JP3557910B2 - 溶銑脱燐方法と低硫・低燐鋼の溶製方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶銑の高効率的な脱燐方法、特に、従来のハロゲン系化合物およびアルカリ系化合物を併用することなく、経済的に行うことができる溶銑の脱燐方法と、それと脱硫法とを組み合わせた低硫・低燐鋼の溶製方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
鉄鋼中の燐は鋼の機械的性質に大きな影響を及ぼす有害元素であることは良く知られている。特に低温衝撃特性の向上に、燐含有量の低減が効果的である。
【0003】
燐含有量の低減には、一応、原料段階と溶銑段階と溶鋼段階とが考えられるが、原料段階は別として、脱燐反応は低温の方が熱力学的に有利であることから、近年溶銑脱燐が広く普及している。
【0004】
従来の溶銑脱燐方法としては、野崎ら:鉄と鋼、68(1982)、p.1737に底吹き転炉を用いるCaO 系フラックスによる溶銑脱燐法が、田岡ら:川崎製鉄技報、15(1983) No.2 、p.120 に複合吹錬転炉で上吹きランスから生石灰粉を吹き付ける方法が報告されている。両報告とも溶銑脱燐にCaO 粉体を用いることが有効であると述べている。しかし、これらの方法は蛍石を併用している。蛍石は、CaFを主成分としており、容器内面に内張りしている耐火物の溶損を促進させ、容器補修の回数を増加させ、ひいては容器の予備を必要として不経済である。
【0005】
かかる溶銑脱燐法においても、最近、耐火物損耗を抑制し、かつ溶銑脱燐後のスラグの有効利用を狙った溶銑脱燐方法として、特開平8−311523号公報および特開平9−143529号公報に開示される方法が提案されている。それらの方法は、いずれも、従来必要と考えられていたCaFやCaClの滓化剤を添加せずに、粉体のCaO を用いて脱燐を行っている。
【0006】
しかし、これらの方法は、全量酸化カルシウム粉を使用するかもしくは微粉CaO 源を100 %使用する。従って、CaO を全量微粉にする費用を要し、また吹錬時間が粉体CaO の供給速度によって律速されるという問題がある。
このように従来法はいずれも、迅速処理と安定した高効率脱硫・脱燐を安価な手段で実現できる経済的な溶銑予備処理方法ということはできない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、そのような従来技術の改良法として、さらに経済的、効率的な迅速脱硫・脱燐処理を可能とする方法であって、CaO を主体とする脱硫・脱燐剤を用い、ハロゲン系化合物およびアルカリ系化合物を併用することなく、例えば10分以内という迅速脱硫・脱燐処理を行うことができ、さらに生成スラグの有効利用を可能とする溶銑予備処理方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
ここに、本発明者らは、かかる目的を達成すべく、安価な塊状生石灰源を最大限適切に使用することに着目し、そのような安価な塊状生石灰源の許容使用量を検討した。
【0009】
まず、反応速度を考慮し1300℃で完全溶融するような低塩基度スラグを考察した。ここで、「塩基度」はスラグ中の酸化カルシウムとシリカの比 (=CaO/SiO) を意味する。また「投入塩基度」は投入剤の組成を考慮して計算で予め求める塩基度を云う。
【0010】
FeO−CaO−SiO系状態図において、1300℃以下で溶融状態となる組成範囲等を考察すると、1300℃程度の処理温度で投入する塊状石灰源を滓化 (純粋のCaO 融点は2570℃と高い) させるには、脱燐スラグの (FeO)が30%の条件で、塩基度は0.4 〜1.1 の範囲にあることがわかる。
したがって、本発明にあって塩基度1.1 相当分までは塊状CaO 源使用が可能と考えた。
【0011】
次に、塩基度が1.1 を超えて例えば塩基度2へと、塩基度を上昇させる場合を考える。上述の状態図に関する説明より明らかなように、塩基度の上昇に伴ってスラグの融点は高くなっていく。すなわち、滓化しにくくなるので、そのような高塩基度の領域ではCaO 粉を酸素キャリアーで溶銑面に上吹きする、粉体CaO の活用が必要になる。
かかる構成により、はじめて脱硫・脱燐能の大きいカルシウム・フェライトの安価かつ迅速な生成が期待できる。
【0012】
かくして、本発明によれば、当初、塊状生石灰源を投入することで滓化したCaO による脱燐を行い、次いで塩基度1.1 を越えて目標塩基度 (1.5 〜2.5)までは粉体CaO の上吹きの効果で投入CaO の滓化を確保し、処理開始時から終了時まで安定した高効率の脱燐を実現することができる。
その際、Al 、Pの生成によるCaO 融点降下作用も活用することができ、それによりCaO の滓化は一層促進される。
【0013】
Al のCaO 融点降下に対する効果はCaO−Alの状態図からも容易に理解される。また、PのCaO 融点降下に対する効果はCaO−Pの状態図からも容易に理解される。すなわち、脱燐が進行すればするほどCaO は滓化し易くなり、脱燐反応速度は増大することが期待できる。
【0014】
以上の知見から完成された本発明は次の通りである。◇
(1) 転炉型反応容器に収容された溶銑に対して、スラグ中の CaO SiO 2 との質量比である塩基度が 1.1 以下である場合には少なくとも粒径が 20mm 以上である塊状生石灰源を投入し、また該塩基度が 1.1 を超える場合には、上吹きランスより予め決められた量の粒度が 100 メッシュ以下である酸化カルシウム粉を、溶銑1ton 当たり 0.5〜2.0Nm3/minの酸素とともに吹き付けるとともに、前記反応容器の炉底または側壁から溶銑1ton 当たり0.05〜0.40Nm3/min の攪拌用ガスを吹込むことを特徴とする溶銑脱燐方法。
また、この本発明に係る溶銑脱燐方法において、塩基度が 1.1 以下である場合には、上吹きランスより予め決められた量の粒度が 100 メッシュ以下である酸化カルシウム粉を吹き付ける。
【0015】
(2) 上吹きランスより吹き付ける前記酸化カルシウム粉を塊状生石灰源と酸化カルシウム粉との総量の40%以上とした、上記(1) 記載の溶銑脱燐方法。
(3) スラグ中のCaO とSiOの質量比で示す投入塩基度が1.5 〜2.5 となるように前記塊状生石灰源および酸化カルシウム粉を供給することを特徴とする上記(1) または(2) 記載の溶銑脱燐方法。
【0016】
(4) スラグ中Al 含有率を5%以上とする上記(3) 記載の溶銑脱燐方法。
(5) 溶銑脱硫をKR法で行った後、上記(1) ないし(4) のいずれかに記載の溶銑脱燐方法で溶銑脱燐し、次いで、得られた脱硫・脱燐溶銑を転炉で精錬することを特徴とする、[S] ≦0.005 %、[P] ≦0.015 %である低硫・低燐鋼の溶製方法。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明において上述のように処理条件を限定した理由とその作用についてそれぞれ説明する。
【0018】
本発明において用いる反応容器は、温度調節用に▲1▼酸素ガスとスクラップ、酸化鉄が装入でき、迅速脱硫・脱燐用に▲2▼攪拌機能を持つこと、十分な▲3▼フリーボードがあり、▲4▼塩基性ライニングで▲5▼排滓が容易なこと、さらに▲6▼排ガス処理設備 (集塵機) が必要で安定稼働を実現できるという条件を満たすものとして、転炉型反応容器を選択した。
【0019】
本発明の実施に当たって、脱燐吹錬を10分以内 (望ましくは8分以内) とすべく、上吹き酸素と底吹き攪拌ガスの条件を検討した。
上吹き酸素については、溶銑[Si]=0.1 〜1.0 %程度 (高炉炉況、脱燐前の脱珪実施有無の影響等を受ける) の場合、必要酸素原単位は、脱珪 (1〜8Nm/t)、脱燐 (約1Nm/t)、そして付随して生じる脱炭と鉄の酸化等 (2〜7Nm/t)を考慮すると、4〜16Nm/t 程度である。8分間中の1分間当たりの量ではその1/8 となる。8分間の吹錬の場合で、上吹き酸素量は溶銑1ton 当たり0.5 〜2.0 Nm/min が望まれる。
【0020】
次に、炉底または側壁からの吹き込み攪拌用ガス (例:窒素、二酸化炭素、アルゴン等、具体的種類は製鋼工場のローカルコンディションで決定) は、溶銑とCaO の滓化およびスラグの攪拌に有用であり、その適正範囲が存在する。
脱燐反応速度を向上させ、10分以内の迅速吹錬を満たす必要最小限の供給速度が▲1▼ガスコスト、▲2▼羽口耐火物溶損抑制の観点より好ましい。
【0021】
したがって、本発明にあって、攪拌用ガスの流量範囲は溶銑1ton 当たり0.05〜0.40Nm/min と定めた。これは適正攪拌により反応速度を確保し、スラグ中の酸化鉄(FeO) レベルを制御したいからである。
【0022】
本発明における脱燐反応は(1) 式で表せる。
3(CaO) +5(FeO)+2[P]=3CaO・P+5[Fe] ・・・(1)
脱燐の進行は、(1) 式よりCaO を早期に滓化させ、かつ(FeO) をコントロールすることが重要である。
【0023】
攪拌用ガスについて、溶銑1ton 当たり0.05Nm/min を下限にしたのは、それ未満になると反応が遅くなり過ぎ、10分以内で所要の (例えば80%以上の) 脱燐効率を得ることができないからである。また、溶銑1ton 当たり0.40Nm/min 超になると、(FeO) が溶銑中の炭素で還元され (上吹き酸素との適正なバランスがくずれ) 、(FeO) 不足で▲1▼脱燐不良、スラグの融点上昇による粒鉄の懸濁で▲2▼歩留低下を生じるからである。また、羽口耐火物溶損、ガスコストもガス流量の増大とともに増加する傾向がある。
【0024】
ここに、塊状生石灰源とは、生石灰、石灰石、低燐転炉スラグ、取鍋スラグ等であり、CaO 分を40%以上含み、燐の含有量が1%以下のものであって、従来のようにコストのかかる粉化処理を行わない、塊状のものを言う。これらの塊状生石灰源は単独でもあるいは複数併用してもよい。
【0025】
上記の数値限定理由は、安価CaO 源として石灰石、各種スラグの有効利用を指向するが、熱的バランスの観点よりCaO 分が40%以上でないと、スラグ量が増大してヒートロスが大きくなり、有価金属のスラグ中へのロスも無視できず、経済的でなくなるからである。
【0026】
溶銑脱燐後のスラグ中の燐の含有量は、通常2〜4%であり、脱燐剤として用いる安価なCaO 源中の燐の含有量は1%以下でないと (低ければ、低いほど良い) 脱燐効率が顕著に悪化するからである。
【0027】
塊状生石灰源のサイズ (粒径) は、炉上バンカーから投入する場合は、投入可能な30〜50mm程度が好ましい。ただし、これはバンカー設備に依存し20〜80mmで可の場合もある。スクラップシュート等を用いる場合は、100 mm程度でも可能である。
【0028】
一方、上記塊状生石灰源とは別途投入する酸化カルシウム(CaO) 粉の粒度は100 メッシュ(149μm) 以下、より好ましくは200 メッシュ (74μm) 以下である。
【0029】
本発明の好適態様によれば、塊状生石灰源は、滓化のし易い投入塩基度0.4 〜1.1 相当分を初期に投入し、それと同時にあるいはその後に酸化カルシウム粉は所定量を酸素とともに予め定められた期間吹き付ける。
【0030】
上記塊状生石灰投入時期の限定理由は、溶銑に酸素を吹き付けるとSi→SiO (Si吹き) の反応が吹錬初期に起きるので、塊状CaO とSiOによるカルシウムシリケイト(CaO・SiO) 生成反応を促進し、CaO−SiO−FeO系スラグを作って、迅速に脱燐を進行させるためである。
【0031】
本発明の好適態様において、塩基度0.4 〜1.1 相当分に塊状生石灰源を限定するのは、CaO−SiO−FeO系状態図より1300℃程度の処理温度で溶融領域を考えると、塩基度0.4 〜1.1 になるからである。投入塩基度1.1 超では、投入した塊状生石灰源は滓化し難くそのままの状態で大部分浮遊するのみである。
【0032】
塩基度1.1 を越えると滓化しにくくなるので、酸素キャリアーでのCaO 粉を上吹きし、粉体を溶銑に侵入させ、形成されるカルシウムフェライト(CaO・FeO)で脱燐しつつ (脱燐生成物Pがスラグ中に吸収されるとスラグの融点を降下させる) 、塩基度を上昇し、脱燐を加速する。
【0033】
酸化カルシウム粉は塊状生石灰源を添加直後より供給開始してもよいし、Si吹き後 (通常吹錬2分程度経過後) に供給開始してもよい。塊状生石灰源と併用するので、CaO 粉の供給速度は、従来の全量粉体供給の場合と比べ、供給量が減少するので、フレキシビリティをもち、溶銑条件、目標[P] に対応して、各種パターンが可能である。
【0034】
ここに、本発明にあって塊状生石灰源と「併用する」とは、両者を用いるとの趣旨であり、その好適態様によれば、塊状生石灰源を、初期に投入し、それと同時にあるいはある期間経過後に塊状生石灰源の投入に重複させて酸化カルシウム粉を投入する。
【0035】
本発明のさらに好適な態様にあっては、上吹きランスより吹き付ける酸化カルシウム粉の量を塊状生石灰源と酸化カルシウム粉との総量の40%以上とする。
この理由は、80%以上の溶銑脱燐率 (例、[P] 0.100 %→0.020 %以下) が通常期待されており、図1に示す本発明にかかる脱燐方法における塩基度と脱燐率とを示すグラフからも分かるように、脱燐スラグの塩基度は1.8 以上が必要である。塊状生石灰源で塩基度1.1 まで調整した場合、1.8 まで塩基度を上昇するには粉体CaO は[(1.8−1.1)/1.8×100 =39→約40%) CaO 総量の40%以上必要であるからである。
【0036】
さらに別の本発明の好適態様にあっては、スラグ中のCaO とSiOの質量比で示す投入塩基度が1.5 〜2.5 となるように前記塊状生石灰源および酸化カルシウムを供給してもよい。
【0037】
規格[P] の緩い鋼種は脱燐率が75%でよく、その場合、同じく図1より塩基度は1.5 程度である。鋼種により90%以上の脱燐率が要求される場合がある。その場合、塩基度は2.5 程度が必要になる。
さらに別の本発明の好適態様にあっては、スラグ中Al 含有率を5%以上としてもよい。
【0038】
Al を添加することで、CaO の融点降下が見られるが、本発明の場合、さらに、Al 含有率5〜10%が融点を下げ、蛍石レス (ハロゲン系化合物、アルカリ系化合物を添加しない) の脱燐に効果が大きいことが分かった。Al 含有率10%以上の場合の方が融点降下の度合いは大きい。しかし、Al 含有率10%を越えて増加するに従い、脱燐は悪化する傾向が認められた。通常取鍋スラグ中にはAl が1〜3kg/t含有されている。この取鍋スラグを用いれば (必要に応じAl 源の追加調整も可) 脱燐後のスラグ中にAl を5%程含有させることが可能である。
【0039】
なおさらに別の本発明の好適態様にあっては、溶銑脱硫をKR法( 溶銑の機械的攪拌による脱硫) で行った後、これまで説明してきた溶銑脱燐方法で溶銑脱燐し、次いで転炉でこの脱硫・脱燐溶銑を精錬するようにしてもよい。これにより、[S] ≦0.005 %・[P] ≦0.015 %である低硫・低燐鋼を溶製することができる。
【0040】
最近、高純度・高靱性鋼に対するニーズの増大に対応し、 (極) 低硫・ (極) 低燐化が益々増大している。本発明者は溶銑脱燐だけでなく、溶銑脱硫も含めたベストプロセスを構築すべく、検討を深めた。その結果、KR法で溶銑脱硫→除滓→複合吹錬転炉で溶銑脱燐→転炉精錬の一連のプロセスが工業的に経済的な (極) 低硫・ (極) 低燐鋼製造方法であることを知見した。
【0041】
すなわち、まず、溶銑脱硫に関し、溶銑に浸漬させたランスより生石灰系脱硫剤を吹き込むインジェクション方法と、芯金に耐火物をライニングした羽根を機械的に回転させ生石灰系脱硫剤とともに溶銑を攪拌するKR法とを比較した。
【0042】
例えば、[S] を0.030 %から0.004 %まで脱硫する場合、実際の250tonの溶銑鍋データでは脱硫剤原単位は、KR法はインジェクション法の約6割の原単位であった。
【0043】
これは、インジェクション法の場合、吹き込まれた脱硫剤は浮上した後はほとんど反応に寄与せず、未反応分が多いからであり、KR法の場合、攪拌中は常に脱硫剤と溶銑の混合が行われ、脱硫剤利用効率が優れているからである。
【0044】
転炉型反応容器で溶銑脱硫と溶銑脱燐を行う、[S] 、[P] の両方を精錬することも検討した。熱力学的に脱硫は低酸素ポテンシャル下 [低(FeO) 下] で反応を進行させ、脱燐は高ポテンシャル下で行う。脱硫は、脱燐後に除滓せずに、生石灰系脱硫剤をKR法と同じ原単位添加して行い、その際に、攪拌ガス・処理時間条件を変えて調査した。結果は不良で、脱硫処理後の[S] はすべて0.010 %を越えていた。
【0045】
KR法によれば、低硫化だけでなく、[S] を極低硫域(0.003%以下) まで溶銑脱硫することも可能である。80%以上脱燐した溶銑の転炉吹錬により、低燐鋼([P]≦0.015 %) の量産と、極低燐鋼 (例えば [P]=0.007 %) の溶製も可能である。
【0046】
かくして、本発明によれば、KR法→溶銑脱燐方法→転炉精錬を組合わせることにより経済的に低硫・低燐鋼が大量に溶製でき、高純度鋼に対する今日的ニーズ増大にマッチングできる。
【0047】
特に、本発明の場合、得られる脱燐スラグは未反応CaO 分をほとんど含まないため路盤材としての有効利用が可能となり、その経済性は高い。
次に、実施例によって本発明の作用効果をさらに具体的に説明する。
【0048】
【実施例】
本例では、脱燐処理前の成分:[C] =4.4 〜4.8 %、[Si]=0.3 〜0.6 %、[Mn]=0.25〜0.35%、[P] =0.10〜0.12%、[S] <0.01%、脱燐処理前の温度=1320〜1340℃の溶銑160 ton について、下記の通り各処理条件を変えて、複合吹錬転炉にて溶銑脱燐処理を行った。
【0049】
本例における塊状生石灰源と酸化カルシウム粉との投入のタイミングは、塊状生石灰源を吹錬スタート時に、酸化カルシウム粉を吹錬期間の10〜75%間に投入した。
【0050】
処理条件
処理時間:7〜10分
塊状生石灰源:平均粒径は30〜50mmの生石灰
酸化カルシウム粉:粒度は 200メッシュ (74μm) 以下。
【0051】
(実施例1)
表1に本発明例と比較例とについて処理条件および結果をまとめて示す。
本発明例1〜3と比較例1〜2を対照すると、塊状CaO 源の全CaO に対する使用割合の影響が分かる。比較例1の全量塊状添加の場合、脱燐率は65%と脱燐不良である。この原因は滓化不足 (滓化率約70%) によると考えられる。
【0052】
本発明例1、2、3の滓化率はそれぞれ96%、95%、93%と高く安定していた。塊状生石灰源を用いても、CaO 粉の割合を40%以上確保すれば脱燐率は84%以上であり、CaO 粉の割合を40%から100 %にしても、脱燐率向上効果は高々4%である。
【0053】
本発明例1〜3と比較例1〜2、アルミナ源として取鍋スラグを8kg/t各々使用した本発明例4〜6と比較例3〜4をそれぞれ対照すると、滓化促進剤のAl をスラグ中に7%含有した効果が分かる。1%のみの場合に対し、脱燐率を1〜5%向上できる。
【0054】
本発明例1〜3と比較例1〜2、本発明例7〜9と比較例5〜6をそれぞれ対照すると、投入塩基度を2.0 から1.7 に低減した場合、脱燐率が2〜8%低下することが分かる。
【0055】
本発明例1〜3と比較例1〜2、本発明例10〜12と比較例7〜8をそれぞれ対照すると、投入塩基度を2.0 から2.5 に増加した場合、脱燐率が1〜5%向上することが分かる。
【0056】
本発明例13〜15と比較例9〜10を対照すると、底吹きガス量が少な過ぎても、多過ぎても、脱燐率は80%未達で75%と76%にとどまることが分かる。これは反応速度不足やスラグ(FeO) 不足によると考えられる。ガス攪拌量がそれぞれ0.07Nm/min・t 、0.15 Nm/min・t 、0.36 Nm/min・t の場合は、80%以上の脱燐率が確保できた。
【0057】
実施例16〜18と比較例11〜12を対照すると、上吹送酸速度にも適正範囲のあることが確認できる。上吹送酸速度が0.4Nm/min・t と少な過ぎる場合の脱燐率は76%であり、2.2Nm/min・t と多過ぎる場合の脱燐率は78%で、いずれもスラグ中(FeO) の制御不足と考えられ、送酸速度が2.2Nm/min・t の多過ぎる場合は脱炭も進行し過ぎ、通常の脱燐後 [C]=3.8 〜4.0 %に対して[C] =3.4 %にまで低下した。
【0058】
上吹送酸速度が0.6Nm/min・t 、0.9Nm/min・t 、1.5Nm/min・t の場合は80%以上の脱燐率が確保できた。
本発明例2、3と比較例13を対照すると、脱燐率はほぼ同様の85%であるが、比較例13のように、蛍石を使用してスラグ中(CaF)=10%に制御した場合は、耐火物目地部の溶損が激しく、耐火物寿命は、蛍石を用いない溶銑脱燐法である本発明例2、3の2/3 であることが分かる。
【0059】
(実施例2)
処理前[S] =0.030 %の溶銑に生石灰系脱硫剤6kg/tを添加してKR法で処理し、[S] =0.003 %まで脱硫した。その溶銑を複合吹錬転炉に注銑し、表1の本発明例3と同様な条件で溶銑脱燐した([P]変化:0.114 %→0.018 %) 。次に、脱硫・脱燐溶銑を転炉精錬 (生石灰10kg/tと軽焼ドロマイト8kg/tを添加) した。終点温度は、1640℃で[P] =0.006 %まで脱燐できた。
【0060】
出鋼後、RHで仕上げ精錬し、連続鋳造した。[S] =0.003 %、[P] =0.006 %の低硫・低燐の薄板用スラブを製造できた。
また、処理前[S] =0.030 %の溶銑に生石灰系脱硫剤6kg/tを添加してKR法で処理し、[S] 0.003 %まで脱硫した。その溶銑を複合吹錬転炉に注銑し、表1の本発明例6と同様な条件で溶銑脱燐した([P]変化:0.114 %→0.016 %) 。次に脱硫・脱燐溶銑を転炉吹錬 (生石灰10kg/tと軽焼ドロマイト8kg/tを添加) した。終点温度は1660℃で[P] =0.006 %まで脱燐できた。
【0061】
出鋼中マンガン合金鉄等を投入し、出鋼後RHで仕上げ精錬し、連続鋳造した。[Mn]=1.15%に調整時、合金中に含まれる[P] の影響を受け[P] は上昇した。製鋼段階で[S] =0.003 %、[P] =0.010 %の低硫・低燐の厚板用スラブを製造できた。
【0062】
【表1】
Figure 0003557910
【0063】
【発明の効果】
本発明により、CaO を主体とする脱燐剤を用い、ハロゲン系化合物およびアルカリ系化合物を併用することなく、効率的かつ経済的に溶銑脱燐を行うことが可能になった。すなわち、本発明によれば次のような効果が得られる。
【0064】
(1) ハロゲン系化合物およびアルカリ系化合物を用いないので、耐火物溶損が改善され、5割程度延命できる (従来は蛍石等を滓化剤として使用し、耐火物目地部の溶損が激しかった) 。
【0065】
(2) 安価塊状生石灰源を併用使用するので経済的である。当然、塊状転炉滓や取鍋スラグ活用も可能であり、取鍋スラグ中のAl も有効利用できる。
(3) 塊状生石灰と併用であるので、CaO 粉体供給速度は、従来の全量粉体供給と比べ、供給量が減少するので、フレキシビリティが増大し、粉体供給設備費用も全量粉体供給と比べ削減できる。
【0066】
(4) 粉体供給はランスから上吹きするので、底吹き羽口からの供給と異なり、浴深さ・浴揺動に伴う圧力変動を受けず、安定供給可能である。
(5) 底吹き羽口から大量の酸素を供給する場合は、羽口の異常溶損対策が必要であるが、ランスからの上吹きなので、羽口異常溶損の恐れはない。
【0067】
(6) 高効率の脱燐反応を終えた生成スラグは路盤材としての有効利用も可能となる。本発明スラグの滓化率は高く、未反応のCaO 分が少ない。スラグの有効利用という観点からも、地球に優しい溶銑予備処理方法である。
【0068】
(7) 溶銑脱硫に関しては、溶銑脱燐前にKRで (インジェクション脱硫方法を凌駕して) 高効率脱硫できる。従って、経済的に低硫・低燐鋼の溶製ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる脱燐法における塩基度と脱燐率の関係を示すグラフである。

Claims (6)

  1. 転炉型反応容器に収容された溶銑に対して、スラグ中の CaO SiO 2 との質量比である塩基度が 1.1 以下である場合には少なくとも粒径が 20mm 以上である塊状生石灰源を投入し、また該塩基度が 1.1 を超える場合には、上吹きランスより予め決められた量の粒度が 100 メッシュ以下である酸化カルシウム粉を、溶銑1ton 当たり 0.5〜2.0Nm3/minの酸素とともに吹き付けるとともに、前記反応容器の炉底または側壁から溶銑1ton 当たり0.05〜0.40Nm3/min の攪拌用ガスを吹込むことを特徴とする溶銑脱燐方法。
  2. 前記塩基度が 1.1 以下である場合には、上吹きランスより予め決められた量の粒度が 100 メッシュ以下である酸化カルシウム粉を吹き付ける請求項1記載の溶銑脱燐方法。
  3. 上吹きランスより吹き付ける前記酸化カルシウム粉を塊状生石灰源と酸化カルシウム粉との総量の 40 %以上とした、請求項1又は請求項2記載の溶銑脱燐方法。
  4. スラグ中の CaO SiO 2 の質量比で示す投入塩基度が 1.5 2.5 となるように前記塊状生石灰源および酸化カルシウム粉を供給することを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載の溶銑脱燐方法。
  5. スラグ中 Al 2 O 3 含有率を5%以上とする請求項4記載の溶銑脱燐方法。
  6. 溶銑脱硫を KR 法で行った後、請求項1から5までのいずれかに記載の溶銑脱燐方法で溶銑脱燐し、次いで、得られた脱硫・脱燐溶銑を転炉で精錬することを特徴とする、 [S] 0.005 %、 [P] 0.015 %である低硫・低燐鋼の溶製方法。
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