JP3558479B2 - 導波光検出器及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、導波光を光検出器に導く導波光検出器に関し、より具体的には光導波路(光導波路層)から光電変換素子への導波光の光結合を高効率に行うことができる導波光検出器及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
光導波路層から光電変換素子へと伝搬する導波光の光結合手段として、最近ではテーパ導波路が多用される傾向にある。即ち、このようなテーパ導波路を用いる場合は、回折格子などを利用して光結合を行う場合に比べて光結合効率を高くできる長所があるからである。
【0003】
このようなテーパ導波路を用いた導波光(導波路光)検出器の一従来例として、特開平5−291608号公報に開示されたものがある。図12は、この導波光検出器を示す。この導波光検出器は、光導波路層(導波層)141と半導体基板147との間に積層形成されたシリコン酸化膜層からなる誘電体層142をテーパ形状、即ち、図中矢印で示す光の伝搬方向に向けて厚みが徐々に薄くなるテーパ状に形成することで光導波路141から導波光を光検出器(光電変換素子)に導く構成をとっている。
【0004】
今少し具体的に説明すると、この導波光検出器では、光導波路層141と半導体基板147とを隔てる誘電体層142が受光部である拡散領域143の上に直接形成されている。また、この導波光検出器では、導波光が光検出器に検出される際に、逆バイアス時に発生するリーク電流を低減するためのチャネルストッパーとして、受光部最表面の導電型とは反対の導電型の拡散領域144を受光部である拡散領域143の周囲に形成してある。
【0005】
ここで、上記のリーク電流は、半導体基板147上に積層されるシリコン酸化膜層からなる誘電体層142や光導波路層141中に負の固定電荷が発生することに起因して生じる。
【0006】
なお、図12において、図中145はN−エピタキシャル層、146はN+シリコン基板である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、近年の導波光検出器は、その用途から高速応答性や高集積化が要求されており、このような要求に答えるために、最近では外部制御回路のICを導波光検出器と一体的に作製した複雑な構成のものが開発されて来ている。
【0008】
図13(a)は、このような構成の導波光検出器の一例を示す。受光部201の周囲には不純物拡散時のマスクであると同時にIC(IC部)では配線の働きをする金属層203、反射防止用の窒化ケイ素膜204や配線絶縁膜となる窒化ケイ素膜205及びICと金属配線のための保護層206等が形成されている。このため、受光部201とその周囲のICとでは、全体として数μmの段差が発生している。なお、図13(a)では、電極引き出し部分の構造については省略してある。
【0009】
ここで、上記構成において、保護層206や金属層203は省略することが可能であるが、反射防止用の窒化ケイ素膜204はその働きから不可欠のものであり、また、熱酸化SiO2膜202はPN接合を保護するために不可欠のものである。このため、図13(b)に示すように、上記した省略可能なものを除去した最も簡単な構造を考えても、SiO2 層による段差の約1μmは避けられない。但し、一般的な使用にあたっては、信号検出用の光は自由空間から入射するので、この程度の段差は全く問題にならない。
【0010】
次に、上記SiO2 層による段差が生じる理由を図14(a)〜(e)に示す製造工程に基づき具体的に説明する。まず、図14(a)に示すように、シリコン基板231上に熱酸化SiO2膜232を形成する。この形成方法としては、酸素気流中で加熱するドライ酸化と、水蒸気を含んだ酸素気流中で加熱する水蒸気酸化が知られている。こうして得られた熱酸化SiO2膜232をフォトレジスト等を用いたパターニングを行い、エッチング加工することで、図14(b)に示すような熱酸化SiO2膜232によるマスク232aを形成することができる。その後、このエッチング部分からシリコン基板231に拡散処理を行い、図14(c)に示すような不純物拡散領域231aを形成する。この高温処理をするときにも、新たに図14(c)に示すような熱酸化膜233が形成される。
【0011】
この導波光検出器は、ICと同時に受光部、即ち光電変換素子等を形成していくため、図14(d)に示すように、CVD法等でSiO2膜234をさらに積層する。その後、エッチング加工し、SiO2膜234及び熱酸化膜233に、図14(e)に示すような開口部235を形成する。
【0012】
ここで、上記した一回目と二回目のエッチングパターンは、マスクの位置合わせ精度やエッチングの精度等に起因して2〜3μmのずれが発生し、これにより段差部236が生じる。
【0013】
さて、図13の構成で、ICと光電変換素子とを集積した半導体基板上に、単に光導波路層やバッファ層、即ち光結合器の部分以外で光導波路層から半導体基板への光の吸収を防ぐため十分な厚さが確保された誘電体層として機能するシリコン酸化膜を積層してテーパ部を形成した後、導波光検出器を作製しようとすると、図13(a)、(b)のように段差が存在する構造に直接光導波路層を積層することになる。このため、波長オーダーに近い段差によって光導波路層が不連続部を持つことになる。この結果、伝搬光はほとんど不連続部によって散乱されるため、光導波路層としてほぼ機能しない。従って、テーパ部を形成しても、光導波路層から光電変換素子への光結合はほとんど成立しない。
【0014】
また、段差の問題が解決されるという前提を仮定したとしても、以下に示す新たな問題点がある。即ち、図13の光電変換素子上にバッファ層となるシリコン酸化膜及び光導波路層を積層し、テーパ導波路(テーパ部)を形成して導波光検出器を作製する場合に、図13の例で示されるように、窒化ケイ素膜204の膜厚を空気中から光を入射させるときの反射防止膜の膜厚に設定すると、光導波路層とシリコン酸化膜(バッファ層)と窒化ケイ素膜204との境界での多重反射の影響から光導波路層から光電変換素子へ完全に光結合が完了するまでの伝搬長が長くなる。
【0015】
ここで、光結合が完了するまでの伝搬長が長くなることは、散乱される光量も増えることを意味する。このため、結果的に光損失が増加し、光導波路層から光電変換素子への光結合効率が低下する。
【0016】
また、図12に示す構成の導波光検出器では、屈折率がn1、n2、n3(添字1、2、3は膜の最下層から順に付記)の3層で構成される多層膜が反射防止膜として機能する最低限の条件であるn1<n2<n3を満たさない。つまり、光導波路層141の屈折率ngと、シリコン酸化膜(バッファ層)142の屈折率nbと半導体基板147の屈折率nsとが、光導波路として機能させるためnb<ng<nsの関係にあるため、これらの3層で構成される多層膜が反射防止膜として機能する上記最低限の条件を満たさない。この結果、図12に示す構成の導波光検出器では、光電変換素子への光結合の際に層間境界での反射の低減が非常に困難であるため、光結合効率が低下する。
【0017】
更に、図12に示すようなテーパ導波路では、テーパ部の終端を通過した後も光は数10μm伝搬するので、光導波路層141の屈折率ngがシリコン酸化膜(バッファ層)142の屈折率nbより高いことによる層間境界での反射により伝搬光の吸収効率が悪化し、伝搬距離が長くなる。伝搬距離が長くなると、光導波路表面及び導波光検出器の各層境界における散乱による光損失の影響が大きくなるため、結果的に光結合効率が悪化する。
【0018】
従って、例えば、図12の構成の導波光検出器において、窒化ケイ素膜をシリコン酸化膜142と光導波路層141との間に積層し、反射防止膜の機能を持たせたとしても、半導体基板147上にシリコン酸化膜142がある状態では、テーパ部終端通過後の吸収効率が悪く、上記散乱光損失の影響で光結合効率が低下してしまうという問題がある。
【0019】
一方、図12に示したテーパ導波路を用いた導波光検出器の技術を、図12に示す導波光検出器より高度な特性の安定性が要求される光電変換素子、即ちICと集積化した光電変換素子、高速応答特性を有する光電変換素子への導波光の光結合に用いた場合は、シリコン酸化物がバッファ層として受光部である拡散領域上に存在するため、製造プロセスにおいて、図13に示す導波光検出器の受光部を含む半導体基板全体にわたり水分の混入等を防ぐ機能としては不十分であり、素子特性が劣化するという問題もある。
【0020】
本発明はこのような現状に鑑みてなされたものであり、上記従来技術の問題点を解消し得、光結合効率を向上でき、外部制御回路としてのICを集積化した、高速応答性や高集積化を享受することができる導波光検出器として好適な導波光検出器及びその製造方法を提供することにある。
【0021】
【課題を解決するための手段】
本発明の導波光検出器は、同一の半導体基板上に、不純物拡散領域を有する光電変換素子と、該光電変換素子からの出力を処理するICとが設けられ、該半導体基板の上方に少なくとも一層の窒化ケイ素膜が設けられ、更に、該窒化ケイ素膜の上方に少なくとも一層からなる光伝搬用の光導波路が設けられた導波光検出器であって、該窒化ケイ素膜上に、該窒化ケイ素膜の屈折率よりも低い屈折率を有する該光導波路層の最下層よりも屈折率の低い誘電体層が設けられており、該誘電体層は、該光導波路層の光の伝搬方向に厚みを徐々に薄く形成されて終端における厚みが0になったテーパ状領域と、該テーパ状領域よりも該光導波路層の光の伝搬方向とは反対側に位置する一定の厚さの平坦領域とを有しており、前記光導波路層は、該誘電体層の平坦領域上に位置する前部と、該誘電体層のテーパ状領域上に位置するテーパ部と、該テーパ部に連続して前記窒化ケイ素膜上に設けられた後部とを有し、該テーパ部と該後部とが該不純物拡散領域の形成時に前記半導体基板上に形成された段差部にて囲まれた領域内に設けられており、前記不純物拡散領域中に、該光導波路層における該テーパ部の一部および該テーパ部に連続する該後部の一部に対して光結合可能な受光領域が設けられており、該不純物拡散領域中における光導波路層内の伝搬光の光電変換に寄与する受光部の下方に位置する該窒化ケイ素膜の厚さが450nm〜550nmになっていることを特徴とし、そのことにより上記目的が達成される。
【0027】
また、本発明の導波光検出器の製造方法は、前記導波光検出器の製造方法において、半導体基板上に光電変換素子形成のための不純物拡散領域を形成する工程と、不純物拡散時に生じた該半導体基板上の酸化膜を除去する工程と、該酸化膜を除去した該半導体基板上に少なくとも一層の窒化ケイ素膜を形成する工程と、該窒化ケイ素膜上に前記光導波路層の最下層より屈折率の低い誘電体層を積層する工程と、該誘電体層をテーパ状に加工する工程と、テーパ状に加工された該誘電体層の上に少なくとも一層の該光導波路層を形成する工程とを包含しており、そのことにより上記目的が達成される。
【0028】
以下に本発明の作用を説明する。
【0029】
光結合可能な受光領域を、光導波路層より屈折率が低い誘電体層を光の伝搬方向に厚みを徐々に薄くすることで形成されたテーパ部とテーパ部通過後の光導波路層の一部で形成する上記構成によれば、このテーパ部によって、光導波路層から光電変換素子への光結合の際に光結合損失の最大要因となる構造変化を徐々に起こすことができるので、光結合効率を向上できる。
【0030】
加えて、このテーパ部と光の伝搬方向に対してテーパ部の前後に位置する光導波路層を不純物拡散領域の形成時に形成される段差部に囲まれた領域の範囲内に設けると、段差によって生じる大きな光散乱損失を排除することができる。このため、この点においても、光結合効率を向上できる。
【0031】
また、このような導波光検出器において、ICとの集積プロセスで生じた突出部等がある場合には、光結合損失の最大要因となる構造変化が非常に大きくなるが、上記のように、研磨処理で滑らかな形状のテーパ部を形成する構成によれば、結果的にこの突出部を平坦化してテーパ部が形成されることになるので、光結合損失の最大要因となる構造変化を徐々に起こすことができる。従って、このような構成によっても、導波光検出器の光結合効率を向上できる。
【0032】
また、テーパ部の最大傾斜度を10°以下に設定する構成によれば、放射損失、即ち、光導波路層の表面凹凸による光散乱を除くテーパ部から空気中への放射による損失を理論的にほぼなくすことができるので、高光結合効率の導波光検出器を実現できる。なお、その具体的な理由については後述の実施形態で説明する。
【0033】
また、受光領域において、窒化ケイ素膜、光導波路層、この光導波路層より屈折率の低い誘電体層及び半導体基板で多層膜構造をなし、光導波路層の屈折率をng1、誘電体層の屈折率をnbとした場合に、θi=sin−1(nb/ng1)で定義され、かつ窒化ケイ素膜に対する垂線を基準とした入射角θiに対して反射防止膜として機能する構成によれば、高光結合効率の光結合が達成される。以下にその理由を説明する。
【0034】
光結合が主に起こるのはカットオフ付近(但し、カットオフとは、伝搬光が導波モードでなくなる、即ち半導体基板側への放射が大きくなり始める現象をいう)である。ここで、カットオフ付近での伝搬光の実効屈折率N、即ち伝搬光の位相定数を波数(k0=2π/λ、但し、λは波長であり、λ=780nm)で除した値は誘電体層の屈折率nb付近の値になる。即ち、N≒ nbの関係が成立する。
【0035】
このことから、光導波路層から光が不純物拡散領域、即ち受光部に対して向かう場合において、窒化ケイ素膜に対する垂線を基準としたときの進行角度θiは、θi=sin−1(nb/ng1)で与えられるため、光導波路層から誘電体層、窒化ケイ素膜及び半導体基板までの一連の多層膜構造が、θi=sin−1(N/ng1)を満たす入射角付近に対する反射防止膜となれば、高光結合効率での光結合を達成できるのである。
【0036】
ここで、光導波路層の屈折率はその材質より通常1.53近傍である。また、光導波路層より屈折率の低い誘電体層の屈折率は通常1.45近傍である。このため、例えば窒化ケイ素膜の厚さが450nm〜550nmの間にあるとき、光導波路層から、誘電体層、窒化ケイ素膜及び半導体基板までの一連の多層膜構造が、θi=sin−1=(nb/ng1)を満たす入射角付近に対して、ほぼ反射防止膜として機能すると考えられる。従って、窒化ケイ素膜の厚さを450nm〜550nmに設定すると、高光結合効率での光結合という目的に対してより好ましい条件となる。
【0037】
以上の他、上記のようなテーパ部を光導波路層に形成したとき、テーパ終端を通過した後も光は上記のように数10μm伝搬するため、光結合可能な受光領域の中で、不純物拡散領域の先端位置での誘電体層の厚さが、バッファ層として十分機能する値であり、なおかつ、その不純物拡散領域内にその厚みが0となるテーパ終端を持つことで、テーパ終端を通過した後の伝搬距離を短くすることができる。この結果、光散乱損失を低減できるので、高光結合効率が得られる。この理由を以下に説明する。
【0038】
まず、テーパが始まる位置の前ではバッファ層として機能する誘電体層がテーパ化されて、不純物拡散領域上に誘電体層が残った場合には、テーパ終端を通過した後の伝搬光の電磁界分布は、誘電体層がない場合に比べて、半導体基板から光導波路層側に強度中心がシフトする。ここで、テーパ終端を通過後の吸収効率はテーパ終端通過後の電磁界分布の強度中心が半導体基板に近いほど高くなる。従って、バッファ層の厚さを0にすれば、その分、伝搬光の電磁界分布の強度中心を半導体基板側に近付けることができるので、吸収効率の向上を図ることができる。このため、結果的にテーパ終端通過後の伝搬距離を短縮することできる。
【0039】
このように、テーパ終端通過後の伝搬距離を短縮すれば、光散乱損失を低減できるので、不純物拡散領域の受光部上に厚さが0になるテーパ部の終端を有する上記構成によれば、高光結合効率を得ることができる。
【0040】
上述のように、光がテーパ状の光導波路層を伝搬していく際、光導波路層より屈折率の低い誘電体層の厚さが0になっても光結合は完全に完了しない。具体的には、光結合可能な領域の中で、不純物拡散領域の受光部でのテーパ状導波路層の先端に、誘電体層の厚さが0である領域が20μm以上続くことで光結合が完了する。従って、誘電体層の厚さが0である領域が20μm以上続く上記構成によれば、高光結合効率での光結合を達成できる。
【0041】
上記のような作用を有する導波光検出器は、上記製造工程を包含する本発明製造方法によって容易に作製することができる。
【0042】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づき具体的に説明する。
【0043】
(実施形態1)
図1は本発明導波光検出器の実施形態1を示す。まず、本実施形態1の導波光検出器の基本構造について説明する。
【0044】
表層部に不純物拡散領域5が形成された半導体基板1の上には、窒化ケイ素膜2が積層され、その上にバッファ層となる誘電体層3が形成されている。誘電体層3の図上右側部分は光の伝搬方向に対して厚みが薄くなるテーパ状に形成されている。誘電体層3の上には光導波路層(導波層)4が積層されている。ここで、誘電体層3の屈折率は光導波路層4の屈折率よりも低くなっている。
【0045】
なお、不純物拡散領域5の極性はP+であり、図1中のP+、N、N+は半導体基板1の各部の極性を示し、P+領域とN+領域との間で光電変換素子が形成される。そして、P+不純物拡散領域5中の伝搬光10の光電変換に寄与する部分を受光部9(図中に斜線で示す部分)とし、この受光部9中にテーパ部6の形成により導波光検出器として機能するための光結合可能な受光領域7が形成されている。
【0046】
ここで、半導体基板1にP+不純物拡散領域5を形成する際には、1μm以上のSiO2の段差8が生じるが、本実施形態1では、この段差8に起因する上記した悪影響をなくすため、図1に示すようにテーパ部6及びその前後の光導波路部X,Y(以下では導波路X,Yと称する)をP+不純物拡散領域5の形成で生じた段差8の内側に形成してある。このため、本実施形態1の導波光検出器の構造によれば、段差によって生じる大きな光散乱損失を低減できるので、光結合効率の向上を図ることができる。
【0047】
次に、図1を用いて各層の機能について説明する。光導波路層4は光を薄膜に閉じこめるための層であり、光はこの層を主に伝搬する。また、光導波路層4の伝搬光10の電界或いは磁界は光導波路層4から半導体基板1の方へ裾を引く、つまり電気力線、磁力線の裾の部分が半導体基板1にかかるため、光導波路Xにおいて誘電体層3の厚さが十分な厚さでないと、電界或いは磁界の裾が半導体基板1にかかることになり、ここで光の吸収現象が起こる。それ故、本実施形態1の導波光検出器では、誘電体層3の厚さを十分に確保し、光の吸収現象を抑止している。
【0048】
また、光電変換素子で光電変換された電気信号を処理するIC(図示せず)と集積化される受光部9の上に光導波路層4を形成する場合は、誘電体層3の凹凸は除去する必要があるため、ICとの集積化プロセスの都合上生じる段差等の突出部を覆うように、図1の誘電体層3はその段差等の突出部よりも厚いことが、バッファ層として機能する最低限の条件である。このため、本実施形態1では十分な厚さの誘電体層3を形成してある。
【0049】
なお、図中ψは、テーパ部6の傾斜度を示す。
【0050】
(実施形態2)
図2は本発明導波光検出器の実施形態2を示す。本実施形態2の導波光検出器は、テーパ部16を滑らかな形状に形成することにより、光散乱損失を抑制する構成をとっている。
【0051】
即ち、伝搬光10の伝搬する途中に凹凸がある場合には、光結合損失の最大要因となる構造変化が大きくなり、受光領域7で導波光を検出する前に光散乱損失が非常に大きくなるため、この部分を滑らかにしてテーパ部16を形成することにより、光散乱損失を抑制する構成をとっている。
【0052】
具体的には、テーパ部16を形成する過程で、研磨処理を施し、これにより滑らかなテーパ部16を形成している。この結果、本実施形態2のテーパ部16の形状は、実施形態1の直線的な形状ではなく、図2に示すような滑らかに膜厚が減少する形状となる。
【0053】
なお、図2では、素子を構成する際の電極配置も示しており、導波光検出器の光電変換素子は電極配線11により、ICと接続され、ポリイミドからなる配線保護膜12に覆われて保護される。
【0054】
上記した理由により、本実施形態2の導波光検出器によれば、実施形態1の導波光検出器に比べて光散乱損失を一層抑制できる利点がある。
【0055】
(実施形態3)
図3〜図9は本発明導波光検出器の実施形態3を示す。本実施形態3の導波光検出器は、窒化ケイ素膜及び光導波路層が2層構造になっている。以下に図3に基づきその構造を製造プロセスと共に説明する。但し、図3では、段差部、光導波路Yより右側の部分は省略してある。
【0056】
半導体基板1の表面にP+不純物拡散領域5を形成した後、その上に第1窒化ケイ素膜21及び第2窒化ケイ素膜22からなる2層構造の窒化ケイ素膜をこの順に積層する。続いて、その上に誘電体層3を積層し、その図上右側部分に光の伝搬方向30に対して厚みが薄くなるテーパ部26を形成する。誘電体層3の平坦な図上左側部分は光導波路Xでバッファ層となる。続いて、第1誘電体層41及び第2誘電体層42からなる2層構造の光導波路層をこの順に形成する。
【0057】
ここで、本実施形態3において、窒化ケイ素膜の2層構造は、光電変換素子とIC(図示せず)との集積化プロセスの途中で、保護膜としての第1窒化ケイ素膜21の積層のプロセスを通して、その後に他の製造プロセスを通した後、導波光検出器の高光結合効率を達成するために、第2窒化ケイ素膜22を第1窒化ケイ素膜21の積層時とは異なる条件で積層したことによって得られる。
【0058】
次に、上記構成でのテーパ部26のテーパ斜度(テーパ傾斜度)の影響と窒化ケイ素膜(21,22)の機能について説明する。
【0059】
但し、本実施形態3において、各層の屈折率、膜厚は以下のように表記する。即ち、半導体基板1の屈折率をns、第1窒化ケイ素膜21の屈折率をn1、第2窒化ケイ素膜22の屈折率をn2、誘電体層3の屈折率をnb、光導波路層の第1誘電体層(導波層)41の屈折率をng1、第2誘電体層42の屈折率をng2とする。
【0060】
また、第1窒化ケイ素膜21の厚さをt1、第2窒化ケイ素膜22の厚さをt2、光導波路Xでの誘電体層3の膜厚をbmax、光導波路層43の第1誘電体層41の膜厚をd、第2誘電体層42の膜厚をsとする。
【0061】
次に、上記各層の構成材料、屈折率の数値例等について説明する。半導体基板1はSi基板であり、屈折率ns=3.68−j0.1である。ここで、j以降の部分は、光が媒質中(この場合はSi)を伝搬する場合の吸収係数を表し、表記自体の意味は、吸収係数を含めた屈折率の表記法、複素屈折率(複素数で表した屈折率)表記である。
【0062】
第1窒化ケイ素膜21は屈折率n1=2.0、厚さt1が95nmのSiN膜、第2窒化ケイ素膜22は屈折率n2=1.86、厚さt2が400nmのSiN膜である。また、誘電体層3は、屈折率nb=1.45のPSG(Phospho−Silicate Glass)層である。光導波路層の第1誘電体層41は、屈折率ng1=1.53、厚さdが570nmのコーニング社の商品名#7059ガラスであり、第2誘電体層42は、屈折率ng2=1.43、厚さsが140nmのSiO2層である。
【0063】
ここで、誘電体層3の構成材料として、PSGを用いると、素子構造積層時の膜応力を緩和できる。このため、クラックの発生や、IC上の半導体素子の特性変化を防止できる利点がある。また、誘電体層3の構成材料として、他にBPSG(Boron−doped Phospho−Silicate Glass)膜を用いることができる。更には、NSG(ドープなしCVD−SiO2)膜を用いることも可能である。この場合は、膜応力緩和の他、ドープ材による導波光の吸収効果も防げる利点がある。また、第1誘電体層41としては、他にSiONを用いることができる。
【0064】
本実施形態3のテーパ部26の形状は下記の表1に示すような変曲点のない滑らかな形状であり、テーパ長(Lで表記)は70μmであり、テーパ化する誘電体層(バッファ層)3の最大膜厚bmaxは3.6μmのテーパ部である。また、テーパ部26の終端(図3中に符号Eで示してあり、誘電体層3の膜厚が0になる位置)からの距離をl(μm)で表すと、lと厚さ(μm)との関係は下記表1のようになり、テーパ部26は表1の各点を滑らかに結んだ形状である。
【0065】
【表1】
【0066】
図3に示す形状のテーパ部26では、図1に示すテーパ部6の斜度ψ(窒化ケイ素膜2と誘電体層3(バッファ層)との境界に対する傾き角)のように厳密に斜度φは定義できないものの、表1が示すように最大斜度は10゜以下になっている。
【0067】
次に、図4に基づき本実施形態3の導波光検出器の光結合特性について説明する。但し、図4の横軸xはテーパ終端Eと不純物拡散領域5の受光部9の起点(図3中に符号Oで示す)との距離を示し、符号+は受光部9とテーパ部26が重なる場合を示している。
【0068】
図4において、まず、光結合効率の最大値に着目する。図4の光結合効率の実験値について、テーパ部26のエッジEとの距離xが+10μmを越えると、光結合効率の変化は小さくなり、一定の値に近づく。また、距離xが+20μm以上に達すれば、光結合効率は90%以上に達する。一方、光結合効率の理論値は、テーパ部26のエッジEとの距離xが10μmを越えるとほぼ一定となり、xが+20μm以上に達すれば、100%になることを示している。即ち、理論値と実験値との双方の変化は、xが+20μm以上に達すれば光結合がほぼ100%完了することを意味している。なお、実験値ではxが+30μmのときでも光結合効率は95%にしかならないが、残りの5%の損失は光散乱損失によるものであり、損失の別の要因であるテーパ部26での空気側への放射損失は十分抑制されている。つまり、図3の具体例に示した構造の導波光検出器で空気側への放射損失が除去されたことになる。テーパ斜度制限による空気側への放射損失の低減の効果は、窒化ケイ素膜がないテーパ導波路で、テーパ導波路の放射特性を調べた実験(1995年秋季応用物理学会学術講演会28a−SQ−29;シャープ(株)南 他)で既に明らかであるが、図4の実験結果が示すように窒化ケイ素膜がある状態でも、窒化ケイ素膜の影響で放射条件が変わるにも拘わらず、テーパの最大斜度が10゜以下の場合に空気側への放射低減効果が発揮され、高光結合効率が達成できる。
【0069】
但し、実際に作製した素子では、各層境界での凹凸の影響で光散乱損失が発生する場合がよくある。また、この損失の影響は、光導波路層43から光電変換素子の受光部9に光結合が完了するまでの距離が長いほど大きくなる。以上の理由から、光散乱損失を低減するには、結合が完了するまでの伝搬距離を短くする必要がある。
【0070】
そこで、本発明では、窒化ケイ素膜(21,22)がある場合に伝搬距離を短くするために、光導波路層43からの窒化ケイ素膜を通して不純物拡散領域5の受光部9への光の透過率の向上を図っている。具体的には、本実施形態3の導波光検出器では、第1窒化ケイ素膜21及び第2窒化ケイ素膜22の膜厚を上記膜厚t1=95nm、t2=400nmに設定することにより、光導波路層43からの窒化ケイ素膜を通して不純物拡散領域5の受光部9への光の透過率を向上させている。
【0071】
次に、図5及び図6に基づき、この透過率向上効果が得られる理由について説明する。ここで、図5はテーパ部26の一部を抜き出し、多層膜とみなしたときの図である。光導波路層43を主に伝搬する光10の受光領域(光結合可能な領域)での入射角(図5中にθiで表記)は、伝搬光のカットオフ付近の実効屈折率Nがおよそ誘電体層3の屈折率nbであることと、光導波路層の第1誘電体層41の屈折率がng1であることから、下記(1)式で表される。
【0072】
θi=sin−1(nb /ng1) …(1)
上記(1)式にnb =1.45を代入してθiを計算すると、71.4゜となる。よって、光導波路層43を主に伝搬する光10の受光領域での入射角θiは約70゜付近と予想される。
【0073】
ここで、図6(a)、(b)は、本発明者等によるシミュレーション結果を示すものであり、テーパ部26で伝搬光のカットオフとなる付近の構造を、入射光が入る媒質を光導波路層43の導波層(コーニング社の商品名#7059ガラス層)41とした多層膜とみなしたときの反射率を示している。図6(a)は誘電体層(PSG層)3の部分の膜厚bpが200nmの場合、図6(b)は誘電体層(PSG層)3の部分の膜厚bpが100nmの場合をそれぞれ表す。
【0074】
図6(a)、(b)では、反射率が小さいほど透過率が高いことを意味しており、いずれの図でも入射角θiが約70゜付近で反射率がほぼ0になることがわかる。つまり、第1窒化ケイ素膜21、第2窒化ケイ素膜22が、半導体基板(Si基板)1と、誘電体層(PSG層)3と、光導波路層43の第1誘電体層(コーニング社の商品名#7059ガラス層)41との間で入射角θiが約70゜付近に対する反射防止膜を形成していることがわかる。
【0075】
この反射防止膜としての機能が、光導波路層43から不純物拡散領域5の受光部9への光の透過率向上につながる。テーパ斜度適正化の効果に上記透過率向上効果も加わって、本実施形態3導波路検出器では、光導波路層43から受光部9への結合効率が図4に示すような高光結合効率となっている。
【0076】
光導波路層43の部分については、第1誘電体層41、第2誘電体層42の2層構成だけでなく、光導波路層43は3層以上の多層構造でもよい。この理由は、光導波路層43の最下層の誘電体層(図3の例では第1誘電体層41)が、窒化ケイ素膜(21,22)に対する垂線を基準にした入射角θiが定義される、入射側媒質と見なせる点にある。
【0077】
また、窒化ケイ素膜は、窒化ケイ素膜に対する垂線を基準にした入射角θiが約70゜付近に対する反射防止膜としての機能が満たされればよいので、第1窒化ケイ素膜21と第2窒化ケイ素膜22というように成膜方法等の違う2層以上の構成でもよいし、1層だけとなってもよい。更に、図3の構成のように、第1窒化ケイ素膜21と第2窒化ケイ素膜22とでそれぞれの屈折率が異なってもよい。
【0078】
従って、図7及び図8に示す構成例、また図2に示す構成例についても、本実施形態3に示した方法で高光結合効率を享受することができる。但し、図7は光導波路層が1層、窒化ケイ素膜が2層構造の導波光検出器を示し、図8は光導波路層が2層構造、窒化ケイ素膜が1層の導波光検出器を示す。なお、図3と対応する部分には同一の符号を付してあり、具体的な説明については省略する。
【0079】
次に、図9(a)、(b)に基づき、図3の構成の導波光検出器において、窒化ケイ素膜の厚さの変化に対する光結合特性の変化について説明する。なお、図9(a)、(b)は、第1窒化ケイ素膜(図中のSiN下層)として屈折率n1が2.0のSiNを用い、第2窒化ケイ素膜として屈折率n2が1.86のSiNを用いた場合のシミュレーション結果を示している。
【0080】
図9(a)、(b)では、光導波路層43の第1誘電体層41の厚さdが570nmであり、バッファ層3であるPSG層のテーパ形状が表1に示すような形状であるとき、屈折率n1=2.0のSiN膜の厚さt1、屈折率n2=1.86のSiN膜の厚さt2をそれぞれ変化させた場合を示しており、図9(a)はTEモードに対する光結合特性の変化を示し、図9(b)はTMモードに対する光結合特性の変化を示している。
【0081】
図9(a)、(b)において、光結合特性は規格化伝送パワー(光結合前の光導波路層43の伝送パワーを1として、光電変換素子への光結合によって減少していく光導波路層43の伝送パワーの相対値を示したもの)のテーパ部の終端Eからの距離lに対する変化をもって示される。
【0082】
同図(a)、(b)から、TEモード、TMモード双方に対する光結合特性は、第1窒化ケイ素膜21と第2窒化ケイ素膜22を合わせた厚さt1+t2が、450nm〜550nmの間で変化しても、あまり変化しないことがわかる。また、誘電体層3には、屈折率nbがほぼ1.45の材料がよく使われ、第1誘電体層41には屈折率ng1がほぼ1.53の材料がよく使われることから、窒化ケイ素膜の厚さを450nm〜550nmの範囲内に設定すれば、高光結合効率の導波光検出器を実現できることがわかる。
【0083】
(実施形態4)
図10及び図11は本発明導波光検出器の実施形態4を示す。本実施形態4の導波光検出器は、光が伝搬して来る側のテーパ部の受光部上にあるテーパ終端から光の伝搬方向に誘電体層の厚さが0となる領域を20μm以上形成し、これにより吸収効率を向上させ、結果的にテーパ終端通過後の伝搬距離を短縮し、高光結合効率を達成する構成を採用している。但し、図10に示す導波光検出器は、光導波路層が2層構造、窒化ケイ素膜が1層の導波光検出器を示し、図11に示す導波光検出器は、光導波路層が2層構造、窒化ケイ素膜が2層構造の導波光検出器を示す。
【0084】
ここで、光結合のためのテーパ部はエッチング等の技術で作製されることが多いため、本発明の導波光検出器としては、図10、図11に示す構成になることが多い。ここで、図10及び図11に示す本実施形態4の導波光検出器は、光電変換素子を形成した後の半導体基板51に窒化ケイ素膜(図10では52、図11では52a、52b)を形成した後、導波光検出器に必要なテーパ部56を形成しており、光電変換素子の部分(図中窒化ケイ素膜52より下の部分)は実施形態1〜実施形態3と同様である。
【0085】
また、図示例では、いずれも光導波路層59が、第1誘電体層54と第2誘電体層55からなる2層構造のものを示しているが、一層のものでも可能である。なお、図10及び図11では電極を省略しているが、電極が形成される領域は上記実施形態の場合と同様である。
【0086】
まず、図10に示す導波光検出器の構成を製造プロセスと共に説明する。半導体基板51の表面に受光部(不純物拡散領域)57を形成する。次に、その上に窒化ケイ素膜52を積層することになるが、不純物拡散の際に半導体基板51上に酸化ケイ素膜ができる。従って、ここでは半導体基板51上にできた酸化ケイ素膜をまず除去し、その後、改めて窒化ケイ素膜52を積層している。その後、実施形態1で説明したように、ICと集積化された光電変換素子形成時に生じたSiO2段差61よりも厚く誘電体層53となる誘電体層を積層(バッファ層として機能させる)し、エッチング、研磨処理を施すことでテーパ部56を形成する。そして最後に、第1誘電体層54と第2誘電体層55からなる2層構造の光導波路層59をこの順に形成する。これにより、図10に示す構成の導波光検出器が作製される。なお、ここで説明した製造プロセスは、上記実施形態1〜3の導波光検出器にも同様に適用することができる。
【0087】
ここで、光導波路層59から光電変換素子の受光領域(不純物拡散領域)57への高光結合効率の光結合特性を達成するためには、テーパ終端E1を通過した後に数10μm程度ある伝搬距離を短くすることが必要である。即ち、伝搬距離を短くすると、テーパ終端E1を通過した後の光散乱損失を低減でき、高光結合効率が得られるからである。伝搬距離を短くすることができる理由を以下に説明する。
【0088】
まず、誘電体層53がテーパ化されても、不純物拡散領域の受光部57上に誘電体層53が残った場合には、テーパ終端E1を通過した後の伝搬光の電磁界分布は、誘電体層がない場合に比べて、半導体基板51から光導波路層59側に強度中心がシフトする。このとき、テーパ終端E1を通過した後の伝搬光60の吸収効率は、逆にテーパ終端E1通過後の電磁界分布の強度中心が半導体基板51に近いほど高くなるので、誘電体層53の厚さを0にすることで、伝搬光の電磁界分布の強度中心を半導体基板51側に近付けることで吸収効率が向上する。この結果、テーパ終端E1通過後の伝搬距離を短縮することできる。
【0089】
以上の点から、導波光検出器作製の際も、不純物拡散後に生じる酸化ケイ素膜を除去して窒化ケイ素膜を積層する操作が有効になる。
【0090】
一方、図11に示す構成の導波光検出器は、半導体基板51の表面に不純物拡散領域の受光部57を形成した後、不純物拡散の際に半導体基板51上にできた酸化ケイ素膜を除去し、その後、窒化ケイ素膜を形成する。光電変換素子とICを集積化する場合には、先に保護層として図11のように第1窒化ケイ素膜52aを形成し、その後、他のプロセスを経て、反射防止膜の機能を持たせるために第2窒化ケイ素膜52bを形成する。
【0091】
なお、その後の製造プロセスは、図10の導波光検出器のそれと同じである。図11の導波光検出器も、光導波路層59から光電変換素子の受光部(不純物拡散領域)57への高光結合効率を達成するために、テーパ部56を持つ誘電体層53は不純物拡散領域の受光部57上で膜厚が0になるように形成し、伝搬光のテーパ終端E1通過後の吸収効率を高めている。
【0092】
以下、図11の導波光検出器の具体的な構成例について説明する。一例として、図3の導波光検出器同様に、各層の構成材料として、次のものに選ぶ。即ち、半導体基板51はSi基板(ns=3.68−j0.1)であり、第1窒化ケイ素膜52は屈折率n1=2.0、厚さt1が95nmのSiN膜、第2窒化ケイ素膜52’は屈折率n2=1.86、厚さt2が400nm のSiN膜である。また、誘電体層53は、屈折率nb=1.45のPSG層であり、光導波路層の第1誘電体層54は屈折率ng1=1.53、厚さdが570nmのコーニング社の商品名#7059ガラスであり、第2誘電体層55は屈折率ng2=1.43、厚さsが140nmのSiO2層である。
【0093】
更に、テーパ部56の形状も、テーパ長(Lで表記)が70nmであり、テーパ化する誘電体層53の最大膜厚bmaxが3.6nmであり、テーパ部終端E1からの距離をlで表すとき、lと厚さbとの関係が表1のようになる形状である。
【0094】
従って、この具体的構成例で高光結合効率を得るためには、誘電体層53の膜厚が0になる領域58が、図4の結果が示すように20μm以上必要である。即ち、図11(図10でも同様)において、E1〜E2が20μm以上必要である。また、図9(a)、(b)のように反射防止膜の機能がほぼ満たされるときは、光結合特性に大きな変化を生じないことから、図10及び図11双方の違いである窒化ケイ素膜の層数に関係なく高光結合効率を得るためには、誘電体層53の膜厚が0になる領域58は20μm以上必要である。
【0095】
【発明の効果】
以上の本発明導波光検出器は、光結合可能な受光領域を、光導波路層より屈折率が低い誘電体層を光の伝搬方向に厚みを徐々に薄くすることで形成されたテーパ部とテーパ部通過後の光導波路層の一部で形成する構成をとるので、テーパ部によって、光導波路層から光電変換素子への光結合の際に光結合損失の最大要因となる構造変化を徐々に起こすことができる。このため、光結合効率を向上できる。
【0096】
加えて、このテーパ部と光の伝搬方向に対してテーパ部の前後に位置する光導波路層を不純物拡散領域の形成時に形成される段差部に囲まれた領域の範囲内に設ける構成をとるので、段差によって生じる大きな光散乱損失を排除することができる。このため、この点においても、光結合効率を向上できる。
【0097】
また、特に、研磨処理で滑らかな形状のテーパ部を形成する構成とすれば、ICとの集積プロセスで生じた突出部等がある場合であっても、結果的にこの突出部を平坦化してテーパ部が形成されることになるので、光結合損失の最大要因となる構造変化を徐々に起こすことができる。従って、このような構成によっても、導波光検出器の光結合効率を向上できる。
【0098】
加えて、テーパ部の最大傾斜度を10°以下に設定する構成によれば、放射損失、即ち、光導波路層の表面凹凸による光散乱を除くテーパ部から空気中への放射による損失を理論的にほぼなくすことができるので、高光結合効率の導波光検出器を実現できる。
【0099】
また、特に、受光領域において、窒化ケイ素膜、光導波路層、この光導波路層より屈折率の低い誘電体層及び半導体基板で多層膜構造をなし、これが光導波路層の屈折率をng1、誘電体層の屈折率をnbとした場合に、θi=sin-1(nb/ng1)で定義され、かつ窒化ケイ素膜に対する垂線を基準とした入射角θiに対して反射防止膜として機能させる構成とすれば、上記した理由により、高光結合効率の光結合が達成される。
【0100】
また、特に、窒化ケイ素膜の厚さを450nm〜550nmの間に設定する構成とすれば、高光結合効率での光結合という目的に対してより好ましい条件となる導波光検出器を実現できる。
【0101】
また、特に、不純物拡散領域の先端位置での誘電体層の厚さが、バッファ層として十分機能する値であり、なおかつ、その不純物拡散領域内にその厚みが0となるテーパ終端を持つ構成とすれば、テーパ終端を通過した後の伝搬距離を短くすることができる。この結果、光散乱損失を低減できるので、高光結合効率が得られる。
【0102】
また、特に、誘電体層の厚さが0である領域が20μm以上続く構成とすれば、高光結合効率での光結合を達成できる。
【0103】
また、本発明の導波光検出器の製造方法によれば、上記のような効果を奏することができる導波光検出器を容易に作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態1を示す、導波光検出器の断面図。
【図2】本発明の実施形態2を示す、導波光検出器の断面図。
【図3】本発明の実施形態3を示す、導波光検出器の断面図。
【図4】本発明の実施形態3を示す、導波光検出器の光結合特性を示すグラフ。
【図5】本発明の実施形態3を示す、反射防止膜機能を説明するための一部を拡大して示す導波光検出器の断面図。
【図6】本発明の実施形態3を示す、(a)、(b)は導波光検出器のテーパ部を多層膜構造と見なした場合の反射特性を示すグラフ。
【図7】本発明の実施形態3を示す、光導波路層が1層、窒化ケイ素膜が2層構造の導波光検出器の断面図。
【図8】本発明の実施形態3を示す、光導波路層が2層構造、窒化ケイ素膜が1層の導波光検出器の断面図。
【図9】本発明の実施形態3を示す、(a)はTEモードを例にとって、窒化ケイ素膜の厚さ変化に対する光結合特性の変化を示すグラフ、(b)はTMモードを例にとって、窒化ケイ素膜の厚さ変化に対する光結合特性の変化を示すグラフ。
【図10】本発明の実施形態4を示す、光導波路層が2層構造、窒化ケイ素膜が1層の導波光検出器の断面図。
【図11】本発明の実施形態4を示す、光導波路層が2層構造、窒化ケイ素膜が2層構造の導波光検出器の断面図。
【図12】テーパ導波路を用いた導波光検出器の従来例を示す断面図。
【図13】(a)はICと集積化された導波光検出器の一従来例を示す断面図、(b)はICと集積化された導波光検出器の他の従来例を示す断面図。
【図14】ICと集積化された導波光検出器の場合における段差の発生理由を説明するための製造プロセス図。
【符号の説明】
1、51 半導体基板
2、52 窒化ケイ素膜
3、53 誘電体層(バッファ層)
4、43、59 光導波路層
5、57 不純物拡散領域
6、16、26、56 テーパ部
7 受光領域
8、61 SiO2段差
9 受光部
10、60 導波光
11 電極
12 電極保護膜
21 第1窒化ケイ素膜
22 第2窒化ケイ素膜
41、54 第1誘電体層
42、55 第2誘電体層
52a 第1窒化ケイ素膜
52b 第2窒化ケイ素膜
58 誘電体層の膜厚が0になる領域
Claims (2)
- 同一の半導体基板上に、不純物拡散領域を有する光電変換素子と、該光電変換素子からの出力を処理するICとが設けられ、該半導体基板の上方に少なくとも一層の窒化ケイ素膜が設けられ、更に、該窒化ケイ素膜の上方に少なくとも一層からなる光伝搬用の光導波路が設けられた導波光検出器であって、
該窒化ケイ素膜上に、該窒化ケイ素膜の屈折率よりも低い屈折率を有する該光導波路層の最下層よりも屈折率の低い誘電体層が設けられており、
該誘電体層は、該光導波路層の光の伝搬方向に厚みを徐々に薄く形成されて終端における厚みが0になったテーパ状領域と、該テーパ状領域よりも該光導波路層の光の伝搬方向とは反対側に位置する一定の厚さの平坦領域とを有しており、
前記光導波路層は、該誘電体層の平坦領域上に位置する前部と、該誘電体層のテーパ状領域上に位置するテーパ部と、該テーパ部に連続して前記窒化ケイ素膜上に設けられた後部とを有し、該テーパ部と該後部とが該不純物拡散領域の形成時に前記半導体基板上に形成された段差部にて囲まれた領域内に設けられており、
前記不純物拡散領域中に、該光導波路層における該テーパ部の一部および該テーパ部に連続する該後部の一部に対して光結合可能な受光領域が設けられており、
該不純物拡散領域中における光導波路層内の伝搬光の光電変換に寄与する受光部の下方に位置する該窒化ケイ素膜の厚さが450nm〜550nmになっていることを特徴とする導波光検出器。 - 請求項1に記載の導波光検出器の製造方法において、
半導体基板上に光電変換素子形成のための不純物拡散領域を形成する工程と、
不純物拡散時に生じた該半導体基板上の酸化膜を除去する工程と、
該酸化膜を除去した該半導体基板上に少なくとも一層の窒化ケイ素膜を形成する工程と、
該窒化ケイ素膜上に前記光導波路層の最下層より屈折率の低い誘電体層を積層する工程と、
該誘電体層をテーパ状に加工する工程と、
テーパ状に加工された該誘電体層の上に少なくとも一層の該光導波路層を形成する工程と
を包含する導波光検出器の製造方法。
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