JP3546625B2 - 摺動性熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、摺動特性、特に樹脂成形品および金属との摺動特性に優れ、かつ耐熱性、機械的特性および成形加工性に優れた熱可塑性樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ジエン系ゴム成分にアクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物やスチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物を共重合したグラフト共重合体を含有してなる、いわゆるABS樹脂は、耐衝撃性、機械物性および成形加工性に優れていることから、汎用樹脂とエンジニアリング樹脂との中間的な特性を持ついわゆる準エンプラとしてOA機器や家電製品向けの用途に広く使われている。近年、特にOA機器用途の拡大に伴い、光ディスク等の記録媒体シェル・記録装置部品(トレー、シャーシ)、複写機(コピー機)、ファクシミリ、コンピューター・プリンター等の印刷紙と接触する部品などにABS樹脂が多用されている。これら用途は、部品同士あるいは金属との摩擦・摩耗、紙との摩擦が生じるため、摺動特性が要求される。
【0003】
ABS樹脂は、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂に代表されるエンジニアリングプラスチックに比して、摺動特性が劣るため、ポリテトラフルオロエチレン微粉末、ポリオルガノシロキサン、高級脂肪酸エステル系ワックスやポリエチレンワックス等を溶融混練にブレンドし、摺動特性を付与する手法で該用途への展開を図っている。
【0004】
ポリテトラフルオロエチレン微粉末を熱可塑性樹脂に添加し、摺動特性を改良する技術は公知である(例えば、米谷穣,工業材料,Vol.27,No.6,P60(1979)日刊工業新聞社発行)。該技術により摺動特性の改善は認められるものの、耐衝撃性の低下が著しく、更にポリテトラフルオロエチレン微粉末を使用することによるコストアップ等の問題がある。このため、最近では、ポリテトラフルオロエチレン微粉末の添加量を削減し、ポリオルガノシロキサンとの併用により機械的特性の低下を抑えた技術も提案されている(例えば、特開平7−169229号公報など)。しかしながら、これらの技術でもポリテトラフルオロエチレン微粉末を使用する以上、機械的特性の低下およびコストアップ等の問題を根本的には解決することはできない。
【0005】
一方、オルガノポリシロキサンを熱可塑性樹脂に添加し、摺動特性を改良する技術も開示されている(例えば、山田桜編「プラスチック配合剤」(昭和44年4月1日 大成社発行)p.250)、特開昭48−28542号公報など)。更に、ゴム含有の芳香族ビニル系樹脂の懸濁重合時にオルガノポリシロキサンを添加し、表面滑性と耐摩耗性を改良する技術(特開昭58−132038号公報)、特定構造のゴム変性スチレン系樹脂に特定のオルガノポリシロキサンを配合し、表面滑性と耐摩耗性を改良する技術(特開昭60−217254号公報)、スチレン系樹脂ペレットに、オルガノポリシロキサン、高級脂肪酸と高級アルコールのエステルワックス、脂肪族炭化水素系ワックス等を配合し、成形加工時の摩擦発熱を防止する技術(特公平3−19260号公報)、ゴム変性スチレン系樹脂にオルガノポリシロキサンとフェノール系抗酸化剤を配合し、表面滑性と耐摩耗性および熱安定性を改良する技術(特公平5−67660号公報)も提案されている。これらオルガノポリシロキサン添加によって、摺動特性の改善は認められるが、改善効果は十分でなく、近年では、該オルガノポリシロキサン中の環状オリゴマー成分の揮散による電子回路の接点障害問題があり、適用用途に制限がある。
【0006】
また、高級脂肪酸エステル系ワックスの添加による摺動特性の改良技術も公知である(後藤邦夫編「プラスチックおよびゴム用添加剤実用便覧」(昭和60年2月10日 化学工業社発行)p.947−951,957−967、山口幸一,成形加工,Vol.5,No.10,p.655(1993)など)。しかしながら、高級脂肪酸エステル系ワックスの添加は、低分子量成分のため、成形時のブリードアウト量が多量となり、金型汚れ等の問題があり、また、該剤添加による耐熱性の低下も生じるという技術的問題がある。
【0007】
炭化水素系合成油であるポリαオレフィンオリゴマーを熱可塑性樹脂に添加し、摺動特性を改良する技術が開示されている(例えば、渡辺真著「高分子トライボマテリアル」(平成2年11月15日 共立出版社発行)p.39)。しかしながら、ポリαオレフィンオリゴマーを配合することにより摺動特性の改良は認められるものの、機械的特性、特に耐衝撃性の低下が著しい等の問題を抱えている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記従来技術の欠点を解消し、摺動特性、耐熱性および機械的特性に優れ、かつ成形加工性が良好である熱可塑性樹脂組成物を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、重量平均粒子径が0.1〜2.0μmであるゴム質重合体(A−1)5〜80重量部に、芳香族ビニル系単量体(イ)とシアン化ビニル系単量体(ロ)およびこれらと共重合可能な他のビニル系単量体(ハ)から選ばれる少なくとも2種以上の単量体混合物(A−2)95〜20重量部をグラフト重合してなるグラフト共重合体(A)10〜40重量部と、芳香族ビニル系単量体(イ)とシアン化ビニル系単量体(ロ)およびこれらと共重合可能な他のビニル系単量体(ハ)から選ばれる少なくとも2種以上の単量体からなり、かつ還元粘度が0.2〜1.0dl/gであるビニル系共重合体(B)90〜60重量部からなる樹脂組成物100重量部に対し、炭素数12〜32の高級脂肪酸と炭素数12〜32の高級アルコールとのエステル化物である高級脂肪酸アルコ−ルエステル(C)を1重量部以上およびα−オレフィンオリゴマーおよび/またはエチレンとα−オレフィンのコオリゴマー(D)を1重量部以上、かつ(C)と(D)の配合量合計が2〜10重量部を含有することを特徴とする摺動性熱可塑性樹脂組成物によって達成される。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明におけるゴム質重合体(A−1)の例としては、ポリブタジエンの他、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、アクリル酸ブチル−ブタジエン共重合体およびポリイソプレンゴム等が挙げられ、なかでもポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合ゴムなどが耐衝撃性の点で好ましい。
【0011】
本発明におけるグラフト共重合体(A)のグラフト成分およびビニル系共重合体(B)に用いられる芳香族ビニル系単量体(イ)としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、o−エチルスチレン、o−クロロスチレンおよびo,p−ジクロロスチレン等が挙げられるが、特にスチレン、α−メチルスチレンが耐熱性および成形加工性の点で好ましい。これらは1種または2種以上を用いることができる。
【0012】
本発明におけるグラフト共重合体(A)のグラフト成分およびビニル系共重合体(B)に用いられるシアン化ビニル系単量体(ロ)としては、アクリロニトリル、メタアクリロニトリルおよびエタアクリロニトリル等が挙げられるが、特にアクリロニトリルが耐薬品性の点で好ましい。
【0013】
本発明におけるグラフト共重合体(A)のグラフト成分およびビニル系共重合体(B)に用いられる共重合可能な他のビニル系単量体(ハ)の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸クロロメチルおよび(メタ)アクリル酸2−クロロエチル等の不飽和カルボン酸エステル、N−メチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のマレイミド化合物、マレイン酸等の不飽和ジカルボン酸、無水マレイン酸等の不飽和ジカルボン酸無水物およびアクリルアミド等の不飽和アミド化合物等を挙げることができ、なかでも、発色性の点では(メタ)アクリル酸メチル、耐熱性の点ではN−フェニルマレイミドおよび無水マレイン酸が好ましい。
【0014】
前記グラフト共重合体(A)に用いられる芳香族ビニル化合物(イ)、シアン化ビニル化合物(ロ)および共重合可能なビニル系単量体(ハ)の各組成比は、芳香族ビニル化合物(イ)および共重合可能な他のビニル系単量体(ハ)が55〜85重量%であることが、耐衝撃性および成形加工性の点から好ましく。シアン化ビニル系単量体(ロ)は45〜15重量%であることが、耐薬品性および成形加工性の点から好ましく、40〜20重量%がより好ましい。その他の共重合可能なビニル系単量体(ハ)は0〜40重量%であることが発色性の点で好ましい。
【0015】
グラフト共重合体(A)におけるゴム質重合体(A−1)の含有量は、機械的強度および成形加工性の点から、5〜80重量部であり、好ましくは10〜70重量部である。グラフト共重合体(A)におけるゴム質重合体(A−1)の含有量が5重量部未満であると、得られる摺動性熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が十分でなく、また80重量部を超えると、成形加工性および耐熱性が低下する。
【0016】
また、ゴム質重合体(A−1)中のゴムの重量平均粒子径は、耐衝撃性および成形加工性の点から、0.1〜2.0μmであり、好ましくは0.5〜1.5μmである。重量平均粒子径が0.1μm未満であると、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が十分でなく、また2.0μmを越えると成形加工性が低下する。
【0017】
グラフト共重合体(A)におけるグラフト率は、耐衝撃性、成形加工性および耐熱性の点から15〜150%が好ましく、より好ましくは20〜70%である。得られる摺動性熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性の点から、グラフト率が15%以上であることが好ましく、成形加工性および耐熱性の点から、150%以下が好ましい。
【0018】
高級脂肪酸アルコ−ルエステル(C)およびα−オレフィンオリゴマーおよび/またはエチレンとα−オレフィンのコオリゴマー(D)が添加される樹脂組成物中のグラフト共重合体(A)の含有量は、10〜40重量部である。含有量は、耐衝撃性と剛性とのバランスの点から25〜35重量部が好ましい。グラフト共重合体(A)の含有量が10重量部未満であると、得られる耐摺動性熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が十分でなく、また40重量部を超えると、成形加工性、耐熱性および剛性が低下する。
【0019】
グラフト共重合体(A)の製造方法は、乳化重合、懸濁重合、塊状重合、溶液重合等のいずれの重合方法を用いても良く、特に制限されない。また、単量体、開始剤および連鎖移動剤の仕込み方法についても特に制限はなく、初期一括仕込み、あるいは共重合体の組成分布の生成を抑えるために仕込み単量体の一部または全部を連続的または分割して仕込みながら重合してもよい。
【0020】
本発明におけるビニル系共重合体(B)に用いられる芳香族ビニル化合物(イ)、シアン化ビニル化合物(ロ)および共重合可能なビニル系単量体(ハ)の各組成比は、芳香族ビニル化合物(イ)が35〜85重量%であることが、耐衝撃性および成形加工性の点から好ましく、40〜80重量%がより好ましい。シアン化ビニル系単量体(ロ)は65〜15重量%であることが、耐薬品性および成形加工性の点から好ましく、共重合可能な他のビニル系単量体(ハ)は0〜40重量%であることが、耐熱性の点から好ましい。
【0021】
また、ビニル系共重合体(B)の還元粘度は、得られる摺動性熱可塑性樹脂組成物の成形加工性の点から、0.2〜1.0dl/gであり、好ましくは0.3〜0.7dl/gである。ビニル系共重合体(B)における還元粘度が0.2dl/g未満であると、得られる摺動性熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が十分でなく、1.0dl/gを超えると成形加工性が低下する。
【0022】
高級脂肪酸アルコ−ルエステル(C)およびα−オレフィンオリゴマーおよび/またはエチレンとα−オレフィンのコオリゴマー(D)が添加される樹脂組成物中のビニル系共重合体(B)の含有量は、90〜60重量部である。含有量が60重量部未満であると、得られる摺動性熱可塑性樹脂組成物の成形加工性が十分でなく、また90重量部を超えると、耐衝撃性が低下する。
【0023】
ビニル系共重合体(B)の重合方法としては、水系懸濁重合が好ましいが、特に該方法に制限されない。
【0024】
本発明における高級脂肪酸アルコ−ルエステル(C)は、天然ワックス、例えば、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、木ロウ、ホホバ油、ミツロウ、ラノリン等から抽出される高級脂肪酸と高級アルコ−ルのエステル化合物あるいは高級脂肪酸と高級アルコールより合成される化合物である。 合成方法としては、脂肪酸とアルコールより脱水反応で合成する直接エステル化、エステルとアルコールまたはエステルと脂肪酸あるいはエステルとエステルの反応で新しいエステルを合成するエステル交換反応、塩化アシルとアルコールより合成する方法などがある。
【0025】
高級脂肪酸および高級アルコールの炭素数は12〜32である。炭素数が12未満では、耐熱性が低下し、32を越えると耐衝撃性が低下する。
【0026】
本発明におけるα−オレフィンオリゴマー、エチレンとα−オレフィンとのコオリゴマー(D)に用いられる単量体としては、エチレンおよび炭素数3〜20のα−オレフィン、例えばプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン等が挙げられる。
【0027】
本発明におけるα−オレフィンオリゴマー、エチレンとα−オレフィンとのコオリゴマー(D)は、100℃での動粘度が15〜1000cStであることが摺動特性および成形加工性の点から好ましい。
【0028】
本発明における炭素数12〜32の高級脂肪酸と炭素数12〜32の高級アルコールとのエステル化物である高級脂肪酸アルコールエステル(C)、α−オレフィンオリゴマーおよび/またはエチレンとα−オレフィンのコオリゴマー(D)の配合量は、前記樹脂組成物100重量部に対し、(C)および(D)それぞれ1重量部以上であり、(C)と(D)の配合量合計は2〜10重量部である。(C)と(D)の配合量合計は摺動特性および耐熱性の面から3〜8重量部が好ましい。(C)と(D)の配合量合計が2重量部未満であると得られる摺動性熱可塑性樹脂組成物の摺動特性が十分でなく、また10重量部を超えると耐熱性が低下する。
【0029】
これらの成形品の用途については、電気、電子、自動車、機械、雑貨、化学プラント、航空、宇宙用の部品、素材など特に制限はないが、本発明の成形品の特徴から、摺動特性が要求されるOA機器用途、光ディスク等の記録媒体シェル・記録装置部品(トレー、シャーシ)、複写機(コピー機)、ファクシミリ、コンピューター・プリンター等の印刷紙と接触する部品などに使用できる。
【0030】
本発明の摺動性熱可塑性樹脂組成物の製造方法に関しては、バンバリーミキサー、ロール、および単軸または多軸押出機で溶融混練するなど種々の方法を採用することができる。
【0031】
本発明の摺動性熱可塑性樹脂組成物に本発明の目的を損なわない範囲で塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド、ポリカーボネート類を加えて成形用樹脂としての性能を改良することができる。また、必要に応じてヒンダードフェノール系、含硫黄有機化合物系、含リン有機化合物系等の酸化防止剤、フェノール系、アクリレート系等の熱安定剤、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリシレート系等の紫外線吸収剤、有機ニッケル系、ヒンダードアミン系等の光安定剤等の各種安定剤、高級脂肪酸の金属塩類、高級脂肪酸アミド類等の滑剤、フタル酸エステル類、リン酸エステル類等の可塑剤、ポリブロモジフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノール−A、臭素化エポキシオリゴマー、臭素化ポリカーボネートオリゴマー等の含ハロゲン系化合物、リン系化合物、三酸化アンチモン等の難燃剤・難燃助剤、カーボンブラック、酸化チタン、顔料および染料等を添加することもできる。更に、ガラス繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズ、炭素繊維、金属繊維等の補強剤や充填剤を添加することもできる。かかる補強材等の添加に際しては、バンバリーミキサー、ロール、および単軸または多軸押出機で溶融混練するなど種々の方法を採用することができる。
【0032】
上記によって得られた摺動性熱可塑性樹脂組成物は、射出成形、押出成形、ブロー成形、真空成形、圧縮成形、ガスアシスト成形等の現在熱可塑性樹脂の成形に用いられる公知の方法によって成形することができ、特に制限されるものではない。
【0033】次に摺動性に優れた熱可塑性樹脂組成物の樹脂特性の評価方法を下記する。機械的強度、耐熱性等の一般的な特性については、射出成形によりテストピースを成形し、下記試験法に準拠し、測定した。
【0034】
(1)重量平均ゴム粒子径
アルギン酸ナトリウムクリーミング化法(Rubber Age Vol.88 p.484〜490(1960)by E.schmidt,P.H.Bidison 参照)。
【0035】
(2)グラフト率
グラフト共重合体所定量(m)にアセトンを加え、3時間還流し、この溶液を8800r.p.m.(10000G)で40分間遠心分離後、不溶分を濾過し、この不溶分を60℃で5時間減圧乾燥し、重量(n)を測定した。グラフト率は、式(I)より算出した。ここで、Lはグラフト共重合体のゴム含有量である。
【0036】
グラフト率(%)={(n−m×L)/(m×L)}×100 (I)。
【0037】
(3)還元粘度ηsp/c
サンプル1gにアセトン200mlを加え、3時間還流し、この溶液を8800r.p.m.(10000G)で40分間遠心分離した後、不溶分を濾過する。濾液をロータリーエバポレーターで濃縮し、析出物(アセトン可溶分)を60℃で5時間減圧乾燥後、ウベローデ粘度計を用い、メチルエチルケトン溶液(0.4g/dl)、30℃でηsp/cを測定した。
【0038】
(4)動粘度
JIS K2283に準じて100℃で測定した。
【0039】
(5)曲げ弾性率
ASTM D790(23℃)に準じて測定した。
【0040】
(6)IZOD衝撃強度
ASTM D256(23℃,12.7mm,ノッチ付き)に準じて測定した。
【0041】
(7)荷重撓み温度
ASTM D648(6.4mm,負荷応力1.86MPa)に準じて測定した。
【0042】
(8)MFR(メルトフローレート)
ISO 1133(220℃,98N荷重)に準じて測定した。
【0043】
(9)静摩擦係数
協和界面化学社製自動摩擦・摩耗解析装置DFPM−SS型を用いて測定した。射出成形にて縦60mm×横50mm×厚さ3mmの試験片を作成し、該試験片および該試験片から切り出した縦10mm×横10mm×厚さ3mm試験片を用いて、荷重100g(負荷応力 0.0098MPa)、ストローク50mm、速度0.1mm/secの条件にて、温度23±1℃、湿度50±5%の環境下で同樹脂組成物同士の静摩擦係数を測定した。
【0044】
(10)摩耗量
東洋精機製作所社製鈴木式スラスト摩擦・摩耗試験機を用い、射出成形にて、外径25mm×内径20mm×高さ15mmの円筒状試験片を作成し、荷重1kg、回転速度10cm/sec.、処理時間72hr(23℃)の条件にて、同樹脂組成物同士でスラストさせ、ト−タル摩耗量(mg)を測定した。
【0045】
本発明をさらに具体的に説明するため、以下に実施例および比較例を挙げて説明するが、これら実施例は本発明を制限するものではない。なお、ここで特にことわりのない限り「%」は重量%、「部」は重量部を表す。また、本発明についての実施例・比較例の判定基準は以下のとおりとする。
【0046】
(1)摺動特性(静摩擦係数および摩耗量による)
静摩擦係数が0.3未満でかつ摩耗量が10mg未満:○ 優秀(合格)
静摩擦係数が0.3未満でかつ摩耗量が15mg未満:△ 良好(合格)
静摩擦係数が0.3以上または摩耗量が15mg以上:× 不良(不合格)
(2)耐衝撃性(IZOD衝撃強度による)
80J/m以上 :○ 優秀(合格)
60J/m以上80J/m未満:△ 良好(合格)
60J/m未満 :× 不良(不合格)
(3)耐熱性(荷重撓み温度による)
85℃以上 :○ 優秀(合格)
80℃以上85℃未満:△ 良好(合格)
80℃未満 :× 不良(不合格)
(4)流動性(MFRによる)
25g/10min以上 :○ 優秀(合格)
20g/10min以上25g/10min未満:△ 良好(合格)
20g/10min未満 :× 不良(不合格)
【0047】
【実施例】
(A)グラフト共重合体
A1:窒素置換した反応器に純水120部、ブドウ糖0.5部、ピロリン酸ナトリウム0.5部、硫酸第一鉄0.005部および表1に示した所定量のポリブタジエンラテックスを仕込み、撹拌しながら反応器内の温度を65℃に昇温した。内温が65℃に達した時点を重合開始として表1に示した所定量のモノマおよびt−ドデシルメルカプタン混合物を5時間掛けて連続添加した。同時に並行して、表1に示すクメンハイドロパーオキサイドおよびオレイン酸カリウムからなる水溶液を7時間掛けて連続添加し、反応を完結させた。
【0048】
得られたラテックスに、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)をラテックス固形分100重量部に対して1重量部添加し、続いて、このラテックスを硫酸で凝固後、水酸化ナトリウムにて中和し、洗浄濾過後、乾燥させてパウダー状のグラフト共重合体A1を得た。このグラフト共重合体のグラフト率は45%であった。
【0049】
A2〜A6:A1と同様の方法で、表1に示す組成比で、グラフト共重合体A2〜A6を得た。
【0050】
【表1】
(B)ビニル系共重合体
B1:スチレン73部、アクリロニトリル27部からなる単量体混合物を塊状重合して、ペレット状の共重合体B1を得た。該共重合体の還元粘度は0.65dl/gであった。
【0051】
B2:スチレン65部、アクリロニトリル35部からなる単量体混合物を懸濁重合して、ビ−ズ状の共重合体B2を得た。該共重合体の還元粘度は0.65dl/gであった。
【0052】
B3:スチレン73部、アクリロニトリル27部からなる単量体混合物を塊状重合して、ペレット状の共重合体B3を得た。該共重合体の還元粘度は1.50dl/gであった。
【0053】
B4:スチレン76部、アクリロニトリル24部からなる単量体混合物を懸濁重合して、ビーズ状の共重合体B4を得た。該共重合体の還元粘度は0.15dl/gであった。
【0054】
B5:スチレン87部、アクリロニトリル13部からなる単量体混合物を懸濁重合して、ビーズ状の共重合体B5を得た。該共重合体の還元粘度は0.30dl/gであった。
【0055】
B6:スチレン50部、アクリロニトリル50部からなる単量体混合物を懸濁重合して、ビーズ状の共重合体B6を得た。該共重合体の還元粘度は0.70dl/gであった。
【0056】
(C)高級脂肪酸アルコ−ルエステル
C1:リグノセリン酸(C24)ミリシル(C30)
C2:パルミチン酸(C16)ヘキサデシル(C16)
C3:ステアリン酸(C18)ブチル(C4)をそれぞれ使用した。
【0057】
(D)α−オレフィンオリゴマー、エチレンとα−オレフィンのコオリゴマー
D1:三井石油化学社製「ル−カント」HC20(100℃での動粘度:20cSt)
D2:三井石油化学社製「ル−カント」HC100(100℃での動粘度:100cSt)
D3:三井石油化学社製「ル−カント」HC10(100℃での動粘度:10cSt)
D4:三井石油化学社製「ル−カント」HC600および「ル−カント」HC2000を混合したもの(100℃での動粘度:1500cSt)をそれぞれ使用した。
【0058】
実施例1〜18、および比較例1〜13
上記記載のグラフト共重合体(A)、ビニル系共重合体(B)および高級脂肪酸アルコールエステル(C)、α−オレフィンオリゴマーあるいはエチレンとα−オレフィンのコオリゴマー(D)を表2および表3記載の割合で配合後、40mmφ単軸押出機にてシリンダー設定温度230℃で溶融混練し、ペレット状の樹脂を得た。
【0059】
得られたペレットを東芝機械(株)製射出成形機IS−50Aにてシリンダー設定温度230℃でテストピースを成形し、諸特性を評価し、結果を表4〜表9に掲げた。
【0060】
実施例1〜18により、本発明に規定する範囲の摺動性熱可塑性樹脂組成物が、摺動特性、耐熱性に優れ、かつ機械的特性、成形加工性のバランスに優れてことが判る。
【0061】
しかし、比較例1〜13は、グラフト共重合体(A)、ビニル系共重合体(B)および高級脂肪酸アルコールエステル(C)、α−オレフィンオリゴマーおよび/またはエチレンとα−オレフィンのコオリゴマー(D)の配合割合などの要件が、本発明の規定する範囲外である。そのため、比較例1〜6は摺動特性が悪く、比較例7〜13は摺動特性は良好であるが、比較例7、8は耐熱性が低く、比較例9、11、12は耐衝撃性が低く、さらに比較例8、10、13は流動性が著しく損なわれる。
【0062】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【0063】
【発明の効果】
本発明の摺動性熱可塑性樹脂組成物または該成形品は、ゴム含有グラフト共重合体とシアン化ビニル系共重合体と特定構造のビニル系共重合体および特定構造の高級脂肪酸アルコ−ルエステルとα−オレフィンオリゴマーおよび/またはエチレンとα−オレフィンのコオリゴマーとを組み合わせることが特徴であり、摺動特性、特に樹脂成形品および金属との摺動特性、および耐熱性に優れ、かつ機械的特性、成形加工性のバランスに優れている。
【0064】
本発明の摺動性熱可塑性樹脂組成物または成形品は、上述特徴を活して、種々の用途に供されるが、良好な摺動特性が得られ、機械的特性にも優れるためOA機器や家電用途等の電気製品用途に好適である。
Claims (5)
- 重量平均粒子径が0.1〜2.0μmであるゴム質重合体(A−1)5〜80重量部に、芳香族ビニル系単量体(イ)とシアン化ビニル系単量体(ロ)およびこれらと共重合可能な他のビニル系単量体(ハ)から選ばれる少なくとも2種以上の単量体混合物(A−2)95〜20重量部をグラフト重合してなるグラフト共重合体(A)10〜40重量部と、芳香族ビニル系単量体(イ)とシアン化ビニル系単量体(ロ)およびこれらと共重合可能な他のビニル系単量体(ハ)から選ばれる少なくとも2種以上の単量体からなり、かつ還元粘度が0.2〜1.0dl/gであるビニル系共重合体(B)90〜60重量部とからなる樹脂組成物100重量部に対し、炭素数12〜32の高級脂肪酸と炭素数12〜32の高級アルコールとのエステル化物である高級脂肪酸アルコールエステル(C)を1重量部以上およびα−オレフィンオリゴマーおよび/またはエチレンとα−オレフィンのコオリゴマー(D)を1重量部以上、かつ(C)と(D)の配合量合計が2〜10重量部を含有することを特徴とする摺動性熱可塑性樹脂組成物。
- グラフト共重合体(A)のグラフト率が15〜150%である請求項1に記載の摺動性熱可塑性樹脂組成物。
- ビニル系共重合体(B)が芳香族ビニル系単量体(イ)35〜85重量%とシアン化ビニル系単量体(ロ)65〜15重量%およびこれらと共重合可能な他のビニル系単量体(ハ)0〜40重量%からなる共重合体である請求項1または請求項2のいずれかに記載の摺動性熱可塑性樹脂組成物。
- α−オレフィンオリゴマーおよび/またはエチレンとα−オレフィンのコオリゴマー(D)の100℃での動粘度が15〜1000cStである請求項1〜3のいずれかに記載の摺動性熱可塑性樹脂組成物。
- 請求項1〜4記載の摺動性熱可塑性樹脂組成物からなる静摩擦係数が0.3未満である成形品。
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