JP3576193B2 - ビフェニルメチル置換バレリルアミド誘導体 - Google Patents
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- QYIOFABFKUOIBV-UHFFFAOYSA-N CC(O1)=C(C)OC1=O Chemical compound CC(O1)=C(C)OC1=O QYIOFABFKUOIBV-UHFFFAOYSA-N 0.000 description 1
Description
【産業上の利用分野】
本発明は、心血管障害や腎臓疾患等の予防用および/または治療用医薬品として有用な化合物に関する。
【0002】
【従来の技術】
中性エンドペプチダーゼ(EC 3.4.24.11、エンケファリナーゼとも称せられる)は、腎や脳など多くの生体内組織に含まれるメタロエンドペプチダーゼである。中性エンドペプチターゼは、心房性ナトリウム***増加因子(ANF)やエンケファリンを含む数種のペプタイドホルモンを分解する(ANF:ステフエンソン(Stephenson)ら、Biochem. J., 243, 183, 1987 年、エンケファリン:マルフロイ(Malfroy) ら、Nature, 276, 523, 1978年)。
【0003】
ヒトや他の哺乳動物の心臓から分泌されるANFと呼ばれる21から28のアミノ酸からなるペプタイドは、利尿、ナトリウム***増加、および血管や他の組織の平滑筋の弛緩を起こす(ニードルマン(Needleman) ら、Hypertension, 7, 469, 1985 年)。また、ヒトのANFをヒトに投与すると、利尿、ナトリウム***増加、および血圧降下を起こすことが報告されている(リチャーズ(Richards)ら、Hypertention, 7, 812, 1985年)。
【0004】
これから、中性エンドペプチダーゼの作用を阻害すれば、ANFの分解が抑制され、ANF濃度を高めることができ、ANFの持つ生理作用を心血管障害や腎臓疾患等の予防用および/または治療に利用できると考えられる。
【0005】
よって、中性エンドペプチダーゼ作用を阻害する薬物は、産業上の利用性があると考えられる。
【0006】
現在まで中性エンドペプチダーゼを阻害する多くの化合物が知られている。しかし、これらの化合物は、低用量の投与では期待する効果を十分に発現させることができないと予想された。したがって、より強力に中性エンドペプチダーゼを阻害することのできる化合物の開発が必要であると考えた。
【0007】
本発明者らは鋭意研究の結果、一般式(I)で表される化合物が強力な中性エンドペプチダーゼ阻害活性を有する化合物であることを見いだし、本研究を完成させた。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の化合物、式(I)
【0009】
【化18】
【0010】
(式中、
R1は
1. 水素原子、
2. アルキル基、
3. アルキルチオアルキル基、
4. ヒドロキシアルキル基、
5. アミノアルキル基、
6. アルコキシアルキル基または
7. アリールオキシアルキル基を表し、
Xは、
1. −COOHまたは
2. 基、
【0011】
【化19】
を表し、
R4は
1. 水素原子、
2. アルキル基または
3. アリールアルキル基を表し、
AおよびBは独立して
1. 水素原子、
2. ハロゲン原子または
3. アルキル基を表し、
mは0、1または2の整数を表す。)
によって表される化合物、そのエステルまたはそれらの塩であれば、心血管障害や腎臓疾患等の予防および/または治療用医薬品として利用できる。
式(II)
【0012】
【化20】
【0013】
[式中、
Yは、
1. −COOR3 または
2. 基
【0014】
【化21】
【0015】
を表し、
R1およびR4は上記定義通りであり、
mは0、1または2の整数を表し、
R2およびR3は独立して
1. 水素原子、
2. アルキル基、
3. アリールアルキル基、
4. アリール基、
5. 基、
【0016】
【化22】
【0017】
(R5は水素原子、アルキル基またはアリール基を表し、R6はアルキル基、アルコキシ基、またはシクロアルキル基を表す。)
6. 基、
【0018】
【化23】
【0019】
7. 基、
【0020】
【化24】
【0021】
(R7はアルキル基を表す。)
8. 基、
【0022】
【化25】
【0023】
(R8はアルキル基を表し、nは1から4の整数を表す。)
9. 基、
【0024】
【化26】
【0025】
または
10. 基、
【0026】
【化27】
【0027】
(R9およびR10は独立して、水素原子またはアルキル基を表す。)を表す。]
によって表される化合物またはその塩であれば、心血管障害や腎臓疾患等の予防および/または治療用薬品として利用できる。
式(III)
【0028】
【化28】
【0029】
[式中、
R1は上記定義通りであり、
mは0、1または2の整数を表し、
R11およびR12は独立して
1. 水素原子、
2. アルキル基、
3. アリールアルキル基または
4. アリール基、
5. 基、
【0030】
【化29】
【0031】
(R5は水素原子、アルキル基またはアリール基を表し、R6はアルキル基、アルコキシ基またはシクロアルキルオキシ基を表す。)
6. 基、
【0032】
【化30】
【0033】
7. 基、
【0034】
【化31】
【0035】
(R7はアルキル基を表す。)
8. 基、
【0036】
【化32】
【0037】
(R8はアルキル基を表し、nは1から4の整数を表す。)
9. 基、
【0038】
【化33】
【0039】
または
10. 基、
【0040】
【化34】
【0041】
(R9およびR10は独立して、水素原子またはアルキル基を表す。)]
によって表される化合物またはその塩であれば、心血管障害や腎臓疾患等の予防および/または治療用医薬品として利用できる。
【0042】
N−[(2S)−2−(p−ビフェニルメチル)−4−カルボキシ−5−フェノキシバレリル]グリシン、そのモノエステル、そのジエステルまたはそれらの塩であれば、心血管障害や腎臓疾患等の予防および/または治療用医薬品として利用できる。
【0043】
更に光学活性物質である、N−[(2S,4R)−2−(p−ビフェニルメチル)−4−カルボキシ−5−フェノキシバレリル]グリシン、そのモノエステル、そのジエステルまたはそれらの塩であれば、心血管障害や腎臓疾患等の予防および/または治療用医薬品として利用できる。
【0044】
また、N−[(2S,4S)−2−(p−ビフェニルメチル)−4−カルボキシ−5−フェノキシバレリル]グリシン、そのモノエステル、そのジエステルまたはそれらの塩であれば、心血管障害や腎臓疾患等の予防および/または治療用医薬品として利用できる。
【0045】
更に、N−[(2S)−2−(p−ビフェニルメチル)−4−カルボキシ−5−フェノキシバレリル]−L−アラニン、そのモノエステル、そのジエステルまたはそれらの塩であれば、心血管障害や腎臓疾患等の予防および/または治療用医薬品として利用できる。
【0046】
エステル化合物である、N−[(2S)−2−(p−ビフェニルメチル)−4−エトキシカルボニル−5−フェノキシバレリル]グリシンまたはその塩であれば、プロドラッグとして、心血管障害や腎臓疾患等の予防および/または治療用医薬品として利用できる。
【0047】
更に光学活性物質である、N−[(2S,4R)−2−(p−ビフェニルメチル)−4−エトキシカルボニル−5−フェノキシバレリル]グリシンまたはその塩であれば、プロドラッグとして、心血管障害や腎臓疾患等の予防および/または治療用医薬品として利用できる。
【0048】
また、N−[(2S,4S)−2−(p−ビフェニルメチル)−4−エトキシカルボニル−5−フェノキシバレリル]グリシンまたはその塩であれば、プロドラッグとして、心血管障害や腎臓疾患等の予防および/または治療用医薬品として利用できる。
【0049】
一般式(I)、(II)および(III)で表される化合物は、2個以上の不斉炭素を有するため、異性体として、ジアステレオマーが存在する。本発明は、ジアステレオマーの混合物および分離したジアステレオマーの各々をも全て含んでいる。また、本発明化合物を、ヒトや動物に投与する際は、通常は単一のジアステレオマーからなるものを投与することが好ましい。ここで「単一のジアステレオマーからなる」とは、他のジアステレオマーを全く含有しない場合だけでなく、化学的、生理学的に純粋な程度でもよいと解される。つまり、物理定数や、生理活性に対して影響がない程度であれば他のジアステレオマーが含まれていてもよいことを意味する。
【0050】
一般式(I)、(II)または(III)の化合物において遊離のカルボシル基あるいはテトラゾール基が存在する場合、これは医薬的に許容し得る塩となっていてもよいが、これは無毒性の塩であることを示している。例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム等アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属との塩、またはジエチルアミン、N−メチルグルカミン等のアミン類との塩を挙げることができる。一方、毒性のある塩であっても中間体の単離・精製等や製造のために有用な塩もある。
【0051】
本発明化合物の置換基について以下に説明する。なお、特定の部位の置換基に対応させて説明をしていない場合その説明は、特定の置換部位には限定されない本明細書全般にわたって記載されている個々の置換基についての説明である。
【0052】
アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基または第三級ブチル基等の炭素数1から6のものを挙げることができる。直鎖状でも、分枝状であってもよい。好ましくはメチル基およびエチル基が挙げられる。
【0053】
アルキルチオアルキル基は、メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基またはイソプロピルチオ基等の炭素数1から4のアルキルチオ基と、炭素数1から6のアルキレン基を組み合わせて構成されるものでよい。好ましくはメチルチオエチル基が挙げられる。
【0054】
ヒドロキシアルキル基は、水酸基がアルキル基に置換した構造を有する。水酸基の置換位置はアルキル基の末端あるいは中間等、特に限定されない。
【0055】
アミノアルキル基は、アミノ基がアルキル基に置換した構造を有する。アミノ基の置換位置はアルキル基の末端あるいは中間等、特に限定されない。
【0056】
アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等の炭素数1から6のものを挙げることができる。アルキル部分は直鎖状でもよいが、分枝鎖状でもよい。さらにシクロアルキル基でもよい。
【0057】
アルコキシアルキル基は、炭素数1から6のアルコキシ基と炭素数1から6のアルキレン基を組み合わせて構成されるものでよい。
【0058】
アリール基としては、フェニル基またはナフチル基を挙げることができる。フェニル基は置換されていなくてもよいが、ハロゲン原子、ニトロ基、ヒドロキシ基、炭素数1から4のアルキル基および炭素数1から4のアルコキシ基からなる置換基の群から選ばれる置換基の1個から3個によって置換されていてもよい。またはアリール基に置換した隣接するアルキル基またはアルキル置換基およびアルコキシ基が5員環または6員環(例えば、インダニル環、ジヒドロベンゾフラニル環)を形成していてもよい。
【0059】
アリールアルキル基は、上記のアリール基と炭素数1から6のアルキレン基を組み合わせて構成されるものでよい。アリールアルキル基のアリール基としてはフェニル基または置換フェニル基が好ましい。ベンジル基、置換ベンジル基、フェネチル基等を例示することができる。
【0060】
アリールオキシアルキル基は、上記のアリール基と酸素原子と炭素数1から6のアルキレン基の順で組み合わせて構成されるものでよい。フェノキシメチル基、フェノキシエチル基、ナフチルオキシエチル基等を例示することができる。好ましくはフェノキシメチル基が挙げられる。
【0061】
実施例で述べている異性体A及びBとは、異性体を分離する際の分離法で定義する。つまり、本発明の一般式で示される化合物がジカルボン酸の場合、HPLC(溶出溶媒は、アセトニトリル−水)を用いた時に最初に溶出してきた物質を異性体Aといい、後から溶出してきた物質を異性体Bという。また、本発明の一般式で示される化合物がエステル類の場合、シリカカラムを用いた時に最初に溶出してきた物質を異性体Aといい、後から溶出してきた物質を異性体Bという。
【0062】
異性体Aおよび異性体Bは、絶対配位が確定されていない不斉炭素において片方が(R)体であれば、片方は(S)体という関係にあり、構造分析によりその化合物の配位を決めることができる。
【0063】
本発明の一般式(I)で示される化合物のエステルは、モノエステルまたはジエステルが挙げられ、化合物中の2つのカルボン酸の水素原子の1つないし2つが有機基で置換されたものを言い、一般式で示される化合物のモノエステルとは、化合物中の2つのカルボン酸の水素原子のどちらか一方が例えば、アルキル基、アリールアリキル基あるいはアリール基で置換したエステルを示し、化合物のジエステルとは、化合物中の2つのカルボン酸の水素原子が例えば、アルキル基、アリールアリキル基あるいはアリール基で置換したものを示す。また、アルキル基、アリールアリキル基あるいはアリール基については、前述した説明による。
【0064】
本発明の一般式(I)、(II)および(III)などで示される化合物のモノエステル、そのジエステルまたはそれらの塩は、心血管障害や腎臓疾患等の予防および/または治療用剤のプロドラッグとしての利用が考えられ、薬剤の投与を考える上で重要な態様を示す。
【0065】
好ましくはエステルのうちでもプロドラッグとして利用できる基で置換されている化合物が挙げられる。この基として、
1. アルキル基、
2. アリールアルキル基、
3. アリール基、
4. 基、
【0066】
【化35】
【0067】
(R5は水素原子、アルキル基またはアリール基を表し、R6はアルキル基、アルコキシ基またはシクロアルキルオキシ基を表す。)
5. 基、
【0068】
【化36】
【0069】
6. 基、
【0070】
【化37】
【0071】
(R7はアルキル基を表す。)
7. 基、
【0072】
【化38】
【0073】
(R8はアルキル基を表し、nは1から4の整数を表す。)
8. 基、
【0074】
【化39】
【0075】
または
9. 基
【0076】
【化40】
【0077】
(R9およびR10は独立して、水素原子またはアルキル基を表す。)
が挙げられる。
【0078】
本発明の一般式(I)、(II)または(III)で表される化合物を合成する方法は、部分保護したバレリル酸誘導体と必要に応じて部分保護したアミノ酸あるいはアミンから目的のバレリルアミドを得るものである。
【0079】
合成経路を反応工程式1に示す。
【0080】
【化41】
【0081】
反応工程式1の、式(IV)で表される化合物(R13は、R2として定義されたものから水素原子を除いたものであるか、あるいは通常のカルボン酸の保護基である。)と、式(V)で表される化合物(式中、R1、R4およびmは前記の定義に等しく、
X′は−COOR14または
【0082】
【化42】
【0083】
を表し、R14はR3として定義されたものから水素原子を除いたものであるか、あるいは通常のカルボン酸の保護基である。)を通常のアミド結合法をもちいて脱水縮合することによって得ることができる。
例えば、反応体を有機溶剤(たとえば塩化メチレン)に溶解し、ジイミド系縮合剤(例えば1ーエチルー3ー(3ージメチルアミノプロピル) カルボジイミド・塩酸塩またはジシクロヘキシルカルボジイミド)を用いて、好ましくは1ーヒドロキシベンゾトリアゾールおよび必要に応じて有機塩基(例えばN−メチルモルホリン)の存在下で行われる。反応は一般に室温で5〜24時間を要す。生成物(VI)は次いで常法により、例えば水洗または濾過により副生物である尿素を除去し、溶剤を蒸発させることにより単離される。
【0084】
式(VI)で表される化合物(式中、R1、R13、mおよびX′は前記の定義に同じ)は、式中の基R13およびR14(あるいはR4)の化学的性質に応じ、それらの基を選択的除去あるいはそれらの基のすべての除去を経ることによって、式(I)、(II)または(III)で表される多数の化合物に変換することが可能である。例えば一方がベンジルエステルであり、他方がアルキルエステルである化合物から、水素添加によりベンジル基のみを脱保護した化合物が得られる。また、一方がメチルエステルで他方がベンジルエステルである化合物を有機溶剤(例えば塩化メチレン)に溶解し、スルフィド(例えばメチルスルフィド)とアルミニウムハライド(例えば塩化アルミニウム)とを加え、氷冷から室温で10分〜5日撹拌すると、試薬の量と反応時間に応じてベンジル基のみが脱保護されたモノカルボン酸あるいはメチル基とベンジル基両方が脱保護されたジカルボン酸を選択的に合成することもできる。ジメチルエステルあるいはモノメチルエステルの場合も同様の条件でジカルボン酸を得ることができる。また、例えば酸またはアルカリ条件下の加水分解等の方法もあるが、使用した保護基に応じた方法を用いて保護基を除去すればよい。X′がN−パラメトキシベンジル置換テトラゾール基の場合には、トリフルオロ酢酸で処理することにより対応する遊離テトラゾール誘導体が得られる。
【0085】
式(IV)で表されるモノカルボン酸は反応工程2に示される方法によって製造することができる。
【0086】
【化43】
【0087】
文献記載の方法(Cavallini ら、J. Am. Chem. Soc., 79, 3514 1957年)に従って製造した3−(p−ビフェニル)プロピオン酸(VII)を常法(例えばチオニルクロライドを用いる方法)を用いて酸クロライドに変換し、市販のオキサゾリジノン(VIII)を低温でn−ブチルリチウムと処理することにより誘導されたリチウム塩と直接反応させて、N−アシルオキサゾリジノン(IX)となす。次いでこれを強塩基(たとえばリチウムジイソプロピルアミド)を用いて低温で反応させることにより、リチウムエノレートを生成させ、式(X)で表される化合物(式中、Zは脱離基であり、例えばハロゲン原子またはp−トルエンスルホニルオキシ、好ましくはヨウ素原子である)を添加して化合物(XI)を得る。この化合物は、低温でn−ブチルリチウムとベンジルアルコールとを処理することにより誘導されたリチウム塩と直接反応させて、光学活性のベンジルエステル(XII)へ変換できる。ここでは(S)−配位を持つオキサゾリジノン(VIII)をもちいたが、(R)−配位を持つ化合物(VIII)の対掌体あるいは関連化合物(例えば(4R,5S)−4−メチルー5ーフェニルー2ーオキサゾリジノン)を代わりに用いれば、逆の配位を持つ化合物(XII)の対掌体を得ることもできる。
【0088】
オレフィンをアルコールに変換する方法として、例えばハイドロボレーションを利用する方法などがある。式(XII)の化合物を不活性溶媒(例えばテトラヒドロフラン)に溶解し、氷冷下あるいは室温でボラン化合物(例えば9ーボラビシクロ[3,3,1]ノナン)を添加し1から8時間反応させた後、アルカリ(例えば水酸化ナトリウム)存在下に過酸化水素水で処理すると、使用したボラン化合物に応じたジアステレオマーの混合比を持つアルコール(XIII)を得ることができる。この化合物を酸化剤(例えば 4ーベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンー1ーオキシルを触媒として亜臭素酸ナトリウム)で処理し、モノカルボン酸(XIV)を得ることができる。
【0089】
モノカルボン酸(XIV)からジエステル(XV)の変換は、導入する置換基に応じて方法を選択すればよい。例えば、ジアゾメタンを用いる方法、縮合剤(例えばジシクロヘキシルカルボジイミド)を用いる方法または塩基と種々のハライドを用いる方法等である。このようにして得られたジエステル(XV)(式中、R13 は前記の定義に同じ)を水素添加により、脱ベンジル化して式(IV)の化合物を得ることができる。式(V)のX´がエステル基である化合物は市販化合物であるが、X´が遊離したテトラゾール基である化合物は、文献記載の方法(特開昭63−41469号公報)に従って製造することができる(例えば適宜置換されたアミノアセトニトリルとアジ化ナトリウムとの反応による)。一方、N−置換テトラゾール(XX)は、例えば反応工程3に示される方法で製造できる。文献記載の方法(菅野ら、Chem. Pharm.Bull., 39, 1099, 1991年)に従って製造したテトラゾール酢酸(XVI)(式中、R15 は通常のカルボン酸保護基を表し、R16はR4について定義したものから水素原子を除いたものを表す)をヒドラジンと無溶媒あるいは溶媒(例えばエタノール)中縮合し、ヒドラジド(XVII)となす。次いで、この化合物を塩酸水溶液に溶解し、冷却下に亜硝酸ナトリウムで処理し、得られるアシルアジド(XVIII)を有機溶媒(例えばトルエン)中加熱してイソシアン酸エステル(XIX)とした後、アルカリ(例えば水酸化ナトリウム)と反応させ、酸性にすると目的とする式(XX)で表される化合物を得ることができる。
【0090】
【化44】
【0091】
なお、各反応における反応生成物は、通常の精製方法、例えば真空ポンプを用いた蒸留、シリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィー、再結晶、高速液体クロマトグラフィー等の方法あるいはこれらを組み合わせて精製を行うことができる。
【0092】
【実施例】
以下に、本発明を更に実施例により説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0093】
[参考例] 2−ヨードメチル−3−フェノキシ−1−プロペン
2−クロロメチル−3−フェノキシ−1−プロペン 29.7 g を メチル エチル ケトン 150 ml に溶解した溶液に、ヨウ化ナトリウム 26.8 g を加え、2時間30分加熱還流した。反応液を濃縮し、残渣にエーテルを加え、水洗後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去すると、褐色油状の標記の化合物 45.4 g を得た。
【0094】
1H−NMR(CDCl3, 90 MHz) δ:
4.05(2H, s), 4.69(2H, s), 5.32(1H, s), 5.48(1H, s), 6.8 − 7.0(3H, m), 7.2 − 7.4(2H, m).
【0095】
[実施例1] (4S)−3−[3−(p−ビフェニル)プロピオニル]−4−(1−メチルエチル)−2−オキサゾリジノン
3−(p−ビフェニル)プロピオン酸 15g をチオニルクロライド 100 ml に溶解して、2時間加熱還流した。溶媒を留去後、酸クロライドを褐色結晶として得、これをそのまま次の反応に用いた。(4S)−4−(1−メチルエチル)−2−オキサゾリジノン 8.56 g をテトラヒドロフラン 200 ml に溶解し、−78 ℃に冷却した後 n−ブチルリチウム(1.6M 溶液) 48 ml を加え、1時間撹拌後、前述の酸クロライドのテトラヒドロフラン溶液を加え、更に2時間撹拌を続け、温度を 0℃まで戻した。反応液に1N炭酸カリウム水溶液を加え、クロロホルムで抽出し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥後、溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒; 酢酸エチル: n−ヘキサン = 1:4) にて精製し、目的物を含む分画を減圧濃縮することにより標記の化合物を 融点 103−104℃ の白色結晶として 19.4 g 得た。
[α]D + 53.7 (c = 1.0, クロロホルム).
【0096】
1H−NMR(CDCl3, 400 MHz)δ:
0.84(3H, d, J = 6.8 Hz), 0.91(3H, d, J = 6.8 Hz), 2.36(1H, m), 3.05(2H, m), 3.2 − 3.4(2H, m), 4.2(2H, m), 4.5(1H, m), 7.2 − 7.7(9H, m).
【0097】
[実施例2] (4S)−3−[(2S)−2−(p−ビフェニルメチル)−4−フェノキシメチル−4− ペンテノイル]−4−(1−メチルエチル)−2−オキサゾリジノン
ジイソプロピルアミン 1.27 g をテトラヒドロフラン 30 ml に溶解し、−78℃に冷却した後、n−ブチルリチウム(1.6M ヘキサン溶液) 7.6 ml を加え30分撹拌した。同温度で (4S)−3−[3−(p−ビフェニル)プロピオニル]−4−(1−メチルエチル)−2−オキサゾリジノン 2.82 g のテトラヒドロフラン溶液を滴下して1 時間撹拌し、2ークロロメチルー3ーヨードー1ープロペン 2.75 g を加えた後、−20℃から−15℃へと徐々に温度を上げながら3時間撹拌を続けた。反応液に10%塩化アンモニウム水溶液を加え、クロロホルムで抽出し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥後、溶媒を減圧留去し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒; 酢酸エチル: n−ヘキサン = 1:5) にて精製し、目的物を含む分画を減圧濃縮することにより標記の化合物を無色油状物として 2.39 g 得た。
【0098】
1H−NMR(CDCl3, 400 MHz)δ:
0.77(3H, d, J = 6.8 Hz), 0.84(3H, d, J = 6.8 Hz), 2.2(1H, m), 2.40(1H, d.d, J = 4.9 and 14.4 Hz), 2.69(1H, d.d, J = 9.3 and 14.6 Hz), 2.9(2H, m), 3.7(1H, t, J = 8.8 Hz,), 4.0(1H, m), 4.1(1H, m), 4.49(1H, d, J = 13.2 Hz), 4.55(1H, d, J = 13.2 Hz), 4.7(1H, m), 5.11(1H, s), 5.20(1H, s), 6.8 − 7.0(3H,m), 7.2 − 7.7(11H, m).
【0099】
[実施例3] ベンジル (2S)−2−(p−ビフェニルメチル)−4−フェノキシメチル−4−ペンテノアート
ベンジルアルコール 1.4 g をテトラヒドロフラン 30 ml に溶解した溶液に−10℃で n−ブチルリチウム(1.6M ヘキサン溶液) 10 ml を加え20分撹拌し、ついで (4S)−3−[(2S)−2−(p−ビフェニルメチル)−4−フェノキシメチル−4−ペンテノイル]−4−(1−メチルエチル)−2−オキサゾリジノン 3.2 g のテトラヒドロフラン溶液を加え、−5℃で一晩撹拌した。反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液を加え減圧下濃縮し、クロロホルムにて抽出し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥後、溶媒を減圧留去し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー( 溶出溶媒; 酢酸エチル: n−ヘキサン= 1:10)にて精製し、目的物を含む分画を減圧濃縮することにより標記の化合物を融点 52−54℃の淡黄色針状結晶として 1.99 g 得た。
[α]D + 8.76 (c=1.78, クロロホルム).
【0100】
1H−NMR(CDCl3, 400MHz) δ:
2.43(1H, d.d, J = 5.0 and 14.6 Hz), 2.56(1H, d.d, J = 9.3 and 14.6 Hz), 2.87(1H, d.d, J = 5.9 and 13.2 Hz), 2.9 − 3.1(2H, m), 4.43(1H, d, J = 12.7 Hz), 4.48(1H, d, J = 12.2 Hz), 4.97(1H, d, J = 12.2 Hz), 5.03(1H, d, J = 12.3 Hz), 5.04(1H, s), 5.17(1H, s), 6.8 − 7.6(19H, m).
【0101】
[実施例4] ベンジル (2S,4RS)−2−(p−ビフェニルメチル)−4−メトキシカルボニルー5−フェノキシバレラート
ベンジル (2S)−2−(p−ビフェニルメチル)−4−フェノキシメチル−4−ペンテノアート2.0 g をテトラヒドロフラン 10 ml に溶解した溶液に、氷冷下 9−ボラビシクロ[3,3,1] ノナン (9−BBN) 12.2 ml を加え、室温で3 時間30分撹拌した。反応液に同温度で 3N 水酸化ナトリウム水溶液 3 ml 、ついで 20 %過酸化水素水 3 ml を加え、20分撹拌後、クロロホルムにて抽出し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥した。溶媒を減圧留去することによりベンジル(2S,4RS)−2−(p−ビフェニルメチル)−4−ヒドロキシメチルー5−フェノキシバレラートを無色油状物として 1.33 gを得た。この油状物はそのまま次の反応に用いた。
【0102】
ベンジル (2S,4RS)−2−(p−ビフェニルメチル)−4−ヒドロキシメチルー5−フェノキシバレラート 1.33 g 及び 4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル 0.01 g をアセトニトリル 15 ml に溶解した溶液に 5%炭酸水素ナトリウム水溶液 15 ml を加え、更に氷冷下に亜臭素酸ナトリウム 1.58 g を加えた。反応液を室温で2 時間30分撹拌した後、10%酒石酸水溶液 50 mlを加え、酢酸エチルにて抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥後、溶媒を減圧留去すると、(2RS,4S)−4−ベンジルオキシカルボニルー5ー(p−ビフェニル)−2−(フェノキシメチル) 吉草酸を淡黄色油状物として 1.4 g 得た。この油状物は精製せずに次の反応に用いた。
【0103】
40%水酸化カリウム水溶液 7 ml とエーテル 20 ml との混合物を5 ℃に冷却し、激しく撹拌しながら、N−メチル−N−ニトロソウレア 1.0 g を加え、約20分撹拌した後、エーテル層を分離し、水酸化カリウムで乾燥した。このジアゾメタンのエーテル溶液を(2RS,4S)−4−ベンジルオキシカルボニルー5ー(p−ビフェニル)−2−(フェノキシメチル) 吉草酸 1.4 g のエーテル溶液 100 ml に加え、30分撹拌した後、酢酸を加え残存するジアゾメタンと反応させた。反応液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥した。溶媒を減圧留去し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒;酢酸エチル: n−ヘキサン=1:8) にて精製し、目的物を含む分画を減圧濃縮することにより標記の化合物を無色油状物として 0.73 g 得た。
【0104】
1H−NMR(CDCl3, 400 MHz)δ:
1.8 − 2.1(2H, m), 2.7 − 2.9(3H, m), 3.0(1H, m), 3.66 and 3.69 (total 3H, each s), 3.9 − 4.1(2H, m), 4.9 − 5.1(2H, m), 6.6 − 6.8(3H,m), 7.1 − 7.7(16H, m).
【0105】
[実施例5] (2S,4RS)−2−(p−ビフェニルメチル)−4−メトキシカルボニルー5−フェノキシ吉草酸
ベンジル (2S,4RS)−2−(p−ビフェニルメチル)−4−メトキシカルボニルー5−フェノキシバレラート 0.73 g をメタノール 10 ml に溶解し、10%のパラジウムを担持した活性炭触媒 0.09 g を加え、10気圧の水素圧下で 2時間撹拌した。反応混合物をセライトを通して濾過し、濾液を濃縮後、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフフィー( 溶出溶媒;クロロホルム: メタノール=10:1)にて精製し、目的物を含む分画を減圧濃縮することにより標記の化合物を無色油状物として 0.38 g 得た。
【0106】
1H−NMR(CDCl3, 400 MHz)δ:
1.8 − 2.3(2H, m), 2.8 − 3.2(4H, m), 3.66 and 3.67(total 3H, each s), 3.9 − 4.2(2H, m), 6.7 − 7.0(3H, m), 7.1 − 7.6 (11H, m).
【0107】
[実施例6] ベンジル (2S,4RS)−2−(p−ビフェニルメチル)−4−エトキシカルボニルー5−フェノキシバレラート
実施例4と同様の方法によって、ベンジル (2S)−2−(p−ビフェニルメチル)−4−フェノキシメチル−4−ペンテノアート 17 g から(2RS,4S)−4−ベンジルオキシカルボニルー5ー(p−ビフェニル)−2−フェノキシメチル吉草酸 19 g を得た後、これを塩化メチレン 100 ml に溶解した溶液に、4−ピロリジノピリジン 510 mg 、エタノール 1.75 g およびジシクロヘキシルカルボジイミド 7.82 g を加え、室温で 3時間撹拌した。反応液の不溶物をグラスフィルターを用いて濾過し、濾液を酢酸エチルで抽出し水洗した後、無水硫酸マグネシウムにて乾燥した。溶媒を減圧留去し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフフィー(溶出溶媒;酢酸エチル: n−キサン=1:7) にて精製し、目的物を含む分画を減圧濃縮することにより標記の化合物を淡黄色油状物として 7.15 g 得た。
【0108】
1H−NMR(CDCl3, 400 MHz)δ:
1.18 and 1.26(total 3H, each t, J = 7.3 Hz), 1.8 − 2.2(2H, m), 2.7 − 3.1(4H, m), 3.9 − 4.2(4H, m), 4.98 and 5.00 (total 1H, each d, J = 12.2 Hz), 5.05 and 5.06(total 1H, each d, J = 12.2 Hz), 6.7 − 6.9(3H, m), 7.1 − 7.7(16H, m).
【0109】
[実施例7] (2S,4RS)−2−(p−ビフェニルメチル)−4−エトキシカルボニルー5−フェノキシ吉草酸
ベンジル (2S,4RS)−2−(p−ビフェニルメチル)−4−エトキシカルボニルー5−フェノキシバレラート 7.15 g をエタノール 100 ml に溶解し、5 %のパラジウムを担持した活性炭触媒 0.7 g を加え、10気圧の水素圧下で2 時間撹拌した。反応混合物をセライトを通して濾過し、濾液を濃縮後、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフフィー(溶出溶媒;クロロホルム: メタノール=10:1)にて精製し、目的物を含む分画を減圧濃縮することにより標記の化合物を無色油状物として 2.64 g を得た。
【0110】
1H−NMR(CDCl3, 400 MHz)δ:
1.19 and 1.22(total 3H, each t, J = 7.3 Hz), 1.9 − 2.0(2H, m), 2.7 − 3.1(4H, m), 4.0 − 4.2(4H, m), 6.7 − 7.0(3H, m), 7.2 − 7.6(16H, m).
【0111】
[実施例8] N−[(2S,4RS)−2−(p−ビフェニルメチル)−4−メトキシカルボニルー5−フェノキシバレリル] グリシン ベンジル エステル
(2S,4RS)−2−(p−ビフェニルメチル)−4−メトキシカルボニルー5−フェノキシ吉草酸 0.38 g を塩化メチレン 10 ml に溶解した溶液に、グリシン ベンジル
エステル p−トルエンスルホン酸塩 0.31 g 、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール 0.125 g および N−メチルモルホリン 0.3 ml を加えた。ついで、氷冷下 1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル) カルボジイミド塩酸塩 0.35 g を加え、室温に戻し4 時間撹拌した。反応液を水洗し、2N塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液の順にで洗浄し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥した後、溶媒を減圧留去し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー( 溶出溶媒;酢酸エチル: n−ヘキサン=1:3) にて精製し、目的物を含む分画を減圧濃縮することにより標記の化合物を無色油状物として 0.45 g 得た。
【0112】
1H−NMR(CDCl3, 400 MHz)δ:
1.8 − 2.1(2H, m), 2.6(1H, m), 2.8(1H, m), 3.0(2H, m), 3.70 and 3.71(total 1H, each s), 3.8 − 4.2(4H, m), 5.12(2H, s), 5.95 and 6.07(total 1H, each t, J = 5 Hz), 6.8 − 7.0 (3H, m), 7.1 − 7.6(16H, m).
【0113】
[実施例9] N−[(2S)−2−(p−ビフェニルメチル)−4−カルボキシー5−フェノキシバレリル]グリシン
N−[(2S,4RS)−2−(p−ビフェニルメチル)−4−メトキシカルボニルー5−フェノキシバレリル] グリシン ベンジル エステル 1.08 g を塩化メチレン 20 ml に溶解した溶液に、塩化アルミニウム 1.04 g およびジメチルスルフィド 5 ml を加え、室温で10時間撹拌した。反応液に1N塩酸を加え、酢酸エチルで抽出し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥した後、溶媒を減圧留去した。残留物を高速液体クロマトグラフィー( カラム: センシューパック ODS−5251−SH 20 φ× 250 mm ;溶媒: 55% アセトニトリル;流速:4 ml/min)にて精製し、溶出時間 13分の分画を減圧濃縮することにより標記の化合物(異性体A )0.15 gを白色結晶として得た。また溶出時間 15.6分の分画を減圧濃縮することにより、標記の化合物(異性体B)0.46 g を白色結晶として得た。
【0114】
異性体A: 融点 78−80℃, [α]D + 22.8 (c=1.0, メタノール).
1H−NMR(CD3OD, 400 MHz)δ:
1.9(2H, m), 2.7 − 3.0(4H, m), 3.72(1H, d.d, J = 17.6 and 8.3 Hz), 3.90(1H, d.d, J = 17.6 and 7.8 Hz), 4.0 − 4.2(2H, m), 6.8 − 7.0(3H, m), 7.1 − 7.6(11H, m).
異性体B: 融点 84−86℃, [α]D + 26.7 (c=0.97, メタノール).
1H−NMR(CD3OD, 400 MHz)δ:
1.95(2H, m), 2.8 − 3.0(4H, m), 3.75(1H, d, J = 17.6 Hz), 3.89(1H, d, J = 17.6 Hz), 4.08(2H, m), 6.8 − 7.0(3H, m), 7.1 − 7.6(11H, m).
【0115】
[実施例10] N−[(2S)−2−(p−ビフェニルメチル)−4−メトキシカルボニルー5−フェノキシバレリル]−L−アラニン ベンジル エステル
実施例8と同様の方法で(2S,4RS)−2−(p−ビフェニルメチル)−4−メトキシカルボニルー5−フェノキシ吉草酸 1.0 g と L−アラニン ベンジル エステル p−トルエンスルホン酸塩 0.84 g を縮合させた後、生成物をシリカゲル カラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:塩化メチレン)にて精製し、目的物を含む分画を減圧濃縮することにより、最初に溶出した分画から標記の化合物(異性体A)を無色アメ状物として 0.22 g 得た。さらに後から溶出した分画から粗製の異性体Bを無色アメ状物として 0.55 g 得た。
異性体A: [α]D +17.0 (c=1.0, 塩化メチレン).
1H−NMR(CDCl3, 400 MHz)δ:
1.37(3H, d, J = 6.9 Hz), 1.8 − 2.1(2H, m), 2.4 − 2.6(1H, m), 2.73(1H, d,d, J = 13.7 and 6.3 Hz), 2.8 − 3.0(1H, m), 3.00(1H, d,d, J = 13.7 and 7.3 Hz), 3.70(3H, s), 3.9 − 4.2(2H, m), 4.54(1H, q, J = 7.3 Hz), 5.03(1H, d, J = 12.2 Hz), 5.07(1H, d, J = 12.7 Hz), 6.08(1H, d, J = 6.8 Hz), 6.85(2H, d, J = 8.8 Hz), 6.94(1H, t, J = 7.3 Hz),
7.1 − 7.6(11H, m).
【0116】
[実施例11] N−[(2S)−2−(p−ビフェニルメチル)−4−カルボキシー5−フェノキシバレリル]ーL−アラニン
A) 実施例9と同様に N−[(2S)−2−(p−ビフェニルメチル)−4−メトキシカルボニルー5−フェノキシバレリル]−L−アラニン ベンジル エステル(異性体A) 0.22 g を反応させた後、高速液体クロマトグラフィー( カラム: センシューパック ODS−6251−SH 30 φ× 250 mm ;溶媒:58%アセトニトリル;流速:10 ml/min) にて精製し、溶出時間29.2分の分画を減圧濃縮することにより標記の化合物(異性体B)を白色泡状物として 0.13 g 得た。
[α]D +13.7 (c=0.97, メタノール).
1H−NMR(CD3OD, 400 MHz)δ:
1.36(2H, d, J = 7.3 Hz), 1.8 − 2.0(2H, m), 2.73(1H, d,d, J = 12.7 and 7.3 Hz), 2.6 − 2.9(2H, m), 3.04(1H, d,d, J = 12.7 and 6.3 Hz), 4.0 − 4.2(2H, m), 4.35(1H, q, J = 7.3Hz), 6.87(2H, d, J = 8.3 Hz), 6.90(1H, t, J = 8.3 Hz), 7.1 − 7.6(11H, m).
【0117】
B) 実施例9と同様の方法によって、N−[(2S)−2−(p−ビフェニルメチル)−4−メトキシカルボニルー5−フェノキシバレリル]−L−アラニン ベンジル エステル(粗製の異性体B)0.55 g を反応させた後、高速液体クロマトグラフィー( カラム: センシューパック ODS−6251−SH 30 φ× 250 mm ;溶媒:58%アセトニトリル;流速:10 ml/min) にて精製し、溶出時間28.3分の分画を減圧濃縮することにより標記の化合物( 異性体A:B=3:1 ;異性体比はNMRの積分比より計算した。)を白色泡状物として 0.16 g 得た。
【0118】
1H−NMR(CD3OD, 400 MHz)δ:
1.36(2H, d, J = 7.3 Hz), 1.8 − 2.0(5/4H, m), 2.0 − 2.2(3/4H, m), 2.7 − 2.9(3H, m), 2.9 − 3.1(1H, m), 3.9 − 4.2(2H, m), 4.3 − 4.4(1H, m), 6.84(2H, d, J = 8.3 Hz), 6.90(1H, t, J = 8.1 Hz), 7.1 − 7.6(11H, m).
【0119】
[実施例12] N−[(2S,4RS)−2−(p−ビフェニルメチル)−4−カルボキシー5−フェノキシバレリル]ーL−メチオニン
実施例8と同様の方法で(2S,4RS)−2−(p−ビフェニルメチル)−4−メトキシカルボニルー5−フェノキシ吉草酸 2.0 g と L−メチオニン メチル エステル 塩酸塩 0.96 g を縮合させ、無色油状のN−[(2S,4RS)−2−(p−ビフェニルメチル)−4−メトキシカルボニルー5−フェノキシバレリル]−L−メチオニン メチル エステル 2.60 g得た。
【0120】
この化合物は、さらに実施例9で示された方法で処理した後、高速液体クロマトグラフィー( カラム: センシューパック ODS−6251−SH 30 φ× 250 mm ;溶媒:58%アセトニトリル;流速:10 ml/min) にて精製し、溶出時間37.6分の分画を減圧濃縮することにより標記の化合物を白色泡状物として 0.71 g 得た。
【0121】
1H−NMR(CD3OD, 400 MHz)δ:
1.8 − 2.2(4H, m), 2.01 and 2.02(total 3H, each s), 2.3 − 2.6(2H, m), 2.7 − 2.9(3H, m), 2.9 − 3.1(1H, m), 4.0 − 4.2(2H, m), 4.44 and 4.49(total 1H, each d.d, J = 9.3 and 4.4 Hz), 6.8 − 7.0(3H, m), 7.1 − 7.6(11H, m).
【0122】
[実施例13] N−[(2S,4RS)−2−(p−ビフェニルメチル)−4−エトキシカルボニルー5−フェノキシバレリル] グリシン ベンジル エステル
実施例8と同様の方法によって、(2S,4RS)−2−(p−ビフェニルメチル)−4−エトキシカルボニルー5−フェノキシ吉草酸 2.64 g とグリシン ベンジル エステル p−トルエンスルホン酸塩 2.06 g とを縮合させ、標記の化合物を無色油状物として 3.13 g 得た。
【0123】
1H−NMR(CDCl3, 400 MHz)δ:
1.20 and 1.25(total 3H, each t, J = 7.3 Hz), 1.8 − 2.0(2H, m), 2.5 − 3.1(4H, m), 3.8 − 4.3(6H, m), 5.12(2H, s), 6.8 − 7.0(3H, m), 7.1 − 7.6(16H, m).
【0124】
[実施例14] N−[(2S,4RS)−2−(p−ビフェニルメチル)−4−エトキシカルボニルー5−フェノキシバレリル] グリシン
N−[(2S,4RS)−2−(p−ビフェニルメチル)−4−エトキシカルボニルー5−フェノキシバレリル] グリシン ベンジル エステル 3.13 g をメタノール 20 ml に溶解し、5 %のパラジウムを担持した活性炭触媒 0.3 g を加え、10気圧の水素圧下で2 時間撹拌した。反応混合物をセライトを通して濾過し、濾液を濃縮後、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフフィー( 溶出溶媒;クロロホルム: メタノール=10:1)にて精製し、目的物を含む分画を減圧濃縮することにより標記の化合物を白色結晶として 1.69 g 得た。
【0125】
1H−NMR(CDCl3, 400 MHz)δ:
1.2(3H, m), 1.5 − 1.9(2H, m), 2.5 − 3.0(4H, m), 3.8 − 4.2(6H, m), 6.8 − 7.0(3H, m), 7.1 − 7.6(11H, m).
【0126】
[実施例15] メチル (2RS,4S)−5ー(p−ビフェニル)−4−[N−[1H−1−(p−メトキシベンジル)ー5ーテトラゾリル] メチル] カルバモイル−2−フェノキシメチルバレラート
実施例8の方法によって、(2S,4RS)−2−(p−ビフェニルメチル)−4−メトキシカルボニルー5−フェノキシ吉草酸 0.5 g と 5−アミノメチルー1H−1−(p−メトキシベンジル) テトラゾール 塩酸塩 0.31 g とを縮合し、標記の化合物を無色油状物として 0.55 g 得た。
【0127】
1H−NMR(CDCL3, 400 MHz)δ:
1.8 − 2.2(2H, m), 2.6 − 3.0(4H, m), 3.65(3H, s), 3.77(3H, s), 4.0 − 4.2(2H, m), 4.4 − 4.6(2H, m), 5.4(2H, s), 6.8 − 7.6(18H, m).
【0128】
[実施例16] メチル (2RS,4S)−5ー(p−ビフェニル)−4−[N−[(5ーテトラゾリル)
メチル]カルバモイル]−2−フェノキシメチルバレラート
メチル (2RS,4S)−5ー(p−ビフェニル)−4−[N−[1H−1−(p−メトキシベンジル)ー5ーテトラゾリル]メチル] カルバモイル−2−フェノキシメチルバレラート 0.53 g をトリフルオロ酢酸 6 ml に溶解した溶液を60℃で2 時間撹拌した後、溶媒を減圧下留去した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒;クロロホルム:メタノール=10:1)にて精製し、目的物を含む分画を減圧濃縮することにより標記の化合物を無色油状物として 0.43 g を得た。
【0129】
1H−NMR(CDCL3, 400 MHz)δ:
1.8 − 2.2(2H, m), 2.5 − 3.0(4H, m), 3.70(3H,s), 3.9 − 4.2(2H,m), 4.4 − 4.7(2H, m), 6.6 − 7.6(14H, m).
【0130】
[実施例17] (2RS,4S)−5ー(p−ビフェニル)−4−[N−[(5ーテトラゾリル)メチル] カルバモイル]−2−フェノキシメチル吉草酸
メチル (2RS、4S)−5ー(p−ビフェニル)ー(4S)−4−[N−[(5ーテトラゾリル)メチル]カルバモイル]−2−フェノキシメチルバレラート 0.43 g を塩化メチレン 5 ml に溶解した溶液に、ジメチルスルフィド 2 ml および塩化アルミニウム 0.6 g を加え12時間室温で撹拌した。反応液に1N塩酸を加え、酢酸エチルで抽出し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥した後、溶媒を減圧留去した。残留物を高速液体クロマトグラフィー( カラム: センシューパック ODS−5251−SH 20 φ× 250 mm ;溶媒:55%アセトニトリル;流速:4 ml/min)にて精製し、溶出時間14分の分画を減圧濃縮することにより標記の化合物を白色結晶として 0.11 g を得た。
【0131】
1H−NMR(CD3OD, 400 MHz)δ:
1.7 − 1.9(2H, m), 3.5 − 4.0(4H, m), 3.8 − 4.1(2H, m), 4.5(2H, m), 6.6 − 7.6(14H, m).
【0132】
[実施例18] 2ー[1H−1ー(p−メトキシベンジル)ー5ーテトラゾリル]アセトヒドラジド
エチル 2ー[1H−1ー(p−メトキシベンジル)ー5ーテトラゾリル]アセタート 2.5 g エタノール 15 ml に溶解した溶液にヒドラジン一水和物 2.5 ml を加え、室温で 3日間撹拌した。反応液から析出した結晶を濾取し、エタノールから再結晶すると標記の化合物を融点 143−144℃の白色リン片状晶として 1.68 g 得た。
【0133】
1H−NMR(CDCl3, 400 MHz)δ:
1.60(1H, broad s), 3.73(2H, s), 3.80(3H, s), 3.85(1H, broad s), 5.60(2H, s), 6.89(2H, d, J = 8.8 Hz), 7.20(2H, d, J = 8.8 Hz), 7.99(1H, broad s).
【0134】
[実施例19] 5−イソシアナトメチルー1H−1ー(p−メトキシベンジル)テトラゾール
2ー[1H−1ー(p−メトキシベンジル)ー5ーテトラゾリル]アセトヒドラジド 3.07 g を1N塩酸 20 ml に懸濁した溶液に、氷ー塩で冷却下に亜硝酸ナトリウム 0.81 g の水溶液 10 ml を滴下した。滴下終了後、20分間撹拌し、トルエンと酢酸エチルの混合溶媒(混合比1:2)を加え、さらに20分間撹拌を継続した。有機層を分離し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥後、溶媒を約1/3に減圧濃縮し、2時間加熱還流した。反応液の溶媒を減圧留去すると、標記の化合物を淡黄色油状物として 3.2 g得た。
【0135】
1H−NMR(CDCl3, 400 MHz)δ:
3.81(3H, s), 4.59(2H, s), 5.56(2H, s), 6.91(2H, d, J = 8.8 Hz), 7.20(2H, d, J = 8.8 Hz).
【0136】
[実施例20] 5−アミノメチルー1H−1−(p−メトキシベンジル)テトラゾール塩酸塩
水酸化ナトリウム 1.5 g の水溶液 15 ml に 5−イソシアナトメチルー1H−1ー(p−メトキシベンジル)テトラゾール 3.2 g を加え、さらにメタノール 10 mlを加えた後、50−60℃で1 時間撹拌した。反応液を減圧下濃縮し、濃縮液を濃塩酸で酸性にして30分撹拌した。ついで水酸化ナトリウム水溶液でアルカリ性にして、酢酸エチルで抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧留去し、残留物をエーテルに溶解し、10% 塩酸−メタノールを加え、再度減圧下溶媒を留去した。残留物に酢酸エチルを加え析出する結晶を濾取し、標記の化合物を融点 207−209℃の淡黄色プリズム晶として 1.29 g 得た。
【0137】
1H−NMR(DMSO−d6, 400 MHz)δ:
3.74(3H, s), 4.48(2H, s), 5.67(2H, s), 6.95(2H, d, J = 8.3 Hz), 7.34(2H, d, J = 8.3 Hz).
【0138】
[実施例21」 N−[(2S)−2−(p−ビフェニルメチル)−4−エトキシカルボニル−5−フェノキシバレリル]グリシン ベンジル エステル
実施例8と同様の方法で (2S,4RS)−2−(p−ビフェニルメチル)−4−エトキシカルボニル−5−フェノキシ吉草酸 1.72 g とグリシン ベンジル エステルP−トルエンスルホン酸塩 1.35 g を縮合させた後、生成物をシリカゲル カラムクロマトグラフィー(溶出溶媒;塩化メチレン:メタノール=100:2)にて生成し、目的物を含む分画を減圧濃縮することにより、最初に溶出した分画から標記の化合物(異性体A)を無色アメ状物として 0.61 gを、さらに後から溶出した分画から標記の化合物(異性体B)を無色アメ状物として 0.53 g 得た。
【0139】
異性体A:
1H−NMR(CDCl3, 400 MHz)δ:
1.21(3H, t, J = 7.36 Hz), 1.8 − 2.1(2H, m), 2.6(1H, m), 2.77(1H, d.d, J = 13.7 and 6.3 Hz), 2.9 −3.1(2H, m), 3.89(1H, d.d, J = 18 and 5 Hz), 4.0(1H, m), 4.0 − 4.3(4H, m), 5.13(2H, s), 6.13(1H, t, J = 5 Hz), 6.8 − 7.0(3H, m), 7.1 − 7.6(16H, m).
【0140】
異性体B:
1H−NMR(CDCl3, 400 MHz)δ:
1.25(3H, t, J = 7.3 Hz), 1.9(1H, m), 2.2(1H, m), 2.6(1H, m), 2.83(1H, d.d, J = 13.7 and 5.9 Hz), 2.9 − 3.1(2H, m), 3.87(1H, d.d, J = 18.6 and 4.9 Hz), 3.9 − 4.2(5H, m), 5.11(2H, s), 5.98(1H, t, J = 5Hz), 6.8 − 7.0(3H, m), 7.2 − 7.6(16H, m).
【0141】
[実施例22」 N−[(2S)−2−(p−ビフェニルメチル)−4−エトキシカルボニル−5−フェノキシバレリル]グリシン
A) N−[(2S)−2−(P−ビフェニルメチル)−4−エトキシカルボニル−5−フェノキシバレリル]グリシン ベンジル エステル(異性体A)0.71 g を酢酸エチル 10 ml に溶解し、10 %のパラジウムを担持した活性炭触媒 0.1 g を加え、常圧の水素存在下で15時間撹拌した。反応混合物をセライトを通して濾過し、濾液を減圧濃縮することにより標記の化合物(異性体A)を白色泡状物として 0.56 g 得た。
[α]D +12.6 (c=0.1, クロロホルム).
1H−NMR(CDCl3, 400 MHz)δ:
1.18(3H, t, J = 7.3 Hz), 1.8 − 2.1(2H, m), 2.7(1H, m), 2.76(1H, d.d, J = 13.7 and 6.4 Hz), 2.9 − 3.1(2H, m), 3.86(1H, d.d, J = 18.5 and 4.8 Hz), 4.0 − 4.2(5H, m), 6.28(1H, t, J = 5 Hz), 6.8 − 7.0(3H, m), 7.2 −7.6(16H, m).
【0142】
B) 同様の方法でN−[(2S)−2−(P−ビフェニルメチル)−4−エトキシカルボニル−5−フェノキシバレリル]グリシン ベンジル エステル(異性体B)0.52 g から標記の化合物(異性体B)を融点 155 − 156℃の白色結晶として 0.38 g 得た。
[α]D +21.1 (c=0.1, クロロホルム).
1H−NMR(CDCl3, 400 MHz)δ:
1.23(3H, t, J = 7.3 Hz), 1.8 −2.0(1H, m), 2.1 − 2.3(1H, m) 2.6 − 2.7(1H, m), 2.82(1H, d.d, J = 13.6 and 5.8 Hz), 2.9 − 3.1(2H, m), 3.85(1H, d.d, J = 18.6 and 4.9 Hz), 3.97(1H, d.d, J = 18.6 and 5.4 Hz), 4.0 − 4.2(4H, m), 6.19(1H, t, J = 4.9 Hz), 6.8 − 7.0(3H, m), 7.2 − 7.6(16H, m).
【0143】
[実施例23] N−[(2S)−2−(p−ビフェニルメチル)−4−メトキシカルボニル−5−フェノキシバレリル]−β−アラニン ベンジル エステル
実施例8と同様の方法で (2S,4RS)−2−(p−ビフェニルメチル)−4−メトキシカルボニル−5−フェノキシ吉草酸 1.0 g とβ−アラニン ベンジル エステル P−トルエンスルホン酸塩 0.84 g を縮合させた後、生成物をシリカゲル カラムクロマトグラフィー(溶出溶媒;塩化メチレン:メタノール=200:1)にて精製し、目的物を含む分画を減圧濃縮することにより、最初に溶出した分画から標記の化合物(異性体A)を無色アメ状物として 0.46 gを、さらに後から溶出した分画から標記の化合物(異性体B)を無色アメ状物として 0.43 g 得た。
【0144】
異性体A:
[α]D +4.39 (c=1.0, 塩化メチレン).
1H−NMR(CDCl3, 400 MHz)δ:
1.9(1H, m), 2.06(1H, m), 2.3(1H, m), 2.3 − 2.5(2H, m), 2.76(1H, d.d, J = 13.7 and 5.4 Hz), 2.8 − 2.9(1H, m), 2.94(1H, d.d, J = 13.7 and 9.3 Hz), 3.3 − 3.4(1H, m), 3.4 − 3.5(1H, m), 3.70(3H, s), 4.03(1H, d.d, J = 9.3 and 5.4 Hz), 4.12(1H, d.d, J = 9.3 and 7.8 Hz), 4.85(1H, d, J = 12.2 Hz), 5.03(1H, d, J = 12.7 Hz), 5.95(1H, t, J = 6.3 Hz), 6.86(2H, d, J = 7.8 Hz), 6.94(1H, t, J = 7.3 Hz),
7.1 − 7.6(13H, m).
【0145】
[実施例24] N−[(2S)−2−(p−ビフェニルメチル)−4−カルボキシ−5−フェノキシバレリル]−β−アラニン
A) 実施例9と同様に N−[(2S)−2−(p−ビフェニルメチル)−4−メトキシカルボニル−5−フェノキシバレリル]−β−アラニン ベンジル エステル(異性体A) 0.42 gを反応させた後得られた結晶をアセトニトリルから再結晶し、標記の化合物(異性体B)を白色結晶として 0.13 g 得た。
融点 110−112℃, [α]D + 29.0 (c=1.0, メタノール).
1H−NMR(DMSO−d6, 400 MHz)δ:
1.6 − 1.9(2H, m), 2.2 − 2.4(2H, m), 2.5 − 2.7(3H, m), 2.86(1H, d.d, J = 12.7 and 6.3 Hz), 3.1 − 3.3(2H, m), 4.01(2H, d, J = 5.9 Hz), 6.88(2H, d, J = 8.3 Hz), 6.92(1H, t, J = 7.3 Hz), 7.2 − 7.7(11H, m), 7.97(1H, t, J = 5.4 Hz).
【0146】
B) 実施例9と同様の方法によって、 N−[(2S)−2−(p−ビフェニルメチル)−4−メトキシカルボニル−5−フェノキシバレリル]−β−アラニン ベンジル エステル(粗製の異性体B) 0.43 g を反応させた後、高速液体クロマトグラフィー(カラム:センシューパック ODS−6251−SH 30 φ × 250 mm; 溶媒:56 % アセトニロリル;流速:10 ml/min)にて精製し、溶出時間 28.7 分の分画を減圧濃縮することにより標記の化合物(異性体A)を白色泡状物として 0.15 g 得た。
[α]D + 13.3 (c=1.0, メタノール).
1H−NMR(DMSO−d6, 400 MHz)δ:
1.66(1H, m), 1.92(1H, m), 2.1 − 2.3(2H, m), 2.5 − 2.7(3H, m), 2.83(1H, d.d, J = 12.7 and 8.3 Hz), 3.1 − 3.3(2H, m), 4.05(1H, d.d, J = 9.3 and 7.3 Hz), 4.15(1H, d.d, J = 9.3 and 4.4 Hz), 6.87(2H, d, J = 7.8 Hz), 6.92(1H, t, J = 7.3 Hz), 7.2 − 7.7(11H, m), 8.04(1H, t, J = 5.4 Hz).
【0147】
[実施例25]
中性エンドペプチダーゼ(EC 3.4.24.11)に対する阻害活性の測定法
測定は、フロレンチンらの方法(フロレンチン(Florentin) ら、Anal. Biochem., 141, 62, 1984年)に準拠し行った。
【0148】
SD系雄性ラット(300 − 350 g) をネンブタール(40 mg/kg, i.p.)で麻酔後に腎臓を摘出し、腎臓の重量の2倍(V/W) の冷却した 50 mM トリスー 塩酸(pH 7.4)緩衝液を加え、ポリトロン(KINEMATICA 社製) を用いてホモジナイズした。
【0149】
これを最終的に10倍量(V/W、腎重量の数値の10倍、たとえば腎臓が 5 gであれば、50 ml である。) になる様に上記緩衝液を加えて調整した。この様にして調整した混合液を遠心(1000G、5 分、4℃)し、これによって得られた上清をさらに遠心(60000G 、60分、4℃)して沈渣を得た。この沈渣を 50 mM トリスー塩酸(pH 7.4)緩衝液で再び懸濁し、これを中性エンドペプチダーゼ酵素源として用いた。
【0150】
中性エンドペプチダーゼの合成基質(ダンシルーD−アラニルーグリシルーp−ニトロフェニルアラニルーグリシン)50 μM および被検化合物、そしてアンジオテンシン変換酵素およびアミノペプチダーゼの活性を抑制するために各々の阻害剤(カプトプリル 0.5 μM 、ピューロマイシン 0.5 μM)を添加し、37℃で15分間予備インキュベートした後、前述した中性エンドペプチダーゼ酵素源を加え、37℃で30分間インキュベートした。反応は、100℃ で 5分間加熱して停止した。反応停止後、50 mM トリスー 塩酸(pH 7.4)緩衝液を加え遠心(5000G、30分、室温) し、その上清を蛍光光度計( λex : 355 nm 、λex : 538 nm)にて測定した。検体の効果は、基質の加水分解を50% 抑制する濃度(IC50)として示すことができる。
【0151】
中性エンドペプチダーゼに対する阻害活性の対照として、阻害薬として知られているUK−69578(Danilewiczら, Biochem. Biophys. Res. Commun., 164, 58, 1989年)も同様に測定した。
【0152】
本発明化合物の測定結果を表1に示す。
【0153】
【表1】
【0154】
【発明の効果】
本発明の化合物は、強力な中性エンドペプチダーゼ阻害活性を有する。したがって、本発明の化合物およびその塩は心臓血管性疾患や腎疾患用薬として期待される。
Claims (10)
- 式(II)
Yは、
1. -COOR3 または
2. 基
R1およびR4は請求項1の定義に同じであり、
mは0、1または2の整数を表し、
R2およびR3は独立して
1. 水素原子、
2. アルキル基、
3. アリールアルキル基、
4. アリール基、
5. 基、
6. 基、
8. 基、
9. 基、
10. 基、
によって表される化合物またはその塩。 - 式(III)
R1は請求項1の定義に同じであり、
mは0、1または2の整数を表し、
R11およびR12は独立して
1. 水素原子、
2. アルキル基、
3. アリールアルキル基または
4. アリール基、
5. 基、
6. 基、
8. 基、
9. 基、
10. 基、
によって表される化合物またはその塩。 - N−[(2S)−2−(p−ビフェニルメチル)−4−カルボキシ−5−フェノキシバレリル]グリシン、そのモノエステル、そのジエステルまたはそれらの塩。
- N−[(2S,4R)−2−(p−ビフェニルメチル)−4−カルボキシ−5−フェノキシバレリル]グリシン、そのモノエステル、そのジエステルまたはそれらの塩。
- N−[(2S,4S)−2−(p−ビフェニルメチル)−4−カルボキシ−5−フェノキシバレリル]グリシン、そのモノエステル、そのジエステルまたはそれらの塩。
- N−[(2S)−2−(p−ビフェニルメチル)−4−カルボキシ−5−フェノキシバレリル]−L−アラニン、そのモノエステル、そのジエステルまたはそれらの塩。
- N−[(2S)−2−(p−ビフェニルメチル)−4−エトキシカルボニル−5−フェノキシバレリル]グリシンまたはその塩。
- N−[(2S,4R)−2−(p−ビフェニルメチル)−4−エトキシカルボニル−5−フェノキシバレリル]グリシンまたはその塩。
- N−[(2S,4S)−2−(p−ビフェニルメチル)−4−エトキシカルボニル−5−フェノキシバレリル]グリシンまたはその塩。
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