JP3578434B2 - 動圧気体軸受装置および光偏向走査装置 - Google Patents
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Description
【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、レーザビームプリンタやレーザファクシミリ等の画像形成装置の光偏向走査装置の回転駆動部等に用いられる動圧気体軸受装置および光偏向走査装置に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
レーザビームプリンタやレーザファクシミリ等の画像形成装置に用いられる光偏向走査装置は、光源ユニットの半導体レーザから発生されたレーザ光を所定の方向に偏向走査する回転多面鏡を有する。近年では、画像形成装置の高速化に伴って回転多面鏡を高速度で回転させることが要求され、回転多面鏡の回転駆動部に、動圧気体軸受装置を用いたものが開発されている。動圧気体軸受は、安定した回転性能を得ることができるうえに高速回転に適しているため、数多くの分野で注目されている。
【０００３】
図４は、このような動圧気体軸受装置の一従来例Ｅ０ を示すもので、これは、円筒状の外周面に複数の軸方向の動圧発生溝６１ａを有する軸部材６１と、該軸部材６１を回転自在に嵌合させるスリーブ部材６２を有する。軸部材６１の動圧発生溝６１ａは、一般的な動圧気体空気軸受のヘリングボーン溝と同様の働きをするもので、軸部材６１とスリーブ部材６２を相対的に回転させると、動圧発生溝６１ａに沿って流動する空気によって動圧が発生し、これによって、軸部材６１とスリーブ部材６２の間が互に非接触に保たれる。
【０００４】
図５に示すように、軸部材６１の各動圧発生溝６１ａは、公知のフライス加工等の一般的な機械加工によって形成され、軸部材６１の周方向に等間隔で配設される。
【０００５】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上記従来の技術によれば、軸部材の材質が高強度窒化ケイ素等のセラミック材料である場合には、動圧発生溝をフライス加工等の通常の機械加工で形成することは困難であり、このために加工コストが高くなる。また、研削加工を行う場合、研削方向を軸方向と直交する方向にすると研削していない軸の周面と研削した面との境界線が軸方向に一直線にならず、この部分とスリーブ部材内面でかじりが生じ安定した回転が行えないという問題が生ずる。
【０００６】
本発明は、上記従来の技術の有する未解決の課題に鑑みてなされたものであり、高速回転に適しており、安定した回転性能を得ることができ、始動時や減速停止時あるいは低速回転中に、軸受が局部的に磨耗して多量の粉塵を発生したり、かじり等のトラブル発生を防止できるうえに加工コストの低い動圧気体軸受装置および光偏向走査装置を提供することを目的とするものである。
【０００７】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の動圧気体軸受装置は、互に嵌合して相対的に回転自在であるセラミック製の軸部材とスリーブ部材を有し、前記軸部材の外周面に、該軸部材の軸方向に挽き目を合わせた研削加工によって形成された複数のそれぞれ前記軸方向にのびる浅溝が設けられており、これらの浅溝は少なくとも１個の単一平面からなる帯状の平坦部分によって構成されていることを特徴とする。
本発明の光偏向走査装置は、動圧気体軸受装置によって回転支持された回転多面鏡と、該回転多面鏡を回転させる駆動手段を有し、前記動圧気体軸受装置が、互に嵌合して相対的に回転自在であるセラミック製の軸部材とスリーブ部材を有し、前記軸部材の外周面に、該軸部材の軸方向に挽き目を合わせた研削加工によって形成された複数のそれぞれ前記軸方向にのびる浅溝が設けられており、これらの浅溝は少なくとも１個の単一平面からなる帯状の平坦部分によって構成されていることを特徴とする。
【０００８】
【作用】
各浅溝が軸部材の軸方向に挽き目を合わせた研削加工によって形成されたものであるため、各浅溝の両側縁の稜線は直線状である。
【０００９】
光偏向走査装置の回転多面鏡のモータ等の始動時や減速停止時あるいは低速回転中に、動圧気体軸受装置の動圧が不充分となりこのためにスリーブ部材が軸部材に接触しても、各浅溝の両側縁が凹凸形状の稜線である場合のようにスリーブ部材と軸部材の間が点接触になって摩耗粉を発生したり、軸受のかじり等のトラブルを起すおそれがない。
【００１０】
加えて、各浅溝は、研削砥石等を軸部材の軸方向に相対的に移動させるだけで簡単に溝加工できるため、加工コストが極めて低く、光偏向走査装置の低価格化に大きく貢献できる。
【００１１】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【００１２】
図１は一実施例による動圧気体軸受装置Ｅ１ を用いた光偏向走査装置の回転駆動部を示す模式断面図であって、これは、外周面に反射面１ａを備えた回転部材である回転多面鏡１を有し、その駆動部は、円柱状の軸部材である固定軸２にスリーブ部材である回転スリーブ３を嵌合し、これと一体的に設けられたフランジ部材４にロータマグネット５を固着し、回転多面鏡１を押えバネ６によってフランジ部材４に押圧するとともに、固定軸２を固定した固定部材であるモータハウジング７にモータ基板７ａを支持させ、これに、ステータコイル８を立設したもので、ステータコイル８はロータマグネット５とともに駆動手段であるモータを構成し、ステータコイル８を励磁することで、ロータマグネット５と回転多面鏡１を一体的に回転させる。
【００１３】
回転スリーブ３はその回転によって固定軸２との間に空気膜を形成し、固定軸２に非接触で回転する動圧気体軸受を構成する。回転スリーブ３の下端には第１の永久磁石９ａが固着され、第１の永久磁石９ａの下面が、モータハウジング７に固定された第２の永久磁石９ｂの上面に対向している。
【００１４】
回転スリーブ３の上端開口はふた部材１０によって閉塞され、固定軸２の上端とふた部材１０の間に空気だまり１０ａが形成される。回転スリーブ３の固定軸２に対する軸方向の位置が変化すると、空気だまり１０ａ内の空気が加圧または減圧されて回転スリーブ３を元の位置に戻そうとする力が働き、第１、第２の永久磁石９ａ，９ｂによる磁気反撥力とともに、回転多面鏡１の軸方向の位置を安定させる役目をする。
【００１５】
なお、固定軸２と回転スリーブ３は両者の摩耗やゴミ等の侵入によるかじり等を低減するために高強度窒化ケイ素（Ｓｉ３ Ｎ４ ）等のセラミック材料で作られており、フランジ部材４はアルミニウムや黄銅等の金属製で焼きばめによって回転スリーブ３に固着される。ロータマグネット５の端面は、フランジ部材４のフランジ部の下面に当接され、フランジ部材４の筒状部分の外周面とロータマグネット５の内周面の間に介在する接着剤によってフランジ部材４に接着されている。
【００１６】
また、ふた部材１０は、アルミニウム、ステンレス等の金属や樹脂によって作られており、接着等の公知の方法で回転スリーブ３の上端に固着される。
【００１７】
モータハウジング７は、後述する結像レンズ系５２（図３参照）等とともに、光学箱５５の底壁に固着される。
【００１８】
固定軸２の外周面（円筒面）には、回転スリーブ３との間に動圧を発生させるための軸方向の浅溝２１が設けられる。浅溝２１は固定軸２の表面に周方向に等間隔で３カ所に配設され、浅溝２１の溝加工は、後述するように、溝加工用の研削砥石を回転させながら固定軸２に沿ってその軸方向に移動させる研削加工によって行なわれる。従って、浅溝２１の挽き目２１ａは軸方向に形成され、浅溝２１の両側縁に形成される稜線２２は挽き目２１ａに沿って凹凸のない直線状となる。
【００１９】
比較のために、挽き目を周方向に合わせて研削加工した場合の固定軸１０２を図２に示す。浅溝１２１の挽き目１２１ａがこのように周方向であれば、浅溝１２１の両側端に形成される稜線１２２がノコギリ刃状の凹凸形状となる。
【００２０】
図示しない回転スリーブに取付けられた回転多面鏡の始動時あるいは減速停止時または低速回転中等には、回転スリーブと固定軸１０２の間の空気膜に充分な動圧が発生しておらず、従って、回転スリーブが固定軸１０２に局部的に接触しながら回転する状態となるが、このように回転スリーブと固定軸１０２が接触しながら回転すると、固定軸１０２の浅溝１２１の稜線１２２の凸部１２２ａに回転スリーブが接触したときにいわゆる点接触となり、接触圧力が局部的に著しく増大してこの部分を摩耗させる。その結果、多量の摩耗粉が発生して偏向走査装置の内部を汚染したり、軸受のかじり等によって回転不良を誘発するおそれがある。
【００２１】
これに対して、本実施例においては、各浅溝２１の挽き目が軸方向であるために各浅溝２１の稜線２２が凹凸のない直線状に形成される。回転多面鏡１のモータの始動時や減速停止時あるいは低速回転中等に回転スリーブ３と固定軸２の間の空気膜に充分な動圧が発生しておらず、従って、回転スリーブ３が固定軸２に局部的に接触しながら回転する状態となっても、各浅溝２１の稜線２２は軸方向に凹凸のない直線状であるため、前述のように局部的に接触圧力が増大して摩耗粉を発生したり軸受のかじり等を誘発するおそれはない。
【００２２】
すなわち、浅溝２１の稜線２２が軸方向にのびる直線状であって図２に示す比較例のように凹凸形状でないため、固定軸２が回転スリーブ３に接触した場合には浅溝２１の稜線２２全体が均一に回転スリーブ３に接触するいわゆる線接触となり、凹凸形状の稜線のように点接触によって接触圧力が局部的に増大するおそれはない。
【００２３】
高強度窒化ケイ素等のセラミック材料で作られた固定軸２に浅溝２１を研削加工する工程は、例えば、以下のように行なわれる。ダイヤモンド砥粒をレジノイドボンドで固定した研削砥石を回転させながら固定軸の外周面に所定の深さだけ切り込んだ状態で、固定軸と研削砥石を軸方向に相対的に移動させる。これによって、固定軸の外周面の一部分を帯状に切除して浅溝を形成する。このように研削砥石を回転させながら固定軸に切り込んで両者を軸方向に相対的に移動させるだけで浅溝を形成するものであるため、溝加工が簡単で加工コストが低くてすむ。その結果、光偏向走査装置やこれを搭載する画像形成装置等の低価格化に大きく貢献できる。
【００２４】
なお、研削砥石の切り込み深さが浅くて切除する量が少ない場合には、円筒面の一部を平坦化するだけであり、実質的に少なくとも１個の単一平面からなる帯状の平坦部分によって構成された浅溝となる。
【００２５】
本実施例によれば、回転多面鏡のモータの始動時や減速停止時あるいは低速回転中に回転多面鏡の回転駆動部が多量の摩耗粉を発生したり、軸受のかじり等のトラブルによる回転不良を誘発するのを防ぎ、高速回転中のみならず、始動時や低速時でも安定した光学特性を維持する極めて高性能な光偏向走査装置を実現でできる。
【００２７】
図３は、本実施例による光偏向走査装置の全体を説明するもので、これは、光源ユニット５０から発生されたレーザＬ０ をシリンドリカルレンズ５１によって回転多面鏡１の反射面に線状に集光させ、回転多面鏡１の回転によって偏向走査し、結像レンズ系５２を経て回転ドラムＤ上の記録媒体である感光体に結像させる。結像レンズ系５２は球面レンズ５２ａ、トーリックレンズ５２ｂ等によって構成され、前記感光体に結像する点像の歪を補正する機能を有する。また、偏向走査されたレーザ光の一部分は反射ミラー５３によって光ファイバ５４の受光端に導入され、走査開始信号に変換されて光源ユニット５０に送信される。光源ユニット５０は光学箱５５の側壁に組み付けられており、結像レンズ系５２等は、前述のように回転多面鏡１のモータを支持するモータハウジング７とともに光学箱５５の底壁に取り付けられる。
【００２８】
【発明の効果】
本発明は上述のとおり構成されているので、次に記載するような効果を奏する。
【００２９】
動圧発生溝を有する動圧気体軸受装置の加工コストが低くてすみ、しかも、回転多面鏡のモータ等の始動時や減速停止時あるいは低速回転中に局部的に摩耗して多量の粉塵が発生したり回転不良等のトラブルを起すのを回避できる。このような動圧気体軸受装置を用いることで、回転多面鏡が低速度で回転するときでも安定した軸受性能を維持し、回転多面鏡が回転不良を起したりその反射面が軸受の摩耗による粉塵等のために汚染されるおそれのない高性能な光偏向走査装置を実現できる。
【００３０】
また、このような光偏向走査装置を搭載することで、レーザビームプリンタ等の画質形成装置の高速化や画質の向上および低価格化に大きく貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【図１】一実施例による光偏向走査装置の動圧気体軸受装置を含む主要部を示すもので、（ａ）はその模式断面図、（ｂ）は固定軸のみを拡大して示す拡大斜視図である。
【図２】浅溝の挽き目が固定軸の周方向である場合を示す斜視図である。
【図３】光偏向走査装置全体を説明する説明図である。
【図４】一従来例による動圧気体軸受装置を示す断面図である。
【図５】図４の装置の固定軸を示す斜視図である。
【符号の説明】
１ 回転多面鏡
２ 固定軸
３ 回転スリーブ
４ フランジ部材
５ ロータマグネット
２１ 浅溝
２１ａ 挽き目
２２ 稜線
【発明の属する技術分野】
本発明は、レーザビームプリンタやレーザファクシミリ等の画像形成装置の光偏向走査装置の回転駆動部等に用いられる動圧気体軸受装置および光偏向走査装置に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
レーザビームプリンタやレーザファクシミリ等の画像形成装置に用いられる光偏向走査装置は、光源ユニットの半導体レーザから発生されたレーザ光を所定の方向に偏向走査する回転多面鏡を有する。近年では、画像形成装置の高速化に伴って回転多面鏡を高速度で回転させることが要求され、回転多面鏡の回転駆動部に、動圧気体軸受装置を用いたものが開発されている。動圧気体軸受は、安定した回転性能を得ることができるうえに高速回転に適しているため、数多くの分野で注目されている。
【０００３】
図４は、このような動圧気体軸受装置の一従来例Ｅ０ を示すもので、これは、円筒状の外周面に複数の軸方向の動圧発生溝６１ａを有する軸部材６１と、該軸部材６１を回転自在に嵌合させるスリーブ部材６２を有する。軸部材６１の動圧発生溝６１ａは、一般的な動圧気体空気軸受のヘリングボーン溝と同様の働きをするもので、軸部材６１とスリーブ部材６２を相対的に回転させると、動圧発生溝６１ａに沿って流動する空気によって動圧が発生し、これによって、軸部材６１とスリーブ部材６２の間が互に非接触に保たれる。
【０００４】
図５に示すように、軸部材６１の各動圧発生溝６１ａは、公知のフライス加工等の一般的な機械加工によって形成され、軸部材６１の周方向に等間隔で配設される。
【０００５】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上記従来の技術によれば、軸部材の材質が高強度窒化ケイ素等のセラミック材料である場合には、動圧発生溝をフライス加工等の通常の機械加工で形成することは困難であり、このために加工コストが高くなる。また、研削加工を行う場合、研削方向を軸方向と直交する方向にすると研削していない軸の周面と研削した面との境界線が軸方向に一直線にならず、この部分とスリーブ部材内面でかじりが生じ安定した回転が行えないという問題が生ずる。
【０００６】
本発明は、上記従来の技術の有する未解決の課題に鑑みてなされたものであり、高速回転に適しており、安定した回転性能を得ることができ、始動時や減速停止時あるいは低速回転中に、軸受が局部的に磨耗して多量の粉塵を発生したり、かじり等のトラブル発生を防止できるうえに加工コストの低い動圧気体軸受装置および光偏向走査装置を提供することを目的とするものである。
【０００７】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の動圧気体軸受装置は、互に嵌合して相対的に回転自在であるセラミック製の軸部材とスリーブ部材を有し、前記軸部材の外周面に、該軸部材の軸方向に挽き目を合わせた研削加工によって形成された複数のそれぞれ前記軸方向にのびる浅溝が設けられており、これらの浅溝は少なくとも１個の単一平面からなる帯状の平坦部分によって構成されていることを特徴とする。
本発明の光偏向走査装置は、動圧気体軸受装置によって回転支持された回転多面鏡と、該回転多面鏡を回転させる駆動手段を有し、前記動圧気体軸受装置が、互に嵌合して相対的に回転自在であるセラミック製の軸部材とスリーブ部材を有し、前記軸部材の外周面に、該軸部材の軸方向に挽き目を合わせた研削加工によって形成された複数のそれぞれ前記軸方向にのびる浅溝が設けられており、これらの浅溝は少なくとも１個の単一平面からなる帯状の平坦部分によって構成されていることを特徴とする。
【０００８】
【作用】
各浅溝が軸部材の軸方向に挽き目を合わせた研削加工によって形成されたものであるため、各浅溝の両側縁の稜線は直線状である。
【０００９】
光偏向走査装置の回転多面鏡のモータ等の始動時や減速停止時あるいは低速回転中に、動圧気体軸受装置の動圧が不充分となりこのためにスリーブ部材が軸部材に接触しても、各浅溝の両側縁が凹凸形状の稜線である場合のようにスリーブ部材と軸部材の間が点接触になって摩耗粉を発生したり、軸受のかじり等のトラブルを起すおそれがない。
【００１０】
加えて、各浅溝は、研削砥石等を軸部材の軸方向に相対的に移動させるだけで簡単に溝加工できるため、加工コストが極めて低く、光偏向走査装置の低価格化に大きく貢献できる。
【００１１】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【００１２】
図１は一実施例による動圧気体軸受装置Ｅ１ を用いた光偏向走査装置の回転駆動部を示す模式断面図であって、これは、外周面に反射面１ａを備えた回転部材である回転多面鏡１を有し、その駆動部は、円柱状の軸部材である固定軸２にスリーブ部材である回転スリーブ３を嵌合し、これと一体的に設けられたフランジ部材４にロータマグネット５を固着し、回転多面鏡１を押えバネ６によってフランジ部材４に押圧するとともに、固定軸２を固定した固定部材であるモータハウジング７にモータ基板７ａを支持させ、これに、ステータコイル８を立設したもので、ステータコイル８はロータマグネット５とともに駆動手段であるモータを構成し、ステータコイル８を励磁することで、ロータマグネット５と回転多面鏡１を一体的に回転させる。
【００１３】
回転スリーブ３はその回転によって固定軸２との間に空気膜を形成し、固定軸２に非接触で回転する動圧気体軸受を構成する。回転スリーブ３の下端には第１の永久磁石９ａが固着され、第１の永久磁石９ａの下面が、モータハウジング７に固定された第２の永久磁石９ｂの上面に対向している。
【００１４】
回転スリーブ３の上端開口はふた部材１０によって閉塞され、固定軸２の上端とふた部材１０の間に空気だまり１０ａが形成される。回転スリーブ３の固定軸２に対する軸方向の位置が変化すると、空気だまり１０ａ内の空気が加圧または減圧されて回転スリーブ３を元の位置に戻そうとする力が働き、第１、第２の永久磁石９ａ，９ｂによる磁気反撥力とともに、回転多面鏡１の軸方向の位置を安定させる役目をする。
【００１５】
なお、固定軸２と回転スリーブ３は両者の摩耗やゴミ等の侵入によるかじり等を低減するために高強度窒化ケイ素（Ｓｉ３ Ｎ４ ）等のセラミック材料で作られており、フランジ部材４はアルミニウムや黄銅等の金属製で焼きばめによって回転スリーブ３に固着される。ロータマグネット５の端面は、フランジ部材４のフランジ部の下面に当接され、フランジ部材４の筒状部分の外周面とロータマグネット５の内周面の間に介在する接着剤によってフランジ部材４に接着されている。
【００１６】
また、ふた部材１０は、アルミニウム、ステンレス等の金属や樹脂によって作られており、接着等の公知の方法で回転スリーブ３の上端に固着される。
【００１７】
モータハウジング７は、後述する結像レンズ系５２（図３参照）等とともに、光学箱５５の底壁に固着される。
【００１８】
固定軸２の外周面（円筒面）には、回転スリーブ３との間に動圧を発生させるための軸方向の浅溝２１が設けられる。浅溝２１は固定軸２の表面に周方向に等間隔で３カ所に配設され、浅溝２１の溝加工は、後述するように、溝加工用の研削砥石を回転させながら固定軸２に沿ってその軸方向に移動させる研削加工によって行なわれる。従って、浅溝２１の挽き目２１ａは軸方向に形成され、浅溝２１の両側縁に形成される稜線２２は挽き目２１ａに沿って凹凸のない直線状となる。
【００１９】
比較のために、挽き目を周方向に合わせて研削加工した場合の固定軸１０２を図２に示す。浅溝１２１の挽き目１２１ａがこのように周方向であれば、浅溝１２１の両側端に形成される稜線１２２がノコギリ刃状の凹凸形状となる。
【００２０】
図示しない回転スリーブに取付けられた回転多面鏡の始動時あるいは減速停止時または低速回転中等には、回転スリーブと固定軸１０２の間の空気膜に充分な動圧が発生しておらず、従って、回転スリーブが固定軸１０２に局部的に接触しながら回転する状態となるが、このように回転スリーブと固定軸１０２が接触しながら回転すると、固定軸１０２の浅溝１２１の稜線１２２の凸部１２２ａに回転スリーブが接触したときにいわゆる点接触となり、接触圧力が局部的に著しく増大してこの部分を摩耗させる。その結果、多量の摩耗粉が発生して偏向走査装置の内部を汚染したり、軸受のかじり等によって回転不良を誘発するおそれがある。
【００２１】
これに対して、本実施例においては、各浅溝２１の挽き目が軸方向であるために各浅溝２１の稜線２２が凹凸のない直線状に形成される。回転多面鏡１のモータの始動時や減速停止時あるいは低速回転中等に回転スリーブ３と固定軸２の間の空気膜に充分な動圧が発生しておらず、従って、回転スリーブ３が固定軸２に局部的に接触しながら回転する状態となっても、各浅溝２１の稜線２２は軸方向に凹凸のない直線状であるため、前述のように局部的に接触圧力が増大して摩耗粉を発生したり軸受のかじり等を誘発するおそれはない。
【００２２】
すなわち、浅溝２１の稜線２２が軸方向にのびる直線状であって図２に示す比較例のように凹凸形状でないため、固定軸２が回転スリーブ３に接触した場合には浅溝２１の稜線２２全体が均一に回転スリーブ３に接触するいわゆる線接触となり、凹凸形状の稜線のように点接触によって接触圧力が局部的に増大するおそれはない。
【００２３】
高強度窒化ケイ素等のセラミック材料で作られた固定軸２に浅溝２１を研削加工する工程は、例えば、以下のように行なわれる。ダイヤモンド砥粒をレジノイドボンドで固定した研削砥石を回転させながら固定軸の外周面に所定の深さだけ切り込んだ状態で、固定軸と研削砥石を軸方向に相対的に移動させる。これによって、固定軸の外周面の一部分を帯状に切除して浅溝を形成する。このように研削砥石を回転させながら固定軸に切り込んで両者を軸方向に相対的に移動させるだけで浅溝を形成するものであるため、溝加工が簡単で加工コストが低くてすむ。その結果、光偏向走査装置やこれを搭載する画像形成装置等の低価格化に大きく貢献できる。
【００２４】
なお、研削砥石の切り込み深さが浅くて切除する量が少ない場合には、円筒面の一部を平坦化するだけであり、実質的に少なくとも１個の単一平面からなる帯状の平坦部分によって構成された浅溝となる。
【００２５】
本実施例によれば、回転多面鏡のモータの始動時や減速停止時あるいは低速回転中に回転多面鏡の回転駆動部が多量の摩耗粉を発生したり、軸受のかじり等のトラブルによる回転不良を誘発するのを防ぎ、高速回転中のみならず、始動時や低速時でも安定した光学特性を維持する極めて高性能な光偏向走査装置を実現でできる。
【００２７】
図３は、本実施例による光偏向走査装置の全体を説明するもので、これは、光源ユニット５０から発生されたレーザＬ０ をシリンドリカルレンズ５１によって回転多面鏡１の反射面に線状に集光させ、回転多面鏡１の回転によって偏向走査し、結像レンズ系５２を経て回転ドラムＤ上の記録媒体である感光体に結像させる。結像レンズ系５２は球面レンズ５２ａ、トーリックレンズ５２ｂ等によって構成され、前記感光体に結像する点像の歪を補正する機能を有する。また、偏向走査されたレーザ光の一部分は反射ミラー５３によって光ファイバ５４の受光端に導入され、走査開始信号に変換されて光源ユニット５０に送信される。光源ユニット５０は光学箱５５の側壁に組み付けられており、結像レンズ系５２等は、前述のように回転多面鏡１のモータを支持するモータハウジング７とともに光学箱５５の底壁に取り付けられる。
【００２８】
【発明の効果】
本発明は上述のとおり構成されているので、次に記載するような効果を奏する。
【００２９】
動圧発生溝を有する動圧気体軸受装置の加工コストが低くてすみ、しかも、回転多面鏡のモータ等の始動時や減速停止時あるいは低速回転中に局部的に摩耗して多量の粉塵が発生したり回転不良等のトラブルを起すのを回避できる。このような動圧気体軸受装置を用いることで、回転多面鏡が低速度で回転するときでも安定した軸受性能を維持し、回転多面鏡が回転不良を起したりその反射面が軸受の摩耗による粉塵等のために汚染されるおそれのない高性能な光偏向走査装置を実現できる。
【００３０】
また、このような光偏向走査装置を搭載することで、レーザビームプリンタ等の画質形成装置の高速化や画質の向上および低価格化に大きく貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【図１】一実施例による光偏向走査装置の動圧気体軸受装置を含む主要部を示すもので、（ａ）はその模式断面図、（ｂ）は固定軸のみを拡大して示す拡大斜視図である。
【図２】浅溝の挽き目が固定軸の周方向である場合を示す斜視図である。
【図３】光偏向走査装置全体を説明する説明図である。
【図４】一従来例による動圧気体軸受装置を示す断面図である。
【図５】図４の装置の固定軸を示す斜視図である。
【符号の説明】
１ 回転多面鏡
２ 固定軸
３ 回転スリーブ
４ フランジ部材
５ ロータマグネット
２１ 浅溝
２１ａ 挽き目
２２ 稜線
Claims (4)
- 互に嵌合して相対的に回転自在であるセラミック製の軸部材とスリーブ部材を有し、前記軸部材の外周面に、該軸部材の軸方向に挽き目を合わせた研削加工によって形成された複数のそれぞれ前記軸方向にのびる浅溝が設けられており、これらの浅溝は少なくとも１個の単一平面からなる帯状の平坦部分によって構成されていることを特徴とする動圧気体軸受装置。
- 軸部材が固定部材に固定され、スリーブ部材が回転部材と一体であることを特徴とする請求項１記載の動圧気体軸受装置。
- 動圧気体軸受装置によって回転支持された回転多面鏡と、該回転多面鏡を回転させる駆動手段を有し、前記動圧気体軸受装置が、互に嵌合して相対的に回転自在であるセラミック製の軸部材とスリーブ部材を有し、前記軸部材の外周面に、該軸部材の軸方向に挽き目を合わせた研削加工によって形成された複数のそれぞれ前記軸方向にのびる浅溝が設けられており、これらの浅溝は少なくとも１個の単一平面からなる帯状の平坦部分によって構成されていることを特徴とする光偏向走査装置。
- 軸部材が固定部材に固定され、スリーブ部材が回転多面鏡と一体であることを特徴とする請求項３記載の光偏向走査装置。
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