JP3546711B2 - ランフラットタイヤ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、空気が抜けてもしばらく走ることのできるタイヤ、すなわちランフラット(run flat)タイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
ランフラットタイヤは、タイヤがパンクした場合やその他の原因でタイヤ内の空気圧が不十分かまたはほとんどゼロとなった場合にも、最寄りのサービス施設に到達するまでの間、車両の荷重に耐えることのできる壁剛性を備えたタイヤである。
【0003】
このようなタイヤについて種々の構造のものが提案されているが、代表的なものは、例えば特開昭62−279107に示されているように、リムフランジの上端近傍からベルト層の端部に至るカーカス層の内面側に、サイドウォールを補強するため、縦断面(タイヤ軸を含む断面)が三日月状のサイド補強ゴムパッドを備えたものである。ルーネット(lunette)とも呼ばれるこのサイド補強ゴムパッドは、空気が抜けたタイヤに「自己支持能力」を付与するものであり、通常、剛性の高いゴム層によって構成される。
【0004】
特開平2−283508に開示のタイヤの構造おいては、図6に示すように、繊維コードのプライからなり、タイヤの片側から反対側へと延びる単一の繊維層103が、サイド補強ゴムパッド102の厚みの中心に沿って挿入されている。このような繊維層103は、サイド補強ゴムパッドを剛性化させることにより、タイヤがパンクしたときに、過大な圧縮変形に伴うクラックがサイド補強ゴムパッドに発生するのを抑制するものである。
【0005】
また、特開平5−310013に開示のタイヤの構造おいては、図7に示すように、繊維層103を、インナーライナー105とサイド補強ゴムパッド102との界面に配し、繊維層103がサイド補強ゴムパッド102の内面側を包み込むような構造が開示されている。このような構造により、空気が抜けた状態でのタイヤの耐久寿命(定格荷重下での走行可能な距離、以降、ランフラット耐久性と呼ぶ)を増加させることができるとしている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、引っ張りに強い繊維層が、圧縮変形を受けやすいタイヤ内側に配しているため、タイヤの耐久性を向上させる効果が充分でなかった。
【0007】
また、繊維層によってサイド補強ゴムパッドの剛性が増大するのに伴い、乗り心地が悪化することとなっていた。
【0008】
さらには、タイヤに充分な剛性とその耐久性を与えるためには、サイド補強ゴムパッド及び繊維層のサイズを充分にとる必要があるので、タイヤ重量を増大させることとなっていた。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、ランフラットタイヤにおいて、空気が抜けた状態での走行可能な距離を増大させることができるとともに、乗り心地を改善することのできるものを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1のランフラットタイヤは、ビード部の周辺で折り返された少なくとも一つのカーカスプライのタイヤ内面側に、サイドウォールを補強するため、タイヤ軸を含む断面にて三日月状をなすサイド補強ゴムパッドを備え、さらにこのサイド補強ゴムパッドを補強する繊維層を備えたランフラットタイヤにおいて、前記少なくとも一つのカーカスプライは、タイヤ内面側からタイヤ外面側へとビード部を包んでさらにトレッド側へと巻き上げられた巻き上げ端が、ベルト層の端部に達し、前記サイド補強ゴムパッドは、タイヤ外面側のゴムパッドと、これよりも厚みの大きいタイヤ内面側のゴムパッドとが前記繊維層を挟んで重ね合わされてなることを特徴とする。
【0011】
上記構成であると、まず、カーカス巻き上げ端がベルト層端部にまで巻き上げられていることにより、タイヤの空気が抜けたときにサイドウォール部の変形を抑制する張力がカーカス層の外側に作用することとなるので、サイドウォール部のゴムの剛性を増大させずにタイヤの荷重による変形を抑制することができる。したがって、乗り心地を悪化させずにランフラット耐久性を向上することができる。
【0012】
また、サイド補強ゴムパッドを補強する繊維層は、サイド補強ゴムパッドの外面に近い位置に配置されることにより、受ける圧縮変形が軽減され、そのため耐久性が向上する。したがって、タイヤの通常使用時及びランフラット時の耐久性を増大させることができる。また、このような繊維層の配置により、繊維層がサイド補強ゴムパッドの内面に配置される場合に比べて、サイドウォール部の大変形に対する抵抗を維持しつつ、小変形時における過度の剛性の発現を軽減することができる。そのため、繊維層を配することに伴う乗り心地をの悪化を軽減することができる。
【0013】
このように請求項1の構成により、タイヤのランフラット耐久性を増大させることができるとともに、通常時及び空気が抜けた際の乗り心地を改善することができる。
【0014】
請求項2のランフラットタイヤにおいては、前記繊維層は、上端が前記ベルト層の端部下に位置し、下端が前記ビード部のタイヤ内面側に位置することを特徴とする。
【0015】
このような構成であると、繊維層によるタイヤの重量増加を最低限とすることができる。また、サイド補強ゴムパッドの変形以外に起因する応力が繊維層に作用することが防止されるため、繊維層の耐久性を高めることができる。
【0016】
請求項3のランフラットタイヤは、カーカス層が1プライであることを特徴とする。
【0017】
このような構成であると、タイヤの軽量化を図ることができる。
【0018】
請求項4のランフラットタイヤにおいては、前記繊維層は、略ラジアル方向に繊維が配列されることを特徴とする。
【0019】
請求項5のランフラットタイヤにおいては、前記サイド補強ゴムパッドのタイヤ外面側において、前記少なくとも一つのカーカスプライに、これとは別個のカーカスプライが積層され、この別個のカーカスプライは、ビード部にてタイヤ内面側からタイヤ外面側へと巻き上げられた巻き上げ端が、ビードフィラーゴムの下端から上端の範囲内に位置することを特徴とする。
【0020】
このような構成であると、大型乗用車やミニバン等に用いられる場合にも、充分なランフラット耐久性を備える。
【0021】
請求項6のランフラットタイヤにおいては、前記サイド補強ゴムパッドのタイヤ内面側に、前記少なくとも一つのカーカスプライとは別個のカーカスプライが設けられ、この別個のカーカスプライは、ビード部にてタイヤ内面側からタイヤ外面側へと巻き上げられた巻き上げ端が、ビードフィラーゴムの下端から上端の範囲内に位置することを特徴とする。
【0022】
このような構成であると、大型乗用車やミニバン等に用いられる場合にも、充分なランフラット耐久性を備える。
【0023】
請求項7のランフラットタイヤは、前記サイド補強ゴムパッドを構成するゴム材料が、下記(1)〜(2)を満たすことを特徴とする。
【0024】
(1)JIS K 6301のA形スプリング硬さ試験による硬さ(HS)が70〜85の範囲にあり、
(2)動的特性試験によるtanδ値が0.10〜0.20の範囲にある。
【0025】
請求項8の発明は、前記サイド補強ゴムパッドを構成するゴム材料が、下記(3)〜(4)を満たすことを特徴とする。
【0026】
(3)ブタジエンゴムがゴム成分中に10〜50重量%含まれ、
(4)ゴム成分100重量部に対して、レゾルシンまたはその誘導体が0.5〜3重量部、ヘキサメチレンテトラミンまたはメラミン誘導体が、この0.5〜2.0倍含まれる。
【0027】
【発明の実施の形態】
本発明の実施例について図1〜2を用いて説明する。
【0028】
図1には、中小型乗用車用のランフラットタイヤの構造を、タイヤ軸を含む断面で切断した部分縦断面図で示す。図2には、同一のタイヤの構造について要部を模式的に示す。以下の説明において、タイヤ半径方向トレッド側を上とし、タイヤ外面側を外側、タイヤ内面側を内側とする。
【0029】
図1に示すように、カーカス層1の両端部は、ビード部7において、ビードコア71とその上のビードフィラー72の周りに内側から外側へと巻き上げられる。カーカス層1の巻き上げ端11は、ほぼトレッド部の幅TWの全体にわたって配されたベルト層4の端部に達している。したがって、カーカス層1が外側に巻き上げられてなる巻き上げ部分13は、ビード部7以外において、左右のビード部7間を結ぶカーカス層1の本体部分12の外面に重ね合わされている。なお、図示の例では、カーカス層1が1プライである。
【0030】
カーカス層1の内側には、リムフランジの上端と接するリムライン64の近傍からベルト層4の端部に至る領域にわたって、サイド補強ゴムパッド2が配される。
【0031】
サイド補強ゴムパッド2は、外側のゴムパッド21と、これよりも少し厚みの大きい内側のゴムパッド22とが重ね合わされて成る。補強プライの位置は、タイヤ内面に近づくほど補強プライは圧縮を受け、耐久力の低下につながるが、タイヤ外側に近づけば包み込むパッドゴム量が小さくなり、包み込みによる剛性アップが望めない。従って、外側のゴムパッド21に対する内側のゴムパッド22の厚みの比は、0.9〜0.5の範囲が好ましい。外側及び内側のゴムパッド21,22は、いずれも三日月状であり、幅、すなわちラジアル方向の寸法(図1のような断面図におけるタイヤ面に沿った寸法)が略等しいが、これらの上端や下端が同じ位置に来ないよう少しずらして配置される。図示の例では、外側のサイド補強ゴムパッド21が内側のサイド補強ゴムパッド22よりも少し上にずらして配置される。
【0032】
外側及び内側のゴムパッド21,22の間には、略ラジアル方向配列の繊維コードから成る繊維層3が挟持されている。したがって、外側のゴムパッド21は、カーカス層1と繊維層3によって包み込まれることにより、変形が抑制される。繊維層3の上端31は、外側のゴムパッド21の上端付近でカーカス層1とインナーライナー5に挟まれる。繊維層3の下端32は、ほぼ内側のゴムパッド22の下端付近まで延びており、ビードフィラー72の内側で、カーカス層1と、インナーライナー5またはゴムパッド22の下端部分とに挟まれている。すなわち、繊維層3は、カーカスプライやベルト層4の役割を果たす繊維コード層とは別個独立の繊維コード層からなる。繊維層3の長さは、通常は、サイド補強ゴムパッド2の長さとするが、使用条件の厳しいタイヤについては、必要に応じてサイド補強ゴムパッド2からはみ出す長さとすることもできる。
【0033】
繊維層3は、例えば、すだれ状織物から形成され、繊維コードの配列方向は、タイヤ周方向に対して90〜40°の範囲内にある。
【0034】
以上に説明した他は、中小型乗用車用の一般タイヤと何ら変わるところはない。図に示すように、トレッド部、サイドウォール部、及びビード部7の外面には、それぞれ、トレッドゴム61、サイドゴム62及びプロテクターゴム63が配される。
【0035】
ランフラットタイヤの構造がこのようであると、以下A〜Dの利点が得られる。
【0036】
A.タイヤの空気が抜けたときにも、カーカス層1の巻き上げ部分12により、サイドウォール部の変形を抑制する張力がカーカス層の本体部分13の外側に作用する。
【0037】
B.カーカス層1が1プライであるため、タイヤの軽量化を実現できる。
【0038】
C.繊維層3を、サイド補強ゴムパッド2の厚みの中心よりも少し外側に配置したことにより、サイド補強ゴムパッド2の内側部分の過度の圧縮変形を防止しつつ、繊維層3に作用する圧縮変形を少なくすることができる。したがって、サイド補強ゴムパッド2及び繊維層3の耐久性を向上することができるため、タイヤ全体の耐久性を向上できる。
【0039】
D.繊維層3を、通常サイド補強ゴムパッド2が配置される領域にのみ設けたため、繊維層3の重量を最小限とすることができ、したがって、タイヤの重量増加を最小限とすることができる。
【0040】
サイド補強ゴムパッド2を構成するゴム材料は、下記(1)〜(2)を満たすものであり、特には、さらに下記(3)〜(4)を満たすものである。
【0041】
(1)JIS K 6301のA形スプリング硬さ試験による硬さ(HS)が70〜85の範囲にあり、
(2)動的特性試験によるtanδ値が0.10〜0.20の範囲にある。
【0042】
(3)ブタジエンゴムがゴム成分中に10〜50重量%含まれ、
(4)ゴム成分100重量部に対して、レゾルシンまたはその誘導体が0.5〜3重量部、ヘキサメチレンテトラミンまたはメラミン誘導体が、この0.5〜2.0倍含まれる。
【0043】
ゴム材料の硬さ(HS)が70未満であると、サイド補強ゴムパッド2の剛性が不十分であるため、ランフラット耐久性が不十分となり、ゴム材料の硬さ(HS)が85を越えると、剛性が高すぎるために乗り心地が悪い。また、tanδ値が0.10未満であると、タイヤの振動吸収機能が不十分となって乗り心地が悪くなり、0.20を越えると走行時の発熱が激しくなるために早期に破損が生じやすい。ゴム材料の硬さ(HS)及びtanδ値は、より好ましくは、75〜80、及び、0.13〜0.15である。
【0044】
上記(1)〜(2)の特性は、上記(3)〜(4)のような組成を選択することにより容易に達成することができる。
【0045】
上記(3)のようにブタジエンゴムがゴム成分中に適量含まれることにより、耐疲労性が向上している。ブタジエンゴムの重量分率が、10重量%未満であっても、50重量%を越えてもランフラット耐久性が悪くなる。ブタジエンゴムの重量分率は、より好ましくは、20〜40重量%、さらに好ましくは、25〜35重量%である。ブタジエンゴム(BR)として特に好ましいものは、高シス含量ブタジエンゴム(High−cis BR)または、VCR(Vinyl Cis−polybutadiene Rubber、高結晶性のシンジオタクチック1,2−ポリブタジエンからなる繊維状物で補強した1,4−ポリブタジエンゴム)が挙げられる。ゴム成分中に含まれる他のゴムの好ましいものとしては、天然ゴムが挙げられる。天然ゴムは、一般に動的特性及び耐疲労性において優れる。
【0046】
また、上記(4)のように、熱硬化性樹脂が適量含まれることにより、発熱性すなわち上記tanδと、硬さとのバランスを、容易に、適したものに調整することができる。
【0047】
次に、本実施例についての具体例について説明する。
【0048】
タイヤの構成は、図示の通りである。タイヤ外径ODが609mm、リム呼び径NDが406mm、トレッド幅TWが182mmであり、トレッド部の厚みが15.1mm、ビードコア付近におけるタイヤ厚みが18mmである。外側及び内側のゴムパッド21,22の厚みは、それぞれ、4mm及び5mmであり、これらゴムパッド21,22の幅(ラジアル方向寸法)は、約70mmである。また、外側及び内側のゴムパッド21,22は、ラジアル方向に約10mm互いにずらして配置されている。
【0049】
用いたタイヤは、205/50R16である。タイヤのカーカスプライは、レーヨン1650デニール×2本、打ち込み24本/インチのものである。ベルト層は、スチールの(2+2)×0.25mm、19本/インチのものである。ベルト補強層は、1キャップタイプ、すなわち、6,6−ナイロン840デニール×2本、打ち込み30本/インチのもの1枚である。繊維層は、レーヨン1500デニール×2本、打ち込み24本/インチのもの1枚である。
【0050】
また、サイド補強ゴムパッド2を構成するゴム材料は、後述する表3のゴム材料組成3に記載のものである。すなわち、ゴム成分が、天然ゴム(NR)70重量%、及び、高シス含量ブタジエンゴム(High−cis BR)30重量%からなり、このゴム成分100重量部に対して、レゾルシン1重量部、及びヘキサメチレンテトラミン1重量部が添加されている。この他に、カーボンブラック(N550)65重量部、アロマオイル5重量部、酸化亜鉛5重量部、ステアリン酸2重量部、老化防止剤TMQ(住友化学工業「アンチゲンRD」)1.5重量部、イオウ4重量部、及び、加硫促進剤CBS(大内新興化学ノクセラ−CZ−G)1重量部が添加されている。加硫成形は、160℃20分の加熱により行った。ここで、得られたゴム成形物の硬さ(HS)及びtanδは、それぞれ74及び0.12であった。
【0051】
次に、変形例1〜3について図3〜5の模式図をそれぞれ用いて説明する。
【0052】
図3に示す変形例1においては、上記実施例と同様の断面構造において、繊維層3が、タイヤ周方向に対して50度傾斜されて配列された場合である。この場合、サイド補強ゴムパッド2の変形を防止する効果は減少するが、繊維層3が受ける圧縮変形は格段に少なくなり、繊維層3の耐久性は増大する。したがって、加わる荷重が比較的少ない条件では、好ましい。
【0053】
図4に示す変形例2においては、カーカス層1が2プライであり、一方のカーカスプライ15は、図1〜2に示す上記実施例と同様であるが他方のカーカスプライ16は、その巻き上げ端17がビード部7の外側で係止されている。この場合、タイヤの重量が増大するものの、タイヤの耐荷重性能が向上するため、一般に、比較的大きな荷重がかかるタイヤ、例えば、ミニバンや軽トラックに適している。カーカス層1の各カーカスプライ15,16を薄く構成する場合には、上記実施例と同様、中小型の一般乗用車に適している。
【0054】
図5に示す変形例3においては、上記カーカス層1のカーカスプライ、すなわちサイド補強ゴムパッド2の外側のカーカスプライとは別個のカーカスプライ8がインナーライナー5に沿って設けられる。このカーカスプライ8の両端部の巻き上げ端81はビード部7の外側に係止されている。この場合、タイヤの重量が増大するものの、サイド補強ゴムパッド2の変形を抑制する効果が顕著に増大するため、ランフラット耐久性が増大する。したがって、変形例2と同様、用途によっては非常に好ましい実施形態となる。
【0055】
表1に、実施例、変形例2及び各比較例についての試験結果を示す。寸法構成やサイド補強ゴムパッド2の材料組成といったタイヤの構成は、特に記した以外、実施例についての具体例と同一である。以下において、比較例1は、従来の技術に記した特開平5−310013(図7に示すもの)に対応する。
【0056】
【表1】
耐久性の試験は、定格荷重の85%で行った。乗り心地の官能試験には、排気量1800ccのFFタイプの乗用車を用いた。
【0057】
表1の結果から知られるように、実施例の構造のランフラットタイヤは、特開平5−310013に係る比較例1のランフラットタイアに比べて、ランフラット耐久性と、ランフラット時及び通常時の乗り心地とにおいて、顕著に優れている。また、ランフラット時の操縦安定性においても優れている。しかも、タイヤ重量は同一である。
【0058】
上記表1において、変形例2では、乗り心地が劣るものと評価されているが1800ccタイプ乗用車用のタイヤより剛性及び耐荷重性能の大きいタイヤを1800ccタイプ乗用車に取り付けて1800ccタイプ乗用車用の一般的なタイヤと比較したものである。
【0059】
次に、表2に、実施例と同一の構造のフラットタイヤを用い、サイド補強ゴムパッド2のゴム材料組成を種々変化させた場合のランフラット耐久性について評価した結果を、ゴム材料の硬さ(HS)及びtanδの値とともに示す。ゴム材料組成には、下表に示すものの他、表1の場合と同様、アロマオイル5重量部、酸化亜鉛5重量部、ステアリン酸2重量部、老化防止剤TMQ(住友化学工業「アンチゲンRD」)、イオウ4重量部、及び、加硫促進剤CBS(大内新興化学ノクセラ−CZ−G)1重量部が添加されている。加硫成形条件も表1の場合(160℃20分の加熱)と同様である。
【0060】
【表2】
【表3】
表2及び表3の結果から知られるように、カーボンブラック添加量が通常の範囲であるとき、すなわち、55〜70重量部、好ましくは60〜65重量部であるときには、サイド補強ゴムパッド2を構成するゴム材料の組成が前記(3)及び(4)の条件を満たすならば、前記(1)〜(2)の物性が容易に得られるとともに、優れたランフラット耐久性が得られた。また、ランフラット耐久性で比較した場合、ゴム成分中のブタジエンゴムの重量分率が、30%であって、レゾルシン添加が1〜3重量部かつヘキサメチレンテトラミン添加量がその0.5〜1倍のとき(表2のゴム材料組成3、6及び7)に、特に優れた結果が得られた。
【0061】
【発明の効果】
ランフラットタイヤにおいて、空気が抜けた状態でのタイヤの走行可能距離を著しく増大させるとともに、通常時及び空気が抜けた際の乗り心地を顕著に改善することのできるものの提供が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例のランフラットタイヤの構造について、タイヤ軸を含む断面で示す部分縦断面図である。
【図2】図1に示す実施例のランフラットタイヤの要部を示す、模式的な部分縦断面図である。
【図3】変形例1のランフラットタイヤの要部を示す、模式的な部分縦断面図である。
【図4】変形例2のランフラットタイヤの要部を示す、模式的な部分縦断面図である。
【図5】変形例3のランフラットタイヤの要部を示す、模式的な部分縦断面図である。
【図6】従来の技術に係るランフラットタイヤの構造の概略を示す模式的な縦断面図である。
【図7】他の従来の技術に係るランフラットタイヤの構造の概略を示す模式的な縦断面図である。
【符号の説明】
1 カーカス層
11 カーカス巻き上げ端
2 サイド補強ゴムパッド
21 外側のゴムパッド
22 内側のゴムパッド
3 繊維層
31 繊維層の上端
32 繊維層の下端
4 ベルト層
5 インナーライナー
61 トレッドゴム
62 サイドゴム
63 チェファーゴム
7 ビード部
71 ビードコア
72 ビードフィラー
Claims (8)
- ビード部の周辺で折り返された少なくとも一つのカーカスプライのタイヤ内面側に、サイドウォールを補強するため、タイヤ軸を含む断面にて三日月状をなすサイド補強ゴムパッドを備え、さらにこのサイド補強ゴムパッドを補強する繊維層を備えたランフラットタイヤにおいて、
前記少なくとも一つのカーカスプライは、タイヤ内面側からタイヤ外面側へとビード部を包んでさらにトレッド側へと巻き上げられた巻き上げ端が、ベルト層の端部に達し、
前記サイド補強ゴムパッドは、タイヤ外面側のゴムパッドと、これよりも厚みの大きいタイヤ内面側のゴムパッドとが前記繊維層を挟んで重ね合わされてなることを特徴とするランフラットタイヤ。 - 前記繊維層は、上端が前記ベルト層の端部下に位置し、下端が前記ビード部のタイヤ内面側に位置することを特徴とする請求項1記載のランフラットタイヤ。
- カーカス層が1プライであることを特徴とする請求項1〜2記載のランフラットタイヤ。
- 前記繊維層は、繊維コードの配列方向がタイヤ周方向に対して90〜40°の範囲内にあることを特徴とする請求項1〜3記載のランフラットタイヤ。本年2月17日付の拒絶理由書における唯一の拒絶理由は、請求項4(「請求項3」は誤記と思われます)の「略ラジアル方向に繊維が配列される」との記載について、「略」という用語がある結果「繊維の配列方向が明確でない」とされたものでした。そこで、本願の当初明細書における段落番号0033の記載に基づき上記のとおり補正を行いました。
- 前記サイド補強ゴムパッドのタイヤ外面側において、前記少なくとも一つのカーカスプライに、これとは別個のカーカスプライが積層され、この別個のカーカスプライは、ビード部にてタイヤ内面側からタイヤ外面側へと巻き上げられた巻き上げ端が、ビードフィラーゴムの下端から上端の範囲内に位置することを特徴とする請求項1〜4記載のランフラットタイヤ。
- 前記サイド補強ゴムパッドのタイヤ内面側に、前記少なくとも一つのカーカスプライとは別個のカーカスプライが設けられ、この別個のカーカスプライは、ビード部にてタイヤ内面側からタイヤ外面側へと巻き上げられた巻き上げ端が、ビードフィラーゴムの下端から上端の範囲内に位置することを特徴とする請求項1〜5記載のランフラットタイヤ。
- 前記サイド補強ゴムパッドを構成するゴム材料が、下記(1)〜(2)を満たすことを特徴とする請求項1〜6記載のランフラットタイヤ。
(1)JIS K 6301のA形スプリング硬さ試験による硬さ(HS)が70〜85の範囲にあり、
(2)動的特性試験によるtanδ値が0.10〜0.20の範囲にある。 - 前記サイド補強ゴムパッドを構成するゴム材料が、下記(3)〜(4)を満たすことを特徴とする請求項1〜7記載のランフラットタイヤ。
(3)ブタジエンゴムがゴム成分中に10〜50重量%含まれ、
(4)ゴム成分100重量部に対して、レゾルシンまたはその誘導体が0.5〜3重量部、ヘキサメチレンテトラミンまたはメラミン誘導体が、この0.5〜2.0倍含まれる。
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