JP3573993B2 - インクジェットプリンタのキャリッジ駆動機構 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
この発明は、インクヘッドから吐出したインクによって用紙上に対する画像形成を行うインクジェットプリンタに関し、特に、インクカートリッジ及びインクヘッドを搭載したキャリッジを用紙表面に対向して主走査方向に移動させるキャリッジ駆動機構に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、インクジェットプリンタでは、インクカートリッジ及びインクヘッドを搭載したキャリッジを用紙の表面に対して主走査方向に往復移動させ、この間にインクカートリッジ内のインクをインクヘッドから用紙の表面に吐出させることにより印刷処理を行う。このようなインクジェットプリンタにおいて、キャリッジを主走査方向に往復移動させるための駆動機構として、従来より、キャリッジの主走査方向に直交する副走査方向の片側に、スクリューシャフト、又は、タイミングベルトを介して駆動力を伝達するようにした所謂片側駆動方式の駆動機構が用いられている。
【0003】
スクリューシャフトを用いた片側駆動方式の駆動機構は、例えば、特開平6−24001号公報に開示されている。即ち、図8に示すように、主走査方向に平行に軸支したスクリューシャフト81をキャリッジ82の主走査方向に直交する方向の一方の側面近傍に配置した貫通部材83に貫通させるとともに、主走査方向に平行に固定されたガイドシャフト84をキャリッジ82の主走査方向に直交する方向の他方の側面近傍に貫通させ、画像データに基づくインクヘッドの駆動開始後に、用紙の副走査方向への搬送タイミングに同期してスクリューシャフト81を回転せさることにより、キャリッジ82を主走査方向に移動させるようにしている。
【0004】
また、タイミングベルトを用いた片側駆動方式の駆動機構は、図9に示すように、プーリ91a,91bを介して主走査方向に平行に張架したタイミングベルト92の一部をキャリッジ93の一端に係止するとともに、主走査方向に平行に固定された2本のガイドシャフト94,95の一方をキャリッジ93の一端側に貫通させ、他方をキャリッジ93の他端側に当接させ、タイミングベルト92を張架している少なくとも一方のプーリ91aをモータ96によって駆動することにより、キャリッジ93を主走査方向に移動させるようにしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の片側駆動方式の駆動機構では、キャリッジにおける副走査方向の片側にのみ供給される駆動力が、主走査方向を含む平面における回転力としてキャリッジに作用し、キャリッジに対する駆動力の作用方向が移動方向である主走査方向から偏向する結果、キャリッジの移動時においてガイドシャフト等の主走査方向に平行に配置された部材との摩擦抵抗が大きくなり、キャリッジを円滑に移動させることができなくなり、駆動機構が早期に磨耗するだけでなく、記録用紙における印刷位置の重複や欠落によって画質の低下を生じる問題があった。
【0006】
また、インクヘッドに配置されたノズル数が100〜300列程度の比較的少数である場合には、インクカートリッジ及びインクヘッドを含むキャリッジの重量はさほど大きくならず、新品のインクカートリッジの重量と交換直前のインクカートリッジの重量との差はあまり大きくならないため、キャリッジの移動時に作用する摩擦抵抗はインクカートリッジの使用期間の全期間わたって大きく変化することはないが、印刷処理の高速化及び画質の高解像度化にともなってインクヘッドに配置されるノズル数が1000〜2000列程度に増加すると、インクヘッドの構成が複雑化するだけでなく、単位印刷時間当りのインク消費量も増加するためにキャリッジに搭載すべきインクカートリッジの容量も相対的に増量する必要が生じ、新品のインクカートリッジの重量と交換直前のインクカートリッジの重量との差が大きくなり、インクカートリッジの使用開始直後と交換直前とでキャリッジに作用する摩擦抵抗が大きく変化し、インクカートリッジの使用期間の全期間にわたってキャリッジを安定した状態で円滑に移動させることができなくなり、上記の駆動機構の磨耗や画質の低下の問題は大きな問題となる。
【0007】
この発明の目的は、キャリッジにおける副走査方向の両端部に方向及び大きさが同一の駆動力を同時に作用させることにより、主走査方向を含む平面における回転方向の力がキャリッジに作用することがないようにし、キャリッジに搭載すべきインクカートリッジの容量が増加した場合にも、インクカートリッジの使用期間の全期間にわたって安定した状態で円滑にキャリッジを移動させることができ、早期に磨耗を生じたり、印刷画質の劣化を生じることのないインクジェットプリンタのキャリッジ駆動機構を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この発明は、上記の課題を解決するための手段として、以下の構成を備えている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この発明は、上記の課題を解決するための手段として、以下の構成を備えている。
(1) インクカートリッジ及びインクヘッドを搭載したキャリッジにおける副走査方向の一方の端部近傍に主走査方向に平行なガイド軸を貫通させるとともに他方の端部近傍に主走査方向に平行なガイド軸を当接させ、該キャリッジにおける副走査方向の両端部のそれぞれに方向及び大きさが同一の主走査方向の駆動力を同一のタイミングで伝達する伝達部材を設けたインクジェットプリンタのキャリッジ駆動機構であって、
前記伝達部材は、キャリッジの副走査方向の両端部のそれぞれに回転自在に配置された駆動プーリ及び従動プーリ、駆動プーリと従動プーリとの間に張架されたタイミングベルト、一方の駆動プーリと他方の駆動プーリとを同軸上に連結する第1の連結シャフト、一方の従動プーリと他方の従動プーリとを同軸上に連結する第2の連結シャフト、並びに、一方の駆動プーリを回転軸に固定して正逆両方向に回転する走査用モータからなり、
前記第1の連結シャフトを介して一方の駆動プーリの回転を他方の駆動プーリに伝達し、前記第2の連結シャフトを介して一方の従動プーリの回転を他方の従動プーリに伝達することを特徴とする。
この発明においては、主走査方向に移動するキャリッジの副走査方向の両端部のそれぞれに方向及び大きさが同一の駆動力が同一のタイミングで供給される。したがって、キャリッジに供給される駆動力が主走査方向を含む平面における回転力としてキャリッジに作用することがなく、キャリッジの移動方向が主走査方向に対して偏向することがない。また、第2の連結シャフトによって一方の従動プーリと他方の従動プーリとが同軸上に連結されている。したがって、2本のタイミングベルトの回転動作が確実に同期し、キャリッジの副走査方向の両端部のそれぞれに供給する駆動力の大きさの同一性がより確実に維持される。
【0010】
インクジェットプリンタの駆動機構1は、キャリッジ2を主走査方向である矢印A及びB方向に往復移動させる。カラーインクジェットプリンタでは、キャリッジ2には、互いに異なる色のインクを収納した複数のインクカートリッジが同時に搭載される。駆動機構1には、2本のガイドシャフト11,12が、主走査方向に平行に固定されている。一方のガイドシャフト11はキャリッジ1の前面2aの近傍に貫通しており、他方のガイドシャフト12はキャリッジ1の底面における背面2bの近傍に当接している。
【0011】
また、駆動機構1には、2本のタイミングベルト3,4が、主走査方向に平行に配置されている。一方のタイミングベルト3は駆動プーリ5a及び従動プーリ5bに張架されており、上側の水平部分の一部においてキャリッジ2の前面2aから突出した係止部2cに係止されている。他方のタイミングベルト4は駆動プーリ6a及び従動プーリ6bに張架されており、上側の水平部分の一部においてキャリッジ2の背面2bから突出した係止部2dに係止されている。
【0012】
一方のタイミングベルト3を張架する駆動プーリ5aと他方のタイミングベルト4を張架する駆動プーリ6aとは、連結シャフト8a(第1の連結シャフト)を介して同軸上に連結されている。また、他方のタイミングベルト3を張架する従動プーリ5bと他方のタイミングベルト4を張架する従動プーリ6bとは、連結シャフト8b(第2の連結シャフト)を介して同軸上に連結されている。これらプーリ5a,5b,6a,6bは、同一の径にされている。駆動プーリ5aは、走査用モータ9の回転軸に固定されている。走査用モータ9の回転軸は、正逆両方向に回転する。
【0013】
以上の構成により、走査用モータ9が回転軸を正転させる方向に駆動されると、駆動プーリ5aが矢印C方向に正転し、一方のタイミングベルト3が上側の水平部分において矢印A方向に移動するように回転するとともに、従動プーリ5bも矢印C方向に回転する。駆動プーリ5a及び従動プーリ5bのそれぞれの矢印C方向の回転は連結シャフト8a及び8bを介して駆動プーリ6a及び従動プーリ6bのそれぞれに伝達されるため、他方のタイミングベルト4は一方のタイミングベルト3に同期して上側の水平部分において矢印A方向に移動するように回転する。
【0014】
これとは逆に、走査用モータ9が回転軸を逆転させる方向に駆動されると、駆動プーリ5aが矢印D方向に正転し、一方のタイミングベルト3が上側の水平部分において矢印B方向に移動するように回転するとともに、従動プーリ5bも矢印D方向に回転する。駆動プーリ5a及び従動プーリ5bのそれぞれの矢印D方向の回転は連結シャフト8a及び8bを介して駆動プーリ6a及び従動プーリ6bのそれぞれに伝達されるため、他方のタイミングベルト4は一方のタイミングベルト3に同期して上側の水平部分において矢印B方向に移動するように回転する。
【0015】
したがって、走査用モータ9の回転軸を正転又は逆転させることにより、2本のタイミングベルト3及び4が、上側の水平部分において矢印A方向又はB方向に移動するように同期して回転する。上述のように、2本のタイミングベルト3,4のそれぞれは、上側の水平部分の一部においてキャリッジ2の前面2aから突出した係止部2c、及び、背面2bから突出した係止部2dのそれぞれに係止している。このため、2本のタイミングベルト3及び4が同期して回転すると、キャリッジ2には主走査方向に直交する方向の両側において走査方向について同一方向及び同一の大きさの駆動力が供給され、キャリッジ2は主走査方向に往動又は復動する。
【0016】
このように、主走査方向に往動又は復動する際に、キャリッジ2には、2本のタイミングベルト3,4を介して移動方向(主走査方向)に直交する方向の両端部に方向及び大きさが同一の駆動力が供給されるため、この駆動力がキャリッジ2に対して移動方向を含む平面における回転力として作用することがない。したがって、キャリッジ2の移動方向が主走査方向から偏向することがなく、キャリッジ2とガイドシャフト11との摩擦抵抗が増加することもなく、キャリッジ2を円滑に移動させることができ、駆動機構1において早期に磨耗を生じたり、印刷画像の劣化を生じることがない。
【0017】
図2は、上記駆動機構を含むインクジェットプリンタにおける印刷処理時の動作手順を示すフローチャートである。インクジェットプリンタに対してコンピュータ等の外部装置から印刷要求が入力されると(s1)、図外の搬送部材を駆動して記録用紙を主走査方向に直交する副走方向に搬送する(s2)。この記録用紙の搬送により、記録用紙の表面における印刷開始位置が、キャリッジ2に搭載されたインクヘッドに対向する。この後、外部装置から入力された画像データを複数ライン毎にインクヘッドに送信し(s3,s4)、複数ライン分の画像データの送信が終了すると、走査用モータ9を正転方向に駆動する(s5)。これによってキャリッジ2は、図1に示す矢印A方向に往動する。これと同時に、インクヘッドを画像データに基づいて駆動し、記録用紙の表面に複数ライン分の画像を印刷する。
【0018】
s5における走査用モータ9の駆動は、キャリッジ2に搭載されたインクヘッドが画像データにおける主走査方向の終端に達するか、又は、キャリッジ2が予め固定的に定められた移動範囲の終端に達するまで、継続して行われる。記録用紙の表面に対する複数ライン分の画像の印刷が終了すると、走査用モータ9を逆転方向に駆動する(s6,s7)。これによってキャリッジ2は、図1に示す矢印B方向に復動する。これとともに、次の複数ラインの画像データが存在するか否かの判別を行い(s8)、次の複数ラインの画像データが存在する場合には、搬送部材を駆動して記録用紙を複数ライン分だけ搬送する(s9)。次の複数ラインの画像データが存在しない場合には、搬送部材を駆動して記録用紙を排紙トレイに排出して印刷処理を終了する(s10)。
【0019】
以上の処理によって、インクジェットプリンタの印刷処理時には、走査用モータ9の駆動によってキャリッジ2が主走査方向を往動する間に画像データに基づいてインクヘッドが駆動され、記録用紙の表面に画像が複数ライン毎に印刷される。この間において、キャリッジ2は、副走査方向の両端部に方向及び大きさが同一の駆動力の供給を受けることから、キャリッジ2に対して駆動力が主走査方向を含む平面における回転力として作用することがなく、ガイドシャフト11との間に生じる摩擦力が増加したり、ガイドシャフト11との間にがたつきを生じることがない。このため、インクヘッドによる印刷動作中においてキャリッジ2は常に円滑に走査方向に往動し、画像の部分的な欠落や色調の変化を生じることがなく、印刷された画質の劣化を生じることがない。
【0020】
また、走査用モータ9に作用する負荷はキャリッジ2に搭載されたインクカートリッジにおけるインク残量の変化にともなうキャリッジ2全体の重量の変化に応じて変化するが、この走査用モータ9の負荷の変化量はインクカートリッジの容量の増加にともなって増加する。即ち、インクカートリッジの容量が増加すると、新品のインクカートリッジとキャリッジ2における交換直前のインクカートリッジとの重量差が大きくなる。
【0021】
このように、インクカートリッジの重量差が増加した場合、従来のように、キャリッジの副走査方向の一端側にのみ駆動力を供給する構成では、図3に示すように、走査用モータに作用する負荷(図3では、走査用モータに作用する負荷を走査用モータに供給される電流値で表している。)の差はさらに大きくなる。これは、キャリッジの重量が増加するにともなって、キャリッジの移動方向の誤差によるガイドシャフト等との摩擦抵抗が増加するためであると考えられる。このため、従来のキャリッジの駆動機構では、キャリッジに搭載されたインクカートリッジの使用期間の全期間にわたって安定した状態で円滑にキャリッジを移動させることが困難になる。
【0022】
これに対して、上記の実施形態に係る駆動機構では、キャリッジ2の副走査方向の両端部に駆動力を供給するようにしているため、キャリッジ2の移動方向に誤差を生じることがなく、インクカートリッジの重量が増加しても、走査用モータ9に作用する負荷の増加量は僅かである。このため、上記の実施形態に係る駆動機構によれば、インクカートリッジの容量が増加した場合にも、キャリッジ2に搭載されたインクカートリッジの使用期間の全期間にわたって安定した状態で円滑にキャリッジを移動させることができ、インクカートリッジの容量の増加をともなう印刷速度の高速化、及び、印刷品質の高解像度化に対応することができる。
【0023】
なお、上記第1の実施形態に係る駆動機構1において、連結シャフト8bによって従動プーリ5bと従動プーリ6bとを連結することにより、2本のタイミングベルト3,4の回転動作を確実に同期させることができ、キャリッジ2の副走査方向の両端部のそれぞれに供給する駆動力の大きさの同一性をより確実に維持することができることから、キャリッジ2の移動方向の誤差の発生を完全に防止して、キャリッジ2をより安定した状態で円滑に移動させることができる。
【0024】
図4は、インクジェットプリンタのキャリッジ駆動機構の構成を示す図である。この実施形態に係る駆動機構20は、キャリッジ2の副走査方向の両端のそれぞれに駆動力を供給する2本のタイミングベルト3,4を張架する駆動プーリ5a及び駆動プーリ6aのそれぞれを個別の走査用モータ21,22のそれぞれの回転軸に固定したものである。走査用モータ21,22としては、構成及び性能が同一のものを使用する。
【0025】
この構成において、走査用モータ21,22を完全に同期したタイミングで駆動することにより、2本のタイミングベルト3,4のそれぞれからキャリッジ2の副走査方向の両端部のそれぞれに方向及び大きさが同一の駆動力を同時に供給することができ、キャリッジ2の移動方向についての誤差を発生を防止してキャリッジ2を安定した状態で円滑に移動させることができる。
【0026】
また、この構成は、2本のタイミングベルト3,4のそれぞれを張架するプーリを連結する連結シャフトを備える必要がないため、2本のタイミングベルト3,4のそれぞれを張架するプーリ間に他の部品を配置したプリンタにも適用することができる。
【0027】
図5は、インクジェットプリンタのキャリッジの駆動機構の構成を示す図である。この実施形態に係る駆動機構30は、鉛直方向に回転軸を配置した4個のプーリ33a〜33dを設け、走査用モータ34の回転軸に固定された駆動プーリ33aと従動プーリ33bとによってタイミングベルト31を張架するとともに、4個のプーリ33a〜33dによってタイミングベルト32を張架し、タイミングベルト31の水平部分の一部をキャリッジ2の前面2aから突出した係止部2cに係止させ、さらに、タイミングベルト32の主走査方向に平行な水平部分の一部をキャリッジ2の背面2bから突出した係止部2dに係止している。
【0028】
この構成により、第1の実施形態に係る駆動機構1における連結シャフト8a,8bを用いることなく、単一の走査用モータ34からキャリッジ2の副走査方向の両端部のそれぞれに方向及び大きさが同一の駆動力を同時に供給することができる。
【0029】
図6は、インクジェットプリンタのキャリッジの駆動機構の構成を示す図である。この実施形態に係る駆動機構40は、回転軸を主走査方向に配置した駆動プーリ42,従動プーリ42b,42e〜42g,42j、及び、回転軸を副走査方向に配置した従動プーリ42c,42d,42d,42hの計10個のプーリと、これら10個のプーリに順に張架された1本のタイミングベルト41と、を備えている。駆動プーリ42aは、走査用モータ43の回転軸に固定されている。
【0030】
タイミングベルト41は、キャリッジ2の移動範囲の上方において2回屈曲された状態で張架されており、タイミングベルト41の主走査方向に平行な一方の水平部分の一部をキャリッジ2の前面2aから突出した係止部2cに係止するとともに、タイミングベルト41の主走査方向に平行な他方の水平部分の一部をキャリッジ2の背面2bから突出した係止部2dに係止している。なお、タイミングベルト41において係止部2c及び2dに係止された部分は、タイミングベルト41の回転時に同一方向に移動する。
【0031】
この構成により、単一のタイミングベルト41及び単一の走査用モータ43によってキャリッジ2の副走査方向の両端部のそれぞれに方向及び大きさが同一の駆動力を同時に供給することができる。
【0032】
図7は、インクジェットプリンタのキャリッジの駆動機構の構成を示す図である。この実施形態に係る駆動機構50は、回転軸を鉛直方向に配置したプーリ52a〜52eと、これらのプーリ52a〜52eに張架された1本のワイヤ51と、巻取プーリ52a,52eのそれぞれを回転軸に固定した走査用モータ53,54と、を備えている。ワイヤ51は、一端部において巻取プーリ52aの周面に複数回巻回されており、他端部において巻取プーリ52eの周面に複数回巻回されている。巻取プーリ52aと巻取プーリ52eとにおけるワイヤ51の巻回方向は互いに逆方向にされている。
【0033】
また、ワイヤ51は、巻取プーリ52aとプーリ52bとの間において主走査方向に平行な部分の一部がキャリッジ2の前面2aから突出した係止部2cに係止されており、プーリ52dと巻取プーリ52eとの間において主走査方向に平行な部分の一部がキャリッジ2の背面2bから突出した係止部2dに係止されている。また、走査用モータ53と走査用モータ54としては、構成及び性能が同一のものを使用する。
【0034】
この構成において、キャリッジ2の移動時には、走査用モータ53,54を同時に同方向に駆動することにより、ワイヤ51は巻取プーリ52a,52eの一方の周面に巻き取られるとともに他方の周面から引き出される。即ち、キャリッジ2を矢印A方向に往動させる場合には、走査用モータ53,54を矢印E方向に同時に駆動することにより、巻取プーリ52aの周面にワイヤ51が巻き取られるとともに、巻取プーリ52eの周面からワイヤ51が同量だけ引き出される。また、キャリッジ2を矢印B方向に復動させる場合には、走査用モータ53,54を矢印F方向に同時に駆動することにより、巻取プーリ52aの周面からワイヤ51が引き出されるとともに、巻取プーリ52eの周面に同量のワイヤ51が巻き取られる。
【0035】
この構成により、1本のワイヤ51を用いてキャリッジ2の副走査方向の両端部に方向及び大きさが同一の駆動力を同時に供給することができ、駆動機構50を小型化することができる。
【0036】
【発明の効果】
請求項1に記載した発明によれば、主走査方向に移動するキャリッジの副走査方向の両端部のそれぞれに方向及び大きさが同一の駆動力を同一のタイミングで供給することにより、キャリッジに供給される駆動力が主走査方向を含む平面における回転力としてキャリッジに作用しないようにすることができ、キャリッジの移動方向が主走査方向に対して偏向することを防止して、常に安定した状態でキャリッジを円滑に移動させることができ、駆動機構の磨耗や画像の劣化を防止することができる。また、第2の連結シャフトによって一方の従動プーリと他方の従動プーリとを同軸上に連結することにより、2本のタイミングベルトの回転動作を確実に同期させることができ、キャリッジの副走査方向の両端部のそれぞれに供給する駆動力の大きさの同一性をより確実に維持してキャリッジの移動方向の誤差の発生を完全に防止することができ、キャリッジをより安定した状態で円滑に移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第1の実施形態に係るインクジェットプリンタのキャリッジ駆動機構の構成を示す図である。
【図2】上記駆動機構を含むインクジェットプリンタにおける印刷処理時の動作手順を示すフローチャートである。
【図3】上記駆動機構における走査用モータの負荷状態を従来の構成に係る駆動機構と比較して示す図である。
【図4】インクジェットプリンタのキャリッジ駆動機構の構成を示す図である。
【図5】インクジェットプリンタのキャリッジ駆動機構の構成を示す図である。
【図6】インクジェットプリンタのキャリッジ駆動機構の構成を示す図である。
【図7】インクジェットプリンタのキャリッジ駆動機構の構成を示す図である。
【図8】従来のインクジェットプリンタのキャリッジ駆動機構の構成の一例を示す図である。
【図9】従来のインクジェットプリンタのキャリッジ駆動機構の構成の別の例を示す図である。
【符号の説明】
1,20,30,40,50−駆動機構
2−キャリッジ
3,4,31,32,41−タイミングベルト
5a,6a,33a,42a−駆動プーリ
5b,6b,33b〜33c,42b〜42j,52b〜52d−従動プーリ
52a,52e−巻取プーリ
9,21,22,34,43,53,54−走査用モータ
Claims (1)
- インクカートリッジ及びインクヘッドを搭載したキャリッジにおける副走査方向の一方の端部近傍に主走査方向に平行なガイド軸を貫通させるとともに他方の端部近傍に主走査方向に平行なガイド軸を当接させ、該キャリッジにおける副走査方向の両端部のそれぞれに方向及び大きさが同一の主走査方向の駆動力を同一のタイミングで伝達する伝達部材を設けたインクジェットプリンタのキャリッジ駆動機構であって、
前記伝達部材は、キャリッジの副走査方向の両端部のそれぞれに回転自在に配置された駆動プーリ及び従動プーリ、駆動プーリと従動プーリとの間に張架されたタイミングベルト、一方の駆動プーリと他方の駆動プーリとを同軸上に連結する第1の連結シャフト、一方の従動プーリと他方の従動プーリとを同軸上に連結する第2の連結シャフト、並びに、一方の駆動プーリを回転軸に固定して正逆両方向に回転する走査用モータからなり、
前記第1の連結シャフトを介して一方の駆動プーリの回転を他方の駆動プーリに伝達し、前記第2の連結シャフトを介して一方の従動プーリの回転を他方の従動プーリに伝達することを特徴とするインクジェットプリンタのキャリッジ駆動機構。
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