすしの皿を一か所に集めて集計用のリーダライタにより、それら皿のIDタグと通信し、そしてIDタグからデータを得て客の支払うべき金額を算出するというものである。
【0004】
このようなリモートIDシステムにおいて、IDタグとしては、主にバッテリを搭載しない電源外部依存型のものが用いられる。この電源外部依存型のIDタグに対しては、リーダライタから動作電力用の電波信号を送るようにしており、この電波信号を受信することによってIDタグは動作する。すなわち、IDタグのアンテナはコイルから構成されており、このアンテナ用コイルにリーダライタから発せられた電波信号である磁束が鎖交(受信)すると、当該アンテナ用コイルに起電力が誘起されるので、この誘導起電力により発生する交流を整流平滑化して動作用の直流電源を形成し、データの読み書き動作を行うように構成されている。
【0005】
ところで、回転すし店の集計システムでは、客の支払い額を集計する場合、積み重ねられた皿の上方にリーダライタを持っていって上方から電波信号を送るようにする。しかしながら、リーダライタから送信される電波信号はそれ程強くないため、積み重ねられた皿の枚数が多いと、下の方の皿まで電波信号が届かず、下の方の皿のIDタグが動作できなくなる場合がある。
【0006】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、その目的は、データキャリアを設けた物品が重ねられていた場合、電波信号の送信源から離れた位置にあっても、動作のために必要な電力を得ることができるデータキャリアを提供するところにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明によれば、物品を積み重ねた状態で、例えば上の方の物品のデータキャリアが電波信号を受信して動作に十分な電力を得たとすると、その電力は送電手段により下の方の物品のデータキャリアに送られるので、積み重ね数が適切であれば、電力不足により動作不能となるデータキャリアをなくすことができる。
この場合、送電手段は物品にその重ね方向の両側に配置された2組の一対の導体からなる、物品を積み重ねたとき、相隣り合う物品の一対の導体どうしがコンデンサを構成することによって電力を送受するので、導体どうしが非接触の状態で送電することができる。
【0008】
請求項2記載の発明によれば、コンデンサを構成する導体間に誘電率の高い物質が存在するので、導体を小形化でき、また効率良く電力を送ることができる。
請求項3記載の発明によれば、皿を積み重ねたとき、皿の内底面の表層部に設けた導体と、その上に置かれた別の皿の糸底の下端面の表層部に設けられた導体とがコンデンサを構成するので、回転すし店での集計システムに容易に適用できる。
請求項4記載の発明によれば、データキャリアがカードとして形成されているで、そのカードをデータを得たい所望の物体に取り付けておき、そして最終的にカードをその物体から取り外して多数重ねた状態にし、それらカードから一度にデータを得る、という使用法ができ、データ取得が容易となる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施例を回転すし店の集計システムに適用して図1〜図5を参照しながら説明する。
まず、回転すし店とは、次のようなシステムの店である。店内には、ループ状のコンベアが設けられ、このコンベアに沿って客席が設けられている。すしは皿に載せられ、コンベアによって客席へと運ばれる。客は、コンベアによって運ばれる来る皿のうちから、好みのすしがのせられている皿を取り、食べ終えた皿はテーブル上に重ね置いて行く。店側では、すしをその売値に応じた色或いは模様の皿に載せるので、客は、重ね置いた皿の種類と枚数とから店に支払うおおよその金額を知ることができるようになっている。食事を終えた後は、店員によって皿の枚数が色或いは模様別に数えられ、店に支払うべき金額が計算される。
【0010】
さて、図4に示すように、すしをのせる皿1(データ取得対象物)は、例えばメラミン樹脂などのプラスチック製のもので、その内部には、電波信号を送受信するためのアンテナ用コイル2とタグ本体3とからなるデータキャリアとしてのIDタグ4が埋め込まれている。タグ本体3は、図1に示すように、共振コンデンサ5と、制御用ICチップ6と、平滑部7とをプリント基板8に実装して構成されている。
【0011】
制御用ICチップ6は、制御手段としてのMPU(マイクロプロセッサユニット)9の他、整流部10、変復調部11、メモリ部12などを構成する半導体素子をワンチップ化したものである。また、平滑部7は、図示はしないが平滑コンデンサ、ツェナーダイオードを有している。
【0012】
共振コンデンサ5は、アンテナ用コイル2と並列に接続されて共振回路13を構成する。この共振回路13は、外部から所定の高周波の電力用電波信号が送信されて来ると、これをアンテナ用コイル2により受信し、その受信した電力用電波信号を整流部10に入力する。整流部10は平滑部7と共に動作用電源形成部としての電源回路を構成するもので、電力用電波信号を整流し且つ平滑して一定電圧の直流電源(動作用電源)にしてMPU9などに供給する。
【0013】
外部のリーダライタから送られるデータ信号は、電力用電波信号に重畳して送信されるようになっており、その信号は変復調部11により復調されてMPU9に与えられる。MPU9は、メモリ部12が有するROMに記憶された動作プログラムに従って動作するもので、変復調部11から入力される信号に応じた処理を実行し、受信したデータをメモリ部12が有するEEPROMROMなどの消去可能な不揮発性メモリに書き込んだり、メモリ部12からデータを読み出して変復調部11により変調し、アンテナ用コイル2から電波信号として送信したりする。
【0014】
この皿1のIDタグ4と通信するリーダライタとして、手持式の集計器14がある。この手持式集計器14は、客が食べた種類別皿数を検出して支払い金額を演算したりするためのもので、動作用電源として電池を内蔵している。この集計器14は、図3に示すように手持ち可能な操作部15の先端に頭部16を設けてなり、操作部15には各種のキー(図示せず)が設けられていると共に、頭部16にはLCDからなる表示部17(図5参照)が設けられている。
【0015】
手持式集計器14の内部には、図5に示すように、MPU18、ROM19、RAM20などが設けられている。MPU18は、操作部15側から信号を受けると、ROM19に記憶された動作プログラムに従って動作し、操作部15の操作内容、集計金額などは表示器17に表示されるようになっている。
【0016】
また、集計器14の頭部16には、皿1のIDタグ4との間で通信を行うための送信アンテナ21および受信アンテナ22を備えている。MPU18は、皿1側と通信する際、まずキャリア信号のみを変調部23で変調して送信部24から送信アンテナ21を介して電力用電波信号として送信する。その後、MPU18は、送信すべきデータをRAM20から読み出して変調部23により電力用電波信号に重畳するように変調し、送信部24から送信アンテナ21を介して送信する。
【0017】
一方、皿1側から発信された電波信号は、受信アンテナ22を介して受信部25により受信され、復調部26により復調されてデータとして弁別される。MPU18は、復調部26から送られてくるデータをRAM20に記憶させ、最終的にRAM20に記憶されたデータから例えば客が支払うべき金額を計算する。
【0018】
しかして、IDタグ4の内部の電気的構成を示す図1のように、動作用電源形成部としての整流部10への入力部である前記アンテナ用コイル2の両端(共振回路13の出力端)には、送電手段としての一対の第1の導体27a,27bおよび一対の第2の導体28a,28bが接続されている。これら2組の一対の導体27a,27b,28a,28bは、いずれもリング状の導体板から成り、各組の一方の導体27aおよび28aは同一径で、且つ同じく同一径に形成された各組の他方の導体27bおよび28bより大径に形成されている。
【0019】
上記2組の一対の導体27a,27bおよび28a,28bのうち、一対の第1の導体27a,27bは、皿1の糸底1aの下端部表層部(下端面近くの部分)内に埋め込まれ、第2の導体28a,28bは、皿1の内底面の中央部分の表層部(内底面近くの部分)内に埋め込まれている。そして、複数枚の皿1を上下に重ねたとき、図2に示すように、上の皿1の糸底1aの下端部の内側に埋め込まれた第1の導体27a,27bと、下の皿1の内底面部の内側に埋め込まれた第2の導体28a,28bとが、皿1を構成するプラスチック(誘電体)を介して対向し、コンデンサを構成するようになっている。
【0020】
次に上記構成の作用を説明する。
食事を済ませた客の支払い金額を集計するために、集計器14の操作部15を手に持って頭部16をテーブルに積み重ねられている皿1の上に位置させ、操作部15の集計用キーを操作する。すると、集計器14の頭部16に設けられている送信アンテナ21から電力用電波信号およびデータ信号が送信される。そして、皿1のIDタグ4側では、その電力用電波信号をアンテナ用コイル2により受ける。アンテナ用コイル2が電力用電波信号を受信すると、そのアンテナ用コイル2に誘導起電力が発生し、その起電力による交流電力が共振回路13側から整流部10および平滑部7に供給され、一定電圧の直流電力に変換されてMPU9などの動作用電源となる。
【0021】
このとき、集計器14から送信された電力用電波信号はそれ程強くなく、また、電力用電波信号を受信することによりアンテナ用コイル2に起電力が誘起されると、その起電力による誘導電流が上下に存する他の皿1のアンテナ用コイル2に誘起される起電力を弱めるように作用する場合がある。このため、或る程度の枚数の皿1が重ねられた状態では、下の方の皿1のIDタグ4では、動作可能な電力を集計器14から送信された電力用電波信号により直接得ることができなくなることがある。
【0022】
しかしながら、本実施例では、互いに重なる皿1の第1の導体27a,27bと第2の導体28a,28bとがコンデンサを構成するので、重ねた皿1の枚数が多過ぎない限り下の方の皿1のIDタグ4にも動作できる電力を供給することができる。すなわち、電力用電波信号を受けることによってアンテナ用コイル2に起電力が誘起されると、その起電力によりアンテナ用コイル2の両端間に電位差が生ずる。ここで、上の皿1の方が下の皿1よりも強い電力用電波信号を受けるので、アンテナ用コイル2の両端の電位差は、上の皿1の方が下の皿1よりも大きい。
【0023】
このため、コンデンサを構成する上の皿1の第1の導体27aと下の皿1の第2の導体28a(第1のコンデンサ)、同じく上の皿1の第1の導体27bと下の皿1の第2の導体28b(第2のコンデンサ)との間にデータ信号を含む交流電圧が印加されるようになる。これにより、上記のコンデンサが充放電を繰り返すようになり、上の皿1の共振回路13から第1および第2のコンデンサを介して下の皿1の共振回路13へと電流が流れる。このようにして、上の皿1の共振回路13に受けた電力が下の皿1の共振回路13へと供給され、下の皿1のIDタグ4は、この共振回路13に供給された電力を動作用電力として動作する。このようなことが多数積み重ねられている皿1群において、隣り合う皿1の全てに生ずるので、電力用電波信号が届かない下の方の皿1のIDタグ4にも動作用電力が供給されるようになるものである。
【0024】
このように本実施例によれば、電波信号を受信して動作に十分な電力を得たIDタグ4の電力は、データ信号と共に送電手段により他のIDタグ4に送電されるので、皿1の重ね枚数が適切であれば、電力不足により動作不能となるIDタグ4をなくすことができる。しかも、相隣り合う皿1の導体27a,28aおよび27b,28bによる静電結合によって電力を送受するので、非接触の状態で送電することができる。このため、プラグとソケットとを接続するなどの面倒な操作を行わずとも、単に皿1を重ねるだけで送電が可能となる。
【0025】
図6〜図9は本発明の他の実施例を示すもので、上述した一実施例と同一部分には同一符号を付して異なる部分のみを説明する。この実施例が上述の一実施例と異なるところは、IDタグ4をカード29に設けたところにある。このカード29の使用例としては、例えばコンビニエンスストアへ商品を納める場合、その商品を収容した包装箱にカード29を着脱可能に取り付け、納品時にカード29を回収して納品した商品の種類、数量、納品場所などをデータとして得る例が考えられる。
【0026】
上記カード29は、プラスチック製で、その内部にアンテナ用コイル2とタグ本体3とが埋め込まれている。そして、アンテナ用コイル2の両端に接続された送電手段としての一対の第1の導体30a,30bおよび第2の導体31a,31bが裏面側および表面側に埋め込まれている。この場合、第1の導体30a,30bおよび第2の導体31a,31bは、ほぼコの字形および逆コの字形の導体板として形成され、それぞれカード29の表裏両面の表層部の左右両側に位置して埋め込まれている。そして、第1の導体30a,30bおよび第2の導体31a,31bを埋め込んだ表層部には、例えばタンタルなどの誘電率の高い物質が混合されている。なお、カード29全体を高誘電率の物質により形成しても良い。
【0027】
この実施例では、商品をコンビニエンスストアに納入した際、包装箱からカード29を取り外す。そして、帰社後、カード29を重ねた状態にして前記一実施例における集計器13と同一構成のリーダライタ(図示せず)により、カード29のIDタグ4と通信し、商品の種類、数量、納品先などをデータとして得る。
【0028】
このように本実施例によれば、カード29であれば多数のカード29を積み重ねて一度に通信することができ、短時間でデータを送受できる。また、導体30a,30b,31a,31bを埋め込んだ部分の表層には、誘電率の高い物質が混入されているので、効率良く電力を伝達できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示すもので、IDタグの電気的構成を示すブロック図
【図2】皿を積み重ねた状態で示す要部の断面図
【図3】集計する際の状態を示す側面図
【図4】皿の斜視図
【図5】集計器の電気的構成を示すブロック図
【図6】本発明の他の実施例を示すカードの斜視図
【図7】カードへの導体の配置位置を示す平面図
【図8】カードの縦断面図
【図9】カードを積み重ねた状態で示す縦断側面図
【符号の説明】
図中、1は皿、2はアンテナ用コイル、4はIDタグ(データキャリア)、7は平滑部(電源形成部)、10は整流部(電源形成部)、14は集計器、27a,27bは第1の導体(送電手段)、28a,28bは第2の導体(送電手段)、29はカード、30a,30bは第1の導体(送電手段)、31a,31bは第2の導体(送電手段)である。
Claims (4)
- 重ね合わせ可能な物品に設けられ、アンテナ用コイルおよびこのアンテナ用コイルが電波信号を受信することにより誘起される起電力から動作電源を得る動作電源形成部を備えたデータキャリアにおいて、
前記物品を重ねた状態で、隣接する他の物品から前記動作電源形成部の入力部に電力を受け、他の物品の前記動作電源形成部の入力部に電力を供給するために、前記物品にその重ね方向の両側に配置された2組の一対の導体からなる送電手段を設け、
各組の一対の導体は、それぞれ前記動作用電源形成部の入力部に接続され、前記物品を重ねたとき、隣り合う2個の物品がそれぞれ有する前記2組の一対の導体のうち、1組の一対の導体どうしが互いに対向してコンデンサを構成することを特徴とするデータキャリア。 - 前記各組の一対の導体は、前記物品の表層部に埋め込まれ、その表層部は誘電率の高い物質で形成されていることを特徴とする請求項1記載のデータキャリア。
- 前記物品は、糸底を有する皿で、前記各組の一対の導体は、それぞれ前記皿の内底面の表層部および前記糸底の下端面の表層部に埋め込まれていることを特徴とする請求項1または2記載のデータキャリア。
- 前記物品は、カード状に形成され、前記各組の一対の導体は、前記カード状物品の表裏両面の表層部に埋め込まれていることを特徴とする請求項1または2記載のデータキャリア。
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