JP3545056B2 - 化粧料 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は美白作用が強く、ヒアルロニダーゼの活性を阻害し、且つ肌荒れ防止に有効な化粧料に関する。
【0002】
【従来の技術】
ルウメックス シプリウス(Rumex cyprius)はタデ科ギシギシ属の植物で、エジプトで生薬として用いられている。
【0003】
化粧品の原料として使用できる美白作用のある物質としては、種々の物質が知られているが、合成品は、長期間人間の肌に適用した場合の安全性の保証がなく、使用が制限されつつある。
一方、天然物では美白作用が弱いものが多い。
しかし、人の肌に対する安全性の面から、天然物で、多年人が食したりして、安全性の面で保証されており、しかも美白作用が強く、更に皮膚に対する他の効果も併せもつ物質が望まれていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、皮膚に適用して安全であると共に、美白作用が大きく且つヒアルロニダーゼの活性を阻害し、更に肌荒れなどに有効な成分を含んだ化粧料を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記の課題を解決するため、すでに多年にわたって食用に供され、人体に対する安全性が確認されている植物をスクリーニングして調べ、化粧品として利用価値のあるものを検討した。
その結果、ルウメックス シプリウスが化粧品原料として、或いは医薬部外品としての有効性を有することを見出した。
確認された効果として美白作用、ヒアルロニダーゼの活性阻害作用、活性酸素抑制作用、抗酸化性、抗プラスミン作用、コラゲナーゼ活性阻害作用が確認された。
【0006】
すなわち、本発明は、ルウメックス シプリウスの葉から、水或いは親水性有機溶媒、又はこれらの混合溶媒で抽出した抽出物を含む化粧料である。
【0007】
ルウメックス シプリウスの利用方法としては、水或いは親水性有機溶媒例えば、エタノール、メタノール、アセトン等で抽出する。しかしながら、化粧品原料の抽出であるから、水或いはエタノール或いはこれの混合溶媒での抽出が好ましいのは当然である。
また、場合によっては、グリセリン、1,3ブチレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコール又は多価アルコールと水の混液も抽出に利用できる。
またさらに凍結乾燥して粉体として利用することも利用方法によっては有効である。
【0008】
この物質を他の化粧品原料例えばスクワラン、ホホバ油等の液状油、ミツロウ、セチルアルコール等の固体油、各種の活性剤、グリセリン、1,3ブチレングリコール等の保湿剤や各種薬剤等を添加してさまざまな剤形の化粧料を調製することができる。例えばローション、クリーム、乳液、パック等で目的に応じて利用形態を考えればよい。
【0009】
本発明の抽出物としての効果は、前記した如く、第1に肌の美白作用である。第2にヒアルロニダーゼの活性抑制作用である。ヒアルロニダーゼは、生体中に広く分布し、皮膚にも存在する酵素で、その名の通りヒアルロン酸を分解する。ヒアルロン酸はβ‐D‐N‐アセチルグルコサミンとβ‐D‐グルクロン酸が交互に結合した直鎖状の高分子多糖で、コンドロイチン硫酸などとともに哺乳動物の結合組織に広く存在するグリコサミノグルカンの一種である。
結合組織内でのヒアルロン酸の機能として、細胞間隙に水を保持し、また組織内にジェリー状のマトリックスを形成して細胞を保持したり、皮膚の潤滑性と柔軟性を保ち、外力(機械的障害)および細菌感染を防止していると考えられている。皮膚のヒアルロン酸は齢をとるにつれて減少し、その結果小ジワやかさつきなどの老化をもたらすといわれている。
従って、これを分解するヒアルロニダーゼの活性を抑制することは、製剤に使用されているヒアルロン酸の安定性や、皮膚に塗布した後の製剤のヒアルロン酸及び皮膚に存在していたヒアルロン酸の安定に寄与すると考えられる。
【0010】
第3に活性酸素抑制作用である。空気中には酸素があり、これがないと生物(嫌気性のものを除く)は存在しえない。しかし酸素は紫外線や酵素等の影響を受けて活性酸素になる。活性酸素は脂肪酸を酸化し過酸化物を生成させる。生体の生体膜のリン脂質も酸化させ、障害を与える。
その上、生成した過酸化物と活性酸素はDNAに損傷を与え、老化を促進するといわれている。この活性酸素は、チロシンからメラニンを作る機構にも影響を与え皮膚の黒化にも関与している。この活性酸素を抑制することは皮膚にとって重要な、言い換えれば化粧料に求められている重要な要素である。
本発明のルウメックス シプリウスは又この活性酸素抑制作用、と第4に抗酸化性、第5に抗プラスミン作用、第6にコラゲナーゼ活性阻害作用も有している。
【0011】
ルウメックス シプリウスは第5にプラスミン インヒビターとして働く。プラスミンとは血中に存在する蛋白分解酵素の1つであって、血中にある前駆体のプラスミノーゲンがプラスミノーゲンアクチベータという酵素によって切断されてプラスミンになる。
プラスミンの重要な生理作用は血栓溶解である。血栓の成分であるフィブリンに対して、血中のプラスミノーゲンアクチベータは親和性があり、フィブリン塊中(血栓)のプラスミノーゲンに作用してプラスミンへと活性化する。
【0012】
その結果、フィブリン塊中にできたプラスミンが塊の内部から血栓を溶解する。
血中にはプラスミンの活性を阻害する物質が数種類あり、血中に出たプラスミンは、急速に失活し、フィブリン以外の非特異的な蛋白分解が抑えられている。プロテアーゼの1つプラスミンは、血液凝固過程で形成されたフィブリン(繊維素)を溶解する作用を持つ。プラスミンのこの作用に拮抗する因子がプラスミン インヒビターである。
すでにトラネキサム酸やε‐アミノカプロン酸が化学合成されたプラスミン インヒビターとして知られており、歯みがきなどに出血防止効果を期待して配合されている。
【0013】
ヒトの血中には、α2プラスミン・インヒビターという天然のプラスミン インヒビターが存在し、生成されたプラスミンに働き、急速に失活させ、その作用を抑えている。プラスミン インヒビターはガン転位防止にも応用の可能性があるとされている。
【0014】
ルウメックス シプリウスは第6にコラゲナーゼ活性阻害剤としても働く。
コラーゲンは膠原質とも呼ばれる。動物細胞の結合組織を構成する蛋白で、生体内に広く分布する。多細胞動物には必ず存在すると考えられている。現在までに少なくとも11種類の分子が発見されており、これらは違いに遺伝子が異なる。
【0015】
コラーゲンは骨格構成の主成分であるが、血小板凝集作用を持ち、血栓形成にも関与する。また肝硬変や動脈硬化にもコラーゲンが関与することが示唆されている。
コラゲナーゼとは、動物組織細胞および炎症細胞、腫瘍細胞などが産生する、I型、II型、III型コラーゲンを分解する酵素をいう。
【0016】
コラゲナーゼ活性阻害剤とは、前記の如きコラゲナーゼの活性を阻害する蛋白質をいう。
病態時の組織破壊、修復過程ではコラゲナーゼ活性の異状亢進がみられる。これらの病態には、慢性関節リュウマチ、歯周炎、角膜潰瘍、先天性表皮水泡症などがある。
コラゲナーゼ阻害剤は、コラゲナーゼ活性を阻害することにより、これら病態の悪化を防止、あるいは治癒させると考えられる。
【0017】
【実施例】
以下に実際の利用方法である実施例を記載するが、本発明はこの実施例によって何ら限定されるものではない。
本発明で使用したルウメックス シプリウスの抽出物の製造例を次に示す。
【0018】
(製造例1)
ルウメックス シプリウスの葉(乾燥品)を10gにエタノール300mlを加えて時々撹拌しつつ5日間放置した。これを濾過後、エバポレートした後、凍結乾燥した。
【0019】
(製造例2)
ルウメックス シプリウスの葉(乾燥品)を10gに50%エタノール水溶液300mlを加えて時々撹拌しつつ5日間放置した。これを濾過後エバポレートした後、凍結乾燥した。
【0020】
(製造例3)
ルウメックス シプリウスの葉(乾燥品)を10gに精製水300mlを加えて3時間加熱する。これを放冷した後濾過後凍結乾燥した。
【0021】
(実施例1)ローション
オリーブ油 0.5
製造例1のルウメックス シプリウスのエタノール抽出物 0.5
ポリオキシエチレン(20.E.O.)ソルビタンモノステアレート 2.0
ポリオキシエチレン(60.E.O.)硬化ヒマシ油 2.0
エタノール 10.0
1.0%ヒアルロン酸ナトリウム水溶液 5.0
精製水 80.0
【0022】
AとBをそれぞれ計量し、70℃まで加温し、BにAを撹拌しつつ徐々に加えたのち、ゆっくり撹拌しつつ30℃まで冷却した。
【0023】
実施例3は実施例2の製造例2の抽出物を製造例3の抽出物に変え作成したクリーム。
【0024】
(チロシナーゼ活性阻害試験)
(試験方法)
マックルバルン(Mcllvaln)緩衝液0.9ml、1.66mMチロシン(Tyrosine)溶液1.0ml、前記製造例(凍結乾燥品)の0.1wt/v%水溶液(溶解しにくい場合はエタノールを加えて溶解したのち精製水を加えて、エバポレートし、エタノールを除去したのち、0.1wt/v%になるように調製した)1.0mlをスクリューバイアルにとり、37℃恒温水槽中で5分以上加温した。
チロシナーゼ溶液(Sigma社製、マッシュルーム由来、914ユニット/ml)0.1mlを加え、37℃恒温水槽中で保温し、10分後に475nmで吸光度を測定した。
対照として、上記試料液のかわりに純水を加え同様に測定した。
この試験では試料の終濃度は0.033%となる。
その結果を表1に示す。
【0025】
【表1】
【0026】
(ヒアルロニダーゼ活性抑制試験)
(試験方法)
0.4%ヒアルロン酸ナトリウム0.1M(pH6.0)リン酸緩衝溶液を6gはかりとり、37℃の恒温水槽で5分間放置後、前記製造例(凍結乾燥品)の0.1wt/v%水溶液(溶解しにくいばあいはエタノールを加えて溶解したのち精製水を加えて、エバポレートし、エタノールを除去したのち、0.1wt/v%になるように調製した試料液)1.0mlを加え撹拌し0.01%ヒアルロニダーゼ(シグマ社製牛睾丸製、タイプI−S)0.1M(pH6.0)リン酸緩衝溶液を1ml加えて直ちに撹拌し、6mlを37℃の恒温水槽に入れたオストワルド粘度計に入れた。これを1分後、5分後、10分後、20分後、40分後に粘度を測定した。
対照として、上記試料液のかわりに純水を加え同様に測定した。
この試験では試料の終濃度は0.0125%となる。
1分後の粘度を100として、結果を指数で表2,3に示す。
【0027】
【表2】
【0028】
【表3】
【0029】
(活性酸素抑制試験)
活性酸素を抑制する効果を測定する方法は各種あるが、今回以下の方法を利用した。
上記の試薬の混合物を2.4ml、検体を0.3ml加えてキサンチンオキシナーゼ(予め検体を水とし、実験するとき、吸光度が1分当たり0.02前後上昇するように上記のリン酸カリウム緩衝液で調整しておく)液を0.1ml加えて直ちに吸光度(560nm)を測定する。(測定は2分位し、直線性を確認する)
計算式 阻害率=((A−B)/A)×100
A:検体を水としたときの1分当たりの吸光度の変化
B:検体の1分当たりの吸光度の変化
濃度段階を数段階行い、50%活性酸素生成阻害濃度を探した。検体の作成方法は前記製造例(凍結乾燥品)を適当な濃度の水溶液(溶解しにくい場合はエタノールを加えて溶解したのち精製水を加えて、エバポレートし、エタノールを除去したのち適当な濃度%となるように調製した)とした。その結果を表4に示す。
【0030】
【表4】
【0031】
(抗酸化試験)
以下の試験液をネジキャップ付50ml試験管に作成した。
検体 5mg
2%リノール酸エタノール溶液 10ml
0.1M,pH7.0リン酸緩衝液 10ml
精製水 5ml
これを50℃の恒温槽に遮光して放置する。
これを恒温槽に入れる前と数日間隔で下記の測定をした。
試験液0.125ml、75%エタノール12.125ml、30%チオシアン酸アンモニウム0.125mlを加えて撹拌し3分間放置後、0.02N塩化第一鉄3.5%HCl水溶液0.125mlを加えて撹拌し3分間放置後波長500nmで吸光度を測定した。セル長10mm、対照セルは試験液を水に置き換えたもの。
その結果を表5、表6に示す。
【0032】
【表5】
【0033】
【表6】
【0034】
(抗プラスミン試験)
(試験方法)
9cmシャーレにプラミノーゲン除去フィブリノーゲンタイプ2−0.6%水溶液4mlを入れ、pH7.4の0.1Mリン酸緩衝液4mlを加えて撹拌し、トロンビン(10単位/ml)0.1ml滴下し、ゆっくりと混和し、30分放置した。
トロンビンを加えることによってフィブリノーゲンタイプがフィブリンに変化し、ゲルを形成する。
検体0.1mlとプラスミン溶液(10単位/ml)0.1ml混合した液30μlをシャーレのゲル上に乗せた後、37℃で2時間放置した。
検体は5mM33%ジメチルスルホキシド溶液を用いた。
そしてフィブリンゲルの溶解した面積を測定した。
検体の替わりに33%ジメチルスルホキシド水溶液を用いて同様に実験を行い、次のような式でプラスミン活性の阻害率を求めた。その結果を表7に示す。
【0035】
【数1】
【表7】
【0036】
対照としてトラネキサム酸、εアミノカプロン酸を試験したところ、50%阻害濃度はトラネキサム酸が30mg/ml、εアミノカプロン酸40mg/mlであった。
【0037】
(コラゲナーゼ阻害試験)
(試験方法)
I型コラゲナーゼ活性測定キッド YU−16001 コスモ・バイオを用いて実験した。すなわち、マイクロチューブに蛍光標識I型コラーゲン(50μg/50μl/tube)を入れ、以下の表8のように試薬、検体を入れた。
中和液とは、0.1Mトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンpH緩衝液で0.1Mトリス‐HCl、pH7.5(0.4M NaCl、0.01M CaCl2、NaN3を含む)、酵素反応停止剤とは、O‐フェナントロン(含エタノール)溶液である。
またコラゲナーゼ溶液とは、コラゲナーゼ(アマノ製1000unit/mg)の1unit/mgの2倍希釈の中和液溶液である。
【0038】
【表8】
【0039】
コラゲナーゼ活性阻害率は次の式により計算された。
【数2】
【0040】
そのコラゲナーゼ活性阻害率の測定結果を表9に示す。
【表9】
【0041】
(使用テスト)
女性6名づつの顔面を左右に分け、一方を実施例、もう一方を比較例として毎日、1回以上使用してもらって、3月後、アンケートした。なお、比較例は実施例より製造例の各種のルウメックス シプリウスの抽出物を水にかえたものである。(比較例1,2)なお、12名を2班にわけ、下記の表10の試料を使って実験した。
【0042】
【表10】
【0043】
判定基準は下記の通りで、この評点の合計値を下記の表11に示す。
実施例の方が非常によい 3
実施例の方がかなりよい 2
実施例の方がややよい 1
差がない 0
比較例の方がややよい −1
比較例の方がかなりよい −2
比較例の方が非常によい −3
【0044】
【表11】
【0045】
【発明の効果】
本発明のルウメックス シプリウスの溶媒抽出物は、肌の美白作用、ヒアルロニダーゼの活性抑制作用、活性酸素抑制作用、抗酸化作用、抗プラスミン作用、コラゲナーゼ活性阻害作用があり、化粧品に配合して肌の美白効果に優れ、更に肌荒れを防止し、肌のつや、はりを保つ効果が大きい。
Claims (1)
- ルウメックス シプリウスの葉から、水或いは親水性有機溶媒、又はこれらの混合溶媒で抽出した抽出物を含む化粧料。
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