JP3579968B2 - 車両用ブレーキ制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両の車輪のホイルブレーキに液圧を与える車両用ブレーキ制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
車両の運転者の緊急時のブレーキ操作を検出して、ブレーキ操作力に対するブレーキ力を増大させることを目的とした車両用の液圧ブレーキ装置には、特開平3−227766号に記載されたものが従来技術として公知である。この従来技術では、車両の運転者による緊急ブレーキ操作が検出された時、バキュームブースタの変圧室に連結した電磁弁を開状態としてブレーキ操作部材の操作量に関わらず前記変圧室に大量の大気を導入してブレーキ出力を増大している。これによって、緊急ブレーキ時には通常ブレーキ時に比べ、その制動距離を著しく短縮している。
【0003】
この従来技術においては、特にバキュームブースタに変圧室に連結した電磁弁が必要となり、バキュームブースタを大幅に構造変更する必要があるため、コスト上大きな課題を含んだものであった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題とするところは、従来のブレーキシステムの構造変更を最小限に止めながら、緊急ブレーキ時のブレーキ力を増大させることができる車両用ブレーキ制御装置を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明の請求項1においては、少なくともブレーキ操作部材の操作量に応じた第1の圧力特性と前記第1の圧力特性より少ない操作量で高い圧力を発生する第2の圧力特性を持つブレーキ圧発生手段と、前記第1の圧力特性および前記第2の圧力特性に基づく圧力を選択的に車輪に取り付けられたホイルシリンダに導入するブレーキ圧切換手段と、前記ブレーキ操作部材の緊急の操作を検出する緊急ブレーキ操作検出手段とを備え、前記ブレーキ圧切換手段は前記緊急ブレーキ操作検出手段が緊急のブレーキ操作を検出した時に前記第2の圧力特性に基づく圧力を前期ホイルシリンダに導入する車両用ブレーキ制御装置であって、前記ブレーキ圧発生手段は前記ブレーキ操作部材の操作に無関係に圧力を発生する圧力源からの圧力が導入されるシリンダボデーと、前記シリンダボデー内に設置され前記ブレーキ操作部材の操作に応じて軸方向に移動するピストンと、前記シリンダボデー内に設置されたレギュレータ圧室と、前記シリンダボデー内に設置され一側に前記ピストンと共に形成した圧力室の圧力を受け、他側に前記レギュレータ圧室の圧力を受けて軸方向に移動することによって前記圧力源からの圧力を調圧する弁部材と、前記シリンダボデーに設置され前記圧力源からの圧力を調圧した圧力が導入されると共に前記レギュレータ圧室と連通したレギュレータポートを備え、前期ブレーキ圧切換手段は前記ホイルシリンダを前記圧力室に連通すると共に前記ホイルシリンダと前記レギュレータ圧室との連通を遮断する第1位置と、前記ホイルシリンダを前記レギュレータ圧室に連通すると共に前記ホイルシリンダと前記圧力室との連通を遮断する第2位置とを選択する切換弁であることを特徴とする車両用ブレーキ制御装置とした。
【0007】
上記した本発明の請求項1に記載された手段による車両用ブレーキ制御装置によれば、車両の運転者により緊急ブレーキが操作された時、緊急ブレーキ操作検出手段が緊急のブレーキ操作を検出し、ブレーキ切換手段が第2の圧力特性に基づく圧力を前記ホイルシリンダに導入させることによって制動力が増大される。そして、前記緊急ブレーキ操作検出手段が緊急のブレーキ操作を検出した時、切換弁がレギュレータポートをホイルシリンダに連通し、ホイルシリンダに圧力源からの圧力を調圧したレギュレータ圧を導入させるため、制動力が増大される。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を表す図面を参照しながら説明する。
【0010】
図1は本発明の車両用ブレーキ制御装置を表すシステム図である。図1において、1は本発明による車両用ブレーキ制御装置を構成する油圧ブースタを表す。
【0011】
該油圧ブースタ1のシリンダボデー2内には第1ピストン3が摺動可能に設置され、前記第1ピストン3は、プッシュロッド4を介してブレーキペダル5と連結している。前記ブレーキペダル5には前記ブレーキペダル5のストロークを検出するストロークセンサ65が取り付けてある。前記第1ピストン3はリタンスプリング6からの付勢力を受けスリーブ7に当接し、更に、スナップリング7aにて位置決めされている。又、前記スリーブ7の前部にはストッパー7bが設置され、前記スリーブ7が前方に移動することを防いでいる。前記第1ピストン3の連通孔3a内には、インレットバルブ8が嵌挿され、前記インレットバルブ8はバルブスプリング8aによって付勢され、前記第1ピストン3の非作動時には、前記シリンダボデー1に固定され、前記第1ピストン3に設けられた貫通孔3bに挿通されたピン9に当接しており、この状態では前記インレットバルブ8のバルブ部8bと前記ピストン3のバルブ面3cとは当接しておらず、インレットバルブ8は開弁している。前記第1ピストン3は、その前端においてシールカップ3dが装着され、更に、その後端においてシールカップ3eが装着されている。
【0012】
又、前記スリーブ7には、各々内径シール7c、および外径シール7dが装着されている。これらのシール部材によって、前記第1ピストン3の前方には圧力室10が、又、後方には前記スリーブ7との間で、補助圧力室11が形成されている。又、12は液圧ブレーキ装置1を外部と遮断しているブーツであり、13は前記ブーツ12を支持して、前記プッシュロッド4の径方向への移動を規制するリテーナである。更に、14は前記リタンスプリング6を前記第1ピストン3に係合させ、且つ、前記シールカップ3dが前記第1ピストン3から脱落しないように規制しているカップリテーナである。
【0013】
スリーブ部材15は、その右端において前記リタンスプリング6からの付勢力を受けて、シリンダボデー2の底部に当接している。前記スリーブ部材15にはシール部材15aが装着され、前記第1ピストン3との間で前記した圧力室10を形成している。前記スリーブ部材15には第2ピストン16が摺動可能に嵌挿され、スナップリング16aに係止したピストンスプリング15bによって前記スリーブ部材15に対して右方に付勢されており、ストッパー15cに当接することで位置決めされている。前記第2ピストン16は、カップシール16bを備えることによって前記圧力室10を形成すると共に、前記圧力室10に発生する圧力を受けて図において左方に摺動可能となっている。前記第2ピストン16には、ピン17によってスプールバルブ18と連結しており、前記スプールバルブ18は前記第2ピストン16と一体的に移動可能となっている。
【0014】
更に、前記スプールバルブ18の左端にはスプリング19を介してピストン戻し部材20が設置され、前記ピストン戻し部材20には、規制手段を構成する台形状の係合部材21が装着されている。前記係合部材21は、前記スプリング19の付勢力によって例えばゴムによって形成された、やはり規制手段を構成する弾性部材22と当接している。23は前記スリーブ部材15の移動防止部材であり、前記スリーブ部材15に固定されている。更に、前記移動防止部材23には、シール部材23aと連通孔23b,23cが備えられている。ここで、前記弾性部材22は前記移動防止部材23との間で、レギュレータ圧室24を形成している。
【0015】
前記スリーブ部材15は、前記したシール部材15a以外に、図において右方からシール部材15d,15e,15fを備えている。前記シール部材15dと15eの間には、車両の後左輪に設置されたホイルブレーキ33および後右輪に設置されたホイルブレーキ34へとつながる主管路31と連結するアウトレットポート15gが、又、前記シール部材15eと15fの間には、アキュムレータ26に蓄圧されたブレーキ液が導入されるインレットポート15hが形成されている。前記アキュムレータ26へは、リザーバタンク27に貯蔵されたブレーキ液がポンプ28によって加圧され蓄えられる。前記スリーブ部材15に設けられたアウトレットポート15g、インレットポート15hは、各々前記シリンダボデー2に設置されたポート2a,2bに連結している。又、前記シリンダボデー2には、更にポート2cが設置され、前左輪に設置されたホイルブレーキ35および前右輪に設置されたホイルブレーキ36へとつながる主管路32に連結される。又、前記シリンダボデー2には2つのインレットポート2d,2eが設置され、双方共前記リザーバタンク27へと連通している。
【0016】
前記スプールバルブ18にはその外周部に、第1スリット18aと第2スリット18bとが形成され、又、前記スリーブ部材15にもスリット15iが形成されている。又、前記シリンダボデー2に設置されたポート2a(レギュレータポート)は前記レギュレータ圧室24へ連通するポート2fとレギュレータ管路37によって連結されており、更に、前記補助圧力室11へと連通している連通孔2gとフィードバック管路38によって連結している。
【0017】
次に、前記油圧ブースタ1と前記各ホイルブレーキ33,34,35および36との間に設置された圧力制御装置39について説明する。前記前輪用ホイルブレーキ35,36は各々増圧管路40,41によって前記主管路32と連結しており、前記増圧管路40,41上には、制御回路100によって作動される常開型の電磁弁である増圧弁42,43が備えられている。又、大気圧リザーバ44,45は各々前記増圧管路40,41上の前記増圧弁42,43と前記ホイルブレーキ35,36との間と、リリーフ管路46,47を介して連通されており、該リリーフ管路46,47上にはやはり前記制御回路100によって作動される各々常閉型の電磁弁である減圧弁48,49が介装されている。
【0018】
前記主管路32上の前記増圧弁42,43と前記ポート2cとの間には、やはり前記制御回路100によって作動される3ポート型の電磁弁である切換弁50が設置されている。該切換弁50は非作動状態において前記油圧ブースタ1の圧力室10へ連通する前記ポート2cと前記増圧弁42,43とを連通し、前記増圧弁42,43と前記レギュレータポート2aとの間を遮断し、その作動状態において、前記ポート2cと前記増圧弁42,43との間を遮断し、前記増圧弁42,43と前記レギュレータポート2aとを連通している。
【0019】
前記増圧管路40,41上の前記増圧弁42,43と前記前輪用ホイルブレーキ35,36との間と、前記切換弁50と前記増圧弁42,43との間を連結するように各々戻し管路51,52が設置され、該戻し管路51,52上には各々チェック弁53,54が備えられ、前記ホイルブレーキ35,36から前記油圧ブースタ1方向への作動油の流れは許容するが、前記油圧ブースタ1から前記ホイルブレーキ35,36方向への作動油の流れは遮断している。
【0020】
一方、前記後輪用主管路31上には、やはり前記制御回路100によって作動される常開型の電磁弁である増圧弁55が備えられている。又、大気圧リザーバ56は前記主管路31上の前記増圧弁55と前記ホイルブレーキ33,34との間と、リリーフ管路57を介して連通されており、該リリーフ管路57上にはやはり前記制御回路100によって作動される常閉型の電磁弁である減圧弁58が介装されている。
【0021】
前記主管路31上の前記増圧弁55と前記後輪用ホイルブレーキ33,34との間と、前記油圧ブースタ1の前記レギュレータポート2aと前記増圧弁55との間を連結するように戻し管路59が設置され、該戻し管路59上にはチェック弁60が備えられ、前記ホイルブレーキ33,34から前記油圧ブースタ1方向への作動油の流れは許容するが、前記油圧ブースタ1から前記ホイルブレーキ33,34方向への作動油の流れは遮断している。
【0022】
次に、本発明による液圧ブレーキ装置を車両に適用した場合の作動について説明する。運転者が通常時ブレーキペダル5を作動させるとプッシュロッド4を介して第1ピストン3が、図1において左方にストロークするため、インレットバルブ8がピン9から離れ、バルブスプリング8aに付勢されバルブ部8bと、第1ピストン3のバルブ面3cとが当接することによって圧力室10をリザーバタンク27から遮断する。その後、第1ピストン3のストロークが更に増えるに従って、前記圧力室10の容積が減少し、前記圧力室10に圧力PM が発生する。
【0023】
この時、第2ピストン16は、前記圧力室10に発生した圧力PM を受けるため、図1において、前記第2ピストン16の断面積をSA とするとPM ×SA の力が、図1において左方に働き、第2ピストン16は左方に移動する。前記スプールバルブ18は、ピン17にて前記第2ピストン16に係合しているため、前記第2ピストン16と共に左方に移動し、スプリング19を圧縮してピストン戻し部材20と当接する。前記スプールバルブ18の移動によって、前記スプールバルブ18に設けられた第1スリット18aが、前記スリーブ部材15に設置されたインレットポート15hと連通し、前記インレットポート15hと前記スリーブ部材15に設置されたスリット15iとを連通させる。又、前記スプールバルブ18に設置された第2スリット18bは前記スリット15iと連通して、前記スリット15iとアウトレットポート15gとを連通させるため、結局、前記スプールバルブ18の図1の左方への移動によって、前記スリーブ部材15に設置されたインレットポート15hはアウトレットポート15gと連通する。従って、前記シリンダボデー2に備えられたインレットポート2bは、インレットポート15h→第1スリット18a→スリット15i→第2スリット18b→アウトレットポート15gを経由して、同じく前記シリンダボデー2に設置されたレギュレータポート2aと連通するため、前記アキュムレータ26に蓄えられていた圧力は、前記レギュレータポート2aから、前記ブレーキ圧切換弁62および前記ポート2fを介してレギュレータ圧室24へ導入される。ここで、前記レギュレータ圧室24へ導入された圧力は、弾性部材22を図1において右方に付勢して、係合部材21、前記ピストン戻し部材20を介して、前記スプールバルブ18を図1において右方に押し返し、前記スプールバルブ18の両端に働く力がつりあったところで平衡に達して、レギュレータ圧が決定される。この時、前記弾性部材22が前記係合部材21と当接している部位の面積を、SV とすると、前記圧力室10に発生した圧力PM と、前記アキュムレータ26から前記スプールバルブ18を経てレギュレータ圧となって前記レギュレータ圧室24に導入される圧力PR との間には、リタンスプリングの荷重等による損失を無視すればPM ×SA =PR ×SV という関係があるため、前記レギュレータ圧室24に導入される圧力:レギュレータ圧は
PR =PM ×SA /SV
となり、前記圧力室10に発生する圧力PM に対して、前記第2ピストン16の断面積SA の、前記弾性部材22が前記係合部材21に当接している部位の面積に対する比を乗じたものとなる。ここで、前記レギュレータ圧室24の圧力が比較的低圧である場合は、前記弾性部材22が前記係合部材21に向けて付勢される力がさほど大きくないため、前記した弾性部材22が前記係合部材21と当接している部位の面積SV も小さく、前記レギュレータ圧室24の圧力が上昇するにつれて面積SV も増大し、最大時として図1におけるSB まで増大する。従って、前記圧力室10に発生する圧力PM とレギュレータ圧PR との特性は、図2におけるXに示すようなゆるやかな曲線を描く。この曲線で描かれる特性は、前記弾性部材22の硬度、或いは前記係合部材21の前記弾性部材22と当接する部位の形状を変更することによって、従来技術の圧力室の圧力の増加に対して、レギュレータ圧が直線的に増加するものと比べて、その特性を任意に設定できる。
【0024】
その後、前記圧力室10に発生する圧力PM の上昇に伴って、レギュレータ圧PR が上昇し、最終的に図2のY部に示す如く、
PR =PM ×SA /SB
となり、SA ,SB は不変の値であるため、これ以降はレギュレータ圧PR は圧力室10の圧力PM の上昇に伴って、直線的に上昇する。つまり、前記圧力室10に発生する圧力PM に対する、レギュレータ圧PR の設定(図2において、Y部の直線の傾きで表される)は、前記第2ピストン16の断面積SA と規制手段の一部である前記係合部材21の断面積SB を変えることによって自由に設定でき、ブレーキの効きを任意に設定できる。
【0025】
前記スプールバルブ18によってアキュムレータ圧が調圧されて前記レギュレータポート2aに出力されたレギュレータ圧PR は、前記連通孔2gを経由して補助圧力室11に伝達され、前記第1ピストン3に働く入力の助勢力として供されるのと同時に、増圧弁55を介して後輪に設置されたホイルブレーキ33,34に供給される。尚、前記圧力室10に発生した圧力PM は、切換弁50および各増圧弁42,43を介して前輪に設置されたフロントホイルブレーキ35,36に供給される。この時のブレーキペダル5の操作ストロークとフロントホイルブレーキ35,36のブレーキ圧力との関係は図3に示したように、フロントホイルブレーキ35,36のブレーキ圧力の上昇のしかたが比較的なだらかなものとなる。
【0026】
車両が低摩擦係数の路面、例えば雪道或いは凍結路を走行中に運転者がブレーキペダルを操作して車輪にブレーキ力を発生させた時に、車輪に取付けられた図示しない車輪速度センサによって検出された車輪速度に基づいて、前記制御回路100が前輪の固着(ロック)を検知すると、前記切換弁50が励磁されて前記油圧ブースタ1の前記圧力室10に連通するポート2cと前記増圧弁42,43との連通を遮断し、前記油圧ブースタ1の前記レギュレータポート2aと前記増圧弁42,43とを連通することによって、前輪用ホイルブレーキ35,36に前記圧力室10内の圧力PM に代わり、前記スプールバルブ18によって調圧されたレギュレータ圧PR が導入される。それとともに、例えば前左輪のロックが検知された場合は、増圧弁42を作動させて閉状態として前左輪に取付けられたホイルブレーキ35を油圧ブースタ1から遮断すると共に、減圧弁48を作動させて開状態としてホイルブレーキ35をリリーフ管路46を介して大気圧リザーバ44に連通し、ホイルブレーキ35中の作動液を大気圧リザーバ44に放出することによってホイルブレーキ35中の圧力を減少させる(アンチロック制御)。
【0027】
ホイルブレーキ35中の圧力を減少させることによって車輪のロックが解除されたことが前記制御回路100によって検知されると、前記増圧弁42および前記減圧弁48が再び非作動状態に復帰されて、油圧ブースタ1からレギュレータ圧PR が切換弁50および増圧弁42を介してホイルブレーキ35に導入される。
【0028】
前右輪のロックが制御回路100によって検出された時は、上記と同様に制御回路100によって増圧弁43および減圧弁49が作動されて、ホイルブレーキ36中の圧力が調整される。又、後輪のロックが制御回路100によって検出された時も同様に制御回路100によって増圧弁55および減圧弁58が作動されて、ホイルブレーキ33,34中の圧力が調整される。
【0029】
前記前輪用戻し管路51,52および後輪用戻し管路59に各々設置されたチェック弁53,54および60は、アンチロック制御中に車両の運転者によってブレーキペダル5が戻された時に開弁することによって、ホイルブレーキ33,34,35および36から作動液が油圧ブースタ1に速やかに戻されるのに使用される。
【0030】
又、車両の運転者が突然の障害物の発見等によって車両を急停車させるべくブレーキペダル5を急作動させた時、前記ブレーキペダル5と連結した前記ストロークセンサ65が検出した前記ブレーキペダル5のストロークに基づいて前記制御回路100が緊急ブレーキ操作と判断する。緊急ブレーキ操作があったと判断した前記制御回路100は前記切換弁50を第2位置に切り換える。これによって、前記レギュレータポート2aが前記切換弁50を介して前記増圧弁42,43に連通されると共に、前記油圧ブースタ1の前記圧力室10に連通するポート2cと前記増圧弁42,43との連通が遮断される。
【0031】
従って、前記前輪に取り付けられたホイルブレーキ35,36には前記圧力室10内の圧力PM に代わり、前記スプールバルブ18によって調圧されたレギュレータ圧PR が導入される。この時のブレーキペダル5の操作ストロークとフロントホイルブレーキ35,36のブレーキ圧力との関係は図4に示すように、フロントホイルブレーキ35,36のブレーキ圧力の上昇のしかたが急となっている。更に、図5には通常ブレーキの途中において緊急ブレーキ操作が行われた時のブレーキペダル5の操作ストロークとフロントホイルブレーキ35,36のブレーキ圧力との関係を示す。
【0032】
その後、車両を停止させる必要が無くなり運転者が前記ブレーキペダル5を戻すことによって、前記ストロークセンサ65、或いは前記ブレーキペダル5に設置された図示しないブレーキスイッチによってブレーキの戻し操作が検出されると、前記制御回路100が前記切換弁50を再び第1位置に切り換える。これによって、前記増圧弁42,43が前記切換弁50を介して前記油圧ブースタ1の前記圧力室10に連通されると共に、前記レギュレータポート2aとの連通が遮断される。
【0033】
上記実施の形態の油圧ブースタ1においては、前記圧力室10中の圧力PM と前記レギュレータ圧力PR との関係が非線型となるように、スプールバルブ18と弾性部材22との間に台形状の係合部材21を備えているが、本発明は上記油圧ブースタ1を使用することに限定されるものではなく、前記圧力室10中の圧力PM と前記レギュレータ圧力PR との関係が線型となるような油圧ブースタを使用しても実施できることは言うまでもない。
【0034】
又、上記実施の形態においては緊急ブレーキ操作検出手段として、ブレーキペダルに設置されたストロークセンサが使用されているが、緊急ブレーキ操作検出手段としてはこれに限定されるものではなく、例えば、油圧ブースタの圧力室の圧力を検出する圧力センサによる手段、或いは、ブレーキペダルへのブレーキ操作力を検出するペダル踏力センサによる手段、或いは、車輪速度センサからの検出値に基づいて演算される車体速度の微分値を用いる手段によっても良い。
【0035】
【発明の効果】
上記したように、本発明の車両用ブレーキ制御装置によれば、従来からあるブレーキ制御装置に切換弁を追加するだけで緊急ブレーキ時のブレーキ操作量に対するブレーキ力を増大させることができ、低コストであるだけでなく、簡素な構成であるため信頼性の高い車両用ブレーキ制御装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による車両用ブレーキ制御装置のシステム図
【図2】本発明による車両用ブレーキ制御装置の圧力室の圧力とレギュレータ圧力との関係を表す特性図
【図3】本発明による車両用ブレーキ制御装置の通常ブレーキ時のブレーキペダルの操作ストロークとフロントブレーキ圧力との関係を表す特性図
【図4】本発明による車両用ブレーキ制御装置の緊急ブレーキ時のブレーキペダルの操作ストロークとフロントブレーキ圧力との関係を表す特性図
【図5】本発明による車両用ブレーキ制御装置の通常ブレーキの途中から緊急ブレーキに移行した時のブレーキペダルの操作ストロークとフロントブレーキ圧力との関係を表す特性図
【符号の説明】
1 油圧ブースタ 2 シリンダボデー 2a レギュータポート
3 第1ピストン 5 ブレーキペダル 10 圧力室
18 スプールバルブ 24 レギュレータ圧室 26 アキュムレータ
35,36 ホイルブレーキ 50 切換弁 65 ストロークセンサ
Claims (1)
- 少なくともブレーキ操作部材の操作量に応じた第1の圧力特性と前記第1の圧力特性より少ない操作量で高い圧力を発生する第2の圧力特性を持つブレーキ圧発生手段と、前記第1の圧力特性および前記第2の圧力特性に基づく圧力を選択的に車輪に取り付けられたホイルシリンダに導入するブレーキ圧切換手段と、前記ブレーキ操作部材の緊急の操作を検出する緊急ブレーキ操作検出手段とを備え、前記ブレーキ圧切換手段は前記緊急ブレーキ操作検出手段が緊急のブレーキ操作を検出した時に前記第2の圧力特性に基づく圧力を前期ホイルシリンダに導入する車両用ブレーキ制御装置であって、前記ブレーキ圧発生手段は前記ブレーキ操作部材の操作に無関係に圧力を発生する圧力源からの圧力が導入されるシリンダボデーと、前記シリンダボデー内に設置され前記ブレーキ操作部材の操作に応じて軸方向に移動するピストンと、前記シリンダボデー内に設置されたレギュレータ圧室と、前記シリンダボデー内に設置され一側に前記ピストンと共に形成した圧力室の圧力を受け、他側に前記レギュレータ圧室の圧力を受けて軸方向に移動することによって前記圧力源からの圧力を調圧する弁部材と、前記シリンダボデーに設置され前記圧力源からの圧力を調圧した圧力が導入されると共に前記レギュレータ圧室と連通したレギュレータポートを備え、前期ブレーキ圧切換手段は前記ホイルシリンダを前記圧力室に連通すると共に前記ホイルシリンダと前記レギュレータ圧室との連通を遮断する第1位置と、前記ホイルシリンダを前記レギュレータ圧室に連通すると共に前記ホイルシリンダと前記圧力室との連通を遮断する第2位置とを選択する切換弁であることを特徴とする車両用ブレーキ制御装置。
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