JP3569625B2 - 薄膜el素子の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、平面薄型表示装置に応用される薄膜EL素子の製造方法に関するもので、特に、熱処理方法の改良により、高輝度の薄膜EL素子が得られる製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の情報化産業の発展に伴って、軽量で空間占有率の低い平面表示装置への需要が高まっている。このような平面薄型表示装置に応用されるデバイスの中で薄膜EL素子は自己発光型で視認性が良いことから表示品位の優れた表示装置として開発が積極的に進められている。
【0003】
この薄膜EL素子は、ガラス基板上に、少なくとも一方に透明電極を含む2組の電極とそれに挟まれた絶縁層と発光層を備えた構造を有しており、この2組の電極間に交流電界を加えることにより発光が得られるものである。発光色は発光層材料により決まり、現在発光効率が良く、安定して発光する発光層材料としてZnS:Mn層を用いた黄色のモノクロ表示装置が実用化されている。
【0004】
このZnS:Mn以外の発光層として、青色発光を示すZnS:Tm,SrS:Ce,緑色発光を示すZnS:Tb,CaS:Ce,赤色発光を示すZnS:Sm,CaS:Eu等のIIa−VIb族またはIIb一VIb族化合物薄膜に発光中心を添加したもの、特にVIb族元素が硫黄であるものが良く知られている。そして、カラー表示を実現するためにも、これらZnS:Mn以外の材料の特性向上が進められている。
【0005】
現在、最も実用に近いものとして開発が進められているカラー表示装置の構造は、図5に示すように、SrS:Ce発光層142とZnS:Mn発光層143とで構成された積層発光層141を持つ薄膜EL素子に、赤,緑,青のカラーフィルター146,147,148を組み合わせた構造である。上記SrS:Ce発光層142からの発光は青から緑にかけての発光領域を持ち、ZnS:Mn発光層143からの発光は緑から赤にかけての発光領域を持っている。このため、上記SrS:Ce発光層142とZnS:Mn発光層143との積層発光層141は、赤,緑,青の発光領域を持つ白色発光を示す。この積層発光層141に上記カラーフィルター146,147,148を組み合わせることで、赤,緑,青それぞれの単色を取り出すことができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記ZnS:Mn発光層以外の発光層(ZnS:Tm,SrS:Ce,ZnS:Tb等)は、実用化されているZnS:Mn発光層に比べて、発光輝度等の発光特性が劣り現在実用化されていない。この実用化されていない発光層が十分な輝度を得ることができない原因としては、作製された膜の結晶性の問題が指摘されている。特に、蒸気圧の高いVIb族元素が蒸発することによるストイキオメトリーのずれ(化学量論的なずれ)が問題とされている。
【0007】
このストイキオメトリーのずれを埋め、発光特性を向上させるために、VIb族元素の硫黄蒸気または不活性ガスに硫黄蒸気あるいは硫化水素を混合したガス雰囲気中での熱処理が提案されている(特開平1−272093号)。さらには、分解されたVI族元素ガスを含む不活性ガス、水素ガス等のキャリアガス雰囲気での第1ステップ熱処理と水素ガスまたはVI族水素化合物ガス雰囲気での第2ステップ熱処理を含む2段階熱処理等が提案されている(特開平8−83684号)。
【0008】
しかし、未だ十分な特性が得られているとは言えず、実用化には更に改良が必要である。
【0009】
そこで、この発明の目的は、現在では実用化されていない発光材料の発光輝度等の発光特性を向上させて、実用化を図ることができる薄膜EL素子の製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決しようとする手段】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、IIa−VIb族またはIIb−VIb族化合物薄膜を発光層とする薄膜EL素子の製造方法において、
上記発光層は硫化亜鉛膜を有し、
上記発光層を形成した後に、VIb族元素を構成材料とするガス雰囲気中で熱処理を行い、
この熱処理の後、上記発光層上に絶縁膜を形成した後に、
さらに、高真空中で熱処理を行う薄膜EL素子の製造方法であって、
上記ガス雰囲気の構成材料である VI b族元素を硫黄とし、
上記発光層を構成する化合物薄膜がセリウムを添加した硫化ストロンチウム層とマンガンを添加した硫化亜鉛層とを積層した積層膜で構成されており、
上記セリウムを添加した硫化ストロンチウム層上に第1のマンガン添加硫化亜鉛層を形成した直後に、硫化性ガス雰囲気中で熱処理を行い、
その後、上記第1のマンガン添加硫化亜鉛層上に第2のマンガン添加硫化亜鉛層を積層して、上記積層膜を形成することを特徴としている。
【0011】
この請求項1の発明では、発光層を形成した後にVIb族元素を構成材料とするガス雰囲気中で熱処理し、さらに、高真空中で熱処理を行う。この組み合わせアニールによれば、発光効率の向上の度合いが顕著で高性能の発光層が得られることが実験により判明した。
【0012】
また、一実施形態の薄膜EL素子の製造方法では、上記VIb族元素を構成材料とするガス雰囲気中での熱処理を、上記発光層を形成した直後に行う。
【0013】
この実施形態では、発光層を形成した直後に上記ガス雰囲気中での熱処理を行うから、上記ガス雰囲気中での熱処理が上記発光層の上に形成する絶縁膜の絶縁特性を低下させる心配がない。
【0014】
また、請求項1の発明の薄膜EL素子の製造方法では、上記ガス雰囲気の構成材料であるVIb族元素を硫黄とした。
【0015】
この請求項1の発明では、硫化性ガス雰囲気中で発光層を熱処理することによって、発光層の硫黄抜けによるストイキオメトリーのずれを防げる。
【0016】
また、一実施形態の薄膜EL素子の製造方法では、上記ガス雰囲気のガス材料を硫化水素とした。
【0017】
この実施形態では、硫化性ガスの内で最も一般的で扱いやすい硫化水素ガスを採用したから、硫化性ガスによるアニールを容易に実行できる。
【0018】
また、一実施形態の薄膜EL素子の製造方法では、上記発光層は、セリウムを添加した硫化ストロンチウムからなる化合物薄膜で構成されている。
【0019】
この実施形態では、発光層を、SrS:Ceで構成したから、発光特性の優れた薄膜EL素子を製造できる。
【0020】
また、一実施形態の薄膜EL素子の製造方法では、上記化合物薄膜におけるセリウム添加濃度が0.15mol%以上である。
【0021】
この実施形態では、上記SrS:Ceで構成した化合物薄膜におけるCe添加濃度を、0.15mol%以上にすることによって、Ce添加濃度が0.15mol%未満である場合に比べて発光効率を向上できることが実験で判明した。
【0022】
また、請求項1の発明の薄膜EL素子の製造方法は、上記発光層を構成する化合物薄膜がセリウムを添加した硫化ストロンチウム層とマンガンを添加した硫化亜鉛層とを積層した積層膜で構成されている。
【0023】
この請求項1の発明では、SrS:Ce層は青から緑にかけての発光領域を持ち、ZnS:Mn層は緑から赤にかけての発光領域を持つ。したがって、上記発光層は赤,緑,青の発光領域を持つ白色発光を示す。この白色発光を示す発光層にカラーフィルタを組み合わせれば、赤,緑,青それぞれの単色を取り出せる。
【0024】
また、一実施形態の薄膜EL素子の製造方法では、上記セリウムを添加した硫化ストロンチウム層を形成した直後に、硫化性ガス雰囲気中での熱処理を行う。
【0025】
この実施形態では、硫化性ガス雰囲気中でSrS:Ce層からなる発光層を熱処理することによって、この発光層のS(硫黄)抜けによる化学量論的ずれを防いで、発光特性を向上できる。
【0026】
また、請求項1の発明の薄膜EL素子の製造方法は、セリウムを添加した硫化ストロンチウム層上に第1のマンガン添加硫化亜鉛層を形成した直後に、硫化性ガス雰囲気中で熱処理を行い、その後、上記第1のマンガン添加硫化亜鉛層上に第2のマンガン添加硫化亜鉛層を積層して、上記積層膜を形成することを特徴としている。
【0027】
この請求項1の発明では、セリウムを添加した硫化ストロンチウム層上に第1のマンガン添加硫化亜鉛層を形成した直後に、硫化性ガス雰囲気中で熱処理を行うから、上記マンガン添加硫化亜鉛層が、外気に対する上記硫化ストロンチウム層の保護膜の役目を果たす。これにより、発光特性の向上を図れる。
【0028】
また、一実施形態の薄膜EL素子の製造方法では、上記セリウムを添加した硫化ストロンチウム層のセリウム添加濃度が0.15mol%以上である。
【0029】
この実施形態では、SrS:Ce層上にZnS:Mn層を積層した積層膜を発光層とする薄膜EL素子の製造方法において、SrS:Ce層のCe添加濃度を0.15mol%以上にした。これにより、Ce添加濃度が0.15mol%未満である場合に比べて、発光効率を向上できることが判った。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて詳細に説明する。
【0031】
〔参考例〕
図1に、この発明の薄膜EL素子の製造方法の参考例で作製した薄膜EL素子の断面を示す。この図1を参照しながら、この参考例を説明する。
【0032】
まず、ガラス基板1上に、ITO(インジウム・ティン・オキサイド)をEB(電子ビーム)蒸着法あるいは高周波スパッタ法で200nm程度の厚さに形成し、さらにフォトレジストを用いたウェットエッチングを行って、ストライプ状の第1電極2を作製する。
【0033】
次に、上記第1電極2上に、膜厚40nm程度のSiO2膜3と膜厚220nm程度のSi3N4膜5を、高周波スパッタ法によって順に形成する。このSiO2膜3とSi3N4膜5とが第1絶縁膜6をなす。
【0034】
次に、上記第1絶縁膜6上に、SrS:CeからなるSrS:Ce層7を形成する。このSrS:Ce層7は、成膜時の硫黄抜けを防ぐために3×10−3Paの硫化水素雰囲気中で、基板温度を500℃に保ち、SrSにCeを添加したペレットを蒸着源としたEB蒸着法により、1000〜1500nmの膜厚で作製した。
【0035】
上記ペレットは、SrS粉末と所定の濃度のCeNを混合し、焼結成形したもので、このペレット中のCe濃度を0.15mol%にした。
【0036】
SrS:Ce層7は、大気中の炭酸ガスと水分によって容易に化学反応を起こすので、大気中のこれらのガスからSrS:Ce層7を保護するために、上記SrS:Ce層7上に膜厚100nm程度のZnS層8をEB蒸着法を用いて形成した。
【0037】
上記SrS:Ce層7とZnS層8とが発光層10を構成する。
【0038】
この発光層10を形成した後、硫化水素ガス雰囲気中でアニールを施す。硫化性ガスとして硫化水素を用いたのは、硫化水素が硫化性ガスの中で最も一般的で扱い易いものであるからである。この硫化水素ガスによるアニールは、硫化水素を1%含むArガス雰囲気中でランプアニールにより630℃に加熱保持することで行った。また、この硫化水素ガスによるアニールは、次で述べる絶縁膜形成前、すなわち、発光層10の形成直後に行うことが望ましい。その理由は、アニールによる熱処理中に硫化水素で絶縁膜が硫化されるのを防いで、絶縁特性低下を防ぐようにするためである。
【0039】
次に、上記発光層10の上に、第2絶縁層13を形成する。この第2絶縁層13は、膜厚100nm程度のSi3N4膜11上に膜厚35nm程度のSiO2膜12を積層した積層膜で構成されている。この積層膜は、高周波スパッタ法によって作製する。そして、この第2絶縁層13を作製した後に高真空アニールを行う。この高真空アニールは、1×10−4Pa以下の高真空中で630℃に加熱し保持して実行した。
【0040】
最後に、上記第2絶縁層13上に、第2電極15としてAlを500nm程度の膜厚で加熱蒸着により作製し、フォトレジストを用いたウェットエッチングにより上記第1電極2と直交するようなストライプ状に形成する。
【0041】
図2に、上記製造方法で作製したSrS:Ce青色EL素子についての発光特性を示す。図2において、Ce濃度が0.15mol%で、かつ、(硫化水素アニール+真空アニール)のケースが、上記製造方法で作製した青色EL素子の発光特性であり、発光効率は0.355(lm/W)、発光輝度は85.3(cd/m2)であった。なお、駆動は、周波数100Hzの交流パルス電圧で行い、発光輝度が0.1cd/m2となる発光開始電圧よりも60Vだけ高い電圧で行った。
【0042】
なお、図2に、上記SrS:Ce層7を形成する際のペレットのCe濃度を、0.15mol%より低い0.1mol%としたケース、0.15mol%より高い0.2mol%としたケース、さらには、真空アニールのみを行うケース、硫化水素アニールのみを行うケースについて、発光特性を示す。なお、アニール時間は、1時間30分とし、真空アニールと硫化水素アニールの両方を行うケースについては、真空アニールを1時間とし硫化水素アニールを30分にした。図2における数値は、上から駆動電圧、発光輝度、発光効率を示している。
【0043】
図2に示すように、硫化水素アニールを行った素子に更に真空アニールを施した場合には、硫化水素アニールのみを行った場合、真空アニールのみを行った場合に比べて、Ce濃度0.1mol%,0.15mol%,0.2mol%のケース共に駆動電圧の低下、発光輝度の上昇等の発光特性の向上が見られた。
【0044】
また、図3に、上記3種類のCe濃度と、3種類のアニール方法についての発光効率を示す。上述の駆動電圧や発光輝度等は、EL素子作製時の各層の膜厚誤差等で変化するから、発光効率を採用することで、発光層の性能そのものを正確に比較できる。図3を参照すれば分かるように、発光効率もまた、組み合わせアニール(硫化水素アニール+真空アニール)がその他のアニール(真空アニールのみ,硫化水素アニールのみ)より高くなる。特に、この組み合わせアニールによれば、Ce濃度が0.15mol%以上にしたときの発光効率の向上の度合いが顕著で高性能の発光層が得られることが分かる。
【0045】
すなわち、上記参考例によれば、発光効率が優れた薄膜EL素子を製造できる。
【0046】
〔実施形態〕
次に、図4に、この発明の薄膜EL素子の製造方法の実施形態で作製した薄膜EL素子の断面を示す。この実施形態が、前述の参考例と異なる点は、発光層の構成とカラーフィルターを備えた点だけであるから、この点を重点的に説明する。
【0047】
この実施形態で作製した薄膜EL素子の発光層41は、SrS:Ce層42上にZnS:Mn層43を積層した構造であり、青、緑、赤の発光領域を持つ白色発光を示す。この薄膜EL素子とRGBカラーフィルター45とを組み合わせることにより、カラー表示装置を実現できる。
【0048】
カラーフィルター45は、視野角による色ずれを防ぐために、第2電極46との間に20μmの空隙を保って近接設置した。そして、第1電極47を、例えばMoで形成される金属電極とし、第2電極46はITO等で形成される透明電極とした。したがって、発光層41からの発光は第2電極46側から取り出す。
【0049】
上記第1電極47は、ガラス基板50上に高周波スパッタ法によってMo薄膜を100nm程度の厚さで作製し、フォトレジストを用いたウェットエッチングでストライプ状に形成する。また、上記第2電極46は、第2絶縁層13上にITOをEB蒸着法あるいは高周波スパッタ法で200nm程度の厚さで作製し、フォトレジストを用いたウェットエッチングによって、第1電極47と直交するストライプ状に形成する。
【0050】
ZnS:Mn層43は基板温度を200〜300℃に保ち、ZnS粉末に0.35wt%程度のマンガンを添加し、形成焼結して作製したペレットを蒸着源としたEB蒸着により作製した。また、SrS:Ce層42を形成するために用いるCe添加SrSペレットのCe濃度を0.1mol%とした。
【0051】
また、この実施形態では、SrS:Ce層42を外気から保護するために、SrS:Ce層42の上に膜厚100nm程度の第1のZnS:Mn層43を形成した後に、前述の実施形態1と同じ方法で、硫化水素雰囲気アニールを行い、次に、第2のZnS:Mn層44を200nm程度の膜厚で形成した後に高真空アニールを行った。上記アニールの条件,アニール時間は、前述の実施形態1と同じである。
【0052】
なお、SrS:Ce層42上にZnS:Mn層43を形成する前に、硫化水素アニールを実行した場合には、SrS:Ce層42を十分に硫化できる。
【0053】
上記実施形態で作製した薄膜EL素子によれば、駆動電圧が240Vになり、発光輝度が120cd/m2となった。これに対し、この実施形態2において、上記硫化水素雰囲気アニールを行わずに上記高真空アニールだけを行って作製した薄膜EL素子によれば、駆動電庄250V,発光輝度75cd/m2となる。また、実施形態において、上記硫化水素雰囲気アニールを行い高真空アニールを行わずに作製した薄膜EL素子では、駆動電圧242V,発光輝度92cd/m2となる。
【0054】
すなわち、この実施形態のように硫化水素アニールと真空アニールを組み合わせたアニールによれば、真空アニールのみ、硫化水素アニールのみを行う場合に比べて、発光輝度を約1.6倍,1.3倍に向上させることができる。
【0055】
尚、この実施形態では、SrS:Ce層42を形成するときのCe添加SrSペレットのCe濃度を0.1mol%にしたが、Ce濃度0.15mol%以上にしても良い。また、上記実施形態では、発光層へ熱処理を行うときのガス雰囲気の構成材料を硫黄としたが、硫黄以外のIVb族元素としてもよい。
【0056】
【発明の効果】
以上より明らかなように、請求項1の発明は、発光層を形成した後にVIb族元素を構成材料とするガス雰囲気中で熱処理し、さらに、高真空中で熱処理を行う。この組み合わせアニールによれば、発光効率の向上の度合いが顕著で高性能の発光層が得られる。
【0057】
また、一実施形態では、上記発光層を形成した直後に上記ガス雰囲気中での熱処理を行うから、ガス雰囲気中での熱処理が発光層の上に形成する絶縁膜の絶縁特性を低下させる心配がない。
【0058】
また、請求項1の発明の薄膜EL素子の製造方法では、上記ガス雰囲気の構成材料であるVIb族元素を硫黄とした。このように、硫化性ガス雰囲気中で発光層を熱処理することによって、発光層の硫黄抜けによるストイキオメトリーのずれを防げる。
【0059】
また、一実施形態の薄膜EL素子の製造方法では、上記ガス雰囲気のガス材料を硫化水素とした。この実施形態では、硫化性ガスの内で最も一般的で扱いやすい硫化水素ガスを採用したから、硫化性ガスによるアニールを容易に実行できる。
【0060】
また、一実施形態の薄膜EL素子の製造方法では、発光層をSrS:Ceで構成したから、青色発光する発光特性の優れた薄膜EL素子を製造できる。
【0061】
また、一実施形態では、上記SrS:Ceで構成した化合物薄膜におけるCe添加濃度を、0.15mol%以上にすることによって、Ce添加濃度が0.15mol%未満である場合に比べて発光効率を向上できる。
【0062】
また、請求項1の発明の薄膜EL素子の製造方法では、上記発光層を構成する化合物薄膜を、セリウムを添加した硫化ストロンチウム層とマンガンを添加した硫化亜鉛層とを積層した積層膜で構成した。
【0063】
この請求項1の発明では、SrS:Ce層は青から緑にかけての発光領域を持ち、ZnS:Mn層は緑から赤にかけての発光領域を持つ。したがって、上記発光層は赤,緑,青の発光領域を持つ白色発光を示す。この白色発光を示す発光層にカラーフィルタを組み合わせれば、赤,緑,青それぞれの単色を取り出せる。
【0064】
また、一実施形態の薄膜EL素子の製造方法では、上記セリウムを添加した硫化ストロンチウム層を形成した直後に、硫化性ガス雰囲気中での熱処理を行う。この実施形態では、硫化性ガス雰囲気中でSrS:Ce層からなる発光層を熱処理することによって、この発光層のS(硫黄)抜けによる化学量論的ずれを防いで、発光特性を向上できる。
【0065】
また、請求項1の発明は、セリウムを添加したストロンチウム層上に第1のマンガン添加硫化亜鉛層を形成した直後に、硫化性ガス雰囲気中で熱処理を行うから、上記マンガン添加硫化亜鉛層が、外気に対する上記ストロンチウム層の保護膜の役目を果たす。これにより、発光特性の向上を図れる。
【0066】
また、一実施形態では、SrS:Ce層上にZnS:Mn層を積層した積層膜を発光層とする薄膜EL素子の製造方法において、SrS:Ce層のCe添加濃度を0.15mol%以上にした。これにより、Ce添加濃度が0.15mol%未満である場合に比べて、発光効率を向上できる。
【0067】
以上のように、本発明の製造方法によれば、IIa−VIb族またはIIb−VIb族化合物薄膜を発光層とする薄膜EL素子、特に発光層にSrS:CeあるいはSrS:CeとZnS:Mnの積層膜を用いた薄膜EL素子の発光輝度を向上でき、従来実用化されていない薄膜EL素子を用いたカラー表示装置、特に赤、緑、青の三原色を含むカラーEL表示装置の開発に効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の薄膜EL素子の製造方法の参考例で作製した薄膜EL素子の断面構造図である。
【図2】上記参考例で作製した薄膜EL素子の発光特性を、Ce濃度、アニール方法の違いにより比較したものである。
【図3】上記参考例で作製した薄膜EL素子の発光効率を、Ce濃度、アニール方法の違いにより比較した特性図である。
【図4】本発明の薄膜EL素子の製造方法の実施形態で作製した薄膜EL素子の断面構造図である。
【図5】従来の薄膜EL素子の製造方法を説明する断面構造図である。
【符号の説明】
1…ガラス基板、2…第1電極、3…SiO2膜、5…Si3N4膜、
6…第1絶縁膜、7…SrS:Ce層、8…ZnS層、10…発光層、
11…Si3N4膜、12…SiO2膜、13…第2絶縁膜、
15…第2電極、41…発光層、42…SrS:Ce層、
43…ZnS:Mn層、45…RGBカラーフィルター、46…第2電極、
47…第1電極。
Claims (1)
- IIa−VIb族またはIIb−VIb族化合物薄膜を発光層とする薄膜EL素子の製造方法において、
上記発光層は硫化亜鉛膜を有し、
上記発光層を形成した後に、VIb族元素を構成材料とするガス雰囲気中で熱処理を行い、
この熱処理の後、上記発光層上に絶縁膜を形成した後に、
さらに、高真空中で熱処理を行う薄膜EL素子の製造方法であって、
上記ガス雰囲気の構成材料である VI b族元素を硫黄とし、
上記発光層を構成する化合物薄膜がセリウムを添加した硫化ストロンチウム層とマンガンを添加した硫化亜鉛層とを積層した積層膜で構成されており、
上記セリウムを添加した硫化ストロンチウム層上に第1のマンガン添加硫化亜鉛層を形成した直後に、硫化性ガス雰囲気中で熱処理を行い、
その後、上記第1のマンガン添加硫化亜鉛層上に第2のマンガン添加硫化亜鉛層を積層して、上記積層膜を形成することを特徴とする薄膜EL素子の製造方法。
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