JP3550672B2 - 液晶配向剤および液晶表示素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶表示素子の液晶配向膜を形成するために用いる液晶配向剤に関する。さらに詳しくは、液晶配向性が良好であり、かつラビング条件などに影響されずに高プレチルト角が得られる液晶配向膜を形成することができる液晶配向剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、透明導電膜を介して液晶配向膜が表面に形成されている2枚の基板の間に、正の誘電異方性を有するネマチック型液晶の層を形成してサンドイッチ構造とし、前記液晶分子の長軸が一方の基板から他方の基板に向かって連続的に90度捻れるようにしたTN(Twisted Nematic)型液晶セルを有するTN型液晶表示素子が知られている。このTN型液晶表示素子における液晶の配向は、通常、ラビング処理により液晶分子の配向能が付与された液晶配向膜により実現される。ここに、液晶配向膜の材料としては、従来より、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステルなどの樹脂が知られており、特にポリイミドは、耐熱性、液晶との親和性、機械的強度などに優れているため多くの液晶表示素子に使用されている。
【0003】
しかしながら、従来知られているポリイミドなどからなる液晶配向膜を用いてTN型液晶表示素子などを作製した場合、液晶表示素子のプレチルト角が低いために表示不良を生じるという問題がある。このため、高プレチルト角が得られる液晶配向膜を形成できる液晶配向剤の開発が望まれている。従来、高プレチルト角を発現するためにポリイミド末端部、側鎖部への長鎖アルキル基の導入が一般的に行われてきた。しかし、この長鎖アルキル基で修飾したポリイミド配向膜は、ラビングによる配向処理の条件などによってプレチルト角が変化するという、プレチルト角の工程安定性に欠けるといった短所があった。
【0004】
また、従来のポリイミド配向膜を用いると、上記プレチルト角特性の他にも、液晶表示素子中に組み込んだときに、電圧保持率が低いために表示品位が低下したり、残留電荷が大きいために残像現象を引き起こしたり、加熱通電を行う信頼性試験中に白シミと呼ばれる表示欠陥が生じるなどといった問題がある。また、液晶配向膜のラビング処理の際に液晶配向膜表面が傷つき、液晶表示素子の表示不良を招く、という問題もある。このため、ラビング傷が少なく、液晶配向性に優れ、電圧保持率が高く、残像が少なくかつ信頼性に優れた液晶表示素子を与え、形成工程に依存することなく高プレチルト角が得られる液晶配向膜を形成することができる液晶配向剤の開発が望まれている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、本発明の第1の目的は、形成工程に依存することなく高プレチルト角が得られる液晶配向剤を提供することにある。
本発明の第2の目的は、優れた液晶配向性を有する液晶表示素子を構成することができる液晶配向剤を提供することにある。
本発明の第3の目的は、電圧保持率の高い液晶表示素子を構成することができる液晶配向剤を提供することにある。
本発明の第4の目的は、残像の少ない液晶表示素子を構成することができる液晶配向剤を提供することにある。
本発明の第5の目的は、信頼性に優れた液晶表示素子を構成することができる液晶配向剤を提供することにある。
本発明の第6の目的は、ラビング傷がつきにくい液晶配向膜を形成することができる液晶配向剤を提供することにある。
本発明のさらに他の目的および利点は以下の説明から明らかになろう。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、本発明の上記目的および利点は、
[A]下記式(I)
【0007】
【化8】
【0008】
ここで、R1およびR2は互に独立してメチル基あるいはエチル基を示し、aは0〜4の整数である、
で表されるテトラカルボン酸二無水物(以下、「化合物(I)」ともいう)および下記式(II)
【0009】
【化9】
【0010】
ここでR3、R4、R5およびR6は互に独立して水素原子あるいはメチル基を示す、
で表されるシクロブタン環含有テトラカルボン酸二無水物(以下、「化合物(II)」ともいう)よりなる群から選ばれる少なくとも1種のテトラカルボン酸二無水物並びに下記式(III)
【0011】
【化10】
【0012】
ここでR7はステロイド骨格を有する2価の有機基を示す、
で表されるテトラカルボン酸二無水物(以下、「化合物(III)」ともいう)と、[B]下記式(IV)
【0013】
【化11】
【0014】
ここでR8は、ハロゲン原子、アルキル基またはアルコキシル基であり、bは0〜4の整数である、
で表されるフェニレンジアミン化合物(以下、「化合物(IV)」ともいう)および
下記式(V)
【0015】
【化12】
【0016】
ここで、R9は−CH2−、−O−、−S−、
下記式(i)
【0017】
【化13】
【0018】
で表される基または下記式(ii)
【0019】
【化14】
【0020】
で表される基であり、R10およびR11は互に独立してハロゲン原子またはアルキル基であり、cおよびdは互に独立して0〜4の整数である、
で表されるジアミン化合物(以下、「化合物(V)」ともいう)、
とを反応させることにより得られるポリアミック酸(以下、「特定重合体A」ともいう)および該ポリアミック酸を脱水閉環させて得られるイミド化重合体(以下、「特定重合体B」ともいう)よりなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体を含有することを特徴とする液晶配向剤によって達成される。
以下、本発明についてその詳細を説明する。
本発明の液晶配向剤は、化合物(I)、化合物(II)および化合物(III)からなるテトラカルボン酸二無水物と、化合物(IV)および化合物(V)からなるジアミン化合物とを反応させることにより得られる特定重合体Aおよび/または特定重合体Bを含有する。
【0021】
<化合物(I)>
本発明に用いられる化合物(I)は、上記式(I)で表されるテトラカルボン酸二無水物であり、これを用いることにより、電圧保持率の高い液晶表示素子を与える液晶配向剤が得られる。
化合物(I)としては、例えば1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−エチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−7−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−7−エチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−エチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5,8−ジメチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオンなどを挙げることができる。これらは、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0022】
<化合物(II)>
本発明に用いられる化合物(II)は、上記式(II)で表されるシクロブタン環含有テトラカルボン酸二無水物であり、これを用いることにより、ラビング傷が生じにくい液晶配向剤が得られる。これは、化合物(II)が剛直なシクロブタン構造を有しているためと考えられる。
化合物(II)としては、例えば1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,4−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1−メチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物などを挙げることができる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられる。
これらのうちで、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物および1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物は、これらを用いて得られる液晶配向剤から形成される液晶配向膜が、特に長期に渡って良好な液晶配向性を有する点から特に好ましい。
【0023】
<化合物(III)>
本発明に用いられる化合物(III)は、上記式(III)で表されるステロイド骨格を有するテトラカルボン酸二無水物であり、これを用いることにより、形成工程に依存することなく高プレチルト角を発現する液晶配向膜が得られる。ポリアミック酸および/またはイミド化重合体の成分として、ステロイド骨格を有する化合物を用いて高プレチルト角を発現させる方法としては、この他に、ステロイド骨格を有するジアミン化合物を用いる方法が挙げられるが、プレチルト角発現性が形成工程に依存しないこと、ポリアミック酸からなる液晶配向剤を加熱脱水閉環処理して液晶配向膜とする際に低温で処理できることなどから、化合物(III)を用いる方法がより好ましい。
化合物(III)としては、例えば下記式(1)または(2)
【0024】
【化15】
【0025】
で表される化合物を挙げることができる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0026】
<化合物(IV)>
本発明に用いられる化合物(IV)は、上記式(IV)で表されるフェニレンジアミン化合物であり、これを用いることにより、残像の少ない液晶配向剤が得られる。
化合物(IV)を表す上記式(IV)において、ハロゲン原子としては、例えばフッ素、塩素、臭素などを挙げることができ、アルキル基としては炭素数1〜4の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が好ましく、またアルコキシル基としては炭素数1〜4の直鎖状または分岐鎖状のアルコキシル基が好ましい。
このような化合物(IV)としては、例えば1,2−フェニレンジアミン、3−メチル−1,2−フェニレンジアミン、4−メチル−1,2−フェニレンジアミン、4,5−ジメチル−1,2−フェニレンジアミン、3−エチル−1,2−フェニレンジアミン、3−メチル−1,2−フェニレンジアミン、4−エチル−1,2−フェニレンジアミン、4,5−ジエチル−1,2−フェニレンジアミン、3−メトキシ−1,2−フェニレンジアミン、4−メトキシ−1,2−フェニレンジアミン、4,5−ジメトキシ−1,2−フェニレンジアミン、3−エトキシ−1,2−フェニレンジアミン、4−エトキシ−1,2−フェニレンジアミン、3−クロロ−1,2−フェニレンジアミン、4−クロロ−1,2−フェニレンジアミン、3−フルオロ−1,2−フェニレンジアミン、4−フルオロ−1,2−フェニレンジアミン、1,3−フェニレンジアミン、2−メチル−1,3−フェニレンジアミン、4−メチル−1,3−フェニレンジアミン、5−メチル−1,3−フェニレンジアミン、2−エチル−1,3−フェニレンジアミン、4−エチル−1,3−フェニレンジアミン、5−エチル−1,3−フェニレンジアミン、2−メトキシ−1,3−フェニレンジアミン、4−メトキシ−1,3−フェニレンジアミン、5−メトキシ−1,3−フェニレンジアミン、4−エトキシ−1,3−フェニレンジアミン、5−エトキシ−1,3−フェニレンジアミン、4−クロロ−1,3−フェニレンジアミン、5−クロロ−1,3−フェニレンジアミン、4−フルオロ−1,3−フェニレンジアミン、5−フルオロ−1,3−フェニレンジアミン、1,4−フェニレンジアミン、2−メチル−1,4−フェニレンジアミン、2,3−ジメチル−1,4−フェニレンジアミン、2,5−ジメチル−1,4−フェニレンジアミン、2,6−ジメチル−1,4−フェニレンジアミン、2,3−ジエチル−1,4−フェニレンジアミン、2,5−ジエチル−1,4−フェニレンジアミン、2,6−エチル−1,4−フェニレンジアミン、2−メトキシ−1,4−フェニレンジアミン、2−エトキシ−1,4−フェニレンジアミン、2−クロロ−1,4−フェニレンジアミン、2,3−ジクロロ−1,4−フェニレンジアミン、2,5−ジクロロ−1,4−フェニレンジアミン、2,6−ジクロロ−1,4−フェニレンジアミン、2−フルオロ−1,4−フェニレンジアミン、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレンジアミン、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレンジアミン、2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレンジアミンなどが挙げられる。これらの内、1,2−フェニレンジアミン、1,3−フェニレンジアミン、1,4−フェニレンジアミン、2−メチル−1,4−フェニレンジアミン、2−エチル−1,4−フェニレンジアミン、2−メトキシ−1,4−フェニレンジアミン、2−エトキシ−1,4−フェニレンジアミン、2−クロロ−1,4−フェニレンジアミンおよび2−フルオロ−1,4−フェニレンジアミンが好ましく、1,3−フェニレンジアミンおよび1,4−フェニレンジアミンが特に好ましい。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0027】
<化合物(V)>
本発明に用いられる化合物(V)は、上記式(V)で表されるジアミン化合物であり、これを用いることにより、信頼性に優れた液晶表示素子を与える液晶配向剤が得られる。
化合物(V)を表す上記式(V)において、ハロゲン原子およびアルキル基としては、上記式(IV)について前述したものと同じものを挙げることができる。このような化合物(V)としては、例えば4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリンなどを挙げることができる。これらの内、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパンおよび4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリンが好ましく、4,4’−ジアミノジフェニルメタンおよび4,4’−ジアミノジフェニルエーテルが特に好ましい。これらは1種または2種以上を組み合わせて用いられる。
【0028】
<テトラカルボン酸二無水物の組成比>
特定重合体Aおよび/または特定重合体B中の化合物(I)、化合物(II)および化合物(III)の総モル数を基準にして、化合物(I)、化合物(II)および化合物(III)の割合は、好ましくは化合物(I)および/または化合物(II)70〜99モル%並びに化合物(III)1〜25モル%であり、さらに好ましくは化合物(I)70〜97モル%、化合物(II)2〜30モル%および化合物(III)1〜25モル%である。また、化合物(III)の使用割合が1モル%未満だと高プレチルト角が得られ難くなり、25モル%を超えるとポリアミック酸およびポリイミドの溶媒への溶解性が低下する場合がある。また、化合物(II)の使用割合が2モル%未満だとラビング傷低減の効果が発現しにくい場合があり、30モル%を超えると、得られる液晶配向剤の保存安定性が低下する場合がある。
【0029】
<ジアミン化合物の組成比>
特定重合体Aおよび/または特定重合体B中の化合物(IV)および化合物(V)の総モル数を基準にして、化合物(IV)および化合物(V)の割合は、好ましくは化合物(IV)10〜90モル%および化合物(V)10〜90モル%である。化合物(IV)の使用割合が10モル%未満だと液晶表示素子の残像改良効果が少なくなる場合があり、90モル%を超えると液晶表示素子の信頼性が低下する場合がある。また、化合物(V)の使用割合が10モル%未満だと液晶表示素子の信頼性が低下する場合があり、90モル%を超えると高プレチルト角が得られ難くなる。
【0030】
また、特定重合体Aおよび/または特定重合体Bには、本発明の効果を発現し得る範囲において、他のテトラカルボン酸二無水物や他のジアミン化合物を使用することができる。他のテトラカルボン酸二無水物の使用割合は、全テトラカルボン酸二無水物を基準にして30モル%以下であることが好ましく、また他のジアミン化合物の使用割合は全ジアミン化合物を基準にして80モル%以下であることが好ましい。
【0031】
<他のテトラカルボン酸二無水物>
かかる他のテトラカルボン酸二無水物としては、例えばブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,5,6−トリカルボキシノルボルナン−2−酢酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物などの脂肪族または脂環族テトラカルボン酸二無水物;ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’−パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルエーテル二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルメタン二無水物などの芳香族テトラカルボン酸二無水物を挙げることができる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0032】
<他のジアミン化合物>
かかる他のジアミン化合物としては、例えば4,4’−ジアミノジフェニルエタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノベンズアニリド、1,5−ジアミノナフタレン、3,3−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、5−アミノ−1−(4’ーアミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、6ーアミノ−1−(4’ーアミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、、9,9−ビス(4−アミノフェニル)−10−ヒドロアントラセン、2,7−ジアミノフルオレン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、4,4’−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)、2,2’,5,5’−テトラクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジクロロ−4,4’−ジアミノ−5,5’−ジメトキシビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、4,4’−ビス[(4−アミノ−2−トリフルオロメチル)フェノキシ]−オクタフルオロビフェニルなどの芳香族ジアミン化合物;
1,1−メタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、4,4−ジアミノヘプタメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、テトラヒドロジシクロペンタジエニレンジアミン、ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダニレンジメチレンジアミン、トリシクロ[6.2.1.02,7]−ウンデシレンジメチルジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)などの脂肪族、脂環式ジアミン化合物;
以下の化合物(3)〜(9)などで表されるステロイド骨格を有するジアミン化合物を挙げることができる。
【0033】
【化16】
【0034】
【化17】
【0035】
これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0036】
<特定重合体Aの合成>
本発明の液晶配向剤を構成する特定重合体Aは、上記テトラカルボン酸二無水物と上記ジアミン化合物との反応により合成される。特定重合体Aの合成反応に供されるテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との使用割合は、ジアミン化合物に含まれるアミノ基1当量に対して、テトラカルボン酸二無水物に含まれる酸無水物基が0.2〜2当量となる割合が好ましく、さらに好ましくは0.3〜1.2当量となる割合である。特定重合体Aの合成反応は、有機溶媒中で通常0〜150℃、好ましくは0〜100℃の温度条件下で行われる。
特定重合体Aの合成に用いられる有機溶媒としては、テトラカルボン酸二無水物、ジアミン化合物および生成する特定重合体Aを溶解し得るものであれば特に制限はなく、例えばγ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホトリアミドなどの非プロトン系極性溶媒;m−クレゾール、キシレノール、フェノール、ハロゲン化フェノールなどのフェノール系溶媒を挙げることができる。有機溶媒の使用量(a)としては、反応原料であるテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との総量(b)が反応溶液の全量(a+b)に対して0.1〜30重量%になるような量であることが好ましい。
【0037】
なお、上記有機溶媒には、特定重合体Aの貧溶媒であるアルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、ハロゲン化炭化水素類、炭化水素類などを、生成するポリアミック酸Aが析出しない範囲で併用することができる。かかる貧溶媒の具体例としては、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジエチル、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコール−n−プロピルエーテルアセテート、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,4−ジクロロブタン、トリクロロエタン、クロルベンゼン、o−ジクロルベンゼン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエンおよびキシレンなどを挙げることができる。以上の合成反応によって、特定重合体Aを溶解してなる反応溶液が得られる。そして、この反応溶液を大量の貧溶媒中に注いで析出物を得、この析出物を減圧下乾燥することにより特定重合体Aを得ることができる。また、この特定重合体Aを再び有機溶媒に溶解させ、次いで貧溶媒で析出する工程を1回または数回行うことにより、特定重合体Aの精製を行うことができる。
【0038】
<特定重合体B>
本発明の液晶配向剤を構成する特定重合体Bは、特定重合体Aを脱水閉環反応に供することにより得られる。なお、特定重合体Bは、一般的にはポリイミドを意味するが、脱水閉環の際、ポリイソイミドが生成する場合があり、本明細書における特定重合体Bは「ポリイミド」と「ポリイソイミド」とを意味するが合成の容易性からポリイミドであることが好ましい。
脱水閉環反応は、(i)特定重合体Aを加熱する方法により、または(ii)特定重合体Aを有機溶媒に溶解し、この溶液中に脱水剤および脱水閉環触媒を添加し必要に応じて加熱する方法により行われる。
上記(i)の特定重合体Aを加熱する方法における反応温度は、通常60〜250℃とされ、好ましくは100〜170℃とされる。反応温度が60℃未満ではイミド化反応が十分に進行せず、反応温度が250℃を超えると得られる特定重合体Bの分子量が低下することがある。
一方、上記(ii)の特定重合体Aの溶液中に脱水剤および脱水閉環触媒を添加する方法において、脱水剤としては、例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸などの酸無水物を用いることができる。脱水剤の使用量は、特定重合体Aの繰り返し単位1モルに対して1.6〜20モルとするのが好ましい。また、脱水閉環触媒としては、例えばピリジン、コリジン、ルチジン、トリエチルアミンなどの3級アミンを用いることができるが、これらに限定されるものではない。脱水閉環触媒の使用量は、使用する脱水剤1モルに対して0.5〜10モルとするのが好ましい。なお、脱水閉環反応に用いられる有機溶媒としては、特定重合体Aの合成に用いられるものとして例示した有機溶媒を挙げることができる。そして、脱水閉環反応の反応温度は、通常0〜180℃、好ましくは60〜150℃とされる。
このようにして得られる反応溶液に対し、特定重合体Aの精製方法と同様の操作を行うことにより、特定重合体Bを精製することができる。
【0039】
<末端修飾型の特定重合体>
本発明の液晶配向剤を構成する特定重合体Aおよび/または特定重合体Bは分子量が調節された末端修飾型のものであってもよい。この末端修飾型の特定重合体Aおよび特定重合体Bを用いることにより、本発明の効果が損われることなく液晶配向剤の塗布特性などを改善することができる。このような末端修飾型のものは、特定重合体Aを合成する際に、酸一無水物やモノアミン化合物を反応系に添加することにより合成することができる。
【0040】
ここで、酸一無水物としては、例えば無水マレイン酸、無水フタル酸、無水イタコン酸、n−デシルサクシニック酸無水物、n−ドデシルサクシニック酸無水物、n−テトラデシルサクシニック酸無水物、n−ヘキサデシルサクシニック酸無水物などを挙げることができる。また、モノアミン化合物としては、例えばアニリン、シクロヘキシルアミン、n−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン、n−ウンデシルアミン、n−ドデシルアミン、n−トリデシルアミン、n−テトラデシルアミン、n−ペンタデシルアミン、n−ヘキサデシルアミン、n−ヘプタデシルアミン、n−オクタデシルアミン、n−エイコシルアミンなどを挙げることができる。
【0041】
<特定重合体の固有粘度>
以上のようにして得られる特定重合体Aおよび特定重合体Bの固有粘度(30℃、N−メチル−2−ピロリドン中で測定。以下において同じ。)は、通常、0.05〜10dl/g、好ましくは0.05〜5dl/gである。
【0042】
<液晶配向剤>
本発明の液晶配向剤は、特定重合体Aおよび/または特定重合体Bが有機溶媒中に溶解された溶液として使用される。
本発明の液晶配向剤を溶解する有機溶媒としては、特定重合体Aの合成反応に用いられるものとして例示した溶媒を挙げることができる。また、特定重合体Aの合成の際に併用することができるものとして例示した貧溶媒も適宜選択して併用することができる。
【0043】
また、本発明の液晶配向剤の溶液における特定重合体Aおよび/または特定重合体Bの濃度は、粘性、揮発性などを考慮して選択されるが、好ましくは1〜10重量%の範囲とされる。
すなわち、本発明の液晶配向剤は、溶液として基板表面に塗布され、液晶配向膜となる塗膜が形成されるが、濃度が1重量%未満である場合には、この塗膜の膜厚が過小となって良好な液晶配向膜を得ることができず、濃度が10重量%を超える場合にも、塗膜の膜厚が過大となって良好な液晶配向膜を得ることができず、また、液晶配向剤の粘性が増大して塗布特性が劣るものとなる。
【0044】
本発明の液晶配向剤は、特定重合体Aおよび/または特定重合体Bと塗布される基板表面との接着性を向上させる観点から、官能性シラン含有化合物を含有していてもよい。
このような官能性シラン含有化合物としては、例えば3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N−トリメトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10−トリメトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、10−トリエトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリエトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリエトキシシランなどを挙げることができる。
【0045】
<液晶表示素子の製造>
本発明の液晶配向剤を用いて得られる液晶表示素子は、例えば次の方法によって製造することができる。
【0046】
(1)パターニングされた透明導電膜が設けられている基板の透明導電膜側に、本発明の液晶配向剤をロールコーター法、スピンナー法、印刷法などによって塗布し、次いで、塗布面を加熱することにより塗膜を形成する。
ここに基板としては、例えばフロートガラス、ソーダガラスなどのガラス;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネートなどのプラスチックからなる透明基板を用いることができる。基板の一面に設けられた透明導電膜としては、酸化スズ(SnO2)からなるNESA膜(米国PPG社登録商標)、酸化インジウム−酸化スズ(In2O3−SnO2)からなるITO膜などを用いることができ、これらの透明導電膜のパターニングには、フォト・エッチング法や予めマスクを用いる方法などが用いられる。
【0047】
液晶配向剤の塗布に際しては、基板表面および透明導電膜と塗膜との接着性をさらに良好にするために、基板の該表面に、官能性シラン含有化合物、官能性チタン含有化合物などを予め塗布することもできる。加熱温度は80〜250℃とされ、好ましくは120〜200℃とされる。なお、ポリアミック酸Aを含有する本発明の液晶配向剤は、塗布後に有機溶媒を除去することによって液晶配向膜となる塗膜を形成するが、さらに加熱することによってイミド化された塗膜とすることもできる。形成される塗膜の膜厚は、通常0.001〜1μmであり、好ましくは0.005〜0.5μmである。
【0048】
(2)形成された塗膜面を、例えばナイロン、レーヨンまたはコットン繊維からなる布を巻き付けたロールで一定方向に擦るラビング処理を行う。これにより、液晶分子の配向能が塗膜に付与されて液晶配向膜となる。また、ラビング処理による方法以外に、塗膜表面に偏光紫外線を照射して、配向能を付与する方法や一軸延伸法、ラングミュア・ブロジェット法などで得た樹脂膜を用いることにより、液晶配向膜を形成することもできる。
【0049】
(3)上記のようにして液晶配向膜が形成された基板を2枚作製し、それぞれの液晶配向膜における配向処理方向、すなわちラビング方向が直交または逆平行となるように、2枚の基板を、間隙(セルギャップ)を介して対向配置し、2枚の基板の周辺部をシール剤を用いて貼り合わせ、基板表面およびシール剤により区画されたセルギャップ内に液晶を注入充填し、注入孔を封止して液晶セルを構成する。そして、液晶セルの外表面、すなわち、液晶セルを構成するそれぞれの基板の他面側に、偏光板を、その偏光方向が当該基板の一面に形成された液晶配向膜のラビング方向と一致または直交するように貼り合わせることにより、液晶表示素子が得られる。
ここに、シール剤としては、例えば硬化剤およびスペーサーとしての酸化アルミニウム球を含有するエポキシ樹脂などを用いることができる。
【0050】
液晶としては、ネマティック型液晶およびスメクティック型液晶を挙げることができ、その中でもネマティック型液晶が好ましく、例えばシッフベース系液晶、アゾキシ系液晶、ビフェニル系液晶、フェニルシクロヘキサン系液晶、エステル系液晶、ターフェニル系液晶、ビフェニルシクロヘキサン系液晶、ピリミジン系液晶、ジオキサン系液晶、ビシクロオクタン系液晶、キュバン系液晶などを用いることができる。また、これらの液晶に、例えばコレスチルクロライド、コレステリルノナエート、コレステリルカーボネートなどのコレステリック型液晶や商品名「C−15」「CB−15」(メルク社製)として販売されているようなカイラル剤などを添加して使用することもできる。さらに、p−デシロキシベンジリデン−p−アミノ−2−メチルブチルシンナメートなどの強誘電性液晶も使用することができる。
また、液晶セルの外表面に貼り合わされる偏光板としては、ポリビニルアルコールを延伸配向させながら、ヨウ素を吸収させたH膜と称される偏光膜を酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板またはH膜そのものからなる偏光板を挙げることができる。
【0051】
また、本発明の液晶配向剤により形成された液晶配向膜に、例えば特開平6−222366号公報や特開平6−281937号公報に示されているような紫外線を照射することによってプレチルト角を変化させるような処理、あるいは特開平5−107544号公報に示されているような、ラビング処理を施した液晶配向膜表面にレジスト膜を部分的に形成して先のラビング処理と異なる方向にラビング処理を行った後にレジスト膜を除去して、液晶配向膜の配向能を変化させるような処理を行うことによって、液晶表示素子の視界特性を改善することが可能である。
【0052】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。なお、以下の実施例および比較例により作製された各液晶表示素子について、▲1▼液晶配向膜のラビング傷、▲2▼液晶表示素子の液晶配向性、▲3▼液晶表示素子の電圧保持率、▲4▼液晶表示素子の残留電圧、▲5▼液晶表示素子の信頼性、▲6▼液晶表示素子のプレチルト角について評価した。評価方法は以下のとおりである。
【0053】
[液晶配向膜のラビング傷]
ラビング処理後の液晶配向膜の表面を光学顕微鏡(倍率100倍)で観察し、ラビング処理によるラビング傷の発生の有無を調べた。
【0054】
[液晶表示素子の液晶配向性]
電圧をオン・オフさせた時の液晶表示素子中の異常ドメインの有無を偏光顕微鏡で観察し、異常ドメインのない場合を「良好」と判定した。
【0055】
[液晶表示素子の電圧保持率]
80℃の恒温槽中に設置した液晶表示素子に5Vの交流電圧を印加し、その印加電圧をオフにして、16.7ミリ秒後の電圧保持率を測定した。測定装置は(株)東陽テクニカ製電圧保持率測定装置VHR−1を使用した。
【0056】
[液晶表示素子の残留電圧]
80℃の恒温槽中に設置した液晶表示素子に5Vの直流電圧を3時間印加し、その後1秒間ショートさせた後の液晶表示素子の最大残留電圧を測定した。この条件における液晶表示素子の残留電圧が0.5V以下の場合、残像の少ない液晶表示素子として良好である。
【0057】
[液晶表示素子の信頼性]
温度80℃、湿度85%の恒温恒湿槽中で、液晶表示素子に5V,60Hzの交流電圧を1000時間印加し、その後液晶表示素子に白シミが生じていない場合を良好と判断した。
【0058】
[液晶表示素子のプレチルト角]
液晶表示素子のプレチルト角は、[T.J.Schffer et al., J. Appl. Phys., 19, 2013 (1980)]に記載の方法に準拠し、He−Neレーザー光を用いる結晶回転法により測定した。
【0059】
合成例1
テトラカルボン酸二無水物として1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン25.14g(80.00ミリモル)、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物2.24g(10.00ミリモル)および上記式(1)で表される化合物7.52g(10.00ミリモル)並びにジアミン化合物として1,4−フェニレンジアミン5.41g(50.00ミリモル)および4,4’−ジアミノジフェニルメタン9.91g(50.00ミリモル)をN−メチル−2−ピロリドン451.98gに溶解させ、60℃で6時間反応させた。
次いで、反応混合物を大過剰のメタノールに注ぎ、反応生成物を沈澱させた。その後、メタノールで洗浄し、減圧下40℃で15時間乾燥させて、対数粘度1.00dl/gの特定重合体A−1を得た。
【0060】
合成例2
合成例1で得られた特定重合体A−1、50.22gをN−メチル−2−ピロリドン954.18gに溶解し、ピリジン15.82gと無水酢酸20.42gを添加し、115℃で4時間脱水閉環反応をさせた。
次いで、反応生成液を合成例1と同様に沈澱させ、対数粘度1.00dl/gの特定重合体B−1を得た。
【0061】
合成例3
テトラカルボン酸二無水物として1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン26.72g(85.00ミリモル)、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物2.24g(10.00ミリモル)および上記式(1)で表される化合物3.76g(5.00ミリモル)並びにジアミン化合物として1,4−フェニレンジアミン5.41g(50.00ミリモル)および4,4’−ジアミノジフェニルメタン9.91g(50.00ミリモル)をN−メチル−2−ピロリドン432.36gに溶解させ、60℃で6時間反応させた。
次いで、反応混合物を大過剰のメタノールに注ぎ、反応生成物を沈澱させた。その後、メタノールで洗浄し、減圧下40℃で15時間乾燥させて、対数粘度1.10dl/gの特定重合体A−2を得た。
【0062】
合成例4
合成例3で得られた特定重合体A−2、48.04gをN−メチル−2−ピロリドン912.76gに溶解し、ピリジン15.82gと無水酢酸20.42gを添加し、115℃で4時間脱水閉環反応をさせた。
次いで、反応生成液を合成例1と同様に沈澱させ、対数粘度1.10dl/gの特定重合体B−2を得た。
【0063】
合成例5(比較合成例)
テトラカルボン酸二無水物として1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン25.14g(80.00ミリモル)、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物2.24g(10.00ミリモル)および上記式(1)で表される化合物7.53g(10.00ミリモル)並びにジアミン化合物として1,4−フェニレンジアミン10.81g(100.00ミリモル)をN−メチル−2−ピロリドン411.48gに溶解させ、60℃で6時間反応させた。
次いで、反応混合物を大過剰のメタノールに注ぎ、反応生成物を沈澱させた。その後、メタノールで洗浄し、減圧下40℃で15時間乾燥させて、対数粘度1.10dl/gの特定重合体A−3を得た。
【0064】
合成例6(比較合成例)
合成例5で得られた特定重合体A−3、45.72gをN−メチル−2−ピロリドン868.68gに溶解し、ピリジン15.82gと無水酢酸20.42gを添加し、115℃で4時間脱水閉環反応をさせた。
次いで、反応生成液を合成例1と同様に沈澱させ、対数粘度1.10dl/gの特定重合体B−3を得た。
【0065】
合成例7(比較合成例)
テトラカルボン酸二無水物として1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン25.14g(80.00ミリモル)、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物2.24g(10.00ミリモル)および上記式(1)で表される化合物7.53g(10.00ミリモル)並びにジアミン化合物として、4,4’−ジアミノジフェニルメタン19.83g(100.00ミリモル)をN−メチル−2−ピロリドン492.66gに溶解させ、60℃で6時間反応させた。
次いで、反応混合物を大過剰のメタノールに注ぎ、反応生成物を沈澱させた。その後、メタノールで洗浄し、減圧下40℃で15時間乾燥させて、対数粘度1.00dl/gの特定重合体A−4を得た。
【0066】
合成例8(比較合成例)
合成例7で得られた特定重合体A−4、53.74gをN−メチル−2−ピロリドン1040.06gに溶解し、ピリジン15.82gと無水酢酸20.42gを添加し、115℃で4時間脱水閉環反応をさせた。
次いで、反応生成液を合成例1と同様に沈澱させ、対数粘度1.00dl/gの特定重合体B−4を得た。
【0067】
合成例9(比較合成例)
テトラカルボン酸二無水物として1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン28.29g(90.00ミリモル)および1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物2.24g(10.00ミリモル)並びにジアミン化合物として1,4−フェニレンジアミン5.41g(50.00ミリモル)および4,4’−ジアミノジフェニルメタン9.92g(50.00ミリモル)をN−メチル−2−ピロリドン412.74gに溶解させ、60℃で6時間反応させた。
次いで、反応混合物を大過剰のメタノールに注ぎ、反応生成物を沈澱させた。その後、メタノールで洗浄し、減圧下40℃で15時間乾燥させて、対数粘度1.00dl/gの特定重合体A−5を得た。
【0068】
合成例10(比較合成例)
合成例9で得られた特定重合体A−5、45.86gをN−メチル−2−ピロリドン871.34gに溶解し、ピリジン15.82gと無水酢酸20.42gを添加し、115℃で4時間脱水閉環反応をさせた。
次いで、反応生成液を合成例1と同様に沈澱させ、対数粘度1.00dl/gの特定重合体B−5を得た。
【0069】
合成例11(比較合成例)
テトラカルボン酸二無水物として1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン28.29g(90.00ミリモル)および1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物2.24g(10.00ミリモル)並びにジアミン化合物として1,4−フェニレンジアミン4.87g(45.00ミリモル)、4,4’−ジアミノジフェニルメタン8.92g(45.00ミリモル)および上記式(4)で表される化合物5.21g(10.00ミリモル)をN−メチル−2−ピロリドン445.77gに溶解させ、60℃で6時間反応させた。
次いで、反応混合物を大過剰のメタノールに注ぎ、反応生成物を沈澱させた。その後、メタノールで洗浄し、減圧下40℃で15時間乾燥させて、対数粘度1.00dl/gの特定重合体A−6を得た。
【0070】
合成例12(比較合成例)
合成例11で得られた特定重合体A−6、49.53gをN−メチル−2−ピロリドン941.07gに溶解し、ピリジン15.82gと無水酢酸20.42gを添加し、115℃で4時間脱水閉環反応をさせた。
次いで、反応生成液を合成例1と同様に沈澱させ、対数粘度1.00dl/gの特定重合体B−6を得た。
【0071】
実施例1
(1)液晶配向剤の調整
合成例1で得られた特定重合体A−1をγ−ブチロラクトンに溶解させて、固形分濃度4重量%の溶液とし、この溶液を孔径1μmのフィルターで濾過し、液晶配向剤を調製した。
【0072】
(2)液晶表示素子の作製
▲1▼厚さ1mmのガラス基板の一面に設けられたITO膜からなる透明導電膜上に、スピンナーを用いて本発明の液晶配向剤を塗布し、220℃で1時間焼成し膜厚0.08μmの塗膜を形成した。
▲2▼形成された塗膜面を、ナイロン製の布を巻き付けたロールを有するラビングマシーンを用いて、以下の2通りの条件でラビング処理を行った。このとき、いずれの条件においても配向膜と基板との接着性は良好であり、ラビングによる剥がれは観察されなかった。
条件A:ラビング回数2回、ロール毛足押し込み長0.6mm、ロールの回転数500rpm、ステージの移動速度1cm/秒
条件B:ラビング回数2回、ロール毛足押し込み長0.2mm、ロールの回転数500rpm、ステージの移動速度1cm/秒
▲3▼次に、上記Aの条件でラビング処理された液晶配向膜が形成された基板を2枚作製し、それぞれの基板の外縁部に、直径17μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤をスクリーン印刷塗布した後、それぞれの基板を液晶配向膜面が相対するように、しかもラビング方向が直交あるいは逆平行になるように重ね合わせて圧着し、接着剤を硬化させた。
▲4▼次いで、液晶注入口より一対の基板間に、ネマティック型液晶「MLC−2001」(メルク社製)を充填した後、エポキシ系接着剤で液晶注入口を封止し、基板の外側の両面に偏光板を、偏光板の偏光方向がそれぞれの基板の液晶配向膜のラビング方向と一致するように張り合わせ、液晶表示素子を作製した。
【0073】
以上のようにして作製した液晶表示素子は、電圧をオン・オフさせた時において異常ドメインの存在は認められず、優れた液晶配向性を示すものであった。電圧保持率は、96.6%と高い値を示し、残留電圧は0.30Vと低い値であった。そして、液晶表示素子の信頼性を評価したところ、液晶表示素子に白シミの発生はなかった。さらに、液晶表示素子のプレチルト角を測定したところ、ラビング条件Aにおいて6.0゜、ラビング条件Bにおいて6.0゜であり、工程条件に影響されない高プレチルト角の発現が認められた。
【0074】
実施例2〜3
表1に示す処方に従って、合成例2および4で得られた特定重合体Bのそれぞれを用い、実施例1と同様にして本発明の液晶配向剤を調整した。次いで、このようにして得られた液晶配向剤の各々を用い、実施例1と同様にして液晶表示素子を作製した。
各実験において、液晶配向膜におけるラビング傷の発生状況、液晶表示素子の液晶配向性、電圧保持率、残留電圧、信頼性およびプレチルト角について評価した。結果を表1に実施例1と併せて示す。
【0075】
【表1】
【0076】
比較例1〜4
表2に示す処方に従って、合成例5〜12で得られた特定重合体Bのそれぞれを用い、実施例1と同様にして本発明の液晶配向剤を調整した。次いで、このようにして得られた液晶配向剤の各々を用い、実施例1と同様にして液晶表示素子を作製した。
各実験において、液晶配向膜におけるラビング傷の発生状況、液晶表示素子の液晶配向性、電圧保持率、残留電圧、信頼性およびプレチルト角について評価した。結果を表2に示す。
【0077】
【表2】
【0078】
【発明の効果】
本発明によれば、ラビング処理で生じる液晶配向膜表面の傷が少なく、かつ液晶配向性に優れ、電圧保持率が高く、残像の少なくかつ信頼性に優れた液晶表示素子を与え、工程条件に影響されずに高プレチルト角を与える液晶配向剤が得られる。
本発明の液晶配向剤を用いて形成した液晶配向膜を有する液晶表示素子は、TN型液晶表示素子をはじめ、使用する液晶を選択することにより、STN型、SH型または強誘電性および反強誘電性の液晶表示素子などにも好適に用いられる。
さらに、本発明の液晶配向剤を用いて形成した配向膜を有する液晶表示素子は、液晶の配向性および信頼性に優れ、種々の装置に有効に使用でき、例えば卓上計算機、腕時計、置時計、係数表示板、ワードプロセッサ、パーソナルコンピューター、液晶テレビなどの表示装置に用いられる。
【0079】
本発明の好ましい実施態様を記載すれば以下のとおりである。
1. [A]前記式(I)で表されるテトラカルボン二無水物、前記式(II)で表されるシクロブタン環含有テトラカルボン酸二無水物および前記式(III)で表されるテトラカルボン酸二無水物と、前記式(IV)で表されるフェニレンジアミン化合物および前記式(V)で表されるジアミン化合物とを反応させることにより得られるポリアミック酸および該ポリアミック酸を脱水閉環させて得られるポリイミドよりなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体を含有する液晶配向剤。2. 前記式(II)で表されるシクロブタン環含有テトラカルボン酸二無水物が、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物または1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物である上記1に記載の液晶配向剤。
3. 前記式(III)で表されるテトラカルボン酸二無水物が、前記式(1)または(2)で表される化合物である上記1に記載の液晶配向剤。
4. 前記式(IV)で表されるフェニレンジアミン化合物が、1,2−フェニレンジアミン、1,3−フェニレンジアミン、1,4−フェニレンジアミン、2−メチル−1,4−フェニレンジアミン、2−エチル−1,4−フェニレンジアミン、2−メトキシ−1,4−フェニレンジアミン、2−エトキシ−1,4−フェニレンジアミン、2−クロロ−1,4−フェニレンジアミンおよび2−フルオロ−1,4−フェニレンジアミンよりなる群から選ばれる上記1に記載の液晶配向剤。
5. 前記式(V)で表されるジアミン化合物が4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパンおよび4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリンよりなる群から選ばれる上記1に記載の液晶配向剤。
6. 前記式(I)で表されるテトラカルボン酸二無水物70〜97モル%、前記式(II)で表されるシクロブタン環含有テトラカルボン酸二無水物2〜30モル%および前記式(III)で表されるテトラカルボン酸二無水物1〜25モル%の混合物を用いる上記1に記載の液晶配向剤。
7. 前記式(IV)で表されるフェニレンジアミン化合物10〜90モル%と、前記式(V)で表されるジアミン化合物90〜10モル%との混合物を用いる上記1に記載の液晶配向剤。
Claims (2)
- [A]下記式(I)
で表されるテトラカルボン酸二無水物および下記式(II)
で表されるシクロブタン環含有テトラカルボン酸二無水物よりなる群から選ばれる少なくとも1種のテトラカルボン酸二無水物並びに下記式(III)
で表されるテトラカルボン酸二無水物と、
[B]下記式(IV)
で表されるフェニレンジアミン化合物および
下記式(V)
下記式(i)
で表されるジアミン化合物、
とを反応させることにより得られるポリアミック酸および該ポリアミック酸を脱水閉環させて得られるイミド化重合体よりなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体を含有することを特徴とする液晶配向剤。 - 請求項1記載の液晶配向剤から得られる液晶配向膜を具備してなる液晶表示素子。
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