JP3546598B2 - ハイブリッド車両の駆動制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ハイブリッド車両の駆動制御装置に係り、特に、所定車速以上で走行している際に、Dレンジ等の駆動状態からNレンジ等の非駆動状態へ切り換えられた場合に発生する動力源の吹き上がり、或いは非駆動状態から再び駆動状態へ切り換えられた場合に生じるショック等を防止する技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
燃料の燃焼によって作動するエンジンと、電気エネルギーで作動する電動モータとを車両走行時の動力源として備えており、動力伝達を行う駆動状態と動力伝達を遮断する非駆動状態とを有する動力伝達手段がその動力源と駆動輪との間に配設されているハイブリッド車両が、例えば特開平7−67208号公報等に記載されている。
【0003】
動力伝達手段としては、変速比を変更可能な変速機、例えばクラッチやブレーキなどの係合手段の係合、解放制御によって変速比が異なる複数の変速段が成立させられる有段自動変速機や、変速比を連続的に変化させるベルト式、トロイダル型などの無段変速機等が広く用いられている。これらの動力伝達手段は、N(ニュートラル)やP(パーキング)などの動力伝達を遮断する非駆動状態と、D(ドライブ)やR(リバース)などの動力伝達を行う駆動状態とを備えているのが普通であり、シフトレバーやマニュアルシフトバルブなどにより運転者の切換操作に従って機械的に切り換えられるようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このようなハイブリッド車両においては、所定車速以上で走行している際に、上記動力伝達手段が駆動状態から非駆動状態へ切り換えられると、動力源から駆動輪へ動力が伝達されているパワーオン状態では、動力伝達手段の入力回転数の吹き上がりが発生し、また、駆動輪から動力源へ動力が伝達されているパワーオフ状態では、再び動力伝達手段が駆動状態へ切り換えられた場合にショック等が発生してしまうのである。
【0005】
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、動力源と駆動輪との間に変速機等の動力伝達手段が配設されているハイブリッド車両において、所定車速以上で走行している際に、動力伝達手段が駆動状態から非駆動状態へ切り換えられた場合に動力源が吹き上がったり、その後駆動状態へ切り換えられた場合にショック等が発生したりするのを防止することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するために、第1発明は、(a) 燃料の燃焼によって作動するエンジンと、電気エネルギーで作動する電動モータとを備え、少なくとも電動モータを車両走行時の動力源として使用する一方、(b) 動力伝達を行う駆動状態と動力伝達を遮断する非駆動状態とを有して、前記動力源と駆動輪との間に配設された動力伝達手段を有するハイブリッド車両の駆動制御装置であって、(c) 前記動力源から前記駆動輪へ動力伝達が行われるパワーオン状態で、且つ所定車速以上で走行している際に、前記動力伝達手段が駆動状態から非駆動状態へ切り換えられた場合には、動力伝達手段の入力回転数の吹き上がりを防止するように前記電動モータを制御する非駆動時モータ制御手段を有することを特徴とする。
【0007】
第2発明は、(a) 燃料の燃焼によって作動するエンジンと、電気エネルギーで作動する電動モータとを備え、少なくとも電動モータを車両走行時の動力源として使用する一方、(b) 動力伝達を行う駆動状態と動力伝達を遮断する非駆動状態とを有して、前記動力源と駆動輪との間に配設された動力伝達手段を有するハイブリッド車両の駆動制御装置であって、(c) 前記駆動輪から前記動力源へ動力伝達が行われるパワーオフ状態で、且つ所定車速以上で走行している際に、前記動力伝達手段が駆動状態から非駆動状態へ切り換えられた場合には、動力伝達手段の入力回転数が車速に対応した所定範囲内となるように前記電動モータを制御する非駆動時モータ制御手段を有することを特徴とする。
【0008】
【発明の効果】
第1発明では、動力源から駆動輪へ動力伝達が行われるパワーオン状態で、且つ所定車速以上で走行している際に、動力伝達手段が駆動状態から非駆動状態へ切り換えられた場合には、動力伝達手段の入力回転数の吹き上がりを防止するように電動モータが制御されるため、動力源の無用な吹き上がりが防止される。
【0009】
第2発明では、駆動輪から動力源へ動力伝達が行われるパワーオフ状態で、且つ所定車速以上で走行している際に、動力伝達手段が駆動状態から非駆動状態へ切り換えられた場合には、動力伝達手段の入力回転数が車速に対応した所定範囲内となるように電動モータが制御されるため、再び動力伝達手段が駆動状態へ切り換えられた場合にショック等の発生が防止される。
【0010】
【発明の実施の形態】
ここで、本発明は、例えばクラッチにより動力伝達を接続、遮断することによって動力源を切り換えるタイプや、遊星歯車装置などの合成、分配機構によってエンジン及び電動モータの出力を合成したり分配したりするミックスタイプ、電動モータを補助的に使用するアシストタイプ、エンジンは専ら発電のために発電機を回転駆動するシリーズタイプなど、種々のタイプのハイブリッド車両に適用され得る。
【0011】
また、動力伝達手段としては、油圧式クラッチやブレーキなどの油圧式摩擦係合手段によって駆動状態および非駆動状態、更には変速段が切り換えられる遊星歯車式等の自動変速機が好適に用いられるが、無段変速機や手動変速機などを用いることも可能である。
【0012】
また、電動モータは、発電機(ジェネレータ)としての機能も有するモータジェネレータが好適に用いられ、非駆動時モータ制御手段は、例えばモータジェネレータを動力源とする走行時にはそのモータジェネレータのトルクを増減制御すれば良く、エンジンのみを動力源としている走行時であってモータジェネレータが無負荷状態でフリー回転させられている場合は、正逆方向のトルクを加えたり回生制動トルクを発生させたりすれば良く、モータジェネレータが発電機として用いられ、回生制動によって発電している場合は、その回生制動トルクを増減制御すれば良い。
【0013】
また、エンジンが車両走行用の動力源として用いられている場合、第1発明では、上記モータ制御と同時に電子スロットル弁を絞り制御したり、フューエルカットを行ったりすることが望ましい。第2発明では、上記モータ制御と同時に電子スロットル弁を開くとともにフューエルカットを行うことが望ましい。
【0014】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の一実施例である駆動制御装置を備えているハイブリッド駆動装置10の骨子図である。
【0015】
図1において、このハイブリッド駆動装置10はFR(フロントエンジン・リヤドライブ)車両用のもので、燃料の燃焼によって作動する内燃機関等のエンジン12と、電気エネルギーによって作動する電動モータとしてのモータジェネレータ14と、シングルピニオン型の遊星歯車装置16と、自動変速機18とを車両の前後方向に沿って備えており、出力軸19から図示しないプロペラシャフトや差動装置などを介して左右の駆動輪(後輪)へ駆動力を伝達する。
【0016】
遊星歯車装置16は機械的に力を合成分配する合成分配機構で、モータジェネレータ14と共に電気式トルコン24を構成しており、そのリングギヤ16rは第1クラッチCE1 を介してエンジン12に連結され、サンギヤ16sはモータジェネレータ14のロータ軸14rに連結され、キャリア16cは自動変速機18の入力軸26に連結されている。また、サンギヤ16sおよびキャリア16cは第2クラッチCE2 によって連結されるようになっている。
【0017】
なお、エンジン12の出力は、回転変動やトルク変動を抑制するためのフライホイール28およびスプリング、ゴム等の弾性部材によるダンパ装置30を介して第1クラッチCE1 に伝達される。第1クラッチCE1 および第2クラッチCE2 は、何れも油圧アクチュエータによって係合、解放される摩擦式の多板クラッチである。
【0018】
自動変速機18は、前置式オーバードライブプラネタリギヤユニットから成る副変速機20と、単純連結3プラネタリギヤトレインから成る前進4段、後進1段の主変速機22とを組み合わせたものである。
【0019】
具体的には、副変速機20はシングルピニオン型の遊星歯車装置32と、油圧アクチュエータによって摩擦係合させられる油圧式のクラッチC0 、ブレーキB0 と、一方向クラッチF0 とを備えて構成されている。また、主変速機22は、3組のシングルピニオン型の遊星歯車装置34、36、38と、油圧アクチュエータによって摩擦係合させられる油圧式のクラッチC1 , C2 、ブレーキB1 ,B2 ,B3 ,B4 と、一方向クラッチF1 ,F2 とを備えて構成されている。
【0020】
そして、図2に示されているソレノイドバルブSL1〜SL4の励磁、非励磁により油圧回路40が切り換えられたり、シフトレバー42にプッシュプルケーブル43(図5参照)などを介して連結されたマニュアルシフトバルブ44(図5参照)によって油圧回路40が機械的に切り換えられたりすることにより、クラッチC0 ,C1 ,C2 、ブレーキB0 ,B1 ,B2 ,B3 ,B4 がそれぞれ係合、解放制御され、図3に示されているようにニュートラル(N)と前進5段(1st〜5th)、後進1段(Rev)の各変速段が成立させられる。
【0021】
なお、上記自動変速機18や前記電気式トルコン24は、中心線に対して略対称的に構成されており、図1では中心線の下半分が省略されている。
【0022】
図3のクラッチ、ブレーキ、一方向クラッチの欄の「○」は係合、「●」はシフトレバー42がエンジンブレーキレンジ、たとえば「3」、「2」、及び「L」レンジ等の低速レンジへ操作された場合に係合、そして、空欄は非係合を表している。
【0023】
その場合に、ニュートラルN、後進変速段Rev、及びエンジンブレーキレンジは、シフトレバー42に機械的に連結されたマニュアルシフトバルブ44によって油圧回路40が機械的に切り換えられることによって成立させられ、前進変速段の1st〜5thの相互間の変速はソレノイドバルブSL1〜SL4によって電気的に制御される。
【0024】
また、前進変速段の変速比は1stから5thとなるに従って段階的に小さくなり、4thの変速比i4 =1であり、5thの変速比i5 は、副変速機20の遊星歯車装置32のギヤ比をρ(=サンギヤの歯数ZS /リングギヤの歯数ZR <1)とすると1/(1+ρ)となる。後進変速段Revの変速比iR は、遊星歯車装置36、38のギヤ比をそれぞれρ2 、ρ3 とすると1−1/ρ2 ・ρ3 である。図3は各変速段の変速比の一例を示したものである。
【0025】
図4は、図2に表されるシフトレバー42の操作位置を示している。図において、車両の前後方向の6つの操作位置と車両の左右方向の2つの操作位置との組み合わせにより、シフトレバー42を8通りの操作位置へ操作可能に支持する図示しない支持装置によってシフトレバー42が支持されている。
【0026】
図5は、シフトレバー42に連結されるマニュアルシフトバルブ44の作動を説明している。図5において、マニュアルシフトバルブ44には、油路45を介して図示しないプライマリレギュレータバルブよりライン圧が加えられている。シフトレバー42が、中立レンジとしてのNレンジ或いはPレンジへ操作されている場合には、スプール46によって油路45から油路47及び油路48への流路が塞がれるため、クラッチC1 、C2 の何れにも油圧が供給されずに機械的にニュートラルが成立させられる。
【0027】
一方、シフトレバー42がDレンジ或いはエンジンブレーキレンジへ操作されている場合には、スプール46の動きに合わせて油路47が導通されるため、クラッチC1 (フォワードクラッチ)へ油圧が供給されて機械的に前進状態が成立させられ、また、シフトレバー42がRレンジへ操作されている場合には、スプール46の動きに合わせて油路48が導通されるため、クラッチC2 (ダイレクトクラッチ)へ油圧が供給されて機械的に後進状態が成立させられる。
【0028】
図3の作動表に示されているように、第2変速段(2nd)と第3変速段(3rd)との間の変速は、第2ブレーキB2 と第3ブレーキB3 との係合・解放状態を共に変えるクラッチツウクラッチ変速になる。この変速を円滑に行うために、上述した油圧回路40には図6に示す回路が組み込まれている。
【0029】
図6において符号70は1−2シフトバルブを示し、また符号71は2−3シフトバルブを示し、さらに符号72は3−4シフトバルブを示している。これらのシフトバルブ70、71、72の各ポートの各変速段での連通状態は、それぞれのシフトバルブ70、71、72の下側に示している通りである。なお、その数字は各変速段を示す。
【0030】
その2−3シフトバルブ71のポートのうち第1変速段および第2変速段で入力ポート73に連通するブレーキポート74に、第3ブレーキB3 が油路75を介して接続されている。この油路にはオリフィス76が介装されており、そのオリフィス76と第3ブレーキB3 との間にダンパーバルブ77が接続されている。このダンパーバルブ77は、第3ブレーキB3 にライン圧が急激に供給された場合に少量の油圧を吸入して緩衝作用を行うものである。
【0031】
また符号78はB−3コントロールバルブであって、第3ブレーキB3 の係合圧をこのB−3コントロールバルブ78によって直接制御するようになっている。すなわち、このB−3コントロールバルブ78は、スプール79とプランジャ80とこれらの間に介装したスプリング81とを備えており、スプール79によって開閉される入力ポート82に油路75が接続され、またこの入力ポート82に選択的に連通させられる出力ポート83が第3ブレーキB3 に接続されている。さらにこの出力ポート83は、スプール79の先端側に形成したフィードバックポート84に接続されている。
【0032】
一方、前記スプリング81を配置した箇所に開口するポート85には、2−3シフトバルブ71のポートのうち第3変速段以上の変速段でDレンジ圧を出力するポート86が油路87を介して連通させられている。また、プランジャ80の端部側に形成した制御ポート88には、リニアソレノイドバルブSLUが接続されている。
【0033】
したがって、B−3コントロールバルブ78は、スプリング81の弾性力とポート85に供給される油圧とによって調圧レベルが設定され、且つ制御ポート88に供給される信号圧が高いほどスプリング81による弾性力が大きくなるように構成されている。
【0034】
さらに、図6における符号89は、2−3タイミングバルブであって、この2−3タイミングバルブ89は、小径のランドと2つの大径のランドとを形成したスプール90と第1のプランジャ91とこれらの間に配置したスプリング92とスプール90を挟んで第1のプランジャ91とは反対側に配置された第2のプランジャ93とを有している。
【0035】
この2−3タイミングバルブ89の中間部のポート94に油路95が接続され、また、この油路95は2−3シフトバルブ71のポートのうち第3変速段以上の変速段でブレーキポート74に連通させられるポート96に接続されている。
【0036】
さらに、この油路95は途中で分岐して、前記小径ランドと大径ランドとの間に開口するポート97にオリフィスを介して接続されている。この中間部のポート94に選択的に連通させられるポート98は油路99を介してソレノイドリレーバルブ100に接続されている。
【0037】
そして、第1のプランジャ91の端部に開口しているポートにリニアソレノイドバルブSLUが接続され、また第2のプランジャ93の端部に開口するポートに第2ブレーキB2 がオリフィスを介して接続されている。
【0038】
前記油路87は第2ブレーキB2 に対して油圧を供給・排出するためのものであって、その途中には小径オリフィス101とチェックボール付きオリフィス102とが介装されている。また、この油路87から分岐した油路103には、第2ブレーキB2 から排圧する場合に開くチェックボールを備えた大径オリフィス104が介装され、この油路103は以下に説明するオリフィスコントロールバルブ105に接続されている。
【0039】
オリフィスコントロールバルブ105は第2ブレーキB2 からの排圧速度を制御するためのバルブであって、そのスプール106によって開閉されるように中間部に形成したポート107には第2ブレーキB2 が接続されており、このポート107より図での下側に形成したポート108に前記油路103が接続されている。
【0040】
第2ブレーキB2 を接続してあるポート107より図での上側に形成したポート109は、ドレインポートに選択的に連通させられるポートであって、このポート109には、油路110を介して前記B−3コントロールバルブ78のポート111が接続されている。尚、このポート111は、第3ブレーキB3 を接続してある出力ポート83に選択的に連通させられるポートである。
【0041】
オリフィスコントロールバルブ105のポートのうちスプール106を押圧するスプリングとは反対側の端部に形成した制御ポート112が油路113を介して、3−4シフトバルブ72のポート114に接続されている。このポート114は、第3変速段以下の変速段で第3ソレノイドバルブSL3の信号圧を出力し、また、第4変速段以上の変速段で第4ソレノイドバルブSL4の信号圧を出力するポートである。
【0042】
さらに、このオリフィスコントロールバルブ105には、前記油路95から分岐した油路115が接続されており、この油路115を選択的にドレインポートに連通させるようになっている。
【0043】
なお、前記2−3シフトバルブ71において第2変速段以下の変速段でDレンジ圧を出力するポート116が、前記2−3タイミングバルブ89のうちスプリング92を配置した箇所に開口するポート117に油路118を介して接続されている。また、3−4シフトバルブ72のうち第3変速段以下の変速段で前記油路87に連通させられるポート119が油路120を介してソレノイドリレーバルブ100に接続されている。
【0044】
そして、図6において、符号121は第2ブレーキB2 用のアキュムレータを示し、その背圧室にはリニアソレノイドバルブSLNが出力する油圧に応じて調圧されたアキュムレータコントロール圧が供給されている。このアキュムレータコントロール圧は、リニアソレノイドバルブSLNの出力圧が低いほど高い圧力になるように構成されている。したがって、第2ブレーキB2 の係合・解放の過渡的な油圧は、リニアソレノイドバルブSLNの信号圧が低いほど高い圧力で推移するようになっている。
【0045】
また、符号122はC−0エキゾーストバルブを示し、さらに符号123はクラッチC0 用のアキュムレータを示している。C−0エキゾーストバルブ122は2速レンジでの第2変速段のみにおいてエンジンブレーキを効かせるためにクラッチC0 を係合させるように動作するものである。
【0046】
したがって、上述した油圧回路40によれば、B−3コントロールバルブ78のポート111がドレインに連通していれば、第3ブレーキB3 の係合圧をB−3コントロ−ルバルブ78によって直接調圧することができ、また、その調圧レベルをリニアソレノイドバルブSLUによって変えることができる。
【0047】
また、オリフィスコントロールバルブ105のスプール106が、図の左半分に示す位置にあれば、第2ブレーキB2 はこのオリフィスコントロールバルブ105を介して排圧が可能になり、したがって第2ブレーキB2 からのドレイン速度を制御することができる。
【0048】
さらに、第2変速段から第3変速段への変速は、第3ブレーキB3 を緩やかに解放すると共に第2ブレーキB2 を緩やかに係合する所謂クラッチツウクラッチ変速が行われるわけであるが、その変速に先立って入力軸26への入力トルクを予め推定し、その入力トルク推定値に基づいてリニアソレノイドバルブSLUにより駆動される第3ブレーキB3 の解放過渡油圧を制御することにより変速ショックを好適に軽減することができる。
【0049】
ハイブリッド駆動装置10は、図2に示されるようにハイブリッド制御用コントローラ50及び自動変速制御用コントローラ52を備えている。これらのコントローラ50、52は、CPUやRAM、ROM等を有するマイクロコンピュータを備えて構成され、エンジントルクTE 、モータトルクTM 、エンジン回転数NE 、モータ回転数NM 、車速V(自動変速機18の出力回転数NO に対応)、アクセル操作量θAC、自動変速機18の入力回転数NI 、蓄電装置58の蓄電量SOC、ブレーキのON、OFF、シフトレバー42の操作レンジ等の各種の情報を読み込むと共に、予め設定されたプログラムに従って信号処理を行う。
【0050】
なお、エンジントルクTE はスロットル弁開度や燃料噴射量などから求められ、モータトルクTM はモータ電流などから求められ、蓄電量SOCはモータジェネレータ14がジェネレータとして機能する充電時のモータ電流や充電効率などから求められる。
【0051】
前記エンジン12は、ハイブリッド制御用コントローラ50によってスロットル弁開度や燃料噴射量、点火時期などが制御されることにより、運転状態に応じて出力が制御される。
【0052】
前記モータジェネレータ14は、図7に示すようにM/G制御器(インバータ)56を介してバッテリー等の蓄電装置58に接続されており、ハイブリッド制御用コントローラ50により、その蓄電装置58から電気エネルギーが供給されて所定のトルクで回転駆動される回転駆動状態と、回生制動(モータジェネレータ14自体の電気的な制動トルク)によりジェネレータとして機能して蓄電装置58に電気エネルギーを充電する充電状態と、ロータ軸14rが自由回転することを許容する無負荷状態とに切り換えられる。
【0053】
また、前記第1クラッチCE1 及び第2クラッチCE2 は、ハイブリッド制御用コントローラ50により電磁弁等を介して油圧回路40が切り換えられることにより、係合或いは解放状態が切り換えられる。
【0054】
前記自動変速機18は、自動変速制御用コントローラ52によって前記ソレノイドバルブSL1〜SL4、リニアソレノイドバルブSLU、SLT、SLNの励磁状態が制御され、油圧回路40が切り換えられたり油圧制御が行われることにより、運転状態に応じて変速段が切り換えられる。
【0055】
上記ハイブリッド制御用コントローラ50は、例えば本願出願人が先に出願した特願平7−294148号に記載されているように、図8に示すフローチャートに従って図9に示す9つの運転モードの1つを選択し、その選択したモードでエンジン12及び電気式トルコン24を作動させる。
【0056】
図8において、ステップS1ではエンジン始動要求があったか否かを、例えばエンジン12を動力源として走行したり、エンジン12によりモータジェネレータ14を回転駆動して蓄電装置58を充電したりするために、エンジン12を始動すべき旨の指令があったか否かを判断する。
【0057】
ここで、始動要求があればステップS2でモード9を選択する。モード9は、図9から明らかなように第1クラッチCE1 を係合(ON)し、第2クラッチCE2 を係合(ON)し、モータジェネレータ14により遊星歯車装置16を介してエンジン12を回転駆動すると共に、燃料噴射などのエンジン始動制御を行ってエンジン12を始動する。
【0058】
このモード9は、車両停止時には前記自動変速機18をニュートラルにして行われ、モード1のように第1クラッチCE1 を解放したモータジェネレータ14のみを動力源とする走行時には、第1クラッチCE1 を係合すると共に走行に必要な要求出力以上の出力でモータジェネレータ14を作動させ、その要求出力以上の余裕出力でエンジン12を回転駆動することによって行われる。
【0059】
また、車両走行時であっても、一時的に自動変速機18をニュートラルにしてモード9を実行することも可能である。このようにモータジェネレータ14によってエンジン12が始動させられることにより、始動専用のスタータ(電動モータなど)が不要となり、部品点数が少なくなって装置が安価となる。
【0060】
一方、ステップS1の判断が否定された場合、すなわちエンジン始動要求がない場合には、ステップS3を実行することにより、制動力の要求があるか否かを、例えばブレーキがONか否か、シフトレバー42の操作レンジがLや2などのエンジンブレーキレンジ(低速変速段のみで変速制御を行うと共にエンジンブレーキや回生制動が作用するレンジ)で、且つアクセル操作量θACが0か否か、或いは単にアクセル操作量θACが0か否か、等によって判断する。
【0061】
この判断が肯定された場合にはステップS4を実行する。ステップS4では、蓄電装置58の蓄電量SOCが予め定められた最大蓄電量B以上か否かを判断し、SOC≧BであればステップS5でモード8を選択し、SOC<BであればステップS6でモード6を選択する。最大蓄電量Bは、蓄電装置58に電気エネルギーを充電することが許容される最大の蓄電量で、蓄電装置58の充放電効率などに基づいて例えば80%程度の値が設定される。
【0062】
上記ステップS5で選択されるモード8は、図9に示されるように第1クラッチCE1 を係合(ON)し、第2クラッチCE2 を係合(ON)し、モータジェネレータ14を無負荷状態とし、エンジン12を停止状態すなわちスロットル弁を閉じると共に燃料噴射量を0とするものであり、これによりエンジン12の引き擦り回転による制動力、すなわちエンジンブレーキが車両に作用させられ、運転者によるブレーキ操作が軽減されて運転操作が容易になる。また、モータジェネレータ14は無負荷状態とされ、自由回転させられるため、蓄電装置58の蓄電量SOCが過大となって充放電効率等の性能を損なうことが回避される。
【0063】
ステップS6で選択されるモード6は、図9から明らかなように第1クラッチCE1 を解放(OFF)し、第2クラッチCE2 を係合(ON)し、エンジン12を停止し、モータジェネレータ14を充電状態とするもので、車両の運動エネルギーでモータジェネレータ14が回転駆動されることにより、蓄電装置58を充電するとともにその車両にエンジンブレーキのような回生制動力を作用させるため、運転者によるブレーキ操作が軽減されて運転操作が容易になる。
【0064】
また、第1クラッチCE1 が開放されてエンジン12が遮断されているため、そのエンジン12の引き擦りによるエネルギー損失がないとともに、蓄電量SOCが最大蓄電量Bより少ない場合に実行されるため、蓄電装置58の蓄電量SOCが過大となって充放電効率等の性能を損なうことがない。
【0065】
一方、ステップS3の判断が否定された場合、すなわち制動力の要求がない場合にはステップS7を実行し、エンジン発進が要求されているか否かを、例えばモード3などエンジン12を動力源とする走行中の車両停止時か否か、すなわち車速V=0か否か等によって判断する。
【0066】
この判断が肯定された場合には、ステップS8を実行する。ステップS8ではアクセルがONか否か、すなわちアクセル操作量θACが略零の所定値より大きいか否かを判断し、アクセルONの場合にはステップS9でモード5を選択し、アクセルがONでなければステップS10でモード7を選択する。
【0067】
上記ステップS9で選択されるモード5は、図9から明らかなように第1クラッチCE1 を係合(ON)し、第2クラッチCE2 を解放(OFF)し、エンジン12を運転状態とし、モータジェネレータ14の回生制動トルクを制御することにより、車両を発進させるものである。
【0068】
具体的に説明すると、遊星歯車装置16のギヤ比をρE とすると、エンジントルクTE :遊星歯車装置16の出力トルク:モータトルクTM =1:(1+ρE ):ρE となるため、例えばギヤ比ρE を一般的な値である0.5程度とすると、エンジントルクTE の半分のトルクをモータジェネレータ14が分担することにより、エンジントルクTE の約1.5倍のトルクがキャリア14cから出力される。
【0069】
すなわち、モータジェネレータ14のトルクの(1+ρE )/ρE 倍の高トルク発進を行うことができるのである。また、モータ電流を遮断してモータジェネレータ14を無負荷状態とすれば、ロータ軸56が逆回転させられるだけでキャリア14cからの出力は0となり、車両停止状態となる。
【0070】
すなわち、この場合の遊星歯車装置16は発進クラッチおよびトルク増幅装置として機能するのであり、モータトルク(回生制動トルク)TM を0から徐々に増大させて反力を大きくすることにより、エンジントルクTE の(1+ρE )倍の出力トルクで車両を滑らかに発進させることができるのである。
【0071】
ここで、本実施例では、エンジン12の最大トルクの略ρE 倍のトルク容量のモータジェネレータ、すなわち必要なトルクを確保しつつできるだけ小型で小容量のモータジェネレータ14が用いられており、装置が小型で且つ安価に構成される。
【0072】
また、本実施例ではモータトルクTM の増大に対応して、スロットル弁開度や燃料噴射量を増大させてエンジン12の出力を大きくするようになっており、反力の増大に伴うエンジン回転数NE の低下に起因するエンジンストール等を防止している。
【0073】
ステップS10で選択されるモード7は、図9から明らかなように第1クラッチCE1 を係合(ON)し、第2クラッチCE2 を解放(OFF)し、エンジン12を運転状態とし、モータジェネレータ14を無負荷状態として電気的にニュートラルとするもので、モータジェネレータ14のロータ軸14rが逆方向へ自由回転させられることにより、自動変速機18の入力軸26に対する出力が零となる。これにより、モード3などエンジン12を動力源とする走行中の車両停止時に一々エンジン12を停止させる必要がないとともに、前記モード5のエンジン発進が実質的に可能となる。
【0074】
一方、ステップS7の判断が否定された場合、すなわちエンジン発進の要求がない場合にはステップS11を実行し、要求出力Pdが予め設定された第1判定値P1以下か否かを判断する。要求出力Pdは、走行抵抗を含む車両の走行に必要な出力で、アクセル操作量θACやその変化速度、車速V(出力回転数NO )、自動変速機18の変速段などに基づいて、予め定められたデータマップや演算式などにより算出される。
【0075】
また、第1判定値P1はエンジン12のみを動力源として走行する中負荷領域とモータジェネレータ14のみを動力源として走行する低負荷領域の境界値であり、エンジン12による充電時を含めたエネルギー効率を考慮して、排出ガス量や燃料消費量などができるだけ少なくなるように実験等によって定められている。
【0076】
ステップS11の判断が肯定された場合、すなわち要求出力Pdが第1判定値P1以下の場合には、ステップS12で蓄電量SOCが予め設定された最低蓄電量A以上か否かを判断し、SOC≧AであればステップS13でモード1を選択する。一方、SOC<AであればステップS14でモード3を選択する。
【0077】
最低蓄電量Aはモータジェネレータ14を動力源として走行する場合に蓄電装置58から電気エネルギーを取り出すことが許容される最低の蓄電量であり、蓄電装置58の充放電効率などに基づいて例えば70%程度の値が設定される。
【0078】
上記モード1は、前記図9から明らかなように第1クラッチCE1 を解放(OFF)し、第2クラッチCE2 を係合(ON)し、エンジン12を停止し、モータジェネレータ14を要求出力Pdで回転駆動させるもので、モータジェネレータ14のみを動力源として車両を走行させる。
【0079】
この場合も、第1クラッチCE1 が解放されてエンジン12が遮断されるため、前記モード6と同様に引き擦り損失が少なく、自動変速機18を適当に変速制御することにより効率の良いモータ駆動制御が可能である。
【0080】
また、このモード1は、要求出力Pdが第1判定値P1以下の低負荷領域で且つ蓄電装置58の蓄電量SOCが最低蓄電量A以上の場合に実行されるため、エンジン12を動力源として走行する場合よりもエネルギー効率が優れていて燃費や排出ガスを低減できるとともに、蓄電装置58の蓄電量SOCが最低蓄電量Aより低下して充放電効率等の性能を損なうことがない。
【0081】
ステップS14で選択されるモード3は、図9から明らかなように第1クラッチCE1 および第2クラッチCE2 を共に係合(ON)し、エンジン12を運転状態とし、モータジェネレータ14を回生制動により充電状態とするもので、エンジン12の出力で車両を走行させながら、モータジェネレータ14によって発生した電気エネルギーを蓄電装置58に充電する。エンジン12は、要求出力Pd以上の出力で運転させられ、その要求出力Pdより大きい余裕動力分だけモータジェネレータ14で消費されるように、そのモータジェネレータ14の電流制御が行われる。
【0082】
一方、前記ステップS11の判断が否定された場合、すなわち要求出力Pdが第1判定値P1より大きい場合には、ステップS15において、要求出力Pdが第1判定値P1より大きく第2判定値P2より小さいか否か、すなわちP1<Pd<P2か否かを判断する。
【0083】
第2判定値P2は、エンジン12のみを動力源として走行する中負荷領域とエンジン12およびモータジェネレータ14の両方を動力源として走行する高負荷領域の境界値であり、エンジン12による充電時を含めたエネルギー効率を考慮して、排出ガス量や燃料消費量などができるだけ少なくなるように実験等によって予め定められている。
【0084】
そして、P1<Pd<P2であればステップS16でSOC≧Aか否かを判断し、SOC≧Aの場合にはステップS17でモード2を選択し、SOC<Aの場合には前記ステップS14でモード3を選択する。
【0085】
また、Pd≧P2であればステップS18でSOC≧Aか否かを判断し、SOC≧Aの場合にはステップS19でモード4を選択し、SOC<Aの場合にはステップS17でモード2を選択する。
【0086】
上記モード2は、前記図9から明らかなように第1クラッチCE1 および第2クラッチCE2 を共に係合(ON)し、エンジン12を要求出力Pdで運転し、モータジェネレータ14を無負荷状態とするもので、エンジン12のみを動力源として車両を走行させる。
【0087】
また、モード4は、第1クラッチCE1 および第2クラッチCE2 を共に係合(ON)し、エンジン12を運転状態とし、モータジェネレータ14を回転駆動するもので、エンジン12およびモータジェネレータ14の両方を動力源として車両を高出力走行させる。
【0088】
このモード4は、要求出力Pdが第2判定値P2以上の高負荷領域で実行されるが、エンジン12およびモータジェネレータ14を併用しているため、エンジン12およびモータジェネレータ14の何れか一方のみを動力源として走行する場合に比較してエネルギー効率が著しく損なわれることがなく、燃費や排出ガスを低減できる。また、蓄電量SOCが最低蓄電量A以上の場合に実行されるため、蓄電装置58の蓄電量SOCが最低蓄電量Aより低下して充放電効率等の性能を損なうことがない。
【0089】
上記モード1〜4の運転条件についてまとめると、蓄電量SOC≧Aであれば、Pd≦P1の低負荷領域ではステップS13でモード1を選択してモータジェネレータ14のみを動力源として走行し、P1<Pd<P2の中負荷領域ではステップS17でモード2を選択してエンジン12のみを動力源として走行し、P2≦Pdの高負荷領域ではステップS19でモード4を選択してエンジン12およびモータジェネレータ14の両方を動力源として走行する。
【0090】
また、SOC<Aの場合には、要求出力Pdが第2判定値P2より小さい中低負荷領域でステップS14のモード3を実行することにより蓄電装置58を充電するが、要求出力Pdが第2判定値P2以上の高負荷領域ではステップS17でモード2が選択され、充電を行うことなくエンジン12により高出力走行が行われる。
【0091】
ステップS17のモード2は、P1<Pd<P2の中負荷領域で且つSOC≧Aの場合、或いはPd≧P2の高負荷領域で且つSOC<Aの場合に実行されるが、中負荷領域では一般にモータジェネレータ14よりもエンジン12の方がエネルギー効率が優れているため、モータジェネレータ14を動力源として走行する場合に比較して燃費や排出ガスを低減できる。
【0092】
また、高負荷領域では、モータジェネレータ14およびエンジン12を併用して走行するモード4が望ましいが、蓄電装置58の蓄電量SOCが最低蓄電量Aより小さい場合には、上記モード2によるエンジン12のみを動力源とする運転が行われることにより、蓄電装置58の蓄電量SOCが最低蓄電量Aよりも少なくなって充放電効率等の性能を損なうことが回避される。
【0093】
次に、本発明が適用された本実施例の特徴部分、即ち、所定車速以上で走行している際に、自動変速機18がDレンジ等の駆動状態からNレンジ等の非駆動状態へ切り換えられた場合にエンジン12が吹きあがったり、その後駆動状態へ切り換えられた場合にショック等が発生したりするのを防止する制御作動について、図10のフローチャートに基づいて説明する。尚、本実施例において、ステップSA7、SA10が前記非駆動時モータ制御手段に対応しており、ハイブリッド制御用コントローラ50によって実行される。また、自動変速機18は、駆動状態と非駆動状態とを有する動力伝達手段に相当する。
【0094】
図10において、ステップSA1では、シフトレバー42がNレンジに操作されているか否か、言い換えれば自動変速機18が非駆動状態のニュートラルとされているか否かが、シフトポジションセンサ62から供給される信号に基づいて判断される。この判断が否定された場合は、本ルーチンは終了させられるが、この判断が肯定された場合は、続くステップSA2が実行される。
【0095】
ステップSA2では、車速Vが所定値α以上であるか否かが、車速センサ64から供給される信号に基づいて判断される。所定値αは、例えば5(Km/時)程度の比較的低車速に設定されている。この判断が否定された場合は、本ルーチンは終了させられるが、この判断が肯定された場合は、続くステップSA3が実行される。
【0096】
ステップSA3では、駆動輪から動力源へ動力伝達が行われるパワーオフ状態であるか否かが判断される。この判断は、例えばアクセル操作量センサ66に基づいて、アクセル操作量θACが略0であるか否かを判断することにより行われる。
【0097】
このステップSA3の判断が肯定された場合は、ステップSA4において、モータジェネレータ14のみを動力源として走行する前記モード1が選択されているか否かが、図8の運転モード判断サブルーチンに基づいて判断される。
【0098】
このステップSA4の判断が否定された場合は、エンジン12も車両走行時の動力源として利用されているため、ステップSA5において、エンジン12のポンプ作用による抵抗の発生を防止するために、スロットル弁が電子制御されて全開とされるとともに、続くステップSA6において、フューエルカットが行われて、エンジントルクTE の発生が防止される。
【0099】
ステップSA4の判断が肯定された場合、或いは上記ステップSA6に続いて実行されるステップSA7では、車速センサ64により検出される出力回転数NO と入力回転数センサ68により検出される入力回転数NI との比(NI /NO )が、シフトレバー42がDレンジへ操作された場合の自動変速機18の変速段の変速比と略等しい所定範囲内となるように、モータトルク(回生制動トルクを含む)TM が増減制御されることにより、入力回転数NI が最適値に誘導される。なお、エンジンブレーキが作用しない変速段では、このような入力回転数NI の制御は必ずしも必要でない。
【0100】
また、上記ステップSA3の判断が否定された場合は、動力源から駆動輪へ動力伝達が行われるパワーオン状態であり、ステップSA8において、モータジェネレータ14のみを動力源として走行する前記モード1が選択されているか否かが、図8の運転モード判断サブルーチンに基づいて判断される。
【0101】
このステップSA8の判断が否定された場合は、エンジン12も車両走行時の動力源として利用されているため、ステップSA9において、エンジントルクTE が発生しないようにフューエルカットが行われる。ステップSA9の代わりに、図10のステップSA9’を実行することにより、スロットル弁を略0まで絞り込んでエンジントルクTE を低減するようにしても良い。尚、本ブレンチでは、動力源(モータジェネレータ14)の吹き上がりを防止すれば良く、上述のステップSA7のように入力回転数NI が増大されることはないため、改めてポンプ作用による抵抗の発生を防止する必要もないことから、特に上述のSA5のようなステップは実行されない。
【0102】
ステップSA8の判断が肯定された場合、或いは上記ステップSA9に続いて実行されるステップSA10では、入力回転数センサ68により検出される入力回転数NI の変化率|dNI / dt|が所定値以下となるように、モータトルク(回生制動トルクを含む)TM が増減制御されることにより、動力源(モータジェネレータ14)の吹き上がりが防止される。尚、ステップSA7と同様に、出力回転数NO と入力回転数NI との比(NI /NO )が所定範囲内となるように、モータトルクTM が増減制御されてもよい。
【0103】
上述のように本実施例によれば、動力源から駆動輪へ動力伝達が行われるパワーオン状態で、且つ所定車速α以上で走行している際に、自動変速機18がDレンジ等の駆動状態からNレンジへ切り換えられた場合には、自動変速機18の入力回転数NI の変化率|dNI / dt|が所定値以下となるように、モータトルクTM が制御されるため、動力源(モータジェネレータ14)の吹き上がりが防止される。
【0104】
また、本実施例によれば、駆動輪から動力源へ動力伝達が行われるパワーオフ状態で、且つ所定車速α以上で走行している際に、自動変速機18がDレンジ等の駆動状態からNレンジへ切り換えられた場合には、出力回転数NO と入力回転数NI との比(NI /NO )が変速比に対応する所定範囲内となるようにモータトルクTM が増減制御されることにより入力回転数NI が最適値に誘導されるため、再び自動変速機18が駆動状態へ切り換えられた場合にショック等の発生が防止される。
【0105】
以上、本発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0106】
例えば、前述の実施例においては、後進1段および前進5段の変速段を有する自動変速機18が用いられていたが、図12に示されるように、前記副変速機20を省略して前記主変速機22のみから成る自動変速機60を採用し、図13に示されるように前進4段および後進1段で変速制御を行うようにすることも可能である。
【0107】
本発明は、その主旨を逸脱しない範囲において、その他種々の態様で適用され得るものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例である駆動制御装置を備えているハイブリッド車両のハイブリッド駆動装置の構成を説明する骨子図である。
【図2】図1のハイブリッド駆動装置に備えられている制御系統を説明する図である。
【図3】図1の自動変速機の各変速段を成立させる係合要素の作動を説明する図である。
【図4】図2のシフトレバーの操作位置を説明する図である。
【図5】図2のシフトレバーに連結されるマニュアルシフトバルブの作動を説明する図である。
【図6】図1の自動変速機の油圧回路の一部を示す図である。
【図7】図2のハイブリッド制御用コントローラと電気式トルコンとの接続関係を説明する図である。
【図8】図1のハイブリッド駆動装置の基本的な作動を説明するフローチャートである。
【図9】図8のフローチャートにおける各モード1〜9の作動状態を説明する図である。
【図10】本発明の特徴となる制御作動の要部を説明するフローチャートである。
【図11】図10のステップSA9に代用され得るステップを示す図である。
【図12】図1の実施例とは異なるハイブリッド駆動装置の構成を説明する骨子図である。
【図13】図12の自動変速機の各変速段を成立させる係合要素の作動を説明する図である。
【符号の説明】
12:エンジン
14:モータジェネレータ(電動モータ)
18、60:自動変速機(動力伝達手段)
50:ハイブリッド制御用コントローラ
ステップSA7、SA10:非駆動時モータ制御手段
Claims (2)
- 燃料の燃焼によって作動するエンジンと、電気エネルギーで作動する電動モータとを備え、少なくとも該電動モータを車両走行時の動力源として使用する一方、
動力伝達を行う駆動状態と動力伝達を遮断する非駆動状態とを有して、前記動力源と駆動輪との間に配設された動力伝達手段を有するハイブリッド車両の駆動制御装置であって、
前記動力源から前記駆動輪へ動力伝達が行われるパワーオン状態で、且つ所定車速以上で走行している際に、前記動力伝達手段が駆動状態から非駆動状態へ切り換えられた場合には、該動力伝達手段の入力回転数の吹き上がりを防止するように前記電動モータを制御する非駆動時モータ制御手段を有することを特徴とするハイブリッド車両の駆動制御装置。 - 燃料の燃焼によって作動するエンジンと、電気エネルギーで作動する電動モータとを備え、少なくとも該電動モータを車両走行時の動力源として使用する一方、
動力伝達を行う駆動状態と動力伝達を遮断する非駆動状態とを有して、前記動力源と駆動輪との間に配設された動力伝達手段を有するハイブリッド車両の駆動制御装置であって、
前記駆動輪から前記動力源へ動力伝達が行われるパワーオフ状態で、且つ所定車速以上で走行している際に、前記動力伝達手段が駆動状態から非駆動状態へ切り換えられた場合には、該動力伝達手段の入力回転数が車速に対応した所定範囲内となるように前記電動モータを制御する非駆動時モータ制御手段を有することを特徴とするハイブリッド車両の駆動制御装置。
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